JP5788464B2 - スクリュー圧縮機 - Google Patents

スクリュー圧縮機 Download PDF

Info

Publication number
JP5788464B2
JP5788464B2 JP2013235536A JP2013235536A JP5788464B2 JP 5788464 B2 JP5788464 B2 JP 5788464B2 JP 2013235536 A JP2013235536 A JP 2013235536A JP 2013235536 A JP2013235536 A JP 2013235536A JP 5788464 B2 JP5788464 B2 JP 5788464B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
rotor
imide bond
solid
molybdenum disulfide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013235536A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014051988A (ja
Inventor
池田 由紀子
由紀子 池田
椎木 和明
和明 椎木
真克 岡谷
真克 岡谷
川端 夏樹
夏樹 川端
正広 川邑
正広 川邑
岩夫 青木
岩夫 青木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd
Original Assignee
Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd filed Critical Hitachi Industrial Equipment Systems Co Ltd
Priority to JP2013235536A priority Critical patent/JP5788464B2/ja
Publication of JP2014051988A publication Critical patent/JP2014051988A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5788464B2 publication Critical patent/JP5788464B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Applications Or Details Of Rotary Compressors (AREA)

Description

本発明はロータの表面に表面処理を施したスクリュー圧縮機に関する。
スクリュー圧縮機は、ケーシング内で1対の雄ロータと雌ロータとが互いに噛み合いながら回転し、ケーシングと両ロータとによって形成される空間を軸方向に移動させながら縮小して空間内の流体を圧縮させる構成となっている。
このようなスクリュー圧縮機においては、ケーシング内に流体として油を供給する油冷式と油を供給しないオイルフリー式とがある。
油冷式は、雄ロータと雌ロータとが油膜を介して接触しながら回転するようになっている。この油冷式はロータの回転によって発生する摩擦熱を油で冷却することでロータ間の焼付きを防ぐことが可能である。
このような油冷式は圧縮空気中にオイルミストが混入するために、食品産業や半導体関連などクリーンな空気を必要とする分野では不向きである。
一方、オイルフリー式は油を一切供給しないために、クリーンな空気を提供できるものの、油によるシールがないためロータ間で焼付きが起こらないように両ロータは非接触で回転させるようになっている。そのためオイルフリー式ではロータに回転力を与えるために、ロータの軸端部に同期歯車が取り付けられていることから油冷式と比較すると構造が複雑である。
またオイルフリー式はロータが非接触であるため、両ロータ間やロータとロータケーシングとの間等の隙間から圧縮された空気が吸込側に逆流してスクリュー圧縮機の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、オイルフリー式のスクリュー圧縮機では体積効率などの性能を向上させるために、両ロータ間やロータとロータケーシングとの間等の隙間を極小の非接触にする必要がある。しかしながら実際は熱膨張や機械加工誤差等があり、完全に非接触にすることは不可能であるためロータ表面に固体潤滑機能をもたせることは必須である。
したがってオイルフリー式のスクリュー圧縮機のロータ表面には被膜を施すのが一般的である。ロータ表面に設けられる被膜は、運転中の複雑な熱膨張や機械加工誤差によってロータ表面が接触することがあっても、かじりや焼付きを防止すること、ならびに両ロータ間やロータとロータケーシングとの間等の隙間を小さくすることができる。そのため、この被膜は潤滑性を備え、さらに耐熱性や防錆性などを有している。(特許文献1〜2を参照)
特許第3267814号公報 特許第3740178号公報
オイルフリー式のスクリュー圧縮機は油冷式のように摩擦熱を冷却する媒体がないため、ロータの吸入側と吐出側での温度差,圧力差が共に大きくなってしまう。
ほぼ室温で吸入された空気はスクリューの回転により800kPaまで圧縮され,断熱圧縮より吐出されるときには低いものでも260℃、高ければ360℃の高温に達するため,その高温の空気に触れるロータ表面に塗布される被膜には高い耐熱性が要求される。被膜が熱によって劣化し、それがロータ間の接触摺動等によって剥離する。あるいは被膜が長期間高温下にさらされることによって徐々に劣化して剥離脱落する。
