JP2019167964A - 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法 - Google Patents

圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019167964A
JP2019167964A JP2019123419A JP2019123419A JP2019167964A JP 2019167964 A JP2019167964 A JP 2019167964A JP 2019123419 A JP2019123419 A JP 2019123419A JP 2019123419 A JP2019123419 A JP 2019123419A JP 2019167964 A JP2019167964 A JP 2019167964A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
casing
compressor
oil
rust
rotor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019123419A
Other languages
English (en)
Inventor
池田 由紀子
Yukiko Ikeda
由紀子 池田
真克 岡谷
Masakatsu Okaya
真克 岡谷
柳瀬 裕一
Yuichi Yanase
裕一 柳瀬
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd filed Critical Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd
Priority to JP2019123419A priority Critical patent/JP2019167964A/ja
Publication of JP2019167964A publication Critical patent/JP2019167964A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Compressor (AREA)
  • Applications Or Details Of Rotary Compressors (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

【課題】複雑な形状のケーシングに対して、その表面に耐食性皮膜を有する圧縮機を提供することを目的とする【解決手段】ケーシングによって構成される圧縮室内で気体を圧送する圧縮機であって、ケーシングは鋳鉄製であり、ケーシングの表面に、鉄、窒素、炭素の化合物と窒化鉄の混合体の層と四酸化三鉄の酸化物層が設けられている圧縮機とする。これにより、ガス軟窒化と酸化処理により形成された皮膜を有するケーシングは、耐食性が向上するため、錆の発生が抑えられ、錆によるかじりや固渋の発生が少ない圧縮機を提供することができる。【選択図】 図5

