JP2019168569A - 赤外光用光学部材及びその製造方法 - Google Patents

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勇人 岡部
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公男 高瀬
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Abstract

【課題】本発明では、赤外光反射防止膜にゲルマニウムなどの高価な材料を用いず、波長8〜14μmの範囲で高い透過率を有し、かつ赤外光を透過する基板との密着性及び耐久性に優れた赤外光反射防止膜を具備した赤外光用光学部材を提供することを課題とする。さらに、前記赤外光用光学部材を有する光学機器並びに赤外光用光学部材の製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】本発明によれば、赤外光反射防止膜にゲルマニウムなどの高価な材料を用いず、透過率、密着性及び耐久性に優れた赤外光用光学部材が得られる。具体的には、スチレン‐オレフィン系共重合体を含有する赤外光反射防止膜を、赤外光を透過する基板上に形成することで、8〜14μmの範囲の波長における高い透過率と優れた密着性及び耐久性を有する赤外光用光学部材が得られる。【選択図】図1

Description

本発明は、赤外光を透過する基板の少なくとも一方の面に、少なくともスチレン‐オレフィン系共重合体を含む赤外光反射防止膜を一層又は複数層有する赤外光用光学部材及び赤外光用光学部材の製造方法に関する。
近年、赤外線を利用した機器の開発が進められている。遠赤外線と呼ばれる4〜15μmの波長域の光を利用した赤外線センサー等の光学機器の市場は、車載ナイトビジョンやセキュリティーなどの需要拡大に伴って今後著しく成長すると予想され、開発が盛んになってきている。遠赤外線を透過する部材には、ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、シリコン等の材料が用いられる。これらの材料を用いる場合、部材表面での遠赤外線の反射を抑えるため、材料表面に薄い反射防止膜を形成し赤外光用光学部材として用いる。
特許文献1には、シリコン基板の表面に、ゲルマニウム、硫化亜鉛、フッ化イットリウムを基板側から順に、真空蒸着などの真空薄膜堆積方法によって積層し、これら五層を赤外光反射防止膜とする技術が開示されている。これにより、波長6〜12μmの範囲における赤外光用光学部材の透過率を高くすることができる。
しかしながら、赤外光反射防止膜にゲルマニウムなどの高価な材料を用い、かつ真空プロセスによって赤外光反射防止膜を形成するため、赤外光用光学部材のコストを高くし、遠赤外線光学機器の市場の成長を妨げる要因のひとつとなっている。また、赤外線カメラや赤外線サーモグラフィーの発達により、高い解像度を有する赤外光用光学部材が求められており、その要望を達成するためには、赤外光用光学部材として波長8〜14μmにおける透過率を高くする必要がある。
特許文献2には、ゲルマニウムなどの無機材料からなるレンズコアの表面に、ポリエチレンなどの有機材料を被覆し、安価で加工がしやすく、遠赤外線の透過率に優れたレンズが提案されている。
しかしながら、無機材料とその表面に形成された樹脂層との密着性や耐久性については言及されておらず、実際に赤外光用光学部材として使用するには、これらの性能が不十分である場合がある。このため、無機材料と樹脂層との接合に接着剤を用いたり、無機材料の表面を加工する必要があるが、一方で、赤外光用光学部材としての遠赤外線の透過率低下を招く。
特開2007‐298661 国際公開WO2015/029645
本発明では、赤外光反射防止膜にゲルマニウムなどの高価な材料を用いず、波長8〜14μmの範囲で高い透過率を有し、かつ赤外光を透過する基板との密着性及び耐久性に優れた赤外光反射防止膜を具備した赤外光用光学部材を提供することを課題とする。さらに、前記赤外光用光学部材を有する光学機器並びに赤外光用光学部材の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の内容の本発明を完成した。
[1]赤外光用光学部材において、赤外光を透過する基板の少なくとも一方の面に、少なくともスチレン‐オレフィン系共重合体を含む赤外光反射防止膜を一層又は複数層有することを特徴とする、赤外光用光学部材。

[2]前記スチレン‐オレフィン系共重合体が、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が13重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする、[1]に記載の赤外光用光学部材。

