JP2019173131A - 電気化学的還元用電極材料、電気化学的還元用電極及び電気化学的還元装置 - Google Patents
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Abstract
Description
このように、従来の方法に用いられる電極材料(触媒)は性能面で改善の余地のあるものであった。
本発明の電気化学的還元用電極材料は、スズ含有酸化物担体に周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物(以下、金属元素の単体及び/又は化合物を総称して「金属種」ともいう)が担持された構造を有することを特徴とする。本発明の電気化学的還元用電極材料は、担体としてスズ含有酸化物を用いるため、カーボン担体を用いた場合に発生するカーボンの分解反応の発生がない。また、スズ含有酸化物自体が二酸化炭素の還元活性をもつため、二酸化炭素の目的物へ転換反応を高い効率で進めることができ、目的物を高い収率で得ることができる。更に、スズ含有酸化物に周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物が担持され、反応場が増えることで、目的物の生成速度を向上することができる。
被覆率は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
Sn、In、Ga、Ge、Cu、Znからなる群より選択される少なくとも1種の元素の単体及び/又は化合物を用いることで、二酸化炭素の還元反応によりギ酸をより高い選択率で得ることができる。
スズ原子以外の原子としては、In、Sb、Ga、Nb、Ta、Mo、W等の周期表第5 〜6族および13〜15族の金属原子、さらにはF、Clが挙げられる。これらの中でも、In、Sb、Ga等の周期表第13〜15族の金属原子およびFが好ましい。
スズ含有酸化物担体の粉末の体積固有抵抗値は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明の電気化学的還元用電極材料の製造方法は特に制限されないが、スズ含有酸化物担体表面に、金属の単体及び/又はその化合物を担持する工程を含む製造方法により容易かつ簡便に得ることができる。この製造方法は、必要に応じて、通常の粉末製造時に採用される1又は2以上のその他の工程を更に含んでもよい。
焼成温度は特に限定されないが、例えば、200〜1000℃とすることが好ましい。また焼成時間も特に限定されないが、例えば、30分〜24時間とすることが好適である。これによって、金属種とスズ含有酸化物担体とを、二酸化炭素還元活性の発現に好適な状態とすることができる。
下記条件の下、X線回折装置(株式会社リガク製、商品名「RINT−TTR3」)を用いて、粉末X線回折パターンを測定した。
X線源:Cu−Kα線
測定範囲:2θ=10〜70°
スキャンスピード:5°/min
電圧:50kV
電流:300mA
体積抵抗の測定には、株式会社三菱化学アナリテック製、粉体抵抗測定システム MCP−PD51型を用いた。
粉体抵抗測定システムは、油圧による粉体プレス部と四探針プローブ、高抵抗測定装置(同社製、ロレスターGX MCP−T700)から構成される。
以下の手順に従い、体積抵抗(Ω・cm)の値を求めた。
1)四探針プローブを底面に備えたプレス冶具(直径20mm)にサンプル粉末を投入し、粉体抵抗測定システムの加圧部にセットする。プローブと高抵抗測定装置とをケーブルで接続する。
2)ハンドプレスを用いて、20kNまで加圧する。粉体厚みをデジタルノギスで測定、抵抗値を高抵抗測定装置で測定する。
3)粉体の底面積、厚み、抵抗値から、下記数式(1)に基づき体積固有抵抗(Ω・cm)を求める。
本明細書中、「被覆率」とは、電極材料の全表面積に対するスズ含有酸化物担体表面に担持された金属元素の担体及び/又は化合物で構成される周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物の表面積の割合で表される。なお、担持された周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物が粒子の場合、その比表面積は周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物の担持量および平均一次粒子径さらには担持粒子密度を用いて粒子数を算出し、球の表面積と粒子数の積により算出することができる。このとき必要に応じて元素マッピングをおこない、粒子の組成を特定しても良い。
すなわち、平均一次粒子径をP(nm)、担持量をS(重量%)、担持粒子の密度をD(g/cm3)とすることで、下記数式(2)により算出することができる。なお、周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物の平均一次粒子径、担持量、担持粒子の密度は以下のようにして測定することができる。
担持された周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物の比表面積=6S/PD×10 (2)
[平均一次粒子径]
透過型電子顕微鏡(TEM)による写真を用いて、40個の一次粒子径を測定し、平均を算出する。
[担持量]
担持量の算出は特に限定されないが、例えば金属塩の秤量値から算出される金属元素の単体及び/又は化合物の担持重量の最大値を、得られた触媒の重量で除した値に100を乗じることで算出する。
[担持粒子の密度]
改訂4版化学便覧 基礎編 丸善株式会社(1993)及び第4版岩波理化学辞典 株式会社岩波書店(1987)に記載されている該当する金属又は金属化合物の数値を引用した。
(1)作用極の作製
測定対象サンプルに、5重量%パーフルオロスルホン酸樹脂溶液(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)、イソプロピルアルコール(和光純薬工業株式会社製)及び超純水を加え、超音波により分散させてペーストを調製した。ペーストを板状の導電性物質(例えば、Electrochem,Inc.製、カーボンペーパ、EC−TP1−090T)に塗布し、充分に乾燥した。乾燥後のサンプルを作用極とした。
