JP2019167584A - α+β型チタン合金押出形材 - Google Patents

α+β型チタン合金押出形材 Download PDF

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【課題】Ti−Al—Vに比べて高強度なTi−Al−Sn—Zr−Mo系α+β型チタン合金を素材に、針状組織を有するが、先行技術と同等の強度・延性を有するα+βチタン合金押出形材を提供する。【解決手段】成分組成が、質量%で、Al:5.5〜6.5%、Sn:1.8〜2.2%、Zr:3.6〜4.4%、Mo:1.8〜2.2%を含有し、O:0.20%以下(0%であることを含む)、C:0.08%以下(0%であることを含む)、N:0.05%以下(0%であることを含む)に制限し、残部がTiおよび不可避的不純物であり、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることα+β型チタン合金押出形材。【選択図】図2

Description

本発明は、α+β型チタン合金押出形材に関する。
チタン合金は高い比強度と優れた耐食性を活かして、航空機の骨材や構造部材、ゴルフフェースクラブヘッドやメガネのフレーム等の民生品用途、インプラント等の医療用途等、様々な分野で使用されてきている。
その中でも、α+β型チタン合金は強度、延性バランスが良く、破壊靭性に優れることから、宇宙航空機産業を中心に多用されてきた。特に、α+β型チタン合金は、このような航空機向け用途の中で、骨材やシートレール等の形材として更なる品質の向上が期待される。
このようなα+β型チタン合金は、最も使用量の多いTi−6Al−4Vをはじめとして、主に航空機分野を主用途として長年使用されている。最近、更なる低燃費化のために機体への炭素繊維強化複合材(CFRP)の適用比率が高まってきたことに伴い、チタン合金の使用割合も上昇しており、今後もさらに上昇することが見込まれている。これは、従来、航空機分野で使用されていたアルミニウム合金では、CFRPとの接触で異種金属接触腐食が生じる、CFRPとの熱膨張率の差が大きく、飛行中と地上での温度差(約100℃)に起因してずれや緩み等を生じやすいという問題があるのに対して、チタン合金は、CFRPと接触しても異種金属接触腐食は起こらず、熱膨張率もアルミニウム合金に比べてCFRPに近いためである。
α+β型チタン合金は、このような航空機向け用途の中で骨材やシートレール等の形材として使用されることもある。形材には複雑な断面形状を有するものもあり、従来は、大断面の鍛造品や極厚材を切削加工することにより製造されてきた。α+β型チタン合金について、鍛造後に切削加工を行う場合、β変態点温度以下で強加工を行うことにより、金属組織を、高い強度・延性バランスを有する等軸組織とし、必要とする引張特性、特に高い耐力を実現していた。
しかし、最近、航空機向け部品の製造コスト削減ニーズが高まる中、最終製品に近い断面形状で長尺の形材を製造することにより、歩留り、生産性の向上が期待され、熱間での押出加工による形材の製造技術が開発されてきている。
押出加工には、間接押出法、静水圧押出法等の方法があり、ユージンセジュルネ法はその一つである。この方法では、インゴットを鍛造して製造した丸ビレットを素材とする。図1のようにコンテナ1に素材(ビレット5)を挿入し、ステム2に油圧による荷重を付与してダミーブロック3を介してビレット5を押出方向11に押し、ダイス4を通過させて様々な断面形状に成形することで、長尺の形材6を得ることが可能となる。
ところで、α+β型チタン合金の金属組織は、前述のように、高い強度・延性バランスを必要とする用途向けには、β変態点温度以下(α+β温度域)で鍛造等により強加工を行い、金属組織を等軸組織に制御することで、必要とする高い引張強度を実現してきた。一方、押出成型で金属組織を等軸組織に制御する場合、α+β型チタン合金はβ変態点温度(Tβ)を200℃以上下回る温度域では熱間変形抵抗が著しく高くなるため、高い押出荷重を付加できる大型の押出プレスが必要となり、設備コストが高くなるとともに、押出不能になる場合がある。さらに押出可能であった場合でも、押出中の加工発熱により、形材断面内の一部の温度がβ変態点温度を超えた場合、形材の断面内に等軸組織と、β変態点温度以上での加工で得られる針状組織が混在し、断面内で著しい機械特性差が生じる。そのため、一般にα+β型チタン合金の押出では、低い押出荷重で製造でき、表面欠陥が生じにくいように、ビレットをβ変態点温度以上に加熱して押出し、押出後の形材の組織を針状組織に制御している。
しかしながら、ビレットをβ変態点温度以上に加熱して押し出した場合、押出後の形材は針状組織を有し、その強度・延性バランスは、等軸組織に比べて劣るという問題がある。さらに、ビレットの加熱温度がβ変態点温度に比べて高い場合、押出後にβ変態点温度以上で保持される時間が長くなり、β粒が成長するため、強度・延性バランスや疲労強度が劣るという問題がある。よりエンジンに近い部位に使用するためには、エンジン回転数の上昇に伴う慣性重量の増加による強度不足は深刻な問題である。
一方、ビレット加熱温度がβ変態点温度近傍、もしくはβ変態点温度より低すぎれば、コンテナやダイス等の押出工具との接触による抜熱も影響して、表層の加工温度がβ変態点温度以下に低下するため、表層に等軸組織が混入する。さらに表層は温度低下のため延性が低下し、押出中に割れや疵などの欠陥が生じる可能性がある。