[3]前記赤外光反射防止膜の厚さが0.1〜5.0μmであって、波長10μmにおける屈折率が1.0〜2.0であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の赤外光用光学部材。

[4]前記赤外光を透過する基板が、波長10μmにおける屈折率が2.0〜4.5の無機材料であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の赤外光用光学部材。

[5]前記無機材料が、シリコン、ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、セレン化亜鉛及び硫化亜鉛から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の赤外光用光学部材。

[6]赤外線の光路に設置された[1]〜[5]のいずれか一項に記載の赤外光用光学部材を有する光学機器。

[7]赤外光を透過する基板上に、スチレン‐オレフィン系共重合体を含む赤外光反射防止膜を湿式法にて形成する工程を少なくとも有する、赤外光用光学部材の製造方法。
本発明によれば、赤外光反射防止膜にゲルマニウムなどの高価な材料を用いず、透過率、密着性及び耐久性に優れた赤外光用光学部材が得られる。具体的には、スチレン‐オレフィン系共重合体を含有する赤外光反射防止膜を、赤外光を透過する基板上に形成することで、8〜14μmの範囲の波長における高い透過率と優れた密着性及び耐久性を有する赤外光用光学部材が得られる。
本発明の赤外光用光学部材の模式図である。
以下、図面を参照しながら本発明を詳しく説明する。図面の説明は便宜のためのものにすぎず、本発明は図示された態様に限定されるわけではない。また、図面においては発明の特徴的な部分を強調して表現することがあるので、図面各部における縮尺の正確性は必ずしも担保されていない。
(赤外光用光学部材)
図1は、本発明の赤外光用光学部材の模式図である。図1に示すように、本発明の赤外光用光学部材1は、赤外光を透過する基板11の少なくとも一方の面に、赤外光反射防止膜12を有する。
(赤外光を透過する基板)
本発明に使用可能な赤外光を透過する基板は、光学装置等における赤外線の光路に設置されるよう構成された未設置の部材、あるいは、前述のように構成されてすでに設置された部材である。また、形状は特に限定はなく、例えば、各種のレンズ状を呈していてもよいし、板状であってもよい。
本発明に使用可能な赤外光を透過する基板は特に限定はなく、例えば、シリコン、ゲルマニウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、カルコゲナイドガラス、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化ランタン、塩化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの中でも、加工性及びレンズ設計上の収差補正の観点から、波長10μmにおける屈折率が2.0〜4.5の無機材料であることが好ましく、その中でも吸湿性を持たないシリコン、ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、セレン化亜鉛、硫化亜鉛がより好ましい。
(赤外光反射防止膜)
本発明に使用可能な赤外光反射防止膜は、少なくともスチレン‐オレフィン系共重合体を含有する。前記スチレン‐オレフィン系共重合体を構成するために使用されるスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、2‐メチルスチレン、3‐メチルスチレン、4‐メチルスチレン、4,α‐ジメチルスチレン、2‐メトキシスチレン、3‐メトキシスチレン、4‐メトキシスチレン、2‐アセトキシスチレン、3‐アセトキシスチレン、4‐アセトキシスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。スチレン‐オレフィン系共重合体を構成するために使用されるオレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1‐ブテン、イソブテン、1‐ヘキセン等のα‐オレフィン、1,3‐ブタジエン、イソプレン、1,3‐ペンタジエン、2,3‐ジメチルブタジエン等のジエンが挙げられる。オレフィン系モノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。上記に加え、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル、アクリル酸ノルマルオクチル等のアクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタアクリル酸及びその誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ウンデカン酸ビニル、パルミチン酸ビニル等のビニルエステル及びその誘導体、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、2‐クロロアクリロニトリル等のニトリル及びその誘導体のいずれかをモノマーとして使用しても良い。
本明細書において「構成単位」とは、共重合体を構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造を指す。
本明細書において「スチレン単位」とは、スチレン誘導体を重合したときに重合体に含まれる当該スチレン誘導体由来の構成単位を指し、「オレフィン単位」とは、オレフィン誘導体を重合したときに重合体に含まれる当該オレフィン由来の構成単位を指す。
前記スチレン‐オレフィン系共重合体は、当該スチレン単位の含有量が13重量%以上、90重量%以下の重合体であることが好ましく、28重量%以上、65重量%以下の重合体であることがより好ましい。前記スチレン‐オレフィン系共重合体の、当該スチレン単位の含有量が13重量%以上、90重量%以下の場合は、赤外光反射防止膜としての透過率向上の効果が大きい。
