JP2007059456A - 電波吸収体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 厚さを薄型化しつつ電磁波の吸収範囲を広帯域化することができる電波吸収体を提供する。
【解決手段】 電磁波の入射面から見て順に、多孔磁性体層2、抵抗体層3、及び多孔磁性体層4からなる損失層と、導体層5とを略板状に積層した。また、多孔磁性体層2,4は、多孔質の誘電体からなる多孔質バインダーに磁性体微粒子を分散して構成した。
【選択図】 図5

Description

本発明は、広帯域の電波吸収体に関する。
近年、無線LAN(Local Area Network)等、無線通信による情報伝送技術がオフィス、工場、倉庫等において利用されている。このようなオフィス等においては、外部からの電磁波を遮蔽して電波妨害、干渉、あるいは盗聴等を防止するために、導体板を用いた電磁波の遮蔽材を壁、天井、及び床に配設することにより電磁遮蔽が行われている。
しかし、導体板は電磁波の反射体であるために、遮蔽材として導体板のみを用いた場合には、屋内において電気機器から生じた不要輻射等の電磁波や無線機器から送信された無線信号は、ほとんど減衰しないまま導体板により反射を繰り返す結果、電波障害を生じることとなる。特に、無線信号が壁面等の導体板で反射すると、導体板に入射する電磁波と反射される電磁波とが干渉して電界の低下点が発生したり、デジタル無線の無線信号が導体板で多重反射することにより分散遅延が生じてデジタル誤り率が増大する等の通信障害が発生することとなる。
そこで、このような障害を回避するために、反射導体による遮蔽材ではなく、損失誘電体を用いた電波吸収体を遮蔽材として壁、天井、及び床に用いる方法が知られている。このような遮蔽材として用いられる電波吸収体は、無線LAN等の無線通信に用いられる2.45GHzや、4.9GHz〜5.7GHzの周波数帯において、電磁波を吸収するようにされたものが知られている。
一方、2011年には、テレビ放送のデジタル化が予定されており、デジタル放送化によって不要となる周波数帯域が通信用に開放され、無線通信に割り当てられる周波数帯域が1GHz〜10GHzの広帯域になることが予想される。そうすると、上述のような特定の周波数帯において電磁波を吸収するようにされた電波吸収体は、広帯域化された無線通信の周波数帯域に対応することができない。
そこで、1GHz〜10GHzの周波数範囲の大部分、例えば1GHz〜10GHzの70%以上の周波数範囲で電磁波を吸収する広帯域の電波吸収体の実現が望まれている。このような広帯域で電磁波を吸収する電波吸収体としては、図16に示すように、発泡ウレタンにカーボングラファイトを混入して得られた発泡損失誘電体を、楔形にした部材を反射導体の前面に配置したものがある(例えば、特許文献1参照。)。このような電波吸収体は、主に電界強度の測定を行う電波暗室に用いられており、その厚みは約600mmにされている。
特開平9−199885号公報
ところで、図16に示すような電波吸収体は、一般のオフィス等においては、その厚みによってオフィス等の容積が大きく占有されるため、設置が困難であるという不都合があった。
本発明は、このような問題に鑑みて為された発明であり、厚さを薄型化しつつ電磁波の吸収範囲を広帯域化することができる電波吸収体を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明に係る電波吸収体は、略板状の形状を有し、一方面から入射した電磁波を吸収する電波吸収体であって、前記一方面から順に、誘電体、磁性体及び抵抗体を含む損失層と導体層とを備えることを特徴としている。
上記構成によれば、電波吸収体に入射した電磁波は、導体層によって反射されると共に抵抗体によって周波数依存性が低減された状態で誘電体による誘電損失と磁性体による磁気損失とで減衰されるので、厚さを薄型化しつつ電磁波の吸収範囲を広帯域化することができる。
また、上述の電波吸収体において、前記抵抗体は、前記導体層と対向して層状に設けられていることを特徴としている。上記構成によれば、層状の抵抗体は所望の抵抗値を均一に得ることが容易であるので、周波数依存性の安定的な低減が容易となる。
また、上述の電波吸収体において、前記抵抗体は、前記損失層の入射面インピーダンスZiを以下の式で表した場合における単位厚さ当たりの損失項αの値を、1GHz〜10GHzのうち大部分の周波数範囲において10以上とするべく抵抗値が設定されているものであることを特徴としている。
Figure 2007059456
上記構成によれば、上記Tanhの項の、周波数に対する振動が低減されるので、入射面インピーダンスZiの周波数依存性が低減される。
また、上述の電波吸収体において、前記誘電体は、多孔質の誘電体素材からなり、前記磁性体は、前記多孔質の誘電体素材内部に分散された磁性体微粒子からなるものであることを特徴としている。上記構成によれば、磁性体の表面積を増大させることにより高周波の電磁波に対して磁性体が機能し得ると共に、誘電率を低下させることができる。
また、上述の電波吸収体において、前記損失層は、前記一方面から順に、低誘電率の低誘電率層と高透磁率の高透磁率層とが積層されて構成されていることを特徴としている。上記構成によれば、導体層近傍の磁界強度が増大する位置に高透磁率層が配置され、導体層から離れた電界強度が増大する位置に低誘電率層が配置されるので、電波吸収体全体の等価的な透磁率が上昇し、誘電率が低下して複素透磁率μ/複素誘電率εが増大される結果、損失層の入射面インピーダンスZiが大気の波動インピーダンスに近づけられ、電波吸収体に入射した電磁波の減衰率が増大される。