Description

本発明は、圧縮室内で気体を圧送する圧縮機及びその圧縮機のケーシングに係り、特にケーシングの圧縮室内部ならびに空気流路の耐食性を向上する表面処理に関する。
圧縮機とは、ケーシングによって構成される圧縮室内で気体を圧送する機械であって、その圧縮機方式としては、ロータの回転運動によって気体を圧送するスクリュー圧縮機や、ピストンの往復運動によって気体を圧送するレシプロ圧縮機、渦巻状歯型部材の旋回運動によって気体を圧送するスクロール圧縮機等がある。以下、スクリュー圧縮機を例に説明する。
スクリュー圧縮機は、吸込側ケーシング及び吐出側ケーシングによって構成される圧縮室内で1対の雄ロータと雌ロータとが互いにかみ合いながら回転して、両ロータ間およびケーシングとロータとによって形成される空間を軸方向に移動させながら縮小して上記空間内の流体を圧縮する構成となっている。
さらに、このようなスクリュー圧縮機において、ケーシング内に流体として油を供給する油冷式と油を供給しないオイルフリー式とがある。
油冷式は、雄ロータと雌ロータとが油膜を介して接触しながら回転するようになっている。この油冷式はロータの回転によって発生する摩擦熱を油で冷却することでロータ間の焼付きを防ぐことが可能である。このような油冷式は、圧縮空気中にオイルミストが混入するために、食品産業、半導体関連などクリーンな空気を必要とする分野では不向きである。
一方、オイルフリー式は、油を一切供給しないために、クリーンな空気を提供できるものの、油によるシールがないため、ロータ間で焼付きが起こらないように両ロータ及びロータとケーシング間は非接触で回転させるようになっている。そのため、オイルフリー式ではロータに回転力を与えるために、ロータの軸端部に同期歯車が取り付けられていることから油冷式と比較すると構造が複雑である。
また、オイルフリー式はロータが非接触であるため、両ロータ間やロータとケーシングとの間等の隙間から圧縮された空気が吸込側に逆流してスクリュー圧縮機の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、オイルフリー式のスクリュー圧縮機では体積効率などの性能を向上させるために、両ロータ間やロータとロータケーシングとの間等の隙間を極小の非接触にする必要がある。しかしながら実際は、熱膨張や機械加工誤差等があり、完全に非接触にすることは不可能であるため、特許第5416072号公報(特許文献1)に記載されているようにロータ表面には固体潤滑被膜が塗布されている。
その他に、オイルフリースクリュー圧縮機において信頼性に影響を及ぼす要因は錆の発生である。ロータの材質はステンレス材であり、さらに固体潤滑被膜が塗布されているため、そのままでは錆の発生はほとんどない。しかし、ケーシングの材質は鋳鉄であるため錆が発生し易い。
このようなケーシングへの処理については、特表2004−502095号公報(特許文献2)に記載された耐摩耗性コーティングを施した例がある。この特許文献2にはロータまたはケーシングあるいはその両方に耐摩耗性コーティングを処理し、圧縮空気の漏洩を減少させることを目的としている。コーティングとしては窒化物コーティングを用いる例が記載されている。
また、特開2005−83235号公報(特許文献3)には、摺動面に金属窒化物を被覆したスクロール圧縮機の記載がある。これも摺動部の耐摩耗性を確保すると共に、密閉性を高めることを目的としている。
特許第5416072号公報 特表2004−502095号公報 特開2005−83235号公報
オイルフリー圧縮機は油冷式のように断熱圧縮されて温度が上昇した空気を冷却する媒体がないため、例えばスクリュー圧縮機の場合は、ロータの吸込側と吐出側での温度差、圧力差が共に大きくなってしまう。ほぼ室温で吸込された空気はスクリューの回転により800kPaまで圧縮され、断熱圧縮により吐出されるときには高温となり、機種によっては約400℃の高温に達するものもある。そのため、ロータ及びケーシング内部はほぼ圧縮空気温度と同等まで上昇し、何もしなければケーシングの外側も内部温度の上昇に伴って熱くなる。従って、ケーシングには冷却するための流路(ジャケット)が設けられており、機種によりクーラント液や油などの流体を流して、圧縮機を外側から冷却し60〜80℃まで温度上昇をおさえている。