本発明に使用可能なスチレン‐オレフィン系共重合体の例としては、スチレン‐エチレン共重合体、スチレン‐プロピレン共重合体、スチレン‐ブチレン共重合体、スチレン‐ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン‐ブタジエンランダム共重合体、スチレン‐イソプレンランダム共重合体、水素添加スチレン‐イソプレンランダム共重合体、スチレン‐ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加‐スチレン‐ブタジエンブロック共重合体(SEB,SEBC)、スチレン‐エチレン‐ブタジエン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体(SBBS)、及び、これらの水添物、スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン‐エチレン‐プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレンブロック共重合体(スチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体)(SEPS)、スチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレンブロック共重合体、スチレンブロックが反応架橋型のスチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体、メチルメタクリレート‐スチレン共重合体(MS)、メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン共重合体(MBS)、ブタジエン‐アクリロニトリル‐スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル‐スチレン共重合体(AS)、またはこれらの変性物(変性スチレン‐オレフィン共重合体)等が挙げられる。これらの中でも、赤外光反射防止膜と赤外光を透過する基板との密着性の観点から、SEBS、SEPS、SEEPSおよび変性スチレン‐オレフィン系共重合体が好適に挙げられる。
前記変性スチレン‐オレフィン系共重合体とは、構成単位としてスチレン単位およびオレフィン単位を含み、かつ、片末端に官能基を有する片末端変性スチレン‐オレフィン系共重合体および構成単位とは異なるモノマーをグラフト重合したグラフト変性スチレン‐オレフィン系共重合体を指す。
上記片末端変性スチレン‐オレフィン系共重合体の官能基とは、酸素、硫黄、窒素、リン、およびハロゲンから選ばれる少なくとも1種類の元素を含有する基であり、具体的には、オキシ基;ペルオキシ基;ヒドロキシ基;ヒドロペルオキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどのアルコシキ基;フェノキシ、メチルフェノキシ、ジメチルフェノキシ、ナフトキシなどのアリーロキシ基;フェニルメトキシ、フェニルエトキシなどのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基; シリロキシ、ボリロキシ、アルミノキシなどの第13,14族元素と酸素が結合した基;アミノ基;メチルアミノ、N‐ベンジルアミノ、N‐シクロヘキシルアミノ、等のN‐モノ置換アミノ基、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、ジベンジルアミノ、ピペリジノ、モルホリノなどのN,N‐ジ置換アルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基、;N,N‐ビス(トリメチルシリル)アミノ、N,N‐ビス(トリエチルシリル)アミノ、N,N‐ビス(t-ブチルジメチルシリル)アミノ等のN,N‐ジシリル置換アミノ基;イミン、アミド、イミド、アンモニウム、ニトリル、スルホンアミドなどその他の窒素含有基、メチルスルフォネート、トリフルオロメタンスルフォネート、フェニルスルフォネート、ベンジルスルフォネート、p‐トルエンスルフォネート、トリイソブチルベンゼンスルフォネート、p‐クロルベンゼンスルフォネート、ペンタフルオロベンゼンスルフォネートなどのスルフォネート基;メチルスルフィネート、フェニルスルフィネート、ベンジルスルフィネート、p−トルエンスルフィネート、トリメチルベンゼンスルフィネート、ペンタフルオロベンゼンスルフィネートなどのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基;硫酸基;スルフィド基;ポリスルフィド基;チオラート基、リンを含む基としては、フェニルホスフィノ、メチルフォスフィノ、エチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、ジメチルホスフィノ、ジエチルホスフィノ、メチルフェニルホスフィノ、ジベンジルホスフィノ基等のホスフィン類;ホスフィンオキシド類;ホスフィンスルフィド類、亜ホスフィン酸類、ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が上げられる。これらの中でも、赤外光反射防止膜と赤外光を透過する基板との密着性の観点から、ヒドロキシ基、アセトキシ基およびカルボニル基が好適に挙げられる。
本発明におけるグラフト変性スチレン‐オレフィン系共重合体のグラフト重合に使用されるモノマーとしては、スチレン、α‐メチルスチレン、2‐メチルスチレン、3‐メチルスチレン、4‐メチルスチレン、4,α‐ジメチルスチレン、2‐メトキシスチレン、3‐メトキシスチレン、4‐メトキシスチレン、2‐アセトキシスチレン、3‐アセトキシスチレン、4‐アセトキシスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等の芳香族ビニル及びその誘導体、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル、アクリル酸ノルマルオクチル等のアクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリロイルオキシエチルイソシアナート等のメタアクリル酸及びその誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ウンデカン酸ビニル、パルミチン酸ビニル等のビニルエステル及びその誘導体、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、2‐クロロアクリロニトリル等のニトリル及びその誘導体、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シラン化合物、無水マレイン酸、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジフェニル無水マレイン酸等の無水マレイン酸及びその置換体、マレイン酸、メチルマレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸モノメチル等のマレイン酸及びそのエステル、マレイミド、N‐アルキル置換マレイミド、N‐メチルマレイミド、N‐エチルマレイミド、N‐フェニルマレイミド等のマレイミド及びその置換体が挙げられる。これらの中でも、赤外光反射防止膜の透過性および赤外光反射防止膜と赤外光を透過する基板との密着性の観点から、無水マレイン酸及びその置換体が好適に挙げられる。