このように被膜の剥離が生じれば、当然両ロータ間やロータとロータケーシングとの間等に隙間が広がり、そこから空気漏れを生じて性能は低下する。漏れた空気はまたスクリューの回転によって圧縮されて、さらに空気温度は上昇する。このように空気漏れが生じると性能が落ちると共に、吐出温度がさらに上がるという悪循環が生じてしまうことになる。
また圧縮機が運転を停止した際には、このような高温の圧縮空気が冷えて、空気中の水分が凝縮して結露が発生してしまい、圧縮機内部に水分が付着してしまう場合がある。その場合、被膜が剥離して母材の金属部が露出していた場合には結露によって、その部分に錆が発生する確率が高くなる。このように運転停止時に発生した錆は、その次に圧縮機を起動する際にかじりの原因となり、圧縮機故障の原因となる。そのため被膜には防錆の効果も要求される。
さらに近年、オイルフリー式スクリュー圧縮機に対して高メンテナンスフリー化の要求が高くなっているため、より高性能で長寿命の被膜の開発が求められている。そのため被膜の劣化、剥離に深くかかわる被膜の耐熱性を向上させることでオイルフリー式スクリュー圧縮機の性能低下や錆によるかじり等を防ぐことが必要となった。
本発明の目的は、高い固体潤滑性と高い耐熱性を有する被膜によるスクリューロータを備えたスクリュー圧縮機、スクリューロータ、固体潤滑耐熱性被膜及び塗付液を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなる雄ロータと雌ロータとを組み合わせて流体の吸入と吐出を行うオイルフリーのスクリュー圧縮機において、前記雄ロータと雌ロータの表面にイミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化アルミニウムと酸化チタンの混合物を4〜14wt%の範囲で含有し、前記酸化アルミニウムと前記酸化チタンとの比が3:7から7:3の範囲にあるように分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、この固体潤滑耐熱性被膜が被覆された前記雄雌ロータを備えたことを特徴とする。
本発明の他の特徴は、軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなる雄ロータと雌ロータとを組み合わせて流体の吸入と吐出を行うオイルフリーのスクリュー圧縮機において、前記雄ロータと雌ロータの表面にイミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化チタンと窒化ケイ素の合計を8〜15wt%の範囲で含有し、前記窒化ケイ素を4wt%以下の範囲で分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、この固体潤滑耐熱性被膜が被覆された前記雄雌ロータを備えたことを特徴とする。
本発明の更に他の特徴は、軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなるオイルフリーのスクリューロータにおいて、前記スクリューロータの表面にイミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化アルミニウムと酸化チタンの混合物を4〜14wt%の範囲で含有し、前記酸化アルミニウムと前記酸化チタンとの比が3:7から7:3の範囲にあるように分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、この固体潤滑耐熱性被膜が被覆されたことを特徴とする。
本発明の更に他の特徴は、軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなるオイルフリーのスクリューロータにおいて、前記スクリューロータの表面にイミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化チタンと窒化ケイ素の合計を8〜15wt%の範囲で含有し、前記窒化ケイ素を4wt%以下の範囲で分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、この固体潤滑耐熱性被膜が被覆されたことを特徴とする。
本発明の更に他の特徴は、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に、二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化アルミニウムと酸化チタン二つの合計で4〜14wt%の範囲で含有し、その比率が酸化アルミニウム:酸化チタンが3:7から7:3の範囲にあるように分散し、かつそれらをバインドするためにイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜にある。
本発明の更に他の特徴は、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化チタンと窒化ケイ素の合計を8〜15wt%の範囲で含有し、前記窒化ケイ素を4wt%以下の範囲で分散し、かつそれらをバインドするためにイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜にある。
本発明の更に他の特徴は、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化アルミニウムと酸化チタン二つの合計で4〜14wt%の範囲で含有し、その比率が酸化アルミニウム:酸化チタンが3:7から7:3の範囲にあるように分散し、それらをバインドするためにイミド基をもつ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した樹脂液を、溶剤で希釈してワニスタイプとした塗布液にある。
本発明の更に他の特徴は、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に二硫化モリブデン15〜35wt%、酸化チタンと窒化ケイ素の合計を8〜15wt%の範囲で含有し、前記窒化ケイ素を4wt%以下の範囲で分散し、それらをバインドするためにイミド基をもつ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した樹脂液を、溶剤で希釈してワニスタイプとした塗布液にある。
本発明によれば、高い固体潤滑性と高い耐熱性を有する被膜を被覆したスクリューロータを備えたスクリュー圧縮機、スクリューロータ、固体潤滑耐熱性被膜及び塗付液を提供できる。
雄ロータと雌ロータとが噛み合った状態を示す斜視図である。 雄ロータと雌ロータの形状を示す断面図である。 オイルフリースクリュー圧縮機本体の断面図である。 被膜組成の割合を説明するための図である。 酸化チタン添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 酸化アルミニウム添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 酸化アルミニウムと酸化チタン配合比に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 酸化チタンと酸化アムルミニウム合計の添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 窒化ケイ素添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 酸化チタンと窒化ケイ素合計の添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 モリブテン酸化カルシウム(防錆剤)添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 タルク添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。 検討被膜の耐熱性評価結果を表したグラフ図である。
ところで、スクリュー圧縮機には二段機と単段機の2種類がある。これは圧縮機の吐出温度に関係するものである。二段機はスクリュー圧縮機が配管、クーラーを介して直列に2台連結されたものであり、1台目の圧縮機から吐出された高温の吐出ガスを外気空気又は水を冷媒とするクーラーで冷却した後2台目の圧縮機で再度圧縮するものである。これにより吐出ガスの温度が一旦冷却されるため2台目の吐出ガス温度を低く抑えることができる。
これに対して単段機は1台の圧縮機のみであるためコストパフォーマンスの面では極めて有利であるが吐出温度が360℃と、高温になる。したがって、特にメンテナンスフリーの要求が高い単段機にとって高温に耐え得る雄雌ロータ用被膜の開発が急務となったので本発明の発明者らが種々検討した結果、以下のごとき実施例を得た。
以下、本発明の実施例を図にしたがって説明するが、実施例を説明する前に一般的なオイルフリースクリュー圧縮機の構造を図1、図2、図3を用いて説明する。
図1は雄ロータと雌ロータとが噛み合った状態を示す斜視図である。
図2は雄ロータと雌ロータの形状を示す断面図である。
図3はオイルフリースクリュー圧縮機本体の断面図である。
本発明は図1〜図3に示したオイルフリースクリュー圧縮機の雄雌両ロータの表面に被膜処理するものであり、特に単段機のスクリュー圧縮機に適している。
図1,図2において、スクリュー圧縮機は雄ロータ1と雌ロータ2の二つのロータが噛み合って回転することによって空気を圧縮する構成になっている。圧縮機本体にはこの雄雌ロータ1,2を納めるケーシング6ならびにSケーシング9がある。両ロータ1,2間の回転伝達ならびに回転位相維持のためにロータ端部には後述する同期歯車5が備えられている。なおロータ軸に設けられたシール(図3で後述する)は、圧縮室からの空気漏れを抑制するため、またロータ軸に設置した軸受へ給油した潤滑油が圧縮室に侵入するのを防ぐために設置されている。雄ロータ1は矢印で示すように吸込側から見て時計方向に回転し、雌ロータ2は矢印で示すように吸込側から見て反時計方向に回転する。オイルフリースクリュー圧縮機の場合、雄ロータ1の凸部と雌ロータ2の凹部とが非接触で噛み合い、同期歯車5によって雄ロータ1と雌ロータ2が回転するようになっている。
図3において、互いに噛み合う雄ロータ1および雌ロータ2は、それぞれ両端部を軸受4によって回転自在に支持され、かつシール7によって圧縮室Aからの空気漏れを抑制している。またシール7は軸受4を潤滑した油がケーシング6および雄雌ロータ1,2によって形成される圧縮室A内に侵入するのを防止している。圧縮室A内には、例えば油を噴射して上記一対の雄雌ロータ1,2などを冷却することは行なわれていない。雄雌ロータ1,2を回転支持するロータ軸とケーシング6,及び雌雄ロータ1,2によって形成される圧縮室A内の間はシール7によってシールされている。