また、上述の電波吸収体において、前記高透磁率層は、誘電体素材に磁性体微粒子が分散されたものであることを特徴としている。上記構成によれば、導体層近傍の磁界強度が増大する位置に、表面積が増大されて高周波の電磁波に対して機能する磁性体が配置されるので、磁気損失により電波吸収体に入射した電磁波の減衰率が増大される。
また、上述の電波吸収体において、前記高透磁率層は、前記低誘電率層側に、多孔質の誘電体素材に磁性体微粒子が分散された層を備えることを特徴としている。上記構成によれば、高透磁率層における電界強度の高い位置に多孔質にされて低誘電率にされた誘電体素材が配置されるので、電波吸収体全体の等価的な誘電率の上昇が抑制されることにより複素透磁率μ/複素誘電率εの低下が抑制される。
また、上述の電波吸収体において、前記低誘電率層は、発泡性の合成樹脂材料を用いて構成されていることを特徴としている。上記構成によれば、低誘電率層が低誘電率にされる。
また、上述の電波吸収体において、前記損失層は、前記一方面側に抵抗層をさらに備え、前記抵抗層は、前記損失層の入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスと実質的に同一にさせるべく抵抗値が設定されていることを特徴としている。上記構成によれば、抵抗層に設定する抵抗値によって、損失層の入射面インピーダンスZiのインピーダンスを調整することができるので、入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスに近似させ、電波吸収体に入射した電磁波の減衰率を増大させることが容易である。
また、上述の電波吸収体において、前記抵抗体は、前記損失層の入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスと実質的に同一にさせるべく前記損失層中に分散されていることを特徴としている。上記構成によれば、損失層中に分散された抵抗体によって、入射面インピーダンスZiのインピーダンスを調整することができるので、上記抵抗層を設ける必要がない。
このような構成の電波吸収体によれば、電波吸収体に入射した電磁波は、導体層によって反射されると共に抵抗体によって周波数依存性が低減された状態で誘電体による誘電損失と磁性体による磁気損失とで減衰されるので、厚さを薄型化しつつ電磁波の吸収範囲を広帯域化することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。まず、本発明に係る電波吸収体における実施形態の具体的な構成を説明する前に、各実施形態に共通する基本原理について説明する。
板状の電波吸収体における入射面インピーダンスZiは、下記の式(1),(2)によって示される(例えば、オーム社刊 内藤嘉之著 電波吸収体、森北出版 橋本修著 高周波領域に於ける材料定数測定法)。
Figure 2007059456
式(1)において、Zは大気の波動インピーダンスで377Ω、μは電波吸収体の材料の複素透磁率で、μ=μ’−jμ”であり、εは電波吸収体の材料の複素誘電率で、ε=ε’−jε”であり、λは入射する電磁波の波長である。そして、式(1)において、扱いを単純化するために(με)の平方根を(α+jβ)とすると、式(1)は、式(2)のように表される。式(2)において、αは電波吸収体の単位厚さ当たりの損失項、βは電波吸収体の単位厚さ当たりの位相項である。以下の説明において、電波吸収体の単位厚さ当たりの損失項α、及び位相項βを単に損失項α、位相項βと略記する。
また、Zi=Zとなれば電波吸収体は完全吸収体となるが、その実現は工学的に容易ではないので、通常このような電波吸収体に入射する電磁波の反射減衰量Γは、下記の式(3)で表される。
Figure 2007059456
式(3)は、ZiとZとが近似すれば電波吸収体に入射した電磁波の反射量が低減し、電波吸収体による電磁波の減衰量が増大することを示している。
次に、式(2)におけるTanh{(2π/λ)・(α+jβ)}の振る舞いについて説明する。図1は、Tanh{(2π/λ)・(α+jβ)}の周波数応答を示すグラフである。図1において、実線はTanh{(2π/λ)・(α+jβ)}によって示される入射面正規化インピーダンスZmの実数項Re(Zm)を示し、破線は入射面正規化インピーダンスZmの虚数項Im(Zm)を示している。また、図1(a)は、損失項αが小さい場合、例えば損失項α=3の場合を示しており、図1(b)は、損失項αが大きい場合、例えば損失項α=30の場合を示している。
図1(a)に示すように、損失項αが例えば3のように小さい値をとる材料を用いて電波吸収体を構成した場合には、Tanh{(2π/λ)・(α+jβ)}は周期関数に近く、周波数に対して大きく振動する。
そして、電波吸収体として従来用いられている損失誘電体においては、損失項αは小さく、例えば3に近い値となり、図1に示すように、Tanh{(2π/λ)・(α+jβ)}が周波数(例えば1GHz〜10GHz)に対して大きく振動することとなる。そうすると、式(2)から、入射面インピーダンスZiもまた周波数に対して大きく振動するから、広い周波数範囲(例えば1GHz〜10GHzの大部分、例えば70%以上)において、Zi=Z、あるいはZiとZとを近似させた状態を維持することができず、従って、このような損失誘電体を用いて広帯域の電波吸収体を構成することは困難である。
