JP2019167257A - リチウムニッケル含有複合酸化物とその製造方法、および、リチウムイオン二次電池、並びに、リチウムニッケル含有複合酸化物の評価方法 - Google Patents
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Abstract
Description
粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径が、1000Å〜2000Åの範囲にあり、
断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径が、900Å〜1800Åの範囲であり、および、
前記粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径と、前記断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径との差が、200Å以下である、
ことを特徴とする。
前記断面X線回折からリートベルト解析により求められるリチウム席占有率が、97%以上であり、
これらのリチウム占有率の差が、0.4%以下である、
ことが好ましい。
本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法は、少なくとも、15μm以上30μm以下の体積平均粒径MVを有するニッケル含有複合化合物と、リチウム化合物を混合してリチウム混合物を得る混合工程と、リチウム混合物を焼成して、リチウムニッケル含有複合酸化物を合成する焼成工程とを備え、この焼成工程において、リチウム化合物の融点以上で、この融点+150℃以下の範囲の温度領域で、リチウム混合物を0.5時間以上5時間以下保持する仮焼成部と、680℃以上800℃以下の範囲にある最高温度で、リチウム混合物を3時間以上6時間以下保持する本焼成部と、得られたリチウムニッケル含有複合酸化物を取り出し可能な温度まで冷却する冷却部とを備えることを特徴とする。
混合工程は、前駆体であるニッケル含有複合化合物に、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
本発明では、焼成工程を、リチウム化合物の融点以上で、この融点+150℃以下の範囲の温度領域で、リチウム混合物を0.5時間以上5時間以下保持する仮焼成部と、680℃以上800℃以下の範囲にある最高温度で、リチウム混合物を3時間以上6時間以下保持する本焼成部とにより構成する。
仮焼成部では、リチウム化合物の融点以上で、この融点+150℃以下の範囲の温度領域で、リチウム混合物を0.5時間以上5時間以下保持する。たとえば、リチウム化合物が水酸化リチウムあるいは水酸化リチウム一水和物の場合、好ましくは、仮焼成部における保持温度は、500℃以上600℃以下の範囲である。また、リチウム化合物が炭酸リチウムである場合、好ましくは、仮焼成部における保持温度は、750℃以上800℃以下の範囲であり、その保持時間は、1時間以上5時間以下である。
仮焼成部における、所定時間の保持工程が終わった後、リチウム化合物自体の温度を、680℃以上800℃以下、好ましくは700℃以上760℃以下の範囲にある所定温度である最高温度として、3時間以上6時間以下の保持時間でリチウム化合物を焼成する本焼成部を設けることにより、適度な結晶子径でリチウム席占有率の高いリチウムニッケル含有複合酸化物を得ることが可能となる。
最高温度からリチウムニッケル含有複酸化物を冷却させる、すなわち、焼成物の温度を150℃以下まで冷却させるための工程である。本発明では、冷却部における降温速度は、特に限定されないが、生産性を考慮しない限り、時間をかけて冷却することが好ましい。具体的には、用いられる炉の規模にも応じるが、好ましくは20℃/分以下、より好ましくは10℃/分以下である。この場合、冷却時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上である。なお、生産性を考慮すると、降温速度の下限は、1℃/分程度となる。
以上説明した仮焼成部においてリチウム混合物が保持される温度範囲、および、本焼成部における最高温度に関しては、リチウム混合物自体の温度の実測値である。焼成工程における、常温からの昇温時、仮焼成部、本焼成部を経て、冷却部において所定温度までの冷却時における、リチウム混合物の温度は、熱電対を用いて実測することで確認することができる。
また、焼成工程において、ある程度以上の長い時間をかけて合成すれば、十分な結晶性を維持し、かつ電池性能を損なわずに合成することが可能であるが、工業的な生産性を考慮した場合、焼成時間はなるべく短い方が好ましい。ここで、焼成工程全体の時間は、リチウム混合物の入った焼成容器が焼成炉に入ってから出てくるまで、すなわち、リチウム混合物の加熱開始から最高温度への到達、およびその保持を経由して、リチウムニッケル含有複酸化物の冷却が完了する(焼成物の温度が150℃以下となる)までの工程全体の時間を意味する。
焼成工程における雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、酸素濃度が80容量%以上の雰囲気とすることがさらに好ましい。上記酸素濃度の、酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。酸化性雰囲気としては、大気雰囲気(酸素濃度21容量%)を用いることができる。酸素濃度が18容量%未満では、リチウムニッケル含有複合酸化物の結晶性が不十分なものとなるおそれがある。酸素濃度を80容量%以上とする、たとえば、酸化性雰囲気として酸素気流(酸素濃度100容量%)を用いることで、結晶中の酸素欠陥が少なく、カチオンミキシングが少なく、リチウム席占有率の高い結晶を得ることができるという効果がある。
