以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態)
以下では、本発明の一実施の形態としての実施の形態の内装素材(内装用クロス)の再生方法について説明する。本実施の形態の内装素材の再生方法は、複数の住戸を備えた共同住宅が有する複数の部屋の天井又は内壁に張り付けられた内装素材を再生させる内装素材の再生方法である。
<各部屋における内装素材の再生方法>
初めに、各部屋における内装素材の再生方法について説明する。図1は、実施の形態の内装素材の再生方法の一部のステップの一例を示すフロー図である。
図1に示す内装素材の再生工程においては、まず、内装素材の表面の汚れ度合を評価する(図1のステップS1)。その際、表面の汚れ度合に応じて、例えば、A評価〜F評価、または、レベル1〜レベル6等のランク付けを行う。なお、汚れ度合の評価は、再生作業を行う作業員の目視により行うことができるが、例えば内装表面の写真を撮像し、撮像された写真をコンピュータで解析することにより汚れ度合を評価してもよい。
次に、内装素材の表面のほこり、即ち内装素材の表面に付着したほこりを除去する(図1のステップS2)。
このステップS2におけるほこりを除去する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、内装素材の表面にブラシ掛け(物理的洗浄)を行うことができる。なお、内装素材の表面にほこりが付着していない場合には、ステップS2を省略することができる。
図1に示す内装素材の再生工程においては、次に、天井又は内壁のうち洗浄処理液の塗布が不要な領域に養生を施す(図1のステップS3)。
このステップS3における養生を施す具体的手法としては、特に限定されないが、例えばコンセントプレート等に養生テープを張り付けることができる。なお、コンセントプレート等が設けられておらず養生を施す必要がない場合には、ステップS3を省略することができる。
図1に示す内装素材の再生工程においては、次に、内装素材の表面に洗浄処理液を塗布する(図1のステップS4)。
このステップS4における洗浄処理液を塗布する具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、内装用クロスの表面に、アルカリ性無機洗浄剤と汚れ分解酵素と第1漂白剤とが水に溶解されてなる洗浄処理液を塗布することができる。また、洗浄処理液を、低圧の噴霧器等を用いて散布するか、棒つきモップ等により塗布するか、又は、低圧の噴霧器等を用いて散布した後棒つきモップ等により塗布することができる。このとき、洗浄処理液の散布量即ち塗布量は、10〜100g/m2程度とすることが好ましい。
洗浄処理液として、pHが10以上であり(アルカリ性)、広範囲な汚れを落とすことができるものを用いることができる。上記したように、アルカリ性洗浄剤と汚れ分解酵素と第1漂白剤とを含有している洗浄処理液を用いてもよく、或いは、アルカリ性洗浄剤と汚れ分解酵素と第1漂白剤とをそれぞれ単独で散布又は塗布してもよい。
代表的なアルカリ性洗浄剤として、例えば、水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを含有するもの等、ナトリウム系若しくはカリウム系等のアルカリ金属塩、珪酸塩、又は、アンモニア化合物などのアルカリ性物質を含有する水系洗浄剤を用いることができる。
汚れ分解酵素は、内装用クロス(被洗浄物)全体を均一に洗浄仕上げするために用いられる。汚れ分解酵素として、プロピレングリコール、パパイン及びポリエチレン等を含有するものを用いることができる。
第1漂白剤は、内装用クロスを高明度に仕上げるために用いられる。第1漂白剤は、アルカリ側で効果が大きい酸化型漂白剤であるのが好ましく、具体的には、例えば過酸化水素1〜35%水溶液、過酸化ナトリウム1〜20%水溶液などを用いることができる。また、塩素系漂白剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム有効塩素1〜12%水溶液なども有効である。
内装素材の表面に付着した汚れの程度がひどい場合には、過酸化水素、水酸化ナトリウムを含有するもの等、タンパク質分解酵素、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ナトリウム系若しくはカリウム系等のアルカリ金属塩、ケイ酸塩、2−ブトキシエタノール、メタケイ酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等のアルカリ性物質を含有する水系洗浄剤を用いたうえで、これらの物質を溶解するための水を40〜60℃に設定する。洗浄剤や漂白剤を溶解するための水の温度を40〜60℃に設定することにより、洗剤が汚れを分解する能力が最大限に発揮され、通常の水温で溶解した場合と比較して、作業効率が向上する。