圧縮機を運転停止した際は、圧縮機内部で高温の圧縮空気が冷えて、空気中の水分が凝縮して結露する。これによって、圧縮機内部ならびに空気流路表面に水分が付着する。そのため、吸込側ケーシング及び吐出側ケーシングは母材金属がそのまま露出している部分があり、そこに錆が発生する。発生した錆は徐々に広がって成長し、その破片が圧縮機内部に混入すると、起動する際にかじりが発生し、さらに悪化するとロータ間が固渋して圧縮機故障の原因となる。
さらに近年、オイルフリー式圧縮機に対して高メンテナンスフリー化の要求が高くなっているため、より錆に対する対策が求められている。そのため、より防錆効果のある耐食性被膜をケーシング表面に処理することが必要となった。
しかし、ケーシングは機種によっては100kgを越える重量物であり、かつ、ロータを格納する圧縮室の他に、外側から冷却するためのジャケット、ロータを回転可能に支持する転がり軸受の嵌合部、など非常に複雑な構造をしている。そのため、化成処理やめっきのように、反応液に浸漬する処理は、前処理、洗浄工程、それらの液への出し入れ等考慮すると、処理は容易ではない。よって、従来は、ケーシング内部は防錆顔料を含む潤滑剤をスプレー塗布し、外面は塗料を別途塗装していた。そのため、ケーシング内部とケーシング外面との境界部分の防錆が不十分であり、また、外面塗装の手間がかかるという問題があった。
本発明の目的は、複雑な形状のケーシングに対して、その表面に耐食性皮膜を有する圧縮機を提供することにある。
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本発明は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、ケーシングによって構成される圧縮室内で気体を圧送する圧縮機であって、ケーシングは鋳鉄製であり、ケーシングの表面に、鉄、窒素、炭素の化合物と窒化鉄の混合体の層と四酸化三鉄の酸化物層が設けられている圧縮機とする。
本発明によれば、ケーシングの耐食性が向上するため、錆の発生が抑えられ、錆によるかじりや固渋の発生が少ない圧縮機を提供することができる。
オイルフリースクリュー圧縮機の吸込側及び吐出側ケーシングを示す斜視図である。 オイルフリースクリュー圧縮機の雄ロータと雌ロータを示す斜視図である。 オイルフリースクリュー圧縮機本体の横断面図である。 オイルフリースクリュー圧縮機本体の縦断面図である。 実施例1におけるガス軟窒化と酸化処理によって形成される皮膜の模式図である。 実施例2における黒鉛部のガス軟窒化皮膜成長過程を示す模式図である。 実施例2における皮膜断面写真である。 実施例2におけるガス軟窒化層と酸化層からなる膜厚の最薄部膜厚と突起部最大高さの関係を示すグラフである。 図8のA点における表面粗さの一部を示す図である。 図8のB点における表面粗さの一部を示す図である。 図8のC点における表面粗さの一部を示す図である。 実施例3におけるガス軟窒化層と酸化層からなる膜厚の最薄部膜厚と耐食性能を示す錆の発生面積率の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施例を図にしたがって説明するが、まず、一般的なオイルフリースクリュー圧縮機の構造を図を用いて説明する。
スクリュー圧縮機は、図2に示すような、雄ロータ3と雌ロータ4の二つのロータが噛み合って回転することによって空気を圧縮する構成になっている。雄ロータ3は、吸込側から見て時計方向に回転し、雌ロータ4は、吸込側から見て反時計方向に回転する。この雄雌ロータ3、4は、図1に示す、吐出側ケーシング2ならびに吸入側ケーシング1で構成される圧縮室内に格納されている。
図3は、オイルフリースクリュー圧縮機本体の横断面図である。図3において、互いに噛み合う雄ロータ3および雌ロータ4は、それぞれ両端部をロータ軸16に設けられた転がり軸受6によって回転自在に支持され、かつ、ロータ軸16に設けられた軸封装置7によって圧縮室からの空気漏れを抑制している。また軸封装置7は、転がり軸受6を潤滑した油が吐出側ケーシング2および雄雌ロータ3、4によって形成される圧縮室内に侵入するのを防止している。圧縮室内には、例えば油を噴射して上記一対の雄雌ロータ3、4などを冷却することは行なわれていない。雄雌ロータ3、4を回転支持するロータ軸と吐出側ケーシング2、及び雌雄ロータ3、4によって形成される圧縮室内の間は軸封装置7によってシールされている。
