JP2019165520A - スイッチング電源装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】装置を小型化しつつ、電磁誘導に由来する放射ノイズを十分に抑制又は低減することができるスイッチング電源装置を提供すること。【解決手段】スイッチング電源装置10において、第1回路26と第2回路28とは対象線路24によって互いに接続されている。ノイズ源22に流れる電流の値をi[A]とし、ノイズ源22のスイッチングに由来するノイズの波長をλ[mm]とするとき、対象線路24は、ノイズ源22からの距離5i/π[mm]により定まる第1領域220と、第1領域220の外側に位置しノイズ源22からの距離λ/2π[mm]により定まる第2領域222の双方を通っている。ノイズ抑制体20は、第2領域222内のみにおいて対象線路24に取り付けられている。ノイズ抑制体20は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、スイッチング電源装置に関し、特に放射ノイズを低減したスイッチング電源装置に関する。
スイッチング電源装置は、そのスイッチング動作に伴ってノイズを放射することが知られている。特許文献1及び特許文献2の夫々は、このような放射ノイズを抑制又は低減することができるスイッチング電源装置を開示している。
特許文献1のスイッチング電源装置は、ノイズを放射する線路に設けられた高周波電流抑制材を有している。また、特許文献2のスイッチング電源装置は、スイッチング素子とゲート駆動回路との間を接続するゲート駆動ケーブルの途中に設けられたコモンモードノイズ低減手段を有している。
特開2007−43096号公報 特開2011−244574号公報
スイッチング電源装置から放射されるノイズには、予定された電流が線路に流れることによって生じるノイズだけでなく、ノイズ源の電磁誘導によって予定外の電流が線路に流れることによって生じるノイズも存在する。
電磁誘導に由来するノイズを抑制する方法の一つとして、線路をノイズ源から遠ざけて配置する方法がある。しかしながら、この方法は、装置の大型化を招くという問題点がある。そのため、線路をノイズ源の近くに配置することで装置を小型化しつつ、電磁誘導に由来するノイズを抑制することが求められている。
特許文献1は、電磁誘導に由来するノイズについて開示していない。しかしながら、特許文献1の高周波電流抑制材は、電磁誘導に由来するノイズの抑制にも有効と思われる。ここで、特許文献1の高周波電流抑制材は、放射ノイズ発生領域に設けられている。このことから、電磁誘導に由来するノイズを抑制する場合、高周波電流抑制材は、ノイズ源のできるだけ近くに設けられものと推測される。ところが、軟磁性体である高周波電流抑制材は、非常に強い誘導磁界中に置かれると磁気飽和し、十分なノイズ抑制効果を発揮することができない。換言すると、高周波電流抑制材は、ノイズ源に近すぎる位置に配置されると、十分なノイズ抑制効果を発揮することができない。このように、特許文献1のスイッチング電源装置には、電磁誘導に由来するノイズを十分に抑制又は低減することができないという問題点がある。
一方、特許文献2は、スイッチング電源装置内において、電磁結合により様々な場所から放射ノイズが発生し得ることを開示している。そして、特許文献2は、そのような放射ノイズを低減するコモンモードノイズ低減手段として、リアクトル及び(フェライト)コアを開示している。しかしながら、リアクトル及び(フェライト)コアは、その特性上GHz帯のノイズに対する低減効果を期待することができない。そのうえ、リアクトル又は(フェライト)コアの使用は、スイッチング電源装置の大型化を招く。このように、特許文献2のスイッチング電源装置には、GHz帯のノイズを十分に抑制又は低減することができず、加えて装置が大型であるという問題点がある。
本発明は、装置を小型化しつつ、電磁誘導に由来するノイズを十分に抑制又は低減することができるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
本発明は、第1のスイッチング電源装置として、整流回路と、スイッチング回路と、第1回路と、第2回路と、対象線路と、ノイズ抑制体とを備えるスイッチング電源装置であって、
前記整流回路は、交流電源に接続されており、
前記スイッチング回路は、前記整流回路に接続されており、
前記第1回路と前記第2回路とは前記対象線路によって互いに接続されており、