このように、押出加工を行って得られる針状組織を呈するα+β型チタン合金押出形材は、押出温度の制御が難しく、押出温度が高すぎれば引張特性が低下する、押出温度が低すぎれば表面欠陥や、押出荷重が高く押出不能になるという問題がある。これらの問題を解決すべく、以下のような先行技術が開示されている。
特許文献1には、α+β型チタン合金であるTi−6Al−4V合金をα+β温度域に加熱して押出加工し、高強度、高靭性で、かつ長手方向の寸法変動の小さく表面疵が少ない形材を製造する方法が記載されている。
特許文献2には、α+β型チタン合金をα+β温度域もしくはβ単相温度域に加熱して押出加工を施した後、α+β温度域に加熱してから強制冷却する溶体化処理を行い、次いで、時効処理を行う2段階の熱処理を施して、強度、延性ともに優れた形材を製造する方法が記載されている。
特許文献3には、微細な等軸α+β組織を呈するα+β型チタン合金ビレットをβ変態点温度以上で押出加工し、5℃/秒以上で急冷した後、焼鈍することでα+β域で押出加工を行った形材と同等の強度、延性を有する押出形材を製造する方法が記載されている。
特許文献4には、α+β型チタン合金ビレットをβ変態点温度以上に加熱した後、表面層をα+β域まで冷却してからビレットを押出加工する方法が提案されている。この方法では、押出時、ビレット内部がβ変態点温度以上に加熱されているために熱間変形抵抗が小さく、小さい押出力で押出加工が可能であり、かつ、得られる形材は表面層が等軸α+β組織を有するため高強度であるとされる。
特許文献5には、α+β型チタン合金ビレットを、押出比を含む一次式によって計算されるα+β域の温度範囲に加熱して押出加工を行うことにより、押出中に生じる加工発熱によって後続の熱処理を省略可能な製造方法が開示されている。
特許文献6には、α+β型チタン合金ビレットを、押出比を含む一次式により計算されるα+β域の温度で押出加工を行うことで組織制御を行い、強度や伸びに優れた形材を製造する方法が記載されている。
一方、Vを含まない成分組成を検討し、機械的特性を向上あるいは調整させた合金として、特許文献7〜9には、4.4%以上5.5%未満のAl、1.4%以上2.3%未満のFe、1.5%以上5.5%未満のMoを含有し、不純物として、Siは0.1%未満、Cは0.01%未満を満たし、残部チタンおよび不可避的不純物からなるα+β型チタン合金が開示されている。
特許文献7には、引張強度が1000MPa級以上のα+β型チタン合金のヤング率を所定のものに調整するために、所定の温度範囲の加熱と、それに対応する所定の冷却速度を組み合わせた熱処理を施す旨記載されている。
特開昭61−193719号公報 特開昭61−284560号公報 特開昭63−223155号公報 特公平5−2405号公報 特許第2932918号公報 特開2012−52219号公報 特開2007−314834号公報
上記先行技術に挙げた特許文献1〜6によるα+β型チタン合金押出形材は、いずれも押出後に強制冷却を行って組織制御を行うか、針状組織以外の組織に制御して強度・延性の向上を行っている。
強制冷却による組織制御を行った形材は、高い強度・延性バランスを有する。これは冷却速度の上昇に従って、針状組織中のサイドプレートα相や粒界α相の、冷却中の成長が抑制されるためである。しかしながら、長尺材や断面積が大きい形材は、強制冷却した際に全長および形材内外で冷却速度がばらつき、目的とする組織や材質特性が得られない部位が発生するという問題がある。さらに、冷却過程では、熱収縮により形材内部に応力が発生する。このため、冷却速度差が著しく、応力が大きい場合には、塑性変形により形材に反り等の形状不良が生じる、もしくは、冷却後も残留応力が残る場合もあるため好ましくない。
形材の組織を針状組織以外とする方法では、ビレットの一部および全域をα+β温度域に制御する必要がある。しかしながら、α+β型チタン合金は、加工温度がβ変態点温度以下に下がると熱間変形抵抗が高く、大きなプレス力が必要である。また、α+β温度域では加工発熱量が大きいため、押出中の加工発熱により加工温度がβ変態点温度を超える場合がある。その結果、均一な組織の形材が得られず、機械的特性が均一でないという問題がある。さらに、ビレット断面内で温度勾配を設けて加熱する方法では、わずかな断面内の温度の違いにより変形の程度がばらつくために、安定した形状が得られないという問題がある。
そこで本発明は、Ti−Al―Vに比べて比較的高強度なTi−Al−Sn−Zr−Mo系α+β型チタン合金を素材に、針状組織を有するが、先行技術と同等の強度・延性バランスを有するα+βチタン合金押出形材を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するために、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
[1]
成分組成が、質量%で、Al:5.5〜6.5%、Sn:1.8〜2.2%、Zr:3.6〜4.4%、Mo:1.8〜2.2%を含有し、O:0.20%以下(0%であることを含む)、C:0.08%以下(0%であることを含む)、N:0.05%以下(0%であることを含む)に制限し、残部がTiおよび不可避的不純物であり、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることを特徴とするα+β型チタン合金押出形材。
[2]
旧β粒径の平均が200μm以下であることを特徴とする[1]に記載のα+β型チタン合金押出形材。
[3]
粒界α相の平均最大幅が5μm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のα+β型チタン合金押出形材。
[4]