さらに、このようにして生成した洗浄処理液を、加圧式噴霧器で噴霧することで内装素材表面に塗布することが好ましい。加圧式噴霧器で洗浄処理液を噴霧することにより、洗浄液の液滴が微細となり、微細化された洗浄処理液の液滴が内装素材表面に付着した汚れ成分同士の間にまで入り込むことができ、その結果、汚れ分解成分を持つ洗浄処理液が汚れの奥にまで浸透しやすくなり、汚れの分解能力が向上する。
また、生活臭、ペット臭、香辛料等の匂いの付着が強い部屋、及び/又は部屋を構成する壁全体に汚れが付着している部屋においては、一定時間に亘って連続的に噴霧することが可能な噴霧器を使用し、部屋を構成するすべての壁及び天井に対して連続的に洗浄処理液を噴霧する。このようにすることによって、一つ一つの壁や天井に洗浄処理液を噴霧するのに対し、工数を削減することができ、洗浄時間を飛躍的に短縮することができる。
図1に示す内装素材の再生工程においては、次に、汚れ度合に応じた浸透時間が経過したかどうかを判断し(図1のステップS5)、予め設定された浸透時間が経過したことを条件として(図1のステップS5の判定においてY)、洗浄処理を施す工程であるステップS6に進む。一方、予め設定された浸透時間が経過していない場合は(ステップS5の判定においてN)、浸透時間が経過するまでステップS5を繰り返す。
このような浸透時間は、内装素材の表面に付着した汚れに対し、洗浄処理液を塗布した状態で所定時間放置した後に洗浄処理工程を行うことによって、確実に汚れが除去できる程度の時間として、予め設定されている。したがって、汚れ度合が大きいほど、浸透時間は長く設定され、汚れ度合が小さいほど、浸透時間は短く設定される。
図1のステップS5の判定において、予め設定された浸透時間が経過したと判定されると、洗浄処理液が塗布された内装素材の表面の洗浄処理を施す(図1のステップS6)。このステップS6は、洗浄処理液が塗布された内装素材の表面の汚れを除去する、即ち汚れを落とす工程である。
このステップS6の洗浄処理工程では、まず、内装素材の表面に物理的洗浄処理を施す(図1のステップS7)。
このステップS7における物理的洗浄処理を施す具体的手法としては、特に限定されないが、例えば、洗浄処理液が散布された内装素材の表面にブラシ掛け(物理的洗浄)を行うことができる。このブラシ掛けは、洗浄処理液の散布後、数分〜数時間程度の時間をおいて行うのが好ましい。また、このとき、床下に水が漏れないように、水をよく吸収する布などをあらかじめ床一面に敷いておくのが好ましい。
或いは、ステップS7における具体的手法として、ブラシ掛けに代えて、例えば接触面が平らな棒つきモップにタオル等の布をまいて汚れや洗剤を拭きとるといった布拭きとりによる物理的洗浄を行ってもよい。特に、和室などでは、内装素材として、内装用クロスではなく、表面が紙で形成された化粧板が用いられることが多いが、このような場合はブラシ掛けは好ましくないので、接触面が平らな棒つきモップとタオルとを使用して汚れや洗剤を拭き取るのが好ましい。
ステップS6の洗浄処理工程では、更に、ブラシ掛けが行われた内装素材の表面に水濯ぎ処理を施す(図1のステップS8)。これにより、内装用クロスの表面に付着している洗浄処理液が除去される。
ステップS6の洗浄処理工程では、更に、水濯ぎ処理が施された内装素材の表面に、水溶性溶剤と第2漂白剤とを含有する染み抜き液を塗布(散布)する(図1のステップS9)。
このステップS9では、水溶性溶剤と第2漂白剤とを含有している染み抜き液を用いてもよく、水溶性溶剤と第2漂白剤とをそれぞれ単独で塗布(散布)してもよい。
水溶性溶剤として、内装用クロス(特に塩化ビニルクロスの場合)の中に浸透して汚れを浮き出させるために、内装用クロスを傷めないタイプの水溶性溶剤、例えばメチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、メチレングリコール、エチレングリコール、ブチレングリコール等を用いることができる。また、局所的な汚れをとる場合は、芳香族系の有機溶剤が有効である。
