JP2019167642A - ゴム補強用アラミド短繊維集束体 - Google Patents

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Abstract

【課題】アラミド短繊維からなる集束体の表面へのレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)の付着性が良好で、ゴム練り後に繊維表面に残存することで、ゴムとの接着性が維持され、かつゴムとの十分な親和性を有することでゴム中での分散性が良好となる、ゴム補強用アラミド短繊維集束体を提供する。【解決手段】アラミド短繊維からなる集束体の表面に、溶解性パラメータ(SP値)が8.5〜9.5の範囲にあるポリエーテルエステル系化合物を混合したレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスが付着したゴム補強用アラミド短繊維集束体である。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム補強用アラミド短繊維集束体に関する。より詳細には、ゴム補強効果に優れるゴム補強用アラミド短繊維集束体に関する。
短繊維によるゴム補強において、機械的特性、耐疲労性、耐熱性と言った点で優れているアラミド繊維は、補強目的に適した繊維と考えられており、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)系接着剤で表面処理したアラミド短繊維が用いられてきた。
この短繊維によるゴム補強における一つの特徴として、短繊維配向方向によって機械的特性が異なると言う点があり、駆動用ゴムベルトにおいては、この特性を活かし、短繊維配向方向と平行方向に対する力に対しては硬くプーリーから受ける圧力による変形を抑制し、一方で、垂直方向に対しては、ゴムが本来もつ柔軟性を保ちベルトの屈曲疲労性を保つ役割を担ってきた。このため、ゴム中において短繊維は同一方向に均一に配置され、かつ配置された各単糸がゴムとの十分な接着を有する状態であることが好ましい。
上記観点より、接着剤で表面処理した短繊維には、ゴム中で均一に単糸を分散させる技術とともに、処理した接着剤が短繊維を構成する各単糸に均一に塗布されることによって、全ての単糸が十分なゴムとの接着性を有する状態とすることが求められる。
そのため、特許文献1ではゴム中での短繊維の分散性を向上させるために、短繊維からなる集束体の表面に、スチレンブタジエン系ラテックス(ガラス転移温度;−10℃〜+30℃)が1〜20質量%付着したゴム補強用アラミド短繊維集束体を用いることで、ゴムの機械的強度と耐摩耗性が向上することを開示している。しかしながら、ガラス転移温度の高いRFLが用いられることで接着剤粘度が増加し、繊維束内部に存在する単糸まで接着剤が塗布されない問題が生じる。また、特許文献2では補強用短繊維の製造に用いられる原糸の水分量を25〜100質量%とすることで接着剤の繊維内部への含浸性を高め接着剤の均一付着性を高めた製造方法を開示しているが、ゴム中で均一に単糸を分散させるという点で十分ではないのが現状である。
特許第5502594号公報 特許第6172992号公報
RFL処理を行った短繊維の補強効果が十分に得られない原因は、RFLが繊維内部に浸透しにくいため処理の際に繊維束表面と内部との付着状態に差が生じ、これにより特に繊維束内部のRFL付着が少ないもしくは付着していない単糸が存在すること、及びそのために生じる単糸間のゴムとの接着性にバラツキがあり、RFLとゴムとの親和性が不十分であることからゴム練り時に単糸が分散せず一部の繊維束が単糸まで分かれず束状態でゴム中に存在することで単糸のゴム補強への利用率が低下することによるものと推察した。
本発明の目的は、アラミド短繊維からなる集束体の表面へのレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)の付着性が良好であり、ゴム練り後にゴムとの接着性が維持され、かつゴムとの十分な親和性を有することでゴム中での分散性が良好となるゴム補強用アラミド短繊維集束体を提供することにある。
本発明者らは上記の目的を達成すべく鋭意検討を進めた結果、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)に特定のポリエーテルエステル系化合物を混合し、混合物を用いてアラミド繊維にRFL処理を施すことにより、RFLが短繊維集合体を構成する単糸に均一に付着し、かつ分散性良好な短繊維集束体が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アラミド短繊維からなる集束体の表面に、溶解性パラメータ(SP値)が8.5〜9.5の範囲にあるポリエーテルエステル系化合物を混合したレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスが付着したゴム補強用アラミド短繊維集束体。
(2)レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスが、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体である、上記(1)に記載のゴム補強用アラミド短繊維集束体。