必要に応じて、本発明において、得られたリチウムニッケル含有複合酸化物に対して水洗を施すことができる。すなわち、混合工程におけるLi/Meを1より大きくした場合、焼成後にも未反応のリチウム化合物が粒子表面に余剰に存在することがある。この余剰リチウムは、充放電反応には寄与せず、また、充放電反応の際に、二次電池内のガス発生の原因となるため、存在しないことが望ましい。焼成後のリチウムニッケル含有複合酸化物を水洗することで、リチウムニッケル含有複合酸化物の粒子表面に存在する余剰リチウムを除去することができ、高容量で安全性が高いリチウムイオン二次電池用正極活物質となる。
本発明においては、任意に乾燥工程を設けることができる。乾燥の温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは80℃以上550℃以下、さらに好ましくは120℃以上350℃以下の温度である。80℃以上とするのは、水洗後の正極活物質を素早く乾燥し、粒子表面と粒子内部とでリチウム濃度の勾配が起こることを防ぐためである。一方、正極活物質の表面付近では化学量論比にきわめて近い、もしくは、若干リチウムが脱離して充電状態に近い状態になっていることが予想されるため、乾燥の温度が550℃を超える温度では、充電状態に近い粉末の結晶構造が崩れる契機になり、リチウムイオン二次電池の電池特性の低下を招くおそれがある。さらに、生産性および熱エネルギコストをも考慮すると、乾燥の温度を120℃以上350℃以下に設定することがより好ましい。なお、乾燥方法としては、ろ過後の粉末を、炭素および硫黄を含む化合物成分を含有しないガス雰囲気下、または、真空雰囲気下に制御できる乾燥機を用いて、所定の温度で行うことが好ましい。
また、本発明においては、焼成工程によって得られたリチウムニッケル含有複合酸化物は、粒子の凝集または粒子間の軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合には、これらの凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これによって、得られるリチウムニッケル含有複合酸化物の平均粒径MVや粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の粒子からなる凝集体もしくは焼結体に、機械的エネルギを投入して、粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体もしくは焼結体をほぐす操作を意味する。
上述した本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法は、さまざまなリチウムニッケル含有複合酸化物から構成される、リチウムイオン二次電池用の正極活物質の工業的な製造に適用することが可能である。ただし、特に、その組成が、一般式:LixNi(1−y−z)CoyMzO2(式中、Mは、Al、Ti、Zr、V、Nbの中から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x、y、zはそれぞれ、0.90≦x≦1.10、0.05≦y≦0.35、0.005≦z≦0.15、0≦y+z≦0.15を満たす)で表されるリチウムニッケル含有複合酸化物、より好ましくは、前記一般式中のMが、Al、Tiの中から選ばれる少なくとも1種の元素である、リチウムニッケル含有複合酸化物に対して、好適に適用される。リチウムニッケル含有複合酸化物中のリチウム以外の遷移金属に占めるニッケルの割合が高いほど、前記メカニズムが有効であるためである。
粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径が、1000Å〜2000Åの範囲にあり、
断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径が、900Å〜1800Åの範囲であり、および、
前記粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径と、前記断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径との差が、200Å以下である、
ことを特徴とする。
本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物の体積平均粒径MVは、15μm以上30μm以下、好ましくは18μm以上25μmである。体積平均粒径MVがこのような範囲にあれば、高い充填性により、高容量の電池特性が得られる。平均粒径MVが15μm未満では、本発明の企図する正極活物質の充填性が低下し、電池容量を増加させることができない。一方、平均粒径MVが30μmを超えると、正極中での正極活物質の粒子間の接点が少なくなり、正極の抵抗が上昇して、リチウムイオン二次電池の電池容量が低下する。さらに、体積平均粒径MVが30μmを超えると正極製造工程、特に、塗工工程において、ハンドリング性に問題が生じる。
本発明において、リチウムニッケル含有複合酸化物の充填性の指標である、そのタップ密度は、2.6g/cm3以上3.2g/cm3以下であることが好ましい。タップ密度が2.6g/cm3未満では、充填性が十分でなく、リチウムイオン二次電池の容量を向上させることができない。一方、タップ密度の上限値はないが、通常は3.2g/cm3程度にとどまる。
本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物の評価方法は、リチウムニッケル含有複合酸化物を粉末X線回折に供し、該粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径と、該リチウムニッケル含有複合酸化物を、該リチウムニッケル含有複合酸化物を樹脂に埋め込んで断面加工した状態で行う断面X線回折に供し、該断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径とを測定し、前記粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径と前記断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径との差により、前記リチウムニッケル含有複合酸化物の粒子の表面と内部の結晶性をそれぞれ評価することを特徴とする。