前記スイッチング回路によってスイッチングされる電流の値をi[A]とし、前記スイッチング回路のスイッチングに由来するノイズの波長をλ[mm]とするとき、前記対象線路は、前記スイッチング回路からの距離5i/π[mm]により定まる第1領域と、前記第1領域の外側に位置し前記スイッチング回路からの距離λ/2π[mm]により定まる第2領域の双方を通っており、
前記ノイズ抑制体は、前記第2領域内のみにおいて前記対象線路に取り付けられており、
前記ノイズ抑制体は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下である
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第2のスイッチング電源装置として、第1のスイッチング電源装置であって、
前記ノイズ抑制部材は、磁性粉末がバインダ内に分散された構造を有している
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第3のスイッチング電源装置として、第1又は第2のスイッチング電源装置であって、
前記ノイズ抑制部材の厚みtは、20μm以上である
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第4のスイッチング電源装置として、第1から第3までのスイッチング電源装置のうちのいずれか一つであって、
前記ノイズ抑制部材の厚みtは、10000μm以下である
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第5のスイッチング電源装置として、第4のスイッチング電源装置であって、
前記ノイズ抑制部材の厚みtは、1000μm以下である
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第6のスイッチング電源装置として、第1から第5までのスイッチング電源装置のうちのいずれか一つであって、
前記ノイズ抑制部材は、複合磁性シートである
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第7のスイッチング電源装置として、第1から第6までのスイッチング電源装置のうちのいずれか一つであって、
前記対象線路は信号線であり、
前記ノイズ抑制部材は、前記対象線路の導線から0.05mm以上5mm以下の距離だけ離れて配置されている
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第8のスイッチング電源装置として、第7のスイッチング電源装置であって、
前記ノイズ抑制部材は、前記対象線路の前記導線から0.15mm以上0.2mm以下の距離だけ離れて配置されている
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第9のスイッチング電源装置として、第1から第8までのスイッチング電源装置のうちのいずれか一つであって、
前記対象線路は信号線であり、
前記ノイズ抑制部材の複素誘電率の実数成分ε’が1000以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.5以下である
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第10のスイッチング電源装置として、第9のスイッチング電源装置であって、
前記ノイズ抑制部材の前記複素誘電率の前記実数成分ε’が300以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する前記虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.1以下である
スイッチング電源装置を提供する。
また、本発明は、第11のスイッチング電源装置として、第1から第10までのスイッチング電源装置のうちのいずれか一つであって、
前記対象線路の延びる方向において、前記ノイズ抑制部材の長さは20mm以上である
スイッチング電源装置を提供する。
さらに、本発明は、第12のスイッチング電源装置として、内部回路群と、スイッチング回路と、対象線路と、ノイズ抑制体とを備えるスイッチング電源装置であって、
前記内部回路群は、整流回路を含み、
前記整流回路は、交流電源に接続されており、
前記スイッチング回路は、前記整流回路に接続されており、
前記内部回路群に含まれる回路のうちの一つを第1回路とするとき、前記対象線路は前記第1回路を第2回路に接続しており、
前記第2回路は、前記スイッチング電源装置に接続される外部回路であるか又は前記内部回路群に含まれる回路のうちの別の一つであり、