一方、図1(b)に示すように、損失項αが例えば30のように大きい値をとる材料を用いて電波吸収体を構成することができれば、Tanh{(2π/λ)・(α+jβ)}は、例えば1GHzにおいて図1(a)に示すα=3の場合よりも振動が低減され、例えば周波数3GHz以上の領域において、ほぼ入射面正規化インピーダンスZmの実数項Re(Zm)は「1」に収斂し、入射面正規化インピーダンスZmの虚数項Im(Zm)は「0」に収斂する。すなわち、Tanh{(2π/λ)・(α+jβ)}は、損失項αを増大させると周波数に対する依存性が低減され、特に周波数が高くなるほど周波数の依存性が低下する。
従って、式(2)から、損失項αを増大させることにより、Tanh{(2π/λ)・(α+jβ)}はおよそ「1」に収斂するから、入射面インピーダンスZiの周波数依存性が低減され、広い周波数範囲に渡って入射面インピーダンスZiと大気の波動インピーダンスZとを近似させた状態を維持することができ、広帯域に渡って電波吸収体における減衰量を増大させることができる。
なお、図1(b)では、損失項αが30の場合において入射面インピーダンスZiの周波数依存性が低減される例を示したが、式(2)から損失項αが20以上であれば、、実用上十分な広帯域化の効果が得られることが予測され、さらに後述するように損失項αを10以上にすることにより実用上十分な広帯域化の効果が得られることが、実験的に確認できた。
しかし、従来、広い周波数範囲(1GHz〜10GHzの大部分である例えば70%以上、例えば4GHz〜10GHzの周波数範囲)に渡って損失項αが10以上となる電波吸収体を得ることは困難であった。そこで、本発明は、電波吸収体における損失項αを増大させる手段、及び入射面インピーダンスZiと大気の波動インピーダンスZとを近似させる手段を提供することにより、電波吸収体の広帯域化を実現するものである。
次に、1GHz〜10GHzのような高周波、いわゆるマイクロ波帯における電波吸収体について説明する。図2は、反射導体に電磁波が入射した場合における反射導体近傍の電磁界分布を概念的に示す説明図である。図2に示すように、反射導体に入射した電磁波の電界成分は反射導体によって短絡されるため、反射導体面においてゼロとなり、反射導体面からλ(波長)/4だけ離れた位置において最大となる。一方、磁界成分は、反射導体面において最大となることが知られている。
そうすると、従来の電波吸収体に用いられている損失誘電体は、電界に対して作用するものであるから厚さを薄くして反射導体の前面に配置すると、電界が弱い領域に配置されることとなり、誘電体が機能せず、入射した電磁波を十分減衰させることができない。例えば、オフィス等の壁面に電波吸収体を配設する場合、実用的には電波吸収体の厚さを30mm以下にする必要があると考えられる。ところが、例えば1GHzにおけるλ/4は75mmとなるから、厚さ30mmの損失誘電体を反射導体の前面に配置しても、電界が弱い領域に配置され、誘電体が機能せず、入射した電磁波を十分減衰させることができない。
そこで、反射導体の前面、すなわち磁界が最大となる位置に強磁性体を配置し、磁気損失により電磁波を減衰させることが考えられる。しかし、マイクロ波中に強磁性体を配置すると、表皮効果によって強磁性体のミクロン以下の表面にしか電磁界が作用せず、磁性体として機能しない。
そのため、誘電体素材に強磁性体の微粒子が分散されたシート部材を磁界が最大となる反射導体の前面位置に配置することが考えられる。図3は、このような強磁性体微粒子を誘電体バインダーで固定した磁性体微粒子シート101の構成の一例を示す説明図である。図3に示す磁性体微粒子シート101は、例えば、鉄やアモルファス合金等の強磁性体からなる微粒子102と、誘電体からなるバインダー103とから構成される。そして、微粒子102と微粒子102との間には、バインダー103が入り込んで微粒子102同士が非接触にされ、磁性体微粒子シート101全体として、誘電体(絶縁体)になるようにされている。
この磁性体微粒子シート101は、例えば、磁気テープ等と同様の公知の方法により製造が可能であり、例えば、微粒子102に対して濡れ性の良い液状のバインダー103の中に所定の重量比、例えば90%程度の重量比で直径が20〜30μm程度の微粒子102を入れることにより、バインダー103が濡れによって微粒子102の表面をコーティングしつつその隙間に入り込んで微粒子102同士が非接触にされた材料が得られる。さらにこの材料をローラ等を用いてシート状に引き伸ばした後に、液状のバインダー103を硬化させることによって、シート状にされた磁性体微粒子シート101を得ることができる。
一般に、強磁性体はマイクロ波に対して反射導体として働くため、マイクロ波は強磁性体材料の中に浸入することができない。一方、磁性体微粒子シート101は、強磁性体である微粒子102を含みながら、全体としては絶縁体であるため、マイクロ波が磁性体微粒子シート101の中まで浸入可能にされている。また、微粒子102の微粒子化によって強磁性体の表面積が増大するため、表皮効果が作用しても磁性体として機能する表皮層104の体積を増大させて、磁性体微粒子シート101に入射した電磁波を磁気損失により減衰させることができる。
図4は、微粒子102の平均直径を20μm、厚さ2μmの扁平鉄微粒子とし、バインダー103との重量比を8:1として磁性体微粒子シート101を構成した場合における複素誘電率ε=ε’−jε”と、複素透磁率μ=μ’−jμ”とを周波数0.1GHz〜10GHzの範囲で測定したデータを示すグラフである。図4に示すグラフ中、「o」は実測値であり、実線はその線形回帰による近似関数を示している。図4(a)はε’、図4(b)はε”、図4(c)はμ’、図4(d)はμ”を示し、図4(a)の縦軸は比誘電率、図4(c)の縦軸は比透磁率を示している。