さらに、雄ロータ1は、その一方先端部に駆動ピニオン3を固定し、その他方先端部および雌ロータ2の他方先端部に1対の同期歯車5が固定されている。したがって、駆動ピニオン3を駆動すると、一対の同期歯車5によって一対の雄雌ロータ1,2が同期回転して吸入ポート8から吸入された空気を圧縮して吐出する。このとき、一対の雄雌ロータ1,2間には、冷却用の油を給入していないので、これら一対の雄雌ロータ1,2の表面は高温空気に晒され、温度上昇することになる。
具体的には以下の順序で空気の圧縮が行なわれる。
1.雄ロータ1と雌ロータ2は両者の歯溝1つずつが連通してV字形の作動室を形成する。
2.この状態で両者を回転させると,作動室は吸入端から吐出端に向かって平行移動する。
3.作動室はロータ両端で塞がれた形のため,一方の側面に面する作動室は内容積を次第に増加させて両側面にまたがる最大容積室となる。
4.その後は作動室が吐出側面に面して内容積を次第に減少する。
5.容積拡大中の作動室に面してSケーシング9に吸入ポート8を開けているので,ここから気体を作動室内に吸入する。
6.容積縮小の過程で前半は開口部を設けずに内部圧縮し,所定の圧力となるべき位置から作動室滅に至るまで開口する吐出ポートを開け,圧縮した気体を吐出する。
このような一連の吸入と圧縮の動きから、ほぼ室温で吸入された空気はスクリューの回転により800kPaまで圧縮される。圧縮された空気は吐出されるときには低いものでも260℃、高ければ360℃の高温に達する。なお装置のロック機構として吐出空気温度が398℃になると圧縮機は非常停止するように設定されている。
さて、上述したようにオイルフリースクリュー圧縮機には、圧縮機本体1台で所定の圧力まで圧縮する単段機と、圧縮機本体2台を配管で接続し、1台目の圧縮機で圧縮した空気を一旦取り出してから冷却した後2台目の圧縮機で所定の圧力まで圧縮する二段機とがある。二段機で冷却する方法としては、機種や容量に合わせて水冷、または空冷方式で圧縮空気を冷却している。そのため、より高い耐熱性被膜は高温となる単段機において有効である。このようにオイルフリー圧縮機の単段機の吐出空気は油冷式圧縮機とは異なり、260℃以上の高温となる。
オイルフリースクリュー圧縮機ではロータが相互に接触しないことを原則として設計されている。したがってロータ間には隙間が存在するので、本発明が対象とする固体潤滑被膜は、このロータ間の隙間を縮小して性能向上するとともに、万一接触した際のかじりを防止し、さらには防錆のために約20μmの膜厚で塗布するものとする。
次に被膜の構成要素について、比較検討した結果を説明する。
まずベースとなる樹脂(以下、ベースレジンという)の選定であるが、これは最低でも260℃、単段機の最も高温を想定すれば360℃まであがるロータ表面に塗布するため、耐熱性の高い樹脂を選択する。ただし螺旋状にねじれているスクリューロータのような複雑な形状に均一に塗布できる溶液状のワニスタイプで供給可能な耐熱性樹脂としてイミド基を持つ樹脂を選択した。
イミド基を持つ樹脂としてはポリアミドイミド、ポリイミド樹脂などがある。ポリアミドイミドは熱可塑性の樹脂でありワニスタイプで供給可能である。またポリイミドでもポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を使用すればワニスタイプで供給可能となる。いずれも塗布液として調整する際は適切な溶剤で希釈した状態である。これらの樹脂溶液に固体潤滑剤と耐熱性を向上させるための添加剤を加えて被膜構成とする。
このような複合材料においては、まず材料として成立することが必要となる。
図4は塗布液で塗布後、溶剤が揮発した後に残る被膜の組成割合を示した図である。
図4において、ベースレジンは50wt%以上必要となる。50wt%以下の場合、複合する固体潤滑剤や添加剤を保持できず被膜がボロボロに壊れてしまい、被膜として機能できないからである。また樹脂の割合が70wt%を超えてくると、樹脂の性質が主となり固体潤滑剤の機能が十分に発揮されない。
また固体潤滑剤は15〜35wt%入れることが望ましい。これは配合する樹脂の割合によって変わる。即ち固体潤滑剤の配合量は樹脂の重量の30〜50%の時に固体潤滑剤としての機能がもっとも有効に発揮されるからである。これ以外に耐熱性を高める添加剤を数種類、ベースレジン、固体潤滑剤を除く残量分としてトータル100wt%となるように添加する。
本発明の一実施例を図5〜図12を使って説明する。
耐熱性に効果があると思われる添加剤について品質工学の手法(例えば「品質工学講座1 開発・設計段階の品質工学」田口玄一/吉澤正孝 編、日本企画協会(1988)を用いて詳細な検討を行った。今回用いた品質工学とは、材料の製造段階での諸問題から生じる品質のばらつきを低減させ、機能を向上させるために用いる手法である。今回は被膜へ配合する添加剤の種類や含有量等をパラメーターとして割り付け、被膜の熱特性を熱分析装置で評価した。品質工学では、結果は各パラメーター毎に、今回は添加剤毎にその要因効果が得られるため、その中から最適な組み合わせで設計することができる。
検討結果から、耐熱性に効果があることが判った添加剤について図5〜図12で説明する。