第2漂白剤として、酸化型漂白剤、例えば過酸化水素1〜35%水溶液、過酸化ナトリウム1〜20%水溶液、次亜塩素酸ナトリウム有効塩素1〜12%水溶液などが有効である。なかでも、漂白力の強い塩素系漂白剤は、短時間で漂白効果が生じるので、時間的にも作業性がよい。静電気、熱跡、もの跡等による頑固な汚れの染み抜きを行う場合は、塩素系漂白剤で繰り返し染み抜き作業を行うのが好ましい。作業時間を短縮するためには、塩素系漂白剤を無機、有機の酸性物質により酸性にした使用条件で脱色処理するのが好ましい。なお、作業中の塩素系漂白剤の急激な分解を避けるためには、有機系の酸性物質を添加するのが望ましい。
ステップS6の洗浄処理工程では、更に、染み抜き液が散布された内装素材の表面に、ブラシ掛けを行う(図1のステップS10)。そして、ブラシ掛けが行われた内装素材の表面に水濯ぎ処理を施す(図1のステップS11)。このステップS10では、染み抜き液が塗布された内装素材の表面に水濯ぎ処理を施すことになる。これにより、内装用クロスの表面に付着している染み抜き液が除去される。
なお、ステップS10まで行った後の内装素材の表面において汚れが完全に除去されておらず、一部の汚れが残っている場合には、ステップS9及びステップS10を繰り返して行うことができる。そして、ステップS10まで行った後、汚れが完全に除去されている場合には、ステップS11を行って内装素材の表面の水濯ぎ処理を施す。
一方、内装素材の表面の汚れ度合が低い場合には、ステップS6の洗浄処理工程では、ステップS7及びステップS8のみを行い、ステップS9乃至ステップS11を行わないようにしてもよい。
このようにして、塩化ビニル又は布織物等からなる内装用クロスの汚れを容易に除去することができ、内装用クロスを良好な美観を呈するように再生することができる。また、内装用クロスの取り替えは不要であるので、廃棄物が出ない。このような内装用クロスの再生方法によれば、内装用クロスに染み込んだ汚れを完全に除去することができる。また、内装用クロスの洗浄が均一な仕上がりになる。
内装用クロスの汚れには、油汚れ、煙草の煙による汚れ、すす汚れ、かび汚れ、手垢による汚れ、静電気や熱による汚れ、家具の跡形による汚れ、飲み物やインキなどの飛沫が付着した汚れのほか、原因がはっきりしないものなど多種のものがある。これらの汚れは、洗浄が容易なもの、困難なものなど種々雑多であるが、本実施の形態の内装素材の再生方法によれば、このような汚れを容易に落とすことができ、内装用クロスを良好な美観を呈するように容易に再生することができる。
なお、ステップS7のブラシ掛けは、内装素材の表面に塗布された洗浄処理液が乾燥する前に行うことが好ましく、これにより、洗浄処理液及び汚れを確実に拭きとることができる。また、ステップS8のブラシ掛けは、内装素材の表面に塗布された染み抜き液が乾燥する前に行うことが好ましく、これにより、染み抜き液及び汚れを確実に拭きとることができる。
すなわち、ステップS5で判定される浸透時間は、洗浄処理液が塗布された状態で放置される時間であって、当該所定時間に亘って洗浄処理液を浸透させることによって、汚れを確実に除去できる程度の時間として設定されているが、放置した結果、洗浄処理液が乾燥してしまうと、洗浄処理工程にかかる時間が長くなってしまう。そのため、浸透時間は、汚れを確実に除去できる程度の時間であって、かつ、洗浄処理液が乾燥しない程度の時間として設定されることが好ましい。
<各住戸における複数の部屋の内装素材の再生方法>
次に、本実施の形態の内装素材の再生方法として、共同住宅の各住戸における複数の部屋の内装素材の再生方法について説明する。以下では、2DKの間取りを有する住戸を例示して説明する。
図2は、実施の形態の内装素材の再生方法が適用される住戸の一例を示す平面図である。図3は、実施の形態の内装素材の再生方法の一部のステップの詳細の一例を示すフロー図である。図3は、図1に示す内装素材の再生方法が有する複数のステップのうちステップS4からステップS6について示している。
図2に示す例では、共同住宅の各住戸は、和室1、和室2、ダイニングキッチン3、洗面所4及び浴室5を備えた2DKの間取りを有するが、ここでは、そのうち、和室1及び和室2の2つの部屋の内装素材の再生方法について、説明する。
ここで、内装素材の再生方法の対象となっているすべての部屋(本実施の形態の場合、和室1及び和室2)に関して、それぞれ、汚れ度合が評価され、ランク付けされているものとする。そして、和室1における内装素材の表面の汚れ度合が、和室2における内装素材の表面の汚れ度合よりも高い、即ち和室1の内装素材の表面の方が、和室2の内装素材の表面よりも汚れているものとする。