本発明が提供するリチウムニッケル含有複合酸化物は、上記製造方法で得られるものであり、本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、高容量で高い安全性という優れた電池特性を備えることができる。
本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物においては、粉末XRDの半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径(以下、「粉末XRDの結晶子径」という)が、1000Å〜2000Åの範囲、好ましくは1100Å〜1600Åの範囲である。粉末XRDの結晶子径が1000Åを下回ると、粒子全体として焼成不足で、十分な結晶成長がなされていないこととなる。一方、2000Åを超えると、結晶成長が過度になされていることとなる。
また、断面XRDの半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径(以下、「断面XRDの結晶子径」という)が、900Å〜1800Åの範囲であり、好ましくは940Å〜1500Åの範囲である。断面XRDの結晶子径が900Åを下回ると、粒子の中止部において、焼成不足で、十分な結晶成長がなされていないこととなる。一方、1500Åを超えると、粒子の表面部において、結晶子径が2000Åを超えて、結晶成長が過剰になされていることとなる。
さらに、本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物においては、前記粉末XRDの結晶子径と、前記断面XRDの結晶子径との差が、200Å以下であり、好ましくは150Å以下である。なお、この差については、その下限が限定されることはないが、通常は、100Å程度である。前記粉末XRDの結晶子径と、前記断面XRDの結晶子径との差が、200Åを超えると、粒子の表面と中心部とで結晶成長に有意な差が生じて、中心部の結晶成長が、表面部の結晶成長に比べて十分でなく、粒子表面部の結晶成長が先に進んでしまい、リチウムが粒子の中心部まで十分に拡散できない。
本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物においては、前記粉末XRDからリートベルト解析により求められるリチウム席占有率(以下、「粉末XRDのLi席占有率」という)が、97%以上、好ましくは98%以上である。また、断面XRDからリートベルト解析により求められるリチウム席占有率(以下、「断面XRDのLi席占有率」という)も、97%以上、好ましくは98%以上である。
本発明において、リチウムニッケル含有複合酸化物の合成が適切かつ順調に進んだことの指標として、粉末XRDの結晶子径に対する粉末XRDのリチウム席占有率の比(以下、「結晶子径に対するリチウム席占有率の比」という)を用いることができる。本発明において、結晶子径に対するリチウム席占有率の比は、0.050以上、好ましくは0.070以上、より好ましくは0.080以上である。なお、本発明では、結晶子径に対するリチウム席占有率の比の上限値は、0.12である。
本発明のリチウムイオン二次電池は、一般のリチウムイオン電池と同様に、正極、負極、セパレータ、および非水電解質などから構成される。たとえば、図1に示す2032型コイン電池1(以下、「コイン型電池」という)は、ケース2と、このケース2内に収容された電極3とから構成されている。
本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物を、正極を構成する正極活物質として用い、たとえば、以下のようにして、リチウムイオン二次電池の正極を作製する。
負極には、金属リチウムやリチウム合金などを用いることが可能である。たとえば、負極としては、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて、電極密度を高めるべく圧縮して形成したシート状電極が使用される。
正極と負極との間には、セパレータが挟み込んで配置される。セパレータは、正極と負極とを電気的に分離しつつ、電解質を保持し、正極と負極間のリチウムイオンの移動経路となる。一般的なセパレータとしてはポリエチレン、ポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。また、固体電解質を用いることも可能である。
非水電解質には、支持塩であるリチウム塩を有機溶媒に溶解してなる非水電解液のほか、不燃性でイオン電導性を有する固体電解質などが用いられる。
以上、説明した正極、負極、セパレータ、および非水系電解質で構成される、本発明のリチウムイオン二次電池の形状は、円筒型、積層型など種々の形状を有することができる。
本発明のリチウムニッケル含有複合酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、高容量で高出力となる。
[リチウムニッケル複合酸化物の製造および評価]
正極活物質を合成するため、水酸化リチウム(LiOH)と、ニッケルとコバルトとアルミニウムの物質量比が91:6:3で固溶してなり、平均体積粒径MVが20.0μmであるニッケル含有複合水酸化物(Ni0.91Co0.06Al0.03(OH)2)とを、リチウムとリチウム以外の金属との物質量比が1.020:1.000となるように秤量した後、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて、十分に混合し、リチウム混合物を得た。
