本発明はそのいくつかの実施形態において、マイクロRNAに関し、より具体的には、限定するものではないが、疾患、診断、モニタリングおよび処置のための該マイクロRNAの使用に関する。
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明の参照により、より良く理解することができる。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、下記の説明で示される、または、実施例によって例示される詳細事項への適用に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で実施、または、実行することができる。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解されたい。
調節不全のセロトニン活性と、精神障害、例えば、不安症およびうつ病など、とのつながりはこれまでに立証されているが、それにもかかわらず、これらの病理の根底にある分子的機構は完全には理解されていない。マイクロRNA(miR)は、遺伝子発現を転写後に調節し、脳に多く存在する小さいRNA分子のサブセットである。
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、特定のマイクロRNA(miR)が、セロトニン(5HT)神経膠関連遺伝子の調節に関与していること、したがって、異常なセロトニンレベルに伴う医学的状態(例えば、精神障害など)を調節することに関与していることを発見した。
本明細書中、下記および下記の実施例セクションにおいて例示されるように、本発明者らは、5HTレポーターマウス(ePET−YFP)の縫線核(RN)から得られる5HTニューロンにおけるmiR発現パターンを、miRマイクロアレイを使用して明らかにした(下記の実施例セクションにおける表2A〜B参照)。アレイから得られるセロトニン作動性ニューロンの特有のmiR発現プロフィルを生物情報学的に分析して、重要なセロトニン作動性関連遺伝子(例えば、セロトニン輸送体(Slc6a4、図1D)、セロトニン自己受容体(Htr1a、図1E)、トリプトファンヒドロキシラーゼ2(Tph2、図1F)およびモノアミンヒドロキシラーゼ(MaoA、図1G)など)を標的とすることが推定されるmiRを特定した。これらの遺伝子の3’UTRのmiRNAによる標的化をさらにインビトロで試験し、5HTニューロン遺伝子を特異的に標的とし、これらを調節する特定のmiR(例えば、miR−135)を例示した(図1H〜Iおよび図2C〜D参照)。さらに、本発明者らは、miR−135の発現レベルが、急性ストレスの後で(図3A〜D)、また、抗うつ剤による処置の後で(図3E〜F)、RNにおいて変化することを示した。成体マウスのRNにおけるインビボでのmiR−135の過剰発現は社会的敗北の後におけるうつ病様行動を低下させた(図4A〜H)。さらに、本発明者らは、ニューロン活性の調節因子としてのmiR−182の活性(Htr1aの直接的な抑制を介した、図8)、および、精神病理学的行動の調節因子としてのmiR−182の活性(図9)、ならびに、ストレス応答の調節因子としてのmiR−15の活性[CRH1R(図7A〜B)、FK506結合タンパク質5(FKBP5)(図21A〜B)、ならびに、Stx1a、Sgk1およびAdrb2(図22)の直接的な抑制を介した]を例示している。本発明者らはまた、miR−19によるベータアドレナリン作動性受容体(Adrb1)およびカナビノイド受容体1(CB1)の特異的な標的化を例示している。miR−19の過剰発現はAdrb1を抑制し(図6A〜C)、一方、miR−19のノックダウンはAdrb1の発現を高めた(図6D〜E)。miR−19の過剰発現はまた、CB1を抑制した(図14)。本発明者らはまた、miR−181に対する標的を発見している。特に、本発明者らは、miR−181がグルタミン酸受容体を特異的に調節することを例示している(図24および図25)。まとめると、これらの結果は、miR−135、miR−335、miR−181、miR−182、miR−26、miR−27、miR−15およびmiR−19などのmiRNAまたは当該miRNAを調節する配列の、治療法としての使用を実証するものである。
本発明を実施にさらに移す間に、本発明者は、miR135を、4%もの人々を襲う双極性障害の処置用の強力な治療薬として使用することができることを発見した。
本発明をさらに実施に移す間に、本発明者らは、miR−135がうつ病ヒト患者の血液中で大きくダウンレギュレーションされ(健康な対照と比べて)、患者の精神医学的スコアの改善後にアップレギュレーションされることを発見した。実際に、miR−135は、正常な条件下で、無変異型セロトニン作動性緊張の維持に関与する不可欠な調節エレメントであり、また、抗うつ剤に対する脳反応に不可欠であることが明らかになった(図41Eの図式モデルを参照されたい)。
miR−135のレベルの増加は、Slc6a4およびシナプス前のHtr1aレベルの両方を抑制し、うつ病性症状の減少に関連する、シナプス間隙中の5HTを増加させることが明らかになった。さらに、本発明者らが行った生物情報学分析により、双極性感情障害またはリチウム作用を含む精神神経疾患に関連するmiR135の新しい標的が予測された。したがって、これらの標的は精神神経疾患の治療的介入の標的として使用することができる。
現在のアッセイは、精神医学的状態での患者のスクリーニングおよび処置のモニタリングの両方のための非侵襲的試験をさらに提供する。前記を総合して、これらの結果により、miR−135が、患者の心理的なバランスの連続的モニタリングが不可欠な、気分障害などの精神医学的状態の診断および管理のための重要なツールとして位置づけられる。
従って、本発明の一態様では、セロトニンレベルの上昇が治療上有益である医学的状態の処置を必要とする対象を処置する方法であって、少なくとも1つのマイクロRNAまたはその前駆体をコードする外因性ポリヌクレオチドを対象の細胞に投与し、または、対象の細胞において発現させることを含む方法が提供される。
特定の実施形態では、セロトニンレベルの上昇が治療上有益である医学的状態を処置するために、マイクロRNAはmiR−135、miR−335、miR−26およびmiR−182を含む。
本発明の一態様では、処置を必要としている対象の双極性障害を処置する方法であって、治療有効量のmiR−135、その前駆物質またはmiR−135またはその前駆物質をコードする核酸分子をその対象に投与することにより、双極性障害を処置することを含む方法が提供される。
本発明の別の態様では、アドレナリンまたはノルアドレナリンの低いレベルが治療上有益である医学的状態の処置を必要とする対象を処置する方法であって、マイクロRNAまたはその前駆体をコードする外因性ポリヌクレオチドを対象の細胞に投与し、または、対象の細胞において発現させることを含む方法が提供される。
特定の実施形態では、アドレナリンまたはノルアドレナリンの低いレベルが治療上有益である医学的状態を処置するために、マイクロRNAはmiR−19を含む。
本発明の別の態様では、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の低いレベルが治療上有益である医学的状態の処置を必要とする対象を処置する方法であって、マイクロRNAまたはその前駆体をコードする外因性ポリヌクレオチドを対象の細胞に投与し、または、対象の細胞において発現させることを含む方法が提供される。
特定の実施形態では、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の低いレベルが治療上有益である医学的状態を処置するために、マイクロRNAはmiR−15を含む。
本発明の別の態様では、グルタミン酸受容体の低いレベルが治療上有益である医学的状態の処置を必要とする対象を処置する方法であって、マイクロRNAまたはその前駆体をコードする外因性ポリヌクレオチドを対象の細胞に投与し、または、対象の細胞において発現させることを含む方法が提供される。
特定の実施形態では、グルタミン酸受容体の低いレベルが治療上有益である医学的状態を処置するために、マイクロRNAはmiR−181を含む。
用語「処置」は、疾患、障害もしくは状態の発症を抑制すること、もしくは停止させること、および/または、疾患、障害もしくは状態の軽減、寛解もしくは退行を生じさせること、あるいは、疾患、障害もしくは医学的状態を、疾患、障害もしくは状態の危険性があると思われる、疾患、障害もしくは状態を有すると未だ診断されていない対象において生じさせないことを意味する。当業者は、様々な方法およびアッセイを使用して、疾患、障害もしくは状態の発症を評価することができること、また、同様に、様々な方法論およびアッセイを使用して、疾患、障害もしくは状態の軽減、寛解もしくは退行を評価することができることを理解するであろう。
本明細書中で使用される場合、用語の「対象」または「それを必要としている対象」には、症状に苦しんでいる、または症状を発生する危険のある哺乳動物、例えば、任意の年齢の、人間、男性、または女性、が含まれる。
本明細書中で使用される場合、表現の「セロトニンレベルの上昇が治療上有益である医学的状態」は、セロトニンのレベルを増大させることにより、それに伴う疾患または医学的症状の発生を防ぐことができるか、あるいは、それに伴う疾患進行または医学的症状を停止することができる疾患または障害を意味する(本明細書中下記でさらに詳述される)。
本明細書中で使用される場合、用語「セロトニン」は、モノアミン神経伝達物質[5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)とも呼ばれる]を意味する。セロトニンは、例えば、CAS番号50−67−9で示される。
一実施形態では、セロトニンレベルをシナプス間隙において増大させる方法であって、少なくとも1つのマイクロRNAまたはその前駆体をコードする外因性ポリヌクレオチドを対象の神経膠細胞(例えば、セロトニン作動性ニューロン)に投与するか、または、対象の神経膠細胞(例えば、セロトニン作動性ニューロン)において発現させることを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「シナプス間隙」は、電気的または化学的なシグナルが通過する2つのニューロンの間の領域を意味する。
「神経膠細胞」は、ニューロンまたはグリア細胞(例えば、乏突起膠細胞または星状膠細胞)を意味する。
本明細書中で使用される場合、用語「セロトニン作動性ニューロン」は、セロトニンを分泌するか、または、セロトニンの再取り込み(すなわち、その細胞表面に発現されるセロトニン輸送体による)が可能であるニューロンを意味する。
セロトニンレベルの上昇が治療上有益である医学的状態には、例えば、うつ病、大うつ病、不安症、ストレス、疲労、認知機能障害、パニック発作、脅迫行動、嗜癖、社会恐怖症を含むいずれかの気分障害、統合失調症、睡眠障害、食品関連障害(例えば、摂食障害)、成長障害および生殖障害を含めてよい。特定の実施形態では、セロトニンレベルの上昇が治療上有益である医学的状態はうつ病を含む。
特定の実施形態では、セロトニンレベルの上昇が治療上有益である医学的状態は双極性障害を含む。
本明細書で使用される場合、双極性感情障害、躁うつ病(manic−depressive disorder)、または躁うつ病(manic depression)としても知られる「双極性障害」は、気分障害として分類される精神疾患を意味する。通常、双極性障害の個体は1種または複数種の異常に高揚した状態(臨床的には躁病と呼ばれる)の発症を経験する。躁病は異なるレベルの重症度で発生することがある。より軽度レベルの躁病、または「軽躁病」では、個体は精力的で激しやすいように見えることがあり、また、極めて創造力に富む場合がある。躁病がより重症になるに伴い、個体は迷走的、突発的に行動を始め、多くの場合、将来に関し、非現実的な考えによる不十分な決定を行い、睡眠が極めて困難になることがある。最も重篤なレベルでは、個体は精神障害を経験することがある。躁病の発症は通常、うつ病の発症もしくは症状、または躁病とうつ病に両方の特徴を示す混ざり合った発症と交互に起こる。このような発症は通常、正常な状態の期間で分離される。躁病とうつ病の発症は、数日から数ヶ月の期間継続することがあるが、一部の患者では、うつ病と躁病が急速に交替し、急速交代型と呼ばれる。
本発明のいくつかの実施形態による双極性障害は、任意のタイプの双極性障害および任意の形態および/または派生型の双極性障害が包含され、限定されないが、躁病、急性躁病、重症型躁病、軽躁病、うつ病、中等度うつ病、気分変調症、重症型うつ病、躁病および/またはうつ病の発症、精神障害/精神病症状(例えば、幻覚、妄想)、混合双極性状態、双極I型障害、双極II型障害、急速交代型双極性障害、気分循環症および/または特定不能の双極性障害(BD−NOS)が含まれる。
一実施形態では、双極性障害の処置は、治療有効量のmiR−135、その前駆物質またはmiR−135もしくはその前駆物質をコードする核酸分子を対象に投与することにより、行うことができる。
一実施形態では、双極性障害の処置はさらに、対象に双極性障害の処置用薬物を投与することにより行うことができる。
本教示により使うことができる双極性障害の処置用の代表的薬物としては、さらに詳細に以降で記載されるリチウム、抗精神病薬物および気分安定剤薬物が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、治療有効量のmiR−135、その前駆物質またはmiR−135またはその前駆物質をコードする核酸分子の、処置を必要としている対象の双極性疾患を処置するために特定された薬物の製造のための使用が提供される。
したがって、一実施形態では、医学的状態が気分障害、例えば、双極性疾患、うつ病または不安症である場合、マイクロRNAはmiR−135である。
気分障害、例えば、双極性疾患、うつ病または不安症は、必ずしもセロトニンに関連付けられない場合もある。
一実施形態では、セロトニンレベルの上昇が処置を必要としている対象にとって治療上有益である医学的状態を処置する方法であって、アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1(Adcyap1またはPACAP);アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1受容体1(Adcyap1r1);アドレナリン受容体、アルファ2a(Adra2a);アンキリン3(ANK3);活動依存性細胞骨格関連タンパク(Arc);Rho GTPase活性化タンパク質6(Arhgap6);活性化転写因子3(Atf3);アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1(Bace1);カルシウムチャネル、電圧依存性、L型、アルファ1Dサブユニット(Cacna1d);細胞付着分子3(Cadm3);コンプレキシン1(Cplx1);コンプレキシン2(Cplx2);CUBおよびSushi複数ドメイン1(Csmd1);カゼインキナーゼ1、ガンマ1(Csnk1g1);ダブルコルチン(Dcx);DIRASファミリー、GTP結合RAS様2(Diras2);ディスクラージホモログ2(ショウジョウバエ)(Dlg2);ELK1、ETS癌遺伝子ファミリーのメンバー(Elk1);癌遺伝子関連キナーゼ(Frk);フコシルトランスフェラーゼ9(アルファ(1,3)フコシルトランスフェラーゼ)(Fut9);ガンマアミノ酪酸(GABA−A)受容体、サブユニットベータ2(Gabrb2);GATA結合タンパク質3(Gata3);成長ホルモン分泌促進物質受容体(Ghsr);Gタンパク質共役受容体3(Gpr3);グルタミン酸受容体、イオンチャネル型AMPA3(アルファ3)(GRIA3);グルタミン酸受容体、イオンチャネル型、カイニン酸3(Grik3);Gタンパク質共役受容体キナーゼ5(Grk5);グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3ベータ(GSK3B);過分極活性化環状ヌクレオチド依存性カリウムチャネル1(Hcn1)、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性K+2(Hcn2)、5−ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体1A(Htr1a);イノシトール一リン酸分解酵素(IMPA1)、カリリン、RhoGEFキナーゼ(Kalrn);カリウム中間体/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー3(KCNN3);カリオフェリンα3(インポーチンアルファ4)(Kpna3);ミエリン転写因子1様(Myt1l);核内受容体転写共役因子2(Ncoa2);N−Myc下流調節遺伝子4(Ndrg4);一酸化窒素合成酵素1(神経細胞)アダプタータンパク質(NOS1AP);核受容体サブファミリー3、グループC、メンバー2(Nr3c2);ネトリンG1(Ntng1);核カゼインキナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼ基質1(Nucks1);ホスホジエステラーゼ1A、カルモデュリン依存性(Pde1a);ホスホジエステラーゼ4A、cAMP特異的(Pde4a);ホスホジエステラーゼ8B(Pde8b);ホスホリパーゼC、ベータ1(Plcb1);プロラクチン受容体(Prlr);RAB1B、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab1b);Ras関連タンパク質Rap−2a(Rap2a);レチノイド関連オーファン受容体ベータ(Rorb);サーチュイン1(サイレント交配型情報調節因子2、相同体)1(Sirt1);溶質輸送体ファミリー12、(カリウム/塩化物輸送体)メンバー6(Slc12a6);溶質輸送体ファミリー5(コリン輸送体)、メンバー7(Slc5a7);溶質輸送体ファミリー6(神経伝達物質輸送体、セロトニン)、メンバー4(Slc6a4);トランス作用性転写因子1(Sp1);シナプス小胞糖タンパク質2b(Sv2b);シナプス核膜1(ネスプリン−1をコード)(Syne1);シナプトタグミンI(Syt1);シナプトタグミンII(Syt2);シナプトタグミンIII(Syt3);形質転換増殖因子、ベータ受容体II(Tgfbr2);甲状腺ホルモン受容体、ベータ(Thrb);一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーC、メンバー6(Trpc6);シナプス小胞結合膜タンパク質2(Vamp2);無翅関連MMTV統合部位3(Wnt3);およびジンクフィンガー、BEDドメイン含有4(Zbed4)からなる群から選択されるmiR−135標的遺伝子の活性または発現をダウンレギュレーションすることが可能な薬剤を対象に投与することを含む方法が提供される。
特定の実施形態では、薬剤はmiR−135ではない。
本教示により使用することができる薬剤(例えば、miR−135標的遺伝子の活性または発現をダウンレギュレーションすることが可能な薬剤)は、以降で詳細に記述される。
本明細書中で使用される場合、表現の「アドレナリンまたはノルアドレナリンの低いレベルが治療上有益である医学的状態」は、アドレナリンまたはノルアドレナリンの発現または活性を低下させることにより、それに伴う疾患または医学的症状の発生を妨げることができるか、あるいは、それに伴う疾患進行または医学的症状を停止することができる疾患または障害を意味する(本明細書中下記でさらに詳述される)。
本明細書中で使用される場合、用語「アドレナリン」は、ホルモンおよび神経伝達物質(エピネフリンとしても知られている)を意味する。アドレナリンは、例えば、CAS番号51−43−4で示される。
本明細書中で使用される場合、用語の「ノルアドレナリン」は、ホルモンおよび神経伝達物質として作用するカテコールアミンを意味する(ノルエピネフリンとしても知られる)。アドレナリンは、例えば、CAS番号(l)51−41−2(l)および138−65−8(dl)で示される。
アドレナリンまたはノルアドレナリンの低いレベルが治療上有益である医学的状態には、例えば、ストレス関連障害、不安症、記憶障害、心臓の病気(例えば、動悸、頻脈、および不整脈)、頭痛、振戦、高血圧および急性肺水腫を含めることができる。
本明細書中で使用される場合、表現「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の低いレベルが治療上有益である医学的状態」は、CRHの発現または活性を低下させることにより、それに伴う疾患または医学的症状の発生を妨げることができるか、あるいは、それに伴う疾患進行または医学的症状を停止させることができる疾患または障害を意味する(本明細書中、下記でさらに詳述される)。
本明細書中で使用される場合、用語「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)」は、ポリペプチドホルモンおよび神経伝達物質を意味する(副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)またはコルチコリベリンとしても知られている)。CRHは、例えば、NP_000747.1で示される。
CRHの低いレベルが治療上有益である医学的状態には、例えば、ストレス、うつ病、不安、疲労、認知機能障害、パニック発作、脅迫行動、嗜癖、社会恐怖、睡眠障害、食品関連障害、成長障害、生殖障害および肥満を含めることができる。
本明細書中で使用される場合、表現「グルタミン酸受容体の低いレベルが治療上有益である医学的状態」は、グルタミン酸受容体の発現または活性を低下させることにより、それに伴う疾患または医学的症状の発生を妨げることができるか、あるいは、それに伴う疾患進行または医学的症状を停止させることができる疾患または障害を意味する(本明細書中、下記でさらに詳述される)。
本明細書中で使用される場合、用語「グルタミン酸受容体」は、典型的にはニューロン細胞の膜に位置するシナプス受容体を意味する(例えば、Grm1、Grik3、Grm5、Gria2、Grik2およびGrm7)。グルタミン酸受容体は、例えば、NP_000822.2[グルタミン酸受容体イオンチャネル型カイニン酸3(Grik3)];NP_000817.2、NP_001077088.1、NP_001077089.1、[グルタミン酸受容体イオンチャネル型AMPA2(Gria2)];NP_001159719.1、NP_068775.1、NP_786944.1[グルタミン酸受容体イオンチャネル型カイニン酸2(Grik2)];NP_000833.1、NP_001137303.1[グルタミン酸受容体代謝型5(Grm5)];NP_000835.1、NP_870989.1[グルタミン酸受容体代謝型7(Grm7)];NP_000829.2、NP_001107801.1[グルタミン酸受容体代謝型1(Grm1)]で示される。
グルタミン酸受容体の低いレベルが治療上有益である医学的状態には、例えば、てんかん発作(例えば、てんかん)、ハンチントン病、統合失調症、脆弱X症候群、全般性不安障害および癌(例えば、メラノーマ)を含めることができる。
本明細書中で使用される場合、用語「マイクロRNAまたはその前駆体」は、転写後の調節因子として作用するマイクロRNA(miRNA)分子を意味する。マイクロRNAは典型的には、プレ−miR(プレ−マイクロRNA前駆体)からプロセッシングされる。プレ−miRは、例えば、培養細胞に遺伝子導入されたとき、機能的なmiRNAに効率よくプロセッシングされる、RNAポリメラーゼIIIによって転写される一組の前駆体miRNA分子である。プレ−miRを使用して、特異的miRNA活性を、このmiRNAを通常は発現しない細胞型において誘発することができ、したがって、その標的の機能を、「(miRNA)機能獲得」実験においてその発現をダウンレギュレーションすることによって検討することができる。様々なプレ−miR設計が、miRNAレジストリにおいて列挙されている公知miRNAのすべてに対して存在しており、また、どのような研究のためにでも容易に設計することができる。マイクロRNAは、本明細書中下記でさらに記載するように、細胞自体に投与されるか、または、核酸構築物中に連結される前駆体分子からコードすることが可能である。一実施形態では、この用語は、5プライム(すなわち、miR)または3プライム(すなわち、miR*)およびそれらの前駆物質を含む、任意のタイプのマイクロRNAを包含する。
本明細書で使用される場合、用語の「miR−135またはその前駆物質」は、miR−135aおよびmiR−135b 5プライム(すなわち、miR−135)または3プライム(すなわち、miR−135*)およびそれらの前駆物質を含む任意のタイプのmiR−135を含むことを意味する。代表的前駆体miR−135としては、受入番号MI0000452、ENTREZGENE:406925および配列番号58で示されるmiR−135a−1;受入番号MI0000453、ENTREZGENE:406926および配列番号59で示されるmiR−135a−2;ならびに受入番号MI0000810、ENTREZGENE:442891および配列番号60で示されるmiR−135bが挙げられるが、これらに限定されない。代表的成熟型miR−135としては、受入番号MIMAT0000428(配列番号61)で示されるmiR−135aおよび受入番号MIMAT0000758(配列番号62)で示されるmiR−135bが挙げられるが、これらに限定されない。代表的成熟型miR−135*としては、受入番号MIMAT0004595(配列番号192)で示されるmiR−135a*および受入番号MIMAT0004698(配列番号193)で示されるmiR−135b*が挙げられるが、これらに限定されない。
本教示のマイクロRNA(例えば、miR−135)は、任意のマイクロRNA標的に対し、結合、付着、調節、プロセッシング、妨害、増強、安定化および/または脱安定化を行うことができることは理解されよう。このような標的は、限定されないが、DNA分子、RNA分子およびポリペプチドを含む、任意の分子、例えば、セロトニン関連遺伝子、例えば、セロトニン輸送体(すなわち、SERTまたはSlc6a4)、セロトニン抑制性受容体1a(Htr1a)、トリプトファンヒドロキシラーゼ2(Tph2)およびモノアミンヒドロキシラーゼ(MaoA)など;アドレナリンまたはノルアドレナリン受容体(アドレナリン作動性受容体、例えば、Adr1など);アデニル酸シクラーゼ1型(ADCY1);CRH受容体、例えば、Crh1Rなど;または、任意の他の分子、例えば、FK506結合タンパク質5(FKBP5)、カナビノイド受容体1(CB1)、ダウン症候群細胞接着分子(Dscam)、トランスリン会合タンパク質X(Tsnax)および細胞接着分子L1(L1cam);ならびに下表1に記載のストレス関連精神神経疾患(例えば、双極性障害)に関連するその他の標的であってよいが、これらに限定されない。
(表1)
表1:ストレス関連精神神経疾患に関連するmiR−135の推定標的
本発明のマイクロRNAを、例えば、マイクロRNAレジストリ(http://www.sanger.ac.uk/Software/Rfam/mirna/index.shtml)を含む、様々なデータベースを使って特定することができることは理解されよう。
本発明の方法は、対象にマイクロRNA(例えば、miR−135)またはその作動因子を投与すること、または対象の細胞中でマイクロRNA(例えば、miR−135またはその前駆物質)もしくはその前駆物質をコードした外因性の核酸分子(すなわち、ポリヌクレオチド)を発現させることにより、行うことができる。用語の「ポリヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)またはそれらの模倣体の一本鎖または二本鎖のオリゴマーまたはポリマーを意味する。この用語には、天然に存在する核酸分子(例えば、RNAまたはDNA)に由来するポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド、天然に存在する塩基、糖および共有結合性のヌクレオシド間結合(例えば、骨格)から構成される合成ポリヌクレオチド分子および/またはオリゴヌクレオチド分子、ならびに、天然に存在するそれぞれの部分と同様に機能する天然に存在しない部分を有する合成ポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドが含まれる。このような修飾または置換オリゴヌクレオチドは、例えば、向上した細胞取り込み、核酸標的に対する向上した親和性およびヌクレアーゼの存在下での増加した安定性などの望ましい特性のために、天然型よりも好ましい場合がある。
本発明のポリヌクレオチドの長さは、必要に応じて100ヌクレオチド以下、必要に応じて90ヌクレオチド以下、必要に応じて80ヌクレオチド以下、必要に応じて70ヌクレオチド以下、必要に応じて60ヌクレオチド以下、必要に応じて50ヌクレオチド以下、必要に応じて40ヌクレオチド以下、必要に応じて30ヌクレオチド以下(例えば、29ヌクレオチド、28ヌクレオチド、27ヌクレオチド、26ヌクレオチド、25ヌクレオチド、24ヌクレオチド、23ヌクレオチド、22ヌクレオチド、21ヌクレオチド、20ヌクレオチド、19ヌクレオチド、18ヌクレオチド、17ヌクレオチド、16ヌクレオチド、15ヌクレオチド)、必要に応じて12ヌクレオチド〜24ヌクレオチド、必要に応じて5ヌクレオチド〜15ヌクレオチド、必要に応じて5ヌクレオチド〜25ヌクレオチド、最も好ましくは約20〜25ヌクレオチドである。
本発明の教示に従って設計されるポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチドを含む)は、酵素的合成および固相合成の両方を含めて、当技術分野で知られている任意のオリゴヌクレオチド合成法に従って作製することができる。固相合成を実行するための様々な設備および試薬は、例えば、Applied Biosystemsから市販されている。このような合成のためのいずれかの他の手段も採用することができる。オリゴヌクレオチドの実際の合成は、十分に当業者の能力の範囲内にあり、固相化学、例えば、シアノエチルホスホラミダイト、続けて、脱保護、および、例えば、自動化トリチル−オン法またはHPLCによる精製を使用して、確立された方法により実施することができる。これらの方法は、例えば、Sambrook,J.and Russell,D.W.(2001),”Molecular Cloning:A Laboratory Manual”;Ausubel,R.M.et al.,eds.(1994,1989),”Current Protocols in Molecular Biology,” Volumes I−III,John Wiley & Sons,Baltimore,Maryland;Perbal,B.(1988),”A Practical Guide to Molecular Cloning,” John Wiley & Sons,New York;およびGait,M.J.,ed.(1984),”Oligonucleotide Synthesis”、中に詳しく記載されている。
RNA分子を含むポリヌクレオチドは、本明細書中下記でさらに記載される発現ベクターを使用して生物学的に生成することができることは理解されよう。あるいは、RNA分子を含むポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドまたは以下に示す種々修飾されたヌクレオチドを使用して化学的に合成することができる。
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは修飾ポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、当技術分野で知られている様々な方法を使用して修飾することができる。
したがって、本発明のポリヌクレオチドは所望の特徴を付与する修飾を含むように合成することができる。例えば、修飾により、安定性、標的核酸とのハイブリダイゼーション熱力学、特定の組織もしくは細胞型に対する標的化、または細胞透過性、例えば、エンドサイトーシス依存性または非依存性機序を改善することができる。修飾はまた、配列特異的を高め、およびその結果として、オフサイトターゲティングを減らすことができる。化学的修飾については、以下でより詳細に記載する。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは単一修飾を含む。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2、3、4、5個またはそれを超える修飾を含む。
例えば、本発明のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、3’から5’へのホスホジエステル連結で結合する、プリン塩基およびピリミジン塩基からなる複素環式ヌクレオシドを含むことができる。
使用されるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、本明細書中下記で幅広く記載されるように、骨格(例えば、糖リン酸骨格)、ヌクレオシド間結合または塩基のいずれかで修飾されるのが好ましい。
本発明のこの態様に従って有用である好ましいオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの具体的な例には、修飾された骨格または非天然型ヌクレオシド間結合を含有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが含まれる。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドには、下記において開示されるように、リン原子を骨格に保持するものが含まれる:米国特許第4,469,863号、同第4,476,301号、同第5,023,243号、同第5,177,196号、同第5,188,897号、同第5,264,423号、同第5,276,019号、同第5,278,302号、同第5,286,717号、同第5,321,131号、同第5,399,676号、同第5,405,939号、同第5,453,496号、同第5,455,233号、同第5,466,677号、同第5,476,925号、同第5,519,126号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,550,111号、同第5,563,253号、同第5,571,799号、同第5,587,361号、同第5,625,050号および同8,017,763号、ならびに米国特許出願公開第20100222413号。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列の5’末端または3’末端にリン修飾ヌクレオチド間結合を含む。
好ましい修飾オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド骨格には、例えば、ホスホロチオアート;キラルなホスホロチオアート;ホスホロジチオアート;ホスホトリエステル;アミノアルキルホスホトリエステル;メチルホスホナートおよび他のアルキルホスホナート(3’−アルキレンホスホナートおよびキラルなホスホナートを含む);ホスフィナート;ホスホルアミダート(3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含む);チオノホスホルアミダート;チオノアルキルホスホナート;チオノアルキルホスホトリエステル;ならびに、通常の3’−5’連結を有するボラノホスホナート、これらの2’−5’連結類似体、および、逆の極性を有するもの(この場合、ヌクレオシド単位の隣接対が、3’−5’から5’−3’に、または、2’−5’から5’−2’に連結される);ならびにホウ素ホスホネートが含まれる。上記修飾体の様々な塩、混合塩および遊離酸形態も同様に使用することができる。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列の5’末端または3’末端のヌクレオチド間結合にホスホロチオエートを含む。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列の5’末端または3’末端のヌクレオチド間結合にボラノホスフェートを含む。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列の5’末端または3’末端のヌクレオチド間結合にメチルホスホネートを含む。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド配列の5’末端または3’末端のヌクレオチド間結合にリン酸ジエステルを含む。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは糖修飾(例えば、リボース修飾)を含む。
一実施形態では、ポリヌクレオチドはリボースの2位に対応する修飾を含む。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの2’修飾ヌクレオチド、例えば、2’−デオキシ、2’−フルオロ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)、2’−フルオロアラビノオリゴヌクレオチド(FANA)、または2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)を含む。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含み、また、いくつかの実施形態では、修飾ポリヌクレオチドの全てのヌクレオチドは、2’−O−メチル修飾を含む。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド間結合および糖骨格修飾を含む。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、リン修飾ヌクレオチド間結合および糖骨格修飾(例えば、2’修飾ヌクレオチド)を含む。
代表的修飾miR−135ポリヌクレオチドとしては、配列番号194〜209が挙げられるが、これらに限定されない。
あるいは、リン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルまたはシクロアルキルのヌクレオシド間連結、ヘテロ原子およびアルキルまたはシクロアルキルの混合型ヌクレオシド間連結、または、1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子ヌクレオシド間連結または複素環ヌクレオシド間連結によって形成される骨格を有する。これらには、下記の米国特許において開示されるように、モルホリノ連結(部分的にはヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン骨格;スルフィド骨格、スルホキシド骨格およびスルホン骨格;ホルムアセチル骨格およびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチル骨格およびメチレンチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファマート骨格;メチレンイミノ骨格およびメチレンヒドラジノ骨格;スルホナート骨格およびスルホンアミド骨格;アミド骨格を有するもの;ならびに、N、O、SおよびCH2の混合成分部分を有する他のものが含まれる:米国特許第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,185,444号、同第5,214,134号、同第5,216,141号、同第5,235,033号、同第5,264,562号、同第5,264,564号、同第5,405,938号、同第5,434,257号、同第5,466,677号、同第5,470,967号、同第5,489,677号、同第5,541,307号、同第5,561,225号、同第5,596,086号、同第5,602,240号、同第5,610,289号、同第5,602,240号、同第5,608,046号、同第5,610,289号、同第5,618,704号、同第5,623,070号、同第5,663,312号、同第5,633,360号、同第5,677,437号および同第5,677,439号。
本発明に従って使用することができるその他のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、糖およびヌクレオシド間連結の両方において修飾されるものであり、すなわち、ヌクレオチド単位の骨格が新規な基により置き換えられたものである。塩基単位は、適切なポリヌクレオチド標的との相補性のために維持される。このようなオリゴヌクレオチド模倣体の一例には、ペプチド核酸(PNA)が含まれる。PNAオリゴヌクレオチドは、糖−骨格がアミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格により置き換えられたオリゴヌクレオチドを意味する。塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接的または間接的に結合される。PNA化合物の調製を教示する米国特許には、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号および同第5,719,262号が含まれるが、これらに限定されない。これらのそれぞれが参照によって本明細書中に組み込まれる。本発明において使用することができる他の骨格修飾が米国特許第6,303,374号に開示されている。
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、標的核酸と非相補性の内部(すなわち、非末端)領域中にヌクレオチドの化学的修飾を有することができる。例えば、修飾ヌクレオチドは、バルジを形成するmiRNAの領域に組み込むことができる。修飾は、例えば、リンカーによってmiRNAに結合したリガンドを含めることができる。修飾は、例えば、薬物動態学またはポリヌクレオチドの安定性を改善し、またはポリヌクレオチドの標的核酸に対するハイブリダイゼーション特性(例えば、ハイブリダイゼーション熱力学)を改善することができる。
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドのバルジ領域に組み込まれたまたはつなぎ止められた修飾またはリガンドの配向は、バルジ領域中の空間を占める向きにされる。例えば、修飾は、インターカレーターとして機能する核酸鎖またはリガンド上の修飾塩基または糖を含むことができる。これらはバルジ中に配置されるのが好ましい。インターカレーターは芳香族、例えば、多環式芳香族または複素環式芳香族化合物であってよい。多環式インターカレーターは、積層能力を有し、2、3、または4個の縮合環を有する系を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドのバルジ領域に組み込まれたまたはつなぎ止められた修飾またはリガンドの配向は、バルジ領域中の空間を占める向きにされる。この配向は、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性、または他の場合に望ましい特性の改善を容易にする。
一実施形態では、ポリヌクレオチドはアミノグリコシドリガンドを含むことができ、これは、ポリヌクレオチドに改善されたハイブリダイゼーション特性または改善された配列特異性を持たせることができる。代表的アミノグリコシドには、グリコシル化ポリリジン;ガラクトシル化ポリリジン;ネオマイシンB;トブラマイシン;カナマイシンA;およびアミノグリコシドのアクリジンコンジュゲート、例えば、ネオ−N−アクリジン、ネオ−S−アクリジン、ネオ−C−アクリジン、トブラ−N−アクリジン、およびKanaA−N−アクリジンなどが含まれる。アクリジン類似体の使用により、配列特異性を高めることができる。例えば、ネオマイシンBは、DNAに比べて、RNAに対する高親和性を有するが、低配列特異性である。いくつかの実施形態では、アミノグリコシドリガンドのグアニジン類似体(グアニジノグリコシド)はポリヌクレオチド薬剤につなぎ止められる。グアニジノグリコシドでは、アミノ酸上のアミン基はグアニジン基と交換される。グアニジン類似体の結合により、ポリヌクレオチドの細胞透過性を高めることができる。