図5は酸化チタン添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図6は酸化アルミニウム添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図7は酸化アルミニウムと酸化チタン配合比に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図8は酸化チタンと酸化アムルミニウム合計の添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図9は窒化ケイ素添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図10は酸化チタンと窒化ケイ素合計の添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図11はモリブテン酸化カルシウム(防錆剤)添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図12はタルク添加量に対応する耐熱性の効果を表すグラフ図である。
図5から図8に示すように、品質工学の手法により耐熱性に特に効果がある添加剤は酸化チタンと酸化アルミニウムであることが判り、それぞれ2〜7wt%添加するのが望ましいことが分かった。またこれらを組み合わせて入れた時には相乗効果によってさらに耐熱性が向上することがわかった。これら二つの合計で4〜14wt%、そしてその比率が酸化アルミニウム:酸化チタンが3:7から7:3の範囲にあるとき、より耐熱性の効果が表れることが分かった。
また図9,10に示すように窒化ケイ素については入れすぎると耐熱性は落ちるが、酸化チタンとの組み合わせによって効果のでる領域があることがわかった。窒化ケイ素は0〜4wt%の添加量が望ましく、酸化チタンとの合計で8〜15wt%の時に耐熱性の効果が表れることが分かった。
また図11に示す錆を抑えるための防錆顔料(モリブデン酸カルシウム)であるが耐熱性に悪影響は与えないことを確認し、かつ1.5〜3.5wt%の範囲ならばむしろ耐熱性を高める効果があることが分かった。
この他にも図12に示す微量成分としてタルク(滑石)等も摺動性に効果がありかつ耐熱性に悪影響は与えないことを確認した。タルクについては2.5wt%超えるとその効果は一定となるため、必要最小限の量0.5wt%〜2.5wt%の範囲で加えることが望ましいことが分かった。
このような複合材料においては素材として成立する即ち、ベースレジンがそれ以外に配合している材料をバインドして保持し、かつそれらの機能を有効に発揮できる状態になるように調整することが必要である。したがって添加剤は必要最小限入れることが原則となる。
そのため図5から図12において同じような耐熱性の効果があるならば添加量の少ない側に、添加剤の合計含有量が15wt%以内になることが望ましい。
なお今回選択した添加剤は、一般的にいろいろなところで使用されている酸化物や天然物であり、環境関連規則にかかる環境に負荷を与えるような化学物質は含まないので環境に配慮した被膜と言える。
Figure 0005788464
上記の要素検討を基に表1に示す配合比の被膜を作成した。従来使用していた被膜はポリアミドイミド樹脂をベースレジンとして、二硫化モリブデンに、三酸化アンチモンとグラファイトを添加した被膜で、これと検討被膜を比較した。耐熱性については熱分析装置で、潤滑性はピンオンディスクの摺動試験で、防錆性は高温多湿環境試験での錆の発生量で比較した。
ベースレジンをポリイミド樹脂に変更すると耐熱性は向上することは明らかである。しかしポリアミドイミドであっても従来と同等の耐熱性を持ちながら潤滑性の向上を確認できた。また防錆剤の添加によって防錆性の向上を確認し、さらにこれらの添加剤が耐熱性に影響を与えず、むしろ向上させる効果があることを確認した。
表1の被膜から数種類を選択して熱分析装置で被膜寿命を評価した結果を図13に示す。
図13は検討被膜の耐熱性評価結果を表したグラフ図である。
図13において、これはある一定温度環境下(320℃、360℃、390℃)に被膜を暴露した際の被膜劣化までの時間を示したものである。この場合の被膜劣化は被膜樹脂部の一定量が熱分解するまでを指標としている。実際の圧縮機のロータ、特に温度が上がる吐出側では、今回指標とした状態よりももっと被膜が劣化した状態まで運転されている。これと同様の熱履歴をかけた被膜を査型電子顕微鏡で観察すると、固体潤滑剤や添加剤が粉状に付着している状態となっている。
図13から明らかなように、本発明の実施例である検討被膜は高温条件ほどその耐熱性の効果が発揮されることがわかる。ベースレジンとしてポリイミド樹脂を使用した検討被膜は360℃の高温下において従来被膜の約2倍の、また390℃においては約6倍の寿命持つことがわかる。スクリュー圧縮機では吐出側の温度が高くなる部分での圧縮空気の内部漏洩が、圧縮機の性能低下や吐出温度異常に直結している。そのため高温での被膜寿命が延びる本発明の被膜は、圧縮機の性能向上に有効となる。
以上のごとく、本発明による固体潤滑耐熱性被膜を処理したスクリューロータは、添加剤の組み合わせとその配合量を最適にすることによって被膜の潤滑性を保ちながら耐熱性を向上させることができた。そのため、被膜の劣化による剥離が生じにくくなることから、常に最適なスクリューロータ間の隙間を維持できるため性能低下がなく、また錆の発生を抑えてかじりを防止することができる。
1…雄ロータ、2…雌ロータ、3…駆動ピニオン、4…軸受、5…同期歯車、6…ケーシング、7…シール、8…吸入ポート、9…Sケーシング、A…圧縮室。