押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径d(m)と、前記一断面に平行で、前記一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径d(m)によって計算される下記(1)式の値が、25以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一つに記載のα+β型チタン合金押出形材。
|(d−d)/L|×10 (1)
本発明によれば、特定の組成からなるα+β型チタン合金形材について、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることにより、0.2%耐力が860MPa以上、伸びが10%以上の押出形材とすることができる。
本発明のα+β型チタン合金押出形材は、優れた強度および伸びを有し、かつ、大量生産が可能であることから、航空機用構造部材をはじめ、自動車や二輪車の部材等を低コストで製造できるようになる。本発明によれば、産業上の用途が拡大するとともに、その軽量、高強度な特性により、航空機や自動車等の燃費向上等の効果を得ることが可能になる。
ユージンセジュルネ法における押出プレス機の模式図である。 α+β型チタン合金押出形材の針状組織を示す顕微鏡写真である。 (a)〜(d)は、いずれも本発明のα+β型チタン合金押出形材の製造方法を例示した熱履歴を示すグラフである。 実施例で製造した押出形材の断面形状の模式図である。 実施例で測定した押出形材の「反り」の説明図である。
本発明が対象とするα+β型チタン合金は、β変態点温度以下では、HCP構造を持つα相と、BCC構造をもつβ相からなり、β変態点温度以上では、α相はβ相に変態してβ相のみからなる。針状組織は、β変態点温度以上の温度での加工後に生じる形態であり、その組織形態を図2に示す。β変態点温度以上の温度で1つの粒であった旧β粒の境界に粒界α相が生成している。即ち、β変態点温度以上で存在していたβ粒(旧β粒)の粒界には、冷却中に粒界α相が形成される。β変態点温度以上で存在していたβ粒(旧β粒)の粒界である粒界α相で囲まれた領域を本発明では「旧β粒」と呼ぶ。旧β粒内には複数のコロニーと呼ばれるα相とβ相が層状に並んだ組織が形成されている。以降、コロニー中のα相はサイドプレートα相、β相はサイドプレートβ相と呼ぶ。
また、金属は一般的に冷却時に熱収縮して体積が減少する。部位によって冷却速度に差がある場合、冷却中のある時間では熱収縮量が異なるため、形材内部に応力が発生する。さらに、押し出し形材は、押し出し後の温度が均一でない。このように部位によって放冷前の温度が異なる場合、部位ごとに冷却中の総収縮量が異なるため、この応力は増加する。空冷や炉冷など、形材の冷却速度が遅い場合には、このような応力は形材に弾性変形を与えるのみに留まる。しかしながら、従来技術では、押出直後の強制冷却、もしくは押出後の熱処理における溶体化処理(高温域から強制冷却)により、組織や組成を制御することで、高い強度・延性を得る。これら強制冷却では、冷却速度の差が大きいために著しい応力が生じ、形材に反り等の塑性変形を与える。また、冷却時には形状不良が生じなくても、形材内部に残留応力を生じ、形材の加工、切削時等に反り等の形状不良を与える。
そこで本発明者らは、特定の組成からなるα+β型チタン合金について、加熱条件を種々変更して熱間押出を行い、形材の引張特性と針状組織の関係について検討を行った結果、形状不良の原因となる強制冷却を用いなくとも、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均を300μm以下とすることにより、等軸組織を有するTi-6Al-4Vと同等以上の0.2%耐力を有し、延性が実用上問題ない程度のα+β型チタン合金押出形材とすることができることを見出した。
本発明において、成分組成を決定した意義について述べる。
本発明は、Al、Sn、Zr、Moを主要含有元素としたチタン合金、すなわち、Ti−6Al−2Sn−4Zr−2Moを対象とする。以下、各成分の限定理由について説明する。
Al:5.5〜6.5質量%
Alはα安定化元素であり、α相の分率を増加するために添加する元素である。その含有量が5.5質量%未満であればβ相に比べて強度の高いα相の分率が過少になり、一般的なTi−6.0Al−4.0V相当の十分な強度が得られず、優れた0.2%耐力が得られない。一方、その含有量が6.5質量%を超えて過多になると、積層欠陥エネルギーを上げ、双晶変形を抑制するために熱間および室温延性が劣化するとともに、Ti3Alが析出することで靭性も劣化し、加工性が低下する。さらに、その含有量が6.5質量%超になると、平滑な局所すべりを誘発するため、局所すべりが生じた場所でき裂が発生しやすくなり熱間加工性が低下する。従って、Alの含有量は、その下限を5.5質量%とし、その上限を6.5質量%とする。
Sn:1.8〜2.2質量%
Snは固溶強化に有効な元素であり、添加することで、強度、0.2%耐力を向上させる作用があるため、1.8質量%以上のSnを添加する。一方、その含有量が2.2質量%を超えて過多になると、高温暴露の際に材質の劣化を招くとともに、伸びが減少するので好ましくない。従って、Snの含有量は、その下限を1.8質量%とし、その上限を2.2質量%とする。
Zr:3.6〜4.4質量%
Zrも固溶強化に有効な元素であり、添加することで、強度、0.2%耐力を向上させる作用があるため、3.6質量%以上のZrを添加する。一方、その含有量が4.4質量%を超えて過多になると、高温暴露の際に材質の劣化を招くとともに、伸びが減少するので好ましくない。従って、Zrの含有量は、その下限3.6質量%とし、その上限を4.4質量%とする。