このような場合、ステップS4では、図3に示すように、和室1(ステップS411)、和室2(ステップS412)の順に、内装素材の表面に洗浄処理液を塗布する。即ち、ステップS4では、複数の部屋のうち内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋から順に、内装素材の表面に洗浄処理液を塗布する。
これにより、各部屋においてステップS6の洗浄処理を行う前に、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を、内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋ほど長くすることができる。
そして、ステップS5では、まず、汚れ度合の低い和室2について、和室2の汚れ度合に応じた浸透時間が経過したかどうかを判断し(図3のステップS511)、予め設定された浸透時間が経過したことを条件として(ステップS511の判定においてY)、和室2に洗浄処理を施す工程であるステップS611に進む。一方、予め設定された浸透時間が経過していない場合は(ステップS511の判定においてN)、浸透時間が経過するまでステップS511を繰り返す。
そして、図3のステップS511の判定において、、和室2の汚れ度合に応じて予め設定された浸透時間が経過したと判定されると、和室2について、洗浄処理液が塗布された内装素材の表面の洗浄処理を施す(ステップS611)。
続いて、ステップS512に進み、和室1について、和室1の汚れ度合に応じた浸透時間が経過したかどうかを判断し(ステップS512)、予め設定された浸透時間が経過したことを条件として(ステップS512の判定においてY)、和室1に洗浄処理を施す工程であるステップS612に進む。一方、予め設定された浸透時間が経過していない場合は(ステップS512の判定においてN)、浸透時間が経過するまでステップS512を繰り返す。
そして、ステップS512において、予め設定された浸透時間が経過したと判定され、和室1に洗浄処理を施す工程が実施されると、洗浄処理を終了する。
このようにすることで、内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋でも、汚れを確実に除去することができるので、多数の部屋に亘り、優れた仕上がりで内装素材を再生させることができる。また、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋ほど長くした場合でも、作業の待ち時間を削減して複数の部屋の洗浄処理を略同時に終わらせることができ、多数の部屋に亘り、効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。
なお、各部屋の汚れ度合の高さの評価は、再生作業を行う作業員の目視により行うことができるが、例えば内装表面の写真を撮像し、撮像された写真をコンピュータで解析することにより汚れ度合を評価してもよい。
また、図3に示す例では、住戸ごとに、複数の部屋について、汚れ度合が高い順に洗浄処理液を塗布する例を例示して説明したが、複数の住戸に亘り、即ち複数の住戸がそれぞれ有する複数の部屋に亘り、住戸間を行き来しながら汚れ度合が高い順に洗浄処理液を塗布してもよい。
また、ステップS6では、図3に示すように、和室2(ステップS611)、和室1(ステップS612)の順に、内装素材の表面に洗浄処理を施すことが好ましい。即ち、ステップS6では、複数の部屋のうち内装素材の表面の汚れ度合が低い部屋から順に、即ちステップS4と逆順で、内装素材の表面の洗浄処理を施すことが好ましい。
これにより、各部屋においてステップS6の洗浄処理を行う前に、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を、内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋ほど更に長くすることができる。従って、内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋でも、汚れをより確実に除去することができるので、多数の部屋に亘り、更に優れた仕上がりで内装素材を再生させることができる。また、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋ほど更に長くした場合でも、作業の待ち時間を削減して複数の部屋の洗浄処理を略同時に終了させることができ、更に多数の部屋に亘り、効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。