前記スイッチング回路によってスイッチングされる電流の値をi[A]とし、前記スイッチング回路のスイッチングに由来するノイズの波長をλ[mm]とするとき、前記対象線路は、前記スイッチング回路からの距離5i/π[mm]により定まる第1領域と、前記第1領域の外側に位置し前記スイッチング回路からの距離λ/2π[mm]により定まる第2領域の双方を通っており、
前記ノイズ抑制体は、前記第2領域内のみにおいて前記対象線路に取り付けられており、
前記ノイズ抑制体は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下である
スイッチング電源装置を提供する。
本発明のスイッチング電源装置において、対象線路はノイズ源であるスイッチング回路に最も近い第1領域を通過している。これにより、装置の小型化を実現することができる。また、本発明のスイッチング電源装置において、ノイズ抑制体は、第1領域の外側にある第2領域内のみにおいて対象線路に取り付けられている。換言すると、ノイズ抑制体は、磁気飽和を起こす可能性のある領域への配置を避けつつ、電磁誘導に由来するノイズを十分に抑制又は低減することができる領域のみに配置されている。これにより、本発明のスイッチング電源装置は、小型化を実現するとともに、電磁誘導に由来するノイズを十分に抑制又は低減することができる。
本発明の一実施の形態によるスイッチング電源装置を示すブロック図である。 図1のスイッチング電源装置の一部をモデル化した部分ブロック図である。 (a)〜(d)は、図1の装置に含まれる対象線路とノイズ抑制体との組み合わせ例を示す断面模式図である。 (a)〜(c)は、図1の装置に含まれる対称線路とノイズ抑制体との別の取り付け例を示す断面模式図である。 図1のスイッチング電源装置に含まれるノイズ抑制体の構造を示す断面模式図である。 図1のスイッチング電源装置に含まれるノイズ抑制体の複素透磁率と周波数との関係を示すグラフである。実数成分μ’を破線で示し、虚数成分μ”を実線で示している。
図1を参照すると、本発明の第1の実施の形態によるスイッチング電源装置10は、内部回路群を構成する複数の内部回路を備えている。詳しくは、スイッチング電源装置10は、整流回路102、インバータ主回路104、直流電源106、制御回路108、DC−DCコンバータ112及びゲートドライバ114を備えている。制御回路108は、PWM(Pulse Width Modulation)信号を生成するPWM回路110を有している。また、インバータ主回路104は、複数のスイッチング素子(図示せず)を含むスイッチング回路116を有している。スイッチング回路116に含まれるスイッチング素子は、特に限定されないが、SiCやGaNからなるパワートランジスタ(高速スイッチング素子)であってよい。
図1に示されるように、スイッチング電源装置10は、また、内部回路間を接続する線路及び内部回路と外部回路との間を接続する線路を備えている。詳しくは、スイッチング電源装置10は、外部回路である交流電源12と負荷14との間に接続されている。より詳しくは、整流回路102は交流電源12に接続されるとともに、インバータ主回路104に接続されている。インバータ主回路104は、負荷14に接続されている。直流電源106は、制御回路108とDC−DCコンバータ112とに接続されている。制御回路108は、インバータ主回路104とゲートドライバ114とに接続されている。DC−DCコンバータ112は、ゲートドライバ114に接続されている。ゲートドライバ114は、インバータ主回路104に接続されている。
図1に示されるように、スイッチング電源装置10は、さらに、線路のうちの少なくとも一つに取り付けられたノイズ抑制体20を備えている。本実施の形態において、ノイズ抑制体20は、制御回路108とインバータ主回路104とを接続する線路にのみ取り付けられている。但し、本発明は、これに限られない。ノイズ抑制体20は、電磁誘導に由来するノイズを放射する可能性のあるあらゆる線路に取り付けられてよい。
図1から理解されるように、スイッチング電源装置10は、交流電源12からの入力電力を所定周波数の出力電力に変換して負荷14に供給する。詳しくは、整流回路102は、交流電源12からの交流を整流し、インバータ主回路104へ直流を供給する。直流電源106は、制御回路108とDC−DCコンバータ112の夫々に直流電力を供給する。制御回路108は、インバータ主回路104からの検出信号に基づいてPWM回路110を制御する。PWM回路110は、所定周期のパルス信号をパルス幅変調したPWM信号を生成し、ゲートドライバ114へ出力する。DC−DCコンバータ112は、直流電源106の出力電圧をゲートドライバ114に適した電圧に変換して供給する。ゲートドライバ114は、PWM回路110から出力されるPWM信号に応じてゲート駆動信号を生成し、インバータ主回路104へ出力する。インバータ主回路104は、ゲートドライバ114からのゲート駆動信号に応じてスイッチング素子(図示せず)を動作させ、整流回路102からの直流を交流に変換して負荷14へ供給する。