Mo:1.8〜2.2質量%
Moはβ安定化元素であり、チタン合金のβ変態点温度を下げることが出来る。また、1.8質量%以上添加することで、0.2%耐力、延性および疲労強度を向上させ、かつ、熱間加工性を向上させる。一方、添加量が2.2質量%を超えると、同様に凝固偏析の問題が生じる。そこで、大型鋳塊で凝固偏析が顕著にならない添加量として、Moの含有量の上限は2.2質量%とする。
O:0.20質量%以下(0%であることを含む)、C:0.08質量%以下(0%であることを含む)、N:0.05質量%以下(0%であることを含む)に制限
O、C、Nは、不可避的にα+β型チタン合金に含まれるが、α安定化元素であり、ある程度添加することでα相の分率を増加するとともに、0.2%耐力を向上させる作用を持つ。しかしながら、それぞれの元素の含有量が増加すると、延性が低下し、加工性が低下する。従って、O:0質量%超0.20質量%以下、C:0質量%超0.08質量%以下、N:0質量%超0.05質量%以下とする。もちろん、O、C、Nは、0質量%(検出限界未満)であっても構わない。
残部:Tiおよび不可避的不純物
残部は、Tiおよび不可避的不純物である。不可避的不純物の元素として、チタンの精錬工程で混入するFe、Cl、Na、Mg、およびスクラップから混入するCu、Nb、Taなどの不純物が例示される。Fe以外のいずれの不純物も、含有量が増加するとTiと化合物を生成して靭性が低下し、その結果加工性が低下する。また、不純物の総含有量が過多になると、延性が低下するために加工性が劣化する。Feについては、0.25質量%以下であれば、本発明の効果を阻害しない。このような元素については、各々0.1%以下、総量で0.4質量%以下含まれていても、本発明の効果を阻害しない。
次に、本発明において、旧β粒径を限定した意義について述べる。針状組織では、一部の転位はα/β相境界を容易に伝播するため、一部の転位の堆積距離はコロニーサイズの半分で与えられる。また、コロニーサイズは旧β粒径の減少に伴って減少する。そのため、旧β粒径の減少に伴い、コロニー境界での転位の堆積による応力場が減少し、組織微細化強化により0.2%耐力が上昇する傾向にある。逆に言えば、旧β粒径が大きくなると、転位の堆積距離が増加してコロニー境界で生じる応力集中が増加するために、0.2%耐力が低下する。さらに、旧β粒径が小さくなると、コロニーサイズが小さくなり、旧β粒界およびコロニー境界に堆積する転位数が減少するために、旧β粒界およびコロニー境界における応力集中が緩和されて伸びが上昇する。そこで、本発明において、0.2%耐力が860MPa以上、伸びが10%となる旧β粒径の平均である300μmを上限とした。好ましくは、旧β粒径の平均が250μm以下、より好ましくは200μm以下である。一方、下限については必ずしも限定されるものではないが、50μm以上が好ましい。それ以上細かくするには押出温度を下げるか、押出の際に強加工を行う必要があり、変形抵抗が大きくなることから、装置の負担が大きいので、上記の下限が好ましい。
針状組織では、粒界α相の平均最大幅が増加するに従い、延性が低下する。粒界α相は、加工中に転位の堆積しやすい旧β粒界に生成する。そのため、加工中のボイドも粒界α相界面に発生しやすいが、粒界α相の平均最大幅が増加すると、ボイドが粒界αに沿って進展しやすくなる。そこで、本発明において、通常の放冷で得られる最大の粒界α幅である5μmを粒界αの平均最大幅の上限とすることが好ましい。一方、下限については必ずしも限定されるものではないが、押出形材の反りの発生を抑制するためには、1.2μm以上が好ましい。それ以上小さくするには、水冷やファン空冷などの強制冷却を行う必要があり、形材内部の温度差を大きくするために、内部応力に起因した形状不良や、空冷後の残留応力の発生の原因となるため、上記の下限が好ましい。
粒界α相の平均最大幅について測定方法を述べる。図4に示された押出形材断面において、顕微鏡による組織観察位置で確認される旧β粒を任意に5つ選び、各々の粒界α相の最大幅を測定する。なお旧β粒を選択する際、隣接し合う旧β粒を選択することは避ける。5つの最大幅の平均値を粒界α相の平均最大幅と定義する。
ところで、押出形材の旧β粒の平均粒径は、通常、押出形材の押出方向で、均一とならない。その理由は押し出す工程にある。押し出す際に、最初に押出の型に接触する、ビレット5の先頭である先端部は、ダイス4との接触により抜熱し、温度が下がりやすい。一方、押し出しの後端部は、ダミーブロック3と接触するために抜熱するとともに、先端部に比べてコンテナ1との接触時間が長いために抜熱量が大きい。これらの抜熱の程度が、先端部と後端部では、異なるために、先端部と後端部では、押出温度が均一とならず、旧β粒の平均粒径の差となって現れる。
旧β粒の平均粒径の差は、そのまま、各部の強度の差として現れる。そのため、押出方向に均一な機械的強度を有する押出形材とするためには、下記(1)式によって計算される値が、25以下であることが好ましい。(1)式は、一断面の旧β粒の平均粒径d(m)と別の一断面の旧β粒の平均粒径d(m)の差を、L(m)によって除した値の絶対値である。より好ましい(1)式の値は、15以下、さらに好ましくは10以下である。
|(d−d)/L|×10 (1)
:押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径(m)
:一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径(m)