さらに、雄ロータ3は、その一方先端部に駆動ピニオン8を固定し、その他方先端部および雌ロータ4の他方先端部に1対の同期歯車5が固定されている。これは、両ロータ3、4間の回転伝達ならびに回転位相維持のために設けられており、駆動ピニオン8を駆動すると、一対の同期歯車5によって一対の雄雌ロータ3、4が同期回転し、雄ロータ3の凸部と雌ロータ4の凹部とが非接触で噛み合い、吸入ポート9から吸入された空気を圧縮して吐出する。また、吐出側ケーシング2には冷却するための流路であるジャケット10が設けられており、流体を流して圧縮機を外側から冷却している。
図4は、オイルフリースクリュー圧縮機本体の縦断面図である。図4に示す矢印は空気の流れを示している。図4において、吐出側ケーシング2の上面より吸い込まれた空気は、吐出側ケーシング2に備えられた吸入室11から、吸入側ケーシング1の吸入ポート9を通り圧縮室内に導入される。その後、雌雄ロータ3、4によって圧縮された空気は、圧縮空気が出てくる部分である吐出ポート及び吐出室12から圧縮室外へ排出される。
以下、図1に示すケーシングについて詳細に説明する。吐出側ケーシング2は、雄雌ロータ3、4を収納する圧縮室と圧縮用空気の流れる吸入室11と吐出室12ならびに雄雌ロータ3、4を支持する転がり軸受6と軸受に吸入する潤滑油が圧縮室に侵入するのを防止する軸封装置7を備え、かつケーシングを冷却する媒体を流すジャケット10を備えている。また、吸入側ケーシング1は、雄雌ロータ3、4を支持する転がり軸受6と軸受に給油する潤滑油が圧縮室に侵入するのを防止する軸封装置7を備えている。
これらのケーシングは、次のような工程で製作される。まず鋳型に材料を流し込んで最終形状に近い型で鋳込む。次に歪取り焼鈍処理を行う。そして荒削り、及び精密機械加工を行いケーシングの形状へと加工する。なお、吸入室11、吐出室12、ジャケット10内は入組んだ構造であるため、機械加工できず鋳肌のままである。それ以外の外周面でも一部機械加工せずに鋳肌の部分が存在する。砂型で鋳込んだ鋳肌面は表面にmmオーダーの凹凸があり、その部分が液溜りとなって結露した水がたまりやすくより錆が発生し易い。特に、ジャケット内や吐出室の鋳肌の部分が、錆が発生し易い箇所となっている。
このように、ケーシングには機械加工面と鋳肌面の両方が共存しているという課題もある。以後この鋳肌面と機械加工面の両方を合わせてケーシング全面と表現する。
また、スクリュー圧縮機には二段機と単段機の2種類がある。二段機はスクリュー圧縮機が配管、クーラーを介して直列に2台連結されたものであり、1台目の圧縮機から吐出された高温の吐出ガスを外気空気または水を冷媒とするクーラーで冷却した後、2台目の圧縮機で再度圧縮するものである。これにより吐出ガスの温度が一旦冷却されるため2台目の吐出ガス温度を低く抑えることができる。しかし、この二段機の途中で圧縮空気を冷却する工程において、凝縮水が発生する。この一部が2台目の圧縮機に持ち込まれるために、二段機の2台目の圧縮機は特に錆が発生し易い。
本実施例では、ガス軟窒化処理によりケーシング表面に耐食性皮膜を設けた構成について説明する。
まず、本実施例で採用するガス軟窒化処理と酸化処理について説明する。一般的に、ガス窒化処理は、窒素を鉄に拡散させて窒化層を形成する表面硬化処理として知られている。ガス窒化処理は、Al,Cr,Moなどと鉄と窒素の化合物を形成するもので、Al,Cr,Moを含む高級鋼へ処理することができる。
これと異なり、本実施例で採用するガス軟窒化処理は、同様に窒素を鉄に拡散させて窒化層を形成するが、炭素鋼や鋳鉄などの低級鋼への処理が可能な処理であり、ガス窒化処理と区別される。
ガス軟窒化の処理方法は、対象物を処理炉内に配置し、アンモニアガスと浸炭性ガスを注入して加熱し反応時間に対応して保持することで処理を行う。これにより鉄、窒素、炭素の化合物と窒化鉄の混合体の層(Fe2-3(N,C)+Fe4N)が形成される。これがガス軟窒化層である。
このガス軟窒化処理の後、高温の空気中で保持することで酸化処理を行い、表面に鉄の酸化物層を形成する。酸化処理は、ガス軟窒化処理後、別の酸化炉で処理するが、設備的に連続して行うことができるのであればそれでもよい。酸化処理によって表面に四酸化三鉄(Fe3O4)の酸化物層を形成することによって、より耐食性を向上できる。