インバータ主回路104のスイッチング回路116は、所定周波数でスイッチング動作を行う。このスイッチング動作に伴い、スイッチング回路116は、所定周波数の高調波に由来するノイズを発生する。このノイズは、スイッチング回路116の周囲に誘導磁界を発生させ、スイッチング回路116の近くに配置された線路(対象線路)にノイズを発生させる。その結果、線路はアンテナとして作用し、ノイズを電波として放射する。このように、スイッチング回路116は、その周囲に配置された線路にノイズを発生させるノイズ源となり得る。線路に電磁誘導に由来するノイズを発生させないように、線路をスイッチング回路116から遠ざけることも考えられる。しかし、この方法はスイッチング電源装置10を大型化させる。そこで、本実施の形態では、線路をノイズ源から遠ざけて配置することを行なわず、スイッチング電源装置10を小型化しつつノイズを抑制する。詳しくは、スイッチング回路116の近くを通過する線路にノイズ抑制体20を取り付けて、電磁誘導に由来するノイズを抑制する。
本実施の形態において、ノイズ抑制体20は、前述のようにインバータ主回路104と制御回路108とを接続する線路に取り付けられている。但し、本発明はこれに限られない。ノイズ抑制体20は、特定の回路間を接続する線路ではなく、ノイズ源の近くを通過する線路に取り付けられる。ここで、図1は、実際の線路の配置を表していない。実際のスイッチング電源装置10においては、どの線路がスイッチング回路116の近くを通過するかはその設計に依存する。したがって、どの線路もスイッチング回路116の近くを通過する可能性がある。それゆえ、ノイズ抑制体20は、図1に示される線路のうちのどの線路にも取り付けられる可能性がある。そこで、以下ではスイッチング電源装置10の一部をモデル化した部分モデルについて説明する。
図2を参照すると、スイッチング電源装置10の部分モデルは、ノイズ源22と、線路(対象線路)24と、第1回路26と、第2回路28と、ノイズ抑制体20とを備えている。本実施の形態において、ノイズ源22は、図1のスイッチング回路116である。但し、本発明は、これに限られない。PWM回路110やDC−DCコンバータ112もノイズ源22となる可能性がある。
図2に示されるように、線路24は、第1回路26と第2回路28とを互いに接続し、ノイズ源22の近くを通過している。線路24は、信号線又は電源線である。線路24は、例えば、回路基板パターン、ケーブル、又はハーネス等である。また、線路24は、複数のケーブル又はハーネスと回路基板パターン(中継基板)等との組み合わせであってもよい。第1回路26及び第2回路28の夫々は、図1のスイッチング電源装置10に含まれる回路のうち、スイッチング回路116以外のいずれかの回路に対応する。本実施の形態において、第1回路26は制御回路108であり、第2回路28はインバータ主回路104の内部回路(図示せず)である。但し、本発明は、上述したように、これに限られない。また、第1回路26と第2回路28とは、互いに独立した基板に形成された回路であってもよいし、同一基板上に形成された回路であってもよい。
図2に示されるように、本実施の形態において、ノイズ源22の周りには、ノイズ源22からの距離に基づいて第1領域220及び第2領域222が規定されている。ノイズ源22が発生する誘導磁界H[A/m]は、ノイズ源22からの距離a[m]に反比例するので、第1領域220及び第2領域222は、ノイズ源22が発生する誘導磁界Hの強度に依存しているともいえる。第1領域220は、ノイズ源22に隣接している。したがって、第1領域220内では、ノイズ源22の動作によって比較的強い誘導磁界が発生する。第2領域222は、第1領域220の外側に位置し、第1領域220に隣接している。第2領域222は、第1領域220よりもノイズ源22から離れている。したがって、第2領域222内では、ノイズ源22の動作によって比較的弱い誘導磁界が発生する。
図2に示されるように、線路24は、第1領域220を通過している。したがって、線路24は比較的強い誘導磁界の影響を受け、線路24には電磁誘導に由来するノイズが発生する。ノイズ抑制体20は、磁気飽和を生じるような強い誘導磁界を避けるため、第1領域220には設けられていない。その一方で、線路24に発生するノイズ及び線路24から放射されるノイズを十分に抑制又は低減するため、ノイズ抑制体20は、第2領域222内において線路24に取り付けられている。以下、ノイズ抑制体20に言及しつつ、第1領域220及び第2領域222について説明する。