なお、図3に示す例では、住戸ごとに、複数の部屋に亘り、汚れ度合が低い順に洗浄処理を施す例を例示して説明したが、複数の住戸に亘り、即ち複数の住戸がそれぞれ有する複数の部屋に亘り、住戸間を行き来しながら汚れ度合が低い順に洗浄処理を施してもよい。
<各部屋の内装素材の再生方法の一変形例>
次に、実施の形態の第1変形例として、各部屋の内装素材の再生方法の一変形例について説明する。以下では、図2を用いて説明した2DKの間取りを有する住戸のうち和室1を例示して説明する。
図4は、実施の形態の第1変形例の内装素材の再生方法が適用される部屋を拡大して示す平面図である。図4では、図2に示す住戸の1つの部屋である和室1を拡大して示している。図5は、実施の形態の第1変形例の内装素材の再生方法の一部のステップの詳細の一例を示すフロー図である。図5は、図1に示す内装素材の再生方法が有する複数のステップのうちステップS4について示している。
本第1変形例では、ステップS3において、各部屋で、複数の内壁に張り付けられた内装素材の表面のうち洗浄処理液が塗布される領域を、平面視において時計回転方向又は反時計回転方向のうち予め設定された回転方向に沿って順次移動させながら一周するように、洗浄処理液を塗布する。
例えば図4に示すように、和室1の内壁11に張り付けられた内装素材12の表面を、平面視において時計回転方向に沿って、領域R1、領域R2、領域R3、領域R4、領域R5、領域R6、領域R7及び領域R8に分割して考える。このような場合、図5に示すように、例えば洗浄処理液が塗布される領域を、領域R1(ステップS421)、領域R2(ステップS422)、領域R3(ステップS423)、領域R4(ステップS424)、領域R5(ステップS425)、領域R6(ステップS426)、領域R7(ステップS427)、領域R8(ステップS428)の順に順次移動させながら一周するように、洗浄処理液を塗布する。
複数の住戸を備えた共同住宅が有する複数の部屋の内装素材を再生させる場合、作業を行う部屋が多数に亘るため、複数の作業員が分担して作業する場合があり、ある部屋を担当する作業員が途中で交代する場合がある。このような場合、ステップS4の洗浄処理液を塗布する工程を行う際に、部屋の内壁に張り付けられた内装素材のうち、洗浄処理液が塗布された部分と、洗浄処理液が塗布されていない部分との識別が困難な場合がある。
一方、本第1変形例では、上記したように部屋の内壁に張り付けられた内装素材の表面のうち洗浄処理液が塗布される領域を、平面視において時計回転方向又は反時計回転方向のうち予め設定された回転方向に沿って順次移動させながら、洗浄処理液を塗布する。これにより、ある部屋を担当する作業員が途中で交代した場合でも、部屋の内壁に張り付けられた内装素材のうち、洗浄処理液が塗布された部分と、洗浄処理液が塗布されていない部分とを容易に識別することができるので、多数の部屋に亘り、効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。
さらに、内装素材の表面に塗布する洗浄処理液が所定の色彩(例えば白色)を有することが、より好ましい。このようにすることで、洗浄処理液が塗布された部分と塗布されていない部分とを、より容易に識別することができるようになるため、多数の部屋に亘り、さらに効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。なお、洗浄処理液に付与する色彩については、人工的及び/又は天然成分由来の着色料を使用して付与することもできるし、洗浄処理液を構成する物質が本来備える色彩を利用することもできる。
また、本第1変形例では、ステップS4において、各部屋で、複数の内壁に張り付けられた内装素材の表面のうち洗浄処理液が塗布される領域を、内装素材の表面のうち最も汚れ度合が高い領域から始めて、平面視において時計回転方向又は反時計回転方向のうち予め設定された回転方向に沿って順次移動させながら一周するように、洗浄処理液を塗布することが好ましい。
例えば図4に示した場合において、領域R1、領域R2、領域R3、領域R4、領域R5、領域R6、領域R7及び領域R8のうち、領域R3が内装素材12の表面のうち最も汚れ度合が高い領域である場合を考える。このような場合、例えば洗浄処理液が塗布される領域を、領域R3、領域R4、領域R5、領域R6、領域R7、領域R8、領域R1、領域R2の順に順次移動させながら一周するように、洗浄処理液を塗布する。