L:一断面と別の断面の押出方向の距離(m)
なお、距離Lは、0.3m以上が好ましく、1m以上がより好ましい。そのため、押出形材の長さは、このLより長い2m以上が好ましく、3m以上がより好ましい。
次に本発明のα+β型チタン合金押出形材の製造方法を図3に例示して説明する。図3において、(a)は、β変態点温度(Tβ)以上の温度域で熱間押出を行って針状組織を得る製造方法、(b)は、β変態点温度(Tβ)以上の温度域で熱間押出を行って針状組織を得た後、歪とり焼鈍を行う製造方法、(c)は、β変態点温度(Tβ)未満の温度域で押出を行った後、針状組織を得るためにβ単相域熱処理を行う製造方法、(d)は、β変態点温度(Tβ)未満の温度域で押出を行った後、針状組織を得るためにβ単相域熱処理を行い、歪とり焼鈍を行う製造方法である。なお、これらはあくまでも例示であり、本発明のα+β型チタン合金押出形材はこれらの製造方法で得られるものには限定されない。
図3(a)(b)に示すような、押出温度をβ変態点温度以上とし、押出後にβ単相域熱処理を施さない製造方法では、チタン合金ビレットをβ変態点温度以上まで加熱して熱間押出を行う際、ビレットの表面も中心も含めてβ変態点温度以上の所定の温度に均熱化していることが必要である。
最初に押出後に焼鈍を施さない図3(a)に示す製造方法について説明する。
チタンは熱伝導率が低いので、チタン合金ビレットを所定温度に均熱化するためには、加熱時の昇温速度を低速とし、あるいは加熱炉の在炉時間を長くして、ビレット中心まで含めて目標温度に到達させている。このようにしてビレットの中心まで目標温度に到達させようとすると、ビレット表面については、中心よりも早くβ変態点温度以上となるので、β変態点温度以上に到達してからの滞在時間が長くなる。その結果、ビレット表面についてはβ粒の成長が促進され、押出前のβ粒径が増大する。押出前のβ粒が粗大化すると、押出後のβ粒の再結晶核生成サイトが少ないために押出後のβ粒も粗大化し、旧β粒径の平均が300μmを超えることとなり、0.2%耐力が低下する。
そこで、ビレットをβ変態点温度以下の所定の温度にて均熱化する予加熱を行い、その後に急速加熱を行ってビレット全体をβ変態点温度以上の所定温度とし、β変態点温度以上の温度保持時間を短縮して熱間押出を行う方法を着想した。予加熱においては、β変態点温度以下の温度でビレットを均熱化するので、β粒の粗大化は発生しない。予加熱を行っているので、その後に急速加熱を行うことが可能となり、ビレット中心がβ変態点温度以上の所定温度に到達したとき、ビレット表面のβ変態点温度以上の保持時間を短い時間とすることが可能となる。その結果、ビレットの表面を含め、押出前のβ粒粗大化を防止し、押出後のβ粒粗大化をも防止することができ、旧β粒径の平均を300μm以下とすることを可能とした。
予加熱においては、ビレット表面および中心の温度を(Tβ−500)〜(Tβ−80)℃に、表面と中心の温度差が50℃以下になるように予加熱を行う。
ビレット表面の温度測定は、放射温度計で行うとよい。一方、ビレット中心の温度測定は、加熱に先立ってビレット底面である円の中心位置をドリルで穿孔し、ビレットの中心に至るまでドリル穴をあけ、絶縁管で保護された熱電対を挿入することによって行うとよい。
予加熱後のビレット温度が低すぎると、その後に急速加熱を行う際、ビレット中心まで所定のβ変態点温度以上とするためには、急速加熱後の保持時間を増加する必要が生じ、その結果としてビレット表面のβ変態点温度以上での保持時間が増加してβ粒が粗大化することとなる。本発明においては、予加熱温度下限を(Tβ−500)℃とすることにより、急速加熱後の保持時間を短縮し、押出後の旧β粒径の平均を300μm以下とすることが可能となった。
チタンは大気中で加熱すると酸化しやすく、ある温度以上に加熱するとαケースと呼ばれる硬化層を表面に形成し、その厚さは加熱温度が高くなるほど厚くなる。αケースは硬く、延性に乏しいため押出中のクラックの起点となり、押出製品に割れを生じる。また表面硬化層の研磨作用によりダイスが著しく摩耗するため、押出材長手方向で断面寸法の変動が大きくなる。そこで、αケースの形成が著しくない(Tβ−80)℃をビレットの予加熱温度の上限とした。
チタンは熱伝導性が悪く、予加熱後に十分にビレットが均熱化されない状態でビレット表面から急速加熱を行ったのでは、ビレット全体が均等に加熱されない。そこで、急速加熱時にビレットの一部がβ変態点温度に達してからビレット全体がβ変態点温度に達するまでの時間が短く、押出後の旧β粒径が、旧β粒径の断面内の平均の上限である300μmを超えないよう、予加熱時のビレット表面と中心の温度差の上限を50℃とした。実際の操業では、温度差は20℃以下が好ましい。
ビレットを予加熱した後、通電加熱もしくは誘導加熱により1.0℃/s以上の昇温速度でTβ〜(Tβ+200)℃に加熱し、その後、押出加工を行う。
急速加熱後のビレット温度が高いほど旧β粒径は増加する。これは、押出中に加工を受けたβ粒が、押出後にβ変態点温度以上に保持されている間に再結晶するが、押出前ビレット温度が上昇するに伴い、押出後にβ変態点温度以上に保持される時間が増加し、再結晶後の粒成長時間が長くなるためである。急速加熱後のビレット温度が(Tβ+200)℃を超えると、形材の旧β粒径の平均が300μm超となり、0.2%耐力が860MPaを下回ることを見出した。