Claims (12)

  1. 軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなる雄ロータと雌ロータとを組み合わせて流体の吸入と吐出を行うオイルフリーのスクリュー圧縮機において、
    前記雄ロータと雌ロータの表面にイミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加材である酸化アルミニウム2〜7wt%を分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、
    この固体潤滑耐熱性被膜が被覆された前記雄雌ロータを備えたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
  2. 軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなる雄ロータと雌ロータとを組み合わせて流体の吸入と吐出を行うオイルフリーのスクリュー圧縮機において、
    前記雄ロータと雌ロータの表面に、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加材である酸化チタン2〜7wt%を分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、
    この固体潤滑耐熱性被膜が被覆された前記雄雌ロータを備えたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
  3. 軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなる雄ロータと雌ロータとを組み合わせて流体の吸入と吐出を行うオイルフリーのスクリュー圧縮機において、
    前記雄ロータと雌ロータの表面に、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加材である酸化チタンと窒化ケイ素を分散すると共に、前記窒化ケイ素は4wt%以下とし、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、
    この固体潤滑耐熱性被膜が被覆された前記雄雌ロータを備えたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
  4. 軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなるオイルフリーのスクリューロータにおいて、
    前記スクリューロータの表面に、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加剤である酸化アルミニウム2〜7wt%を分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、
    この固体潤滑耐熱性被膜が被覆されたことを特徴とするスクリューロータ
  5. 軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなるオイルフリーのスクリューロータにおいて、
    前記スクリューロータの表面にイミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加剤である酸化チタン2〜7wt%を分散し、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、
    この固体潤滑耐熱性被膜が被覆されたことを特徴とするスクリューロータ。
  6. 軸方向の外表面に螺旋状の歯形を形成してなるオイルフリーのスクリューロータにおいて、
    前記スクリューロータの表面に、イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加材である酸化チタンと窒化ケイ素を分散すると共に、前記窒化ケイ素は4wt%以下とし、かつイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した固体潤滑耐熱性被膜を形成し、
    この固体潤滑耐熱性被膜が被覆されたことを特徴とするスクリューロータ。
  7. イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、
    前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加剤である酸化アルミニウム2〜7wt%を分散し、
    かつそれらをバインドするためにイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合したことを特徴とする固体潤滑耐熱性被膜。
  8. ミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、
    前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加剤である酸化チタン2〜7wt%を分散し、
    かつそれらをバインドするためにイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合したことを特徴とする固体潤滑耐熱性被膜。
  9. イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、
    前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加材である酸化チタンと窒化ケイ素を分散すると共に、前記窒化ケイ素は4wt%以下とし
    かつそれらをバインドするためにイミド結合を持つ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合したことを特徴とする固体潤滑耐熱性被膜。
  10. イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、
    前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加剤である酸化アルミニウム2〜7wt%を分散し、
    かつそれらをバインドするためにイミド基をもつ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した樹脂液を、溶剤で希釈してワニスタイプとしたことを特徴とする塗布液。
  11. イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、
    前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加剤である酸化チタン2〜7wt%を分散し、
    かつそれらをバインドするためにイミド基をもつ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した樹脂液を、溶剤で希釈してワニスタイプとしたことを特徴とする塗布液。
  12. イミド結合を持つ樹脂をベースレジンとし、
    前記樹脂の中に、固体潤滑剤である二硫化モリブデン15〜35wt%と、添加材である酸化チタンと窒化ケイ素を分散すると共に、前記窒化ケイ素は4wt%以下とし、
    かつそれらをバインドするためにイミド基をもつ樹脂を少なくとも50wt%以上となるように配合した樹脂液を、溶剤で希釈してワニスタイプとしたことを特徴とする塗布液。
JP2013235536A 2013-11-14 2013-11-14 スクリュー圧縮機 Active JP5788464B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013235536A JP5788464B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 スクリュー圧縮機