ポリヌクレオチドは、標的RNAと二本鎖を形成するのに十分な相補性を有する領域(例えば、7、8、9、10、または11ヌクレオチド長さの領域)により挟まれた非相補性領域(例えば、3、4、5、または6ヌクレオチド長さの領域)を含むように設計および合成することができる。
標的に対するヌクレアーゼ耐性および/または結合親和性を高めるために、本発明のポリヌクレオチドは、2’−O−メチル、2’−フッ素、2’−O−メトキシエチル、2’−O−アミノプロピル、2’−アミノ、および/またはホスホロチオエート結合を含めることができる。ロックド核酸(LNA)、例えば、リボース環が2’−O原子と4’−C原子を連結するメチレン架橋により「ロック」された核酸類似体、エチレン核酸(ENA)、例えば、2’−4’−エチレン架橋核酸、および2−アミノ−A、2−チオ(例えば、2−チオ−U)、Gクランプ修飾などの特定のヌクレオベース修飾の包含により、同様に標的に対する結合親和性を高めることができる。オリゴヌクレオチド骨格中へのピラノース糖の包含もまた、ヌクレオチド鎖切断開裂を減らすことができる。
3’カチオン性基の組み込みにより、またはヌクレオシドを3’−3’連結を有する末端で反転することにより、ポリヌクレオチドをさらに修飾することができる。別の選択肢としては、3’−末端をアミノアルキル基、例えば、3’C5−アミノアルキル dTでブロックすることができる。その他の3’コンジュゲートは、3’−5’エキソヌクレアーゼ開裂を抑制することができる。理論に束縛されるものではないが、3’コンジュゲート、例えば、ナプロキセンまたはイブプロフェンは、エキソヌクレアーゼを、オリゴヌクレオチドの3’末端への結合から立体的にブロックすることにより、エキソヌクレアーゼ開裂を抑制することができる。たとえ小さいアルキル鎖、アリール基、もしくは複素環コンジュゲートまたは修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)であっても、3’−5’−エキソヌクレアーゼをブロックすることができる。
5’−末端を、アミノアルキル基、例えば、5’−O−アルキルアミノ置換基でブロックすることができる。その他の5’コンジュゲートは、5’−3’エキソヌクレアーゼ開裂を抑制することができる。理論に束縛されるものではないが、5’コンジュゲート、例えば、ナプロキセンまたはイブプロフェンは、エキソヌクレアーゼを、オリゴヌクレオチドの5’末端への結合から立体的にブロックすることにより、エキソヌクレアーゼ開裂を抑制することができる。たとえ小さいアルキル鎖、アリール基、もしくは複素環コンジュゲートまたは修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコースなど)であっても、3’−5’−エキソヌクレアーゼをブロックすることができる。
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、標的化を改善する修飾、例えば、本明細書で記載の標的化修飾を含む。一本鎖オリゴヌクレオチド薬剤を特定の細胞型に標的化する修飾の例には、炭水化物糖、例えば、N−アセチルガラクトサミン、マンノース;ビタミン、例えば、葉酸;その他のリガンド、例えば、RGDおよびRGD模倣体;およびナプロキセン、イブプロフェンまたはその他の既知のタンパク質結合分子を含む小分子が挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野において既知の手順を使用した化学合成および/または酵素連結反応を使って構築することができる。例えば、ポリヌクレオチドは化学的に合成することができる。天然に存在するヌクレオチドまたは分子の生物学的安定性を高めるまたはポリヌクレオチドと標的核酸との間で形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された、様々に修飾されたヌクレオチドを使って化学的に合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドはまた、塩基修飾または塩基置換を含んでもよい。本明細書中で使用される場合、「非修飾」塩基または「天然」塩基には、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびに、ピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。「修飾」塩基には、限定されないが、他の合成塩基および天然塩基、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C);5−ヒドロキシメチルシトシン;キサンチン;ヒポキサンチン;2−アミノアデニン;アデニンおよびグアニンの6−メチル誘導体および他のアルキル誘導体;アデニンおよびグアニンの2−プロピル誘導体および他のアルキル誘導体;2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン;5−ハロウラシルおよびシトシン;5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン;6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン;5−ウラシル(シュードウラシル);4−チオウラシル;8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシおよび他の8−置換されたアデニンおよびグアニン;5−ハロ、特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換されたウラシルおよびシトシン;7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン;8−アザグアニンおよび8−アザアデニン;7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン;ならびに、3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンなどが含まれる。追加の修飾塩基としては、下記で開示のものが含まれる:米国特許第3,687,808号;Kroschwitz,J.I.,ed.(1990),”The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,” 858−859ページ,John Wiley & Sons;Englisch et al.(1991),”Angewandte Chemie,” International Edition,30,613;およびSanghvi,Y.S.,”Antisense Research and Applications,” Chapter 15,289−302ページ,S.T.Crooke and B.Lebleu,eds.,CRC Press,1993。このような修飾塩基は、本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を増大させるために特に有用である。これらには、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン、ならびに、2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含むN−2−置換プリン、N−6−置換プリンおよびO−6−置換プリンが含まれる。5−メチルシトシン置換は、核酸二本鎖の安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されており(Sanghvi,Y.S.et al.(1993),”Antisense Research and Applications,” 276−278ページ,CRC Press,Boca Raton)、現時点では好ましい塩基置換であり、より具体的には、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合に好ましい。
一実施形態では、修飾ポリヌクレオチドは、薬剤、例えば、コレステロールの安定性、分布または細胞取り込みを改善するために選択されたリガンドに結合するようにさらに修飾される。
したがって、ポリヌクレオチドは非ヌクレオチド部分、例えば、コレステロール部分を含むように修飾することができる。非ヌクレオチド部分(例えば、コレステロール部分)を、例えば、ポリヌクレオチドの3’または5’末端に結合することができる。
特定の実施形態では、本発明のmiRNAポリヌクレオチドは、配列番号58〜94で示される核酸配列を有する(表1A参照)。
(表1A)
表1A:miRNAポリヌクレオチド配列
本明細書中上記で述べられているように、また、下記の実施例セクションにおいて示されるように、マイクロRNAは、特定の前駆体(すなわち、プレ−miRNA)に由来するプロセッシングされた分子であり、特定のmiRNA機能のアップレギュレーションを、特定のmiRNA前駆体分子を使用して達成することができる。
特定の実施形態では、miR−135はmiR−135aまたはmiR−135bを含む。
特定の実施形態では、本発明の前駆体miR−135ポリヌクレオチドは、配列番号58〜60で示される核酸配列を有する。
特定の実施形態では、本発明の成熟型miR−135ポリヌクレオチドは、配列番号61〜62で示される核酸配列を有する。
特定の実施形態では、本発明の成熟型miR−135*ポリヌクレオチドは、配列番号192〜193で示される核酸配列を有する。
同様に意図されるものが、miRNAおよびその前駆体に対して相同的な配列である。相同性のレベルは、成熟型miRNAについては比較的高いものとするべきであるが、配列変化が、成熟型miRに対応する核酸セグメントではなくヘアピン配列においてである限り、前駆体レベルではより大きな自由度が許容される(例えば、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上)。
そのような前駆体ポリヌクレオチド薬剤は典型的には、発現構築物の一部として標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)に投与される。この場合、ポリヌクレオチド薬剤は、標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)におけるマイクロRNAの発現を構成的または誘導可能な様式で行わせることができるシス作用調節エレメント(例えば、プロモーター)の制御下で核酸構築物中に連結される。
本発明のマイクロRNAポリヌクレオチド薬剤の例には、miR−15(例えば、GenBank受入番号NR_029485)、miR−19(例えば、GenBank受入番号NR_029489.1)、miR−26(例えば、GenBank受入番号NR_029500および同NR_029499)、miR−27(例えば、GenBank受入番号NR_029501)、miR−135(例えば、GenBank受入番号NR_029677.1、NR_029678.1、NR_029893.1)、miR−335(例えば、GenBank受入番号NR_029899.1)、miR−181(例えば、GenBank受入番号NR_029611.1)およびmiR−182(例えば、GenBank受入番号NR_029614)が含まれるが、これらに限定されない。
そのような前駆体ポリヌクレオチド薬剤は典型的には、発現構築物の一部として標的細胞(例えば、神経膠細胞、神経叢(CP)細胞、幹細胞または分化幹細胞)に投与される。この場合、ポリヌクレオチド薬剤は、標的細胞(例えば、神経膠細胞、CP細胞、幹細胞または分化幹細胞)におけるマイクロRNAの発現を構成的または誘導可能な様式で行わせることができるシス作用調節エレメント(例えば、プロモーター)の制御下で核酸構築物中に連結される。
ニューロン細胞特異的プロモーターの例には、ニューロン特異的エノラーゼ遺伝子プロモーター、シナプシンプロモーター、強化シナプシンプロモーター、カルシウムカルモジュリンプロモーターおよびThy1プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
代表的神経膠細胞特異的プロモーターには、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーターが含まれる。
脈絡膜層神経叢特異的プロモーターの例としては、2型コルチコトロピン放出因子受容体のβスプライスバリアント(CRFR2β)プロモーター、Gタンパク質共役受容体125(GPR125)プロモーターおよびトランスサイレチンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、プロモーター配列(例えば、脈絡叢特異的プロモーター)は、核酸構築物上のポリヌクレオチド配列(例えば、miR−135ポリヌクレオチド配列)の3’に配置され、その発現は構成的であるが、組織特異性である。
別の実施形態では、脈絡叢特異的プロモーター配列は、核酸構築物上のポリヌクレオチド配列(例えば、miR−135ポリヌクレオチド配列)に対して配置され、その発現は組織特異性であるが、また、外因的に調節可能な方式で制御可能でもある。
対象のポリヌクレオチドが脈絡叢の細胞中で特異的に、および外因的に制御可能な方式の両方で発現される事を確実にするために、核酸構築物は、脈絡叢特異的プロモーターの制御下でトランス活性化因子をコードするポリヌクレオチドを含むように設計することができる。ポリヌクレオチドは、誘導性プロモーターの制御下で、同じ核酸構築物中に、または追加の構築物中に挿入することができる。誘導因子と組み合わせたトランス活性化因子は、誘導性プロモーター由来の発現を調節するように作用する。
本発明で用いるのに好適な誘導性プロモーターは、ポリヌクレオチド配列の転写を指示することが可能な応答エレメントであるのが好ましい。適切な応答エレメントは、例えば、テトラサイクリン応答エレメント(例えば、GossenとBujardにより記載されているもの(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−551,1992));エクジソン誘導性(ectysone−inducible)応答エレメント(No D et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.93:3346−3351,1996);Mayoらにより記載されているものなどの金属イオン応答エレメント(Cell.29:99−108,1982);Brinsterら(Nature 296:39−42,1982)およびSearleら(Mol.Cell.Biol.5:1480−1489,1985);Nouerらにより記載されているものなどのヒートショック応答エレメント(Heat Shock Response,ed.Nouer,L.,CRC,Boca Raton,Fla.,pp167−220,1991);またはLeeらにより記載されているものなどのホルモン応答エレメント(Nature 294:228−232,1981);Hynesら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:2038−2042,1981);Klockら(Nature 329:734−736,1987);およびIsraelとKaufman(Nucl.Acids Res.17:2589−2604,1989)であってよい。好ましくは、応答エレメントはエクジソン誘導性応答エレメントであり、より好ましくは、応答エレメントはテトラサイクリン応答エレメントである。
心臓細胞特異的プロモーターの例には、心臓NCX1プロモーターおよびα−ミオシン重鎖(αMHC)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の発現構築物はまた、当該ベクターを真核生物における複製および組み込みを好適にするさらなる配列を含むことができる(例えば、シャトルベクター)。典型的なクローニングベクターは、転写および翻訳開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー)、ならびに、転写および翻訳ターミネーター(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。本発明の発現構築物はさらにエンハンサーを含むことができ、これは、プロモーター配列に対して近位または遠位に位置してよく、プロモーター配列からの転写をアップレギュレーションするように機能することができる。
エンハンサーエレメントは、連結されている同種プロモーターまたは異種プロモーターからの転写を1,000倍にまで刺激することができる。エンハンサーは、転写開始部位の下流側または上流側に置かれたときに活性である。ウイルスに由来する多くのエンハンサーエレメントは広範な宿主範囲を有しており、また、様々な組織において活性である。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの細胞型に対して好適である。本発明に好適である他のエンハンサー/プロモーターの組合せには、ポリオーマウイルスまたはヒトもしくはマウスのサイトメガロウイルス(CMV)、および、様々なレトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルスまたはラウス肉腫ウイルス、および、HIVなど)から得られる長い縦列反復(LTR)に由来する組合せが含まれる。Gluzman,Y.and Shenk,T.,eds.(1983).Enhancers and Eukaryotic Gene Expression,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照されたい。この文献は参照により本明細書中に組み込まれる。
ポリアデニル化配列もまた、検出可能な部分の発現効率を増大させるために本発明の発現構築物に加えることができる。正確で効果的なポリアデニル化のために、2つの異なった配列エレメントが必要となる:ポリアデニル化部位の下流側に位置するGUリッチ配列またはUリッチ配列、および、この部位の11〜30ヌクレオチド上流側に位置する6ヌクレオチドの高度に保存された配列、すなわち、AAUAAA。本発明に好適な終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルには、SV40に由来するシグナルが含まれる。
既に記載された実施形態に加えて、本発明の発現構築物は典型的には、クローン化された核酸の発現レベルを増大させるために、または、組換えDNAを有する細胞の特定を容易にするために意図される他の特化されたエレメントを含有することができる。例えば、いくつかの動物ウイルスは、許容細胞型におけるウイルスゲノムの染色体外複製を促進するDNA配列を含有する。これらのウイルスレプリコンを有するプラスミドは、適切な因子が、プラスミドで運ばれる遺伝子、または、宿主細胞のゲノムとともに運ばれる遺伝子によって提供される限り、エピソームとして複製される。
本発明の発現構築物は真核生物レプリコンを含んでも、または含まなくてもよい。真核生物レプリコンが存在する場合は、ベクターは、真核生物細胞における増幅を、適切な選択マーカーを使用して行うことができる。構築物が真核生物レプリコンを含まない場合には、エピソーム増殖を行うことができない。代わりに、組換えDNAが、操作された細胞のゲノムに一体化され、そこでプロモーターが、所望の核酸の発現を指示する。
核酸構築物は、適切な遺伝子送達ビークル/方法(遺伝子導入、形質導入など)および適切な発現系を使用して本発明の標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)に導入することができる。
哺乳動物発現ベクターの例には、pcDNA3、pcDNA3.1(+/−)、pGL3、pZeoSV2(+/−)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41およびpNMT81(これらはInvitrogenから入手可能である)、pCI(これはPromegaから入手可能である)、pMbac、pPbac、pBK−RSVおよびpBK−CMV(これらはStrategeneから入手可能である)、pTRES(これはClontechから入手可能である)、ならびに、それらの誘導体が含まれるが、これらに限定されない。
真核生物ウイルス(例えば、レトロウイルスなど)から得られる調節エレメントを含有する発現ベクターもまた使用することができる。SV40ベクターには、例えば、pSVT7およびpMT2が含まれる。ウシパピローマウイルスに由来するベクターには、pBV−1MTHAが含まれ、エプスタイン・バールウイルスに由来するベクターには、pHEBOおよびp2O5が含まれる。他の例示的なベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo−5およびバキュロウイルスpDSVEが含まれる。
発現構築物は、ウイルスであってもよい。ウイルス構築物の例には、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、レンチウイルスベクターおよびヘルペスウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されない。
レトロウイルスベクターは、本発明との使用のために特に好適である一群のベクターを表す。欠陥レトロウイルスベクターが、遺伝子の哺乳動物細胞への移入に定常的に使用されている(総説については、Miller,A.D.(1990)、Blood、76、271参照)。本発明のポリヌクレオチドを含む組換えレトロウイルスを、よく知られている分子技術を使用して構築することができる。レトロウイルスのゲノムの一部を除去して、レトロウイルス複製装置を欠陥にし、その後、この複製欠陥レトロウイルスをビリオンにパッケージングすることができ、このビリオンを使って、標準的な技術を用いながら、ヘルパーウイルスの使用により標的細胞に感染させることができる。組換えレトロウイルスを作製するため、および、細胞にウイルスをインビトロまたはインビボで感染させるためのプロトコルを、例えば、Ausubel et al.(1994)Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates,Inc.& John Wiley & Sons,Inc.)中で見つけることができる。レトロウイルスは、様々な遺伝子を多くの異なる細胞型(ニューロン細胞、上皮細胞、内皮細胞、リンパ球、筋芽細胞、肝細胞および骨髄細胞を含む)に導入するために使用されてきた。
一実施形態では、レンチウイルスベクター(レトロウイルスベクターの1つのタイプ)が本教示に従って使用される。レンチウイルスベクターは、分裂中の細胞と同様に、非分裂細胞のゲノムに組み込むそれらの能力のためにベクターとして広範囲に使用されている。これはRNAの形態のウイルスのゲノムが、ウイルスが細胞に進入したときに逆転写されて、DNAを産生し、このDNAがその後、ウイルスインテグラーゼ酵素によってゲノムのランダムな位置に挿入される。ベクター(プロウイルス)はゲノムに留まり、細胞が分裂するとき、細胞の子孫に伝えられる。安全性の理由から、レンチウイルスベクターは、それらの複製に必要な遺伝子を決して含まない。レンチウイルスを作製するために、いくつかのプラスミドが、いわゆるパッケージング細胞株(一般にはHEK293)に遺伝子導入される。1つまたは複数のプラスミド(これらは一般にパッケージングプラスミドと呼ばれる)により、ビリオンタンパク質、例えば、カプシドおよび逆転写酵素などがコードされる。別のプラスミドは、ベクターによって送達される遺伝物質を含有する。遺伝物質は、一本鎖のRNAウイルスゲノムを産生するために転写され、また、Ψ(プシー)配列の存在によって印が付けられる。この配列を使って、ゲノムがビリオン中にパッケージングされる。
本発明のポリヌクレオチド配列を神経膠細胞または心臓細胞に導入し、当該細胞において発現させるための好適なレンチウイルスベクターの具体的な一例は、レンチウイルスpLKO.1ベクターである。
本発明のこの態様により使用することができる別の好適な発現ベクターは、アデノウイルスベクターである。アデノウイルスは、広範囲に研究され、定常的に使用されている遺伝子移入ベクターである。アデノウイルスベクターの重要な利点には、分裂細胞および休止細胞の比較的大きい形質導入効率、広範囲の上皮組織に対する固有の指向性、ならびに、高力価物の容易な製造が含まれる(Russel,W.C.(2000),J Gen Virol,81,57〜63)。アデノウイルスDNAは核に輸送されるが、そこに組み込まれることはない。したがって、アデノウイルスベクターによる変異誘発の危険性が最小限に抑えられ、一方で、短期間の発現が、癌細胞を処置するために特に適している。実験的な癌処置において使用されるアデノウイルスベクターが、Sethらの(1999)“Adenoviral vectors for cancer gene therapy,” pp.103−120,P.Seth,ed.,Adenoviruses:Basic Biology to Gene Therapy,Landes,Austin,TX)により記載されている。
好適なウイルス発現ベクターはまた、レトロウイルス成分およびアデノウイルス成分を組み合わせたキメラアデノウイルス/レトロウイルスベクターであってよい。このようなベクターは、腫瘍細胞を形質導入するための従来型の発現ベクターよりも効率的な場合がある(Pan et al.(2002).Cancer Letts 184,179−188)。
各種方法を使って、本発明の核酸構築物を哺乳動物細胞に導入することができる。このような方法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory,New York(1989,1992),in Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Md.(1989),Chang et al.,Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,Mich.(1995),Vega et al.,Gene Targeting,CRC Press,Ann Arbor Mich.(1995),Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988)およびGilboa et at.[Biotechniques 4(6):504−512,1986]に一般的に記載されており、例えば、組換えウイルスベクターの安定なまたは一時的な遺伝子導入、リポフェクション、電気穿孔および感染を含む。さらに、ポジティブ−ネガティブ選択法に関する米国特許第5,464,764号および同第5,487,992号を参照されたい。
本発明の発現構築物をウイルス感染によって標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)に導入するとき、感染のためのウイルス用量は、少なくとも103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、1014、1015またはそれを超えるpfuまたはウイルス粒子である。
血液脳関門を回避するために、本発明の構築物を脳内に(脳室を介して)、嗅球中に(鼻腔内投与を介して)、脊髄を介して(例えば、硬膜外カテーテルにより)または脈絡叢中で発現させることにより、直接投与することができる。これに関しては本明細書でさらに詳述される。
あるいは、脂質に基づく系を、これらの本発明の構築物の標的細胞(例えば、神経膠細胞などの脳細胞)への送達に使用することができる。
リポソームには、一定量を包む脂質二重層から構成される任意の合成(すなわち、天然に存在しない)構造物が含まれる。リポソームは、エマルション、フォーム、ミセル、不溶性単分子膜、液晶、リン脂質分散物およびラメラ層などを含む。リポソームは、当技術分野における公知方法のいずれかによって調製することができる[Monkkonen,J.et al.,1994,J.Drug Target,2:299−308;Monkkonen,J.et al.,1993,Calcif.Tissue Int.,53:139−145;Lasic D D.,Liposomes Technology Inc.,Elsevier,1993,63−105.(chapter 3);Winterhalter M,Lasic D D,Chem Phys Lipids,1993 September;64(1−3):35−43]。リポソームは、正荷電、中性または負荷電であってよい。単核食細胞系(MPS)取り込みのために、リポソームは疎水性とすることができ、これは、リポソーム膜の(例えば、ポリエチレングリコール結合脂質および親水性粒子の使用による)親水性での遮蔽がMPS取り込みを受けにくくする場合があるからである。必要に応じて、リポソームが、立体的に遮蔽された脂質(例えば、ガングリオシド−GM1およびホスファチジルイノシトールなど)を含まず、これは、これらの脂質がMPS取り込みを妨げるからである。
リポソームは単一脂質層であっても、または、多層状であってもよい。治療剤が親水性である場合、その送達を、大きい単層小胞を使用してさらに改善することができ、これは、それらの内部体積がより大きいからである。逆に、治療剤が疎水性である場合、その送達を、多層小胞を使用してさらに改善することができる。あるいは、治療剤(例えば、オリゴヌクレオチド)は脂質二重層を透過することができず、結果として、リポソーム表面に吸着されたままとなるであろう。この場合には、リポソームの表面積を増大することにより、治療剤の送達をさらに改善することができる。本発明による好適なリポソームは非毒性のリポソームであり、例えば、ホスファチジルコリンホスホグリセロールおよびコレステロールから調製されるリポソームである。使用されるリポソームの直径は0.1〜1.0ミクロンの範囲であってよい。しかしながら、食作用細胞による食作用に好適である他のサイズ範囲も使用することができる。リポソームのサイズ調整を行うために、ホモジナイゼーションが使用される場合があり、これは、大きいリポソームをより小さいリポソームに細分化するための剪断エネルギーに依拠する。都合よく使用することができるホモジナイザーには、Microfluidics(Boston,MA)によって製造されるマイクロフルイダイザーが含まれる。典型的なホモジナイゼーション手順では、リポソームは、選択されたリポソームサイズが観測されるまで、標準的な乳化ホモジナイザーに通して再循環される。粒子サイズ分布を従来のレーザービーム粒子サイズ識別によってモニターすることができる。小細孔のポリカルボナート膜または非対称セラミック膜を通したリポソームの押出しが、リポソームサイズを比較的明確なサイズ分布にまで小さくするための効果的な方法である。典型的には、懸濁物が、所望されるリポソームサイズ分布が達成されるまで1回または複数回、その膜を通して循環される。リポソームが、リポソームサイズを徐々に減少させるために、細孔が順次小さくなる膜を通して押し出してもよい。
当技術分野で知られているいずれかの方法を使って、マイクロRNAポリヌクレオチド薬剤(miR−135またはその前駆物質)をリポソームに組み込むことができる。例えば、マイクロRNAポリヌクレオチド薬剤(miR−135またはその前駆物質)がリポソーム内にカプセル化することができる。あるいは、マイクロRNAポリヌクレオチド薬剤がリポソームの表面に吸着されてもよい。本発明のリポソームに医薬品を組み込むために使用することができる他の方法には、Alfonsoら[The science and practice of pharmacy,Mack Publishing,Easton Pa 19th ed.,(1995)]およびKulkarni et al.,[ J.Microencapsul.1995,12(3)229−46]によって記載された方法がある。
本発明の方法において使用されるリポソームは、血液関門を通過することができる。したがって、一実施形態では、本発明のリポソームは、血液関門を標的とする多糖(例えば、マンノース)をその膜部分に含まない。任意選択で、本発明のリポソームは、リポソームを血液関門上の受容体に対して標的化するペプチドをその膜部分に含まない。そのようなペプチドの例には、トランスフェリン、インスリン、IGF−1、IGF−2、抗トランスフェリン受容体抗体、抗インスリン受容体抗体、抗IGF−1受容体抗体および抗IGF−2受容体抗体が含まれるが、これらに限定されない。
本発明に特に好適するリポソームを特定するために、例えば、米国特許出願公開第20040266734号および同第20040266734号、ならびに、Danenbergらの、Journal of cardiovascular pharmacology 2003,42:671−9;Circulation 2002,106:599−605;Circulation 2003,108:2798−804に記載されたアッセイなどのスクリーニングアッセイを行うことができる。
本発明のこの態様より使用することができる他の非脂質系ベクターには、ポリリシン、デンドリマーおよびガゴマーが含まれるが、これらに限定されない。
用いられる方法または構築物にかかわらず、上記で詳述されたように、マイクロRNAをコードする核酸構築物を含む単離細胞が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「単離された」は、天然の環境から、例えば、人体から少なくとも部分的に分離されたことを意味する。
一実施形態では、シス作用調節エレメントの転写制御下で、少なくとも1つのマイクロRNAまたはその前駆体を発現する核酸構築物を含む単離細胞が提供され、該マイクロRNAは、miR−135、miR−335、miR−15、miR−19、miR−26、miR−27、miR−181およびmiR−182からなる群から選択される。
特定の実施形態では、シス作用調節エレメントの転写制御下で、少なくとも1つのマイクロRNAまたはその前駆体を発現する核酸構築物を含む単離神経膠細胞が提供され、該マイクロRNAは、miR−135、miR−335、miR−26およびmiR−182からなる群から選択される。
特定の実施形態では、シス作用調節エレメントの転写制御下で、miR−19またはその前駆体を発現する核酸構築物を含む単離細胞が提供される。
特定の実施形態では、シス作用調節エレメントの転写制御下で、miR−15またはその前駆体を発現する核酸構築物を含む単離細胞が提供される。
特定の実施形態では、細胞は神経膠細胞または心臓細胞である。
特定の実施形態では、神経膠細胞はセロトニン作動性ニューロンなどのニューロンである。
マイクロRNAまたはその前駆体は、細胞、すなわち、本発明の標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)にインビボで(すなわち、生物または対象の体内に)、または、エクスビボで(例えば、組織培養において)与えられることになる。細胞がエクスビボで処置される場合、方法は好ましくは、このような細胞を個体に戻すステップを含む(エクスビボ細胞治療)。
エクスビボ治療のために、細胞(例えば、乏突起膠細胞などの神経膠細胞、CP細胞、幹細胞および/または分化幹細胞)は好ましくは、本発明の薬剤(例えば、マイクロRNA、例えば、miR−135もしくはその前駆物質またはマイクロRNA、例えば、miR−135をコードするポリヌクレオチドもしくはその前駆物質)により処置され、その後、その細胞が、それを必要としている対象に投与される。
本発明のエクスビボ処置細胞の投与を、任意の好適な導入経路、例えば、静脈内、腹腔内、腎臓内、胃腸管内、皮下、経皮、筋肉内、皮内、クモ膜下腔内、硬膜外および直腸などを使用して行うことができる。現状好ましい実施形態では、本発明のエクスビボ処置細胞は、静脈内、腎臓内、胃腸管内および/または腹腔内投与を使用して個体に導入することができる。
本発明の細胞(例えば、乏突起膠細胞などの神経膠細胞、CP細胞、幹細胞、分化幹細胞および/または心臓細胞)は、ヒト死体またはヒトドナーなどの自己供給源または同種供給源から得ることができる。非自己細胞は、身体に投与されたときには免疫反応を誘導する可能性があるので、いくつかの取り組みが、非自己細胞を拒絶する可能性を軽減するために開発されている。これらには、レシピエントの免疫系を抑制すること、または、非自己細胞を移植前に、免疫隔離する半透過性膜でカプセル化することが含まれる。
カプセル化技術は一般には、小さい球状ビークルを伴うマイクロカプセル化として、また、より大きい平坦シートおよび中空繊維膜を伴うマクロカプセル化として分類される(Uludag,H.et al.(2000).Technology of mammalian cell encapsulation.Adv Drug Deliv Rev 42,29−64)。
マイクロカプセルの調製方法は、当技術分野では知られており、例えば、下記の文献において開示されている方法が含まれる:Lu,M.Z.et al.(2000).Cell encapsulation with alginate and alpha−phenoxycinnamylidene−acetylated poly(allylamine).Biotechnol Bioeng 70,479−483;Chang,T.M.and Prakash,S.(2001)Procedures for microencapsulation of enzymes,cells and genetically engineered microorganisms.Mol Biotechnol 17,249−260;およびLu,M.Z.,et al.(2000).A novel cell encapsulation method using photosensitive poly(allylamine alpha−cyanocinnamylideneacetate).J Microencapsul 17,245−521。
例えば、マイクロカプセルは、修飾コラーゲンを、メチルアクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、メタクリル酸(MAA)およびメタクリル酸メチル(MMA)のターポリマー殻との複合体(これは2〜5μmのカプセル厚さを生じる)中で使用して調製される。このようなマイクロカプセルはさらに、負荷電の滑らかな表面を与えるために、および、血漿タンパク質の吸収を最小限に抑えるために、さらに2〜5μmのターポリマー殻によりカプセル化することができる(Chia,S.M.et al.(2002).Multi−layered microcapsules for cell encapsulation.Biomaterials 23,849−856)。
他のマイクロカプセルは、海洋多糖であるアルギン酸塩(Sambanis,A.(2003).Encapsulated islets in diabetes treatment.Diabetes Thechnol Ther 5,665−668)またはその誘導体をベースにしたものである。例えば、マイクロカプセルを、塩化カルシウム存在下で、ポリアニオンのアルギン酸ナトリウムおよびセルロース硫酸ナトリウムと、ポリカチオンのポリ(メチレン−コ−グアニジン)塩酸塩との間での高分子電解質複合体化によって調製することができる。
細胞のカプセル化は、より小さいカプセルが使用されるときには改善されることは理解されよう。したがって、例えば、カプセル化された細胞の品質管理、機械的安定性、拡散特性およびインビトロ活性は、カプセルサイズが1mmから400μmに縮小されたときに改善された(Canaple,L.et al.(2002).Improving cell encapsulation through size control.J Biomater Sci Polym Ed 13,783−96)。さらに、7nmもの小さい良好に制御された細孔サイズ、調整された表面化学、および、精密な微小構造を有するナノ多孔性バイオカプセルは、細胞のための微小環境を首尾良く免疫隔離することが明らかになった(Williams,D.(1999).Small is beautiful:microparticle and nanoparticle technology in medical devices.Med Device Technol 10,6−9;およびDesai,T.A.(2002).Microfabrication technology for pancreatic cell encapsulation.Expert Opin Biol Ther 2,633−646を参照されたい)。
エクスビボ処置と併せて使用することができる免疫抑制剤の例には、メトトレキサート、シクロホスファミド、シクロスポリン、シクロスポリンA、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン(スルファサラゾピリン)、金塩、D−ペニシラミン、レフルノミド、アザチオプリン、アナキンラ、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、エタネルセプト、TNFアルファ遮断薬、炎症性サイトカインを標的とする生物製剤、および、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が含まれるが、これらに限定されない。NSAIDの例には、アセチルサリチル酸、サリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、サリチル酸マグネシウム、サルサラート、サリチル酸ナトリウム、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、ナプロキセン、ナブメトン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、Cox−2阻害剤およびトラマドールが含まれるが、これらに限定されない。
インビボ治療のために、薬剤(例えば、マイクロRNA、例えば、miR−135、その前駆物質またはマイクロRNAもしくはその前駆物質をコードするポリヌクレオチド)が、それ自体で、または、医薬組成物の一部として対象に投与される。好ましくは、このような組成物は、血液脳関門(BBB)の通過を可能にするように処方される。
中枢神経系(CNS)への薬物送達のための従来の取り組みには、下記のことが含まれる:神経外科的戦略(例えば、脳内注射または脳室内注入);BBBの内在性輸送経路の1つを利用する試みでの、薬剤の分子的操作(例えば、内皮細胞表面分子に対する親和性を有する輸送ペプチドを、自身でBBBを越えることができない薬剤との組合せで含むキメラな融合タンパク質の作製);薬剤の脂質溶解性を増大させるために設計される薬理学的戦略(例えば、水溶性薬剤を脂質キャリアまたはコレステロールキャリアにコンジュゲートすること);および、BBBの完全性の、(頸動脈内へのマンニトール溶液の注入または生物学的活性剤(例えば、アンギオテンシンペプチドなど)の使用から生じる)高浸透圧破壊による一時的な破壊。
BBBの背後への薬物送達の方法には、脳内埋め込み(例えば、針によるものなど)および対流増進送達が含まれる。マンニトールを、BBBの迂回に使用することができる。同様に、粘膜投与(例えば、鼻腔投与)を、BBBを迂回するために使用することができる。
本発明のマイクロRNAポリヌクレオチド薬剤はまた、好適なキャリアまたは賦形剤と混合される医薬組成物として生物に投与することができる。
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に記載される有効成分の1つまたは複数と、例えば、生理学的に好適なキャリアおよび賦形剤などの他の化学的成分との調製物を意味する。医薬組成物の目的は、生物に対する化合物の投与を容易にすることである。
本明細書中において、用語の「有効成分」は、生物学的効果を説明することができるペプチドを意味する。(例えば、マイクロRNA、例えば、miR−135、その前駆物質またはマイクロRNAもしくはその前駆物質をコードするポリヌクレオチド)。
以降では、表現「生理学的に許容可能なキャリア」および表現「薬学的に許容可能なキャリア」は、同義に使用できるが、生物に対する著しい刺激を生じさせず、投与された化合物の生物学的な活性および性質を妨げないキャリアまたは希釈剤を意味する。アジュバントはこれらの表現に包含される。
本明細書中において、用語「賦形剤」は、有効成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を意味する。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが挙げられる。
