JP2019169499A - コモンモードチョーク - Google Patents
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Description
コモンモードノイズの対策としてコモンモードチョークが用いられる。コモンモードチョークは、ナノ結晶軟磁性材料やMn−Znフェライト等の高透磁率の環状の磁心が採用されている。コモンモードチョークとして、環状の磁心を電源配線に直接取り付けるタイプがある。
特許文献1に記載されたバスバーは、環状の磁心の中空部に通すことができる程度に、3本中2本が屈曲され、この2本のバスバーが蛇行されながら磁心に通された後、中央の直線状のバスバーが挿入され、その後、それぞれのバスバー間に絶縁ボビンが挿入される。
環状の磁心にバスバーを貫通させる他の方法として、周方向で分割可能な環状の磁心、例えば断面がU字状の複数の軟磁性部材からなる磁心を使用し、バスバーの中腹部を覆うように軟磁性部材を組み合わせる方法がある。しかし、この方法は、合金薄帯を巻いた巻磁心のような、周方向に一体の磁心を用いる場合には、磁心を分割することが難しい。また分割した場合には、磁気的なギャップが生じてインピーダンス特性が低下するという問題がある。
前記バスバーは、中腹部に樹脂部を備え、かつ、前記ケースの軸方向に見た場合に、一端側は、前記ケースの中空部より外側まで屈曲し、他端側は中空部の内側にあり、
前記2本のバスバーは、屈曲した側が前記ケースのそれぞれ別側に配置されるように、前記ケースに貫通され、かつ、それぞれの前記樹脂部を介して前記中空部内で並列に配置されるとともに、前記樹脂部により、前記軸方向の所定位置で、前記ケースに係止されていることを特徴とする。
また、前記バスバーは、前記樹脂部に形成された鍔部により、前記ケースの端部で係止されている構造とすることができる。
また、前記ケースの軸方向において、前記樹脂部の端部は、他の樹脂部の端部と異なる位置にある構造とすることができる。
また、それぞれの前記樹脂部は、前記中空部内で互いに隣接した状態で、前記ケース内周面に接している構造とすることができる。
また、前記樹脂部とケースは、前記の接する部分において、前記バスバーの抜け落ちを防止可能な嵌合部が形成されている構造とすることができる。
また、環状の磁心は、周方向で一体的に形成されたものを用いることができる。
また、前記磁心とケースは、軸方向に複数配置される構造とすることができる。
また、前記樹脂部は、バスバーの中腹部にインジェクション成型されたものとすることができる。
図1は本実施形態のコモンモードチョーク10であり、図1(a)は正面図、図1(b)は下側面図、図1(c)は左側面図である。
このコモンモードチョーク10は、環状の磁心(図示せず)を覆う環状のケース3a,3bを備え、前記ケース3a,3bの中空部を2本のバスバー1a,1bが貫通する。
また、前記バスバー1a,1bは、中腹部に樹脂部(ボビン)2a,2bを備え、かつ、前記ケース3a,3bの軸方向に見た場合に、一端側(図1(a)のバスバー1aの左側端部、及び、バスバー1bの右側端部)は、前記ケースの中空部より外側まで屈曲し、他端側は中空部の内側にあり、(図1(c)を参照)
前記2本のバスバー1a,1bは、屈曲した側が前記ケース3a,3bの軸方向のそれぞれ別側に配置されるように、前記ケースに貫通され(図1(a)のバスバー1aの左側端部、及び、バスバー1bの右側端部)、かつ、それぞれの前記樹脂部(ボビン)2a,2bを介して前記中空部内で並列に配置されるとともに、前記樹脂部(具体的には、後述図3のボビンの鍔21)により、前記軸方向の所定位置で、前記ケースに係止されている。
バスバーの他端側がケースの中空部を貫通可能な形状であるので、他端側から中空部に挿入すれば、簡単に磁心内部にバスバーを貫通させることができる。
また、バスバーの屈曲した側がケースの軸方向のそれぞれ別側に配置されるので、バスバーの端部と外部導体とを結合することが容易である。
さらに、バスバーの中腹部に樹脂部を設けているので、2本のバスバーが樹脂部を介して中空部内に配置されるので、バスバー同士を離して配置することができ、絶縁効果を高めることができる。樹脂は絶縁性の高いものを用いることが好ましい。
また、樹脂部により軸方向の所定位置でケースに係止するので、バスバーを貫通させつつ、軸方向でのバスバーの位置決めが容易である。
また、環状の磁心は環状のケースに覆われるので、外部からの衝撃等による磁心の破損を抑制できる。