図5に、ガス軟窒化と酸化処理によって形成される皮膜の模式図を示す。図5に示すように、ガス軟窒化は窒素が鉄の内部に拡散しながら窒化層を形成していくため、処理前寸法に対して表面上側と下の母材側の両方に向かって皮膜が成長する。したがって、処理前寸法に対して変化した実際の寸法変化量よりも、ガス軟窒化層と酸化層(酸化物層)からなる膜厚は厚くなるのが一般的である。膜厚よりも実際の寸法変化量が小さいことは、ケーシングのように寸法管理の必要な部品への処理として適している。膜厚は、処理条件即ち温度と時間によってコントロールできるが、基本的には処理時間が長くなるほど膜厚は厚くなる。
なお、本実施例および以降の実施例において、酸化層は、ガス軟窒化層の膜厚に比べて小さく無視できるとして、特に断らない場合は、ガス軟窒化層と酸化層からなる膜厚をガス軟窒化層の膜厚として説明している。しかし、酸化層の膜厚が無視できない程度に大きい場合は、ガス軟窒化層と酸化層からなる膜厚として置き換えることが出来る。
以上のように、本実施例によれば、ガス軟窒化と酸化処理により形成された皮膜を有する吸入側ケーシング及び吐出側ケーシングは、耐食性が向上するため、錆の発生が抑えられ、錆によるかじりや固渋の発生が少ない圧縮機を提供することができる。また、ガス軟窒化処理を行うので、複雑な構造のケーシングであっても、その全面に耐食性皮膜の付与を行うことが出来る。これにより、従来、ケーシング内部とケーシング外面との境界部分の不十分であった防錆を実行でき、錆発生の抑制により圧縮機の信頼性向上が図られる。また、従来必要であった、ケーシング外面の塗装も不要となる。
複雑な構造のケーシングへの全面処理を行う場合には、実施例1のように、ガスによる処理が有効である。しかし処理の種類によっては表面が荒れてしまうため、寸法精度が求められる精密部品には考慮が必要である。特に、ケーシングにはロータ軸を保持するための転がり軸受を嵌合するため、その部分の寸法公差条件が厳しいという課題がある。本実施例では、これらの寸法公差条件を考慮したケーシング表面の耐食性皮膜について説明する。
まず、ケーシングを構成する鋳鉄に存在する黒鉛が窒化層形成に与える影響について説明する。図6は、黒鉛部のガス軟窒化皮膜成長過程を示す模式図である。図6において、13は黒鉛であり、14はガス軟窒化層である。黒鉛が鋳鉄表面に存在する部分は、図6に示すように、(A)、(B)、(C)の順で黒鉛に沿って皮膜が成長する。これは黒鉛と鉄の隙間にガスが侵入して軟窒化が進むためで、このように細長い片状の黒鉛を有する鋳鉄の場合、皮膜の成長は片状黒鉛の大きさと分布により大きな影響を受ける。
図7に実際の皮膜の断面写真を示す。図7において、図下部の白い部分が母材の鋳鉄であり、その中で片状の黒い部分は黒鉛である。また、図上部の黒い部分は本来空間であるが、測定のために樹脂で固めたため黒く映っている。また、皮膜部が分かりにくいため、点線で皮膜と母材の境界線を示している。図7に示すように、片状の黒鉛がある部分とない部分で、その皮膜の膜厚は大きな差を生じ、かつ表面にも突起状のでっぱりができることが確認できる。
処理時間が長くなるほど黒鉛に沿って皮膜は深く成長するため、部分的な膜厚の差はより大きくなる。特に黒鉛が表面から垂直方向に存在する場合、より膜厚は厚く、表面には突起のような盛り上がりができる。このように表面粗さに影響を及ぼす、黒鉛の形状、大きさ、分布は鋳込んだときの条件によって決まるため、操作できない領域である。
上記のように、鋳鉄にガス軟窒化処理して形成される皮膜は、片状黒鉛の影響により膜厚が一定にならないため、本実施例における膜厚の定義を以下のように定める。すなわち、膜厚は黒鉛の影響を受けない鉄のみの部分に成長した皮膜の膜厚で評価する。具体的には、図6(C)および図7に示すように、黒鉛がない部分で最も薄い皮膜部分を最薄部15とし、これを皮膜の膜厚と定めることにする。
以上のように、鋳鉄からなるケーシングにガス軟窒化処理を施してガス軟窒化層を形成する場合、表面粗さを考慮して、寸法精度内に納める必要がある。
複雑な形状を持つケーシングにおいて、厳しい寸法管理を求められる箇所として、ロータ軸を保持するための転がり軸受を勘合する部分の寸法公差条件が厳しい。例えば、スクリュー圧縮機は出力によって種々の大きさがあるため、軸受嵌合部のケーシング側の穴の大きさはφ40mm〜140mmと幅がある。その寸法範囲での寸法許容差幅は25μm〜40μm程度である。したがって、穴部の表面処理粗さ、特に先に述べた黒鉛の存在による特異的な突起がこの12.5〜20μm(径方向寸許容差幅の半分)よりも大きくなると、圧縮機の組立が困難となる。そのため、表面粗さの突起部最大値を20μm以下にする必要がある。また好ましくは全機種で組立可能な12.5μm以下にする必要がある。