薬物の処方および投与のための技術は「Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co.,Easton,PA,latest edition」に見出すことができる。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
好適な投与経路には、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達、または非経口送達(これには、筋肉内注射、皮下注射および髄内注射、ならびに、クモ膜下注射、直接的な脳室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻内注射または眼内注射が含まれる)を含めることができる。
あるいは、例えば、患者の組織領域に直接的に医薬組成物の注射により、全身的な方法ではなく局所的に医薬組成物を投与することができる。
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において周知のプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、湿式粉砕、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥のプロセスによって製造することができる。
従って、本発明により使用される医薬組成物は、薬剤として使用することができる調製物への有効成分の加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む1種または複数種の生理学的に許容可能なキャリアを使用して従来の方式で処方することできる。適切な処方は、選ばれた投与経路に依存する。
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液中で、好ましくは生理学的に適合する緩衝液、例えば、例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的食塩緩衝液中で処方することができる。経粘膜投与の場合、浸透されるバリヤーに対して適切な浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は当該技術分野において既知である。
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を当該技術分野において周知の薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせることによって容易に処方することができる。このようなキャリアは、医薬組成物を、患者が経口摂取するための、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤および懸濁物などとして処方することを可能にする。経口使用される薬理学的調製物は、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、錠剤または糖衣錠コアを得るために、必要に応じ、好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理して作製することができる。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容可能なポリマーである。必要に応じ、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
糖衣錠コアには、好適なコーティングが設けられる。この目的のために、濃縮糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含むことができる。色素または顔料を、活性化合物の量を特定するために、または活性化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに加えることができる。
経口使用することができる医薬組成物としては、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤、例えば、グリセロールまたはソルビトールから作製された軟いシールされたカプセルが挙げられる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(例えば、ラクトースなど)、結合剤(例えば、デンプンなど)、滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定化剤との混合として有効成分を含有することができる。軟カプセルでは、有効成分は、好適な液体、例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールに溶解または懸濁することができる。さらに、安定化剤が加えてもよい。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路について好適な投薬量でなければならない。
口内投与の場合、組成物は、従来の方法で処方された錠剤またはトローチ剤の形態を取ることができる。
鼻吸入による投与の場合、本発明による使用のための有効成分は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー形の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するためのバルブを備えることによって決定することができる。ディスペンサーにおいて使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジは、化合物および好適な粉末基剤、例えば、ラクトースまたはデンプンの粉末混合物を含めて処方することができる。
本明細書中に記載される医薬組成物は、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与用として処方することができる。注射用製剤は、場合により保存剤が添加された、例えば、アンプルまたは複数回投与容器における単位剤形で提供することができる。組成物は、油性ビークルまたは水性ビークル中の懸濁剤または溶液剤またはエマルションにすることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの製剤化剤を含有することができる。
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態の活性調製物の水溶液が含まれる。さらに、有効成分の懸濁剤は、必要に応じて油系または水系の注射用懸濁剤として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビークルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル。例えば、オレイン酸エチル、トリグリセリドまたはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有することができる。場合により、懸濁剤はまた、高濃度溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有することができる。
あるいは、有効成分は、好適なビークル、例えば、無菌の、発熱性物質非含有水溶液を使用前に用いて構成される粉末形態であってよい。
本発明の医薬組成物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物として処方することができる。
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物として、有効成分が、その意図された目的を達成するために有効な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療有効量は、処置されている対象の障害(例えば、双極性疾患などの気分障害)の症状を防ぐ、改善するあるいは回復させるために効果的であるか、または、処置されている対象の生存を延ばすために効果的である、有効成分(例えば、マイクロRNA)の量を意味する。
本発明の一実施形態では、miR−135の過剰発現が抗うつ効果を有する。
治療有効量の決定は、特に本明細書中で提供される詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内で行える。
本発明の方法において使用されるいずれかの調製物に関して、治療有効量または用量は、最初はインビトロおよび細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量は、動物モデルで処方して、所望の濃度または力価を実現することができる。このような情報を使って、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
本明細書中に記載される有効成分の毒性および治療効力は、インビトロ、細胞培養物、または実験動物での標準的な薬学的手順によって決定することができる。これらのインビトロ、細胞培養アッセイおよび動物調査から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量範囲の処方に使用することができる。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に依存して変化してもよい。正確な処方、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択することができる(例えば、Fingl,et al.,1975,in “The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Ch.1 p.1を参照のこと)。
投薬量および投薬間隔を、生物学的効果を誘導または抑制するための有効成分の十分な血漿中レベル(最小有効濃度、MEC)を得るために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化すると思われるが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。検出アッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
処置される状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は、単回または複数回投与で行うことができ、処置過程は、数日から数週間まで、または治癒が得られるまで、または疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている対象、苦痛の重篤度、投与様式、処方医の判断などに依存するであろう。投与量および投与時期は、個体の変化する状態の注意深い連続したモニタリングに応じて変わるであろう。
本発明の薬剤を、ヒトへの処置に先立って試験することができる動物モデルが存在することは理解されよう。例えば、うつ病、ストレス、不安症の動物モデル、例えば、学習性無力モデル(LH)、長期軽度ストレス(CMS)モデル、社会的敗北ストレス(SDS)モデル、母性剥奪モデルおよび睡眠遮断モデルなどを使用することができる。例えば、例えば、変異体Polg(D181A)のニューロン特異的発現遺伝子導入マウス[Kato et al.,Neuroscience and Biobehavioral Reviews(2007)6(31):832−842(参照により本明細書に組み込まれる)により教示されるように]、ならびに十分に確立されているアンフェタミン誘導運動亢進[例えば、米国特許第6,555,585号で教示されている]およびケタミン誘導運動亢進[Ghedim et al.,Journal of Psychiatric Research(2012)46:1569−1575により教示される](これらの文献は参照により組み込まれる)の躁病ラットモデルを含む双極性疾患の動物モデルを使用することができる。
本発明の組成物は、必要に応じ、有効成分を含有する1種または複数種の単位剤形を含むことができるパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA承認キットなど)で提供することができる。パックは、例えば、金属ホイルまたはプラスチックホイルを含むことができる(例えば、ブリスターパックなど)。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のためのインストラクションを付随させてもよい。パックまたはディスペンサーデバイスはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められた形式で、容器に付随する通知によって適応させることも可能で、この場合、このような通知は、組成物の形態、あるいはヒトまたは動物への投与の当局による承認を反映する。このような通知は、例えば、処方薬物について米国食品医薬品局によって承認されたラベルであってもよく、または、承認された製品インサートであってもよい。適合性のある医薬キャリア中で処方された本発明の調製物を含む組成物もまた、上記でさらに詳述されたように、示された状態を処置するために調製し、適切な容器に入れて標識することができる。
本発明の治療組成物は、マイクロRNA(例えば、miR−135またはそれをコードするポリヌクレオチド)に加えて、うつ病、ストレス、不安症、断眠などの処置のための他の公知薬物を含めることができることは理解されよう:そのような薬物は、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、ノルアドレナリン作動性かつ特異的なセロトニン作動性抗うつ剤(NaSSA)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害剤(NRI)、ノルエピネフリン−ドパミン再取り込み阻害剤、選択的セロトニン再取り込み強化剤、ノルエピネフリン−ドパミン脱抑制剤、三環系抗うつ剤(例えば、イミプラミン)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)であり、これらに限定されない。これらの薬物は、単一の包装物または別個の包装物で製品に含めることができる。
一実施形態では、本発明の治療用組成物は、マイクロRNA(例えば、miR−135またはそれをコードするポリヌクレオチド)に加えて、双極性障害処置用の薬物を含む。本教示にしたがって、双極性障害の処置用の任意の薬物または薬物の任意の組み合わせを使用することができ、これら薬物には、リチウム(例えば、炭酸リチウム、クエン酸リチウム、硫酸リチウム)、抗精神病薬物(例えば、以降で詳述する、定型抗精神病および非定型抗精神病)気分安定剤薬物(例えば、バルプロ酸(VPA、バルプロ酸)、鉱物、抗けいれん薬、抗精神病薬)および抗うつ薬が含まれるが、これらに限定されない。
本教示により使うことができる代表的な定型抗精神病薬物としては、低効力薬物:クロルプロマジン(ラーガクチル、ソラジン)、クロルプロチキセン(Truxal)、チオリダジン(メラリル)、メソリダジンおよびレボメプロマジン;中程度効力薬物:ロキサピン(ロキサパック、ロキシタン)、モリンドン(モーバン)、ペルフェナジン(トリラホン)、およびチオチキセン(ナーベン);高効力薬物:ハロペリドール(ハルドール、セレネース)、フルフェナジン(プロリキシン)、ドロペリドール、ズクロペンチキソール(クロピキソール)、フルペンチキソール(デピキソール)、プロクロルペラジンおよびトリフロペラジン(ステラジン)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、プロクロルペラジン(コンパジン、ブッカステム、ステメチル)およびピモジド(オーラップ)を使用することができる。
本教示により使用することができる代表的非定型抗精神病薬物(第二世代抗精神病薬とも呼ばれる)としては、アミスルプリド(ソリアン)、アリピプラゾール(エビリファイ)、アセナピン(サフリス)、ブロナンセリン(ロナセン)、ビトペルチン(RG1678)、ブレクスピプラゾール(OPC−34712)、カルピプラミン(プラジニル)、クロカプラミン(クロフェクトン)、クロザピン(クロザリル)、カリプラジン(RGH−188)、イロペリドン(ファナプト)、ルラシドン(ラツーダ)、LY2140023、メルペロン(Buronil)、モサプラミン(クレミン)、オランザピン(ジプレキサ)、パリペリドン(インヴェガ)、ペロスピロン(ルーラン)、ピマバンセリン(ACP−103)、クエチアピン(セロクエル)、レモキシプリド(ロキシアム)、リスペリドン(リスパダール)、セルチンドール(サードレクト)、スルピリド(スルピリド)、バビカセリン(SCA−136)、ジプラシドン(ジオドン)、ゾテピン(ニポレプト)およびジクロナピン(Lu 31−130)が挙げられるが、これらに限定されない。
本教示により使用することができる代表的気分安定剤としては、鉱物(例えば、リチウム);バルプロ酸(デパケン)を含む抗けいれん薬気分安定剤、ジバルプロエクスナトリウム(デパコート)、およびバルプロ酸ナトリウム(デパコン、エピリム)、ラモトリギン(ラミクタール)、カルバマゼピン(テグレトール)、オクスカルバゼピン(トリレプタル)、トピラマート(トパマックス)、リルゾール(リルテック)、およびガバペンチン(ニューロンチン);抗精神病薬(上述の通り);および栄養補助食品(例えば、オメガ−3脂肪酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
本教示により使用することができる代表的抗うつ剤には、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI、例えば、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンなど)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI、例えば、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプランおよびベンラファキシンなど)、ノルアドレナリン作動性かつ特異的なセロトニン作動性抗うつ剤(例えば、ミアンセリンおよびミルタザピンなど)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害剤(NRI、例えば、アトモキセチン、マジンドール、レボキセチンおよびビロキサジンなど)、ノルエピネフリン−ドパミン再取り込み阻害剤(例えば、ブプロピオンなど)、選択的セロトニン再取り込み強化剤(例えば、チアネプチンなど)、ノルエピネフリン−ドパミン脱抑制剤(NDDI、例えば、アゴメラチンなど)、三環系抗うつ剤(第三級アミン三環系抗うつ剤および第二級アミン三環系抗うつ剤を含む)、および、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)が挙げられるが、これらに限定されない。
一実施形態では、抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、三環系抗うつ剤およびノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NRI)を含む。
特定の実施形態では、抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を含む。
追加の非医薬品治療方法を、本教示と組み合わせて用いることができ、これらの方法には、臨床心理学、電気痙攣療法、措置入院、光線療法、心理療法、経頭蓋磁気刺激および認知行動療法が含まれるが、これらに限定されないことは理解されよう。
本発明者らは、miR−27の過剰発現がMaoAの抑制をもたらすこと(実施例1(本明細書中下記)参照)、miR−135の過剰発現がSlc6a4の抑制をもたらすこと(実施例1(本明細書中下記)参照)、miR−135、miR−335、miR−26、miR−181またはmiR−182の過剰発現がHtr1aの抑制をもたらすこと(実施例1(本明細書中下記)参照)、miR−19の過剰発現がAdr1の抑制をもたらし(実施例2(本明細書中下記)参照)、また、CB1の抑制をもたらすこと(実施例3B(本明細書中下記)参照)、および、miR−15の過剰発現がCrh1Rの抑制をもたらし(実施例4(本明細書中下記)参照)、また、FKBP5の抑制をもたらすこと(実施例4B(本明細書中下記)参照)を明らかにした。
従って、本発明の一実施形態では、セロトニン輸送体(Slc6a4)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−135およびmiR−335からなる群から選択されるマイクロRNAまたはその前駆体の活性もしくは発現を調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「セロトニン輸送体(Slc6a4)」は、シナプス間隙からのセロトニンの再取り込みに関与するモノアミン輸送体タンパク質(SERTとも呼ばれる)を意味する。代表的なSlc6a4がNP_001036.1で示される。
別の実施形態では、セロトニン抑制性受容体1a(Htr1a)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−135、miR−335、miR−181、miR−182およびmiR−26からなる群から選択されるマイクロRNAまたはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「セロトニン抑制性受容体1a(Htr1a)」は、シナプス前ニューロンおよびセロトニン放出の媒介性抑制において自己受容体として機能するGタンパク質共役受容体を意味する。代表的なHtr1aがNP_000515.2で示される。
別の実施形態では、モノアミンヒドロキシラーゼ(MaoA)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−27またはその前駆体の活性もしくは発現を調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「モノアミンヒドロキシラーゼ(MaoA)」は、アミン系神経伝達物質、例えば、ドパミン、ノルエピネフリンおよびセロトニンを分解する酵素を意味する。代表的なMaoAがNP_000231.1で示される。
本発明の一実施形態では、トリプトファンヒドロキシラーゼ2(Tph2)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−181およびmiR27からなる群から選択されるマイクロRNAまたはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「トリプトファンヒドロキシラーゼ2(Tph2)」は、セロトニンの生合成における最初の律速段階を触媒する酵素を意味する。代表的なTph2がNP_NP_775489.2で示される。
別の実施形態では、ベータアドレナリン作動性受容体1(Adrb1)遺伝子の発現を神経膠細胞または心臓細胞において調節する方法であって、miR−19またはその前駆体の活性もしくは発現を調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「ベータアドレナリン作動性受容体1(Adrb1)」は、アドレナリンおよびノルアドレナリンの生理学的作用を伝達する受容体を意味する。代表的なAdrb1がNP_000675.1で示される。
別の実施形態では、ベータ2型アドレナリン作動性受容体(Adrb2)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−15またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「ベータ2型アドレナリン作動性受容体(Adrb2)」は、クラスCのL型カルシウムチャネルCa(V)1.2と直接会合する受容体を意味する。Adrb2は、例えば、NP_000015.1で示される。
別の実施形態では、CRH1型受容体遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−15またはその前駆体の活性もしくは発現を調整することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「CRH1型」は、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)と結合する受容体を意味する。CRH1型は、例えば、NP_001138618.1、NP_001138619.1、NP_001138620.1およびNP_004373.2で示される。
別の実施形態では、グルタミン酸受容体遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−181またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
別の実施形態では、上記グルタミン酸受容体遺伝子は、さらに上述されるように、グルタミン酸受容体代謝型1(Grm1)、グルタミン酸受容体イオンチャネル型カイニン酸3(Grik3)、グルタミン酸受容体代謝型5(Grm5)、グルタミン酸受容体イオンチャネル型カイニン酸2(Grik2)およびグルタミン酸受容体代謝型7(Grm7)を含む。
別の実施形態では、ダウン症候群細胞接着分子(Dscam)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−182またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「ダウン症候群細胞接着分子(Dscam)」は、ニューロンの自己回避において一定の役割を果たす細胞接着分子を意味する。Dscamは、例えば、NP_001380.2で示される。
別の実施形態では、細胞接着分子L1(L1cam)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−182またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調整することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「細胞接着分子L1(L1cam)」は、ニューロンの細胞接着分子を意味する。L1camは、例えば、NP_000416.1、NP_001137435.1、NP_076493.1.で示される。
別の実施形態では、トランスリン会合タンパク質X(Tsnax)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−182またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「トランスリン会合タンパク質X(Tsnax)」は、トランスリンと特異的に相互作用するタンパク質を意味する。Tsnaxは、例えば、NP_005990.1で示される。
別の実施形態では、カナビノイド受容体1(CB1)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−19またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「カナビノイド受容体1(CB1)」は、(CNR1としても知られている)細胞膜受容体を意味する。CB1は、例えば、NP_001153698.1、NP_001153730.1、NP_001153731.1、NP_057167.2、NP_149421.2で示される。
別の実施形態では、FK506結合タンパク質5(FKBP5)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−15またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「FK506結合タンパク質5(FKBP5)」は、免疫抑制剤FK506およびラパマイシンに特異的に結合するタンパク質を意味する。FKBP5は、例えば、NP_001139247.1、NP_001139248.1、NP_001139249.1、NP_004108.1で示される。
別の実施形態では、シンタキシン1a(Stx1a)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−15またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「シンタキシン1a(Stx1a)」は、神経系特異的タンパク質を意味する。Stx1aは、例えば、NP_001159375.1、NP_004594.1で示される。
別の実施形態では、血清/グルココルチコイド調節キナーゼ(Sgk1)遺伝子の発現を神経膠細胞において調節する方法であって、miR−15またはその前駆体の活性もしくは発現を神経膠細胞において調節することを含む方法が提供される。
本明細書中で使用される場合、用語「血清/グルココルチコイド調節キナーゼ(Sgk1)」は、セリン/トレオニンプロテインキナーゼを意味する。Sgk1は、例えば、NP_001137148.1、NP_001137149.1、NP_001137150.1、NP_005618.2で示される。
本教示は、上述の遺伝子の発現レベルをアップレギュレーションすること(すなわち、増大させること)またはダウンレギュレーションすること(すなわち、低下させること)を意図している。
本教示による遺伝子発現のダウンレギュレーションは通常、マイクロRNAポリヌクレオチドを標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)に投与することによって、または、標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)において発現させることによって行われる(本明細書中上記でさらに詳しく示されている)。
特定の実施形態では、調節がSlc6a4遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることを含む場合、該調節は、miR−135および/またはmiR−335をアップレギュレーションすることを含む。
特定の実施形態では、調節が、Htr1a遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることを含む場合、該調節は、miR−135、miR−335、miR−181、miR−182および/またはmiR−26をアップレギュレーションすることを含む。
特定の実施形態では、調節することが、MaoA遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることを含む場合、該調節することは、上記miR−27をアップレギュレーションすることを含む。
特定の実施形態では、調節が、Adrb1遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることを含む場合、該調節は、miR−19をアップレギュレーションすることを含む。
特定の実施形態では、調節が、CRH1型受容体遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることを含む場合、該調節は、miR−15をアップレギュレーションすることを含む。
特定の実施形態では、調節することが、CB1遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることを含む場合、該調節することは、miR−19をアップレギュレーションすることを含む。
特定の実施形態では、調節が、FKBP5遺伝子の発現をダウンレギュレーションすることを含む場合、該調節は、miR−15をアップレギュレーションすることを含む。
一実施形態では、アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1(Adcyap1またはPACAP);アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1受容体1(Adcyap1r1);アドレナリン受容体、アルファ2a(Adra2a);アンキリン3(ANK3);活動依存性細胞骨格関連タンパク(Arc);Rho GTPase活性化タンパク質6(Arhgap6);活性化転写因子3(Atf3);アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1(Bace1);カルシウムチャネル、電圧依存性、L型、アルファ1Dサブユニット(Cacna1d);細胞付着分子3(Cadm3);コンプレキシン1(Cplx1);コンプレキシン2(Cplx2);CUBおよびSushi複数ドメイン1(Csmd1);カゼインキナーゼ1、ガンマ1(Csnk1g1);ダブルコルチン(Dcx);DIRASファミリー、GTP結合RAS様2(Diras2);ディスクラージホモログ2(ショウジョウバエ)(Dlg2);ELK1、ETS癌遺伝子ファミリーのメンバー(Elk1);癌遺伝子関連キナーゼ(Frk);フコシルトランスフェラーゼ9(アルファ(1,3)フコシルトランスフェラーゼ)(Fut9);ガンマアミノ酪酸(GABA−A)受容体、サブユニットベータ2(Gabrb2);GATA結合タンパク質3(Gata3);成長ホルモン分泌促進物質受容体(Ghsr);Gタンパク質共役受容体3(Gpr3);グルタミン酸受容体、イオンチャネル型AMPA3(アルファ3)(GRIA3);グルタミン酸受容体、イオンチャネル型、カイニン酸3(Grik3);Gタンパク質共役受容体キナーゼ5(Grk5);グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3ベータ(GSK3B);過分極活性化環状ヌクレオチド依存性カリウムチャネル1(Hcn1)、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性K+2(Hcn2)、5−ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体1A(Htr1a);イノシトール一リン酸分解酵素(IMPA1)、カリリン、RhoGEFキナーゼ(Kalrn);カリウム中間体/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー3(KCNN3);カリオフェリンα3(インポーチンアルファ4)(Kpna3);ミエリン転写因子1様(Myt1l);核内受容体転写共役因子2(Ncoa2);N−Myc下流調節遺伝子4(Ndrg4);一酸化窒素合成酵素1(神経細胞)アダプタータンパク質(NOS1AP);核受容体サブファミリー3、グループC、メンバー2(Nr3c2);ネトリンG1(Ntng1);核カゼインキナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼ基質1(Nucks1);ホスホジエステラーゼ1A、カルモデュリン依存性(Pde1a);ホスホジエステラーゼ4A、cAMP特異的(Pde4a);ホスホジエステラーゼ8B(Pde8b);ホスホリパーゼC、ベータ1(Plcb1);プロラクチン受容体(Prlr);RAB1B、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab1b);Ras関連タンパク質Rap−2a(Rap2a);レチノイド関連オーファン受容体ベータ(Rorb);サーチュイン1(サイレント交配型情報調節因子2、相同体)1(Sirt1);溶質輸送体ファミリー12、(カリウム/塩化物輸送体)メンバー6(Slc12a6);溶質輸送体ファミリー5(コリン輸送体)、メンバー7(Slc5a7);溶質輸送体ファミリー6(神経伝達物質輸送体、セロトニン)、メンバー4(Slc6a4);トランス作用性転写因子1(Sp1);シナプス小胞糖タンパク質2b(Sv2b);シナプス核膜1(ネスプリン−1をコード)(Syne1);シナプトタグミンI(Syt1);シナプトタグミンII(Syt2);シナプトタグミンIII(Syt3);形質転換増殖因子、ベータ受容体II(Tgfbr2);甲状腺ホルモン受容体、ベータ(Thrb);一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーC、メンバー6(Trpc6);シナプス小胞結合膜タンパク質2(Vamp2);無翅関連MMTV統合部位3(Wnt3);および神経膠細胞中のジンクフィンガー、BEDドメイン含有4(Zbed4)、からなる群から選択される遺伝子の発現を神経膠細胞においてダウンレギュレーションする方法であって、(a)神経膠細胞中のmiR−135もしくはその前駆物質の活性または発現をアップレギュレーションすること、および(b)神経膠細胞中の遺伝子の発現を測定し、それにより、遺伝子の発現をダウンレギュレーションすること、を含む方法が提供される。
特定の実施形態では、遺伝子の発現のダウンレギュレーションは、miR−135ではないマイクロRNAまたはその前駆物質の活性もしくは発現をアップレギュレーションすることにより行われる。
特定の実施形態では、miR−135標的遺伝子の発現は、miR−135標的遺伝子の活性または発現をダウンレギュレーションすることができる薬剤を対象に投与することにより行われる。
遺伝子(例えば、miR−135標的遺伝子)または遺伝子産物のダウンレギュレーションは、転写および/または翻訳を妨げる種々の分子[例えば、RNAサイレンシング剤(例えば、アンチセンス、siRNA、shRNA、マイクロRNA)、リボザイム、DNAザイムおよびCRISPRシステム(例えば、CRISPR/Cas)]を使ってゲノムおよび/または転写物レベルで、または、例えば、ポリペプチドを切断するアンタゴニスト、酵素などを使ってタンパク質レベルで行うことができる。
下記は、本発明のいくつかの実施形態の遺伝子または遺伝子産物の発現レベルおよび/または活性をダウンレギュレーションすることが可能な薬剤のリストである。
ポリペプチド遺伝子産物の活性をダウンレギュレーションすることができる薬剤の一例は、遺伝子産物(すなわち、タンパク質)に特異的に結合することができる抗体または抗体断片である。このような抑制は、細胞外ポリペプチド、細胞表面ポリペプチドまたは分泌されたポリペプチドに対しては、特に価値がある。本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を意味する。
エピトープ決定基は通常、アミノ酸または炭水化物側鎖などの化学的に活性な分子表面基で構成されており、通常は特定の3次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。
本発明で使用される「抗体」という用語は、完全な抗体分子、ならびにマクロファージに結合可能なその機能性断片、例えば、Fab、F(ab’)2およびFvを含む。これらの機能性抗体断片は次のように定義される:(1)Fab、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部が得られる全長抗体の酵素パパインによる消化により生成することができる抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片;(2)Fab’、全長抗体をペプシンで処理した後、還元して、抗体分子当たり、完全な軽鎖および重鎖の一部を生じさせて得ることができる抗体分子の断片;(3)(Fab’)2、全長抗体を酵素ペプシンで処理し、その後の還元を行わないで得ることができる抗体の断片;(Fab’)2は、2つのジスルフィド結合により保持されている2つのFab’断片のダイマーである;(4)Fv、二本鎖として発現された、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子組み換えされた断片と定義される;および(5)単鎖抗体(「SCA」)、適切なポリペプチドリンカーにより遺伝的に融合された単鎖分子として連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子組み換えされた分子。
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびその断片の生成方法は、この技術分野では広く知られている(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1988を参照されたい。この文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
遺伝子(例えば、miR−135標的遺伝子)のダウンレギュレーションはRNAサイレンシングによっても実現することができる。本明細書で使用される場合、語句の「RNAサイレンシング」は、対応するタンパク質をコードする遺伝子の発現の抑制または「サイレンシング」を生ずるRNA分子により媒介される一連の調節機序[例えば、RNA干渉(RNAi)、転写遺伝子サイレンシング(TGS)、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、クエリング、コサプレッション、および翻訳抑制]を意味する。RNAサイレンシングは、植物、動物、および真菌を含む多くの種類の生物で観察されている。
本明細書で使用される場合、「RNAサイレンシング剤」という用語は、標的遺伝子の発現を特異的に抑制または「サイレンシング」することができるRNAを意味する。特定の実施形態では、RNAサイレンシング剤は、転写後サイレンシング機序によりmRNA分子の完全なプロセッシング(例えば、完全翻訳および/または発現)を妨害することができる。RNAサイレンシング剤には、ノンコーディングRNA分子、例えば、対形成鎖を含むRNA二本鎖、ならびにこのような低分子ノンコーディングRNAを生成することができる前駆物質RNAが含まれる。代表的RNAサイレンシング剤には、siRNA、miRNAおよびshRNAなどのdsRNAが含まれる。一実施形態では、RNAサイレンシング剤はRNA干渉を誘導することができる。別の実施形態では、RNAサイレンシング剤は翻訳抑制を媒介することができる。
本発明の一実施形態では、RNAサイレンシング剤は、標的RNA(例えば、標的遺伝子)に特異的であり、99%以下の標的遺伝子に対する全体的相同性を示す、例えば、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%未満の標的遺伝子に対する全体的相同性を示す遺伝子もしくはスプライスバリアントを交差抑制またはサイレンシングしない。
RNA干渉は、低分子干渉RNA(siRNA)により媒介される動物の配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを意味する。植物での対応するプロセスは通常、転写後遺伝子サイレンシングまたはRNAサイレンシングと呼ばれ、また、真菌の場合には、クエリングとも呼ばれる。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来性遺伝子の発現を防ぐために進化的に保存されている細胞の防護機序であると考えられており、通常、多様な植物相および門により共有されている。このような外来性遺伝子発現からの保護は、ウイルス感染に由来する、または相同一本鎖RNAまたはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答を介したトランスポゾンエレメントの宿主ゲノムへのランダム組み込みに由来する二本鎖RNA(dsRNA)の産生に呼応して進化した可能性がある。
細胞中の長いdsRNAの存在は、ダイサーと呼ばれるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する。ダイサーは、dsRNAの、低分子干渉RNA(siRNA)として知られる短片dsRNAへのプロセッシングに関与する。ダイサー活性由来の低分子干渉RNAは通常、約21〜約23ヌクレオチドの長さで、約19塩基対の二本鎖を含む。RNAi反応は、通常RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と呼ばれるエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とする。RISCは、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介する。標的RNAの切断は、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起こる。