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013235536A JP5788464B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 スクリュー圧縮機

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010239741A Division JP5416072B2 (ja) 2010-10-26 2010-10-26 スクリュー圧縮機

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014051988A JP2014051988A (ja) 2014-03-20
JP5788464B2 true JP5788464B2 (ja) 2015-09-30

Family

ID=50610649

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013235536A Active JP5788464B2 (ja) 2013-11-14 2013-11-14 スクリュー圧縮機

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5788464B2 (ja)

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2602363B2 (ja) * 1990-11-30 1997-04-23 三井東圧化学株式会社 樹脂組成物
JP3740178B2 (ja) * 1994-10-31 2006-02-01 株式会社日立製作所 スクリュウロータ及びスクリュウ式圧縮機並びにその製法
JP5127331B2 (ja) * 2007-07-13 2013-01-23 大同メタル工業株式会社 乾性潤滑被膜組成物及び該乾性潤滑被膜組成物を摺動層としたすべり軸受

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014051988A (ja) 2014-03-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5416072B2 (ja) スクリュー圧縮機
US10316841B2 (en) Compressor, oil-free screw compressor, and method of manufacturing casing used therefor
WO2013047800A1 (ja) しゅう動部材及びしゅう動材料組成物
WO2005068840A1 (ja) 流体機械
US20120087822A1 (en) Compressor
JP2006283706A (ja) 摺動部材用組成物、摺動部材及び流体機械
JP3740178B2 (ja) スクリュウロータ及びスクリュウ式圧縮機並びにその製法
JP5788464B2 (ja) スクリュー圧縮機
JP2010255449A (ja) ロータリー圧縮機
JP2009287483A (ja) 冷媒圧縮機
JP5640885B2 (ja) スクロール型圧縮機
JP2005325842A (ja) 流体機械
CN109996901B (zh) 氧化覆膜、形成有其的滑动构件和具有该滑动构件的设备
JP2010255448A (ja) ロータリー圧縮機
US10890363B2 (en) Refrigerant compressor and refrigeration device including refrigerant compressor
CN103486043A (zh) 压缩机及具有该压缩机的制冷设备
JP5217233B2 (ja) 摺動部材用組成物、摺動部材及び流体機械
CN203614398U (zh) 涡旋式压缩机
CN108026914B (zh) 冷媒压缩机和使用该冷媒压缩机的冷冻装置
JP2007211255A5 (ja)
JP2004231987A (ja) 窒化処理部品及び冷媒圧縮機及び冷凍空調装置
JPH0893670A (ja) オイルフリースクリュー圧縮機
JP2011026991A (ja) 冷媒圧縮機および冷凍サイクル装置
JP2017053341A (ja) 冷媒圧縮機およびそれを用いた冷凍装置
JP2005133586A (ja) 密閉型冷媒圧縮機

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20141020

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20141028

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150630

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150729

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Ref document number: 5788464

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150