また、チタンは大気中で加熱すると酸化しやすく、ある温度以上に加熱するとαケースと呼ばれる硬化層を表面に形成し、その厚さは加熱温度が高くなるほど厚くなる。αケースは硬く、延性に乏しいため押出中のクラックの起点となり、押出製品に割れを生じる。また表面硬化層の研磨作用によりダイスが著しく摩耗するため、押出材長手方向で断面寸法の変動が大きくなる。そこで、旧β粒径の平均が300μm以下となり、かつ、αケースの形成が著しくない(Tβ+200)℃をビレット急速加熱温度の上限とした。
一方、急速加熱後の温度がβ変態点温度(Tβ)近傍では、形材表層部は、押出の際にダイスと接触した際の抜熱により加工温度がTβ以下まで低下するため、等軸組織を有する。押出の進行に伴い、ダイス温度は上昇するため、形材表層も加工温度が上昇し、定常部では針状組織を有するが、安定して針状組織を有する形材を製造するためには、急速加熱後の温度は(Tβ+50)℃以上が好ましい。
押出前のビレット急速加熱時の昇温速度が遅いと、ビレット表面は、β変態点温度以上の温度に保持される時間が長くなり、押出前の旧β粒径が粗大化し、押出後の旧β粒径が増加する。そこで、押出前のビレット表面のβ粒の成長を抑制し、押出後の旧β粒径の平均が300μm以下となる1.0℃/sを、昇温速度の下限とした。
チタンは熱伝導性が悪いので、通電加熱や誘導加熱による急速加熱を行った際、ビレット全体が均等に加熱されるためには急速加熱後に所定の保持時間を設けると好ましい。ビレット全体がβ変態点温度以上の温度に加熱されるためには、急速加熱後に20秒以上保持するのが望ましい。一方、急速加熱後の保持時間が長すぎると、保持時間中にβ粒が粗大化し、押出後のβ粒も粗大化することとなって好ましくない。本発明では、急速加熱後の保持時間を20分以下とすることにより、形材の旧β粒径の平均を300μm以下とすることができる。
押出加工を行った後、5℃/秒未満の冷却速度で室温まで放冷することが好ましい。ここでいう冷却速度は、500℃までの冷却速度を指す。押出後に5℃/秒以上の強制冷却を行うと、冷却速度が不均一となり、形材内部の温度差に起因した応力が形材内部に生じ、反りや曲り等の塑性変形が生じる。また、塑性変形が生じなくても、室温まで冷却した後に形材内部に残留応力が生じ、形材の加工、切削時等に反り等の形状不良を与える。そのため、押出加工後は、5℃/秒未満の冷却速度で放冷することが好ましい。また、冷却速度が遅いと冷却中にβ粒径が増大するとともに、粒界α相が成長して強度および延性が低下する。そのため、押出加工後の冷却速度は、0.5℃/秒以上で放冷することが好ましい。実際の操業では、放冷(約1℃/秒)が好ましい。
以上が図3(a)に示す製造方法の説明であるが、それに加えて、図3(b)に示す製造方法のように、放冷後、(Tβ−500)〜(Tβ−200)℃で歪とり焼鈍を行っても良い。
押出後は放冷であっても、冷却中に、形材内部における温度差により、内部応力が発生する。そこで、本発明では、放冷後の形材について、内部の歪を除去し、内部応力を減少させるのに十分な時間の焼鈍を行うことにより、切削時等に生じる曲りを小さくできる。
一方、焼鈍温度の上昇に伴いコロニー中のα相(サイドプレートα相)の幅が増加して、一部の転位の堆積距離が増加するため、0.2%耐力、および強度が低下する。そこで、サイドプレートα相の幅が増加しはじめる(Tβ−200)℃を焼鈍温度の上限とした。
図3(a)(b)に示す製造方法とは異なり、図3(c)(d)に示すように、β変態点温度未満で押出しても本発明は製造することができる。
この図3(c)(d)に示す製造方法では、β変態点温度(Tβ)未満の温度域で押出加工が行われるため、押出加工後の組織は、等軸組織となる。そこで、等軸組織部を針状組織にするために、次にβ単相域熱処理を行う。以下にβ単相域熱処理の条件について詳しく述べる。
β単相域熱処理後に焼鈍を施さない図3(c)に示す製造方法について説明する。
α+βチタン合金は、通常、熱間押出形材の断面形状が複雑である場合、押出の加工率が高い場合等は、加工発熱が大きくなり、発熱を利用できるので組織が針状組織となりやすいが、断面形状が単純である場合や、押出の加工率が低い場合は、ダイスやコンテナとの接触により奪われる熱が加工発熱量を上回るため、押出加工にて特に全体を針状組織とすることが難しい。
そこで、押出加工後に、β変態点温度Tβ以上に加熱することで全体がβ相に変態し、冷却後に針状組織が得られるようになる。そのため、押出加工後に、Tβを下限温度とするβ単相域熱処理を行う。
但し、β単相域熱処理温度が上昇するに伴い、原子の拡散速度が上昇してβ粒の成長速度が上昇するとともに、β変態点温度以下まで冷却するのに必要な時間が増加し、β粒の成長が促進される。その結果、β単相域熱処理が高すぎると、β粒径(旧β粒径)が300μmを超えて成長し、転位の堆積距離が増加してコロニー境界で生じる応力集中が増加するために、0.2%耐力が大きく低下する。そこで、β単相域熱処理の上限温度は、β粒の成長速度が著しくなく、β変態点温度以下までの冷却時間が短い(Tβ+200)℃とした。
また、針状組織部のβ粒径(旧β粒径)を粗大に変化させることを防止するには、β単相域熱処理の加熱時間も重要である。β単相域熱処理時間が長くなるに従い、β粒径(旧β粒径)は増加する。これは、β変態点温度以上の保持温度が長いと、β粒の界面エネルギーを低下させるため、β粒が合体を始めるためである。また、チタンは大気中で加熱すると酸化しやすく、ある温度以上に加熱するとαケースと呼ばれる硬化層を表面に形成し、その厚さは加熱温度が高くなるほど厚くなる。αケースは硬く、延性に乏しいためクラックの起点となり、製品に割れを生じる。そこで、β粒径(旧β粒径)の平均が300μm以下となり、かつαケースの形成が著しくない、Tβ℃以上で形材を1000秒以下保持(β単相域熱処理温度)することで、針状組織部の旧β粒径を粗大に変化させることなく、等軸組織部をすべて針状組織にできる。一方、β単相域熱処理時間の下限は、形材の肉厚にも依存するが、形材の中央部までの伝熱時間を考慮すると、全体がβ変態点温度以上まで加熱される10秒程度が好ましい。