したがって、本発明のいくつかの実施形態では、mRNAからのタンパク質発現をダウンレギュレーションするようにdsRNAを使用することが意図されている。
一実施形態では、dsRNAは30bpより大きい。より長いdsRNA(すなわち、30bpより大きいdsRNA)の使用は、これらのより長い領域の二本鎖RNAによりインターフェロンおよびPKR反応の誘導が生じるという考えのために、極めて限定されてきた。しかし、長いdsRNAに使用により、細胞が最適サイレンシング配列を選択することができ、多くのsiRNA試験を行う必要性が軽減される;および恐らく最も重要なことであると思われるが、長いdsRNAを治療薬として使用する場合に、ウイルス回避を防ぐことができるであろうという点で多くの利点を得ることができる。
種々の調査により、長いdsRNAを使用して、ストレス応答を誘導することなくまたは大きなオフターゲット効果を生ずることなく、遺伝子発現をサイレンシングすることができることが示された−例えば、[Strat et al.,Nucleic Acids Research,2006,Vol.34,No.13 3803−3810;Bhargava A et al.Brain Res.Protoc.2004;13:115−125;Diallo M.,et al.,Oligonucleotides.2003;13:381−392;Paddison P.J.,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA.2002;99:1443−1448;Tran N.,et al.,FEBS Lett.2004;573:127−134]を参照されたい。
いくつかの実施形態による本発明はまた、遺伝子発現をダウンレギュレーションするためのインターフェロンおよびPKR経路を誘発しないように特異的に設計された長いdsRNAの導入も意図している。例えば、ShinagwaとIshii[Genes & Dev.17(11):1340−1345,2003]は、RNAポリメラーゼII(Pol II)プロモーターから長い二本鎖RNAを発現するための、pDECAPと命名されたベクターを開発した。pDECAPからの転写物は、5’−キャップ構造および3’−ポリ(A)テールの両方を欠くために、pDECAPからの長いdsRNAはインターフェロン応答を誘発しない。
哺乳動物系で、インターフェロンおよびPKR経路を回避する別の方法は、低分子阻害性RNA(siRNA)の遺伝子導入または内在性発現を介した導入によるものである。
用語の「siRNA」は、RNA干渉(RNAi)経路を誘発する低分子阻害性RNA二本鎖(一般的には、18〜30塩基対)を意味する。通常は、siRNAは、中央19bp二重鎖領域および対称2塩基3’−オーバーハングを有する21マーとして終端に化学的に合成されるが、最近、25〜30塩基長さの化学的合成RNA二本鎖は、21マーのものに比べて、同じ位置で、効力を100倍も増加させることができることが記載された。RNAiの誘発に関して、より長いRNAを使って得られた効力で観察された増加は、産物(21マー)に代えて基質(27マー)をダイサーに供給したこと、およびこれがsiRNA二本鎖のRISCへの移行の速度と効率を改善することが原因であると理論付けされる。
3’−オーバーハングの位置がsiRNAの効力に影響を与え、アンチセンス鎖上に3’−オーバーハングを有する非対称の二本鎖は、3’−オーバーハングをセンス鎖上に有するものより強力であることが明らかになった(Rose et al.,2005)。アンチセンス転写物を標的化すると、反対の効力パターンが観察されるので、これは、非対称の鎖のRISC中への組み込みに起因する可能性がある。
二本鎖干渉RNA(例えば、siRNA)の鎖を連結してヘアピンまたはステムループ構造(例えば、shRNA)を形成することができる。したがって、述べたように、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング剤は、低分子ヘアピンRNA(shRNA)であってもよい。
本明細書で使用される場合、用語の「shRNA」は、ステムループ構造を有するRNA薬剤を意味し、相補的配列の第1と第2の領域を含み、相補性の程度および領域の方位は領域間で塩基対形成が起こるのに十分であり、第1と第2の領域はループ領域により連結され、ループはループ領域内のヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)間の塩基対形成の欠如から生じている。ループ中のヌクレオチドの数は、3〜23、または5〜15、または7〜13、または4〜9、または9〜11である。ループ中のいくつかのヌクレオチドは、ループ中の他のヌクレオチドとの塩基対相互作用に関与することができる。ループの形成に使用することができるオリゴヌクレオチド配列の例には、5’−UUCAAGAGA−3’(Brummelkamp,T.R.et al.(2002)Science 296:550)および5’−UUUGUGUAG−3’(Castanotto,D.et al.(2002)RNA 8:1454)が含まれる。得られた単鎖オリゴヌクレオチドが、RNAi機構と相互作用可能な二本鎖領域を含むステムループまたはヘアピン構造を形成することは、当業者なら分かるであろう。
本発明のいくつかの実施形態での使用に適するRNAサイレンシング剤の合成は、以下のように行うことができる。第1に、標的遺伝子mRNA配列をAUG開始コドンの下流でAAジヌクレオチド配列をスキャンする。AAおよび3’隣接19ヌクレオチドのそれぞれの存在を、潜在的siRNA標的部位として記録する。非翻訳領域(UTR)は調節タンパク質結合部位がより多いので、siRNA標的部位は読み枠から選択されるのが好ましい。UTR結合タンパク質および/または翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合と干渉する可能性がある[Tuschl ChemBiochem.2:239−245]。しかし、5’UTRを標的としたsiRNAが細胞性GAPDH mRNAの約90%の減少を媒介し、タンパク質レベルを完全に消滅させた(www.ambion.com/techlib/tn/91/912.html)場合のGAPDHに関し示されたように、非翻訳領域を標的としたsiRNAも効果的である場合がある。
第2に、潜在的標的部位は、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)から入手可能なBLASTソフトウェアなどの任意の配列整列化ソフトウェアを使って、適切なゲノムデータベース(例えば、ヒト、マウス、ラットなど)と比較されるその他のコード配列に対する有意な相同性を示す推定標的部位は取り除かれる。
適格標的配列は、siRNA合成用のテンプレートとして選択される。好ましい配列は、低G/C含量を含むものである。理由は、これらが55%より高いG/C含量のものと比較して、遺伝子サイレンシングを媒介する点で、より効果的であることが実証されているからである。いくつかの標的部位は評価のために標的遺伝子の長さに沿って選択されるのが好ましい。選択されたsiRNAのより良好な評価のために、陰性対照を同時に使用するのが好ましい。陰性対照siRNAは、siRNAと同じ組成でゲノムに対して大きな相同性がないヌクレオチド組成を含むのが好ましい。したがって、いずれか他の遺伝子に対し何ら有意な相同性を示さない前提で、スクランブル化したsiRNAのヌクレオチド配列を使うのが好ましい。
本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング剤は、RNAのみを含む分子に限定される必要はなく、化学修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドをさらに包含することは理解されよう。
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるRNAサイレンシング剤は、細胞透過性ペプチドと機能的に関連してもよい。本明細書で使用される場合、「細胞透過性ペプチド」は、血漿および/または細胞の核膜を通過する膜透過性複合体の輸送に関連するエネルギー非依存性(すなわち、非エンドサイトーシスの)転座特性を付与する短い(約12〜30残基)アミノ酸配列または機能性モチーフを含むペプチドである。本発明のいくつかの実施形態の膜透過性複合体に使われる細胞透過性ペプチドは、好ましくは少なくとも1つの非機能性のシステイン残基を含み、この残基は、遊離状態であるか、または誘導体化されて、ジスルフィドとの結合のために修飾されている二本鎖リボ核酸とジスルフィド結合を形成する。このような特性を付与する代表的アミノ酸モチーフは、米国特許第6,348,185号に挙げられている。この特許の内容は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。本発明のいくつかの実施形態の細胞透過性ペプチドとして、好ましくは、ペネトラチン、トランスポータン、pIsl、TAT(48−60)、pVEC、MTS、およびMAPを含むが、これらに限定されない。
RNAサイレンシング剤を使って標的化されるmRNAには、発現が望ましくない表現型形質と相関するmRNAが挙げられるが、これらに限定されない。標的化されてもよい代表的mRNAは、短縮タンパク質をコードする、すなわち、欠失を含むmRNAである。したがって、本発明のいくつかの実施形態のRNAサイレンシング剤は、欠失の両側の架橋領域を標的にすることができる。このようなRNAサイレンシング剤の細胞への導入により、変異タンパク質のダウンレギュレーションが生じ、同時に、非変異タンパク質は影響を受けないで残される。
遺伝子(例えば、miR−135標的遺伝子)のダウンレギュレーションが可能な別の薬剤は、標的遺伝子のmRNA転写物またはDNA配列を特異的に切断することができるDNAザイム分子である。DNAザイムは、一本または二本鎖標的配列の両方を切断することができる一本鎖ポリヌクレオチドである(Breaker,R.R.and Joyce,G.Chemistry and Biology 1995;2:655;Santoro,S.W.& Joyce,G.F.Proc.Natl,Acad.Sci.USA 1997;943:4262)。DNAザイム用の一般的モデル(「10−23」モデル)が提案されている。「10−23」DNAザイムは、それぞれ7〜9デオキシリボヌクレオチドの2つの基質認識ドメインにより挟まれた15デオキシリボヌクレオチドの触媒ドメインを有する。このタイプのDNAザイムはその基質RNAをプリン:ピリミジン接合部で効果的に切断する(Santoro,S.W.& Joyce,G.F.Proc.Natl,Acad.Sci.USA 199;DNAザイムの総説については、Khachigian,LM [Curr Opin Mol Ther 4:119−21(2002)]を参照されたい)。
一本鎖および二本鎖標的切断部位を認識する合成の、操作されたDNAザイムの作製と増幅の例は、米国特許第6,326,174号(Joyce et al.)で開示されている。最近、ヒトウロキナーゼ受容体を標的とする類似の設計のDNAザイムが、ウロキナーゼ受容体発現を抑制し、大腸癌細胞のインビボ転移の抑制に成功したことが観察された(Itoh et al,20002,Abstract 409,Ann Meeting Am Soc Gen Ther www.asgt.org)。別の適用では、bcr−ab1癌遺伝子に相補的なDNAザイムが、CMLおよびALLの症例で、白血病細胞中の癌遺伝子発現を抑制し、自家骨髄移植における再発率を下げることに成功した。
遺伝子(例えば、miR−135標的遺伝子)のダウンレギュレーションは、遺伝子をコードするmRNA転写物に特異的にハイブリダイズすることができるアンチセンスポリヌクレオチドを使って行うことができる。
遺伝子を効率的にダウンレギュレーションするために使用することができるアンチセンス分子の設計は、アンチセンス手法に重要な2つの側面を考慮しながら行う必要がある。第1の側面は、オリゴヌクレオチドの適切な細胞の細胞質中への送達であり、第2の側面は、細胞内の指定されたmRNAに対し、その翻訳を抑制するように、特異的に結合するオリゴヌクレオチドの設計である。
遺伝子(例えば、miR−135標的遺伝子)のダウンレギュレーションが可能な別の薬剤は、遺伝子をコードするmRNA転写物を特異的に切断することができるリボザイム分子である。目的のタンパク質をコードするmRNAの切断により遺伝子発現の配列特異的抑制を行うために、リボザイムがますます使用されるようになってきている[Welch et al.,Curr Opin Biotechnol.9:486−96(1998)]。任意の特異的標的RNAを切断するためのリボザイム設計の実現性により、リボザイムが基礎研究および治療への応用の両方での有益な手段になった。治療薬の分野では、リボザイムは、感染症におけるウイルスRNA、癌における主要な癌遺伝子および遺伝病における特異的体細胞変異を標的にするために利用されている[Welch et al.,Clin Diagn Virol.10:163−71(1998)]。特に注意すべきは、HIV用のいくつかのリボザイム遺伝子治療プロトコルは既に第1相臨床試中であることである。最近になって、リボザイムは遺伝子導入動物研究、遺伝子標的検証および経路解明のために使われている。いくつかのリボザイムは、種々の段階の臨床試験中である。ANGIOZYMEは、ヒト臨床試験で試験される最初の化学合成リボザイムであった。ANGIOZYMEは、血管新生経路における主要成分であるVEGF−r(血管内皮細胞増殖因子受容体)の形成を特異的に抑制する。Ribozyme Pharmaceuticals,Inc.、ならびにその他の会社は、動物モデルでの抗血管新生治療薬の重要性を実証した。HEPTAZYME、C型肝炎ウイルス(HCV)RNAを選択的に破壊するように設計されたリボザイムは、細胞培養アッセイでC型肝炎ウイルスRNAの減少に効果的であることが明らかになった(Ribozyme Pharmaceuticals,Incorporated − WEBホームページ)。
遺伝子(例えば、miR−135標的遺伝子)のダウンレギュレーションが可能な別の薬剤は、RNA誘導性エンドヌクレアーゼ技術、例えば、CRISPRシステムである。
本明細書で使用される場合、用語の「CRISPRシステム」は、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats(規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列)としても知られ、ひとまとめにして言えば、CRISPR関連遺伝子の発現または活性の管理に関与する転写物およびその他のエレメントを意味し、これらには、Cas遺伝子(例えば、CRISPR関連エンドヌクレアーゼ9)をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分tracrRNA)、tracrメイト配列(「ダイレクトリピート」およびtracrRNA処理部分ダイレクトリピート)または限定されないがcrRNA配列もしくはsgRNA配列(すなわちシングルガイドRNA)を含むガイド配列(「スペーサー」とも呼ばれる)が含まれる。
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCRISPRシステムのエレメントは、I型、II型、またはIII型CRISPRシステム由来である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCRISPRシステムのエレメント(例えば、Cas)は、内在性CRISPRシステム、例えば、化膿性の連鎖球菌、髄膜炎ナイセリア、ストレプトコッカス・サーモフィルスまたはトレポネーマ・デンティコラを含む特定の生物体由来である。
一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位でのCRISPR複合体の形成を促進するエレメント(内在性CRISPRシステムとの関係においては、プロトスペーサーとも呼ばれる)により特徴付けられる。
CRISPR複合体の形成との関係においては、「標的配列」は、ガイド配列(すなわち、ガイドRNA)が相補性を有するように設計される配列を意味し、標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションがCRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを生じ、CRISPR複合体の形成が促進されるのに十分な相補性があれば、完全な相補性は必ずしも必要ではない。したがっていくつかの実施形態では、標的配列に対する全体的相同性は、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%であってよい。標的配列は、DNAまたはRNAポリヌクレオチドなどの任意のポリヌクレオチドを含むことができる。いくつかの実施形態では、標的配列は細胞の核中または細胞質中に位置している。
したがって、CRISPRシステムは2つの異なる成分、標的配列とハイブリダイズするガイドRNA(gRNA)、およびヌクレアーゼ(例えば、II型Cas9タンパク質)を含み、gRNAは標的配列を標的にし、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9タンパク質)は標的配列を切断するか、または標的遺伝子をサイレンシングする。ガイドRNAは、内在性細菌性crRNAおよびtracrRNAの組み合わせを含む、すなわち、gRNAはcrRNAの標的化特異性と、tracrRNAの足場特性(Cas9結合に必要)とを併用することができる。あるいは、ガイドRNAは、直接Casを結合することができるシングルガイドRNA(sgRNA)を含む。
通常、内在性CRISPRシステムとの関係においては、CRISPR複合体(標的配列にハイブリダイズするガイド配列を含み、1種または複数種のCasタンパク質と複合体形成している)の形成は、標的配列内またはその近傍で(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、またはそれより多い塩基対内の)1つの鎖または両鎖の切断を生ずる。これにより、例えば、挿入または欠失により目的遺伝子(すなわち、標的配列)の破壊が起こる。
一実施形態では、Casタンパク質(例えば、Cas9)は、ヌクレアーゼ活性がなく(すなわち、触媒的に不活性)であり、「デッド(dead)」(dCas9)と呼ばれる。本教示にしたがって、触媒的に不活性なCas9タンパク質を使用して、DNAに結合することができ(ガイドRNAの特異性に基づいて)、通常はこれにより、RNAポリメラーゼ結合または伸長の妨害が起こり、転写の抑制に繋がる。したがって、dCas9を転写抑制に使用することができる。
上述のように、tracrRNA配列は、野性型tracr配列の全てまたは一部を含むまたはその配列の全てまたは一部(例えば、約、または約20、26、32、45、48、54、63、67、85、またはそれより多いヌクレオチドを超える野性型tracr配列)から構成することができ、例えば、tracrRNA配列の少なくとも一部と、ガイド配列(例えば、crRNA)に機能的に連結されているtracrメイト配列の全てまたは一部とのハイブリダイゼーションにより、CRISPR複合体の一部を形成してもよい。
いくつかの実施形態では、tracr配列は、ハイブリダイズするtracrメイト配列に対し、十分な相補性を有し、CRISPR複合体の形成に関与する。機能を果たすのに十分であれば、標的配列と同様に、完全な相補性は必要ない。いくつかの実施形態では、最適に整列される場合は、tracr配列は、メイト配列の長さに沿って、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列相補性を有する。
CRISPR/Casの細胞中への導入は、CRISPRシステムのエレメントの発現が1種または複数種の標的部位でのCRISPR複合体の形成を指示するように、CRISPRシステムの1種または複数種のエレメントの発現を進行させる1種または複数種のベクターを使って行うことができる。例えば、Cas酵素、メイト配列に連結されたガイド配列、およびtracrRNA配列は、別のベクター上の別の調節エレメントにそれぞれ機能的に連結されるであろう。あるいは、同じまたは異なる調節エレメントから発現された2つ以上のエレメントは、第1のベクターに含まれないCRISPRシステムのいずれかの成分を提供する1種または複数種の追加のベクターと、単一ベクター中で結合される。単一ベクター中で結合されるCRISPRシステムエレメントは、任意の好適な向きに、例えば、第1のエレメントを、第2のエレメントに対し、5’に(5’の「上流に」)または3’に(3’の「下流に」)配置することができる。第1のエレメントのコード配列を、第2のエレメントのコード配列の同じまたは反対の鎖上に配置することができる。単一プロモーターがCRISPR酵素をコードする転写物、ならびに1種または複数種のイントロン配列中に(例えば、それぞれ、異なるイントロン中に、2種以上が少なくとも1つのイントロン中に、または全てが単一イントロン中に)埋め込まれた、1つまたは複数のガイド配列、メイト配列(必要に応じて、ガイド配列に機能的に連結された配列)、およびtracrRNA配列の発現を促進することができる。
あるいは、本発明の別の実施形態では、遺伝子発現のアップレギュレーションが、マイクロRNAの発現をダウンレギュレーションすることができる薬剤を標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)に投与することによって、または、標的細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)において発現させることによって行われる。
上で考察したように、マイクロRNAのダウンレギュレーションを、転写および/または翻訳を妨害する様々な分子(例えば、RNAサイレンシング剤、リボザイム、DNAザイムおよびアンチセンス)を使用してゲノムレベルおよび/または転写物レベルで達成することができる。
マイクロRNAの発現をダウンレギュレーションする方法は、当該技術分野で公知である。
miRの活性をダウンレギュレーションする核酸薬剤には、標的模倣物、マイクロRNA耐性遺伝子およびmiRNA阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。標的模倣物またはマイクロRNA耐性標的は、下記のミスマッチの1つまたは複数が許される場合には、マイクロRNAに対して本質的に相補的である:
(a)マイクロRNAの5’末端におけるヌクレオチドと、標的模倣物またはマイクロRNA耐性標的における対応するヌクレオチド配列との間における1つのミスマッチ;
(b)マイクロRNAの1位〜9位におけるヌクレオチドのいずれか1つと、標的模倣物またはマイクロRNA耐性標的における対応するヌクレオチド配列との間における1つのミスマッチ;または
(c)マイクロRNAの12位〜21位におけるヌクレオチドのいずれか1つと、標的模倣物またはマイクロRNA耐性標的における対応するヌクレオチド配列との間における3つのミスマッチ、ただし、この場合、連続するミスマッチは最大でも2つである。
標的模倣RNAは、例えば、ミスマッチを生ずるmiRNAの10番目または11番目のヌクレオチドに対して相補的である標的配列のヌクレオチドに多様性を導入するように配列を修飾することによってmiRNA誘導切断に対して耐性を付与するように修飾された標的RNAと本質的に類似している。
あるいは、マイクロRNA耐性標的を組み込むことができる。したがって、サイレント変異を標的遺伝子のマイクロRNA結合部位に導入することにより、DNA配列および生じたRNA配列が、マイクロRNAの結合を妨げるように変化するが、タンパク質のアミノ酸配列は変化しないままにすることができる。したがって、新しい配列を既存の結合部位に代えて合成することができるが、この場合、新しい配列において、DNA配列が変化し、それにより、miRNAがその標的に結合しなくなる。
特定の実施形態では、標的模倣物またはマイクロRNA耐性標的は、標的遺伝子を認識するプレmiRNAに元々結合しているプロモーターに連結され、細胞内に導入される。このようにして、miRNA標的模倣物またはマイクロRNA耐性標的RNAが、miRNAと同じ環境のもとで発現され、また、標的模倣物またはマイクロRNA耐性標的RNAが、miRNA誘導の切断によって分解される非標的模倣物/マイクロRNA耐性標的RNAを置換することになるであろう。
非機能的miRNAアレルまたはmiRNA耐性標的遺伝子もまた、miRNAコードアレルまたはmiRNA感受性標的遺伝子を置換するために相同的組換えによって導入することができる。
組換え発現は、目的とする核酸(例えば、miRNA、標的遺伝子、サイレンシング剤など)を適切なプロモーターの発現下で核酸発現構築物にクローン化することによって達成される。
本発明の他の実施形態では、合成一本鎖核酸がmiRNA阻害剤として使用される。miRNA阻害剤は、典型的には長さが約17ヌクレオチド〜25ヌクレオチドであり、成熟型miRNAの5’端から3’端への配列に対して少なくとも90%相補的である5’端から3’端への配列を含む。特定の実施形態では、miRNA阻害剤分子は、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25ヌクレオチドの長さであり、または、それらから導き出すことが可能な任意の範囲である。さらに、miRNA阻害剤は、成熟型miRNA、特に、成熟型の天然に存在するmiRNAの5’端から3’端への配列に対して、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9もしくは100%相補的であるか、または、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9もしくは100%相補的であるか、または、それらから導き出すことが可能な任意の範囲である(5’端から3’端への)配列を有する。
本発明の他の実施形態では、マイクロRNAのダウンレギュレーションは、マイクロRNAまたはその前駆物質と特異的にハイブリダイズすることができるアンチセンスポリヌクレオチドを使って行うことができる。
本発明のマイクロRNAアンチセンス薬剤(例えば、抗miRNAオリゴ)も同様に化学的修飾、分子修飾および/または追加の部分、例えば、コレステロール部分(例えば、アンタゴmir)を含むことができる。
miRNA阻害剤を、一過性遺伝子導入技術を使用して細胞と接触させることができる。miRNA阻害剤はApplied Biosystemsなどの会社から市販されている。
あるいは、miRNA阻害剤は、本明細書中で上記されるように発現ベクターの一部であってもよい。この場合、細胞に一過性または安定的にベクターを遺伝子導入することができる。
特定の実施形態では、調節が、Tph2遺伝子の発現をアップレギュレーションすることを含む場合、該調節は、miR−181および/またはmiR−27をダウンレギュレーションすることを含む。
別の特定の実施形態では、アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1(Adcyap1またはPACAP);アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1受容体1(Adcyap1r1);アドレナリン受容体、アルファ2a(Adra2a);アンキリン3(ANK3);活動依存性細胞骨格関連タンパク(Arc);Rho GTPase活性化タンパク質6(Arhgap6);活性化転写因子3(Atf3);アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1(Bace1);カルシウムチャネル、電圧依存性、L型、アルファ1Dサブユニット(Cacna1d);細胞付着分子3(Cadm3);コンプレキシン1(Cplx1);コンプレキシン2(Cplx2);CUBおよびSushi複数ドメイン1(Csmd1);カゼインキナーゼ1、ガンマ1(Csnk1g1);ダブルコルチン(Dcx);DIRASファミリー、GTP結合RAS様2(Diras2);ディスクラージホモログ2(ショウジョウバエ)(Dlg2);ELK1、ETS癌遺伝子ファミリーのメンバー(Elk1);癌遺伝子関連キナーゼ(Frk);フコシルトランスフェラーゼ9(アルファ(1,3)フコシルトランスフェラーゼ)(Fut9);ガンマアミノ酪酸(GABA−A)受容体、サブユニットベータ2(Gabrb2);GATA結合タンパク質3(Gata3);成長ホルモン分泌促進物質受容体(Ghsr);Gタンパク質共役受容体3(Gpr3);グルタミン酸受容体、イオンチャネル型AMPA3(アルファ3)(GRIA3);グルタミン酸受容体、イオンチャネル型、カイニン酸3(Grik3);Gタンパク質共役受容体キナーゼ5(Grk5);グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3ベータ(GSK3B);過分極活性化環状ヌクレオチド依存性カリウムチャネル1(Hcn1)、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性K+2(Hcn2)、5−ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体1A(Htr1a);イノシトール一リン酸分解酵素(IMPA1)、カリリン、RhoGEFキナーゼ(Kalrn);カリウム中間体/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー3(KCNN3);カリオフェリンα3(インポーチンアルファ4)(Kpna3);ミエリン転写因子1様(Myt1l);核内受容体転写共役因子2(Ncoa2);N−Myc下流調節遺伝子4(Ndrg4);一酸化窒素合成酵素1(神経細胞)アダプタータンパク質(NOS1AP);核受容体サブファミリー3、グループC、メンバー2(Nr3c2);ネトリンG1(Ntng1);核カゼインキナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼ基質1(Nucks1);ホスホジエステラーゼ1A、カルモデュリン依存性(Pde1a);ホスホジエステラーゼ4A、cAMP特異的(Pde4a);ホスホジエステラーゼ8B(Pde8b);ホスホリパーゼC、ベータ1(Plcb1);プロラクチン受容体(Prlr);RAB1B、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab1b);Ras関連タンパク質Rap−2a(Rap2a);レチノイド関連オーファン受容体ベータ(Rorb);サーチュイン1(サイレント交配型情報調節因子2、相同体)1(Sirt1);溶質輸送体ファミリー12、(カリウム/塩化物輸送体)メンバー6(Slc12a6);溶質輸送体ファミリー5(コリン輸送体)、メンバー7(Slc5a7);溶質輸送体ファミリー6(神経伝達物質輸送体、セロトニン)、メンバー4(Slc6a4);トランス作用性転写因子1(Sp1);シナプス小胞糖タンパク質2b(Sv2b);シナプス核膜1(ネスプリン−1をコード)(Syne1);シナプトタグミンI(Syt1);シナプトタグミンII(Syt2);シナプトタグミンIII(Syt3);形質転換増殖因子、ベータ受容体II(Tgfbr2);甲状腺ホルモン受容体、ベータ(Thrb);一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーC、メンバー6(Trpc6);シナプス小胞結合膜タンパク質2(Vamp2);無翅関連MMTV統合部位3(Wnt3);および神経膠細胞中のジンクフィンガー、BEDドメイン含有4(Zbed4)、からなる群から選択される遺伝子の発現を神経膠細胞においてアップレギュレーションする方法であって、(a)神経膠細胞中のmiR−135もしくはその前駆物質の活性または発現をダウンレギュレーションすること、および(b)神経膠細胞中の遺伝子の発現を測定し、それにより、遺伝子の発現をアップレギュレーションすること、を含む方法が提供される。
特定の実施形態では、いずれかのこれらの遺伝子の発現のアップレギュレーションは、マイクロRNA(例えば、miR−135)またはその前駆物質の活性または発現をダウンレギュレーションすること以外の方法で行われる。したがって、遺伝子の活性または発現のアップレギュレーションは、遺伝子またはその標的の過剰発現により影響を受けることがある。
一実施形態では、マイクロRNAの発現をダウンレギュレーションすることが、マイクロRNAと特異的に結合し、その発現をダウンレギュレーションする核酸配列の使用によって達成される。本発明により使用できる代表的な核酸配列は、任意の製造者から、例えば、Genecopoeiaから購入することができる(miArrest、マイクロRNAベクターに基づく阻害剤)。
従って、別の実施形態では、miR−181、miR−182、miR−26、miR−27、miR−135、miR−335、miR−15およびmiR−19またはその前駆体の発現をダウンレギュレーションするための核酸配列を含む単離ポリヌクレオチドが提供される。
miR−181の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号134〜137、および配列番号154〜157で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
miR−182の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号138〜141、および配列番号147で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
miR−26の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号126〜129、および配列番号145〜146で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
miR−27の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号130〜133、および配列番号152〜153で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
miR−135の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号110〜113、および配列番号142〜143で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
miR−335の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号114〜117、および配列番号144で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
miR−15の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号118〜121、および配列番号150〜151で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
miR−19の発現をダウンレギュレーションするために本発明により使用できる代表的なポリヌクレオチドには、配列番号122〜125、および配列番号148〜149で示されるポリヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。
このような核酸配列はさらに、本明細書中上記でさらに詳しく記載されたような発現ベクターに含まれてもよい。
本発明はさらに、細胞(例えば、神経膠細胞または心臓細胞)中のマイクロRNAレベルをダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションした後で、標的遺伝子(例えば、転写物またはポリペプチド)の発現を評価することを意図している。
したがって、標的遺伝子(例えば、Slc6a4、Htr1a、MaoA、Adrb1、Adrb2、CRH type 1 receptor、CB1、FKBP5、Tph2、Grm1、Grik3、Grm5、Grik2、Grm7、Gria2、Dscam、L1cam、Tsnax、Sgk1、Stx1a、Adcyap1、Adcyap1r1、Adra2a、Ank3、Arc、Arhgap6、Atf3、Bace1、Cacna1d、Cadm3、Cplx1、Cplx2、Csmd1、Csnk1g1、Dcx、Diras2、Dlg2、Elk1、Frk、Fut9、Gabrb2、Gata3、Ghsr、Gpr3、Gria3、Grk5、Gsk3b、Hcn1、Hcn2、Impa1、Kalrn、Kcnn3、Kpna3、Myt1l、Ncoa2、Ndrg4、Nos1ap、Nr3c2、Ntng1、Nucks1、Pde1a、Pde4a、Pde8b、Plcb1、Prlr、Rab1b、Rap2a、Rorb、Sirt1、Slc12a6、Slc5a7、Sp1、Sv2b、Syne1、Syt1、Syt2、Syt3、Tgfbr2、Thrb、Trpc6、Vamp2、Wnt3および/またはZbed4)核酸配列(例えば、転写物)の存在および/またはレベルは、標的遺伝子の核酸配列(例えば、NM_001045.4で示されるSlc6a4またはその一部;例えば、NM_000524.3で示されるHtr1aまたはその一部;例えば、NM_000240.3もしくはNM_001270458.1で示されるMaoAまたはその一部;例えば、NM_000684.2で示されるAdrb1またはその一部;例えば、NM_000024.5で示されるAdrb2またはその一部;例えば、NM_001145146.1、NM_001145147.1で示されるCRH1型受容体またはその一部;例えば、NM_001160226.1,NM_033181.3で示されるCB1またはその一部;例えば、NM_001145775.1、NM_001145777.1で示されるFKBP5またはその一部;例えば、NM_173353.3で示されるTph2またはその一部;例えば、NM_000838.3、NM_001114329.1で示されるGrm1またはその一部;例えば、NM_000831.3で示されるGrik3またはその一部;例えば、NM_000842.3、NM_001143831.2で示されるGrm5またはその一部;例えば、NM_001166247.1、NM_021956.4で示されるGrik2またはその一部;例えば、NM_000844.3、NM_181874.2で示されるGrm7またはその一部;例えば、NM_000826.3、NM_001083619.1で示されるGria2またはその一部;例えば、NM_001389.3で示されるDscamまたはその一部;例えば、NM_000425.3、NM_001143963.1、NM_024003.2で示されるL1camまたはその一部;例えば、NM_005999.2で示されるTsnaxまたはその一部;例えば、NM_001143676.1、NM_001143677.1、NM_001143678.1で示されるSgk1またはその一部および/または例えば、NM_001165903.1、NM_004603.3で示されるStx1aまたはその一部、例えば、NM_001117.4、NM_001099733.1で示されるAdcyap1またはその一部、例えば、NM_001118.4、NM_001199635.1、NM_001199636.1、NM_001199637.1で示されるAdcyap1r1またはその一部、例えば、NM_000681.3で示されるAdra2aまたはその一部、例えば、NM_001149.3、NM_001204403.1、NM_001204404.1もしくはNM_020987.3で示されるANK3またはその一部、例えば、NM_015193.4で示されるArcまたはその一部、例えば、NM_001287242.1、NM_006125.2、NM_013423.2、NM_013427.2で示されるArhgap6またはその一部、例えば、NM_001030287.3、NM_001040619.2、NM_001206484.2、NM_001206486.2、NM_001206488.2、NM_001674.3で示されるAtf3またはその一部、例えば、NM_001207048.1、NM_001207049.1、NM_012104.4、NM_138971.3、NM_138972.3、NM_138973.3で示されるBace1またはその一部、例えば、NM_000720.3、NM_001128839.2、NM_001128840.2で示されるCacna1dまたはその一部、例えば、NM_001127173.1、NM_021189.3で示されるCadm3またはその一部、例えば、NM_006651.3で示されるCplx1またはその一部、例えば、NM_001008220.1、NM_006650.3で示されるCplx2またはその一部、例えば、NM_033225.5で示されるCsmd1またはその一部、例えば、NM_022048.3で示されるCsnk1g1またはその一部、例えば、NM_000555.3、NM_001195553.1、NM_178151.2、NM_178152.2、NM_178153.2で示されるDcxまたはその一部、例えば、NM_017594.3で示されるDiras2またはその一部、例えば、NM_001142699.1、NM_001142700.1、NM_001142702.1、NM_001206769.1、NM_001364.3で示されるDlg2またはその一部、例えば、NM_001114123.2、NM_001257168.1、NM_005229.4で示されるElk1またはその一部、例えば、NM_002031.2で示されるFrkまたはその一部、例えば、NM_006581.3で示されるFut9またはその一部、例えば、NM_000813.2、NM_021911.2で示されるGabrb2またはその一部、例えば、NM_001002295.1、NM_002051.2で示されるGata3またはその一部、例えば、NM_004122.2、NM_198407.2で示されるGhsrまたはその一部、例えば、NM_005281.3で示されるGpr3またはその一部、例えば、NM_000828.4、NM_001256743.1、NM_007325.4で示されるGRIA3またはその一部、例えば、NM_005308.2で示されるGrk5またはその一部、例えば、NM_001146156.1、NM_002093.3で示されるGSK3Bまたはその一部、例えば、NM_021072.3で示されるHcn1またはその一部、例えば、NM_001194.3で示されるHcn2またはその一部、例えば、NM_001144878.1、NM_001144879.1、NM_005536.3で示されるIMPA1またはその一部、例えば、NM_001024660.3、NM_003947.4、NM_007064.3,またはKalrnで示されるその一部、例えば、NM_001204087.1、NM_002249.5、NM_170782.2で示されるKCNN3またはその一部、例えば、NM_002267.3で示されるKpna3またはその一部、例えば、NM_015025.2で示されるMyt1lまたはその一部、例えば、NM_006540.2で示されるNcoa2またはその一部、例えば、NM_020465.3、NM_022910.3、NM_001130487.1、NM_001242836.1で示されるNdrg4またはその一部、例えば、NM_001126060.1、NM_001164757.1、NM_014697.2で示されるNOS1APまたはその一部、例えば、NM_000901.4、NM_001166104.1で示されるNr3c2またはその一部、例えば、NM_001113226.1、NM_001113228.1、NM_014917.2で示されるNtng1またはその一部、例えば、NM_022731.4で示されるNucks1またはその一部、例えば、NM_005019.4、NM_001003683.2、NM_001258312.1で示されるPde1aまたはその一部、例えば、NM_001111307.1、NM_001111308.1、NM_001111309.1で示されるPde4aまたはその一部、例えば、NM_003719.3、NM_001029851.2、NM_001029852.2で示されるPde8bまたはその一部、例えば、NM_015192.3、NM_182734.2で示されるPlcb1またはその一部、例えば、NM_000949.5、NM_001204315.1、NM_001204316.1で示されるPrlrまたはその一部、例えば、NM_030981.2で示されるRab1bまたはその一部、例えば、NM_021033.6で示されるRap2aまたはその一部、例えば、NM_006914.3で示されるRorbまたはその一部、例えば、NM_001142498.1、NM_012238.4で示されるSirt1またはその一部、例えば、NM_133647.1、NM_005135.2、NM_001042495.1で示されるSlc12a6またはその一部、例えば、NM_021815.2で示されるSlc5a7またはその一部、例えば、NM_138473.2、NM_003109.1、NM_001251825.1で示されるSp1またはその一部、例えば、NM_001167580.1、NM_014848.4で示されるSv2bまたはその一部、例えば、NM_033071.3、NM_182961.3で示されるSyne1またはその一部、例えば、NM_001135805.1、NM_001135806.1、NM_005639.2で示されるSyt1またはその一部、例えば、NM_001136504.1、NM_177402.4で示されるSyt2またはその一部、例えば、NM_001160328.1、NM_001160329.1、NM_032298.2で示されるSyt3またはその一部、例えば、NM_001024847.2、NM_003242.5で示されるTgfbr2またはその一部、例えば、NM_000461.4、NM_001128176.2、NM_001128177.1、NM_001252634.1で示されるThrbまたはその一部、例えば、NM_004621.5で示されるTrpc6またはその一部、例えば、NM_014232.2で示されるVamp2またはその一部、例えば、NM_030753.4で示されるWnt3またはその一部および/または、例えば、NM_014838.2で示されるZbed4またはその一部)にハイブリダイズすることができる単離ポリヌクレオチド(例えば、ポリヌクレオチドプローブ、オリゴヌクレオチドプローブ/プライマー)を使って決定することができる。このようなポリヌクレオチドはどのようなサイズ、例えば、短いポリヌクレオチド(例えば、15〜200塩基)および中間的なポリヌクレオチド(例えば、200〜2000塩基)、または、2000塩基より大きい長いポリヌクレオチドも可能である。