本発明に使用可能な赤外光反射防止膜の厚さは、波長8〜14μmの範囲における透過率向上の観点から、0.1μm〜5.0μmであることが好ましく、0.5μm〜2.5μmであることがより好ましい。赤外光反射防止膜の厚さが0.1μmよりも薄い場合には、赤外光反射防止膜としての効果が不十分となるため、また、5.0μmよりも厚い場合には、赤外光反射防止膜が赤外光を吸収してしまうため、赤外光用光学部材としての透過率が低下する。
本発明の赤外光用光学部材の透過率を向上させるため、本発明に使用可能な赤外光反射防止膜の屈折率は、前記赤外光を透過する基板の屈折率により、波長10μmにおいて1.0〜2.0であることが好ましく、1.4〜2.0であることがより好ましい。赤外光反射防止膜の屈折率が1.0より小さい場合、又は2.0より大きい場合は、赤外光反射防止膜としての効果が不十分となり、赤外光用光学部材としての透過率向上の効果が小さい。
(光学機器)
上述した本発明の赤外光用光学部材が赤外線の光路に設置されている光学機器もまた本発明の実施の一態様である。そのような光学機器として、遠赤外線カメラ、赤外線サーモグラフィーなどが非限定的に挙げられる。
(赤外光用光学部材の製造方法)
本発明の赤外光用光学部材の製造方法は、前記スチレン‐オレフィン系共重合体を含有した溶液(以下、樹脂溶液)及び/又は分散液(以下、樹脂分散液)を用いて、前記赤外光を透過する基板上に、湿式法にて前記赤外光反射防止膜を形成する工程を有する。
前記樹脂溶液及び前記樹脂分散液は、スチレン‐オレフィン系共重合体を少なくとも含有しており、その含有量は各種塗布方法に適した粘度を示す含有量であれば特に限定されないが、1重量%〜30重量%であることが好ましく、5重量%〜15重量%であることが特に好ましい。また、粘度においても各塗布方法に適したものであれば特に限定されないが、25℃において、0.1〜200mPa・sであることが好ましく、1〜100mPa・sであることが特に好ましい。
前記樹脂溶液及び前記樹脂分散液に用いる溶媒は特に限定はなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、1,2,3,4‐テトラヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、トルエン、キシレン、シクロヘキサン及びメチルシクロヘキサンが好適に挙げられる。これらの溶媒は1種で使用されてもよく、2種以上の混合溶媒として使用されてもよい。
また、前記樹脂溶液及び前記樹脂分散液は、必要に応じて添加剤(屈折率調整剤、耐久性向上剤、相溶化剤、分散剤、界面活性剤等)を加えることができる。
屈折率調整剤及び耐久性向上材としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化イットリウム等の無機酸化物;硫化亜鉛、硫化錫等の無機硫化物;セレン化亜鉛、セレン化錫等の無機セレン化物;テルル化亜鉛、テルル化錫等の無機テルル化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化アルミニウム、フッ化ランタン等の無機フッ化物;炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タングステン等の無機炭化物;これらを主成分とする複合物及びこれらの混合物が挙げられる。
相溶化剤及び分散剤としては、その機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、メチルペンタンジオール、ノナンジオール、ペンタエリトリトール、ソルビトール等のポリオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテル類;ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ビニルフェノール‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン‐ビニルフェノール‐(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリスチレン誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル等のポリビニルアルキルエーテル誘導体;セルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル等のポリ酢酸ビニル誘導体;ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリ‐2‐メチル‐2‐オキサゾリン等の含窒素ポリマー誘導体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル誘導体;ポリジメチルシロキサン、ポリヘキサメチルシクロトリシロキサンのポリシロキサン誘導体等の各種疎水性又は親水性の分散剤、安定剤が挙げられる。
界面活性剤としては、その機能を有するものであれば、特に限定されるものではないが、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等のカチオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。
上述した樹脂溶液又は樹脂分散液を、赤外光を透過する基板に塗布させた後、乾燥させることで、赤外光反射防止膜を形成することができる。塗布方法は、任意の方法でよいが、均質な膜が得られるため、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法が好適に挙げられる。また、乾燥は室温での自然乾燥から加熱乾燥まで、任意の方法でよいが、ポリスチレン‐オレフィン系樹脂及び得られる赤外光反射防止膜の耐熱性の観点から、20℃〜250℃での乾燥が好適に挙げられ、60℃〜200℃が特に好適に挙げられる。
赤外光反射防止膜として用いることのできる市販品としては、例えば、旭化成株式会社製「タフテック(商品名)」、クラレ株式会社製「セプトン(商品名)」、クラレ株式会社製「ハイブラー(商品名)」、クレイトンポリマー株式会社製「クレイトン(商品名)」、JSR株式会社製「ダイナロン(商品名)」、株式会社三菱ケミカルホールディングス製「サーフレン(商品名)」、三井化学株式会社製「ユニストール(商品名)」が挙げられる。
以下に実施例を挙げることによって本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれら実施例に限定されるわけではない。
各実施例及び比較例において、シリコン基板(酸素濃度1.0×1017atom/cm以下、炭素濃度1.0×1016〜8.0×1018atom/cm、直径35mmΦ×厚さ1.0mm)に樹脂溶液又は樹脂分散液を滴下し、スピンコート法にて製膜した。その後、加熱乾燥し、赤外光用光学部材を得た。各実施例及び比較例の樹脂溶液又は樹脂分散液の組成を表1に、製膜及び加熱乾燥の条件を表2に示す。
Figure 2019168569