そうすると、例えば図4(a)と図4(c)とから、周波数1GHzにおいて、μ’は約10であるのに対し、ε’は約90となり、上述のように構成された磁性体微粒子シート101におけるμ/εは、「1」よりも非常に小さい。
従って、式(2)において、(μ/ε)の平方根は、「1」よりも非常に小さい値となる結果、Tanh{(2π/λ)・(α+jβ)}が「1」となる条件(損失項αが30以上になる条件)においてもZiとZとを近似させることはできず、磁性体微粒子シート101を反射導体の前面に配置しても、広帯域で十分な減衰量を得られる電波吸収体を構成することはできない。
例えばオフィス等に用いられる電波吸収体に必要とされる電磁波の減衰量は、実用的には10dB程度と想定されるが、実験によれば、図4に示す特性の磁性体微粒子シート101を反射導体の前面に配置した構成によっては、10dBの減衰量が得られる比帯域幅(帯域巾/動作中心周波数)が0.5%〜3%となり、目標とする1〜10GHzの大部分の周波数範囲において十分な減衰量(10dB)が得られるような広帯域の電波吸収体は実現できない。
また、単一の材料からなる電波吸収体の電波吸収体の単位厚さ当たりの損失項αは、以下のようにして求められる。すなわち、上記式(1)(2)から、下記の式(4)(5)(6)が得られ、電波吸収体の単位厚さ当たりの損失項αが式(7)によって近似される。
Figure 2007059456
そうすると、電波吸収体の複素透磁率μ=μ’−jμ”及び複素誘電率ε=ε’−jε”を例えば、ベクトル・ネットワーク・アナライザ(Vector Network Analyzer)を用いて測定し、μ”とε”とから式(7)を用いて電波吸収体の単位厚さ当たりの損失項αを得ることができる。
そこで、以下に示す本発明の実施形態に係る電波吸収体によって、電波吸収体における損失項αを増大させると共に、入射面インピーダンスZiと大気の波動インピーダンスZと近似させることにより、電波吸収体の広帯域化が可能となる。
(第1実施形態)
図5は、本発明の第1の実施形態に係る電波吸収体の構成の一例を示す断面図である。図5に示す電波吸収体1は、電磁波の入射方向から見て多孔磁性体層2、抵抗体層3(抵抗体)、多孔磁性体層4、及び導体層5の順に積層されて構成されている。導体層5は、略板状の金属板等により構成された反射導体である。抵抗体層3は、例えばカーボン等を用いて構成された抵抗シートであり、導体層5との間に多孔磁性体層4を挟んで導体層5と対向するように層状に設けられている。また、多孔磁性体層2の厚さは10mm、抵抗体層3の抵抗値は370Ω、多孔磁性体層4の厚さは5mmにされている。
抵抗体層3は、例えば薄い布やプラスチックシートにカーボン塗料を吹き付けた抵抗シートで、数百Ω程度の抵抗値ではマイクロ波での表皮効果はほとんど現れないので、ミリ波程度の周波数までは純抵抗と近似することができ、直流で測定してマイクロ波に適用することができる。抵抗体層3の抵抗値は、シート抵抗であり、Ω/口、すなわち縦横同一寸法(非定尺基準(Dimensionless))で表された抵抗値である。
また、抵抗体層3の抵抗値としては、370Ωのものを用いる例を示したが、大気の波動インピーダンス377Ωの1/2である188.5Ωから、大気の波動インピーダンス377Ωの2倍である754Ωまでの間の抵抗値のものを用いることができる。
多孔磁性体層2,4は、図6に示すように、多孔質の誘電体からなる多孔質バインダー21に磁性体微粒子22が分散されたものであり、例えばフジ化成(米子市)製のEMパネルを用いることができる。EMパネルは、熱可塑性の合成樹脂からなるテープ状の基材表面にフェライト等の軟磁性体の微粉末を塗布して構成される録音テープや録画テープ等の種々の磁気テープ(すなわち、熱可塑性の合成樹脂と軟磁性体とを含んだもの)を細かく切断し、この切断物をカールさせて小さな中空円筒状にした後に加熱圧縮成型することにより、合成樹脂中に空気と磁性体微粒子粉とが混在するようにされている。この場合、多孔磁性体層2,4と抵抗体層3とが、請求項における損失層に相当している。
これにより、多孔磁性体層2,4は、図3に示す磁性体微粒子シート101と同様、磁性体微粒子22の表皮層23の体積を増大させて、多孔磁性体層2,4に入射したマイクロ波を磁気損失により減衰させることができる。また、誘電体の多孔質バインダー21が多孔質であることから誘電率εdが低下して透磁率(約2.4)の約1/2となり、εd=1.3となっている。そのため、例えば図3、図4に示す磁性体微粒子シート101よりも(μ/ε)が増大し、式(2)において入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスZに近づけることができる結果、式(3)において反射減衰量Γが低下し、すなわち多孔磁性体層2,4における電磁波の減衰量を増大させることができる。
また、抵抗体層3によって、損失項αが増大されることにより、式(2)における入射面インピーダンスZiの周波数依存性が低減され、広い周波数範囲に渡って入射面インピーダンスZiと大気の波動インピーダンスZとを近似させた状態を維持することができ、従って広帯域に渡って電波吸収体における減衰量を増大させることができる。