(3)アラミド短繊維が、あらかじめエポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド短繊維である、上記(1)または(2)に記載のゴム補強用アラミド短繊維集束体。
本発明によれば、アラミド短繊維集束体を構成する各単糸にレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)が均一に付着し、ゴム中で十分な短繊維分散性を得ることができる。
本発明のアラミド短繊維集束体とは、アラミド繊維からなる短繊維が集束した集合体である。集束体を構成するアラミド短繊維の単糸本数は、好ましくは100本〜3,000本である。単糸本数が100本以上あれば、エステル化合物を混合したレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(以下、「RFL」と称する)による浸漬処理を施す際に断糸する恐れがなく、一方、単糸本数が3,000本以下であれば、単糸が重なり合うことで、短繊維集束体に対するRFLの付着性が著しく損われることがない。
本発明のアラミド短繊維集束体を構成する繊維の単糸繊度は、特に限定されないが、好ましくは0.5〜30dtex、より好ましくは0.5〜10dtex、特に好ましくは1〜5dtexの範囲である。0.5dtex以上であれば、製糸技術上の困難性を伴うことなくゴム物性を改良することができ、また、30dtex以下であれば短繊維集束体を均一にゴム中へ分散させることが可能となる。
アラミド短繊維集束体を構成する繊維の繊維長は、1.0mm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは、1.0mm〜5.0mmである。繊維長が1.0mm以上であれば、ゴムに対する短繊維の補強効果が発揮される。また、繊維長が10mm以下であれば、アラミド短繊維集束体をゴムと混合する際に、短繊維同士の絡み合いが生じる、あるいは、ミキサー内での剪断により短繊維が切断し短繊維のファイバーボールが形成される、といった現象が生じ難く、ゴム中での短繊維分散性が良好となる。
本発明では、アラミド短繊維からなる集束体表面に対するRFL付着量は、3〜10質量%(対短繊維)の範囲に調整することが好ましく、より好ましくは3〜7質量%(対短繊維)である。3質量%未満の場合は、RFLによるゴムとの接着性を十分確保できないため短繊維補強ゴム中での短繊維の配向が悪化する傾向がある。一方、10質量%を超える場合は、RFLの熱処理が不十分となり分散不良や配向悪化の原因となり易い。
RFLと混合するポリエーテルエステル系化合物としては、例えば、多価アルコールと脂肪酸との(部分)エステル化物のアルキレンオキサイド等が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドのランダムまたはブロック共重合体、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールと、脂肪酸(C1〜24)とのモノエステルまたはジエステル等の一塩基酸ポリエーテルエステル、あるいは、アジピン酸ジ(2−エチルヘキシルポリグリコール)、アジピン酸ジ(オクチルポリグリコール)等の二塩基酸ポリエーテルエステル等を挙げることができる。
RFLと混合するポリエーテルエステル系化合物は、溶解性パラメータ(SP値)が、8.5〜9.5の範囲であり、好ましくは8.5〜9.0の範囲であるのが良い。SP値が前記範囲内にあるポリエーテルエステル系化合物を用いることにより、アラミド繊維との親和性が良好で繊維束内部まで浸透し易いRFLが得られるため、結果として構成する各単糸へ均一にRFLが付着する。加えて、この範囲においては多くのゴムとの親和性が良好であるため、十分なゴム中での短繊維分散性が得られる。一方、溶解性パラメータ(SP値)が、8.5未満あるいは9.5超の場合は、ゴム練り時に短繊維表面からゴム中に溶出するポリエーテルエステル系化合物が、ゴム表面に析出しやすくなる。なお、溶解性パラメータ(SP値)はSmall法により、分子構造から算出した値である。
ポリエーテルエステル系化合物とRFLの混合比は、質量比で、1/5〜1/1が好ましく、より好ましくは1/3〜1/1の範囲である。ポリエーテルエステル系化合物とRFLの混合比が、1/5未満の場合は、ポリエーテルエステル系化合物を含有させたことによるRFLの均一付着性が得られない傾向がある。ポリエーテルエステル系化合物とRFLの混合比が、1/1を超える場合は、RFLによる短繊維の集束力が十分得られないため、カット時にダマが発生するなど短繊維の取り扱い性が低下する。
本発明において、RFLを構成するラテックスとしては、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン共重合体ラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレン重合体ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレン重合体ラテックス、ブタジエン重合体ラテックス、アクリレート系ラテックス、及び天然ゴムラテックス等が挙げられる。これらのラテックスは、単独または2種以上併用して用いることができる。これらのラテックスの中でも、アラミド短繊維と多くのゴムとの間で良好な接着性が得られるという点で、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン共重合体ラテックスが好ましい。