図8はガス軟窒化層と酸化層からなる膜厚の最薄部膜厚と突起部最大高さの関係を示すグラフである。また、図9、10、11は、図8のA点、B点、C点それぞれにおける表面粗さの一部を示す図である。図8に示すように、最薄部の膜厚が厚くなるほど突起部の高さも大きくなることがわかる。突起部とは、例えば、図11に丸で囲んだような部分を指す。これが先にのべた片状黒鉛部に沿ってガス軟窒化処理が成長した部分を指す。
前述したように、軸受けの嵌め合いを考慮して膜厚を決める必要から圧縮機に組立が容易となる表面粗さの突起部最大値を20μm以下にするためには、図8のグラフから、最薄部膜厚を18μm以下にする必要がある。また好ましくは、全機種で組立可能な表面粗さの突起部最大値を12.5μm以下にするためには、図8のグラフから、最薄部膜厚を10μm以下にする必要があることが分かる。
よって、本実施例によれば、ガス軟窒化層の最薄部膜厚を18μm以下、また好ましくは、10μm以下にすることで、寸法公差条件を考慮したケーシング表面の耐食性皮膜を構成することが出来る。
本実施例では、耐食性能を考慮したケーシング表面の耐食性皮膜について説明する。
図12はガス軟窒化層と酸化層からなる膜厚の最薄部膜厚と耐食性能を示す錆の発生面積率の関係を示すグラフである。この耐食性能は、鋳鉄の機械加工面にガス軟窒化と酸化処理により形成された皮膜を処理した試験片を、温度60℃湿度90%の環境下で500時間保持した後の表面における錆の発生状況である。
図12に示すように、ガス軟窒化処理をしていない鋳鉄素地(膜厚0μm)の場合、1時間でほぼ全面に錆が発生した。しかし、最薄部膜厚が1μmあれば500時間高湿度中にあっても錆の発生率は半減し、最薄部膜厚が2μmあれば錆の発生率は10%まで減少することが分かった。また、錆の発生は最初の数時間で起こり、その後、錆の量は増えることなくほぼ一定で、進行することは無かった。
実際のケーシングにおいても表面処理していない部分は全面錆が発生して、表面より錆びた部分が欠落し、それが圧縮機内部に入り込みかじり等不具合の原因となっているが、それが半減するだけでも防錆の効果は大きい。好ましくは10%以下でかつ進行しないのであれば防錆効果は十分といえる。したがって、ガス軟窒化層の最薄部の膜厚は1μm以上、好ましくは2μm以上にすることが必要となる。
なお、鋳肌面についても、機械加工面で最薄部膜厚が2μmとなる処理条件で同様のガス軟窒化処理及び酸化処理を行った試験片を作成し、耐食性能確認試験を行ったところ、同等の耐食性能を示すことを確認した。
よって、本実施例によれば、ガス軟窒化層の最薄部膜厚を1μm以上、好ましくは2μm以上にすることで、防錆効果のあるケーシングを提供できる。
以上実施例2、3より、ガス軟窒化処理による皮膜は、1μm以上18μm以下、好ましくは2μm以上10μm以下にすることで、防錆効果がありかつ圧縮機の組立を阻害しない皮膜を提供することができる。
なお、今回処理の対象としているのは鋳鉄である。鋳鉄は炭素を2〜8%、ケイ素を1〜3%含む鉄の鋳物製品全般を指すが、炭素の状態によっていくつかの種類に分けられる。本実施例では細長い黒鉛の形状を有するねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)を使用しているが、その他の鋳鉄でも、同様の細長い黒鉛の形状を有するものに対しては同様の現象が起きるため、適用可能である。即ちねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)やCV鋳鉄、あるいは球状黒鉛鋳鉄でも一部片状黒鉛を含む鋳鉄に対しては適用できる。
また、実施例では、圧縮機方式としてスクリュー式圧縮機を用いて説明したが、これに限定されず、ケーシングによって構成される圧縮室内で気体を圧送する圧縮機であって、そのケーシングが鋳鉄製であり、その表面処理を必要とする圧縮機であれば、レシプロ圧縮機やスクロール圧縮機等でもよい。
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
1…吸入側ケーシング、2…吐出側ケーシング、3…雄ロータ、4…雌ロータ、
5…同期歯車、6…転がり軸受、7…軸封装置、8…駆動ピニオン、9…吸入ポート、
10…ジャケット、11…吸入室、12…吐出ポート及び吐出室、13…黒鉛、
14…ガス軟窒化層、15…最薄部膜厚、16…ロータ軸。