このような場合、最初に、内装素材の表面のうち最も汚れ度合が高い領域に洗浄処理液を塗布することができるので、各部屋においてステップS6の洗浄処理を行う前に、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を、内装素材の表面のうち最も汚れ度合が高い領域において最も長くすることができる。従って、内装素材の表面のうち最も汚れ度合が高い領域でも、汚れをより確実に除去することができるので、更に良好な美観を呈するような優れた仕上がりを得ることができる。なお、ステップS4において、最も汚れ度合が高い領域から始めて、予め設定された回転方法に沿って順次移動させながら、洗浄処理液を塗布する方法については、複数の部屋のうちの一部屋のみ行うこともできる。
なお、本第1変形例では、各部屋において、複数の内壁に張り付けられた内装素材の表面のうち洗浄処理液が塗布される領域を、平面視において時計回転方向又は反時計回転方向のうち予め設定された回転方向に沿って順次移動させながら、洗浄処理液を塗布した後、最後に天井に張り付けられた内装素材の表面に、洗浄処理液を塗布することが好ましい。このような順序を設定することにより、作業員が途中で交代した場合でも、部屋の内壁又は天井に張り付けられた内装素材のうち、洗浄処理液が塗布された部分と、洗浄処理液が塗布されていない部分とを更に容易に識別することができるので、多数の部屋に亘り、更に効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。
<複数の住戸に亘る内装素材の再生方法>
次に、実施の形態の第2変形例として、共同住宅の複数の住戸に亘る内装素材の再生方法について説明する。以下では、3階建の各階に2つの住戸を有することにより合計6つの住戸を備える共同住宅を例示して説明する。
図6は、実施の形態の第2変形例の内装素材の再生方法が適用される共同住宅に備えられた各住戸における内装素材の表面の汚れ度合を6段階に分類した表を示す図である。図6では、例えば住戸101を、単に101と表記している。図7は、実施の形態の第2変形例の内装素材の再生方法の一部のステップの詳細の一例を示すフロー図である。図7は、図1に示す内装素材の再生方法が有する複数のステップのうちステップS4からステップS6について示している。
本第2変形例では、共同住宅が、1階に住戸101及び住戸102を備え、2階に住戸201及び住戸202を備え、3階に住戸301及び住戸302を備えるものとする。
また、図6に示すように、予め、各住戸の複数の部屋における内装素材の表面の汚れ度合が、レベル1からレベル6までの6段階に分類されているものとする。レベル1、レベル2、レベル3、レベル4、レベル5、レベル6の順に汚れ度合が高くなるものとする。即ち、レベル1が、最も汚れ度合が低く、最も汚れていないものとし、レベル6が、最も汚れ度合が高く、最も汚れているものとする。また、このような汚れ度合は、図1に示すステップS1で予め評価されているものとする。そして、汚れ度合の評価は、再生作業を行う作業員の目視により行うことができるが、例えば内装表面の写真を撮像し、撮像された写真をコンピュータで解析することにより汚れ度合を評価してもよい。
なお、各住戸の複数の部屋における内装素材の表面の汚れ度合は、同一の条件で比較評価されたものであればよいので、例えば各住戸の複数の部屋の各々における内装素材の表面の汚れ度合の平均値であってもよく、或いは、各住戸の複数の部屋の各々における内装素材の表面の汚れ度合のうちの最大値であってもよい。
ここで、図6に示すように、住戸101における汚れ度合がレベル1であり、住戸102における汚れ度合がレベル6であり、住戸201における汚れ度合がレベル3であり、住戸202における汚れ度合がレベル4であり、住戸301における汚れ度合がレベル5であり、住戸302における汚れ度合がレベル2である、とする。
このような場合、ステップS4では、図7に示すように、住戸102(ステップS431)、住戸301(ステップS432)、住戸202(ステップS433)、住戸201(ステップS434)、住戸302(ステップS435)、住戸101(ステップS436)の順に、内装素材の表面に洗浄処理液を塗布する。即ち、ステップS4では、複数の住戸のうち内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸から順に、内装素材の表面に洗浄処理液を塗布する。