図7(a)は、図5に示す電波吸収体1における1GHz〜10GHzの入射電磁界に対する減衰量を実験的に測定した結果を示すグラフである。なお、比較のため、電波吸収体1において抵抗体層3を設けない場合の減衰量の測定結果を図7(b)に示す。
図7(a)に示すように、電波吸収体1によって、1GHz〜10GHzのおよそ90%の周波数範囲であるおよそ2GHz〜10GHzの周波数帯域において、実用的に十分な減衰量である10dB程度以上の減衰量が得られることが確認された。これにより、図16に示す背景技術に係る電波吸収体より薄い約15mmの厚さで、電磁波の吸収範囲を広帯域化することができた。なお、電波吸収体1の厚さは15mm程度に限られず、さらに厚みを増せば、電磁波の減衰量を増大し得る。
また、図7(b)に示すように、抵抗体層3を設けない場合には、周波数に対して減衰量が振動し、およそ4.4GHz〜7GHzの周波数範囲で減衰量が10dBを下回り、広帯域の電磁波吸収特性を得ることができなかった。すなわち抵抗体層3を設けない場合には、損失項αが小さいため式(2)において入射面インピーダンスZiが周波数λに対して振動する結果、式(3)における反射減衰量Γもまた振動し、すなわち減衰量が振動するので、電磁波の吸収範囲を広帯域化することができない。
しかし、図5に示す電波吸収体1では、抵抗体層3によって損失項αが増大され、式(2)における入射面インピーダンスZiの振動が低減されるので、広い周波数範囲に渡って入射面インピーダンスZiと大気の波動インピーダンスZとを近似させた状態を維持することができ、従って広帯域に渡って電波吸収体における減衰量を増大させることができる。
なお、多孔磁性体層2,4としてEMパネルを用いたが、例えば誘電性素材である発泡スチロールや発泡ウレタン等の発泡性の合成樹脂材料に所定量のフェライト微粉末等の磁性付与素材を混在させて成型することにより多孔質にしたものを用いてもよい。
また、抵抗体として抵抗シートで構成された抵抗体層3を用いたが、抵抗体によって損失項αを増大させ、例えば損失項αを10以上にするべく損失を増大させることができればよいので、例えば抵抗体層3を設けず、多孔磁性体層2,4を一体にしたものに例えばカーボン等の抵抗体の微粉末を混入、分散することで、損失項αを増大させてもよい。但し、抵抗体の微粉末を発泡性の合成樹脂材料等に混入することで所定の抵抗値を均一に得ることは、製造上の困難性を伴う。一方、抵抗体層3に用いる抵抗シートは、所定の抵抗値を均一かつ精度よく製造することが、抵抗体の微粉末を発泡性の合成樹脂材料等に混入する場合よりも容易である。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態に係る電波吸収体の構成の一例を示す断面図である。図8に示す電波吸収体1aは、電磁波の入射方向から見て抵抗体層6(抵抗層)、低誘電率層7、抵抗体層8(抵抗体)、多孔磁性体層4、磁性体微粒子層9、及び導体層5の順に積層されて構成されている。この場合、抵抗体層6、低誘電率層7、抵抗体層8、多孔磁性体層4及び磁性体微粒子層9が損失層に相当し、多孔磁性体層4及び磁性体微粒子層9が高透磁率層に相当している。また、磁性体微粒子層9は誘電体素材に磁性体微粒子が分散された例えば図3に示す磁性体微粒子シート101によって構成され、多孔磁性体層4は多孔質の誘電体素材に磁性体微粒子が分散された例えばEMパネルによって構成されている。
抵抗体層6,8は、例えばカーボン等を用いて構成された抵抗シートであり、抵抗体層6は損失層における電磁波の入射側に設けられ、抵抗体層8は導体層5との間に多孔磁性体層4と磁性体微粒子層9とを挟んで導体層5と対向するように層状に設けられている。
低誘電率層7は、低誘電率の材料によって構成され、例えば比誘電率εが約1.05の発泡スチロールや発泡ウレタン等の発泡性の合成樹脂材料を用いて構成されている。
また、抵抗体層6,8の抵抗値は520Ω、低誘電率層7の厚さは20mm、多孔磁性体層4の厚さは5mm、磁性体微粒子層9の厚さは0.2mmにされている。
図9は、図8に示す電波吸収体1aの動作原理を説明するための説明図である。図9において、反射導体に電磁波が入射した場合における反射導体近傍の電磁界分布を概念的に示している。そして、図9に示すように、反射導体に入射した電磁波の電界成分は反射導体によって短絡されるため、反射導体面においてゼロとなり、反射導体面からλ(波長)/4だけ離れた位置において最大となる。一方、磁界成分は、反射導体面において最大となる。
そこで、電波吸収体1aは、反射導体となる導体層5と接する位置、すなわち磁界成分が最大、電界成分が略ゼロとなる位置に極めて薄い厚さ0.2mmのシート状の磁性体微粒子層9を設けている。そうすると、磁性体微粒子層9として用いられる磁性体微粒子シート101は、上述したように、材料としては比透磁率よりも比誘電率が大きいためにμ/εが「1」よりも小さいが、磁界成分が最大となる位置に配置されることによって比透磁率が等価的に高められる一方、電界成分が略ゼロとなる位置に配置されることにより比誘電率が等価的に小さくなり、磁性体微粒子層9におけるμ/εが等価的に「1」より大きくなる。
また、導体層5から磁性体微粒子層9を介して設けられた多孔磁性体層4は、導体層5から離れることによって電界が上昇する位置に配置されているが、多孔質バインダー21によって低誘電率にされているので等価的に比誘電率が減少し、磁性体微粒子22によって比透磁率が増大し、μ/εを等価的に増大させる。