ノイズ抑制体20は、後述するように磁性粉末202をバインダ204中に分散させた複合構造を有している(図5参照)。このような複合構造を持つノイズ抑制体20は、概ね100[A/m]の外部磁界によって磁気飽和する。ノイズ抑制体20が磁気飽和すると、ノイズを十分に抑制又は低減することができない。換言すると、ノイズ抑制体20がノイズ源22に近すぎるとノイズを十分に抑制又は低減することができない。そこで、本実施の形態では、ノイズ抑制体20が磁気飽和を引き起こすと想定される領域を第1領域220として規定する。詳しくは、ノイズ源22からの距離がa[m]の地点における誘導磁界H[A/m]は、ノイズ源22に流れる電流をi[A]としたとき、H=i/2πa[A/m]で表される。これより、外部磁界Hが100[A/m]となるのは、ノイズ源22からの距離aがa=i/200π[m]=5i/π[mm]の位置である。そこで、本実施の形態では、ノイズ源22を中心とする半径d1=5i/π[mm]の領域を第1領域220と規定する。ノイズ抑制体20は、この第1領域220の外側に配置される。
一方、ノイズ抑制体20がノイズ源22から遠過ぎてもノイズを十分に抑制又は低減することができない。そこで、本実施の形態において、十分なノイズ抑制効果が期待される領域を第2領域222として規定する。詳しくは、ノイズ源22に流れる電流をi[A]とし、その動作に由来するノイズの波長をλ[mm]としたとき、ノイズ源22を中心とする半径d2=λ/2π[mm]の領域内であって、第1領域220の外側の領域を第2領域222と規定する。ノイズ抑制体20は、この第2領域222に配置される。
以上のように、本実施の形態において、第1領域220は、ノイズ源22に流れる電流をi[A]としたとき、ノイズ源22からの距離5i/π[mm]により定まる領域である。また、第2領域222は、ノイズ源22に流れる電流をi[A]とし、その動作に由来するノイズの波長をλ[mm]としたとき、ノイズ源22からの距離λ/2π[mm]により定まる領域である。本実施の形態において、ノイズ源22はインバータ主回路104のスイッチング回路116であり、ノイズ源22に流れる電流iは、スイッチング回路116のスイッチング素子(図示せず)に流れる電流(ドレイン電流)である。換言すると、電流iは、スイッチング素子によってスイッチングされる電流である。また、ノイズ源22から放射されるノイズの周波数が500MHz〜3GHzの場合、ノイズの波長λは、600mm〜100mmである。
ノイズ抑制体20は、線路24の少なくとも一部を覆うように設けられる。詳しくは、ノイズ抑制体20は、線路24の延びる方向(長さ方向)及び周方向の夫々において、線路24の少なくとも一部を覆うように設けられる。線路24の延びる方向において、ノイズ抑制体20の長さは20mm以上あればよい。また、線路24の周方向において、ノイズ抑制体20は、線路24の概ね半分以上を覆っていればよい。
図3(a)〜(d)に示されるように、線路24がフレキシブルフラットケーブル(FFC)240の場合、ノイズ抑制体20は、FFC240の一方の主面又は両方の主面に設けることができる。但し、ノイズ抑制体20は、FFC240の全周を囲うように設けられてもよい。なお、FFC240の構成は、特に限定されない。例えば、図3(a)及び図3(c)に示されるように、FFC240は、一本の信号線242の両側に二本のグランド線244を平行に配置し、その周囲を絶縁被膜246で覆ったものでもよい。また、図3(b)及び図3(d)に示されるように、一本の信号線242と一本のグランド線244とを平行に配置し、その周囲を絶縁被膜246で覆ったものでもよい。あるいは、夫々が被膜で覆われた複数の導線を平行に配置して一体化したものでもよい。
図4(a)示されるように、線路24が複数のケーブル340を含むハーネス34の場合、ノイズ抑制体20は、周方向において、ハーネス34の全体を覆うように設けることができる。また、図4(b)に示されるように、ノイズ抑制体20は、ハーネス34を構成する各ケーブル340の全周を囲うように設けることができる。さらに、図3(c)に示されるように、ノイズ抑制体20は、周方向において、ハーネス34の一部を覆うように設けることができる。ケーブル340の構成は、特に限定されないが、図4(a)〜(c)に示されるように、一本の信号線342と一本のグランド線344とを平行に配置し、その周囲を絶縁被膜346で覆ったものであってよい。