本発明によって使用される単離ポリヌクレオチドプローブは、本発明の標的遺伝子RNA転写物に対して特異的である直接的または間接的に標識されたRNA分子(例えば、RNAオリゴヌクレオチド、インビトロ転写されたRNA分子)、DNA分子(例えば、オリゴヌクレオチド、cDNA分子、ゲノム分子)および/またはそれらの類似体[例えば、ペプチド核酸(PNA)]のいずれであってもよい。
本発明の教示に従って設計されるオリゴヌクレオチドは、本明細書中上記で詳しく記載されているように、当該技術分野で知られている任意のオリゴヌクレオチド合成法により生成することができる。
本発明のオリゴヌクレオチドは、本明細書中上記される配列変化体との特異的なハイブリダイズが可能な少なくとも17塩基、少なくとも18塩基、少なくとも19塩基、少なくとも20塩基、少なくとも22塩基、少なくとも25塩基、少なくとも30塩基、または、少なくとも40塩基のオリゴヌクレオチドである。
本発明のオリゴヌクレオチドは、3’から5’へのホスホジエステル連結で結合する、プリン塩基およびピリミジン塩基からなる複素環式ヌクレオシドを含むことができる。
好ましくは、使用されるオリゴヌクレオチドは、本明細書中上記で広範に記載されているように、骨格(例えば、糖リン酸骨格)、ヌクレオシド間結合および/または塩基のいずれかにおいて修飾されたオリゴヌクレオチドである。
本発明によって使用される単離ポリヌクレオチドは、タグ分子または標識分子を使用して直接的または間接的に標識することができる。このような標識は、例えば、蛍光性分子(例えば、フルオレセインまたはTexas Red)、放射性分子(例えば、32P−γ−ATPまたは32P−α−ATP)および発色性基質[例えば、ファストレッド、BCIP/INT、(ABCAM,Cambridge,MAから入手可能である)]であってよい。直接的な標識は、標識分子を(例えば、固相合成を使用して)ポリヌクレオチドに共有結合によりコンジュゲートすることによって、または、(例えば、インビトロ転写反応またはランダムプライム標識を使用する)重合を介した取り込みによって達成することができる。間接的な標識は、標識されていないタグ分子(例えば、ジゴキシゲニンまたはビオチン)をポリヌクレオチドに共有結合的にコンジュゲートし、または取り込み、続いて、このポリヌクレオチドを、その標識されていないタグを特異的に認識することができる標識された分子(抗ジゴキシゲニン抗体またはストレプトアビジン)に結合させることによって達成することができる。
上記のポリヌクレオチドは様々なRNA検出方法において用いることができ、例えば、ノーザンブロット分析、逆転写PCR(RT−PCR)[例えば、半定量的RT−PCR、定量的RT−PCR、例えば、Light Cycler(商標)(Roche)を使用]、RNAインサイツハイブリダイゼーション(RNA−ISH)、インサイツRT−PCR染色[例えば、Nuovo GJ,et al.1993,Intracellular localization of polymerase chain reaction(PCR)−amplified hepatitis C cDNA.Am J Surg Pathol.17:683−90、およびKomminoth P,et al.1994,Evaluation of methods for hepatitis C virus detection in archival liver biopsies.Comparison of histology,immunohistochemistry,in situ hybridization,reverse transcriptase polymerase chain reaction(RT−PCR)and in situ RT−PCR.Pathol Res Pract.,190:1017−25に記載]、および、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ分析[例えば、Affymetrixマイクロアレイ(Affymetrix(登録商標)、Santa Clara,CA)を使用]などにおいて用いることができる。
標的遺伝子(例えば、Slc6a4、Htr1a、MaoA、Adrb1、Adrb2、CRH type 1 receptor、CB1、FKBP5、Tph2、Grm1、Grik3、Grm5、Grik2、Grm7、Gria2、Dscam、L1cam、Tsnax、Sgk1、Stx1a、Adcyap1、Adcyap1r1、Adra2a、Ank3、Arc、Arhgap6、Atf3、Bace1、Cacna1d、Cadm3、Cplx1、Cplx2、Csmd1、Csnk1g1、Dcx、Diras2、Dlg2、Elk1、Frk、Fut9、Gabrb2、Gata3、Ghsr、Gpr3、Gria3、Grk5、Gsk3b、Hcn1、Hcn2、Impa1、Kalrn、Kcnn3、Kpna3、Myt1l、Ncoa2、Ndrg4、Nos1ap、Nr3c2、Ntng1、Nucks1、Pde1a、Pde4a、Pde8b、Plcb1、Prlr、Rab1b、Rap2a、Rorb、Sirt1、Slc12a6、Slc5a7、Sp1、Sv2b、Syne1、Syt1、Syt2、Syt3、Tgfbr2、Thrb、Trpc6、Vamp2、Wnt3および/またはZbed4)アミノ酸配列(例えば、タンパク質)の存在および/またはレベルは、例えば、免疫複合体[すなわち、生物試料中に存在する標的遺伝子抗原(アミノ酸配列)と、特異的抗体との間で形成された複合体]の形成を介した特異的抗体を使って決定することができる。
本発明の免疫複合体は、使用される方法および生物学的試料に応じて変化する場合がある様々な温度、塩濃度およびpH値で形成することができ、当業者は、それぞれの免疫複合体の形成のために好適な条件を調節することができる。
本明細書で使用される用語「抗体」は、完全な抗体分子、ならびにその機能的な断片、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、または単一ドメイン分子、例えば抗原のエピトープに対するVHおよびVLを含む。これらの機能性抗体断片は次のように定義される:(1)Fab、完全な軽鎖および1つの重鎖の一部が得られる全長抗体の酵素パパインによる消化により生成することができる抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片;(2)Fab’、全長抗体をペプシンで処理した後、還元して、抗体分子当たり、完全な軽鎖および重鎖の一部を生じさせて得ることができる抗体分子の断片;(3)(Fab’)2、全長抗体を酵素ペプシンで処理し、その後の還元を行わないで得ることができる抗体の断片;(Fab’)2は、2つのジスルフィド結合により保持されている2つのFab’断片のダイマーである;(4)Fv、二本鎖として発現された、軽鎖の可変領域および重鎖に可変領域を含む遺伝子組み換えされた断片と定義される;(5)単鎖抗体(「SCA」)、適切なポリペプチドリンカーにより遺伝的に融合された単鎖分子として連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む遺伝子組み換えされた分子;および(6)単一ドメイン抗体は、抗原に対し十分な親和性を示す単一VHまたはVLドメインから構成される。
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびその断片の生成方法は、この技術分野では広く知られている(例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1988を参照されたい。この文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
本発明による抗体断片は、抗体のタンパク質分解的加水分解によって調製することができ、あるいは、断片をコードするDNAの大腸菌または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養または他のタンパク質発現システム)における発現によって調製することができる。抗体断片は、従来の方法による全長抗体のペプシン消化またはパパイン消化によって得ることができる。例えば、抗体断片は、抗体をペプシンで酵素切断して、F(ab’)2として示される5S断片を得ることによって作製することができる。この断片は、チオール還元剤、および場合により、ジスルフィド連結の切断から生じるスルフヒドリル基に対する保護基を使用してさらに切断して、3.5SのFab’一価断片を作製することができる。あるいは、ペプシンを使用する酵素切断により、2つの一価Fab’断片およびFc断片が直接的に得られる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号、ならびにそれらに含まれる参考文献に記載されている(これらの特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。また、Porter,R.R.,Biochem.J.,73:119〜126,1959も参照されたい。抗体を切断する他の方法、例えば、一価の軽鎖−重鎖断片を形成させるための重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的もしくは遺伝学的な技術などもまた、断片が、完全な抗体によって認識される抗原に結合する限り、使用することができる。
Fv断片はVH鎖およびVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar et al.[Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 69:2659−62(19720]に記載されているように非共有結合性であってよい。あるいは、可変鎖を、分子間ジスルフィド結合によって連結することができ、または、グルタルアルデヒドなどの化学薬品によって架橋することができる。好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって連結されたVH鎖およびVL鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(scFv)は、オリゴヌクレオチドによりつながれたVHドメインおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。この構造遺伝子は発現ベクターに導入され、続いて、発現ベクターは大腸菌などの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞により、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖が合成される。scFvを製造するための様々な方法が、例えば、Whitlow and Filpula,Methods 2:97−105(1991);Bird et al.,Science 242:423−426(1988);Pack et al.,Bio/Technology 11:1271−77(1993);および米国特許第4,946,778号(この特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
抗体断片の別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識ユニット」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。このような遺伝子は、例えば、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためにポリメラーゼ連鎖反応を使用することによって調製される。例えば、LarrickおよびFryの[Methods,2:106−10(1991)]を参照されたい。
抗体はまた、ファージディスプレーライブラリー[Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)]を含む、この分野で知られている様々な技術を使用して製造することができる。ColeらおよびBoernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体を調製するために利用することができる[Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)およびBoerner et al.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991)]。同様に、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、内在性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されている遺伝子組換え動物(例えば、マウス)に導入することによって作製することができる。抗原投与したとき、ヒト抗体の産生が認められ、この場合、その産生は、遺伝子再配置、組み立ておよび抗体レパートリーを含むすべての点に関してヒトにおいて見られる産生と非常に似ている。この方法は、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、および下記の科学的刊行物:Marks et al.,Bio/Technology 10,:779−783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368 812−13(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845−51(1996);Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);およびLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13,65−93(1995)に記載されている。
本発明により使用できる代表的な抗体には、例えば、下記の抗体が含まれる:例えば、Abnova Corporation、AbgentおよびMBL Internationalから入手可能な抗Slc6a4抗体;例えば、Novus Biologicals、Acris Antibodies GmbHおよびAbnova Corporationから入手可能な抗Htr1a抗体;例えば、Abnova Corporation、Proteintech Group,Inc.およびAbgentから入手可能な抗MaoA抗体;例えば、Biorbyt、Abgent、および、antibodies−onlineから入手可能な抗Adrb1抗体;例えば、Tocris Bioscience、Abnova Corporationおよびantibodies−onlineから入手可能な抗Adrb2抗体;例えば、MyBioSource.com、AbcamおよびNovus Biologicalsから入手可能な抗CRH1型受容体抗体;例えば、Santa Cruz Biotechnology,Inc.およびEpitomics,Inc.から入手可能な抗CB1抗体;例えば、BD BiosciencesおよびAbnova Corporationから入手可能な抗FKBP5抗体;例えば、Novus BiologicalsおよびAcris Antibodies GmbHから入手可能な抗Tph2抗体;例えば、Novus BiologicalsおよびBiorbytから入手可能な抗Grm1抗体;例えば、Acris Antibodies GmbHおよびAtlas Antibodiesから入手可能な抗Grik3抗体;例えば、BiorbytおよびAcris Antibodies GmbHから入手可能な抗Grm5抗体;例えば、Proteintech Group,Inc.,Aviva Systems BiologyおよびAbgentから入手可能な抗Grik2抗体;例えば、Acris Antibodies GmbHおよびantibodies−onlineから入手可能な抗Grm7抗体;例えば、Proteintech Group,Inc.およびAbnova Corporationから入手可能な抗Gria2抗体;例えば、Novus BiologicalsおよびR&D Systemsから入手可能な抗Dscam抗体;例えば、GeneTex,Novus BiologicalsおよびAcris Antibodies GmbHから入手可能な抗L1cam抗体;例えば、BD BiosciencesおよびGenWay Biotech,Inc.から入手可能な抗Tsnax抗体;例えば、Epitomics,Inc.およびAcris Antibodies GmbHから入手可能な抗Sgk1抗体;ならびに/または、例えば、MBL InternationalおよびSpring Bioscienceから入手可能な抗Stx1a抗体。
本発明の免疫複合体の形成を検出するために様々な方法を使用することができ、当業者は、どの方法が、それぞれの免疫複合体のために、および/または、診断に使用される細胞の型のために好適であるかを決定することができる。
本発明の免疫複合体に使用される特異的抗体(例えば、抗Slc6a4抗体;抗Htr1a抗体;抗MaoA抗体;抗Adrb1抗体;抗Adrb2抗体;抗CRH1型受容体抗体;抗CB1抗体;抗FKBP5抗体;抗Tph2抗体;抗Grm1抗体;抗Grik3抗体;抗Grm5抗体;抗Grik2抗体;抗Grm7抗体;抗Gria2抗体;抗Dscam抗体;抗L1cam抗体;抗Tsnax抗体;抗Sgk1抗体および/または抗Stx1a抗体)は当該技術分野において既知の方法を使用して標識することができる。標識抗体は、一次抗体(すなわち、特定の抗原、例えば、標的遺伝子特異的抗原に結合する抗体)であっても、または、一次抗体に結合する二次抗体(例えば、標識ヤギ抗ウサギ抗体、標識マウス抗ヒト抗体)であってもよいことは理解されよう。抗体は標識に直接にコンジュゲートすることができ、または、酵素にコンジュゲートすることができる。
本発明の抗体は、(抗体にコンジュゲート化された蛍光性色素を使用して)蛍光標識することができ、または、(例えば、放射能標識された、例えば、125I抗体を使用して)放射能標識することができ、または、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)にコンジュゲートすることができ、比色反応を生じさせるための発色性基質と一緒に使用することができる。本発明の酵素コンジュゲート抗体によって利用される発色性基質には、AEC、ファストレッド、ELF−97基質[2−(5’−クロロ−2−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4(3H)−キナゾリノン]、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、フェノールフタレインジホスフェート、およびELF39−ホスフェート、BCIP/INT、Vector Red(VR)、アルカリホスファターゼ酵素のためのサーモン・マゼンタホスフェート(Avivi C.,et al.,1994,J Histochem.Cytochem.1994;42:551−4)、および、Nova Red、ジアミノベンジジン(DAB)、Vector(R)SG基質、ペルオキシダーゼ酵素のためのルミノール型化学発光基質が含まれるが、これらに限定されない。これらの酵素基質は、Sigma(St Louis,MO,USA)、Molecular Probes Inc.(Eugene,OR,USA)、Vector Laboratories Inc.(Burlingame,CA,USA)、Zymed Laboratories Inc.(San Francisco,CA,USA),Dako Cytomation(Denmark)から市販されている。
可溶性の(例えば、分泌された、排出された)標的遺伝子ポリペプチドを含有する可能性のある生物学的試料(例えば、血液試料または血清など)の免疫複合体の検出は、蛍光活性化細胞分取(FACS)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット分析および放射免疫アッセイ(RIA)分析、免疫沈殿(IP)を使用して行うことができ、または、分子量に基づく手法により行うことができる。
ウエスタンブロットでは、タンパク質が細胞試料から抽出され、電気泳動(例えば、SDS−PAGE)および膜(例えば、ナイロンまたはPVDF)へのブロッティングに供される。次に、膜は、直接に標識するか、または2次標識抗体に結合することができる特異的抗体(例えば、抗Slc6a4抗体;抗Htr1a抗体;抗MaoA抗体;抗Adrb1抗体;抗Adrb2抗体;抗CRH1型受容体抗体;抗CB1抗体;抗FKBP5抗体;抗Tph2抗体;抗Grm1抗体;抗Grik3抗体;抗Grm5抗体;抗Grik2抗体;抗Grm7抗体;抗Gria2抗体;抗Dscam抗体;抗L1cam抗体;抗Tsnax抗体;抗Sgk1抗体および/または抗Stx1a抗体)と相互作用する。検出は、オートラジオグラフィー、比色反応または化学発光によって行うことができる。この方法は、基質の量の定量化と、電気泳動期間中のアクリルアミドゲルにおける移動距離を示す膜上の相対的位置によるその固有の特性の決定との両方を可能にする。
生物学的試料中の抗原の濃度が低い場合、抗原(標的遺伝子アミノ酸配列)の検出を免疫沈殿(IP)によって行うことができる。免疫沈殿分析では、特異的抗体(例えば、抗Slc6a4抗体;抗Htr1a抗体;抗MaoA抗体;抗Adrb1抗体;抗Adrb2抗体;抗CRH1型受容体抗体;抗CB1抗体;抗FKBP5抗体;抗Tph2抗体;抗Grm1抗体;抗Grik3抗体;抗Grm5抗体;抗Grik2抗体;抗Grm7抗体;抗Gria2抗体;抗Dscam抗体;抗L1cam抗体;抗Tsnax抗体;抗Sgk1抗体および/または抗Stx1a抗体)は、標的遺伝子ポリペプチドを含む試料(例えば、細胞溶解物)と直接に相互作用することができ、形成された複合体をさらに、ビーズにコンジュゲートした二次抗体を使用して検出することができる(例えば、特異的抗体がマウスモノクローナル抗体である場合、二次抗体は、例えば、Sepharoseビーズにコンジュゲートした抗マウス抗体であってよい)。次に、ビーズを遠心分離によって沈殿させることができ、その後、沈殿したタンパク質(例えば、標的遺伝子ポリペプチドおよび特異的抗体)を、(例えば、95℃での変性を使用して)ビーズから引き離し、さらに、抗体を使用するウエスタンブロット分析に供することができる。あるいは、特異的抗体およびビーズコンジュゲート二次抗体を、抗原(標的遺伝子ポリペプチド)を含有する生物学的試料に加え、それにより、免疫複合体を形成させることができる。あるいは、標的遺伝子ポリペプチドが高グリコシル化タンパク質である場合、標的遺伝子ポリペプチドはまた、ビーズに同様にコンジュゲート可能なグリコシル化ポリペプチドと結合することができる基質、例えば、コンカバリンA(GE Healthcare Bio−Sciences,Uppsala,Sweden)などを使用して沈殿させることができ、その後、上述の特異的抗体を使用するウエスタンブロット分析を行うことができる。
FACS分析は、細胞膜上に存在する抗原の検出を可能にする。簡単に説明すると、上記のような特異的抗体が蛍光団に連結され、検出は、細胞が光ビームを通過する際にそれぞれの細胞から放射される光の波長を読み取る細胞分取装置によって行われる。この方法では、2つ以上の抗体を同時に用いることができる。
標的遺伝子ポリペプチドの存在および/またはレベルはまた、ELISAを使用して求めることもできる。簡単に説明すると、標的遺伝子抗原を含有する試料が表面(例えば、マイクロタイタープレートのウエルなど)に固定される。酵素に結合した抗原特異的抗体(例えば、抗Slc6a4抗体;抗Htr1a抗体;抗MaoA抗体;抗Adrb1抗体;抗Adrb2抗体;抗CRH1型受容体抗体;抗CB1抗体;抗FKBP5抗体;抗Tph2抗体;抗Grm1抗体;抗Grik3抗体;抗Grm5抗体;抗Grik2抗体;抗Grm7抗体;抗Gria2抗体;抗Dscam抗体;抗L1cam抗体;抗Tsnax抗体;抗Sgk1抗体および/または抗Stx1a抗体)は、抗原に適用され、抗原に結合することができる。その後、抗体の存在は、抗体に結合された酵素を用いる比色反応によって検出され、定量される。この方法において一般に用いられる酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼが含まれる。十分に校正され、また、応答の直線の範囲内である場合は、試料に存在する基質の量は、生成される色の量に比例する。一般に、定量精度を改善するために、基質標準が用いられる。
標的遺伝子ポリペプチドの存在および/またはレベルはまた、放射免疫アッセイ(RIA)を使用して求めることができる。1つの形式では、この方法は、所望の抗原(標的遺伝子ポリペプチド)を、特異的抗体と、沈殿可能なキャリア(例えば、アガロースビーズなど)に固定化されている放射標識抗体結合タンパク質(例えば、I125により標識されたプロテインA)による沈殿を伴う。沈殿したペレットのカウント数は抗原の量に比例する。
RIAの代替方式では、標識抗原と、非標識抗体結合タンパク質とが用いられる。未知量の抗原を含有する試料が様々な量で加えられる。標識された抗原から得られる沈殿したカウント数の減少が添加試料における抗原の量に比例している。
標的遺伝子ポリペプチドの存在および/またはレベルはまた、分子量に基づく手法を使用して求めることができる。免疫複合体は、その成分よりも大きい分子量を示すので、分子量のそのような変化を検出することが可能な方法も用いることができる。例えば、免疫複合体をゲル遅延度アッセイによって検出することができる。簡単に説明すると、非変性アクリルアミドゲルに、試料を加える。その成分と比較した場合のタンパク質産物の大きさ(分子量)の変化により、免疫複合体の存在が示される。高分子量側へのこのようなシフトを、非特異的タンパク質染色(例えば、銀染色またはクーマシー(Commassie)ブルー染色)を使用して見ることができる。
組織切片(例えば、パラフィン包埋物または凍結切片などの生物試料中の標的遺伝子ポリペプチドのインサイツ検出を、細胞上の抗体の結合をインサイツで検出する免疫学的染色法を使用して行うことができる。免疫学的染色手順の方法には、蛍光標識免疫組織化学(抗体にコンジュゲートされた蛍光色素を使用する)、放射能標識免疫組織化学(放射能標識された(例えば、125I)抗体を使用する)、および、免疫細胞化学[酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)と発色性基質とを使用し、比色反応を生じさせる]が含まれるが、これらに限定されない。抗体にコンジュゲートされた酵素は、本明細書中上に記載されるような様々な発色性基質を利用できることは理解されよう。
好ましくは、本発明によって使用される免疫学的染色は免疫組織化学および/または免疫細胞化学である。
免疫学的染色の後に、染色されなかった細胞区画に結合する色素を使用して、細胞の対比染色が行われるのが好ましい。例えば、標識抗体が、細胞質に存在する抗原に結合する場合、核染色(例えば、ヘマトキシリン−エオシン染色)が適切な対比染色である。
一実施形態では、方法は、miR−181および/またはmiR−27のダウンレギュレーション後にTph2遺伝子の発現を測定することを含む。
一実施形態では、方法は、miR−135および/またはmiR−335のアップレギュレーション後に、Slc6a4遺伝子の発現を測定することを含む。
一実施形態では、方法は、miR−135、miR−335、miR−181、miR−182および/またはmiR−26のアップレギュレーション後にHtr1a遺伝子の発現を測定することを含む。
一実施形態では、方法は、miR−27のアップレギュレーション後に、MaoA遺伝子の発現を測定することを含む。
一実施形態では、方法は、miR−19のアップレギュレーション後に、Adrb1遺伝子の発現を測定することを含む。
一実施形態では、方法は、CB1をアップレギュレーションした後にCB1遺伝子の発現を測定することを含む。
一実施形態では、方法は、miR−15のアップレギュレーション後に、CRH1型受容体遺伝子の発現を測定することを含む。
一実施形態では、方法は、miR−15のアップレギュレーション後に、FKBP5遺伝子の発現を測定することを含む。
本明細書で上述したように、本発明者らは、miR−135のレベルが、(健康なヒト対象に比較して)うつ病、不安症、双極性障害およびストレスを含む気分障害のヒト対象の血液試料中で有意にダウンレギュレーションされ、また、(処置の開始前の同じ対象または非処置ヒト対象に比べて)抗うつ療法で処置されているヒト対象の血液試料中でアップレギュレーションされることをさらに認識した。
したがって、診断を必要としているヒト対象の気分障害を診断する方法であって、ヒト対象の生物試料中のmiR−135の発現レベルを測定することを含む方法が提供され、健康なヒト対象の生物試料中に比べて、miR−135のより低い発現レベルが、気分障害を示す。
本発明にしたがって、いずれの気分障害も診断することができ、気分障害には、双極性障害、うつ病、大うつ病、不安症、ストレス、疲労、認知機能障害、パニック発作、強迫行動、嗜癖、社会恐怖症、統合失調症、睡眠障害、および摂食障害(例えば、神経性食欲不振症、神経性過食症、特定不能の摂食障害、気晴らし食い症候群(BED)または異食症摂食障害)が含まれるが、これらに限定されない。
miR−135(例えば、miR−135a)の発現レベルの測定は通常、生物試料で行われる。
特定の実施形態では、「生物試料」という用語は、体液、例えば、新鮮な全血、分画全血、血漿、血清、脳脊髄液(CSF)、尿、リンパ液、および呼吸、腸および尿生殖路の各種外分泌物、涙液、唾液、乳汁、ならびに単核細胞(例えば、リンパ球、単球、樹状細胞)を含む白血球を意味する。
通常、全血および分画全血(すなわち、例えば、遠心分離により別々の成分に分画された血液試料)は、血漿、白血球、血小板および赤血球を含むすべての血液成分を含む。血清は、血液細胞でもなく、凝固因子でもない血液成分であり、血漿からフィブリノーゲンを除いたものである。血清は、血液凝固(凝結)に使用されないタンパク質、および電解質、抗体、抗原、ホルモン、ならびに外因性の物質(例えば、薬物および微生物)を含む。さらに、血漿は、凝固因子の他に、血清の全ての成分を含む。
特定の実施形態では、生物試料は全血試料である。
特定の実施形態では、生物試料は血清または血漿試料である。
特定の実施形態では、生物試料は単核細胞試料である。
特定の実施形態では、生物試料は赤血球を欠いている。
特定の実施形態では、生物試料は少なくとも90%が白血球(例えば、少なくとも90%が単核細胞)である。
miR−135の発現レベルの測定は、当業者に知られているいずれかの方法によって、例えば、ノーザンブロット分析、RNアーゼ保護アッセイおよびPCR(例えば、リアルタイムPCR)によって行うことができる。
上述のように、健康なヒト対象(すなわち、気分障害に罹患していない対象)の生物試料中に比べて、低いmiR−135の発現レベルは、気分障害を示す。
一実施形態では、健康なヒト対象の生物試料中に比べて、低いmiR−135の発現レベルは、統計的に有意である。
気分障害のヒト対象のmiR−135の発現レベルは、健康なヒト対象のレベルに比べて、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%だけ低い可能性がある。
診断は、ゴールドスタンダード法を使用してさらに評価し、確立することができる。通常は、患者の全病歴、身体診察、および、症状の徹底的評価のうちの少なくとも1つが、障害(うつ病または双極性障害を含む気分障害)の特定に役立つ。例えば、ハミルトンうつ病評価尺度およびベックうつ病質問票などの標準化された質問票が有益な場合がある。
双極性障害の診断は、定型基準を使ってさらに評価することができる。最も広範に使用されている双極性障害の診断基準は、米国精神医学会の精神障害の診断と統計のためのマニュアル(例えば、バージョンDSM−IV−TR)、ならびに世界保健機関の疾病および関連保健問題の国際統計分類(例えば、ICD−10)である。
さらに、医学的疾患、例えば、甲状腺機能低下症または甲状腺機能亢進症、代謝障害、全身感染症または慢性疾患、および梅毒またはHIV感染症を除外する検査を実施することができる。脳波を使って、てんかんを除外することができ、頭部のCTスキャンにより脳病変を除外することができる。
本発明者らは、ヒト対象のmiR−135(例えば、miR−135a)の血中レベルが、抗うつ剤療法後にアップレギュレーションされることをさらに示した(下記実施例セクションの実施例16を参照されたい)。
したがって、本発明の別の実施形態では、抗うつ剤または気分障害(例えば、双極性障害)の処置用の薬物の処置をモニターする方法であって、(a)処置を必要とするヒト対象を抗うつ剤または気分障害の処置用の薬物により処置すること、および、(b)ヒト対象の生物試料中のmiR−135の発現レベルを処置の前後で測定することを含む方法が提供され、抗うつ剤または気分障害の処置用薬物による処置の前におけるmiR−135の発現レベルと比較して、抗うつ剤による処置後におけるmiR−135のより高い発現レベルにより、処置が効果的であることが示される。
一実施形態では、方法は、(c)ステップ(b)でmiR−135のより高い発現レベルが観察される場合に、処置を改善するために、ヒト対象を処置することをさらに含む。
血液試料(例えば、新鮮な全血、分画全血、血漿または血清)は通常、抗うつ剤または気分障害の処置用の薬物による処置後のヒト対象から得られるが、血液試料は、miR−135レベルのさらなる比較のために処置前の対象から得ることもできる。
特定の実施形態では、miR−135はmiR−135aを含む。
本明細書中で使用される場合、用語の「抗うつ剤」は、大うつ病および気分変調症などの気分障害、および社会不安障害などの不安障害を改善するために使用される薬物を意味する。代表的な抗うつ剤には、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI、例えば、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンなど)、セロトニン−ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI、例えば、デスベンラファキシン、デュロキセチン、ミルナシプランおよびベンラファキシンなど)、ノルアドレナリン作動性および特異的なセロトニン作動性抗うつ剤(例えば、ミアンセリンおよびミルタザピンなど)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害剤(NRI、例えば、アトモキセチン、マジンドール、レボキセチンおよびビロキサジンなど)、ノルエピネフリン−ドパミン再取り込み阻害剤(例えば、ブプロピオンなど)、選択的セロトニン再取り込み強化剤(例えば、チアネプチンなど)、ノルエピネフリン−ドパミン脱抑制剤(NDDI、例えば、アゴメラチンなど)、三環系抗うつ剤(第三級アミン三環系抗うつ剤および第二級アミン三環系抗うつ剤を含む)、および、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)が含まれるが、これらに限定されない。
一実施形態では、抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、三環系抗うつ剤およびノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NRI)を含む。
特定の実施形態では、抗うつ剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を含む。
本明細書で使用される場合、「気分障害の処置用の薬物」という用語は、双極性障害を含む気分障害の処置に使用されるいずれかの薬物またはそれらの薬物の任意の組み合わせを意味する。代表的薬物には、リチウム(例えば、炭酸リチウム、クエン酸リチウム、硫酸リチウム)、抗精神病薬物(例えば、上記で詳述した、定型抗精神病および非定型抗精神病)気分安定剤薬物(例えば、上記で詳述した、バルプロ酸(VPA、バルプロ酸)、鉱物、抗けいれん薬、抗精神病薬)が含まれるが、これらに限定されない。
本方法に包含されるその他の処置選択肢(単独でまたは上記と組み合わせて)には、非薬物療法が挙げられ、この方法には、臨床心理学、電気痙攣療法、措置入院、光線療法、心理療法、経頭蓋磁気刺激および認知行動療法が含まれるが、これらに限定されない。
処置前のmiR−135発現レベルに比べて、処置後に有意により高いmiR−135の発現レベルが得られる場合には、効果的な抗うつ/気分障害処置が決定される。
処置後のヒト対象のmiR−135の発現レベルは、抗うつまたは気分障害処置前の対象のレベルに比べて、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%だけ高い可能性がある。
処置のモニタリングは、患者の満足な状態を評価することによって、また、加えて、あるいは、代わりに、対象を、行動試験、MRI、または、当業者に既知のいずれかの他の方法に供することによって行うことも可能である。
本出願から成熟する特許の存続期間中には、多くの関連するmiRNAの阻害剤または代替的なmiRNAの修飾が開発されることが予想され、マイクロRNAの用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが期待される。
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を意味する。
用語の「含む(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にのみ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
本明細書中で使用される場合、単数形(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含することができる。
本出願を通して、本発明の様々な実施形態を範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解されたい。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意図される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、同義に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意図される。
本明細書中で使用される用語「方法」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項のセクションにおいて特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
実施例
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
通常、本明細書で使用される命名法と、本発明で利用される実験方法には、分子、生化学、微生物学および組み換えDNAの技術が含まれている。これらの技術は文献に詳細に説明されている。例えば以下の文献を参照されたい:”Molecular Cloning:A laboratory Manual” Sambrook et al.,(1989);”Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I−III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,”Current Protocols in Molecular Biology”,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,”A Practical Guide to Molecular Cloning”,John Wiley & Sons,New York(1988);Watson et al.,”Recombinant DNA”,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)”Genome Analysis:A Laboratory Manual Series”,Vols.1−4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号および同第5,272,057号に示された方法;”Cell Biology:A Laboratory Handbook”,Volumes I−III Cellis,J.E.,ed.(1994);”Current Protocols in Immunology” Volumes I−III Coligan J.E.,ed.(1994);Stites et al.(eds),”Basic and Clinical Immunology”(8th Edition),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(eds),”Selected Methods in Cellular Immunology”,W.H.Freeman and Co.,New York(1980);利用可能なイムノアッセイは、特許および科学文献に広範囲にわたり記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771号および同第5,281,521号を参照されたい;“Oligonucleotide Synthesis” Gait,M.J.,ed.(1984);“Nucleic Acid Hybridization” Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1985);“Transcription and Translation” Hames,B.D.,and Higgins S.J.,Eds.(1984);“Animal Cell Culture” Freshney,R.I.,ed.(1986);”Immobilized Cells and Enzymes” IRL Press,(1986);“A Practical Guide to Molecular Cloning” Perbal,B.,(1984)および“Methods in Enzymology” Vol.1−317,Academic Press;“PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications”,Academic Press,San Diego,CA(1990);Marshak et al.,“Strategies for Protein Purification and Characterization − A Laboratory Course Manual” CSHL Press(1996);これら全ては、あたかも本明細書で完全に記載されているかのように、参照により組み込まれる。その他の一般的な文献は、本明細書全体を通して提供される。それらの文献に記載の方法は当技術分野で周知であると考えられるが、読者の便宜のために提供されている。それらの文献に含まれるすべての情報は参照により本明細書に組み込まれる。
