JP7119840B2 - α+β型チタン合金押出形材 - Google Patents
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Description
[1]
成分組成が、質量%で、Al:4.4~6.5%、Fe:0.5~2.9%を含有し、O:0.25%以下(0%であることを含む)、C:0.08%以下(0%であることを含む)、N:0.05%以下(0%であることを含む)に制限し、残部がTiおよび不可避的不純物であり、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることを特徴とするα+β型チタン合金押出形材。
[2]
さらに、質量%で、Feの一部に代えて、Ni:0%以上~0.15%未満、Cr:0%以上~0.25%未満、Mn:0%以上~0.25%未満の1種または2種以上含有することを特徴とする[1]に記載のα+β型チタン合金押出形材。
なお、Ni、Cr、Mn、Feの総量は、0.5%以上、1.4%以下とする。
[3]
さらに、質量%で、Si:0.50%以下(0%であることを含む)を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のα+β型チタン合金押出形材。
[4]
旧β粒径の平均が200μm以下であることを特徴とする[1]~[3] のいずれか1つに記載のα+β型チタン合金押出形材。
[5]
粒界α相の平均最大幅が5μm以下であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1つに記載のα+β型チタン合金押出形材。
[6]
押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径d1(m)と、前記一断面に平行で、前記一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径d2(m)によって計算される下記(1)式の値が、25以下であることを特徴とする[1]~[5]のいずれか一つに記載のα+β型チタン合金押出形材。
|(d1-d2)/L|×106 (1)
本発明のα+β型チタン合金押出形材は、優れた強度および伸びを有し、かつ、大量生産が可能であることから、航空機用構造部材をはじめ、自動車や二輪車の部材等を低コストで製造できるようになる。本発明によれば、産業上の用途が拡大するとともに、その軽量、高強度な特性により、航空機や自動車等の燃費向上等の効果を得ることが可能になる。
Alはα安定化元素であり、α相の分率を増加するために添加する元素である。その含有量が4.4%未満であればβ相に比べて強度の高いα相の分率が過少になり、一般的なTi-6.0Al-4.0V相当の十分な強度が得られず、優れた0.2%耐力が得られない。一方、その含有量が6.5%を超えて過多になると、積層欠陥エネルギーを上げ、双晶変形を抑制するために熱間および室温延性が劣化するとともに、Ti3Alが析出することで靭性も劣化し、加工性が低下する。さらに、その含有量が6.5%超になると、平滑な局所すべりを誘発するため、局所すべりが生じた場所でき裂が発生しやすくなり熱間加工性が低下する。従って、Alの含有量は、その下限を4.4%とし、その上限を6.5%とする。好ましくは、5.5%以下である。
Feはβ安定化元素であり、添加することでβ変態点温度を低下させる作用がある。また、固溶強化により0.2%耐力を向上させる作用を持つため、0.5%以上のFeを添加する。一方、その含有量が2.9%を越えて過多になると、凝固偏析のため、押出形材の表層と中心で機械的性質のばらつきを生じ、安定した値が得られない。さらに、伸びが劣化し、加工性の低下を招くことになる。従ってFeの含有量の上限を2.9%とする。好ましくは、1.4%以下である。
O、C、Nは、不可避的にα+β型チタン合金に含まれるが、α安定化元素であり、ある程度添加することでα相の分率を増加するとともに、0.2%耐力を向上させる作用を持つ。しかしながら、それぞれの元素の含有量が増加すると、延性が低下し、加工性が低下する。従って、O:0%超0.25%以下、C:0%超0.08%以下、N:0%超0.05%以下とする。もちろん、O、C、Nは、0%(検出限界未満)であっても構わない。
残部は、Tiおよび不可避的不純物である。不可避的不純物の元素として、チタンの精錬工程で混入するCl、Na、Mg、およびスクラップから混入するZr、Sn、Cu、Mo、Nb、Taなどの不純物が例示される。いずれの不純物も、含有量が増加するとTiと化合物を生成して靭性が低下し、その結果加工性が低下する。また、不純物の総含有量が過多になると、延性が低下するために加工性が劣化する。これらの元素は、各々0.1%以下、総量で0.4%以下含まれていても、本発明の効果を阻害しない。
本発明のα+β型チタン合金押出形材は、任意添加元素として、さらにFeの一部に代えて、質量%で、Ni:0%以上~0.15%未満、Cr:0%以上~0.25%未満、Mn:0%以上~0.25%未満の1種または2種以上を含有しても良い。これらは、Feの一部を、Feと同様の働きをする安価な元素で置換するものである。すなわち、Ni、Cr、Mnを添加する場合は、0.5%以上のFeを含んだうえで、Fe、Ni、Cr、Mnの総量が、1.4%以下となるように、Ni:0.15%未満、Cr0.25%未満、Mn:0.25%未満で添加する。