Claims (1)

  1. ケーシングによって構成される圧縮室内で気体を圧送する圧縮機であって、
    前記ケーシングは鋳鉄製であり、
    該ケーシングの表面に、鉄、窒素、炭素の化合物と窒化鉄の混合体の層と四酸化三鉄の酸化物層が設けられていることを特徴とする圧縮機。
JP2019123419A 2019-07-02 2019-07-02 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法 Pending JP2019167964A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019123419A JP2019167964A (ja) 2019-07-02 2019-07-02 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019123419A JP2019167964A (ja) 2019-07-02 2019-07-02 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014217888A Division JP6797509B2 (ja) 2014-10-27 2014-10-27 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019167964A true JP2019167964A (ja) 2019-10-03

Family

ID=68106431

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019123419A Pending JP2019167964A (ja) 2019-07-02 2019-07-02 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019167964A (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4875433A (ja) * 1972-01-13 1973-10-11
JPS6114494A (ja) * 1984-06-29 1986-01-22 Hokuetsu Kogyo Co Ltd スクリユ圧縮機
JPH09184058A (ja) * 1995-12-28 1997-07-15 Dowa Mining Co Ltd 耐食、耐摩耗鋼及びその製造方法
JPH09228972A (ja) * 1996-12-26 1997-09-02 Hitachi Ltd 圧縮機の鉄系摺動部品及びこれの表面処理方法と圧縮機
JP2008154649A (ja) * 2006-12-21 2008-07-10 Izumi Riki Seisakusho:Kk
JP2014047406A (ja) * 2012-08-31 2014-03-17 Akebono Brake Ind Co Ltd 鋳鉄製摩擦部材の製造方法
JP2016084745A (ja) * 2014-10-27 2016-05-19 株式会社日立産機システム 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4875433A (ja) * 1972-01-13 1973-10-11
JPS6114494A (ja) * 1984-06-29 1986-01-22 Hokuetsu Kogyo Co Ltd スクリユ圧縮機
JPH09184058A (ja) * 1995-12-28 1997-07-15 Dowa Mining Co Ltd 耐食、耐摩耗鋼及びその製造方法
JPH09228972A (ja) * 1996-12-26 1997-09-02 Hitachi Ltd 圧縮機の鉄系摺動部品及びこれの表面処理方法と圧縮機
JP2008154649A (ja) * 2006-12-21 2008-07-10 Izumi Riki Seisakusho:Kk
JP2014047406A (ja) * 2012-08-31 2014-03-17 Akebono Brake Ind Co Ltd 鋳鉄製摩擦部材の製造方法
JP2016084745A (ja) * 2014-10-27 2016-05-19 株式会社日立産機システム 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2016084745A (ja) 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法
US5364250A (en) Oil-free screw compressor and method of manufacture
EP0705979B1 (en) Efficiency enhanced fluid pump or compressor
CN105705793B (zh) 磨损表面上具有无电镀涂层的压缩机用部件
JP5964245B2 (ja) スクリューマシンの潤滑
JP4618478B2 (ja) スクロール型圧縮機
JP4661801B2 (ja) スクロール型圧縮機およびその製造方法
KR100432714B1 (ko) 밀폐형 압축기 습동부품의 표면처리 방법
JP5416072B2 (ja) スクリュー圧縮機
JP2019167964A (ja) 圧縮機及びオイルフリースクリュー圧縮機、及びそれらに用いるケーシングの製造方法
CN110848137B (zh) 一种零间隙螺杆转子及其制备方法
KR0167638B1 (ko) 무급유식 스크류 유체기계
JP2628990B2 (ja) ベーン
US8172561B2 (en) Metal part and method of manufacturing metal part
CN108368883A (zh) 深沟球轴承
JP7142100B2 (ja) 冷媒圧縮機及びこれを用いた冷凍装置
CN208236638U (zh) 喷液冷却涡旋式空气压缩机
JP6694776B2 (ja) 配管、及びそれを備えた圧縮機
US20230114095A1 (en) Screw compressor
JP2009108748A (ja) スクロール圧縮機
US20230340904A1 (en) Method of manufacturing casing of turbocharger and casing of turbocharger
CN211692751U (zh) 曲轴、压缩机和电器
CN108412761B (zh) 喷液冷却涡旋式空气压缩机
JP6902817B2 (ja) 深溝玉軸受用保持器および深溝玉軸受
JP5788464B2 (ja) スクリュー圧縮機

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190801

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190801

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200414

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200512

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200710

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20200811