セロトニンニューロンにおけるmiRの示差的発現
材料および実験手順
5HTニューロンのマイクロRNAマイクロアレイ
ePET YFPマウスの12日目の胎仔由来の後脳細胞を培養し、選別して、5HTニューロンを周りの非5HTニューロンから区別した。miRNA集団を含む総RNAを製造者の説明書に従って精製し、標識し、Sanger miRBase(リリース12.0)に基づくAgilentマウスmiRNAマイクロアレイ(Agilent Tech,Mississauga,ON,Canada)設計番号021828を使ってハイブリダイゼーションした。マイクロアレイを走査し、データを、Feature Extraction Software(Agilent Technologies)を使用して抽出し、処理した。走査後、GeneView.txtファイルの強度出力データを分析して、マイクロRNAの相対的発現差異を、Partek(登録商標)Genomics Suite(Partek Inc.,St.Louis,MO)を使用して定量化した。データをlog2変換し、分位数正規化し、GeneViewファイルにおけるフラグ「gIsGeneDetected」に従って選別した。666個のマウスmiRのうち、この選別工程により、198個がさらなる分析のために残った。その後、示差的に発現したmiRを、1.5倍の変化を有意とする閾値を使ってANOVAにより特定した。コントラストをANOVA検定の範囲内で計算した。BenjaminiおよびHochberg補正を偽陽性低減のために使用した(多重検定補正)。
Psicheck2ルシフェラーゼ発現プラスミドへの3’UTRのクローン化
Slc6a4、Htr1a、MaoAおよびTph2の3’UTR配列をマウスのゲノムDNAまたは全脳cDNAからPCR増幅した。3’UTRのPCRフラグメントを製造者のガイドラインに従ってpGEM−Teasyベクター(Promega)に連結し、さらに、Psicheck2レポータープラスミド(Promega)におけるルシフェラーゼの3’末端での単一NotI部位にサブクローン化した。変異3’UTR配列(これはmiR−135シード配列を欠いている)を、シードマッチ配列全体にわたるプライマーオーバーハングとともに合成した。クローン化配向を診断的切断および配列決定によって確認した。
遺伝子導入およびルシフェラーゼアッセイ
HEK293T細胞を70%〜85%の集密度まで48ウエル形式でポリ−L−リシン上で成長させ、下記のプラスミドでポリエチレンイミンを使用して遺伝子導入した:5ngのPsicheck2−3’UTRプラスミドおよび特定のmiRNAのための、215ngの過剰発現ベクター、または空のmiR−vec過剰発現プラスミド。遺伝子導入の24時間後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼレポーター活性を以前に記載のようにアッセイした[Chen A.et al.Mol Endocrinol(2005)19:441−58]。ウミシイタケルシフェラーゼの値を、対照のホタルルシフェラーゼ(同じベクターから転写されるが、試験されている3’UTRによって影響されない)のレベルに対して正規化し、1条件あたり6回のウエル反復を平均化した。
動物および収容
成体のC57BL/6J雄マウス(10週齢)(Harlan,Jerusalem,Israel)を逆の12時間明暗周期で温度制御室(22±1℃)に収容した。食物および水を自由に摂取させた。すべての実験プロトコルが、Weizmann Institute of Scienceの実験動物委員会によって承認された。
急性拘束ストレスパラダイム
成体マウスをそれらの暗周期中に50mlの通気されたチューブに30分間入れた。
長期社会的敗北
マウスを、以前に記載した社会的敗北プロトコルに供した[Krishnan V.et al.Cell(2007)131:391−404]。簡単に説明すると、マウスを攻撃的ICRマウスのホームケージに入れ、これらのマウスは5分間にわたって物理的に相互に影響し合った。この期間中に、ICRマウスは侵入マウスを攻撃し、侵入マウスは従属的態度を示した。その後、穴の開いた透明なプレキシガラス仕切り板を動物の間に置き、マウスを、感覚的接触を可能とするために24時間にわたって同じケージに留めた。その後、この手順を、その後の10日のそれぞれについて、未知のICRマウスを用いて繰り返した。
抗うつ処置
マウスは、三環系のイミプラミンまたはSSRIのフルオキセチンまたはNRIのレボキセチン(生理食塩水中の20mg/kg)または生理食塩水のi.p.注射を受けた。長期注射を18日間〜21日間連続して行い、急性注射を脳の顕微解剖の24時間前に行った。
縫線核の顕微解剖および血漿収集
脳を取り出し、アクリル脳マトリックス(Stoelting)に置いた後、マウスの縫線核(RN)から脳試料を採取した。スライス片を、指定解剖学的マーカーに基づいて、標準的なカミソリ刃(GEM)を使用して採取した。先を鈍くした14G注射器を使用して、RN領域を、マトリックスから取り出された3mmのスライス片から抜き取った。加えて、体幹血液を、凝固を避けるためにEDTA含有チューブに集めた。遠心分離を3,500g、4℃で30分間行った後、血漿を分離し、RNA精製まで−70℃で保持した。
マイクロRNAの精製および定量RT−PCR発現分析
マイクロRNAを含むmRNAを、miRNeasyミニキット(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用して、選別されたニューロン、凍結された脳打ち抜き物および血漿から単離し、miScript逆転写キットmiRNAを使用して処理し、cDNAを生成した。その後、cDNA試料を、SYBR(登録商標)Green PCRキット(Qiagen)を製造者のガイドラインに従って使用して、AB7500サーモサイクラー(Applied Biosystems)で分析した。それぞれのmiRのための特異的プライマーを市販のユニバーサルプライマーと一緒に使用し、同時に、U6のsnRNAを内部対照として使用した。
(表1B)
表1B:リアルタイムPCRに使用したプライマー配列
(表1C)
表1C:分子クローニングに使用したプライマー配列
miR135b過剰発現ウイルスベクターのクローン化
プレ−miR−135bを、制限酵素のAgeI部位を付加するプライマーとともにマウスのゲノムDNAからPCRによって増幅し、その後、pGEM−T Easyベクター(Promega,Madison,WI)に挿入(inSlc6a4ed)した。pGEM−T Easyの配列決定、ならびに、AgeIによるpGEM−T EasyおよびpEGFPベクター(Clontech laboratories Inc.,Mountain View,CA)の両方を消化の後、未成熟miR−135b配列をpEGFPベクターに連結して、発現プラスミドpEGFP−miR−135bを構築した。その後で、pEGFP−miR−135bを、pCSC−E/Syn−eGFPプラスミドを同じ酵素で切断するのと並行してBamHIおよびBsrGIによって切断し、miR−135b−eGFP配列をpCSC−E/Synに連結して、pCSC−eSNY−pre−miR−135b−eGFPプラスミドを構築し、これを制限エンドヌクレアーゼ分析およびDNA配列決定によって確認した。
レンチウイルスベクターの作製
組換えレンチウイルスを、以前に記載のように[Naldini L et al.,Proc Natl Acad Sci U S A(1996)93:11382−8]、HEK293T細胞の一過性遺伝子導入によって作製した。簡単に説明すると、感染性レンチウイルスを遺伝子導入後48時間および72時間で集め、0.45μm細孔の酢酸セルロースフィルターでろ過し、超遠心分離によって濃縮した。
レンチウイルスの脳内注入
定位手術およびレンチウイルス送達部位の精密な制御を提供するために、本発明者らは、コンピューター誘導定位機器およびモーター駆動ナノインジェクター(Angle Two(商標)Stereotaxic Instrument、myNeurolab)を使用した。以前に記載されたように[Singer O.et al.Nat Neurosci(2005)、8、1343〜9]、マウスを全身麻酔下で定位装置上に置き、座標を、FranklinおよびPaxinosのアトラスによって定義されるように決定した。レンチウイルス調製物を、モーター駆動のナノインジェクターシステムにつながれるHamiltonシリンジを使用して送達し、溶液を毎分0.2μlの速度で注入した。2週間の回復期間の後、マウスを行動調査および生理学的調査に供し、その後で麻酔し、リン酸塩緩衝4%パラホルムアルデヒドで灌流した。固定された脳を、免疫組織化学を使用して注入部位の正確さを確認するために30μのスライス片に順次切片化した。
免疫組織化学
免疫組織化学のために使用される手順を以前の記載のように行った[Chen A et al.J Neurosci(2006)26:5500−10]。GFP免疫染色のために、本発明者らは、一次抗体としての、ウサギ中で産生されたビオチン化抗GFP抗体(Abcam,Cambridge,UK)、および、二次抗体としてのストレプトアビジンコンジュゲートCy2[Jackson Immunoresearch Laboratories Inc、West Grove,PA,USA)を使用した。
行動評価
すべての行動評価を、各試験の前の2時間、試験部屋で慣らした後に、暗期中に行った。
尾懸垂試験
尾懸垂試験をTSE尾懸垂モニター(TSE Systems、Bad Homburg,Germany)で行った。それぞれのマウスをその尾の先端をテープで固定し、力センサーから10分間ぶら下げた。不動で過ごした時間と、もがき反応で過ごした時間とを、事前設定された閾値に基づいてソフトウェアによって計算し、記録した。
修正強制水泳試験
尾懸垂試験を以前に記載のように行った[Krishnan V and Nestler EJ,Nature(2008)455:894−902]。簡単に説明すると、使用した装置は、25℃の水が15cmの深さまで満たしたプラスチックバケツ(直径18cm)であった。それぞれのマウスをバケツの中心に置いて、6分間のビデオ記録を行う試験期間を開始した。2〜6分の試験期間中に、不動で過ごした時間の継続期間を、EtoVision XT(Noldus,Wageningen,Netherlands)を使用して自動的にスコア化した。
自発運動活性
移動における差から生じる行動的効果の可能性に関して制御するために、マウスの自発運動活性を、数日の馴化へ移行する前の48時間の期間にわたって調べた。マウスを、特殊なホームケージに1匹ずつ収容し、自発運動を、InfraMotシステム(TSE Systems,Bad Hamburg,Germany)を使用して測定した。
統計分析
データを平均+/−SEMとして表した。統計学的有意性について検定するために、2つの群のみが比較される場合にはスチューデントt検定を使用した(例えば、マイクロアレイ検証qPCR間など)。1元配置ANOVAを使用して、ルシフェラーゼアッセイにおける異なる処置間などの多群間を比較した。2つの独立変数の場合(例えば、急性および長期の両期間のSSRIおよびNRIの注入)には2元配置ANOVAを使用した。必要な場合には、ポストホックt検定を使用して、統計学的有意性を明らかにした。群間の差は、p<0.05であるとき、有意であると見なした。
結果
5HTニューロンを、ePET YFPの胎仔のRNから単離し、それらのmiR発現プロフィルを、miRマイクロアレイを使用して、同じ核から得られる非5HTニューロンと比較した(図1A)。非5HTニューロンと比較して、5HTニューロンにおいて、14個のmiRが2倍を超えてアップレギュレーションされることが見出され、27個が、2倍を超えてダウンレギュレーションされることが見出された(下表2A〜B参照)。アレイ結果の代表的な検証を、5HTニューロンにおいてアップレギュレーションされるmiR、例えば、miR−375(P=0.0071;図1B)に対して、また、ダウンレギュレーションされるmiR、例えば、miR−135a(P=0.0075;図1C)に対して、リアルタイムPCRを使用して行った。5HTニューロンの調節因子としてのmiRの役割をさらに調査するために、広範囲の生物情報学的分析を仮説方式で行った。精神病理と関連することが以前に実証された既知セロトニン関連遺伝子の標的化予測をマイクロアレイ結果と組み合わせた。RNにおける5HTニューロンにおいて発現される下記の4つのタンパク質コード標的遺伝子を試験のために選定した:セロトニン輸送体(これは5HT再取り込に関わっており、また、SERTまたはSlc6a4としても知られる);セロトニン抑制性受容体1a(Htr1aとしても知られる);トリプトファンヒドロキシラーゼ2(Tph2)(これは脳における5HT合成の律速酵素である);およびモノアミンヒドロキシラーゼ(MaoA)(これは5HTを不活性化する)。これらの遺伝子についてのマイクロRNA標的化予測を、Target Scan[www.targetscan.org]およびMiranda[www.microrna.org]の2つの異なるウエブ型アルゴリズムを使用して行い、非5RH細胞と比較して、5HTニューロンのmiRアレイにおいて少なくとも±1.5の変化をしている91個のmiRのリストと組み合せた。miRアレイデータおよび生物情報学的分析に基づいて、8個のmiRをさらなるインビトロ調査のために選定した(図1D〜G)。
(表2A)
表2A:非セロトニン作動性に比べて、5HTニューロンにおいてアップレギュレーション(2倍を超えて)されるmiRのリスト
(表2B)
表2B:非セロトニン作動性に比べて、5HTニューロンにおいてダウンレギュレーション(2倍を超えて)されるmiRのリスト
インビトロルシフェラーゼアッセイを、試験した5HT関連遺伝子の3’UTRと、それを推定上の標的とすることが予測されるmiRとの間のmiR−標的相互作用を調べるために行った。本発明者らは、Tph2の3’UTRがmiR−27b(P=0.0051)およびmiR−181Cによりわずかに(およそ20%)抑制され(P=0.0305、図1H)、さらに、MaoAの3’UTRも、miR−27bにより抑制される(P=0.0008、図1I)ことを見出した。miR−135がSlc6a4の3’UTRを標的とすること(図2Aおよび図2C)およびHtr1aの3’UTRを標的とすること(図2Bおよび図2D)により、これらの転写物の翻訳の確実な抑制が生じた。miR−135aは、およそ30%の抑制をSlc6a4(P=0.014)およびHtr1a(P<0.0001)に対してもたらしたが、miR−135bは、およそ50%の抑制をSlc6a4(P=0.0002)およびHtr1a(P<0.0001)に対して引き起こした。加えて、Htr1aの3’UTRの有意な抑制が、miR−335(P<0.0001)、miR−181c(P=0.0029)およびmiR−26a(P<0.0001)によってもたらされた(図2D)。さらなるゲノム的取り組みの生物情報学的分析により、miR−135シードマッチの高度な保存がslc6a4の3’UTRにおいて明らかにされ(図2E)、また、Htr1aの3’UTRにおける2つの特定されたシードマッチのうちの1つにおいて高度な保存が明らかにされた(図2F)。miR−135のmiRシードマッチを除去したSlc6a4転写物の3’UTRにおける変異調査では、Slc6a4のmiR−135a標的化およびmiR−135b標的化の両方がそのシードマッチ配列により媒介されたことが明らかにされた。miR−135によって誘導される抑制が、Slc6a4の3’UTRにおける変異によって完全にブロックされた(図2G)。Htr1aのmiR−135シードマッチを個々に、または、両方を変異させることにより、miR−135aが、Htr1aの3’UTRを、近位側ではなく、遠位側のシードマッチを介して抑制したこと、一方、miR−135bは両方の予測された部位を介して作用することが明らかにされた(図2H)。
本発明者らはさらに、種々の環境的攻撃または薬理学的処置の後におけるインビボでのRN−miR−135発現の調節を調べた。マウスの操作(すなわち、急性拘束ストレス)の後、RNを取り出し、RNAを抽出し、miR−135レベルを、リアルタイムPCRを使用して調べた。5HTレベルは、急性ストレスによって警戒態勢が取られることが知られているので、本発明者らは、miR−135のレベルを急性拘束ストレス後の種々の時点で調べ、miR−135aおよびmiR−135bの両方が急性ストレス後90分でダウンレギュレーションされることを見出した(P<0.0001)。これらのmiRの低下したレベルは、対照マウスと比較して、ストレス後24時間でも依然としてそのままであった(miR−135aではP=0.0357、図3A;miR−135bではP=0.0055、図3B)。そのうえ、5HTニューロン機能、ならびに、Slc6a4およびHtr1aの発現レベルは、うつ病患者において、また、抗うつ剤の薬物治療の後で強く影響されることが知られているので、本発明者らは、うつ病様行動の誘導のための環境モデル(長期社会的敗北モデル)にさらされたマウス、および、三環系抑うつ剤のイミプラミンにさらされたマウスにおけるこれら2つのmiRバリアントのレベルを調べた。興味深いことに、長期社会的敗北のストレスは縫線核においてmiR−135のレベルを変化させなかったが、急性投与または長期投与されたイミプラミンは、ストレス負荷マウスおよびストレス非負荷マウスの両方で、RNにおけるmiR−135aの発現レベルを増大させ(P=0.003;図3C)、miR−135bの発現レベルを増大させた(P=0.0093;図3D)。イミプラミンは特異的な5HT再取り込み阻害剤ではないので、本発明者らはさらに、急性および長期の両方の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)のフルオキセチンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NRI)のレボキセチンの影響を調べ、急性および長期の両方のSSRI処置の後ではmiR−135aレベルにおける確実な増大をRNにおいて見出し(P<0.0001、図3E)、miR−135bレベルにおける増大は見出せなかった(図3F)。
動物状況全般におけるmiR−135レベルの重要性をさらに調査するために、本発明者らは、miR−135のレベルをインビボで、特に成体マウスのRNにおいて操作し、マウスのうつ病様行動に対するその影響を調べた。この目的のために、本発明者らは、強化型シナプシンプロモーター(これはまた、GFPレポーターを共発現させた)を使用して、miR−135bをニューロンにおいて特異的に過剰発現する組換えレンチウイルスを構築した(上記材料および実験手順のセクションおよび図4Aを参照)。本発明者らは、このレンチウイルスを成体マウスのRNに注入することによってこのレンチウイルスをインビボで調べ、RNにおけるmiR−135bレベルを対照レンチウイルス注入マウスに対して比較した。miR−135bレベルのリアルタイムPCR分析では、対照レンチウイルス注入マウスと比較して10倍の誘導が明らかにされた(P=0.0032、図4B)。過剰発現miR−135bを注入された成体マウスを、長期社会的敗北に供し、うつ病様行動を開始させて、その後、行動を試験した。行動試験の後、マウスを灌流処置し、脳を、注入部位の位置に関して分析した(図4C〜D)。RNでmiR−135を過剰発現するマウスは、ホームケージでのそれらの自発運動における変化を何ら認めることなく(図4G〜図4H)、強制水泳において低下した不動時間を示し(P=0.0088(3分の時点で)、P=0.00330(4分の時点で);図4E)、また、尾懸垂試験において低下した不動時間を示した(P=0.07356(試験の最後の5分で)、図4F)。このことは、miR−135の過剰発現の抗うつ効果を示唆している。
まとめると、本発明者らは、RNのセロトニン作動性ニューロンおよびセロトニン非作動性ニューロンの特異的なmiR発現フィンガープリントを明らかにした。本発明者らは、この特異なデータセットを、5HT関連遺伝子のmiR標的化のための生物情報学予測と組み合わせた。本発明者らは、Tph2、MaoA、Slc6a4およびHtr1aについての標的化予測を、3’UTRルシフェラーゼアッセイを使用して、また、変異調査においてインビトロで調べ、他のmiR−標的相互作用のなかでもとりわけ、Slc6a4およびHtr1aの両方の3’UTRに対するmiR−135の強い阻害効果を明らかにした。最後に、本発明者らは、成体マウスのRNにおけるmiR−135の部位特異的な過剰発現が社会的敗北後の低下したうつ病様行動をもたらすことを明らかにした。
miR−19は1型ベータアドレナリン作動性受容体(Adrb1)を特異的に標的とする
材料および実験手順
Psicheck2ルシフェラーゼ発現プラスミドへの3’UTRのクローン化
ADRb1の3’UTR配列をマウスのゲノムDNAからPCR増幅した。変異3’UTR配列(これは4つすべてのmiR−19シードマッチを欠いている)が、Epoch Biolabs,Inc.(TX,USA)によって合成された。3’UTRのPCR断片を製造者のガイドラインに従ってpGEM−T easyベクター(Promega)に連結し、さらに、Psicheck2レポータープラスミド(Promega)におけるルシフェラーゼの3’末端での単一NotI部位にサブクローン化した。クローン化配向を診断的切断および配列決定によって確認した。
遺伝子導入およびルシフェラーゼアッセイ
HEK293T細胞またはHT22ニューロン細胞を70%〜85%の集密度まで48ウエル形式でポリ−L−リシン上で成長させ、下記のプラスミドでポリエチレンイミンを使用して遺伝子導入した:Psicheck2−3’UTRプラスミド、プレ−mmu−miR−19b過剰発現pEGFPプラスミドまたはpEGFPプラスミド単独(clontech)、miR−19bノックダウン(KD)プラスミド(Genecopoeia)または対照KDプラスミド(Genecopoeia)。遺伝子導入の24時間後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼレポーター活性を以前に記載のようにアッセイした[Chen A.et al.Mol Endocrinol(2005)19:441−58]。ウミシイタケルシフェラーゼの値を、対照のホタルルシフェラーゼ(同じベクターから転写されるが、試験されている3’UTRによって影響されない)のレベルに対して正規化し、1条件あたり6回のウエル反復を平均化した。
結果
いくつかの反復体をその3’UTRに含有する別個の進化的に保存されたmiRNA標的配列を用いたストレス関連遺伝子についての生物情報学的分析により、miR−19が、1型ベータアドレナリン作動性受容体(Adrb1)の標的化のための有力な候補として示され、この場合、3つの高度に保存されたmiR−19シードマッチと、1つのそれほど高度に保存されていないmiR−19シードマッチとがAdrb1の3’UTRに存在する。Adrb1は、扁桃体、海馬および室傍核(PVN)を含む脳の様々な領域において発現されるアドレナリン作動性受容体である。扁桃体のAdrb1は以前には、影響を不安様行動[Fu A et al.,Brain Res(2008)1211:85−92;Rudoy CA and Van Bockstaele EJ,Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry(2007)31:1119−29]および恐怖記憶[Roozendaal B et al.,J Neurosci(2004)24:8161−9;Roozendaal B et al.,Neuroscience(2006)138:901−10]に及ぼすとして記載された。興味深いことに、Adrb1は、扁桃体のCRF陽性細胞の表面に見出されたものであり、Gを介してその影響を発揮し、それにより、アデニル酸シクラーゼ(AC)をさらに活性化するGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。ACをコードする10個の遺伝子(すなわち、ADCY1〜10)が知られている。これらのうちの3つ(ADCY1、ADCY7およびADCY9)が、miR−19によって標的とされることが生物情報学により予測された。ADCY1は脳特異的な発現を有しており、マウス前脳におけるその過剰発現が認知記憶およびLTPを高めることが以前に示された[Wang H et al.,Nat Neurosci(2004)7:635−42]。
miR−19が実際に、Adrb1またはADCY1の発現を、Adrb1−3’UTRまたはADCY1−3’UTRにおけるその推定される標的配列を介して調節するかどうかを調べるために、無変異型または変異型のAdrb1−3’UTR(図5)またはADCY1−3’UTRをPsicheck2発現プラスミド中のルシフェラーゼ遺伝子の下流側にクローン化した。変異型のADRb1−3’UTRには、miR−19bの4つすべてのシードマッチが存在しなかった(図5)。変異型の部分的ADCY1−3’UTRには、(3つのうちの)保存されたシードマッチのみが存在しなかった。
ルシフェラーゼアッセイを、miR−19とAdrb1−3’UTRとの間における相互作用、および、同様に、miR−19とADCY1−3’UTRとの間における相互作用の性質を明らかにするために使用した。HT22細胞(これは低レベルのmiR−19を内在的に発現する)では、無変異型または変異型のどちらかのADRb1−3’UTRによって制御されるルシフェラーゼレベルの間に、差は認められなかった(図6A)。しかしながら、miR−19bをHT22細胞中で過剰発現させると、ルシフェラーゼレベルが、変異型のADRb1−3’UTRに対して、無変異型によって推進される場合には有意に低くなった(正規化ルシフェラーゼ発現の一般的な、非特異的と思われる低下に加えて)(およそ2倍低くなった)(図6B)。高レベルのmiR−19bを内在的に発現するHEK293T細胞では、ADRb1−3’UTRによって調節されるルシフェラーゼ発現レベルが、変異型のADRb1−3’UTRによって調節されるときに発現されるルシフェラーゼ発現レベルの2〜4倍低かった(図6C)。
miRのノックダウン(KD)系を、HEK293T細胞のmiR−19レベルを操作するために使用した。すなわち、(1)miRCURY LNA KDプローブ(Exiqon,MA,USA;図6D)、および、(2)プラスミドに基づくノックダウン配列miArrest(Genecopoeia,Rockville,MD,USA;図6E)。LNA−抗miR−19bは、ADRb1−3’UTR下で調節されるときに発現されるルシフェラーゼ活性を対照のスクランブル化KDプローブに対して約20%高め、また、変異型のADRb1−3’UTRに対する影響を何ら有していなかった(図6D)。一方、プラスミドに基づくmiR−19bKDは、対照KD配列に対して、無変異型のADRb1−3’UTRによって調節されるルシフェラーゼ発現における2倍までの増強を引き起こした(図6E)。変異型のADRb1−3’UTRによって推進されるルシフェラーゼ活性に対するルシフェラーゼレベルの完全なレスキューが何ら達成されなかった。このことは、プローブ/ゲノム配列のmiR−19b特異性(スピアリング(spearing)miR−19a調節)、完全にダウンレギュレーションすることが困難な可能性のあるHEK293T細胞における高いmiR−19レベル、または、ADRb1−3’UTRにおける同じシードマッチ配列に結合する可能性のあるHEK293T細胞で発現される他の可能なmiRNAの影響、のいずれかによって説明できるであろう。
(実施例3A)
miR−19aおよびmiR−19bは長期ストレスの後にPFCおよび扁桃体においてアップレギュレーションされる
材料および実験手順
動物および収容
miR17〜92flx/flxマウス[Ventura A et al,Cell(2008)875−86:(5)132;7]をCamKIIa−Creマウス[Dragatsis I et al Genesis.(2000)26(2):133−5]と交雑する。遺伝子導入マウスまたは成体C57BL/6J雄マウスを逆の12時間の明暗周期で温度制御室(22±1℃)に収容する。食物および水を自由に摂取させる。すべての実験プロトコルが、Weizmann Institute of Scienceの実験動物委員会によって承認された。
成体脳中のmiR−19b操作のためのレンチウイルスの作製
レンチウイルスプラスミドのRNAポリメラーゼIII−H1プロモーターの後に、miR−19bのKD配列を挿入した。加えて、レンチウイルスプラスミド中で、プレ−miR−19b配列をニューロン特異的プロモーター(強化型シナプシン、ESyn)の後にクローン化した。レンチウイルスをインビボでのmiR−19−KD実験およびプレ−miR−19b過剰発現発現(OE)実験の両方用として生成する。これらのレンチウイルスを使用して、miR−19bのレベルを、miR−19のレベルが行動的/薬理学的攻撃の後で変化することが見出される標的領域中で操作する。
前脳でmiR−19を欠いているマウスの作製
前脳でmiR−19を欠いているマウスを作製するために、本発明者らは、条件型のmiRクラスターmiR17〜92を有するマウスを用いて、Creリコンビナーゼをコードする遺伝子をCamKIIaプロモーターの下流に保持するマウスを育種中である。miR−19ファミリーはmiR−19aおよびmiR−19bを含む。miR−19bは、マウスゲノム中に2つの同一コピーのmiR−19b−1およびmiR−19b−2を有する。miR19aおよびmiR−19b−1は、同じmiRNAクラスターに、すなわち、miR17〜92に位置し、これに対して、miR−19b−2は、異なるゲノム遺伝子座(miR106a〜363)に位置する。後者は、マウス組織における発現をほとんど、または全く有していないようであり、したがって、miR17〜92クラスターのノックアウトは、前脳におけるmiR−19aおよびmiR−19b発現レベルに対する非常に大きな影響を可能にするために十分であることが予想される。
行動的/薬理学的攻撃
前脳でmiR17〜92クラスターを欠いているマウス、または、miR−19が特異的に操作されたマウス(特定の脳領域において過剰発現またはダウンレギュレーション(KD)されたマウス)の、ADRb1、ADCY1ならびに他の転写物および遺伝子産物の発現レベルについて調査する。また、これらの動物の、不安症様行動、自発運動活性および記憶成績について試験することになる。さらに、miR−19aおよびmiR−19bの発現レベルが、目的の種々の領域(例えば、海馬、扁桃体および前脳)におけるWT型マウスにおけるノルアドレナリン再取り込み阻害剤のレボキセチンによる急性および長期の全身的処置の後で調べられる。
結果
miRNA−19とAdrb1との間における生理学的つながりを、レボキセチン(ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NRI))が急性または長期のどちらかで注射されたマウスの前頭前皮質(PFC)におけるmiR−19a/bのレベルを評価することによって調査した(図12A〜D)。図12A〜Dに示すように、miR−19a/bレベルがレボキセチンの急性投与の後ではダウンレギュレーションされ(図12A、B)、レボキセチンの長期投与の後ではアップレギュレーションされた(図12C、D)。
次に、miR−19aおよびbのレベルを社会的敗北プロトコルに供されたマウスのPFCおよび扁桃体中で測定することにより、miR−19のレベルをストレス後に評価した(図13A〜D)。図13A〜Dに示すように、miR−19aおよびbのレベルが長期ストレスの後ではPFCおよび扁桃体の両方において増大した。これらの結果は、中枢ストレス応答の調節におけるmiR−19の関与を実証している。
(実施例3B)
miRNA−19およびカナビノイド受容体1(CB1)
材料および実験手順
動物および収容
上記実施例3Aで記載の通りである。
成体脳におけるmiRNA−19b操作のためのレンチウイルスの作製
上記実施例3Aで記載の通りである。
結果
CB1は、脳における最も多く発現されるGPCRの1つであり、皮質、扁桃体、海馬、脳幹神経節および小脳において特に多い(図15A〜B)[Herkenham M.et al.,The Journal of neuroscience:the official journal of the Society for Neuroscience(1991)11:563−583;Mackie,K.Handbook of experimental pharmacology(2005)299−325]。CB1受容体は、神経伝達を調節するためにCB1受容体がうまく配置されている軸索および軸索終末において高度に発現される。本発明者らは、CB1が、miRNA−19との適合性を有する2つのシード部位を含有することを見出した。
ルシフェラーゼアッセイを、miRNA−19とCB1−3’UTRとの間における相互作用の性質を明らかにするために使用した。miRNA−19bをCB1の3’UTRと一緒にHT22細胞中で過剰発現させた場合、ルシフェラーゼレベルが、同じ3’UTRにより過剰発現されるGFPと比較したときには有意に低くなった(50%)(図14)。このことは、CB1レベルの調節におけるmiR−19の可能な役割を裏付けている。さらなる変異実験が、観測された調節に対する予測されたmiR−19シード配列の役割(Adrb1について上記で記載されるような)を確認するために行われる。
興味深いことに、以前の研究は、嫌悪記憶の固定が、扁桃体の基底外側核(BLA)における、グルココルチコイド、ノルアドレナリン作動性およびカンナビノイド信号伝達の間でのやりとりによって促進されることが説得力をもって明らかにされている[Roozendaal,B.et al.Neurobiology of learning and memory(2006)86:249−255]。HillおよびMcEwenによって提案されたモデル[Hill M.N.and McEwen B.S.Proc of the Nat Acad of Sci of the USA(2009)106:4579−4580]は、記憶固定のためのBLAにおける可能な作用機構を示す(図16)。
今回の結果において示されるように、MiRNA−19はAdrb1およびCB1の両方をインビトロで調節するようにみえる。例えば、Adrb1およびCB1のレベルを変化させる可能性があるBLAに特異的に送達されるレンチウイルスを使用するmiR−19の過剰発現およびノックダウンが、学習パラダイムおよび記憶パラダイム(例えば、ストレス性の攻撃にさらされることを伴う、または伴わない恐怖条件づけなど)におけるマウスの成績を調べる試験と併せて行われる。
(実施例3C)
長期ストレスに供されたマウスにおける示差的に発現されるmiRNAの特定
材料および実験手順
Ago2タンパク質の免疫沈殿
同じ群(「感受性あり」、「立ち直りが早い」または対照)の一部である3匹の動物から得られた3個の扁桃体のプールを、RNase阻害剤、プロテアーゼ阻害剤およびホスフェート阻害剤が補充されたNP40緩衝液中でホモジナイズした。試料を、4℃で2時間、連続的に撹拌しながら維持した。その後、試料を、12000rpmで20分間、微量遠心分離器を使って4℃で遠心分離し、上清を、氷上に保持された新しいチューブに入れ、ペレットを廃棄した。磁気プロテインGビーズ(Dynabeads,Invitrogen)を、室温で回転させながらAgo2モノクローナル抗体(WAKO)と10分間インキュベーションした。数回の洗浄の後、試料をAgo2被覆のプロテインGビーズに加え、撹拌下、4℃で一晩インキュベーションした。翌日、ビーズをPBSにより3回洗浄した。RNA精製のために、ビーズをRLT緩衝液中でホモジナイズした(RNeasyキット、miRNA補助プロトコル)。ウエスタンブロット分析のために、試料緩衝液中でビーズを煮沸し、ビーズからタンパク質を放出させた。
RNA精製およびマイクロアレイ
Ago2免疫沈殿試料からのRNAを、Qiagenの補助プロトコル1:miRNA含有総RNAの精製、に従って、RNeasy plusキット(Qiagen)を使用して単離した。すべての他の目的のためのRNAを、miRNeasy miniキット(Qiagen)を製造者の推奨法に従って使用して、凍結した脳打ち抜き物から単離し、RNAの完全性を、Agilent2100バイオアナライザーを使用して評価した。Ago2免疫沈殿の後の、ストレス負荷マウスの組織に由来するRNAを、Affymetrix miRNA 2.0アレイ(濃縮RNAプロトコル)およびAffymetrix Mouse Gene 1.0STアレイでさらに分析した。
結果
長期ストレスパラダイムに供されたマウスの扁桃体から単離した示差的に発現されたmiRNA、および/または、「立ち直りが早い」もしくは「感受性あり」の行動表現型に伴う示差的に発現されたmiRNAを特定し、調査するために、社会的敗北プロトコルを使用した(方法のセクションを参照)。
社会的敗北パラダイムの後でのmiRNAとそれらの標的遺伝子の3’UTRとの間の真の結びつきを確認するために、Ago2複合体の免疫沈殿(IP)を行い、共沈殿したmiRNAおよびmRNAの集団を分析した。成熟型miRNAが形成されると、成熟型miRNAがRISC複合体に取り込まれた。RISC複合体中では、Ago2は、特定のmiRNAとその標的mRNAの3’UTRとの間での相互作用を容易にする[Meister G.et al.,Molecular cell(2004)15:185−197](図17A)。
Ago2複合体を、実際に、その結合したRNAと一緒に沈殿させることができることを確認するために、IPを、無処置マウスの扁桃体に対して行った。IPを、モノクローナルAgo2抗体と反応するプロテインG磁気ビーズを使用して行った。図17Bに示されるように、特異的なAgo2バンドが、NIH 3T3細胞の抽出物(図17B、レーン1)、または、扁桃体組織の抽出物(図17B、レーン2)から沈殿した。
IPの特異性を明らかにするために、全脳試料を2つに分け、1つを抗Ago2により沈殿させ、他方を対照のIgG1非特異的抗体により沈殿させた。特異的なAgo2バンドがAgo2沈殿物にのみ存在した(図17B、レーン3、4)。
したがって、Ago2複合体を沈殿させ、沈殿物におけるmiRNA集団ならびにmRNA集団を分析することによって、所与のmiRNAとその標的となったmRNAの3’UTRとの間における正しい結びつきを特定の脳領域において発見するためのより大きな機会が得られた。
社会的敗北パラダイムに供されたマウスの扁桃体由来のAgo2会合RNAの単離
次に、Ago2のIP実験の具体的な結果に基づいて、社会的敗北プロトコルに供されたマウスの脳でのmiRNAおよびそれらの標的mRNAにおける潜在的な違いを明らかにするために、同じ戦略を実行した。
10日間の社会的敗北パラダイムの後、マウスを、対照、「感受性あり」および「立ち直りが早い」の3つの群に分類した。マウスが社会的敗北パラダイムの期間中に攻撃を受けたものと同じ系統に由来する新しいマウスと遭遇したときに社会的回避を示したときには、このマウスを「感受性あり」として特徴づけた。マウスが新しい攻撃的マウスを避けず、そのマウスと触れ合う場合には、このマウスを「立ち直りが早い」として特徴づけた。社会的敗北に供されたマウスの大部分が典型的には、社会的回避を示し、したがって、「感受性あり」として類別されることになる。実験におけるマウスのおよそ10%〜20%のみが、「立ち直りが早い」と予想される。下記に示されるのは、行われた社会的回避試験の一例である。
図18Aにおいて明らかにされるように、マウスを、慣らすために3分間、社会的迷路に単独で置いた。カメラが、迷路全体にわたるマウスの動きを追跡した。図18Cにおいて、同じマウスが、仕切り板の向こう側に置かれた新たなICRマウスにさらされた。カメラは、マウスを、新たなマウスの場所から遠位側の活動領域の最も遠い隅で探知した。この応答は社会的回避と見なされ、したがって、このマウスは「感受性あり」として分類された。対照的に、図18Bおよび図18Dでは、マウスは社会的回避を示さず、したがって、「立ち直りが早い」として分類された。
40匹のマウスが社会的敗北パラダイムを受け、40匹のマウスが対照としての役割を果たした。社会的回避試験のあと、9匹の「立ち直りが早い」マウス、9匹の「感受性あり」マウスおよび12匹の対照マウスを脳の顕微解剖のために選択した。脳の試料を、体幹血液と一緒に、扁桃体、BNST、PFC、背側縫線核および海馬から、社会的回避試験の8日後に集めた。
3匹の異なるマウスから得られた3つの扁桃体打ち抜き物のプールを一緒にし、抗Ago2を使って免疫沈殿を行った。IP後、RNAを沈殿物から抽出した。3つの扁桃体をそれぞれの群から取り出した後、「立ち直りが早い」マウスからの3つのRNA試料、「感受性あり」マウスからの3つのRNA試料、および、対照マウスからの4つのRNA試料、すなわち、合計で10個のRNA試料が存在した。それぞれの試料をマウスSTマイクロアレイで、および、miRNAアレイで調べた(ともにAffymetrix)。対照群に対する「感受性あり」または「立ち直りが早い」の2つの群のそれぞれにおいてアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションされた遺伝子およびmiRNAを調べた。特定のmiRNAと標的遺伝子との間での相互作用が生じる場合は、本発明者らは、それらの総レベルにおける正反対の相関を予測した。しかしながら、RISC複合体(抗Ago2を使って沈殿した)中に存在するmRNAは、未だ断片化されていないので、高レベルにあることが予想された。したがって、アレイデータを検査している間、本発明者らは、対照試料に対してアップまたはダウンレギュレーションのどちらかをともに示すmiRNAおよび潜在的mRNA標的を調べた。理由は、このことが、それらがRISC複合体において相互作用する兆候であったからである。
マイクロアレイ結果
下記表3は、従来のフィルターを使用して分析された予備的アレイ結果である。
(表3A−3B)
表3A〜B:Ago2を使ったIP後にアップレギュレーションされた(表3A)またはダウンレギュレーションされた(表3B)扁桃体miRNAのリスト
(表3A)
(表3B)
* 表3A〜Bの両方で、データを、対照に対する「感受性あり」または「立ち直りが早い」マウスの倍率変化として表した。太字の値は有意に変化したものを示す。
「感受性あり」群および「立ち直りが早い」群のマウスにおいて有意にアップレギュレーションされているいくつかのmiRNAを選択し、ヒートマップで示した(図19A〜B参照)。
遺伝子発現アレイ(mRNA)
(表4)
表4:Ago2を使ったIP後にアップレギュレーションされた扁桃体miRNAのリスト
* データを、対照に対する「感受性あり」または「立ち直りが早い」マウスの倍率変化として表した。太字の値は有意に変化したものを示す。
(表5)
表5:Ago2を使ったIP後にダウンレギュレーションされた扁桃体mRNAのリスト
脳におけるいくつかの潜在的miRNAおよびそれらの推定標的が分析される。
(実施例4A)
ストレス応答の調節因子としてのmiR−15aおよびmiR−15b
材料および実験手順
総RNA抽出
扁桃体組織を急性ストレス手順の90分後に切開した。総RNAを、miRNAを保存するためにmiRNeasyキット(Qiagen)を使用して単離した。凍結された脳打ち抜き物を溶解緩衝液に移し、直ちにホモジナイズした。ニューロン一次培養物またはN2a細胞培養物を氷上のウエル内で溶解した。さらなる処理を製造者の推奨法に従って行った。RNA抽出物を使用するまで−80℃で貯蔵した。