(2)二酸化炭素の電解還元
(2−1)Automatic Polarization System(北斗電工株式会社製、商品名「HZ−5000」)に、作用極、対極、および参照極を接続した。作用極には、上記で得た測定サンプル付き電極を用い、対極と参照極には、それぞれ白金電極と可逆水素電極(RHE)電極を用いた。
(2−2)25℃で、電解液(0.1mol/lの炭酸水素カリウム水溶液)に二酸化炭素ガスを30分間バブリングさせた。二酸化炭素ガスの流量は100ml/分であった。
(2−3)引き続き、二酸化炭素ガスを流通しながら、25℃で、二酸化炭素ガスを飽和させた電解液(0.1mol/l炭酸水素カリウム水溶液)で、アノードの電極電位に対してカソードの電極電位が負となるように、ポテンショスタットを用いて電圧がアノード電極およびカソード電極の間に印加され、電解反応を生じさせた。カソード電極に印加された電圧値は、参照電極に対して−1.0Vであった。電解は、連続して180min行った。
(2−4)電解槽内で生成された電解生成物は、液体クロマトグラフィーを用いて同定し、検量線法によって定量した。
[転化選択性]
二酸化炭素の電解生成物の転化選択性は、ファラデー効率によって算出した。ファラデー効率は、全反応電荷量に対して、目的の電解生成物の生成に用いたられた電荷量の割合を意味する。具体的には、以下の数式(3)に基づいて算出される。
目的の電解生成物のファラデー効率(%)=(目的の電解生成物の生成のために用いられた反応電荷量(C))/(全反応電荷量(C))×100 (3)
[生成速度]
二酸化炭素の電解生成物の生成速度は、以下の数式(4)に基づいて算出される。
電解生成物の生成速度(mmolg−1h−1)=(電解生成物量(mmol))/(電極内サンプル重量(g)・電解時間(hr) (4)
スズドープ酸化インジウム(ITO)粉末(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)2.25gと、イオン交換水100gをビーカーに計量して撹拌混合し、ITOスラリーを得た。ITO粉末の体積抵抗は、3.5Ω・cmであった。
別のビーカーにてSnCl4・5H2O(和光純薬工業株式会社製)0.753gをイオン交換水20.0gと塩酸(37%)23.8gの混合液に添加し、撹拌混合したものを用意した(これを「混合水溶液」と称す)。
ITOスラリーを撹拌しながら、別のビーカーにて用意した上記の混合水溶液全量を添加し、その後、液温を30℃に保持しながら、30分撹拌混合した。さらに、1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが10になるまで添加した後、濾過、水洗、乾燥して水分を全て蒸発させて、粉末(p1)を得た。
粉末(p1)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて水素を200ml/分、窒素200ml/分の混合雰囲気で流通しながら、400℃まで600℃/hrで昇温し、400℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して実施例1粉末を得た。
実施例1で得られた粉末(p1)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて空気を400ml/分で流通しながら、300℃まで600℃/hrで昇温し、300℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して実施例2粉末を得た。
アンチモンドープ酸化スズ(ATO)粉末(三菱マテリアル株式会社製 商品名「T−1」)2.25gと、イオン交換水100gをビーカーに計量して撹拌混合し、ATOスラリーを得た。ATO粉末の体積抵抗は、8.5×10−1Ω・cmであった。
別のビーカーにてSnCl4・5H2O(和光純薬工業株式会社製)0.753gをイオン交換水20.0gと塩酸(37%)23.8gの混合液に添加し、撹拌混合したものを用意した(これを「混合水溶液」と称す)。
ATOスラリーを撹拌しながら、別のビーカーにて用意した上記の混合水溶液全量を添加し、その後、液温を30℃に保持しながら、30分撹拌混合した。さらに、1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが10になるまで添加した後、濾過、水洗、乾燥して水分を全て蒸発させて、粉末(p2)を得た。
粉末(p2)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて水素を200ml/分、窒素200ml/分の混合雰囲気で流通しながら、400℃まで600℃/hrで昇温し、400℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して実施例3粉末を得た。
実施例3で得られた粉末(p2)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて空気を400ml/分で流通しながら、300℃まで400℃/hrで昇温し、300℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して実施例4粉末を得た。
実施例1で使用したITOに対して金属種を担持せず、かつ、雰囲気炉による昇温も実施せずに使用した。
実施例3で使用したATOに対して金属種を担持せず、かつ、雰囲気炉による昇温も実施せずに使用した。
カーボンブラック(EC-300J、ライオン・スベシャリティ・ケミカルズ株式会社製)2.25gと、非イオン界面活性剤(ノイゲンEA-157、第一工業製薬株式会社製)0.45gと、イオン交換水100gをビーカーに計量して撹拌混合し、カーボンブラックスラリーを得た。