また、このようにβ単相域熱処理を行う場合も、ビレットの表面も中心も含めてβ変態点温度以上の所定の温度に均一化していることが必要である。そこで、図3(a)(b)に示す製造方法において、熱間押出する前にβ変態点温度以上に加熱する場合と同様に、β変態点温度以上に加熱するβ単相域熱処理を行う場合も、ビレットをβ変態点温度以下の所定の温度(表面および中心の温度(Tβ−500)〜(Tβ−80)℃、表面と中心の温度差50℃以下)にて均熱化する予加熱を行い、その後に急速加熱(昇温速度1.0℃/s以上)を行ってビレット全体をβ変態点温度以上の所定温度とし、β変態点温度以上の温度保持時間を短縮してβ単相域熱処理を行う。これにより、旧β粒径の平均を300μm以下とすることが可能となる。
そして、β単相域熱処理を行った後、5℃/秒未満の冷却速度で室温まで放冷することが好ましい。これにより、反りや曲り等の塑性変形が防止され、形材内部に残留応力が生じなくなる。
以上が図3(c)に示す製造方法の説明であるが、それに加えて、図3(d)に示す製造方法のように、放冷後、(Tβ−500)〜(Tβ−200)℃で歪取り焼鈍を行っても良い。これにより、内部に発生した歪を除去することができ、切削等の二次加工時に発生する曲りを抑制することができる。
なお、上述したように、本発明のα+β型チタン合金押出形材はこれらの製造方法のみで得られるものではない。例えば、図3(c)、(d)に示す製造方法において、押出加工をβ変態点温度以上で行っても良い。また、拡散焼鈍は、押出加工後の冷却中やβ単相域熱処理後の冷却中に連続して行っても良い。
押出形材において、(1)式の値を25以下とするためには、先端部、後端部の抜熱を勘案して、ビレット5が接触するコンテナ1、ステム2、ダミーブロック3、ダイス4の温度や接触時間、熱容量から、抜熱量を計算し、抜熱量により低下する温度分を予め補償する加熱を先端部、後端部において行い、両者に温度勾配を付与する。
(実施例1)
押出形材の金属組織の影響を確認するために、表1の組成のビレットを用い、製造条件を変更することにより金属組織を種々変化させて押出形材を製造し、各々の押出形材について、0.2%耐力、引張強度、伸び、反り、金属組織を測定した。
真空アークで2回溶解して得られるφ700mm、重さ5トンで、表1に示す成分組成のTi−6Al−2Sn−4Zr−2Moインゴットを、α+β温度領域で面積減少率60%まで熱間鍛造し、得られたビレットの表面酸化層を切削して、押出用ビレットとした。なお、表1の合金No.1は、O:0.20%以下、C:0.08%以下、N:0.05%以下の範囲内を満たしていた。
表2に、各試験番号について、製造方法と押出形材の金属組織と特性の測定結果を示した。ここで、製造方法(a)、(b)については、このビレットを、誘導加熱により、Arガス雰囲気で700℃(表面と中心の温度差が5℃)に予加熱した後、昇温速度1.3℃/sで昇温し、表2に示す製造条件で凸型断面形状に押出加工を行った後、室温まで放冷した。製造方法(b)については、その後、この熱押形材を表2に示す条件で歪取り焼鈍した。製造方法(c)、(d)については、表2に示した押出温度で凸型断面形状に押し出した押出形材を、誘導加熱により、Arガス雰囲気で700℃(表面と中心の温度差が5℃)に予加熱した後、昇温速度1.3℃/sで昇温し、表2に示したβ単相域熱処理を行った。製造方法(d)については、その後、この熱押形材を表2に示す条件で歪取り焼鈍した。表2中の誘導加熱「あり」とは、(a)、(b)の場合は、押出加工前の予加熱において誘導加熱を行ったことを意味し、(c)、(d)の場合は、β単相域熱処理前の予加熱において、誘導加熱を行ったことを意味する。
<引張試験>
この熱押形材の図4に示す位置からASTM E8 ハーフサイズ引張試験片(平行部φ6.35mm、ゲージ長25mm)を得た。引張試験により、0.2%耐力、引張強度、破断伸びを測定した。
<組織観察試験>
引張試験片の採取位置と同一の位置から組織観察試験片を採取し、L断面について、光学顕微鏡観察写真を用いて組織観察を行った。
旧β粒径は、切断法で円相当直径を測定し、3mm×6mm(粒数最小約200個)の平均を求めた。
粒界α相の平均最大幅についても、前述のように、図4に示された押出形材断面において、光学顕微鏡による組織観察位置で確認される旧β粒を任意に5つ選び、各々の粒界α相の最大幅を測定する。旧β粒を選択する際、隣接し合う旧β粒を選択することは避ける。そして、5つの最大幅の平均値を粒界α相の平均最大幅として求めた。
<組織分布>
等軸組織部と針状組織部はマクロ組織観察により判断できる。マクロ組織は二つの領域に分けられ、金属光沢の強い領域と、白く見える光沢の低い領域である。いずれの領域も、マクロエッチングにより生じた表面の凹凸で光が反射して金属光沢が生じる。しかしながら、細粒の等軸α粒を含む領域では、針状組織の領域に比べて表面に生じる凹凸が細かく、光が乱反射する。そのため、等軸組織の領域は、針状組織の領域に比べて白く見える。組織分布は、全体長さ4000mmの形材を200mmごとに分割した断面(最先端部の端面を含む)を調査した。
<反り>
反りは、図5に示すように、形材長手方向4m(4000mm)の長さの押出形材において、形材長手方向の両端を結ぶ直線に対して、形材中央部における距離を反りと定義した。なお、実際の測定は、形材両端のA点(図4)に紐を取り付けて実施した。