図1に示すコイン型電池1は、以下のようにして製作した。まず、リチウムイオン二次電池用正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、および、ポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極3aを作製した。作製した正極3aを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
水酸化リチウム(LiOH)とニッケル含有複合水酸化物(Ni0.91Co0.06Al0.03(OH)2)とを、リチウムとリチウム以外の金属との物質量比が1.010:1.000となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、得られたリチウムニッケル含有複合酸化物の組成は、一般式:Li1.01Ni0.91Co0.06Al0.03O2であった。
水酸化リチウム(LiOH)と金属複合水酸化物(Ni0.91Co0.06Al0.03(OH)2)とを、リチウムとリチウム以外の金属との物質量比が1.040:1.000となるように秤量したこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに電池特性の評価を行った。なお、得られたリチウムニッケル含有複合酸化物の組成は、一般式:Li1.04Ni0.91Co0.06Al0.03O2であった。
炉内温度を550℃で1.5時間保持する仮焼成工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、混合物自体の温度が500℃以上600℃以下である温度領域における保持時間は1.0時間であった。
炉内温度を550℃で6時間保持する仮焼成工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、混合物自体の温度が500℃以上600℃以下である温度領域における保持時間は4.0時間であった。
本焼成工程における炉内温度を700℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、本焼成工程での焼結物自体の最高温度は700℃であった。
本焼成工程における炉内温度を750℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、本焼成工程での焼結物自体の最高温度は750℃であった。
本焼成工程における720℃での保持時間を7時間としたこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、本焼成工程での焼結物自体の最高温度(725℃)での保持時間は5.0時間であった。
平均体積粒径MVが28.0μmであるニッケル含有複合水酸化物(Ni0.91Co0.06Al0.03(OH)2)を原料として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。
リチウム化合物として炭酸リチウム(Li2CO3)を用い、炉内温度を、30℃から730℃まで1時間かけて昇温し(11.6℃/分)、730℃で4時間保持する仮焼成工程を行った後、730℃から760℃まで0.25時間かけて昇温し(2.0℃/分)、760℃で5時間保持する温度パターンで焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、混合物自体の温度が725℃以上750℃以下である温度領域における保持時間は2.5時間であった。また、本焼成工程での焼結物自体の最高温度は765℃であり、その温度での保持時間は3.5時間であった。
炉内温度を、30℃から500℃まで1時間かけて昇温し(7.83℃/分)、500℃から620℃まで1時間かけて昇温し(2.0℃/分)、620℃から745℃まで4時間かけて昇温し(0.52℃/分)、745℃で5時間保持する温度パターンで焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、混合物自体の温度が500℃以上600℃以下である温度領域における保持時間は0.3時間であった。また、本焼成工程での焼結物自体の最高温度は750℃であり、その温度での保持時間は3.5時間であった。
炉内温度を、30℃から550℃まで2時間かけて昇温し(4.33℃/分)、550℃で0.5時間保持した後、550℃から720℃まで1時間かけて昇温し(2.83℃/分)、720℃で7時間保持する温度パターンで焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、混合物自体の温度が500℃以上600℃以下である温度領域における保持時間は0.4時間であった。
仮焼成工程後、炉内温度を、550℃から800℃まで1時間かけて昇温し(4.17℃/分)、800℃で5時間保持する温度パターンで焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、本焼成工程での焼結物自体の最高温度は820℃であり、その温度での保持時間は3.5時間であった。
炉内温度を、30℃から500℃まで1時間かけて昇温し(7.83℃/分)、500℃から720℃まで23時間かけて昇温し(0.16℃/分)、720℃を5時間保持する温度パターンで焼成を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、リチウムニッケル含有複合酸化物およびリチウムイオン二次電池を製造し、それぞれの評価を行った。なお、混合物自体の温度が500℃以上600℃以下である温度領域における保持時間は10.5時間であった。また、本焼成工程での焼結物自体の最高温度は725℃であり、その温度での保持時間は3.5時間であった。
表1〜表3から明らかなように、実施例1〜8のリチウムニッケル含有複合酸化物は、粉末XRDの結晶子径と断面XRDの結晶子径との差、および、粉末XRDのリチウム席占有率と断面XRDのリチウム席占有率との差が、それぞれ小さくなっており、それぞれの粒子において、粒子表面と粒子内部における結晶性の差が小さい構造が得られているため、初期放電容量が大きく、初期充放電効率が高い値となっている。