Siは固溶強化に有効な元素であり、添加することで0.2%耐力、引張強度を向上させる作用を持つので、含有しても良い。しかしながら、その含有量が0.50質量%を超えて過多になると、析出物を形成し、室温延性や冷間加工性を低下させる。そこで、析出物が析出しない添加量として、Siの含有量の上限は0.50質量%とする。
旧β粒の平均粒径の差は、そのまま、各部の強度の差として現れる。そのため、押出方向に均一な機械的強度を有する押出形材とするためには、下記(1)式によって計算される値が、25以下であることが好ましい。(1)式は、一断面の旧β粒の平均粒径d1(m)と別の一断面の旧β粒の平均粒径d2(m)の差を、L(m)によって除した値の絶対値である。より好ましい(1)式の値は、15以下、さらに好ましくは10以下である。
|(d1-d2)/L|×106 (1)
d1:押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径(m)
d2:一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径(m)
L:一断面と別の断面の押出方向の距離(m)
なお、距離Lは、0.3m以上が好ましく、1m以上がより好ましい。そのため、押出形材の長さは、このLより長い2m以上が好ましく、3m以上がより好ましい。
チタンは熱伝導率が低いので、チタン合金ビレットを所定温度に均熱化するためには、加熱時の昇温速度を低速とし、あるいは加熱炉の在炉時間を長くして、ビレット中心まで含めて目標温度に到達させている。このようにしてビレットの中心を目標温度に到達させようとすると、ビレット表面については、中心よりも早くβ変態点温度以上となるので、β変態点温度以上に到達してからの滞在時間が長くなる。その結果、ビレット表面についてはβ粒の成長が促進され、押出前のβ粒径が増大する。押出前のβ粒が粗大化すると、押出後のβ粒の再結晶核生成サイトが少ないために押出後のβ粒も粗大化し、旧β粒径の平均が300μmを超えることとなり、0.2%耐力が低下する。
ビレット表面の温度測定は、放射温度計で行うとよい。一方、ビレット中心の温度測定は、加熱に先立ってビレット底面である円の中心位置をドリルで穿孔し、ビレットの中心に至るまでドリル穴をあけ、絶縁管で保護された熱電対を挿入することによって行うとよい。
この図3(c)(d)に示す製造方法では、β変態点温度(Tβ)未満の温度域で押出加工が行われるため、押出加工後の組織は、等軸組織となる。そこで、等軸組織部を針状組織にするために、次にβ単相域熱処理を行う。以下にβ単相域熱処理の条件について詳しく述べる。
α+βチタン合金は、通常、熱間押出形材の断面形状が複雑である場合、押出の加工率が高い場合等は、加工発熱が大きくなり、発熱を利用できるので組織が針状組織となりやすいが、断面形状が単純である場合や、押出の加工率が低い場合は、ダイスやコンテナとの接触により奪われる熱が加工発熱量を上回るため、押出加工にて特に全体を針状組織とすることが難しい。
押出形材の成分組成の影響を確認するために、成分を種々変化させ、同一の製造方法により押出形材を製造し、各々の押出形材について、0.2%耐力、引張強度、伸び、反り、金属組織を測定した。
この熱押形材の図4に示す位置からASTM E8 ハーフサイズ引張試験片(平行部φ6.35mm、ゲージ長25mm)を得た。引張試験により、0.2%耐力、引張強度、破断伸びを測定した。
引張試験片の採取位置と同一の位置から組織観察試験片を採取し、L断面について、光学顕微鏡観察写真を用いて組織観察を行った。
旧β粒径は、切断法で円相当直径を測定し、3mm×6mm(粒数最小約200個)の平均を求めた。
粒界α相の平均最大幅についても、前述のように、図4に示された押出形材断面において、光学顕微鏡による組織観察位置で確認される旧β粒を任意に5つ選び、各々の粒界α相の最大幅を測定する。旧β粒を選択する際、隣接し合う旧β粒を選択することは避ける。そして、5つの最大幅の平均値を粒界α相の平均最大幅として求めた。
等軸組織部と針状組織部はマクロ組織観察により判断できる。マクロ組織は二つの領域に分けられ、金属光沢の強い領域と、白く見える光沢の低い領域である。いずれの領域も、マクロエッチングにより生じた表面の凹凸で光が反射して金属光沢が生じる。しかしながら、細粒の等軸α粒を含む領域では、針状組織の領域に比べて表面に生じる凹凸が細かく、光が乱反射する。そのため、等軸組織の領域は、針状組織の領域に比べて白く見える。組織分布は、全体長さ4000mmの形材を200mmごとに分割した断面(最先端部の端面を含む)を調査した。
反りは、図5に示すように、形材長手方向4m(4000mm)の長さの押出形材において、形材長手方向の両端を結ぶ直線に対して、形材中央部における距離を反りと定義した。なお、実際の測定は、形材両端のA点(図4)に紐を取り付けて実施した。
結果についても、表2に示した。試験番号1~12の押出形材は、いずれも、金属組織が均質な針状組織となっていた。
比較例の試験番号3は、Ni量が規定を超えているので、伸びが不十分である。
比較例の試験番号5は、Cr量が規定を超えているので、伸びが不十分である。
比較例の試験番号7は、Mn量が規定を超えているので、伸びが不十分である。