実施例1に記載の重合体は、スチレン単位の含有量が65重量%のスチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体の水素添加物であり、実施例2に記載の重合体は、スチレン単位の含有量が28重量%の片末端ヒドロキシ基スチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン‐スチレンブロック共重合体の水素添加物であり、実施例3に記載の重合体は、スチレン単位の含有量が30重量%の無水マレイン酸変性スチレン‐エチレン‐ブチレン‐スチレンブロック共重合体の水素添加物である。実施例4に記載の重合体は、スチレン単位の含有量が13重量%のスチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体の水素添加物であり、実施例5に記載の重合体は、スチレン単位の含有量が90重量%のスチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体の水素添加物である。また、比較例1に記載の重合体は、無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレンである。
Figure 2019168569
各実施例及び比較例で得られた赤外光用光学部材において、製膜性、屈折率、透過率、密着性及び耐久性を測定又は評価した。
(製膜性の評価)
各種の有機溶剤にて、樹脂などの組成物を溶解させた後、表2に記載の条件にて製膜した。その後、表面段差計にて膜厚及び表面粗さを測定し、0.1〜5.0μm厚の薄膜が作製可能であった場合を○、作製不可であった場合を×と判断した。
(屈折率の測定)
赤外域‐多入射角分光エリプソメータを用いて、赤外光用光学部材の中心を10μmの範囲にて測定した。
波長10μmの範囲における最低の屈折率が1.0〜2.0の範囲のものを○、1.0よりも小さい値又は2.0よりも大きい値を示すものを×と判断した。ここで、○であれば実用上問題ない。
(透過率の測定)
FT‐IR装置を用いて、FT‐IR(フーリエ変換型赤外吸収)法により、赤外光用光学部材の中心を波長8〜14μmの範囲にて測定した。波長8〜14μmの範囲における最低の透過率が50%以上のものを◎、40%以上50%未満のものを○、40%未満のものを×と判断した。ここで、○であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
(密着性の評価)
赤外光用光学部材上で100マス碁盤目試験法(旧JIS K 5400)により、評価をした。密着性が100/100とは、以下密着性試験において、100個の碁盤目部分のうち、剥がれが1箇所もない状態、密着性が70/100とは剥がれていない部分が70箇所の状態である。
密着性が100/100〜70/100のものを○、密着性が69/100〜0/100のものを×と判断した。ここで、○であれば実用上問題ない。
(耐久性の評価)
下記の試験を実施し、試験前後での透過率の変化率を求めた。変化率が3%以下のものを○、それ以外を×と判断した。ここで、○であれば実用上問題ない。
赤外光用光学部材を温度80℃、湿度85%の条件下で168時間静置した。その後、外観確認及び透過率を測定した。
各実施例及び比較例における各測定又は評価結果を表3に示す。
Figure 2019168569
スチレン単位の含有量が28重量%以上、65重量%以下のスチレン‐オレフィン形共重合体を用いた実施例1、2、3では、各測定及び評価において良好な結果を示し、特に透過率において良好な結果を示した。スチレン単位の含有量が13重量%及び90重量%のスチレン‐イソプレン‐スチレンブロック共重合体を用いた実施例4、5では、各測定及び評価において良好な結果を示した。無水マレイン酸変性ランダムポリプロピレン用いた比較例1では、製膜性、屈折率及び密着性は良好であったが、透過率と耐久性が悪い結果となった。ポリスチレンを用いた比較例2では、製膜性、屈折率、密着性および耐久性は良好であったが、透過率が悪い結果となった。
従来技術のようなゲルマニウムなどの高価な材料を用いず、波長8〜14μmの範囲で高い透過率を有し、赤外光を透過する基板との密着性及び耐久性に優れた赤外光反射防止膜を提供する。
1赤外光用光学部材 11赤外光を透過する基板 12赤外光反射防止膜