また、RFLには、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物が含有されていることが好ましく、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物としては、レゾルシン−ホルムアルデヒドを酸触媒またはアルカリ触媒下で縮合させて得られたノボラック型縮合物などが挙げられる。また、本発明による効果を阻害しない範囲で、ブロックドポリイソシアネート化合物、エチレンイミン化合物、ポリイソシアネートとエチレンイミンとの反応物等から選ばれた1種以上の化合物、あるいは、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が含有されていても良い。
本発明のアラミド繊維は、繊維を形成するポリマーの繰り返し単位中に、通常置換されていてもよい二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、アミド結合を少なくとも一個有する繊維であれば特に限定はなく、全芳香族ポリアミド繊維、またはアラミド繊維と称されるものであって良く、「置換されていてもよい二価の芳香族基」とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していてもよい二価の芳香族基を意味する。
アラミド繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維等を挙げることができるが、引張強さに優れているパラ系アラミド繊維が好ましい。具体的には、パラ系アラミド繊維として、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン(株)製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等を挙げることができる。これらのパラ系アラミド繊維の中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維が特に好ましい。
本発明では、あらかじめエポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド短繊維が好ましく用いられる。かかるアラミド短繊維は、ゴム練り後、短繊維表面に残存するRFL量が高くなる傾向がある。その理由としては、アラミド短繊維内部に浸透したエポキシ化合物の一部がRFLと化学的に結合するため、ゴム練り後において、RFLが残存し易くなるものと推察する。
あらかじめエポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド短繊維は、例えば以下の方法で容易に得ることができる。
あらかじめエポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させるための最良の形態は、アラミド繊維を製造する工程において、紡糸溶液を口金から吐出して、紡糸浴中で凝固させ、水洗中和処理を経た後、この原糸を100〜150℃で乾燥することにより調整された水分率が15〜100質量%の状態のアラミドに、エポキシ基含有化合物を含浸・浸透させることである。より好ましくは、水分率が20〜70質量%の状態でエポキシ基含有化合物を含浸・浸透させるのが良い。エポキシ基含有化合物を含浸・浸透させる際の水分量が少なすぎると、エポキシ基含有化合物を均一に繊維骨格内に含浸・浸透させることが困難になる。逆に水分量が多すぎると、エポキシ基含有化合物を含浸・浸透させた後、巻き取り工程までに、ガイド等に接触した際にエポキシ基含有化合物が水分と一緒に脱落してしまう恐れがある。あらかじめエポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維を用いることにより、RFLが均一に付着したアラミド短繊維集束体を得ることができる。
RFLを付着させる前のアラミド繊維複合体の水分率は、15〜70質量%に保たれており、かつ水分率が15質量%未満に乾燥された履歴を持たないことが、より好ましい。水分率は20〜50質量%が特に好ましい。水分率が15質量%以上であれば、アラミド繊維複合体の表面にRFLが馴染みやすく、均一に付着させることがより容易となる。また、水分率が70質量%以下であれば、RFLを付着させた後、乾燥、熱処理工程でガイドなどに接触した際に、水分と共にラテックスが脱落することがない。