表2中の下線が付されたものは本発明の範囲外であり、また、表2において、製造方法のパターンは図3の(a)〜(d)のいずれかを示し、冷却速度は図4に示すAの位置で測定した。なお、0.2%耐力は860MPa以上、伸びは10%以上反りは、9mm(1000mmあたり2.25mm)を好ましい範囲とした。
結果についても、表2に示した。試験番号1〜12の押出形材は、いずれも、金属組織が均質な針状組織となっていた。
比較例の試験番号9は、誘導加熱後のビレット温度が(Tβ+200)℃を超えたため、比較例の試験番号10は、β単相域熱処理の温度が(Tβ+200)℃を超えたため、いずれも押出後にTβ以上の温度に保持されている間にβ粒が成長した。その結果、押出後の再結晶核生成サイトが減少し、旧β粒径の平均が300μmを超え、0.2%耐力が860MPaを、伸びが10%を下回った。
比較例の試験番号11は急速加熱(予加熱)を行わずにビレットの加熱を行ったため、押出前にβ粒が粗大化し、押出後の再結晶核生成サイトが少なかったために、押出後の旧β粒径の平均も300μmを越えた。このため、0.2%耐力が860MPaを、伸びが10%を下回った。
試験番号12は、押出後の冷却速度が遅く、旧β粒径の平均が300μmを超え、粒界α相の平均最大幅が5μmを超えたため、0.2%耐力は860MPaを下回るとともに、伸びも10%を下回った。
一方、本発明例である試験番号1〜8は、いずれの合金成分においても、0.2%耐力が860MPa以上、伸びが10%を上回り、良好な特性を有した。加えて、試験番号1〜7は、粒界αの幅の平均が好適なため、反りも小さかった。
それに対し、本発明である試験番号8は、β変態点温度以上で押出後、水冷による強制冷却を施して製造した。その結果、β単相域熱処理後の冷却速度が過剰に速く、粒界α相の平均最大幅が好適範囲を外れて小さいために形材の反りが大きく、実際の使用にあたっては矯正などの後処理が必要である。
(実施例2)
次に、押出形材において、押出方向での旧β粒の大きさの差を低減させ、押出方向での機械的特性の均一化を試みた。
製造条件と、結果を表3に示した。試験番号13〜18では、a〜dの製造方法を遵守しつつ、押出前のビレット加熱の際に、ビレットの先端と後端で温度勾配を与え、ダイス等による抜熱の補償を行った。これらは、ビレット先後端の温度勾配「あり」と記載した。一方、試験番号19、20は、aの製造方法を遵守したものの、抜熱分の熱の補償を行わなかった。これらは、ビレット先後端の温度勾配「なし」と記載した。
先端部、後端部の旧β粒径の平均の測定、先端部、後端部の耐力、伸びを測定するための試験片の採取は、先後端よりそれぞれ300mmの位置で行った。試験番号13〜20の押出形材は、いずれも、金属組織が均質な針状組織となっていた。
試験番号13〜18では、表3に示したように、抜熱による温度低下を補償するために、先端部と後端部の押出加熱温度に勾配を付与したことにより、押出形材の先端部と後端部の旧β粒径の平均の差を小さくすることができた。その結果、押出形材の押出方向の機械的特性を均質化することができた。一方、試験番号19、20は、各部での耐力、伸びともに好ましい値を上回ったものの、押出方向の旧β粒径の平均の差が大きく、機械的特性に差が現れた。
なお、試験番号1〜12は、先端部と後端部の押出加熱温度に勾配を付与していない。
本発明によれば、形材の金属組織を旧β粒径が300μm以下の針状組織に制御することで、実用上で問題のない引張特性を備え、かつ、強制冷却をおこなった場合に比べて、形状の良好な形材をえることができる。従って、冷却装置や形状矯正コストを削減できるので、産業上特に有用である。また、本発明のα+β型チタン合金押出形材は、高強度と良好な伸びを兼ね備え、必要に応じて、反りを小さくすることも可能であり、組織のばらつきがないため、機械加工中の曲りが小さいため、航空機等の用途に有用である。
1 コンテナ
2 ステム
3 ダミーブロック
4 ダイス
5 ビレット
6 形材
11 押出方向

Claims (4)

  1. 成分組成が、質量%で、Al:5.5〜6.5%、Sn:1.8〜2.2%、Zr:3.6〜4.4%、Mo:1.8〜2.2%を含有し、O:0.20%以下(0%であることを含む)、C:0.08%以下(0%であることを含む)、N:0.05%以下(0%であることを含む)に制限し、残部がTiおよび不可避的不純物であり、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることを特徴とするα+β型チタン合金押出形材。
  2. 旧β粒径の平均が200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金押出形材。
  3. 粒界α相の平均最大幅が5μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のα+β型チタン合金押出形材。
  4. 押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径d(m)と、前記一断面に平行で、前記一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径d(m)によって計算される下記(1)式の値が、25以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のα+β型チタン合金押出形材。
    |(d−d)/L|×10 (1)
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