かかる構成によれば、鍔部とケースが接触しているかどうかを目視で確認すれば、バスバーが軸方向において目標位置にあることが確認できるので、組立作業が容易である。
また、鍔部がバスバーの屈曲する一端側に形成されているので、バスバーの他端側をケースに挿入してそのまま押し込むワンアクションで、鍔部がケースの端部に当接し、ケースとバスバーの位置決めが完了するので、位置決めの作業が容易である。
また、樹脂部の中空部内を通さない部位に鍔部を設けるので、鍔部の設計が容易である。
図13は、図1のケースの端部部分の模式図である。説明のため、ボビン2aが存在する範囲を太線の斜線部で、ボビン2bが存在する範囲を細線の斜線部で示す。また、各部の寸法は、図1と変えた部位がある。
ボビン2aと2bの端部が同じ位置にある場合、沿面距離は、バスバー1a,1b間の空間距離と同じ距離W1である。例えば、ボビンの端部を、バスバーの長手方向に垂直な方向とせず、斜めにすることでも沿面距離を長くできるが、ボビンの形状が複雑になり成形が難しくなる。特に、バスバー同士の距離が2mm以下になるコモンモードチョークの場合、バスバーで挟まれる側の樹脂部の肉厚は1mm以下となるので、複雑な形状に成形することは困難である。
上記のように、ボビンの端部の位置を変えることで、屈折する太線の矢印の間の長さを沿面距離とすることができ、バスバー1a,1b間の空間距離W1よりも遥かに長い沿面距離を確保することができる。これにより、バスバー間の絶縁性を高めることができる。
コモンモードチョークは、それぞれの導体に流れる電流により、磁心に流れる磁束が極力打ち消されるような、ディファレンシャルモードを維持できる構造とする必要がある。かかる構成によれば、それぞれの樹脂部がケース内周面に接することで、ケースの軸に垂直な方向に対して固定されるので、バスバーがケース内部で位置決めされる。これにより、それぞれのバスバーが、磁心に対して一定の距離を保つように中空部で位置が固定され、バスバーの位置の変動によって磁心で発生する磁束量の変化を極力小さくでき、その結果、ディファレンシャルモードを維持できる。
かかる構成によれば、バスバーをケースの中空部に挿入した後も、軸方向での位置ずれが抑制できるので、さらに確実にバスバーの端部と外部導体との結合スペースを確保できる。
本発明のコモンモードチョークは、かかる構成を採用しているので、周方向で分割した磁心を用いずとも、バスバーの貫通及び位置決めが容易であるので、環状の磁心を切断加工等により分割せずとも、そのまま使用することができる。
インジェクション成型は成形の自由度が大きく、前記の鍔部や嵌合部の成形が容易である。また、成形される鍔部や嵌合部の寸法精度も高くできる。そのため、より確実にケースとバスバーの位置決めを行うことができる。
(実施例)
図1は、本発明に係るコモンモードチョーク10の外観を示す図である。
コモンモードチョーク10は、環状の磁心2個(図示せず)と、それぞれの環状の磁心を覆う環状のケース3a,3bと、2本のバスバー1a,1bと、バスバー同士、及び、バスバー1aとケース3a、3bを絶縁するボビン2aと、バスバー同士、及び、バスバー1bとケース3a、3bを絶縁するボビン2bからなる。
バスバーの材質は、導電率 96%以上の銅である。また、バスバーの断面積S(mm2)は、使用する電流容量(A)を、電流密度(A/mm2)で割ったもので決定できる。電流密度は、例えば、JIS規格8480で複数にランク分けされた電流容量に対する値が決められている。バスバーの断面積とともに、磁心のサイズが決定される。
図3はボビン2aの斜視図であり、図3(a)はボビンを斜め上から見た図であり、図3(b)は図3(a)と反対の方向から見た図である。ボビン2a,2bは、半円柱状であり、円弧状の外周面23と平面状の接触部24を備える。
また、ボビン2a,2bは、バスバーが固定される貫通孔22を有する。ボビン2a,2bはバスバーの中腹部を覆うので、バスバー1a,1bは、ケースの中空部に配置された状態で絶縁状態を維持できる。また、一方のボビンに亀裂が入ったとしても、他方のボビンで絶縁状態を維持することができる。
ボビンの材質は、例えば熱可塑性樹脂(例 PBT樹脂 PET樹脂)等を用いることができ、必要によりガラス繊維を含ませて機械的強度を高めたものも使用できる。
さらに、ボビン2a,2bは、一端側に鍔21が形成されている。鍔21は、半円の板状にバスバーの貫通孔が形成されたものであり、この半円はケースの中空部よりも大きな径を有する。この鍔は、ボビンを、ケースに対して、軸方向の所定位置に固定する役目を持つ。この鍔21の形状は特に限定されず、最大幅がケースの中空部の径よりも大きければよい。