これにより、各住戸においてステップS6の洗浄処理を行う前に、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を、内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸ほど長くすることができる。従って、内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸でも、汚れを確実に除去することができるので、多数の住戸に亘り、優れた仕上がりで内装素材を再生させることができる。また、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸ほど長くした場合でも、複数の住戸の洗浄処理を略同時に終わらせることができ、多数の住戸に亘り、効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。
そして、ステップS5では、まず、汚れ度合の最も低い住戸101について、住戸101の汚れ度合に応じた浸透時間が経過したかどうかを判断し(図7のステップS531)、予め設定された浸透時間が経過したことを条件として(ステップS531の判定においてY)、住戸101に洗浄処理を施す工程であるステップS621に進む。一方、予め設定された浸透時間が経過していない場合は(ステップS531の判定においてN)、浸透時間が経過するまでステップS531を繰り返す。
そして、図7のステップS531の判定において、、住戸101の汚れ度合に応じて予め設定された浸透時間が経過したと判定されると、住戸101について、洗浄処理液が塗布された内装素材の表面の洗浄処理を施す(ステップS621)。
続いて、ステップS532に進み、住戸101の次に汚れ度合の低い住戸302について、住戸302の汚れ度合に応じた浸透時間が経過したかどうかを判断し(ステップS532)、予め設定された浸透時間が経過したことを条件として(ステップS532の判定においてY)住戸302に洗浄処理を施す工程であるステップS622に進む。一方、予め設定された浸透時間が経過していない場合は(ステップS532の判定においてN)、浸透時間が経過するまでステップS532を繰り返す。
そして、このような浸透時間経過の判定と洗浄処理の工程を、すべての住戸について、汚れ度合の低い順番に実行し、最も汚れ度合の高い住戸102に洗浄処理を施す工程が実施されると、洗浄処理を終了する。
このようにすることで、内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸でも、汚れを確実に除去することができる。従って、内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸でも、汚れを確実に除去することができるので、多数の住戸に亘り、優れた仕上がりで内装素材を再生させることができる。また、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸ほど長くした場合でも、作業の待ち時間を削減して複数の住戸の洗浄処理を略同時に終わらせることができ、多数の住戸に亘り、効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。
また、ステップS6では、図7に示すように、住戸101(ステップS621)、住戸302(ステップS622)、住戸201(ステップS623)、住戸202(ステップS624)、住戸301(ステップS625)、住戸102(ステップS626)の順に、内装素材の表面に洗浄処理を施すことが好ましい。即ち、ステップS6では、複数の住戸のうち内装素材の表面の汚れ度合が低い住戸から順に、即ちステップS4と逆順で、内装素材の表面の洗浄処理を施すことが好ましい。
これにより、各住戸においてステップS6の洗浄処理を行う前に、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を、内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸ほど更に長くすることができる。従って、内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸でも、汚れをより確実に除去することができるので、多数の住戸に亘り、更に優れた仕上がりで内装素材を再生させることができる。また、内装素材に洗浄処理液を浸透させるための待ち時間を内装素材の表面の汚れ度合が高い住戸ほど更に長くした場合でも、作業の待ち時間を削減して複数の住戸の洗浄処理を略同時に終了させることができ、更に多数の住戸に亘り、効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生させることができる。