miRNAアレイ
miRNAの示差的発現を製造者の説明書に従ってAgilent(Agilent,Santa Clara,CA,USA)またはAffymetrix(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)のmiRNAマイクロアレイによってアッセイした。miRNAの示差的発現を、Agilentアレイを使用して評価するために、1試料あたり100ngの総RNA(3つの対照試料および2つの急性ストレス試料)をそれぞれ、製造者の説明書に従って標識し、ハイブリダイゼーションした。アレイを、Agilentマイクロアレイスキャナーを使用して走査した。データを、Agilent Feature Extractionソフトウェアv9を使用して抽出し、Partek(登録商標)Genomics Suite(Partek Inc.,St.Louis,Missouri,USA)を使用して分析した。GeneView.txtファイルからのデータを対数変換および分位数正規化に供した。miRNAの示差的発現を、Affymetrixアレイを使用して評価するために、1試料あたり1μgの総RNA(2つの対照試料および2つの急性ストレス試料)をそれぞれ、製造者の説明書に従って標識し、ハイブリダイゼーションした。アレイを、Affymetrixマイクロアレイスキャナーを使用して走査した。データを、Affymetrixスキャナーソフトウェアを使用して抽出し、Affymetrix miRNAQCtoolソフトウェアのデフォルトパラメータを使用して正規化した(バックグラウンド調節、分位数正規化、対数変換および閾値決定)。4つのファイルからの正規化データを、Partek Genomicsソフトウェアにインポートした。これらのマイクロアレイのいずれにも提示されない遺伝子は除いた。miRNA分布における違いのために、異なる対数比カットオフ(それぞれのアレイについて約1の標準誤差に対応する)をそれぞれのアレイについて選定した:Agilentについては0.2、Affymetrixについては0.4。対数比がカットオフよりも大きいmiRNAをアレイ間で比較した。共通するmiRNAを記録する。
Psicheck2ルシフェラーゼ発現プラスミドへの3’UTRのクローン化
CRFR1の3’UTR配列をマウスのゲノムDNAからPCR増幅した。3’UTRのPCR断片を製造者のガイドラインに従ってpGEM−T easyベクター(Promega)に連結し、さらに、Psicheck2レポータープラスミド(Promega)におけるルシフェラーゼの3’末端での単一NotI部位にサブクローン化した。クローン化配向を診断的切断および配列決定によって確認した。
遺伝子導入およびルシフェラーゼアッセイ
HEK293T細胞を70%〜85%の集密度まで48ウエル形式でポリ−L−リシン上で成長させ、下記のプラスミドでポリエチレンイミンを使用して遺伝子導入した:Psicheck2−3’UTRプラスミド、プレ−mmu−miR−15過剰発現pEGFPプラスミドまたはpEGFPプラスミド単独(clontech)。遺伝子導入の24時間後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼレポーター活性を以前の記載のようにアッセイした[Chen A.et al.Mol Endocrinol(2005)19:441−58]。ウミシイタケルシフェラーゼの値を、対照のホタルルシフェラーゼ(同じベクターから転写されるが、試験されている3’UTRによって影響されない)のレベルに対して正規化し、1条件あたり6回のウエル反復を平均化した。
結果
miR−15aおよびmiR−15bは、急性拘束ストレス後90分でアップレギュレーションとして現れた(図7A〜B)。miR−15aおよびmiR−15bの両方は、CRFR1−3’UTRを標的とすることが生物情報学的に予測された(図7C)。HEK293T細胞中のmiR−15bのインビトロ過剰発現は、CRFR1−3’UTRによって制御されるルシフェラーゼ発現のレベルを有意に低下させた(図7D)。
(実施例4B)
FKBP5に対するmiR15の効果
材料および実験手順
上記実施例4Aで示される通りである。
結果
アレイの結果では、miR−15aおよびFK506結合タンパク質5(FKBP5としても知られる)はともに、対照群と比較して、「感受性あり」マウスおよび「立ち直りが早い」マウスにおいてアップレギュレーションされた(図20A〜B)。このことは、長期ストレスの結果としてのRISC複合体中でのそれらのアップレギュレーションを示唆している。
遺伝子調査では、外傷後ストレス障害、うつ病および不安症におけるFKBP5の一定の役割を特定された。例えば、FKBP5における一ヌクレオチド多型(SNP)が、成人の外傷後ストレス障害(PTSD)の重篤度を予測させる小児期の外傷と相互作用することが見出されている[Binder,E.B.et al.,Nature genetics(2004)36:1319−1325]。これらの知見により、小児として虐待されている、これらのSNPを有する個体は、成人としてPTSDに対する感受性がより大きいことが示唆される。FKBP5はまた、現在PTSDを患っている個体ではそれほど発現されないことが見出されている[Yehuda,R.et al.,Biological psychiatry(2009)66:708−711]。FKBP5遺伝子は、多数のポリアデニル化部位を有することが見出されており、また、より高比率のうつ病性障害と統計学的に関連する[Binder et al.上掲]。
FKBP5の3’UTRのさらなる分析により、FKBP5の3’UTRが、miR−15に対する1つの保存されたシードマッチを有することが明らかにされた(図20C)。
実際、miR−15aがFKBP5のmRNAを調節する場合、miR−15aおよびFKBP5の両方が、(マイクロアレイの結果(図20B)によって示されるように)Ago−2沈殿物においてアップレギュレーションされ、扁桃体試料におけるFKBP5のmRNAまたはタンパク質の全体的レベルが低下するはずであると予想された。
扁桃体においてmiR−15aとFKBP5との間での相互作用が生じているかどうかを調べるために、「感受性あり」マウスおよび対照マウスの扁桃体由来の総RNA試料に対するリアルタイムPCR分析を行った。図21A〜Bに示すように、miR−15aのレベルが、感受性ありのマウスから採取された総RNA抽出物において増大し、これに対して、FKBP5のレベルが低下した。これらの結果は、miR−15aが長期ストレス条件の後の扁桃体においてFKBP5のレベルを抑制することを示した。
FKBP5の無変異型および変異型の3’UTR形態のルシフェラーゼアッセイ分析のためのクローン化が、miR−15aとFKBP5との間における直接的な相互作用がインビトロで生じるかどうかを明らかにするために行われる。
FKBP5に加えて、miR−15は、Stx1a(シンタキシン1a)、Sgk1(血清/グルココルチコイド調節キナーゼ)およびAdrb2を含めて、ストレス応答に関与する多くの遺伝子を潜在的に調節することができる(図22)。
(実施例4C)
miR−181はグルタミン酸受容体を調節する
材料および実験手順
Psicheck2ルシフェラーゼ発現プラスミドへの3’UTRのクローン化
Grm1、Grik3、Grm5、Grik2およびGrm7の3’UTR配列をマウスのゲノムDNAからPCR増幅した。3’UTRのPCR断片を製造者の指針に従ってpGEM−T easyベクター(Promega)またはpJET1.2ベクター(Fermentas)に連結し、さらに、Psicheck2レポータープラスミド(Promega)中のルシフェラーゼの3’末端の単一NotIまたはXhoI部位にサブクローン化した。クローン化配向を診断的切断および配列決定によって確認した。
長期社会的敗北
マウスを、以前に記載した社会的敗北プロトコルに供した[Krishnan V.et al.Cell(2007)131:391−404]。簡単に説明すると、マウスを攻撃的ICRマウスのホームケージに入れ、そこで、マウスは5分間にわたって物理的に触れ合った。この期間中に、ICRマウスは侵入マウスを攻撃し、侵入マウスは従属的態度を示した。その後、穴の開いた透明なプレキシガラス仕切り板を動物の間に置き、マウスを、感覚的接触を許すために24時間にわたって同じケージに留めた。その後、この手順を、その後の10日のそれぞれについて、未知のICRマウスを用いて繰り返した。
結果
miR−181dのレベルが、長期ストレスに苦しむマウスにおいて有意に増大した(図23)。miR−181と潜在的なmRNA標的との間における相互作用を見出そうとする試みにおいて、本発明者らは、miR−181が多くの型のグルタミン酸受容体を調節することが可能であることを発見した。一般に、グルタミン酸受容体は下記の2つのグループに分けることができる:イオンチャネル型グルタミン酸受容体(iGluR)、これは、グルタミン酸がこの受容体が結合するときに活性化するイオンチャネル細孔を形成する;および、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)、これは、Gタンパク質を伴うシグナル伝達カスケードを介して原形質膜上のイオンチャネルを間接的に活性化する。
多くの特異的サブタイプのグルタミン酸受容体のなかで、グルタミン酸よりも高い選択性で受容体に結合する化学物質によって一次サブタイプを参照することが慣例的である。だが、様々なサブタイプが特定され、化学的親和性が測定されているので、研究は進行中である。いくつかの化合物がグルタミン酸受容体の研究では定常的に用いられており、受容体サブタイプと関連付けられる:
(表6)
表6:サブグループに分類されたグルタミン酸受容体
図24および25に示されるように、miR−181の保存されているすべての予測標的のなかで、6つのグルタミン酸受容体(Grm1、Grik3、Grm5、Gria2、Grik2およびGrm7)が存在する。
miR−181aが海馬ニューロンにおけるGria2の表面発現を制御することが以前に示されている[Saba.R.et al.,Molecular and Cellular Biology(2012)32(3):619−32]。ルシフェラーゼアッセイを、miRNA−mRNA相互作用を確認するために実施中である。さらに、条件的なmiR−181KOマウス系統が特定のcre系統と交雑され、それにより、特定の脳核におけるmiR−181の欠失を得ている。
(実施例5A)
miR−182aは、正常なニューロン活性の微調整因子であり、また、精神病理学的行動の微調整因子である
材料および実験手順
Psicheck2ルシフェラーゼ発現プラスミドへの3’UTRのクローン化
Htr1aの3’UTR配列をマウスのゲノムDNAからPCR増幅した。3’UTRのPCR断片を製造者のガイドラインに従ってpGEM−T easyベクター(Promega)に連結し、さらに、Psicheck2レポータープラスミド(Promega)におけるルシフェラーゼの3’末端での単一NotI部位にサブクローン化した。クローン化配向を診断的切断および配列決定によって確認した。
遺伝子導入およびルシフェラーゼアッセイ
HEK293T細胞を70%〜85%の集密度まで48ウエル形式でポリ−L−リシン上で成長させ、次記のプラスミドでポリエチレンイミンを使用して遺伝子導入した:Psicheck2−3’UTRプラスミド、プレ−mmu−miR−182過剰発現pEGFPプラスミドまたはpEGFPプラスミド単独(clontech)。遺伝子導入の24時間後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼレポーター活性を以前に記載のようにアッセイした[Chen A.et al.Mol Endocrinol(2005)19:441−58]。ウミシイタケルシフェラーゼの値を、対照のホタルルシフェラーゼ(同じベクターから転写されるが、試験されている3’UTRによって影響されない)のレベルに対して正規化し、1条件あたり6回のウエル反復を平均化した。
長期社会的敗北
マウスを、以前に記載した社会的敗北プロトコルに供した[Krishnan V.et al.Cell(2007)131:391−404]。簡単に説明すると、マウスを攻撃的ICRマウスのホームケージに入れ、これらのマウスは5分間にわたって物理的に相互に影響し合った。この期間中に、ICRマウスは侵入マウスを攻撃し、侵入マウスは従属的態度を示した。その後、穴の開いた透明なプレキシガラス仕切り板を動物の間に置き、マウスを、感覚的接触を許すために24時間にわたって同じケージに留めた。その後、この手順を、その後の10日のそれぞれについて、未知のICRマウスを用いて繰り返した。
縫線核の顕微解剖および血漿収集
脳を取り出し、アクリル脳マトリックス(Stoelting)に置いた後、マウスの縫線核(RN)から脳試料を採取した。スライス片を、指定解剖学的マーカーに基づいて、標準的なカミソリ刃(GEM)を使用して採取した。先を鈍くした14G注射器を使用して、RN領域を、マトリックスから取り出された3mmのスライス片から抜き取った。
マイクロRNAの精製および定量RT−PCR発現分析
マイクロRNAを含むmRNAを、miRNeasyミニキット(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用して、選別されたニューロン、凍結された脳打ち抜き物および血漿から単離し、miScript逆転写キットmiRNAを使用して処理し、cDNAを生成した。その後、cDNA試料を、SYBR(登録商標)Green PCRキット(Qiagen)を製造者のガイドラインに従って使用して、AB7500サーモサイクラー(Applied Biosystems)で分析した。それぞれのmiRのための特異的プライマーを市販のユニバーサルプライマーと一緒に使用し、同時に、U6のsnRNAを内部対照として使用した。
miR182過剰発現ウイルスベクターのクローン化
プレ−miR−182を、制限酵素のAgeI部位を付加するプライマーとともにマウスのゲノムDNAからPCRによって増幅し、その後、pGEM−T Easyベクター(Promega,Madison,WI)に挿入(inSlc6a4ed)した。pGEM−T Easyの配列決定、ならびに、AgeIによるpGEM−T EasyおよびpEGFPベクター(Clontech laboratories Inc.,Mountain View,CA)の両方を消化の後、未成熟miR−182配列をpEGFPベクターに連結して、発現プラスミドpEGFP−miR−182を構築した。その後で、pEGFP−miR−182を、pCSC−E/Syn−eGFPプラスミドを同じ酵素で切断するのと並行してBamHIおよびBsrGIによって切断し、miR−182−eGFP配列をpCSC−E/Synに連結して、pCSC−eSNY−pre−miR−182−eGFPプラスミドを構築し、これを制限エンドヌクレアーゼ分析およびDNA配列決定によって確認した。
レンチウイルスベクターの作製
組換えレンチウイルスを、以前に記載のように[Naldini L et al.,Proc Natl Acad Sci U S A(1996)93:11382−8]、HEK293T細胞の一過性遺伝子導入によって作製した。簡単に説明すると、感染性レンチウイルスを遺伝子導入後48時間および72時間で集め、0.45μm細孔の酢酸セルロースフィルターでろ過し、超遠心分離によって濃縮した。
結果
現在に至るまで、miR−182は、主に癌関連の研究、例えば、ヒト肺腺癌細胞、神経膠腫、乳癌、膀胱癌、メラノーマおよびDNA修復において報告されていた。加えて、miR−182は、発達過程(例えば、内耳および網膜の発達など)に関与すること、Tリンパ球の活性化において免疫系に関与すること、また、狼瘡疾患に関与することが見出された。神経系においては、mi−R182が、感覚器官特異的なラット後根神経節において、また、概日時計調整因子として暗示され、一方で、プレ−miR−182の遺伝子変化型の間における相関が大うつ病患者において見出された[Saus E et al.,Hum Mol Genet.(2010)19(20):4017−25]。加えて、miR−182が、立ち直りが早い行動から学習性無力行動までの雄ラットの前頭前皮質においてダウンレギュレーションされるとして他の12個のmiRに位置づけられた[Smalheiser NR et al.,Int J Neuropsychopharmacol.(2011)1−11]。
5HT miRマイクロアレイ分析の一部として行われたHtr1a 3’UTRの生物情報学的分析では、miR−182によるこの遺伝子の標的化の可能性が暗示された。したがって、本発明者らは、ルシフェラーゼアッセイを介したインビトロ試験を行い、これにより、miR−182によるHt1a 3’UTRの強い抑制が明らかにされた(図8)。miR−182の2つの保存されたシードマッチ配列がHtr1aのマウス3’UTRに現れた。
調節調査では、対照と比較して、長期社会的敗北にさらされた成体雄マウスのRNにおけるmiR−182発現レベルのダウンレギュレーションの強い傾向が示された(図9)。このことは、うつ病様行動を誘導することが知られている環境刺激に対する分子応答におけるmiR−182の関与を示唆している。
miR−182の標的化予測を2つのデータベースで生成するさらなる生物情報学分析では、正常な状態および病理学的な状態の両方におけるニューロン活性に関連づけられる遺伝子を含む、潜在的な標的のロングリストが明らかにされた(図10)。
miR−182を特異的なmiR標的相互作用の特定についてインビトロでさらに試験するために、また、正常な行動および病理学的な行動の調節におけるmiR−182の役割をインビボで明らかにするために、miR−182を操作するためのプラスミドおよびレンチウイルス系を開発した。ニューロン特異的過剰発現のレンチウイルスを製造し(図11A)、ニューロン細胞株N2aでインビトロ試験を行った。これらの結果により、対照と比較して、増大したmiR−182レベルが、miR−182過剰発現レンチウイルスに感染した細胞において明らかにされた(図11B)。miArrestと名づけられた、miR−182に特異的なノックダウンプラスミド配列(Genecopoeia,Rockville,MD,USA、図11C)を購入し、ウイルス構築物にサブクローン化した(図11C)。これらの系が、細胞培養において、また、成体マウス脳への部位特異的注入によって試験される。
miR−182用のヌルマウスが、網膜の発達におけるmiRの役割を調査するために開発される。近年、本発明者らは、この系統のための繁殖ペアを得た。コロニーが生じると、miR−182KOおよびそれらのWT型の同腹子(liter mate)が行動的および生理学的に表現型分類されている。
(実施例6)
急性ストレスによるmiR182発現レベルの調節
材料および実験手順
上記実施例5Aに記載の通りである。
結果
miR182レベルに対する急性ストレスの効果を調べた。図26に示されるように、急性拘束ストレスは、マウスの縫線核(RN)において、ストレス誘導後24時間でmiR182発現レベルの低下を引き起こした(P<0.01)。miR182は、急性ストレス後および長期ストレス後の両方で縫線核において低下した発現レベルを示した。このことは、miR182が、可能性として、シナプスの5−HTレベルを調節する標的遺伝子Ht1aの効力を生じさせることによって、縫線核におけるストレスに対する分子応答の調節に一定の役割を有することを示唆している。
miR182の予測標的遺伝子に関するmiR−標的相互作用アッセイ
ルシフェラーゼアッセイを使用して、miR182の11個の予測された標的遺伝子(これらは広範囲の生物情報学的調査により選定された)を調べた(図27)。標的遺伝子の3’UTRをインビトロ試験して、miR182が、コンジュゲートされたレポーター遺伝子ルシフェラーゼの活性によって測定される抑制効果を有するかを調べた。試験された11個の遺伝子のうち、3つの遺伝子、すなわち、Dscam(ダウン症候群細胞接着分子)、L1cam(細胞接着分子L1)およびTsnax(トランスリン会合タンパク質X)により、ルシフェラーゼアッセイの場合のようにmiR182による抑制効果が明らかにされた(図27)。miR182の上記標的遺伝子の3’UTRを試験した場合、miR182に対する保存されたシードマッチ配列が、Tsnax、L1camの両方およびDscamにおいて認められ、このことは、このmiR−標的相互作用が機能的役割を有することを示唆した(データは示さず)。
次に、これら3つの遺伝子に対するmiR182の直接的な抑制効果を確認した。したがって、3’UTRを、miR182のシードマッチ配列を除くために変異させ、通常の3’UTRをルシフェラーゼアッセイによってインビトロで変異型3’UTRと比較した。L1camの3’UTRに対するmiR182の抑制効果が、そのシードマッチ配列を変異させた場合にはなくなり(図28)、また、同様に、Tsnaxに対するmiR182の影響が、変異させた3’UTRではなくなった(図29)。このことは、miR182がこの遺伝子を直接的に標的としたことを示している。変異させた3’UTRを有するDscamおよびHtr1aに対しても同様な確認が行われる。
miR182を欠いているマウスモデルが、miR182とその標的遺伝子との間での相互作用をインビボで調査するために使用される。本発明者らは、miR182KOマウスの行動表現型を、社会的行動、学習および記憶、ならびに、統合失調症様行動に関する試験により調査している。
(実施例7)
miR135ノックダウン系の確立;クローン化、レンチウイルス作製、ならびに、インビトロおよびインビボでの検証
材料および実験手順
miR135KDウイルスベクターのクローン化
miR135b KDプラスミドのpEZX−H1−miR135KD−CMV−mCherryおよび対照のpEZX−H1−対照KD−CMV−mCherryをGeneCopeia(USA)から購入した。H1プロモーターおよびKD配列を、側方NheI部位を有するプライマーを使用して増幅し、pGEM−T Easyに連結した。pGEM−T Easyを配列決定し、pGEM−T Easyおよびp156−pRRL−CMV−GFPの両方をNheI部位により消化した後、H1−KD miRと、ニック導入のp156とを連結して、p156−pRRL−H1−miR135bKD−CMV−GFPおよびp156−pRRL−H1−対照KD−CMV−GFPを作製した。
結果
マウスの5−HT関連行動に対するRNにおける低下したmiR135レベルの影響を評価するために、プラスミドベースmiR135b阻害剤を利用し、その効率をルシフェラーゼアッセイで試験した。このアッセイでは、HEK293T細胞が、miR135OEプラスミド、miR135KDプラスミドおよび3’UTRプラスミドにより同時遺伝子導入され(co−transected)、miR135bKDプラスミドが、Slc6a4およびHtr1aの3’UTRに対するmiR135の抑制効果をブロックできるかが試験された。Htr1aの3’UTRのmiR135b抑制効果がmiR135KDプラスミドによってブロックされた(図30A)。同様に、Slac6a4の3’UTRに対するmiR135bの効果がmiR135KDによってブロックされた(図30B)。これらの結果は、miR135KDプラスミドが実際にmiR135の生物学的活性をブロックすることを示している。
miR135KD配列および対照配列をウイルスベクターにサブクローン化し(図30C)、異なるノックダウン(KD)配列を発現するレンチウイルスを作製した。脳組織に感染するレンチウイルスの能力を試験するために、マウスのRNにレンチウイルスのいずれか1つを感染させた。実際、感染はGFPの発現を誘発し(図30D〜E)、これにより、miR135bKDレンチウイルスの脳組織に感染する能力を明らかにした。
(実施例8)
成体マウスのRNにおけるmiR135ノックダウンの行動的効果
材料および実験手順
行動評価
マウスを、上記実施例6で記載されるような不安症およびうつ病様行動に関する試験を使用して行動的に特徴づけした。
結果
miR135KDレンチウイルスのインビトロおよびインビボ検証の後で、miR135KDレンチウイルスを使用して、RNにおけるmiR135のレベルを操作し、また、マウスの行動に対するそれらの影響を試験した。成体マウスに、miR135KDレンチウイルスまたはKD対照レンチウイルスのどちらかをRNに対して注入し、回復期間の後、マウスを不安症およびうつ病様行動について試験した。miR135は5−HTの負の調節因子を抑制するので、本発明者らは、miR135KDがシナプスにおける5−HTレベルを低下させ、それによって、増大した不安症およびうつ病様行動を引き起こすことを予想した。
オープンフィールド試験において、差が群間に何ら認められず(図31A)、しかしながら、高架式十字迷路試験では、miR135KDマウスが、壁のない走行路において時間をあまり費やさない傾向(P=0.0644)および壁のない走行路においてあまり訪問しない傾向(P=0.0572)を明らかにすることによって(図31B)、より大きい不安様行動を明らかにした。加えて、miR135KDマウスは、壁のない走行路において有意に少ない距離を歩行し(P=0.0433)、壁のない走行路におけるより長い訪問傾向を有した(P=0.0124)(図31B)。同様に、基礎的ストレス条件のもとで行われた明暗箱テストにおいて、miR135KDマウスは、明箱において時間をあまり過ごさないこと(P=0.0454、図31C)、明箱をあまり訪問しないこと(P=0.0107、図31D)、および、明箱においてより小さい距離を歩行すること(P=0.0402s、図31E)によって、対照と比較して、有意に増大した不安様行動を明らかにした。これらの結果は、急性ストレス後40分および24時間でのmiR135レベルにおける低下を示した(図30A〜B)。したがって、現在の理論は、ストレスを受けたmiR135KDマウスは、急性ストレスの後で試験されたとき、不安様行動がそれらの対照と異ならないと思われるということであった。これは、対照マウスはまた、ストレスに起因する低下したmiR135レベルを有すると思われるからである。実際、明暗箱テストで再試験されたときの群間には、急性ストレス後40分または24時間で試験されたときの両方で、いずれのパラメーターにおいても、どのような差も認められなかった(図31C〜E)。
miR135KDのうつ病様行動を、基礎的条件下および薬理学的操作後の両方で試験した。miR135のレベルは、SSRI投与後、RNにおいて増大することが示されたので(図31E)、推測は、miR135レベルの低下は、SSRIに対する低下した応答をもたらすか可能性があるということであった。基礎的レベルおよびSSRI投与後の両方で行われた尾懸垂試験では、miR135b KDマウスと、対照KDマウスとの間には、不動時間において差が無く(図31F)、SSRI処置に起因する不動時間の予想された減少が観測された(P<0.0008)。しかしながら、強制水泳試験では、SSRI注射の主効果(P<0.0001)に加えて、SSRIが注射されたmiR135KDマウスの方が、対照KDマウスと比較して、試験の最後の2分においてより高い程度の不動であった(P=0.0141、5分;P=0.0404、6分;図31G)。このことは、SSRIの抗うつ効果が、miR135のレベルをRNにおいて低下させることによって弱まることを示唆している。この結果は、miR135が、SSRIによって引き起こされる行動変化をもたらす内在的変化の一部であることを暗示している。
(実施例9)
5−HTニューロン中のmiR135の過剰発現
材料および実験手順
5−HTニューロン中でmiR135aを過剰発現するマウスを、miR135およびその標的遺伝子の発現レベルと行動的なものの両方の点で、それらの同腹子対照に対して比較した。
結果
特にマウスのRN中の5−HTニューロンにおいてmiR135のレベルを操作することの効果を不安症およびうつ病様行動について試験した。その目的のために、Cre−loxP系を使用する遺伝子系を開発した。具体的には、5−HT特異性を、Creリコンビナーゼを5−HT RN陽性ニューロン中で特異的に発現するePet Creマウスを使用して得た。また、miR135の過剰発現を、5−HT特異的Cre系統(ePet Cre)を、miR135aに対して条件的過剰発現を有するトランスジェニックマウス系統と交雑することによって行った(図32)。
特に、5−HTニューロン中でmiR135を過剰発現するマウス(miR135OE)のRNにおけるmiR135発現レベルを、miR135のリアルタイムPCRによって試験し、miR135の条件的過剰発現アレルに対し陽性であるが、ePet CREに対し陰性である対照マウスと比較した。miR135OEマウスは、対照マウスと比較して、2倍近い過剰発現を明らかにした(図33A;P<0.05)。miR135の過剰発現レベルは、SSRI投与後のマウスのRNで測定されるレベルと類似していた。このことは、このマウス系統が、miR135の抗うつ剤の特徴を研究するための良好なモデルであることを示唆している。加えて、miR135標的遺伝子のmRNA、すなわち、Slc6a4(図33B;P<0.05)およびHtr1a(図33C;P<0.1)が、対照と比較して、miR135OEマウスのRNでダウンレギュレーションされ、このことにより、その標的遺伝子のmiR135によるインビボ抑制が明らかにされた。
miR135の過剰発現を特に5−HTニューロンにおいて試験するために、miR135OEマウスおよびそれらの同腹子対照を長期社会的敗北パラダイム(うつ病および不安様行動を誘導することが知られている手順)に供し、続いて、不安症およびうつ病様行動について試験した。
miR135OEマウスは、対照の同腹子と比較して、社会的敗北の後に増大した不安様行動を明らかにした。オープンフィールドでは、miR135OEマウスの増大した不安の傾向が、中心への時間および中心訪問回数において観測された(P<0.1、図34A)。一方、明暗箱テストでは、miR135OEマウスはより多くの時間を明箱において過ごし(P<0.05、図34B)、明箱においてあまり時間を過ごさなかった(P<0.01、図34B)。類似する結果が高架式十字迷路において観測され(P<0.05、図34B)、一方、miR135OEマウスは、より多くの時間を壁のない走行路において過ごし(P<0.05、図34C)、より長い距離を壁のない走行路において移動した(P<0.05、図34C)。
社会的敗北後のmiR135OEマウスのうつ病様行動が、対照同腹子のうつ病様行動よりも少なかった。強制水泳試験における著しく減少した不動時間(P<0.05、図34E)に加えて、対照と比較して、miR135OEマウスの減少した不動時間への傾向が、尾懸垂試験において観測された(P<0.1、図34D)。
miR−135セクションにおける材料および実験手順
5HTニューロンのマイクロRNAマイクロアレイ
ePet−EYFPマウスの12日目の胎仔由来の後脳細胞を培養し、前に記載(Wylie et al.,2010)のようにFACS選別して、5HT YFP陽性ニューロンを周りの非5HT YFP陰性細胞から区別した。miRNA集団を含み、それぞれの細胞型由来の3つの生物学的反復を有する総RNAを製造者の説明書に従って精製し、標識し、Sanger miRBase(リリース12.0)をベースにしたAgilent Mouse miRNA Microarray(Agilent Tech,Mississauga,ON,Canada)設計番号021828を使ってハイブリダイゼーションした。マイクロアレイを走査し、データを、Feature Extraction Software(Agilent Technologies)を使用して抽出し、処理した。走査後、GeneView.txtファイルの強度出力データを分析して、マイクロRNAの相対的発現差異を、Partek(登録商標)Genomics Suite(Partek Inc.,St.Louis,MO)を使用して定量化した。データをlog2変換し、分位数正規化し、GeneViewファイルのフラグ「gIsGeneDetected」に従って選別した。666個のマウスmiRのうち、この選別ステップ後に、198個がさらなる分析のために残った。その後、示差的に発現したmiRを、1.5倍の変化率の閾値を使って特定した。
psiCHEK−2ルシフェラーゼ発現プラスミドへの標的転写物3’UTRのクローン化
Slc6a4およびHtr1aの3’UTR配列をマウスのゲノムDNAからPCR増幅した。3’UTRのPCR断片を製造者のガイドラインに従ってpGEM−T easyベクター(Promega)に連結し、さらに、psiCHECK−2レポータープラスミド(Promega)におけるルシフェラーゼの3’末端の単一NotI部位にサブクローン化した。miR−135シード配列を欠いている変異3’UTR配列を、シードマッチ配列全体にわたるプライマーオーバーハングとともに合成した。クローン化配向を診断的切断および配列決定によって確認した。
(表7)
表7:クローニングに使用したオリゴヌクレオチドプライマー
遺伝子導入およびルシフェラーゼアッセイ
HEK293T細胞を70%〜85%の集密度まで組織培養プレートのポリ−L−リシン上で成長させ、次記のプラスミドでポリエチレンイミンを使用して遺伝子導入した:野生型または変異型3’UTRおよび特定のmiRNA(配列番号210で示されるmiR−135aまたは配列番号211で示されるmiR−135b)用の過剰発現ベクターを含むpsiCHECK−2プラスミド、または空の過剰発現プラスミド。遺伝子導入の24時間後、細胞を溶解し、ルシフェラーゼレポーター活性を以前に記載のようにアッセイした(Kuperman et al.,2011)。ウミシイタケルシフェラーゼの値を、対照のホタルルシフェラーゼ(同じベクターから転写されるが、試験されている3’UTRによって影響されない)のレベルに対して正規化し、1条件あたり6回の反復を平均化した。
動物および収容
成体C57BL/6雄マウス(Harlan,Jerusalem,Israel)をインビボレンチウイルス実験用に使用した。特異的にセロトニン作動性ニューロン中でCreリコンビナーゼを発現しているePet−Creマウスを以前記載したように使用した(Scott et al.,2005)。miR−135過剰発現用の条件付きカセットを有する遺伝子導入マウスも使用した。マウスを逆の12時間の明暗周期で温度制御室(22±1℃)に収容した。食物および水を自由に摂取させた。すべての実験プロトコルを雄マウスで行い、これらはWeizmann Institute of Scienceの研究所実験動物委員会によって承認された。
アンフェタミン誘導運動亢進ラットモデル
これらの実験では、ラットを均等に4つの処置群に分割する。ラットをmiR−135、リチウム、バルプロ酸、または生理食塩水(対照)で前処置した後、各群の半分のラットにアンフェタミン(0.5mg/kg皮下(s.c.)に)を投与し、残りの半分のラットに生理食塩水を投与(s.c.)する。
あるいは、最初に、ラットにアンフェタミン(0.5mg/kg皮下(s.c.)に)または生理食塩水(s.c.)を投与し、続けて、miR−135、リチウム、バルプロ酸、または生理食塩水(対照)で処置する。
10分後、全てのラットを活動量計に置き、前処置されたまたはmiR−135で処置されたラットの活動を、非処置ラット(対照群)および前処置されたまたはリチウムまたはバルプロ酸で処置されたラットと比較する。1週後に、手順が繰り返される。
ケタミン誘導運動亢進ラットモデル
これらの実験では、ラットを4つの処置群:対照、リチウム、バルプロ酸およびmiR−135処理ラット、に均等に分割し、次のように処置する:
ラットは、miR−135、リチウム(47.5mg/kg、i.p.、1日2回)、バルプロ酸(200mg/kg、i.p.、1日2回)または対照としての生理食塩水(i.p.、1日2回)で前処置される(14日間)。8〜14日の間に、これらのラットはケタミン(25mg/kg、i.p.)または生理食塩水で処置される。
逆プロトコルでは、ラットはケタミン(25mg/kg、i.p.)または生理食塩水を最初に投与され、続けて、miR−135、リチウム、バルプロ酸、または生理食塩水を7日間投与される。その後、ラットの活動性が本明細書で考察のようにモニターされる。
長期社会的敗北
マウスを、以前に記載した社会的敗北プロトコルに供した(Elliott et al.,2010)。簡単に説明すると、マウスを攻撃的ICRマウスのホームケージに入れ、そこで、マウスは5分間にわたって物理的に触れ合った。この期間中に、ICRマウスは侵入マウスを攻撃し、侵入マウスは従属的態度を示した。その後、穴の開いた透明なプレキシガラス仕切り板を動物の間に置き、マウスを、感覚的接触を許すために24時間にわたって同じケージに留めた。その後、この手順を、その後の10日のそれぞれについて、未知のICRマウスを用いて繰り返した。
抗うつ剤処置
マウスは、三環系のイミプラミンまたはSSRIのフルオキセチンまたはNRIのレボキセチン(生理食塩水中の20mg/kg)または生理食塩水のi.p.注射を受けた。長期注射を18日間〜21日間連続して行い、急性注射を脳の顕微解剖の24時間前に行った。行動試験のために、試験の30分前に、マウスに20mg/kgのSSRIをi.p.注射した。
脳顕微解剖
アクリル脳マトリックス(Stoelting)を使って、マウスの縫線核(RN)から脳試料を採取した。スライス片を、指定解剖学的マーカーに基づいて、標準的なカミソリ刃を使用して採取した。先を鈍くした14G注射器を使用して、縫線核領域を、2mmのスライス片から抽出し、RNA精製まで組織を−70℃で保持した。
マイクロRNAの精製および定量リアルタイムPCR発現分析
マイクロRNAを含むmRNAを、miRNeasyミニキット(Qiagen)を製造者の説明書に従って使用して単離し、miScript逆転写キットを使用して処理し、cDNAを生成した。その後、試料を、SYBR(登録商標)Green PCRキット(Qiagen)を製造者のガイドラインに従って使用して、AB7500サーモサイクラー(Applied Biosystems)で分析した。それぞれのmiRのための特異的プライマーを市販のユニバーサルプライマーと一緒に使用し、同時に、U6のsnRNAを内部対照として使用した。mRNA定量化のために、ソフトウェア「primer express 2」を使って、それぞれの転写物用に特異的プライマーを設計し、以前記載したように(Haramati et al.,2011)リアルタイムPCRを使って発現を試験した。
(表8)
表8:マイクロRNAリアルタイムPCR用に使用したオリゴヌクレオチドプライマー
(表9)
表9:mRNAリアルタイムPCR用に使用したオリゴヌクレオチドプライマー
miR−135ノックダウンレンチウイルス構築物のクローニング、レンチウイルスの作製およびインビトロ検証
miR−135ノックダウン(KD)プラスミドのpEZX−H1−miR135KD−CMV−mCherryおよび対照のpEZX−H1−対照KD−CMV−mCherryをGeneCopeia(USA)から購入した。H1プロモーターおよびKD配列を、NheI側方部位を有するプライマーを使用して増幅し、pGEM−T Easyベクターに連結した。H1−135KD断片をNheI制限酵素部位を使ってp156−pRRL−CMV−GFPレンチウイルス構築物にサブクローン化し、p156−pRRL−H1−miR−135bKD−CMV−GFPおよびp156−pRRLH1−対照KD−CMV−GFPレンチウイルス構築物を生成し、これをDNA配列決定によりさらに確認した。組換えレンチウイルスを、以前に記載のように(Tiscornia et al.,2006)、HEK293T細胞の一過性遺伝子導入によって作製した。簡単に説明すると、感染性レンチウイルスを遺伝子導入後48時間および72時間で集め、0.45μm細孔の酢酸セルロースフィルターでろ過し、超遠心分離によって濃縮した。miR−135KD効率検証のために、ラット縫線核細胞株(RN46A)をmiR−135KDまたは対照KDレンチウイルスに感染させ、48時間後、mRNAを採取し、Htr1aおよびSlc6a4の発現レベルをリアルタイムPCRを使って試験した。
レンチウイルスの脳内注入
定位手術およびレンチウイルス送達のために、コンピューター誘導定位機器およびモーター駆動ナノインジェクター(Angle Two(商標)Stereotaxic Instrument、myNeurolab)を以前記載したように(Lebow et al.,2012)使用した。マウスを全身麻酔下で定位装置上に置き、レンチウイルス調製物をFranklinおよびPaxinosのアトラスによって定義された座標の、DR:ML 0mm;AP −4.6mm;DV −3.9mm(傾き300)に送達した。0.2μl/1分の速度で注入を行った。2週間の回復期間の後、マウスを行動調査および生理学的調査に供した。表現型分類後、マウスを麻酔し、リン酸塩緩衝4%パラホルムアルデヒドで灌流した。固定された脳を、免疫組織化学を使用して注入部位の位置を確認するために30mmのスライス片に順次切片化した。
免疫組織化学
免疫組織化学用に使用した手順は、以前に記載したとおりである(Regev et al.,2011)。GFP免疫染色のために、一次抗体としての、ヤギ中で産生されたビオチン化抗GFP抗体(Abcam,Cambridge,UK)、および、二次抗体としてのストレプトアビジンコンジュゲートCy2[Jackson Immunoresearch Laboratories Inc、West Grove,PA,USA)を使用した。
行動評価
すべての行動評価を、試験部屋に各試験の前の2時間慣らした後の暗期の期間中に行った。高架式十字迷路、明暗箱テストおよびオープンフィールド試験を使ってマウスの不安症様行動を試験し、うつ病様行動に対しては、強制水泳試験を使用した。
オープンフィールド試験:オープンフィールド試験を50x50x22cmのホワイトボックス中で行い、120ルクスに照らした。マウスをボックス中に10分間置いた。ボックス中のマウスの自発運動をビデオ録画追跡システム(VideoMot2;TSE Systems,Bad Hamburg,Germany)を使用して定量化した。
明暗箱テスト:明暗箱テスト装置は、黒色の暗いコンパートメント(14x27x26cm)および連結された白色1200ルクスに照明された明るいコンパートメント(30x27x26cm)に分割されたポリ塩化ビニルボックスから構成された。5分の試験中、明るいコンパートメントで過ごした時間、明箱中を移動した距離、および、明暗箱移動の回数を、ビデオ録画追跡システム(VideoMot2;TSE Systems,Bad Hamburg,Germany)を用いて定量化した。
高架式十字迷路テスト:この試験装置は十字形状を有し、2つの障壁と、2つの照明された(6ルクス)壁のない走行路を含む。5分の試験中、進入回数、移動した距離、および、壁のない走行路で過ごした時間が、ビデオ録画追跡システム(VideoMot2;TSE Systems,Bad Hamburg,Germany)を使用して自動的にスコア化された。
修正強制水泳試験:強制水泳試験を以前記載したように行った(Krishnan et al.,2007)。装置は、25℃の水が15cmの深さにまで満たされた18cmの直径のプラスチックバケツである。それぞれのマウスをバケツの中心に置いて、6分間のビデオ記録を行う試験期間を開始した。3〜6分の試験期間中に、不動で過ごした時間の継続期間を、EthoVision XT(Noldus,Wageningen,Netherlands)を使用して自動的にスコア化した。
社会的回避試験:社会的回避試験では、15cmx35cmの活動領域にマウスを置いた。この活動領域は、15cmx8cmのチャンバーに隣接し、両者は、完全な感覚的接触を可能とする小さい開口スリットを有する仕切板で分離されている。試験したマウスは活動領域で3分間慣らされ、その後、未知のICRマウスを隣接チャンバーにさらに3分間配置した。仕切板の近くで過ごした時間がビデオ追跡を使ってEthovisionソフトウェア(Noldus,Wageningen,Netherlands)により定量化された。マウスが、未知のICRの近くの一定の領域で過ごした時間を、マウスが居住の間に同じ領域で過ごした時間で除算し、100を掛けて、相互作用比率を計算した。
顕微解剖、試料調製および5HTおよび5−HIAAの濃度のHPLC−ED分析