ボビン2a,2bは、平面状の接触部24同士を対向させ、互いに隣接することで、円柱状になる。なお、ボビン2a,2bの鍔がそれぞれ異なる端部側になるようにボビン2a,2bが中空部内で隣接される。
また、バスバーは、その両端がボビンから突出するように固定される。バスバーの一端側に形成される屈曲部は、ボビンの鍔が備えられた側に配置される。
かかる構成により、バスバー1a,1bの直線状の端部をケースの内径部に挿入するだけで、磁心にバスバーを貫通させることができる。また、ボビンの鍔がケースに係止するので、ボビンをケースに挿入するだけでバスバーと磁心とを軸方向の所定位置で固定できる。
ケースの蓋部31は、蓋側中空部311が形成されている。また、内部には、環状の磁心の一部を収納可能な、ドーナツ状の蓋溝312が形成され、その開口部側(図面下側)には、底部32と組み合わせるための段差313が形成されている。
また、ケースの底部32は、底側中空部321が形成されている。また、内部には、環状の磁心の一部を収納可能な、ドーナツ状の底溝322が形成され、その開口部側(図面上側)には、蓋部31と組み合わせるための段差323が形成されている。
なお、本実施形態のコモンモードチョークでは、磁心を内包したケースを、同軸で2つ繋げて使用している。
この磁心は、既知の軟磁性材料で作製できる。例えば、フェライト材を粉末成形して作製することもできるし、アモルファス金属薄帯やナノ結晶金属薄帯を巻いて作製することもできる。
本実施形態では、ナノ結晶化が可能なアモルファス金属薄帯(厚さ25μm)を巻いて積層体とし、結晶化開始温度以上に加熱してナノ結晶化した磁心を用いている。
この磁心4は、前記のケース底部32の底溝322、及び、ケース蓋部31の蓋溝312で形成される空間に収納される。磁心4がケース内部で動かないようにすることで、ケースに樹脂部を介して固定されるバスバーとの距離を固定できる。この距離を固定するため、ケース内の空間と磁心4が勘合するように設計することができる。また、磁心4とケースとは接着剤等で固定することもできる。
バスバー1aはボビン2aを介して、バスバー1bはボビン2bを介して、ケース3a、3bに固定される。
図2は、ボビン2a,2bと、磁心を内包したケース3a,3bを組み合わせた上体を示す斜視図である。図中では、ケース内のボビンの外観は破線で示している。
ボビン2a,2bは、軸方向に並べられたケース3a,3bの中空部に挿入される。ボビン2aは、ケースの中空部に、軸方向の一端側から、鍔が無い方の端部から挿入され、鍔21がケースの軸方向端部に当接するまで挿入される。鍔21により、ボビン2aは、軸方向の所定位置で、ケースに係止される。ボビン2aが挿入された後、ケースの他端側から、ボビン2bが、鍔が無い方の端部から挿入される。
ボビン2aと2bは、平面部同士を対向させて隣接することで円柱状となるが、その外周面はケース3a,3bの中空部の内周面と摺動する程度に設計されている。そのため、挿入されたボビン2a,2bは、軸方向だけでなく、軸断面上でも、磁心に対して位置が固定される。
また、この段差は、バスバーをケースに係止するための鍔部21で形成できるので、簡易な構成で、バスバーの固定と沿面距離の長距離化を行うことができる。
磁心は図6に、バスバーは図7に示すものを用いることができる。
図10は、この実施形態に用いられるケース底部32cの上面図と側面図である。図5の底部32cに対し、凸部324が中空部321の内周面に形成されている点で異なり、それ以外は同じである。
図9は、この実施形態に用いられるボビンである。図3のボビン1a,1bに対し、溝部25が形成されている点で異なり、それ以外は同じである。溝部25は、外周面23に形成され、ケースの底部32cの凸部324の高さよりも若干深く形成されている。溝部25は、鍔部21が形成されていない側の端部から軸方向に向けて伸びる1本の直線溝と、その周方向に伸びる2本の周溝からなる。2本の周溝は、それぞれ、ケースに鍔部21が係止した状態で、底部32cの凸部324が形成された位置にある。
ボビンはバスバーに固着されているので、ボビンがケースから抜け落ちなければ、同様にバスバーの抜け落ちも無い。
ボビン2c,2dは、ケース3c、3dの凸部324が、溝部25と摺動するように、中空部に挿入される。ボビン2cは、ケースの中空部に、軸方向の一端側から、鍔が無い方の端部から挿入され、鍔21がケースの軸方向端部に当接するまで挿入される。鍔21により、ボビン2cは、軸方向の所定位置で、ケースに係止される。ボビン2cが挿入された後、ケースの他端側から、ボビン2dが、鍔が無い方の端部から挿入される。