なお、前述した図2及び図3を用いて説明したように、ステップS4では、住戸ごとに、複数の部屋のうち内装素材の表面の汚れ度合が高い部屋から順に、内装素材の表面に洗浄処理液を塗布してもよい。これにより、各住戸において、効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生することができる。
また、前述した図2及び図3を用いて説明したように、ステップS6では、住戸ごとに、複数の部屋のうち内装素材の表面の汚れ度合が低い部屋から順に、内装素材の表面に洗浄処理を施してもよい。これにより、各住戸において、更に効率良く短時間で良好な美観を呈するように内装素材を再生することができる。
<各部屋の内装素材の再生方法の他の変形例>
次に、実施の形態の第3変形例として、各部屋の内装素材の再生方法の他の変形例について説明する。図8は、実施の形態の第3変形例の内装素材の再生方法の一部のステップの一例を示すフロー図である。
本第3変形例では、ステップS6の洗浄処理を行った後、洗浄処理が施された内装素材の表面に塗装を施す(図8のステップS12)。
ステップS12では、例えばホワイト(白)又はアイボリー等の色の水性塗料の塗装を施す。このような方法は、メイク又はタッチアップと称される。
水性塗料として、フレックスエマルジョンペイントを含む水性塗料を用いることができる。フレックスエマルジョンペイントとは、例えば内装クロス(例えばビニルクロス)、壁紙、石膏ボード、ジプトーン(登録商標)等の内装素材への付着性を高めた合成樹脂エマルジョンペイント(例えばアクリル系)であり、内装素材の表面に非常に薄く塗布した場合でも、内装素材の表面に塗膜が途切れた部分を形成しないものである。
内装素材の表面が強く汚れている場合、ステップS6の洗浄処理を行っても内装素材の表面の一部の領域において汚れが容易に除去できない場合がある。
一方、本第3変形例では、ステップS6の洗浄処理を行った後、ステップS12を行う。これにより、ステップS6の洗浄処理を行っても内装素材の表面の一部の領域において汚れが除去できない場合でも、その汚れが残っている領域において、内装素材の表面に塗装を施すことにより、汚れに着色して内装素材を更に良好な美観を呈するように優れた仕上がりを得ることができる。
ステップS12では、汚れが残っている領域において内装素材の表面に塗装を施す場合、塗装と乾燥とを交互に繰り返して何回かに分けて塗り重ねることが好ましい。これにより、汚れが残っている領域の色を、汚れが残っていない領域の色に徐々に近づけることができるので、良好な美観を呈するように内装素材を再生することができる。
また、ステップS12では、補修剤を混合した塗料の塗装を施してもよい。補修剤として、ペネット(登録商標)等を用いることができる。これにより、内装素材の表面の一部の領域において傷等がある場合でも、その傷等がある領域において、内装素材の表面に塗装を施すことにより、傷を目立たなくして内装素材を更に良好な美観を呈するように優れた仕上がりを得ることができる。
本第3変形例では、ステップS11を行った後、内装素材の表面の洗浄処理が施された内壁のうち一部の領域で、内装素材を除去して内壁を露出させ(図8のステップS13)、その後、露出した内壁に、内装素材を補修する補修素材を張り付けてもよい(図8のステップS14)。このような方法は、パッチワークと称される。なお、図8では、ステップS12を行った後、ステップS13及びステップS14を行う例を例示しているが、ステップS6を行った後、ステップS12を行う前に、ステップS13及びステップS14を行ってもよい。
内壁のうち一部の領域において、内装素材が剥がれる等欠損した状態になっていることがある。このような場合、図8のステップS13及びステップS14を行うことにより、内壁のうち一部の領域で内装素材が欠損した場合でも、内装素材が欠損した領域よりも広い領域で、内壁に、内装素材に代えて、新たに補修素材を張り付けることができるので、更に良好な美観を呈するように優れた仕上がりを得ることができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
また、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換を行ってもよい。