比較例の試験番号9は、Ni、Cr、Mn、Feの総量が規定を超えているので、伸びが不十分である。
押出形材の金属組織の影響を確認するために、実施例1と同様の方法により同一組成(合金No.1の組成)の押出用ビレットとし、このビレットを用い、押出条件を変更することにより金属組織を種々変化させて押出形材を製造し、各々の押出形材について、0.2%耐力、引張強度、伸び、反り、金属組織を測定した。測定方法は、実施例1と同様である。
表3に、各試験番号について、製造方法と押出形材の金属組織と特性の測定結果を示した。製造方法a~dは、それぞれ図3の(a)~(d)に対応している。表3の製造方法「-」は、予加熱を行わずにビレットの昇温を実施している。
ここで、製造方法a、bについては、ビレットを、誘導加熱により、Arガス雰囲気で700℃(表面と中心の温度差が5℃)に予加熱した後、昇温速度1.3℃/sで昇温し、表3に示す製造条件(押出温度)で凸型断面形状に押出加工を行った後、室温まで放冷した。製造方法bについては、その後、この熱押形材を表3に示す条件で歪取り焼鈍した。
製造方法c、dについては、表3に示した押出温度に加熱し、凸型断面形状に押出加工を行った後、いったん室温まで放冷した。その後、誘導加熱により、Arガス雰囲気で700℃(表面と中心の温度差が5℃)に予加熱した後、昇温速度1.3℃/sで昇温し、表3に示したβ単相域熱処理を行った。製造方法dについては、その後、この熱押形材を表3に示す条件で歪取り焼鈍した。
表3中の誘導加熱「あり」とは、a、bの場合は、押出加工前の予加熱において誘導加熱を行ったことを意味し、c、dの場合は、β単相域熱処理前の予加熱において、誘導加熱を行ったことを意味する。β単相域からの冷却速度は、表3に示すとおりである。試験番号13~25の押出形材は、いずれも、金属組織が均質な針状組織となっていた。
比較例の試験番号24は急速加熱(予熱)を行わずにビレットの加熱を行ったため、押出前にβ粒が粗大化し、押出後の再結晶核生成サイトが少なかったために、押出後の旧β粒径の平均も300μmを越えた。このため、0.2%耐力が830MPaを、伸びが15%を下回った。
試験番号25は、押出後の冷却速度が遅く、旧β粒径の平均が300μmを超え、粒界α相の平均最大幅が5μmを超えたため、0.2%耐力は830MPaを下回るとともに、伸びも15%を下回った。
次に、押出形材において、押出方向での旧β粒の大きさの差を低減させ、押出方向での機械的特性の均一化を試みた。
製造条件と、結果を表4に示した。試験番号26~31では、a~dの製造方法を遵守しつつ、押出前のビレット加熱の際に、ビレットの先端と後端で温度勾配を与え、ダイス等による抜熱の補償を行った。これらは、ビレット先後端の温度勾配「あり」と記載した。一方、試験番号32、33は、aの製造方法を遵守したものの、抜熱分の熱の補償を行わなかった。これらは、ビレット先後端の温度勾配「なし」と記載した。
先端部、後端部の旧β粒径の平均の測定、先端部、後端部の耐力、伸びを測定するための試験片の採取は、先後端よりそれぞれ300mmの位置で行った。試験番号26~33の押出形材は、いずれも、金属組織が均質な針状組織となっていた。
なお、試験番号1~25は、先端部と後端部の押出加熱温度に勾配を付与していない。
2 ステム
3 ダミーブロック
4 ダイス
5 ビレット
6 形材
11 押出方向
Claims (6)
- 成分組成が、質量%で、Al:4.4~6.5%、Fe:0.5~2.9%を含有し、O:0.25%以下(0%であることを含む)、C:0.08%以下(0%であることを含む)、N:0.05%以下(0%であることを含む)に制限し、残部がTiおよび不可避的不純物であり、金属組織が針状組織からなり、旧β粒径の平均が300μm以下であることを特徴とするα+β型チタン合金押出形材。
- さらに、質量%で、Feの一部に代えて、Ni:0%以上~0.15%未満、Cr:0%以上~0.25%未満、Mn:0%以上~0.25%未満の1種または2種以上含有することを特徴とする請求項1に記載のα+β型チタン合金押出形材。
なお、Ni、Cr、Mn、Feの総量は、0.5%以上、1.4%以下とする。 - さらに、質量%で、Si:0.50%以下(0%であることを含む)を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のα+β型チタン合金押出形材。
- 旧β粒径の平均が200μm以下であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のα+β型チタン合金押出形材。
- 粒界α相の平均最大幅が5μm以下であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のα+β型チタン合金押出形材。
- 押出形材の押出方向に垂直なある一断面の旧β粒の平均粒径d1(m)と、前記一断面に平行で、前記一断面から押出方向に距離L(m)離れた押出形材の別の一断面の旧β粒の平均粒径d2(m)によって計算される下記(1)式の値が、25以下であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のα+β型チタン合金押出形材。
|(d1-d2)/L|×106 (1)
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