そして、低誘電率層7は、多孔磁性体層4よりもさらに電界強度が上昇する位置に配置されているが、比誘電率の低い材料で構成されているため、電波吸収体1a全体の誘電率の上昇を低減することができる。このように、電磁波の入射面から順に、低誘電率の低誘電率層7、低誘電率であってかつ透磁率の高い多孔磁性体層4、多孔磁性体層4より透磁率の高い磁性体微粒子層9を積層することにより、全体としてμ/εを等価的に「1」より大きくすることができる。
また、磁性体微粒子層9は、透磁率が高く、特に1GHz近傍における電磁波の吸収特性を補強する作用があるが、誘電率もまた高いので、厚みが大きいと図6,図7に示すようにμ/εが減少する。しかし、電波吸収体1aにおいては、磁性体微粒子層9を極めて薄い厚さ0.2mmのシート状にすることによって、磁界成分が最大かつ電界成分が略ゼロとなる位置に配置し、電波吸収体1a全体の等価的なμ/εを低下させることなく磁性体微粒子層9の磁気損失により電磁波を減衰させることができる。
ここで、電波吸収体1aにおける抵抗体層6を除く低誘電率層7、抵抗体層8、多孔磁性体層4、磁性体微粒子層9及び導体層5における入射面インピーダンスをZi’とする。そうすると、電波吸収体1aにおいては、図5に示す電波吸収体1と同様に、抵抗体層8によって損失項αが増大し、式(2)におけるTanh{(2π/λ)・(α+jβ)}はおよそ「1」に収斂するから、μ/εが等価的に「1」より大きくなれば、Zi’>Zとなる。
そして、抵抗体層6の抵抗をRとすると、抵抗体層6を除く部分の入射面インピーダンスZi’と並列接続される関係にあるから、インピーダンスZiは、以下の式(8)で表される。
Figure 2007059456
すなわち、Zi’>Zとすれば、抵抗体層6を設けることにより入射面インピーダンスZiをZi’より小さくして、大気の波動インピーダンスZ(377Ω)と一致させることができる。例えば、低誘電率層7、抵抗体層8、多孔磁性体層4、磁性体微粒子層9及び導体層5によってZi’=1370Ωとなれば、520Ωの抵抗体層6によって、入射面インピーダンスZiをほぼ大気の波動インピーダンスZ(377Ω)と一致させることができる。
これにより、電波吸収体1aは、図16に示す背景技術に係る電波吸収体より薄い例えば約25mmの厚さで損失項αを増大させ、かつ入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスZと近似させることにより、広帯域に渡って電磁波の減衰量を増大させることができる。
図10は、図8に示す電波吸収体1aにおける0.8GHz〜3.2GHzの入射電磁界に対する減衰量を実験的に測定した結果を示すグラフである。図10に示すように、0.9GHz以上の周波数帯域において、比帯域200%で10dB以上の減衰量を確保できることが確認できた。なお、図10には、3.2GHzまでの測定結果しか示していないが、10GHzまでの周波数範囲においても10dB以上の減衰量を確保できる。
また、将来的に無線通信に割り当てられる見込みの1GHz〜10GHzの周波数帯域に限定されず、例えばレーダー等で使用される14GHzの周波数に対しても同程度の減衰量を確保することができ、さらに理論上、損失項αを増大させた状態で周波数が増大すれば、式(2)におけるTanh{(2π/λ)・(α+jβ)}はおよそ「1」に収斂するから周波数の依存性がなくなるので、本発明に係る電波吸収体の適用範囲に周波数の上限はない。
なお、低誘電率層7として、発泡性の合成樹脂材料を用いる例を示したが、例えば誘電率の低いEMパネル等、多孔磁性体層4と同様の材料を用いて構成してもよく、石膏等、他の低誘電率の材料を用いてもよい。また、高透磁率層を多孔磁性体層4と磁性体微粒子層9とによって構成する例を示したが、図11に示す電波吸収体1bのように、高透磁率の磁性体層11を多孔磁性体層4及び磁性体微粒子層9のうちいずれか一つによって構成し、電磁波の入射方向から順に、抵抗体層6、低誘電率層7、抵抗体層8、磁性体層11、及び反射導体である導体層5の順に積層してもよい。
また、損失項αを増大させる抵抗体層8を一層のみ備える構成を示したが、抵抗体層8を複数設けてもよい。また、図12に示す電波吸収体1cのように、電磁波の入射方向から順に、抵抗体層6、低誘電率層7、磁性体層11、及び導体層5の順に積層し、抵抗体層8のような層間の抵抗層を設けず、低誘電体層7や磁性体層11に例えばカーボン等の抵抗体の微粉末を混入、分散することで、損失項αを増大させてもよい。
また、図8,図11,図12に示す電波吸収体1a,1b,1cにおいて、電磁波入射面の抵抗体を備えず、損失層(低誘電体層、磁性体層)に例えばカーボン等の抵抗体の微粉末を混入、分散することで入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスZと近似させるようにしてもよい。例えば、損失層の入射面インピーダンスが大気の波動インピーダンスZと実質的に同一、例えば±20%の範囲内であれば、電磁波入射面に抵抗体を備えなくても実用上十分な減衰量が得られる。
上述したように、図11、図12に示すように反射導体から離れた位置に低誘電体層を配置し、反射導体近傍に磁性体を配置すること、あるいはバインダを多孔質にすることによって低誘電率にしたEMパネルのような磁性体を反射導体の前面に配置することによって、電波吸収体全体の総合的な誘電率を低下せしめる方法は、電波吸収体を広帯域化するために有効である。
例えば、図3に示す磁性体微粒子シート101や、図6に示す多孔磁性体層2,4は、図4(b),(d)に示すような損失項ε”,μ”を有しているが、製造上損失項ε”,μ”を制御することは困難であり、また損失項ε”,μ”は周波数により変動する。