図4(a)及び図4(b)に示されるように、線路24の全周を囲うように設けられたノイズ抑制体20は、閉磁路を形成するので、電磁誘導に由来するノイズの発生を効果的に抑制することができる。その一方で、ノイズ抑制体20は、図4(c)に示されるように閉磁路を形成していないとき(開磁路)でも、高い電磁ノイズ抑制効果を発揮する。これは、ノイズ抑制体20が、以下に説明する複合構造を有しているからである。
図5に示されるように、ノイズ抑制体20は、磁性粉末202がバインダ204内に分散され且つバインダ204により結合された構造(複合構造)を有している。磁性粉末202として、球状又は扁平状の磁性粉末を用いることができる。ノイズ抑制体20に、反磁界による複素透磁率の低下が極めて少ないという特徴を持たせるには、扁平状の磁性粉末を用いることが好ましい。しかしながら、より高い周波数において高い複素透磁率を得る目的で、若しくは低い誘電率を得る目的で球状の磁性粉末を用いてもよい。いずれにしても、ノイズ抑制の対象となる電磁ノイズの周波数等に応じて磁性粉末202を選択することができる。
図6に示されるように、本実施の形態のノイズ抑制体20において、その複素透磁率の虚数成分μ”は、UHFから3GHzの帯域においても高い。具体的には、所望のノイズ抑制効果を得るため、ノイズ抑制体20は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下である。また、線路24が信号線の場合は、伝搬する信号の劣化(信号レベルの低下、信号波形の鈍り)を抑えるため、ノイズ抑制体20の複素誘電率の実数成分ε’は1000以下であり、且つ複素誘電率の実数成分ε’に対する虚数成分ε”の比ε”/ε’は0.5以下であることが望ましい。また、ノイズ抑制体20の複素誘電率の実数成分ε’は300以下であり、且つ複素誘電率の実数成分ε’に対する虚数成分ε”の比ε”/ε’は0.1以下であることがより好ましい。
ノイズ抑制体20の形態は特に限定されないが、リング状の成形体や柔軟性のあるシート状であってよい。シート状のノイズ抑制体20は、ノイズ抑制シート(NSS:Noise Suppression sheet)と呼ばれることがある。ノイズ抑制体20がシート状であれば、線路24の様々な形状及び引き回し状態に容易に対応することができる。例えば、ノイズ抑制体20を線路24に貼り付けたり、巻き付けたりすることができる。そのため、シート状のノイズ抑制体20は、既存の装置に敷設することが容易である。ノイズ抑制体20の厚みtは、20μm以上あればよい。ノイズ抑制体20に柔軟性を持たせるため、厚みtは、10000μm以下が望ましく、1000μm以下であることがより望ましい。また、ノイズ抑制効果を考慮すると、ノイズ抑制体20の厚みtは、100μm以上300μm以下であることがより好ましい。また、ノイズ抑制体20がリング状であれば、線路24の端部付近にのみノイズ抑制体20を敷設する場合に、手軽に敷設することができる。
ノイズ抑制体20は、ノイズ抑制効果を高めるため、線路24の導線の近くに配置されなければならない。その一方で、線路24が信号線の場合、ノイズ抑制体20が線路24の導線に近すぎると導線を伝搬する信号を劣化させる。そこで、本実施の形態において、ノイズ抑制体20は、線路24の導線から0.05mm以上5mm以下の距離だけ離れて配置される。より好ましくは、ノイズ抑制体20は、線路24の導線から0.15mm以上0.2mm以下の距離だけ離れて配置される。このようなノイズ抑制体20の配置は、ノイズ抑制体20を線路24に貼り付ける際に、所定の厚みを持つ両面テープを用いたり、接着剤を所定の厚さに塗布したりすることによって、容易に実現することができる。また、線路24の被膜の厚みが適切ならば、ノイズ抑制体20を直接巻き付けるようにしてもよい。
シート状のノイズ抑制体20は、例えば、磁性粉末202をバインダ204(図5参照)に分散させた塗液を作製し、プラスチックシート等の基材(図示せず)の表面上に離型層(図示せず)を介して成膜し、熱間形成することで得ることができる。