上記の場合、エポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維複合体を、水分量を保ったまま、巻き取り工程でボビンに巻き取り、RFLを付与するまで、未加熱状態で水分率15〜70質量%に保持することが好ましい。例えば、エポキシ基含有化合物を浸透させた後、アラミド繊維骨格内にエポキシ基含有化合物をより浸透させるため、RFLを付与するまでの間、アラミド繊維複合体を室温雰囲気下に保管し、水分率15質量%以上の状態を維持しながら、エージング処理を行っても良い。水分率を低下させない方法として、例えば、個装袋による包装、調湿された低温倉庫での保管、霧状ミストの噴霧等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物は、アラミド繊維の水分率を0%に換算した繊維質量に対して、0.1〜10.0質量%、好ましくは0.2〜2.0質量%含浸・浸透させるのが良い。また、エポキシ基含有化合物をより均一に含浸・浸透させるために、水や溶剤などで希釈して付与しても良い。より好ましくは、アラミド繊維に一般的に用いられる油剤とともに付与するのが良い。具体的な油剤としては、例えば、炭素数18以下の低分子量脂肪酸エステル、ポリエーテル、鉱物油などが挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、例えば、グリセロール、ソルビトール、ポリグリセロールなどの多価アルコールのグリシジルエーテル化合物から選ばれる1種または2種以上の混合物が好ましい。具体的には、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。またこれらのエポキシ化合物を硬化させるため、公知の硬化剤とともに用いても差し支えない。硬化剤としてはアミンが好ましく、特に三級アミンが好ましく、例えば、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、脂肪族一級アミンにエチレンオキサイドを付加した長鎖アルキルポリオキシエチレン型三級アミン等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物をアラミド繊維に付与する方法は、特に限定されず、従来公知の任意の方法が採用されてよく、浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等が挙げられる。
RFLをアラミド繊維複合体に付着させる方法は、公知の方法であって良い。例えば、RFL水溶液に、アラミド繊維複合体を浸漬する方法、走行するアラミド繊維複合体にRFL水溶液を付与した駆動ローラーを接触させる方法等が挙げられる。RFLは、所望の濃度に調整して使用するのが良い。
そして、RFLを付着させたアラミド繊維複合体を、加熱ロール、ヒーター、スチーム等の公知の方法にて、適宜な温度及び時間、加熱乾燥してアラミド繊維集束体を得る。
その後、公知のギロチン式カッターやロータリー式カッターを用いて、公知の方法でカットすることにより、アラミド短繊維集束体を得ることができる。かかるアラミド短繊維集束体は、製造容易性及び経済性の観点より好ましい。ただし、アラミド繊維複合体を公知の方法でカットした後、カットしたアラミド繊維複合体にRFLを付着させてアラミド短繊維集束体を得ても良い。
本発明のアラミド短繊維集束体は、従来一般的なRFL処理と比べて、短繊維集束体を構成する単糸一本一本にRFLが均一に付着し、かつゴムとの親和性良好なRFLを用いるためゴム中での分散性に優れている。そのため、アラミド短繊維集束体により補強されたゴムの弾性率の改善も見込まれることから、動力伝達用ベルトに好適に用いられる他、ゴムホース、タイヤコード、ゴムシート等のゴム製品の補強材としても用いることができる。
本発明のアラミド短繊維集束体を添加するゴム種としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴムが挙げられる。これらのジエン系ゴムは、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」は「%」と略記する。なお、実施例中に記載のゴム補強用アラミド短繊維集束体の評価方法は以下の通りである。
(1)水分率
試料約5gの質量を測定し、300℃×20分の熱処理を行い、25℃65%RHで5分間放置した後、再度質量を測定する。ここで使う水分率は、[乾燥前質量−乾燥後質量]/[乾燥後質量]で得られるドライベース水分率である。
(2)ゴム物性
クロロプレンゴムを主成分とする下記組成の未加硫ゴム中に、短繊維集束体を20%となるように配合して下記条件にて混練し、1minまたは5min間ゴム練りした後にRFL残存量を測定した。
Figure 2019167642
(短繊維混合条件)
混練装置;1L加圧式ニーダー使用
ブレード回転数;20rpm×14.7rpm
ゴム練り時間;1minまたは5min
(短繊維配向条件)
その後、オープンロールを使用して、ロール間隙0.7mmにて短繊維が同一方向となるよう、向きを揃えながら5回ロール通しを実施し、ゴムシートを作製した。加硫条件は170℃×30minとした。
(引張物性測定)
短繊維の配向方向及び非配向方向にサンプルを切り出し、得られた加硫ゴム試験片を使用して、JIS K 6251に準拠して3号ダンベル試験片を作製し、5%伸長時応力(5%MOD)を評価した。数値の大きい方が高弾性率であることを示す。
(短繊維分散性)
作成したゴムシート(タテ 150mm, ヨコ300mm, 厚み1mm)中に複数本で構成される短繊維束の個数を目視にて観測。同様の方法で3枚のシートを作成し1枚あたりの平均値を分散性に関する指標とした。数値が小さい方が分散性良好であることを示す。
(実施例1)
