JP2019167584A - α+β型チタン合金押出形材 - Google Patents
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Description
[1]
成分組成が、質量%で、Al:5.5〜6.5%、Sn:1.8〜2.2%、Zr:3.6〜4.4%、Mo:1.8〜2.2%を含有し、O:0.20%以下(0%であることを含む)、C:0.08%以下(0%であることを含む)、N:0.05%以下(0%であることを含む)に制限し、残部がTiおよび不可避的不純物であり、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることを特徴とするα+β型チタン合金押出形材。
[2]
旧β粒径の平均が200μm以下であることを特徴とする[1]に記載のα+β型チタン合金押出形材。
[3]
粒界α相の平均最大幅が5μm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のα+β型チタン合金押出形材。
[4]
押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径d1(m)と、前記一断面に平行で、前記一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径d2(m)によって計算される下記(1)式の値が、25以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つに記載のα+β型チタン合金押出形材。
|(d1−d2)/L|×106 (1)
Alはα安定化元素であり、α相の分率を増加するために添加する元素である。その含有量が5.5質量%未満であればβ相に比べて強度の高いα相の分率が過少になり、一般的なTi−6.0Al−4.0V相当の十分な強度が得られず、優れた0.2%耐力が得られない。一方、その含有量が6.5質量%を超えて過多になると、積層欠陥エネルギーを上げ、双晶変形を抑制するために熱間および室温延性が劣化するとともに、Ti3Alが析出することで靭性も劣化し、加工性が低下する。さらに、その含有量が6.5質量%超になると、平滑な局所すべりを誘発するため、局所すべりが生じた場所でき裂が発生しやすくなり熱間加工性が低下する。従って、Alの含有量は、その下限を5.5質量%とし、その上限を6.5質量%とする。
Snは固溶強化に有効な元素であり、添加することで、強度、0.2%耐力を向上させる作用があるため、1.8質量%以上のSnを添加する。一方、その含有量が2.2質量%を超えて過多になると、高温暴露の際に材質の劣化を招くとともに、伸びが減少するので好ましくない。従って、Snの含有量は、その下限を1.8質量%とし、その上限を2.2質量%とする。
Zrも固溶強化に有効な元素であり、添加することで、強度、0.2%耐力を向上させる作用があるため、3.6質量%以上のZrを添加する。一方、その含有量が4.4質量%を超えて過多になると、高温暴露の際に材質の劣化を招くとともに、伸びが減少するので好ましくない。従って、Zrの含有量は、その下限3.6質量%とし、その上限を4.4質量%とする。
Moはβ安定化元素であり、チタン合金のβ変態点温度を下げることが出来る。また、1.8質量%以上添加することで、0.2%耐力、延性および疲労強度を向上させ、かつ、熱間加工性を向上させる。一方、添加量が2.2質量%を超えると、同様に凝固偏析の問題が生じる。そこで、大型鋳塊で凝固偏析が顕著にならない添加量として、Moの含有量の上限は2.2質量%とする。
O、C、Nは、不可避的にα+β型チタン合金に含まれるが、α安定化元素であり、ある程度添加することでα相の分率を増加するとともに、0.2%耐力を向上させる作用を持つ。しかしながら、それぞれの元素の含有量が増加すると、延性が低下し、加工性が低下する。従って、O:0質量%超0.20質量%以下、C:0質量%超0.08質量%以下、N:0質量%超0.05質量%以下とする。もちろん、O、C、Nは、0質量%(検出限界未満)であっても構わない。
残部は、Tiおよび不可避的不純物である。不可避的不純物の元素として、チタンの精錬工程で混入するFe、Cl、Na、Mg、およびスクラップから混入するCu、Nb、Taなどの不純物が例示される。Fe以外のいずれの不純物も、含有量が増加するとTiと化合物を生成して靭性が低下し、その結果加工性が低下する。また、不純物の総含有量が過多になると、延性が低下するために加工性が劣化する。Feについては、0.25質量%以下であれば、本発明の効果を阻害しない。このような元素については、各々0.1%以下、総量で0.4質量%以下含まれていても、本発明の効果を阻害しない。
旧β粒の平均粒径の差は、そのまま、各部の強度の差として現れる。そのため、押出方向に均一な機械的強度を有する押出形材とするためには、下記(1)式によって計算される値が、25以下であることが好ましい。(1)式は、一断面の旧β粒の平均粒径d1(m)と別の一断面の旧β粒の平均粒径d2(m)の差を、L(m)によって除した値の絶対値である。より好ましい(1)式の値は、15以下、さらに好ましくは10以下である。
|(d1−d2)/L|×106 (1)
d1:押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径(m)
d2:一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径(m)
L:一断面と別の断面の押出方向の距離(m)
なお、距離Lは、0.3m以上が好ましく、1m以上がより好ましい。そのため、押出形材の長さは、このLより長い2m以上が好ましく、3m以上がより好ましい。