以前記載したように(Neufeld−Cohen et al.,2010a)、Palkovits顕微解剖技術(Palkovitz,1988)を使って顕微解剖を行った。冠状脳切片(300μm)をLeica CM1950低温槽(North Central Instruments,USA)を使って採取した。この切片をスライドガラスに取り付け、−10℃の冷却板上で実体顕微鏡下、種々の内径の顕微解剖針を使って顕微解剖した。顕微解剖物をそれぞれ100μLの酢酸塩緩衝液(3.0g/Lの酢酸ナトリウム、4.3mL/Lの氷酢酸;pHは5.0に調節)を含むチューブに入れた。次に、試料をホモジナイズし、4℃、13,000rpmで3分間遠心分離した。ペレットをタンパク質含量用に、175μLの0.2MのNaOHで再構成し、以前記載したように(Evans et al.,2008)、電気化学検出を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC−ED)を使った5HTおよび5−ヒドロキシインドール酢酸(HIAA)の検出用に50μLの上清を使用した。HPLCクロマトグラフシステム(ESA,Chelmsford,MA,USA)に試料を注入するESAモデル542オートサンプラーに試料を入れた。HPLCシステムはまた、移動相(9.53g/Lの二水素オルトリン酸カリウム二水和物、300mg/Lのオクタンスルホン酸、35mg/LのEDTA、920mL/LのHPLCグレードH20、および80mL/LのHPLCグレードメタノール;pHは、オルトリン酸を使って3.4に調節)をクロマトグラフシステムに圧送するESAモデル582 Solvent Delivery Moduleから構成される。クロマトグラフ分離が起こる固定相は、一体型プレカラム/カラムシステム(Ultrasphere−XL 3μm Octyl Guard Cartridge,5/70x4.6mm;MAC−MOD Analytical,USA)から構成された。0mVに設定された電極電位を有するESA5021 Conditioning Cellおよびそれぞれ25mVと250mVに設定されたチャネル1およびチャネル2電極電位を有するESA5014B Microdialysis Cellに連結されたデュアルポテンショスタットを備えたESAモデル5200A CoulochemII検出器を使って電気化学検出を行った。クロマトグラフィー解析ソフトウェア(EZChrom Elite for Windows,Version 2.8;Agilent Technologies,USA)を使って、各実験に対し、既知の濃度の5HTおよび5−HIAAの平均ピーク高さをマニュアルで決定し、未知の試料の濃度計算に使用した。5HTおよび5−HIAAの組織中濃度をタンパク質の量に標準化した。
ヒト試料調査
症例対照研究:大うつ病と診断された(N=9)または双極性障害と診断された(N=2)男性患者11人、および12人の健康な男性患者を、詳細に記述された調査(Menke et al.,2012)から選択した。簡単に説明すると、患者はマックスプランク精神医学研究所から補充し、抑うつ症候群で入院の最初の5日以内にRNA用の採血を行った入院時の平均HRDSスコアは、24.3(SD:5.3で範囲は17〜32)であった。対照は、統合国際診断面接(CIDI)(Wittchen HU,1999)を使って生涯精神疾患の不存在で選別され、また、HRDSを使って現時点の精神症状の不存在で選別された。午後6時に絶食の2時間後に、PAXgene(PreAnalytiX GmbH,Hombrechtikon,Switzerland)全血RNA採集チューブを使って全血を採取した。核酸のカラム精製のために、PAXgene Blood RNA Kitを使ってQiagen法により総RNAをPAXgene全血試料から単離した(PreAnalytiX GmbH,Hombrechtikon,Switzerland)。Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies,USA)および260nmのUV吸収(Nanophotometer,Germany)を使って、RNAの品質、濃度および純度を評価した。
認知行動療法(CBT):この分析の患者は、認知行動療法(CBT)に対する寛解の神経画像処理およびその他の生物学的予測因子を特定するようにデザインされた無作為化臨床試験由来であった。全ての患者は、この試験に参加する前に書面でのインフォームドコンセントを提出した。この試験は、ヘルシンキ宣言とその修正に準拠し、エモリー大学の研究所の審査委員会の承認の下で行われた。試験デザインは、(Dunlop et al.,2012)に詳細に記述されている。簡単に説明すると、適格参加者は、精神病性特徴のないMDDの一次診断用の精神障害の診断と統計のためのマニュアル、第4版(DSM−IV)基準に適合した18〜60歳の成人外来患者とした。患者は16セッションのCBTを受けた。CBTは標準化プロトコル(Beck et al.,1979)にしたがって提供された。全患者は、ハミルトンうつ病評価尺度(HRDS)を使って、症状の変化を最初の6週間の間、毎週評価し、その後、残りの6週間の間、隔週に評価した。全患者は、無作為化時に15以上のHRDSスコアであった。この試験から、ベースラインの、2週目(N=16)の、および12週目のRNA用の採血をした12人の患者が選択された。ベースライン採血では、現用の薬剤処置は許容されなかった。75%の患者が女性で、87%がヨーロッパ系であった。CBT群の平均年齢は42.4(SD:9.6)歳であった。全血をTempus RNAチューブ(Applied Biosystems)に集め、Tempus Spin RNA Isolation Reagent kit(Applied Biosystems)を使って抽出した。RNA品質および量をそれぞれ、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies,Palo Alto,CA,USA)および光度測定(photometeric)法(Nanophotometer,Implen,Munich,Germany)を使って測定した。
統計分析
データを平均+/−SEMとして表した。統計学的有意性について検定するために、2つの群のみが比較される場合、例えば、マイクロアレイリアルタイムPCRデータ検証、にはスチューデントt検定を使用した。1元配置ANOVAを使用して、ルシフェラーゼアッセイにおける異なる処置間などの多群間を比較した。2つの独立変数の場合(例えば、急性および長期の両期間のSSRIおよびNRIの投与における注射)には2元配置ANOVAを使用した。必要に応じ、反復測定分析を行った。必要な場合には、ポストホックt検定を使用して、統計学的有意性を明らかにした。Jmp7ソフトウェアを使って統計分析を行い、群間の差は、p<0.05であるとき、有意であると見なした。
(実施例10)
5HTニューロンのマイクロRNA「フィンガープリント」
5HTニューロンを、ePet−EYFPの胎仔のRNから単離し、それらのmiR発現プロフィルを、miRマイクロアレイを使用して、同じ脳領域から得られる非5HT細胞と比較した(図35A)。関連マーカー遺伝子のmRNA発現レベルを比較することにより細胞選別検証を行った。ePet−陽性ニューロン用の蛍光マーカーであるYFPが5HT集団中で大きく富化され(図35B)、5HT産生において重要な酵素であるトリプトファンヒドロキシラーゼ2(TPH2)が5HT細胞中で強く発現され(図35C)、GABAの合成を触媒する酵素で、RN中の一般的非5HT神経伝達物質であるグルタミン酸デカルボキシラーゼ67(GAD67)が非5HT細胞中で豊富であった(図35D)。マイクロアレイから得られたmiR「フィンガープリント」(図1A)は、14個(下表10)および27個(下表11)のmiRを含んでいた。これらは非5HTニューロンと比べて、5HTニューロン中で、それぞれ2倍高い発現、または低い発現であった。アレイ結果の代表的な検証を、5HTニューロンにおいて高発現されるmiR、例えば、miR−375(図1B)に対して、また、5HTニューロン中で低レベルで発現されるmiR、例えば、miR−135a(図1C)に対して、リアルタイムPCRを使用して行った。
(表10)
表10:マイクロRNAマイクロアレイ結果−マウスRNの非5HT細胞に比べて、5HTニューロン中で少なくとも2倍高く発現したマイクロRNAのリスト
(表11)
表11:マイクロRNAマイクロアレイ結果−マウスRNの非5HT細胞に比べて、5HTニューロン中で少なくとも2倍低く発現したマイクロRNAのリスト
5HTニューロンの調節因子としてのmiRの役割をさらに調査するために、広範囲の生物情報学的分析を仮説方式で行った。精神病理に関連することがこれまでに明らかにされたセロトニン作動性ニューロン中で発現される既知の5HT関連遺伝子の標的化予測を生物情報学的に基づきマイクロアレイ結果と組み合わせた。これらの遺伝子に対するマイクロRNA標的化予測を、Target Scan[www.targetscan.org]およびMiranda[www.microrna.org]の2つの異なるウエブ型アルゴリズムを使用して行い、非5HT細胞と比較して、5HTニューロンのmiRアレイにおいて少なくとも±1.5倍の変化をしている91個のmiRのリストと組み合せた。RNの5HTニューロン中で発現される2つのタンパク質をコードする標的遺伝子を選定した:セロトニン輸送体(これは5HT再取り込に関わっており、また、SERTまたはSlc6a4としても知られる)、およびセロトニン抑制性受容体1a(Htr1aとしても知られる)。miRアレイデータおよび生物情報学的分析に基づいて、7個のmiRをさらなるインビトロ検証のために選定した(図1D〜E)。
(実施例11)
miR−135はHtr1aおよびSlc6a4転写物を標的にする
インビトロルシフェラーゼアッセイを、試験した5HT関連遺伝子の3’UTRと、これらの転写物を推定上の標的とすることが予測されるmiRとの間のmiR−標的相互作用を調べるために行った。miR−135がSlc6a4の3’UTRを標的とすること(図2A、2C)およびHtr1aが3’UTRを標的とすること(図2B、2D)により、これらの転写物の翻訳の確実な抑制が生じた。加えて、Htr1aの3’UTRの有意な抑制が、miR−335、miR−181cおよびmiR−26aにより媒介された(図2D)。miR−135のHtr1aとSlc6a4の両方に対する強力な効果のために、本調査はさらに、このmiR−標的相互作用に的を絞った。さらなる生物情報学的分析により、miR−135が高度に保存された3つのバリアント:miR−135a−1、miR−135a−2およびmiR−135bを有することが示された(図36A〜C)。さらに、Slc6a4の3’UTRにおけるmiR−135のシードマッチ配列が高度に保存され(図2E)、また、Htr1aの3’UTRにおける2つの特定されたシードマッチのうちの1つにおいて高度な保存が観察された(図2F)。miR−135のシードマッチが除去された場合の、Slc6a4転写物の3’UTRにおける変異調査で、miR−135により誘導される抑制がSlc6a4の3’UTRにおける変異により完全にブロックされた(図2G)ことから、Slc6a4に対するmiR−135a標的化およびmiR−135b標的化の両方がそのシードマッチ配列により媒介されたことが明らかにされた。Htr1aのmiR−135シードマッチを個々に、または、両方を変異させることにより、miR−135aが、Htr1aの3’UTRを、近位側ではなく、遠位側のシードマッチを介して抑制したこと、一方、miR−135bは両方の予測された部位を介して作用することが明らかにされた(図2H)。
(実施例12)
RN−miR−135レベルは抗うつ剤によりアップレギュレーションされる
Htr1a(Savitz et al.,2009)およびSlc6a4(Murphy et al.,2008)の両方が、以前にうつ病および抗うつ剤細胞機構と関連付けられているので、本発明者は、抗うつ剤処置に応答したmiR−135発現の調節を調べようとした。成熟型miR−135aおよびmiR−135bは1個のヌクレオチドが異なるのみである(図37A)が、それでも、顕微解剖した成体野生型マウスのRNから得たcDNAで行ったリアルタイムPCR結果で観察されたように、RN中で示差的に発現する(図37B)。miR135bはmiR−135aより約10倍低く発現されたが、後者は、比較的高発現であり、脳中に最も豊富なmiRであるmiR−124よりも5倍低いだけであり、以前に5HT機能に制御における役割を有することが示されたmiR−16より2.5倍低いだけである(図37C)。RN中でmiR−135aがmiR−135bより高レベルで発現し、また、5HTマイクロアレイ中で異なるように変えられたバリアントであったことを考慮して、本発明者はこの形態での調節の調査に的を絞った。次に、miR−135aのレベルを、長期社会的敗北(うつ病様行動の誘導に使用される環境モデル)および三環系抗うつ剤による長期処置にさらしたマウスで試験した。
社会的回避試験を使って、社会的敗北が社会的回避を引き起こす場合があり、抗うつ剤投与がこれを逆転させることができることを実証した(図37D)。実際に、100%より低い相互作用比率から暗示されるように、社会的敗北にさらされ、生理食塩水を注射され、またイミプラミンを受けなかったマウスのみが社会的回避を発症した(図37D)。興味深いことに、長期社会的敗北のストレスは縫線核におけるmiR−135aのレベルを変化させなかったが、長期投与(図37E)または急性投与(図37F)されたイミプラミンは、ストレス負荷マウスおよびストレス非負荷マウスの両方で、RNにおけるmiR−135aの発現レベルを有意に増大させた。イミプラミンは特異的な5HT再取り込み阻害剤ではないので、急性および長期の両方の選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)のフルオキセチンおよびノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NRI)のレボキセチンの投与の効果をさらに調べ、急性および長期の両方のSSRI処置の後ではmiR−135aレベルのRN中での確実な増大を見出したが、NRI処置後の差異は観察されなかった(図37G)。
(実施例13)
特異的に5HTニューロン中でのmiR−135の過剰発現により、社会的敗北後に不安症およびうつ病様行動が減少する
5HT−miR−135のインビボででの役割をさらに調査するために、miR−135をRNの5HTニューロン中で特異的に過剰発現するマウスモデルを樹立した(miR−135OE)。Creリコンビナーゼを特異的にRNの5HT陽性ニューロン(ePet−Cre)中で発現するマウスと、条件付きmiR−135aカセットを保持する遺伝子導入マウス系統とを交雑した(図38A)。対照として、miR−135過剰発現導入遺伝子に対し陽性で、ePet−Creに対し陰性のマウスを使用した。miR−135aを特異的に5HTニューロンで過剰発現しているマウスのRN中のmiR−135a発現レベルを、リアルタイムPCRで調べ、対照マウスに比べて、約2倍過剰発現していることを示した(図38B)。このマウスのmiR−135の過剰発現レベルは、SSRI投与後のマウスのRNで測定されるレベルと類似していた。加えて、miR−135標的転写物Slc6a4(図38C)およびHtr1a(図38D)のレベルは、対照マウスに比べて、miR−135OEマウスのRN中で低下した。これは、miR−135標的遺伝子のインビボ抑制を示している。
miR−135OEおよびそれらの同腹仔対照は、「基礎的」条件下、または次の長期社会的敗北プロトコル下で、不安症およびうつ病様行動の試験において、行動に対して特徴付けられた。「基礎的」条件下では、miR−135OEと対照マウスとの間で不安症およびうつ病様行動の試験において、差異は観察されなかった(図38E〜J、左バーおよび図38K)。しかし、miR−135OEマウスは長期社会的敗北の影響に対する有意な立ち直りの速さを示した。明暗箱テストでは、社会的敗北にさらされたmiR−135OEマウスは、対照マウスと比較して、明箱中でより多くの時間を過ごし(図38E)、明るいコンパートメントをより高頻度で訪問し(図38F)、明箱中でより長い距離を移動した(図38G)。miR−135OEマウスの行動成績は、社会的敗北プロトコルの後で有意に異ならなかった。対照的に、対照マウスは、社会的敗北後に、すべての測定された明暗箱テストパラメータにおいて不安症様行動の有意な増加を示した(図38E〜G)。社会的敗北にさらされた対照マウスは、同じ条件下でテストしたmiR−135OEマウスに比べて、壁のない走行路中で、より少ない時間を過ごし(図38H)、より少ない数の訪問をし(図38I)、より短い距離を移動した(図38J)。このように、高架式十字迷路テストでも類似の結果が観察された。miR−135OE群では、「基礎的」とストレス条件との間で有意差は観察されなかった。類似した結果はうつ病様行動を評価する試験でも観察された。長期社会的敗北後のテストした場合、「基礎的」条件下では差異は観察されなかった(図38K)が、強制水泳試験において、対照と比較して、miR−135OEマウスは有意に小さい不動時間を示し(図38L)、これは、減少したうつ病様行動として解釈される。これらの差異は、移動動作の変化を説明することはできないと思われる。理由は、オープンフィールドで移動した距離は両方の遺伝子型で類似であった(図38M)ためである。まとめると、miR−135の5HTニューロン中での特異的過剰発現は、長期ストレスが不安症およびうつ病様行動に与える有害作用に対し保護した。
(実施例14)
成体マウスRN中のmiR−135のノックダウンが不安様行動を高め、抗うつ剤に対する応答を低下させた
抗うつ剤処置および「基礎的」条件下での不安症様行動に呼応したうつ病様行動の媒介におけるmiR−135内在性レベルの重要性を判定するために、レンチウイルスベースシステムを樹立し、野性型マウスのRN中のmiR−135の内在性レベルを特異的にノックダウン(KD)した。miR−135阻害剤(miRNA捕捉、図39A)または制御配列を含む発現プラスミドを、H1プロモーターおよびGFPレポーター(図39B)を含むレンチウイルス構築物にサブクローン化し、miR−135捕捉配列の恒常的発現を可能とした。これらの構築物から作製したレンチウイルスの標的遺伝子Htr1aおよびSlc6a4の発現を抑制する効率を、RN46A細胞に感染させることによりインビトロで調べた。RN46A細胞は、Htr1a、Slc6a4の両方およびmiR−135を内在性に発現した。miR−135KDレンチウイルスに感染したRN46A細胞は、リアルタイムPCRで試験して、KD対照レンチウイルスにより感染された細胞に比べて、有意に高いレベルのHtr1aおよびSlc6a4のmRNAを発現した(図39C)。
野性型成体マウスRNをmiR−135KDまたは対照レンチウイルスに感染させ、回復期間後に、不安症およびうつ病様行動に試験を使ってマウス行動を評価した。感染の正確さは、その後、免疫組織化学を使って実証された(図39D)。明暗箱テストでは、対照注入マウスに比べて、miR−135KDマウスは不安症様行動の有意な増加を示した(図39E〜H)。miR−135KDマウスは、明るいコンパートメント中で、より少ない時間を過ごし(図39E)、より少ない回数訪問し(図39F)、より短い距離を歩行した(図39G)。同様に、高架式十字迷路テストでは、対照注入マウスに比べて、miR−135KDマウスは不安症様行動の有意な増加を示した。miR−135KDマウスは迷路の壁のない走行路中で(図39I〜L)、より短い時間を過ごし(図39I)、より少ない回数訪問し(図39J)、有意に少ない距離移動した(図39K)。
miR−135KDマウスのうつ病様行動を、「基礎的」条件下およびSSRI処置後の両方で試験した。強制水泳試験では、「基礎的」ストレス条件下でテストした場合、群間で差異は観察されなかった(図39M)。しかし、SSRI投与後、対照注入マウスに比べて、miR−135KDマウスは有意により多い不動であった(図39M)。これは、SSRI誘導された抗うつ剤効果の誘導において、内在性RN−miR−135レベルの重要な役割を示唆している。RN中のmiR−135の低下したレベルはこれらのマウスの移動動作に影響を与えなかった(図39N)。
(実施例15)
miR−135過剰発現は5HTレベルおよび代謝を変えた
miR−135レベルの変化が同様に中枢5HTの組織中濃度およびその代謝回転に反映されているか否かを評価するために、RNの細区画を顕微解剖し、また、miR−135OEマウスモデルおよび対象同腹仔由来のこれらの領域により神経支配されている脳領域を顕微解剖した。図40A〜40O、図42A〜Lおよび図43A〜Lは、「基礎的」条件下および社会的敗北プロトコル後の、これらのマウスの5HTの濃度および5HT代謝(5HIAA/5HT比)を示す。
不安症およびうつ病関連神経回路内の5HTの組織中濃度および5HT代謝は、miR−135遺伝子型により影響され、さらには、社会的敗北操作miR−135OEは組織5HT濃度を低下させた。これは、セロトニン代謝を高め、不安症関連行動の調節およびストレスの速い立ち直りに関与する脳領域、例えば、前辺縁皮質(PrL)、下辺縁皮質(IL)、扁桃体基底外側部(BLA)、腹側海馬のCA1領域(CA1V)、海馬台(S)、分界条の床核(BNST)、扁桃体の中心核(CeA)、背側縫線核の背側、腹側、尾側および維管束間部分(DRD、DRV、DRC、DRI)、および正中縫線核(MnR)(図40A〜40O、図42A〜Lおよび図43A〜L)における増加したセロトニン代謝回転と一致するパターンである。これらの結果は、「基礎的」条件下でのHtr1aおよびSlc6a4発現のmiR−135OEによる減少(図38C〜D)と一致し、それぞれ、増加したセロトニン作動性ニューロン発火頻度およびセロトニン作動性信号伝達を生ずることが予測される効果である。
社会的敗北は、対照マウスにおける不安症関連脳領域の組織5HT濃度を低下させ、5HT代謝を高めた。これは、PrLおよびBNST(図40A〜40Oおよび図42A〜L)を含む増加したセロトニン代謝回転と一致するパターンであり、以前の研究と変わらず、不安症関連の一部のセロトニン作動性ニューロンの社会的敗北誘導による活性化を示している。これらの社会的敗北の効果は、miR−135OEマウスにおいては阻止され、これは、これらのマウスで観察された長期ストレスに対する行動回復力の機構的説明を示唆している。
(実施例16)
血液中のmiR−135aレベルは、うつ病患者ではダウンレギュレーションされ、治療によりアップレギュレーションされた。
循環miRレベルは疾患状態と相関することが示されたので、本発明者は、血中miR−135レベルがうつ病ヒト患者で変化するか否かを試験した。miR−135aおよびmiR−16の相対的レベルを、2セットのヒト血液試料で試験した。1つは比較されたうつ病患者を適合する健康な対照と比較し、残りは、3ヶ月の認知行動療法(CBT)を受けているうつ病患者の内でmiRNAレベルを一定の期間にわたり変化させる。現時点のうつ病患者(平均ハミルトンうつ病評価尺度(HRDDS)=24.3(SD:5.3)、すなわち、中等度から重篤なうつ病症状を有する)は、対照と比較して、miR−135aレベルを確実に低下させ(図41A)、一方、miR−16の有意な変化は観察されなかった(図41B)。処置前および処置の3ヶ月後でのうつ病患者のmiR−135a血中濃度は、CBT後、miR−135aレベルの有意な増加を示した(図41C)。miR−16のレベルに対しては、同じ血液試料で何らの効果も観察されなかった(図41D)。これらの結果は、ヒト血液中のmiR−135aのレベルを、うつ病状態および処置に対する応答の可能なバイオマーカーとして示唆する。
(実施例17)
アンフェタミン誘導された運動亢進ラットモデルにおけるmiR−135の抗双極性効果
miR−135の抗双極性効果を前臨床的に評価するために、ラットのインビボアンフェタミン誘導運動亢進躁病モデルを使った。これは双極性障害の躁病期に関連する。このモデルは、躁病患者の運動亢進に類似しているので、動物の活動レベルの誘導増加(運動亢進)に的を絞っている。げっ歯類における誘導された運動亢進の薬剤を使った処置による回復は、ヒト躁病の処置におけるこの薬剤の効力のある可能性を示している。リチウム(躁病に対する標準的薬剤)を使って常に分かることは、立ち上がり行動の低減である。モデルでは、立ち上がり行動は動物の垂直の活動を観察することにより追跡される。
したがって、ラットのアンフェタミン誘導された運動亢進の前の、miR−135による前処置が双極性疾患の処置のために試験される。さらに、ラットのアンフェタミン誘導された運動亢進後の、miR−135によるラットの処置が双極性疾患の処置のために試験される。
ラットは12時間の明暗周期下で収容され、明期に行動試験が行われる。特に、ラットの活動性は、2レベルのレーザービームに基づく活動量計(Elvicom,Israel)で追跡され、活動量計は、ラットの垂直移動(立ち上がり行動)のカウントが可能なコンピューター化システムを備えている。活動性は各セッションで30分間記録され、得られた適切な動きは30分毎に報告される。
miR−135で前処置または処置されたラットの活動性が、非処置ラット(対照群)および躁病用標準薬剤、すなわち、リチウムまたはバルプロ酸で前処置または処置されたラットと比較される。ラットは、アンフェタミンで誘発される前後で追跡される。統計解析は2元配置分散分析を使って行われる。
(実施例18)
アンフェタミン誘導躁病ラットモデルにおけるmiR−135の抗双極性効果
miR−135の抗双極性効果を前臨床的に評価するために、ラットのインビボケタミン誘導運動亢進躁病モデルを使った。ケタミンは処置ラットの自発運動の亢進を誘導し、これは上記で考察したように、モニターすることができる。
ラットは、miR−135、または躁病の標準的薬剤、すなわち、リチウム(47.5mg/kg、i.p.、1日2回)もしくはバルプロ酸(200mg/kg、i.p.、1日2回)、もしくは対照としての生理食塩水(i.p.、1日2回)で前処置される(14日間)。8〜14日の間に、これらのラットはケタミン(25mg/kg、i.p.)または生理食塩水で処置される。
逆プロトコルでは、ラットは最初にケタミン(25mg/kg、i.p.)または生理食塩水を投与され、続けて、miR−135、リチウム、バルプロ酸、または生理食塩水を7日間投与される。
miR−135で前処置または処置されたラットの活動性が、非処置ラット(対照群)および躁病用標準薬剤、すなわち、リチウムまたはバルプロ酸で前処置または処置されたラットと比較される。ラットは、ケタミンで誘発される前後で追跡される。統計解析は2元配置分散分析を使って行われる。
考察
今回の調査では、「基礎的」および誘発条件下での、中枢5HT系の活動性の調節における特定のmiRの役割を明らかにした。セロトニン作動性ニューロンにおける特有のmiR発現の「フィンガープリント」を決定し、いくつかの5HT連関標的遺伝子を生物情報学的に特定した。インビトロルシフェラーゼアッセイおよび変異調査により、miR−135のSlc6a4およびHtr1a転写物に対する強力な抑制作用が明らかになった。興味深いことに、RN中のmiR−135レベルは、急性または長期SSRI投与後に強くアップレギュレーションされた。より高いまたはより低いレベルのmiR−135を発現するように遺伝的に改変されたマウスモデルは、不安症およびうつ病様行動、5HTおよび代謝、ならびに抗うつ剤処置に対する行動反応において大きな変化を示した。最終的に、うつ病ヒト患者の血中miR−135レベルおよび処置に対する応答が示された。
5HTおよび非5HT細胞のマウスRNからの単離のためのePet−EYFPマウスモデルの使用により、初めて、特定のmiRのセロトニン作動性ニューロンプロファイルの決定が可能となった。この手法は成功し、情報価値のあるものであったが、それでも、効率的に5HT陽性のニューロンを分別するために、成体脳組織ではなくマウスRN胎仔を使用した。このことは、5HTのmiRプロファイルで提示される少なくとも一部のmiRが発生過程に関連し、成体5HTニューロンの機能に関連しないことを意味する。それにもかかわらず、特定の発生期間中のセロトニン作動性信号伝達が成体の不安症表現型に影響することが知られている(Gross et al.,2002)。興味深いことに、一般に細胞分化に関連しているmiR−375は、対照と比較して、5HTニューロン中で強く発現したが、これはこれらの組織の示唆された一般的発生経路を裏付けている。
生物情報学的分析により、セロトニン受容体1A(Htr1a)とセロトニン輸送体(SERTまたはSlc6a4)3’UTRとの間でいくつかの推定miR−標的相互作用が示唆され、5HTマイクロアレイ中でmiRが示差的に発現した。Htr1aおよびSlc6a4は、うつ病および不安障害、ならびに抗うつ剤に対する応答において、セロトニン作動性システム機能に対し大きな役割を演ずることが示された(Savitz et al.,2009))および(Murphy et al.,2008)。Htr1aは、5HT産生細胞上でおよび5HT投射部位の脳全体にわたりシナプス後に自己受容体として発現される抑制性Gタンパク質共役受容体である。Htr1a自己受容体の刺激は、セロトニン作動性ニューロン発火および神経終末でのセロトニンの放出を抑制し、また、大抵のセロトニン作動性抗うつ剤、例えば、SSRIでよく報告される治療の遅れの1つの原因であると想定されてきた。Slc6a4は、ナトリウムに依存する方式で、シナプス間隙からシナプス前のニューロン中へとセロトニンを再利用することにより、セロトニンの作用を終わらせる細胞膜輸送体である。Slc6a4は、最もよく使われる抗うつ剤の、異なるモノアミン再取り込み輸送体活性を抑制する、Slc6a4を含む前の世代の三環系抗うつ剤、またはより特異的なSSRIの直接的標的である。Slc6a4およびシナプス前のHtr1aの両方の低下した活性は、シナプスにおける5HTレベルを増加させることが予測され、これは、抗うつ剤作用およびうつ病症状の減少と一致する。ルシフェラーゼアッセイにより、miR−135バリアントがSlc6a4およびHtr1a転写物の重要な抑制因子として確認された。変異調査により、観察されたmiR−135抑制効果の媒介におけるHtr1aおよびSlc6a4の3’UTRのmiR−135シード結合部位の重要性がさらに示された。以前にこれらの遺伝子に関し報告された(Piva et al.,2010)、ヒトSlc6a4およびHtr1aの3’UTR中の一塩基多型(SNP)はmiR−135シードマッチ配列内には存在しない。
miR−135は、主として癌関連病態および発生過程に関与することが以前報告された。miR−135は、大腸腺腫症大腸菌遺伝子を標的とし、その結果、結腸直腸癌を促進し、化学療法耐性を変え、さらに古典的ホジキンリンパ腫のJAK2を調節することが示された。発生過程におけるmiR−135の役割が、巨核球形成、ブタの脳の発達、およびSmad5(BMP2骨形成信号の重要なトランスデューサー)の調節による骨形成分化の鉱質形成において明らかにされた。さらに、miR−135はNR3C2を抑制することにより血圧の調節に関与し、心不全で潜在的な役割を有することが示唆された。
いくつかのマイクロRNAスクリーニング調査により、種々の成体げっ歯類またはラット脳構造におけるマイクロRNAレベルが一連の行動操作および薬理学的操作により影響を受けるということが報告された(Kye et al.,2011)。ストレス性の攻撃は、異なる脳部位において、異なるパラダイムを使ってmiR発現を変えることが示された(Smalheiser et al.,2011)。本発明者は、最近、不安症様行動の調節におけるmiR−34の関与(Haramati et al.,2011)を実証したが、miR−22、miR−138−2、miR−148a、およびmiR−488はパニック障害に関連していた(Muinos−Gimeno et al.,2011)。今回の原稿で提示したマウスを使った調査により、抗うつ剤投与後の明らかなmiR−135のアップレギュレーションを明らかにした。SSRIおよびNRI抗うつ剤のさらなる比較により、抗うつ剤が、NRI特異的効果ではなく、SSRI特異的効果を示し、このことは、5HTニューロンの生物学におけるmiR−135の役割をさらに示唆している。長期ストレスはうつ病の発生に対する増加した感受性に関連しているが、意外にも、長期ストレス条件はRN中のmiR−135のレベルには影響を与えなかった。長期SSRI処置は、Slc6a4およびHtr1aタンパク質レベルの低減を促進するがmRNAでは促進しないことが報告され[Slc6a4(Benmansour et al.,2002)、Htr1a(Savitz et al.,2009)]、これは、SSRI活性の媒介における転写後の機序の関与の可能性を示唆している。miR−16は、Slc6a4標的とし、抗うつ剤応答で役割を有することが示された(Baudry et al.,2010)が、リチウム投与はmiR発現を変えることが示された(Creson et al.,2011)。大うつ病患者において、miR−182(Saus et al.,2010)とmiR−30e(Xu et al.,2010b)のバリアント間で関連が見出され、miR発現が自殺性うつ病の患者の前頭前野で変化した(Smalheiser et al.,2012)。さらに、miR448は、脂肪組織成長の一部として、いくつかの5HT受容体の発現を制御し、また、セロトニン受容体1Bの多型がmiR96による調節を抑え、攻撃行動と関連することが示された(Jensen et al.,2009)。最後に、セロトニン受容体3E型のmiR510標的化部位は、過敏性腸症候群で一定の役割を果たすことが示された。
抗うつ剤処置はcAMP信号伝達経路を活性化し、Cre部位に対するCREB結合を促進することが報告された。miR−135の5’フランキング領域のプロモーター分析により、いくつかの推定Cre部位が特定され、これは、観察されたSSRIによるmiR−135アップレギュレーションに対する有望な機序を示唆している。まとめると、Htr1aおよびSlc6a4のmiR−135標的化を示す結果に加えて、抗うつ剤投与後の、RN中でのmiR−135発現レベル発現レベルのアップレギュレーションは、miR−135が内在性抗うつ剤であることを示唆する。
miR−135の内在性抗うつ剤としての役割をさらに裏付けるために、miR−135レベルがインビボで操作され、動物の行動に対するその効果が評価される一連の実験を行った。miR−135を5HTニューロン中で、抗うつ剤処置後に観察されるものと同じレベルで、特異的に発現する遺伝子導入マウスモデルは、長期社会的敗北における行動上の有害な影響に対する強力な保護作用を示した。これらの結果は、Htr1a(Bortolozzi et al.,2012)またはSlc6a4(Thakker et al.,2005)がsiRNA手法を使ってノックダウンされ、うつ病様行動の低減を示す場合に、または正確な遺伝子導入マウスモデルを使ってHtr1a自己受容体レベルが増加し、不安症およびうつ病様行動の高揚および抗うつ剤に対する応答の低下の原因となる場合(Richardson−Jones et al.,2010)に観察された効果に似ていた。対照的に、Htr1a(Savitz et al.,2009)およびSlc6a4(Holmes et al.,2003)に対する発育ノックアウトマウスモデルは、不安症およびうつ病様行動の逆説的な増加を示し、これは、代償性発育変化により媒介されることが示唆された。Htr1aおよびSlc6a4に加えて、miR−135aが、観察された表現型に寄与すると思われるセロトニンニューロン中の他の遺伝子に影響する可能性もある。
補足的な手法を使って、成体野性型マウスのRN中のmiR−135のレベルをレンチウイルスを使って特異的にノックダウンし、マウスの行動を「基礎的」(ストレスなしの)条件下でSSRI投与後に評価した。miR−135を過剰発現しているマウスにより観察された行動とは対照的に、この低減されたレベルのmiRは、不安症様行動の大幅な増加および抗うつ剤に対する減弱した応答を生じた。これらの結果は、「基礎的」条件下での攻撃に対する完全な応答および抗うつ剤作用の機序におけるその重要な役割を維持する上での、miR−135の重要な役割を裏付けている。これらの知見は、報告された文献と一致し、高レベルのHtr1aが増加した行動上の失望および抗うつ剤に対する鈍くなった応答と関連する(Richardson−Jones et al.,2010)。さらに、ヒトHtr1a遺伝子中の多型は、より高いHtr1a自己受容体結合および増加した不安症およびうつ病と関連した(Fakra et al.,2009)。対照的に、より短いプロモーターバリアントによるSlc6a4のより低い発現レベルは、増加した不安症およびうつ病ならびに抗うつ剤に対する低下した応答に関係することが報告された(Homberg and Lesch,2011)。
5HT回路におけるmiR−135の役割のさらなる裏付けは、miR−135OEマウスモデルの脳全体にわたる5HTレベルおよびその代謝の確実な変化を示すHPLCデータから明らかになった。5HTが合成される縫線核の亜核と、不安症およびうつ病様行動の制御に重要な投射部位との両方において、「基礎的」ストレス条件下で、対照と比較して、miR−135OEマウスでは5HTレベルは低いが、5HT代謝は高かった。この5HTレベルおよび5HT代謝の変化パターンは、miR−135OEマウスにおける増加したセロトニン作動性ニューロン発火および増加したセロトニン作動性信号伝達と一致する。これらの差異は、成長期から成人期のmiR−135の過剰発現に関連する代償性変化の結果である可能性がある。しかし、低い「基礎的」5HTレベルにもかかわらず、マウスは「基礎的」条件下で正常な行動を示し、これは、「基礎的」条件下でのそれらのより高い5HT代謝により示されるように、恐らく、より活性な5HT系に起因すると思われる。想定されるのは、RN中で5HT分泌の阻害剤として機能するSlc6a4およびHtr1aのより低い発現レベルにより、マウスがより低いレベルの5HTで正常に機能することが可能となるということであろう。興味深いことに、長期ストレスが、対照マウスの一部の脳領域での予想通りの5HT代謝の増加に付随して、5HTレベルの低下を生じたが、一方で、miR−135OEマウスではこれらの効果は観察されなかった。これらの変化により、miR−135OEマウスで観察される長期ストレスに対する行動回復力の機構的説明を提供することができる。
病理学的条件のための非侵襲的バイオマーカーとして想定される循環miRの使用は、成長中の分野であり、循環中のmiRの比較的高いレベルおよび安定性であることから推進されている。細胞外のmiRの役割と期限についてはほとんど分かっていないが、循環miRは、異なるタイプの癌、心臓疾患、酸化的肝障害、敗血症、妊娠などの病態生理学的状態に関連付けられてきた。現在の研究では、うつ病患者の全血中のmiR−135のレベルが測定され、対応する対照に比べて、うつ病患者の血液中のmiR−135レベルの確実な低下が観察された。これらの知見は、miR−135が内在性抗うつ剤であることを示す動物モデル由来の以前のデータと一致し、また、miR−135を、うつ病状態および場合により処置に対する応答のための可能なバイオマーカーとして示唆する。
結論として、本発明者は、5HTニューロンにより発現されるmiR−135は、正常な条件下で、無変異型セロトニン作動性緊張の維持に関与する不可欠な調節エレメントであり、また、抗うつ剤に対する脳応答に不可欠である(図41Eの図式モデルを参照されたい)ことを提案する。miR−135のレベルの増加は、Slc6a4およびシナプス前のHtr1aレベルの両方を抑制し、うつ病性症状の減少に関連する、シナプス間隙中の5HTを増加させる。
本発明者らが行ったさらなる生物情報学分析により、双極性感情障害またはリチウム作用を含むストレス関連精神神経疾患に関連付けられる次のmiR135標的が予測された:アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1(Adcyap1またはPACAP);アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド1受容体1(Adcyap1r1);アドレナリン受容体、アルファ2a(Adra2a);アンキリン3(ANK3);活動依存性細胞骨格関連タンパク(Arc);Rho GTPase活性化タンパク質6(Arhgap6);活性化転写因子3(Atf3);アミロイド前駆体タンパク質βサイト切断酵素1(Bace1);カルシウムチャネル、電圧依存性、L型、アルファ1Dサブユニット(Cacna1d);細胞付着分子3(Cadm3);コンプレキシン1(Cplx1);コンプレキシン2(Cplx2);CUBおよびSushi複数ドメイン1(Csmd1);カゼインキナーゼ1、ガンマ1(Csnk1g1);ダブルコルチン(Dcx);DIRASファミリー、GTP結合RAS様2(Diras2);ディスクラージホモログ2(ショウジョウバエ)(Dlg2);ELK1、ETS癌遺伝子ファミリーのメンバー(Elk1);癌遺伝子関連キナーゼ(Frk);フコシルトランスフェラーゼ9(アルファ(1,3)フコシルトランスフェラーゼ)(Fut9);ガンマアミノ酪酸(GABA−A)受容体、サブユニットベータ2(Gabrb2);GATA結合タンパク質3(Gata3);成長ホルモン分泌促進物質受容体(Ghsr);Gタンパク質共役受容体3(Gpr3);グルタミン酸受容体、イオンチャネル型AMPA3(アルファ3)(GRIA3);Gタンパク質共役受容体キナーゼ5(Grk5);グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3ベータ(GSK3B);過分極活性化環状ヌクレオチド依存性カリウムチャネル1(Hcn1)、過分極活性化環状ヌクレオチド依存性K+2(Hcn2)、イノシトール一リン酸分解酵素(IMPA1)、カリリン、RhoGEFキナーゼ(Kalrn);カリウム中間体/小コンダクタンスカルシウム活性化チャネル、サブファミリーN、メンバー3(KCNN3);カリオフェリンα3(インポーチンアルファ4)(Kpna3);ミエリン転写因子1様(Myt1l);核内受容体転写共役因子2(Ncoa2);N−Myc下流調節遺伝子4(Ndrg4);一酸化窒素合成酵素1(神経細胞)アダプタータンパク質(NOS1AP);核受容体サブファミリー3、グループC、メンバー2(Nr3c2);ネトリンG1(Ntng1);核カゼインキナーゼおよびサイクリン依存性キナーゼ基質1(Nucks1);ホスホジエステラーゼ1A、カルモデュリン依存性(Pde1a);ホスホジエステラーゼ4A、cAMP特異的(Pde4a);ホスホジエステラーゼ8B(Pde8b);ホスホリパーゼC、ベータ1(Plcb1);プロラクチン受容体(Prlr);RAB1B、RAS癌遺伝子ファミリーメンバー(Rab1b);Ras関連タンパク質Rap−2a(Rap2a);レチノイド関連オーファン受容体ベータ(Rorb);サーチュイン1(サイレント交配型情報調節因子2、相同体)1(Sirt1);溶質輸送体ファミリー12、(カリウム/塩化物輸送体)メンバー6(Slc12a6);溶質輸送体ファミリー5(コリン輸送体)、メンバー7(Slc5a7);トランス作用性転写因子1(Sp1);シナプス小胞糖タンパク質2b(Sv2b);シナプス核膜1(ネスプリン−1をコード)(Syne1);シナプトタグミンI(Syt1);シナプトタグミンII(Syt2);シナプトタグミンIII(Syt3);形質転換増殖因子、ベータ受容体II(Tgfbr2);甲状腺ホルモン受容体、ベータ(Thrb);一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリーC、メンバー6(Trpc6);シナプス小胞結合膜タンパク質2(Vamp2);無翅関連MMTV統合部位3(Wnt3)およびジンクフィンガー、BEDドメイン含有4(Zbed4)。
全体として、これらのデータは、miR−135aが双極性感情障害、その処置および診断の病態生理学において重要な役割を果たすことを示唆している。
本発明をその特定の実施態様と共に説明してきたが、多くの代替物、修正物および変形物があることは当業者には明らかであろう。従って、本発明は、添付の請求項の趣旨と広い範囲に入るこのような代替物、修正物および変形物のすべてを包含することが意図されている。
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願のそれぞれがあたかも具体的に、個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、それら全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における任意の文献の引用または特定は、このような文献が本発明の先行技術として利用できるということの承認と解釈されるべきではない。セクションの見出しは、それらが使用されているその程度までに限定するものと解釈されるべきではない。