公知の方法で得られたポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを1,000個有する口金からせん断速度30,000sec−1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理した。その後、脱水処理をして、110℃で低温乾燥を行い、水分率を35%に調整した。
このPPTA繊維に、エポキシ基含有化合物として、ソルビトールポリグリシジルエーテルを50質量%含有する油剤(ジイソステアリルアジペート/ジオレイルアジペート/硬化ヒマシ油エチレンオキサイド/鉱物油の混合物)を、水分率0%に換算したときの繊維質量に対し1.0%含浸させた後、巻き取り工程でボビンに巻き取った。
レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン共重合体)の熟成を行った後、使用直前に、ポリエーテルエステル系化合物(SP値;8.6)を所定量混合し、撹拌した。このRFL水溶液に、上記のPPTA繊維複合体を含浸させ、PPTA繊維質量に対して所定の固形分付着量となるよう付着させた。その後、250℃で2分間、乾燥、熱処理を行った。なお、処理剤を含浸させる直前のPPTA繊維複合体の水分率は25%であった。
得られたPPTA繊維複合体をロータリーカッターにて規定長3.5mmにカットし、短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(実施例2)
実施例1において、原糸単糸繊度を2.5dtexに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(実施例3)
実施例1において、原糸単糸繊度を3.3dtexに変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(実施例4)
実施例1において、ポリエーテルエステル系化合物/RFL比率を1/3に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(実施例5)
実施例1において、ポリエーテルエステル系化合物(SP値:9.4)をRFLに混合した以外は、実施例1と同様の方法にて短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(比較例1)
実施例1において、RFLにポリエーテルエステル系化合物を混合しなかった以外は、実施例1と同様の方法にて、短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(比較例2)
実施例1において、ポリエーテルエステル系化合物(SP値;9.7)をRFLに混合した以外は、実施例1と同様の方法にて、短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(比較例3)
実施例1において、二塩基酸ジエステルをRFLに混合した以外は、実施例1と同様の方法にて、短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
(比較例4)
エポキシ基含有化合物を配合していない油剤を含浸させた、エポキシ処理なしのアラミド原糸に対して、ポリエーテルエステル系化合物を混合していないRFL水溶液を、PPTA繊維質量に対して所定の固形分付着量となるよう付着させた後、実施例1と同様の方法にて、短繊維集束体を得た。この短繊維集束体を用い、前記記載の方法にてゴムシートを作成し物性評価を行った。
上記で得られた短繊維集束体の評価結果を表1に示す。
Figure 2019167642
表1の結果から、RFLでのみ処理した従来のアラミド短繊維は、短繊維分散性が悪くかつ十分なゴム物性(5%MOD)が得られていないことに対し、溶解性パラメータ(SP値)が8.5〜9.5のポリエーテルエステル系化合物を混合したRFLを付着した本発明のアラミド短繊維は、ゴム練り5分後の分散性が良好でありかつ高いゴム物性が得られることが分かる。これは分散性が良好であるとともにRFLが均一に単糸に付着していることから、各単糸がそれぞれ十分なゴムとの接着力を有することで効率的に単糸が利用された結果と考えられる。
本発明のアラミド短繊維集束体は、各種ゴムの補強材として有用である。

Claims (3)

  1. アラミド短繊維からなる集束体の表面に、溶解性パラメータ(SP値)が8.5〜9.5の範囲にあるポリエーテルエステル系化合物を混合したレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスが付着したゴム補強用アラミド短繊維集束体。
  2. レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスが、スチレン・ブタジエン・ビニルピリジン共重合体である、請求項1に記載のゴム補強用アラミド短繊維集束体。
  3. アラミド短繊維が、あらかじめエポキシ基含有化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド短繊維である、請求項1または2に記載のゴム補強用アラミド短繊維集束体。
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