チタンは熱伝導率が低いので、チタン合金ビレットを所定温度に均熱化するためには、加熱時の昇温速度を低速とし、あるいは加熱炉の在炉時間を長くして、ビレット中心まで含めて目標温度に到達させている。このようにしてビレットの中心まで目標温度に到達させようとすると、ビレット表面については、中心よりも早くβ変態点温度以上となるので、β変態点温度以上に到達してからの滞在時間が長くなる。その結果、ビレット表面についてはβ粒の成長が促進され、押出前のβ粒径が増大する。押出前のβ粒が粗大化すると、押出後のβ粒の再結晶核生成サイトが少ないために押出後のβ粒も粗大化し、旧β粒径の平均が300μmを超えることとなり、0.2%耐力が低下する。
この図3(c)(d)に示す製造方法では、β変態点温度(Tβ)未満の温度域で押出加工が行われるため、押出加工後の組織は、等軸組織となる。そこで、等軸組織部を針状組織にするために、次にβ単相域熱処理を行う。以下にβ単相域熱処理の条件について詳しく述べる。
α+βチタン合金は、通常、熱間押出形材の断面形状が複雑である場合、押出の加工率が高い場合等は、加工発熱が大きくなり、発熱を利用できるので組織が針状組織となりやすいが、断面形状が単純である場合や、押出の加工率が低い場合は、ダイスやコンテナとの接触により奪われる熱が加工発熱量を上回るため、押出加工にて特に全体を針状組織とすることが難しい。
押出形材の金属組織の影響を確認するために、表1の組成のビレットを用い、製造条件を変更することにより金属組織を種々変化させて押出形材を製造し、各々の押出形材について、0.2%耐力、引張強度、伸び、反り、金属組織を測定した。
この熱押形材の図4に示す位置からASTM E8 ハーフサイズ引張試験片(平行部φ6.35mm、ゲージ長25mm)を得た。引張試験により、0.2%耐力、引張強度、破断伸びを測定した。
引張試験片の採取位置と同一の位置から組織観察試験片を採取し、L断面について、光学顕微鏡観察写真を用いて組織観察を行った。
旧β粒径は、切断法で円相当直径を測定し、3mm×6mm(粒数最小約200個)の平均を求めた。
粒界α相の平均最大幅についても、前述のように、図4に示された押出形材断面において、光学顕微鏡による組織観察位置で確認される旧β粒を任意に5つ選び、各々の粒界α相の最大幅を測定する。旧β粒を選択する際、隣接し合う旧β粒を選択することは避ける。そして、5つの最大幅の平均値を粒界α相の平均最大幅として求めた。
等軸組織部と針状組織部はマクロ組織観察により判断できる。マクロ組織は二つの領域に分けられ、金属光沢の強い領域と、白く見える光沢の低い領域である。いずれの領域も、マクロエッチングにより生じた表面の凹凸で光が反射して金属光沢が生じる。しかしながら、細粒の等軸α粒を含む領域では、針状組織の領域に比べて表面に生じる凹凸が細かく、光が乱反射する。そのため、等軸組織の領域は、針状組織の領域に比べて白く見える。組織分布は、全体長さ4000mmの形材を200mmごとに分割した断面(最先端部の端面を含む)を調査した。
反りは、図5に示すように、形材長手方向4m(4000mm)の長さの押出形材において、形材長手方向の両端を結ぶ直線に対して、形材中央部における距離を反りと定義した。なお、実際の測定は、形材両端のA点(図4)に紐を取り付けて実施した。
結果についても、表2に示した。試験番号1〜12の押出形材は、いずれも、金属組織が均質な針状組織となっていた。
それに対し、本発明である試験番号8は、β変態点温度以上で押出後、水冷による強制冷却を施して製造した。その結果、β単相域熱処理後の冷却速度が過剰に速く、粒界α相の平均最大幅が好適範囲を外れて小さいために形材の反りが大きく、実際の使用にあたっては矯正などの後処理が必要である。
次に、押出形材において、押出方向での旧β粒の大きさの差を低減させ、押出方向での機械的特性の均一化を試みた。
先端部、後端部の旧β粒径の平均の測定、先端部、後端部の耐力、伸びを測定するための試験片の採取は、先後端よりそれぞれ300mmの位置で行った。試験番号13〜20の押出形材は、いずれも、金属組織が均質な針状組織となっていた。
なお、試験番号1〜12は、先端部と後端部の押出加熱温度に勾配を付与していない。
2 ステム
3 ダミーブロック
4 ダイス
5 ビレット
6 形材
11 押出方向
Claims (4)
- 成分組成が、質量%で、Al:5.5〜6.5%、Sn:1.8〜2.2%、Zr:3.6〜4.4%、Mo:1.8〜2.2%を含有し、O:0.20%以下(0%であることを含む)、C:0.08%以下(0%であることを含む)、N:0.05%以下(0%であることを含む)に制限し、残部がTiおよび不可避的不純物であり、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることを特徴とするα+β型チタン合金押出形材。
- 旧β粒径の平均が200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金押出形材。
- 粒界α相の平均最大幅が5μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のα+β型チタン合金押出形材。
- 押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径d1(m)と、前記一断面に平行で、前記一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径d2(m)によって計算される下記(1)式の値が、25以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のα+β型チタン合金押出形材。
|(d1−d2)/L|×106 (1)
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