バインダ204の材料としては、特に限定されないが、ゴム、エラストマー、樹脂などの高分子バインダが好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。特に、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、ニトリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリウレタンが好ましい。また、磁性粉末202の材料として、特に限定されないが、軟磁性材料から構成される軟磁性粉末が好ましい。このような軟磁性材料から構成される軟磁性粉末としては、特に限定されないが、例えば、磁性ステンレス(Fe−Cr−Al−Si系合金)、センダスト(登録商標)等のFe−Si−Al系合金、パーマロイ(Fe−Ni系合金)、ケイ素銅(Fe−Cu−Si系合金)、Fe−Si系合金、Fe−Si−B(−Cu−Nb)系合金、Fe−Ni−Cr−Si系合金、Fe−Si−Cr系合金、Fe−Si−Al−Ni−Cr系合金、Mo−Ni−Feやアモルファス合金等が挙げられる。このような軟磁性粉末は1種単独でも、または複数種組み合わせて用いても良い。
磁性粉末202は、上述した軟磁性材料を粉砕、延伸、引裂加工、またはアトマイズ造粒等を行うことにより粗大な粉末を作製し、これをボールミル、アトライタ、ピンミルなどのメディア攪拌型粉砕機により微粉砕し、または、扁平状に加工し、その後焼鈍処理して得ることができる。得られた磁性粉末202をバインダ204中に分散させて塗液を作製し、その塗液をドクターブレード法で基材上に形成された離型層の上に成膜したうえで熱間成形を行う。こうして、シート状のノイズ抑制体20である複合磁性シートが得られる。
本実施の形態において、ノイズ抑制体20は、ノイズ源22からの電磁誘導により線路24に引き起こされるノイズを抑制又は低減し、さらに、線路24から周辺の回路や機器へ放射される放射ノイズを抑制又は低減する。これにより、ノイズ源22となる回路の近く(第1領域220)を通過するように線路24を配置することが可能となり、スイッチング電源装置10の小型化を実現できる。また、線路24の配置(配線)の自由度も向上する。しかも、ノイズ抑制体20は、線路24の長さ方向及び周方向の夫々に関し、一部に設けられればよいので、小型で取り扱いが容易でありかつ低コストである。
以上、本発明について実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の変形・変更が可能である。たとえば、上記実施の形態において、ノイズ抑制体20は、第2領域222内の一か所に設けられているが、第1領域220を挟むように第2領域222内の二か所に設けられてよい。
また、上記実施の形態では、インバータ主回路104のスイッチング回路116がノイズ源22である場合について説明したが、インバータ主回路104のスイッチング回路116以外の回路がノイズ源22となる場合にも、本発明は適用可能である。その場合も、ノイズ抑制体20は、ノイズ源22からの距離に基づいて定まる第1領域220及び第2領域222を通過する線路24に対して、第2領域222内のみにおいて取り付けられる。
10 スイッチング電源装置
102 整流回路
104 インバータ主回路(スイッチング回路)
106 直流電源
108 制御回路
110 PWM回路
112 DC−DCコンバータ
114 ゲートドライバ
116 スイッチング回路
12 交流電源
14 負荷
20 ノイズ抑制体
22 ノイズ源
24 線路(対象線路)
26 第1回路
28 第2回路
202 磁性粉末
204 バインダ
220 第1領域
222 第2領域
240 フレキシブルフラットケーブル(FFC)
242 信号線
244 グランド線
246 絶縁被膜
34 ハーネス
340 ケーブル
342 信号線
344 グランド線
346 絶縁被膜
図4(a)示されるように、線路24が複数のケーブル340を含むハーネス34の場合、ノイズ抑制体20は、周方向において、ハーネス34の全体を覆うように設けることができる。また、図4(b)に示されるように、ノイズ抑制体20は、ハーネス34を構成する各ケーブル340の全周を囲うように設けることができる。さらに、図4(c)に示されるように、ノイズ抑制体20は、周方向において、ハーネス34の一部を覆うように設けることができる。ケーブル340の構成は、特に限定されないが、図4(a)〜(c)に示されるように、一本の信号線342と一本のグランド線344とを平行に配置し、その周囲を絶縁被膜346で覆ったものであってよい。

Claims (12)

  1. 整流回路と、スイッチング回路と、第1回路と、第2回路と、対象線路と、ノイズ抑制体とを備えるスイッチング電源装置であって、
    前記整流回路は、交流電源に接続されており、
    前記スイッチング回路は、前記整流回路に接続されており、
    前記第1回路と前記第2回路とは前記対象線路によって互いに接続されており、
    前記スイッチング回路によってスイッチングされる電流の値をi[A]とし、前記スイッチング回路のスイッチングに由来するノイズの波長をλ[mm]とするとき、前記対象線路は、前記スイッチング回路からの距離5i/π[mm]により定まる第1領域と、前記第1領域の外側に位置し前記スイッチング回路からの距離λ/2π[mm]により定まる第2領域の双方を通っており、