2 ケース
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
3c セパレータ
Claims (13)
- 少なくとも、15μm以上30μm以下の体積平均粒径MVを有するニッケル含有複合化合物と、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る混合工程と、該リチウム混合物を焼成して、リチウムニッケル含有複合酸化物を合成する焼成工程とを備え、
前記焼成工程は、前記リチウム化合物の融点以上で、該融点+150℃以下の範囲の温度領域で、前記リチウム混合物を0.5時間以上5時間以下保持する仮焼成工程と、680℃以上800℃以下の範囲にある最高温度で、前記リチウム混合物を3時間以上6時間以下保持する本焼成工程と、得られた前記リチウムニッケル含有複合酸化物を取り出し可能な温度まで冷却する冷却工程とを備える、
リチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。 - 前記焼成工程を、酸素濃度が80容量%以上の酸化性雰囲気で行う、請求項1に記載のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。
- 前記焼成工程において、前記リチウム混合物の加熱開始から前記冷却工程の完了までの時間を25時間以下とする、請求項1または2に記載のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。
- 前記リチウム化合物は、1.5μm以上50μm以下の体積平均粒径MVを有する、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。
- 前記ニッケル含有複合化合物として、ニッケル含有複合酸化物、ニッケル含有複合水酸化物、あるいは、これらの混合物を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。
- 前記リチウム化合物として、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、あるいは、これらの混合物を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。
- 前記温度領域を、500℃以上600℃以下の範囲とする、請求項6に記載のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。
- 前記リチウム化合物として炭酸リチウムを用い、前記温度領域は725℃以上750℃以下の範囲とし、その保持時間を1時間以上5時間以下とし、前記最高温度を、前記温度領域よりも高く、かつ、750℃以上800℃以下の範囲にある所定温度とする、請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムニッケル含有複合酸化物の製造方法。
- リチウムニッケル含有複合酸化物を粉末X線回折に供し、該粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径と、該リチウムニッケル含有複合酸化物を、該リチウムニッケル含有複合酸化物を樹脂に埋め込んで断面加工した状態で行う断面X線回折に供し、該断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径とを測定し、前記粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径と前記断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径との差により、前記リチウムニッケル含有複合酸化物の粒子の表面と内部の結晶性をそれぞれ評価する、リチウムニッケル含有複合酸化物の評価方法。
- 一般式:LixNi(1−y−z)CoyMzO2(式中、Mは、Al、Ti、Zr、V、Nbの中から選ばれる少なくとも1種の元素であり、x、y、zはそれぞれ、0.90≦x≦1.10、0.05≦y≦0.35、0.005≦z≦0.15、0≦y+z≦0.15を満たす)で表される組成、および、15μm以上30μ以下の体積平均粒径MVを有し、
粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径が、1000Å〜2000Åの範囲にあり、
断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径が、900Å〜1800Åの範囲であり、および、
前記粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径と、前記断面X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径との差が、200Å以下である、
リチウムニッケル含有複合酸化物。 - 前記粉末X線回折からリートベルト解析により求められるリチウム席占有率が、97%以上であり、
前記断面X線回折からリートベルト解析により求められるリチウム席占有率が、97%以上であり、
これらのリチウム占有率の差が、0.4%以下である、
請求項10に記載のリチウムニッケル含有複合酸化物。 - 前記粉末X線回折の半価幅から得られる(003)面方向の結晶子径に対する、前記粉末X線回折からリートベルト解析により求められるリチウム席占有率の比が、0.05以上0.1以下である、請求項11に記載のリチウムニッケル含有複合酸化物。
- 正極と、負極と、電解質とを備え、前記正極を構成する正極活物質として、請求項10〜12のいずれかに記載のリチウムニッケル含有複合酸化物が用いられている、リチウムイオン二次電池。
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