Claims (7)

  1. 赤外光用光学部材において、赤外光を透過する基板の少なくとも一方の面に、少なくともスチレン‐オレフィン系共重合体を含む赤外光反射防止膜を一層又は複数層有することを特徴とする、赤外光用光学部材。
  2. 前記スチレン‐オレフィン系共重合体が、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含み当該スチレン単位の含有量が13重量%以上、90重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の赤外光用光学部材。
  3. 前記赤外光反射防止膜の厚さが0.1〜5.0μmであって、波長10μmにおける屈折率が1.0〜2.0であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の赤外光用光学部材。
  4. 前記赤外光を透過する基板が、波長10μmにおける屈折率が2.0〜4.5の無機材料であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の赤外光用光学部材。
  5. 前記無機材料が、シリコン、ゲルマニウム、カルコゲナイドガラス、セレン化亜鉛及び硫化亜鉛から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の赤外光用光学部材。
  6. 赤外線の光路に設置された請求項1〜5のいずれか一項に記載の赤外光用光学部材を有する光学機器。
  7. 赤外光を透過する基板上に、スチレン‐オレフィン系共重合体を含む赤外光反射防止膜を湿式法にて形成する工程を少なくとも有する、赤外光用光学部材の製造方法。
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WO2021210301A1 (ja) * 2020-04-16 2021-10-21 Agc株式会社 赤外線透過部材、及び赤外線透過部材の製造方法

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