    前記ノイズ抑制体は、前記第2領域内のみにおいて前記対象線路に取り付けられており、
    前記ノイズ抑制体は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下である
    スイッチング電源装置。
  2. 請求項1に記載のスイッチング電源装置であって、
    前記ノイズ抑制部材は、磁性粉末がバインダ内に分散された構造を有している
    スイッチング電源装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のスイッチング電源装置であって、
    前記ノイズ抑制部材の厚みtは、20μm以上である
    スイッチング電源装置。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載のスイッチング電源装置であって、
    前記ノイズ抑制部材の厚みtは、10000μm以下である
    スイッチング電源装置。
  5. 請求項4に記載のスイッチング電源装置であって、
    前記ノイズ抑制部材の厚みtは、1000μm以下である
    スイッチング電源装置。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一つに記載のスイッチング電源装置であって、
    前記ノイズ抑制部材は、複合磁性シートである
    スイッチング電源装置。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一つに記載のスイッチング電源装置であって、
    前記対象線路は信号線であり、
    前記ノイズ抑制部材は、前記対象線路の導線から0.05mm以上5mm以下の距離だけ離れて配置されている
    スイッチング電源装置。
  8. 請求項7に記載のスイッチング電源装置であって、
    前記ノイズ抑制部材は、前記対象線路の前記導線から0.15mm以上0.2mm以下の距離だけ離れて配置されている
    スイッチング電源装置。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか一つに記載のスイッチング電源装置であって、
    前記対象線路は信号線であり、
    前記ノイズ抑制部材の複素誘電率の実数成分ε’が1000以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.5以下である
    スイッチング電源装置。
  10. 請求項9に記載のスイッチング電源装置であって、
    前記ノイズ抑制部材の前記複素誘電率の前記実数成分ε’が300以下であり、且つ前記複素誘電率の前記実数成分ε’に対する前記虚数成分ε”の比ε”/ε’が0.1以下である
    スイッチング電源装置。
  11. 請求項1から請求項10までのいずれか一つに記載のスイッチング電源装置であって、
    前記対象線路の延びる方向において、前記ノイズ抑制部材の長さは20mm以上である
    スイッチング電源装置。
  12. 内部回路群と、スイッチング回路と、対象線路と、ノイズ抑制体とを備えるスイッチング電源装置であって、
    前記内部回路群は、整流回路を含み、
    前記整流回路は、交流電源に接続されており、
    前記スイッチング回路は、前記整流回路に接続されており、
    前記内部回路群に含まれる回路のうちの一つを第1回路とするとき、前記対象線路は前記第1回路を第2回路に接続しており、
    前記第2回路は、前記スイッチング電源装置に接続される外部回路であるか又は前記内部回路群に含まれる回路のうちの別の一つであり、
    前記スイッチング回路によってスイッチングされる電流の値をi[A]とし、前記スイッチング回路のスイッチングに由来するノイズの波長をλ[mm]とするとき、前記対象線路は、前記スイッチング回路からの距離5i/π[mm]により定まる第1領域と、前記第1領域の外側に位置し前記スイッチング回路からの距離λ/2π[mm]により定まる第2領域の双方を通っており、
    前記ノイズ抑制体は、前記第2領域内のみにおいて前記対象線路に取り付けられており、
    前記ノイズ抑制体は、500MHzから3GHzまでの複素透磁率の虚数成分μ”が5以上30以下である
    スイッチング電源装置。
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