挿入されたボビン2c,2dは、ケース3c、3dに対して、相対的に回転される。これにより、ケースの凸部324は、溝部25の直線溝から周溝に移動する。この状態にすることで、ケースの凸部324が周溝の軸方向の壁面に係止され、ボビン2c,2dとケース3c、3dが嵌合する。かかる構成は、図3のボビンの効果に加え、ボビンやバスバーの抜け落ちを防止する効果がある。
かかる構成によれば、溝部だけで、ケースとボビンの軸方向の位置決めと、バスバーの抜け落ちの防止が可能であり、ボビンの鍔部を無くせるので、軽量化が可能である。また、形状が簡略化されるのでボビンの製造が容易である。
なお、この実施形態においても、ケースの軸方向において、樹脂部の端部が、他の樹脂部の端部と異なる位置にあるように設計することで、沿面距離を長くすることができる。
磁心は、図6に示すものを用いることができる。バスバーは図7に、ケースは図4の蓋部と図10の底部に示すものを用いることができる。
図12は、この実施形態に用いられるボビンである。図9のボビン2c,2dに対し、外周面23の一部が、側壁26となっている点で異なり、それ以外は同じである。軸方向の位置決め方法、及び、バスバーの抜け落ちを防止する嵌合方法も、図8での説明と同じである。
図12のボビン1e,1fは、ケース3c、3dの中空部内で互いに隣接した状態で、外周面23がケース内周面に接しているが、側壁26は接していない。かかる構成によれば、図9のボビン1c,1dの効果に加え、貫通孔22の側面の肉厚が薄くなり、軽量化、及び材料費の低減の効果がある。
なお、この実施形態においても、ケースの軸方向において、樹脂部の端部が、他の樹脂部の端部と異なる位置にあるように設計することで、沿面距離を長くすることができる。
図15は、この実施形態に用いられるバスバーである。図7のバスバー1a,1bは、屈曲部12の先端側と中央側とも、同一面内になるように形成されているのに対し、図12のバスバーは、屈曲部12の位置で、折り曲げられるように形成されている。かかる構成によれば、図15のバスバーは、屈曲部を折り曲げるだけで形成することができ、製造が容易である。
Claims (8)
- 環状の磁心と、前記磁心を覆う環状のケースと、前記ケースの中空部を2本のバスバーが貫通するコモンモードチョークであって、
前記バスバーは、中腹部に樹脂部を備え、かつ、前記ケースの軸方向に見た場合に、一端側は、前記ケースの中空部より外側まで屈曲し、他端側は中空部の内側にあり、
前記2本のバスバーは、
屈曲した側が前記ケースの軸方向のそれぞれ別側に配置されるように、前記ケースに貫通され、かつ、
それぞれの前記樹脂部を介して前記中空部内で並列に配置されるとともに、
前記樹脂部により、前記軸方向の所定位置で、前記ケースに係止されている、ことを特徴とするコモンモードチョーク。 - 前記バスバーは、前記樹脂部の前記一端側に形成された鍔部により、前記ケースの端部で係止されていることを特徴とするコモンモードチョーク。
- 前記ケースの軸方向において、前記樹脂部の端部は、他の樹脂部の端部と異なる位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載のコモンモードチョーク。
- それぞれの前記樹脂部は、前記中空部内で互いに隣接した状態で、前記ケース内周面に接していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコモンモードチョーク。
- 前記樹脂部とケースは、前記の接する部分において、前記バスバーの抜け落ちを防止可能な嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のコモンモードチョーク。
- 前記環状の磁心は、周方向で一体的に形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコモンモードチョーク。
- 前記磁心とケースは、軸方向に複数配置されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコモンモードチョーク。
- 前記樹脂部は、バスバーの中腹部にインジェクション成型されたものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコモンモードチョーク。
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