一方、抵抗体層8のような抵抗シートは周波数の依存性がないので、図8に示すように電波吸収体の層間に抵抗体層8を設けて損失項αを増大させ、式(2)における入射面インピーダンスZiの周波数依存性を低下させることが、電波吸収体を広帯域化するための有効な手段となる。
さらに、電界の強い位置に低誘電率の誘電体を配置し、磁界の強い位置に高透磁率の磁性体を配置することで電波吸収体の総合的な(μ/ε)を増大させることにより、入射面インピーダンスを増大させて大気の波動インピーダンスより大きくし、その入射面に抵抗シートを配置して合成入射面インピーダンスを大気の波動インピーダンスと近似させることで電磁波の減衰量を増大させ、実質的に同一、例えば±20%の範囲とすることで、効果的に電磁波の減衰量を増大させることができる。
(第3実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態に係る電波吸収体の構成の一例を示す断面図である。図13に示す電波吸収体1dは、電磁波の入射方向から見て抵抗体層6a(抵抗層)、低誘電率層12、抵抗体層8a、低誘電率層13、磁性体微粒子層9a、及び導体層5の順に積層されて構成されている。この場合、抵抗体層6、低誘電率層12、抵抗体層8、低誘電率層13及び磁性体微粒子層9aが損失層に相当し、磁性体微粒子層9aが高透磁率層に相当している。
抵抗体層6a,8aは、抵抗体層6,8と同様の抵抗シートにより構成されており、シート抵抗が430Ωにされている。磁性体微粒子層9aは、2GHz近傍の電波吸収特性を補強するもので、磁性体微粒子層9と同様の磁性体微粒子シートにより構成されており、厚さが0.4mmにされている。低誘電率層12,13は、JIS A 6901の石膏ボード(いわゆる建築用のプラスターボード)であり、比誘電率ε=1.6、厚さがそれぞれ10mmの低誘電体である。その他の構成は図8に示す電波吸収体1aと同様であるのでその説明を省略する。
図5に示す電波吸収体1の多孔磁性体層2,4、及び図8に示す電波吸収体1aの多孔磁性体層4として用いられているEMパネルは、種々の磁気テープの切断物をカールさせて小さな中空円筒状にした後に加熱圧縮成型したものであり、パネルの厚さ方向に比重が不均一、すなわち複素透磁率μ及び複素誘電率εが不均一な材料となっている。
そして、このように厚さ方向に不均一な材料については上述のベクトル・ネットワーク・アナライザにより複素透磁率μ及び複素誘電率εを測定することが困難であるため、電波吸収体1,1aについては、複素透磁率μ及び複素誘電率εを測定して式(7)を用いて実際の損失項αを取得することが困難である。
そこで、低誘電率層12,13として石膏ボードを用いた電波吸収体1dの例によって、抵抗体層8と損失項αとの関係を説明する。図13に示す電波吸収体1dのように、多層構造により構成された電波吸収体の伝送マトリクス(対称四端子網)は、以下の式(9)によって示される。
Figure 2007059456
ここで、dは誘電体である低誘電率層12,13の厚さ、εは低誘電率層12,13の比誘電率、λは波長、tは磁性体微粒子層9aの厚さ、Rは抵抗体層8aのシート抵抗である。
式(9)において、(i)項は低誘電率層12の伝送マトリクスであり、(ii)項は、抵抗体層8aの伝送マトリクスであり、(iii)項は低誘電率層13の伝送マトリクスであり、(iv)項は磁性体微粒子層9aの伝送マトリクスである。このように、層構造により構成された電波吸収体の伝送マトリクスは、各層の伝送マトリクスを乗算することによって得られ、図13に示す電波吸収体1dと異なる構成の電波吸収体であっても、その層構造を各層の伝送マトリクスの積として表すことができる。
そして、式(9)で表される伝送マトリクス(対称四端子網)の単位厚さ当たりの損失項αは、以下の式(10)で示される。
Figure 2007059456
ここで、図13に示す電波吸収体1dと、比較のため電波吸収体1dから抵抗体層8aを除いた場合とにおける複素透磁率μ及び複素誘電率εを実験的に測定し、得られた複素透磁率μ及び複素誘電率εに基づき式(9)(10)から求めた単位厚さ当たりの損失項αを、図14に示す。図14において、実線は図13に示す電波吸収体1d(抵抗体層8a有り)の損失項αであり、破線は電波吸収体1dから抵抗体層8aを除いた場合(抵抗体層8a無し)の損失項αである。
図14に示すように、抵抗体層8a無しの場合には、5.2GHz〜8.0GHzの周波数範囲において損失項αが10を下回っている。一方、電波吸収体1d(抵抗体層8a有り)の場合には、2.6GHz〜10GHzを超える周波数範囲において損失項αが10以上となり、抵抗体層8aによる損失項αの増大効果が確認された。
図15は、図13に示す電波吸収体1d(抵抗体層8a有り)と、電波吸収体1dから抵抗体層8aを除いたもの(抵抗体層8a無し)について、2GHz〜10GHzの入射電磁界に対する減衰量を実験的に測定した結果を示すグラフである。電波吸収体1d(抵抗体層8a有り)の減衰量を実線で、電波吸収体1dから抵抗体層8aを除いたもの(抵抗体層8a無し)の減衰量を破線で示している。
図15に示すように、抵抗体層8a無しの場合には、3.8GHz〜8.6GHzの周波数範囲において減衰量が10dBを下回り、10dBの減衰量が確保できる周波数範囲は、1.9GHz〜3.8GHz及び8.6GHz〜10GHzの不連続かつ1GHz〜10GHzにおける30%程度の周波数範囲にすぎない。一方、電波吸収体1d(抵抗体層8a有り)の場合には、2.5GHz〜10GHzの周波数範囲、すなわち1GHz〜10GHzにおける75%程度の周波数範囲において実用的な減衰量である10dB以上の減衰量が得られ、抵抗体層8aによる電磁波の吸収範囲の広帯域化の効果が確認された。