別のビーカーにてSnCl4・5H2O(和光純薬工業株式会社製)0.753gをイオン交換水20.0gと塩酸(37%)23.8gの混合液に添加し、撹拌混合したものを用意した(これを「混合水溶液」と称す)。
カーボンブラックスラリーを撹拌しながら、別のビーカーにて用意した上記の混合水溶液全量を添加し、その後、液温を30℃に保持しながら、30分撹拌混合した。さらに、1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を溶液のpHが10になるまで添加した後、濾過、水洗、乾燥して水分を全て蒸発させて、粉末(p3)を得た。
粉末(p3)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて水素を200ml/分、窒素200ml/分の混合雰囲気で流通しながら、600℃まで600℃/hrで昇温し、600℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して比較例粉末3を得た。
比較例3で得られた粉末(p3)0.5gをアルミナボートに入れ、雰囲気焼成炉にて水素を200ml/分、窒素200ml/分の混合雰囲気で流通しながら、300℃まで600℃/hrで昇温し、300℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却して比較例4粉末を得た。
比較例3で使用したカーボンブラックに対して金属種を担持せず、かつ、雰囲気炉による昇温も実施せずに使用した。
実施例1で得た粉末は、金属としてスズがITO表面に担持された電極材料であり、実施例3で得た粉末は、金属としてスズがATO表面に担持された電極材料である。一方、比較例3で得た粉末は、担体がカーボンブラックである点で、本発明の電極材料とは相違する。
このような相違の下、二酸化炭素電解還元における転化選択性の指標であるファラデー効率を対比すると、実施例1で得た粉末は、比較例3で得た粉末に比較してファラデー効率が著しく高いことが分かった。また、実施例3で得た粉末においても比較例3で得た粉末に比較してファラデー効率が著しく高いことが分かった。
これらの結果から、担体にスズ含有酸化物であるITO及び/又はATOを利用することで、担体表面上での副反応を抑制でき、ギ酸生成の選択性が向上することが分かった。
このような相違の下、二酸化炭素電解還元における電解生成物の生成速度を対比すると、実施例1で得た粉末は、比較例1で得た粉末に比較して生成速度が著しく高いことが分かった。また、実施例3で得た粉末においても比較例2で得た粉末に比較して生成速度が著しく高いことが分かった。
これらの結果から、スズ含有酸化物であるITO及び/又はATOに周期表第2〜16族の金属元素の単体を担持することで、反応場が増加し、ギ酸生成の生成速度が向上することが分かった。
このような相違の下、二酸化炭素電解還元における転化選択性の指標であるファラデー効率を対比すると、実施例2で得た粉末は、比較例4で得た粉末に比較してファラデー効率が著しく高いことが分かった。また、実施例4で得た粉末においても比較例4で得た粉末に比較してファラデー効率が著しく高いことが分かった。
これらの結果から、担体にスズ含有酸化物であるITO及び/又はATOを利用することで、担体表面上での副反応を抑制でき、ギ酸生成の選択性が向上することが分かった。
このような相違の下、二酸化炭素電解還元における電解生成物の生成速度を対比すると、実施例2で得た粉末は、比較例1で得た粉末に比較して生成速度が著しく高いことが分かった。また、実施例4で得た粉末においても比較例2で得た粉末に比較して生成速度が著しく高いことが分かった。
これらの結果から、スズ含有酸化物であるITO及び/又はATOに周期表第2〜16族の金属元素の化合物を担持することで、反応場が増加し、ギ酸生成の生成速度が向上することが分かった。
Claims (7)
- 電気化学的還元に用いられる電極材料であって、
該電極材料は、スズ含有酸化物担体に周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物が担持された構造を有することを特徴とする電気化学的還元用電極材料。 - 前記電極材料は、スズ含有酸化物担体に周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物が担持された構造を有し、電極材料の全表面積に対するスズ含有酸化物担体表面に担持された周期表第2〜16族の金属元素の単体及び/又は化合物の表面積の割合で表される被覆率が0.5%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の電気化学的還元用電極材料。 - 前記周期表第2〜16族の金属元素は、Sn、In、Ga、Ge、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ir、Pt、Au、Ru、Rh、Pd、Ag、Zr、Nb、Mo、Ta、Wからなる群より選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気化学的還元用電極材料。
- 前記スズ含有酸化物担体は、粉末の体積固有抵抗値が1.0×10−6Ω・cm以上、1.0×104Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学的還元用電極材料。
- 二酸化炭素の電気化学的還元に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電気化学的還元用電極材料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の電気化学的還元用電極材料を用いることを特徴とする電極。
- 請求項6に記載の電気化学的還元用電極を用いることを特徴とする電気化学的還元装置。
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