また、図14に示すように、1GHz〜10GHzのうち大部分である3GHz〜10GHzの周波数範囲において損失項αの値を10以上とするように抵抗体層8aの抵抗値を設定すること(図14の例では430Ω)により、電波吸収体の電磁波の吸収範囲を広帯域化できることが確認できた。なお、図13に示す電波吸収体1dでは、3GHz〜10GHzの周波数範囲において損失項αの値を10以上とするようにしたが、損失項αを10以上とする周波数範囲は3GHz〜10GHzに限られず、電波吸収体に要求される仕様上の周波数範囲に応じて損失項αを10以上とする周波数範囲を設定すればよい。また、電波吸収体1dは、厚さが略25mmであり、図16に示す電波吸収体よりも厚さを薄型化しつつ電磁波の吸収範囲を広帯域化することができた。
式(2)の周波数応答を示すグラフである。 反射導体に電磁波が入射した場合における反射導体近傍の電磁界分布を概念的に示す説明図である。 強磁性体微粒子を誘電体バインダーで固定した磁性体微粒子シートの構成の一例を示す断面図である。 図3に示す磁性体微粒子シートの複素誘電率と複素透磁率とを示すグラフである。 本発明の第1の実施形態に係る電波吸収体の構成の一例を示す断面図である。 図5に示す多孔磁性体層の構成の一例を示す断面図である。 (a)は、図5に示す電波吸収体における1GHz〜10GHzの入射電磁界に対する減衰量を実験的に測定した結果を示すグラフである。(b)は、図5に示す電波吸収体において抵抗体層を設けない場合の減衰量の測定結果を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る電波吸収体の構成の一例を示す断面図である。 図8に示す電波吸収体の動作原理を説明するための説明図である。 図8に示す電波吸収体における0.8GHz〜10GHzの入射電磁界に対する減衰量を実験的に測定した結果を示すグラフである。 図8に示す電波吸収体の変形例を示す断面図である。 図8に示す電波吸収体の変形例を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態に係る電波吸収体の構成の一例を示す断面図である。 図13に示す電波吸収体の損失項αを示すグラフである。 図13に示す電波吸収体における入射電磁界に対する減衰量を実験的に測定した結果を示すグラフである。 背景技術に係る電波吸収体の断面図である。
符号の説明
1,1a,1b,1c,1d 電波吸収体
2,4 多孔磁性体層
3,6,6a,8,8a 抵抗体層
5 導体層
7 低誘電率層
9 磁性体微粒子層
21 多孔質バインダー
22 磁性体微粒子
23 表皮層
101 磁性体微粒子シート
102 微粒子
103 バインダー
104 表皮層

Claims (10)

  1. 略板状の形状を有し、一方面から入射した電磁波を吸収する電波吸収体であって、前記一方面から順に、誘電体、磁性体及び抵抗体を含む損失層と導体層とを備えることを特徴とする電波吸収体。
  2. 前記抵抗体は、前記導体層と対向して層状に設けられていることを特徴とする請求項1記載の電波吸収体。
  3. 前記抵抗体は、前記損失層の入射面インピーダンスZiを以下の式で表した場合における単位厚さ当たりの損失項αの値を、1GHz〜10GHzのうち大部分の周波数範囲において10以上とするべく抵抗値が設定されているものであることを特徴とする請求項1又は2記載の電波吸収体。
    Figure 2007059456
  4. 前記誘電体は、多孔質の誘電体素材からなり、前記磁性体は、前記多孔質の誘電体素材内部に分散された磁性体微粒子からなるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電波吸収体。
  5. 前記損失層は、前記一方面から順に、低誘電率の低誘電率層と高透磁率の高透磁率層とが積層されて構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電波吸収体。
  6. 前記高透磁率層は、誘電体素材に磁性体微粒子が分散されたものであることを特徴とする請求項5記載の電波吸収体。
  7. 前記高透磁率層は、前記低誘電率層側に、多孔質の誘電体素材に磁性体微粒子が分散された層を備えることを特徴とする請求項5又は6記載の電波吸収体。
  8. 前記低誘電率層は、発泡性の合成樹脂材料を用いて構成されていることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の電波吸収体。
  9. 前記損失層は、前記一方面側に抵抗層をさらに備え、前記抵抗層は、前記損失層の入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスと実質的に同一にさせるべく抵抗値が設定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電波吸収体。
  10. 前記抵抗体は、前記損失層の入射面インピーダンスZiを大気の波動インピーダンスと実質的に同一にさせるべく前記損失層中に分散されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電波吸収体。
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