JP2014199902A - 線路、スパイラルインダクタ、ミアンダインダクタ、ソレノイドコイル - Google Patents
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Abstract
【課題】ノイズを低減できる線路を提供する。
【解決手段】線路10は、中心導体20と被覆部30とを備える。前記被覆部30は、前記中心導体20を被覆する。前記被覆部30は、軟磁性体で形成されるとともに信号または電力供給を行う周波数における表皮深さよりも薄い層を少なくとも1層以上有する。
【選択図】図1
【解決手段】線路10は、中心導体20と被覆部30とを備える。前記被覆部30は、前記中心導体20を被覆する。前記被覆部30は、軟磁性体で形成されるとともに信号または電力供給を行う周波数における表皮深さよりも薄い層を少なくとも1層以上有する。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、線路と、プレーナ型スパイラルインダクタと、ミアンダインダクタと、ソレノイドコイルとに関する。
従来、ノートパソコンのような通信機器に用いられるスイッチング電源装置は、スイッチング周波数の高速化が求められている。高速化として、例えば、メガヘルツ(MHz)帯域の周波数を用いることが求められている。
これに対して、キロヘルツ(kHz)帯域の周波数を用いるスイッチング電源装置では、フェライトをボビンとして用いるインダクタが用いられている。このインダクタを、メガヘルツ(MHz)帯の周波数を用いるスイッチング電源装置に用いると、鉄損が大きくなる。
また、スイッチング電源装置では、回路の共振により、数百MHz〜数ギガヘルツ(GHz)のノイズが発生する(例えば、特許文献1参照)。
低損失であり、ノイズを低減できる、線路とスパイラルインダクタとミアンダインダクタとソレノイドコイルが求められている。
本発明の実施形態は、低損失であり、ノイズを低減できる、線路とスパイラルインダクタとミアンダインダクタとソレノイドコイルを提供することを目的とする。
実施形態に係る線路は、中心導体と、被覆部とを備える。前記被覆部は、前記中心導体を被覆する。前記被覆部は、軟磁性体で形成されるとともに信号または電力供給を行う周波数における表皮深さよりも薄い層を少なくとも1層以上有する。
第1の実施形態に係る線路を、図1〜10を用いて説明する。図1は、本実施形態の線路10を示す斜視図である。図2は、図1に示す線路10の断面図である。図1,2に示すように、線路10は、中心導体20と、中心導体20を被覆する被覆部30とを備えている。
中心導体20は、電気抵抗を下げる目的で導電率の高い材料で形成されることが好ましい。導電率が高い材料は、一例として、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)がある。
被覆部30は、中心導体20を被覆している。なお、図2に示すように、中心導体20の断面形状は、一例として、四角形である。そして、被覆部30は、厚みがいずれの位置であっても一定値である。それゆえ、被覆部30の外形も、四角形である。被覆部30は、軟磁性体で形成されている。軟磁性体は、本実施形態では一例として、アモルファス構造のCoNbZr、CoFeB、または、グラニュラ構造のCoZrO,CoAlOまたは、多結晶構造のNiFeである。
本実施形態では、被覆部30は、1層を有する構造である。1層を有する構造とは、一つの軟磁性体で形成される層を1つ有するということである。被覆部30が2層以上有する構造では、軟磁性体で形成される、積層される複数の層を有する。
なお、線路10は、短絡を防止するために、被覆部30の周囲に、絶縁体で形成される絶縁層が設けられてもよい。
被覆部30の厚さについて、具体的に説明する。軟磁性体の厚さtmと被覆部30の表皮深さδとが等しくなるときの周波数をf1とすると、周波数f1は、線路10を用いて信号伝達や電力伝送を行う際の周波数よりも高くなるように設定される。そして、軟磁性体の強磁性共鳴周波数をf2とし、線路10に生じるノイズ成分である周波数帯域の下限周波数をf3とすると、周波数f1は、下限周波数f3および強磁性共鳴周波数f2よりも低くなるように設定される。
fは、周波数、σは、軟磁性体の導電率、μ0は、真空の透磁率、μrは、被覆部30を形成する軟磁性体の複素比透磁率である。また、μr’は、被覆部30を形成する軟磁性体の複素比透磁率μrの実部の値であり、μr"は、被覆部30を形成する軟磁性体の複素比透磁率μrの虚部の値である。
図5は、周波数に対する実部μr’と虚部μr"の値を示すグラフである。図5の横軸は、周波数を示し、縦軸は透磁率を示している。図5では、実部μr’は実線で示されており、虚部μr"は1点鎖線で示されている。
周波数fが、上述した、被覆部30の表皮深さと被覆部30の厚さとが同じになる周波数f1よりも低くなると、電流は、被覆部30よりも導電率σが高い中心導体20を流れる。中心導体20は、抵抗が小さいので、伝送損失も低い。
このように、信号の送信や電力供給のために用いる周波数帯を、上述の被覆部30を形成する軟磁性体の表皮深さδと被覆部30の厚さtmとが同じになる周波数f1よりも低く設定することによって、損失を低くすることができる。
また、被覆部30の表皮深さと被覆部30の厚さとが同じになる周波数f1よりも高い周波数は、主に、伝導ノイズとなる。被覆部30の表皮深さと被覆部30の厚さとが同じになる周波数よりも大きい周波数の電流は、表皮効果によって、被覆部30内を流れる。つまり、伝導ノイズは、軟磁性体内を流れる。被覆部30は、軟磁性体で形成されており、それゆえ、中心導体20よりも導電率が低いので、抵抗値が高くなる。このため、被覆部30を流れる電流の損失が大きくなる。
さらに、被覆部30を形成する軟磁性体の強磁性共鳴周波数f2では、被覆部30を形成する軟磁性体の複素比透磁率μrの虚部の値μr"が、極大化し、複素比透磁率μrの絶対値も極大化する。 従って、周波数が強磁性共鳴周波数f2になると、表皮深さδが極小化するし、線路10は、この電流に対して非常に高い抵抗、つまり高損失な特性を有するようになる。
本実施形態では、被覆部30を形成する軟磁性体の強磁性共鳴周波数f2を、被覆部30の表皮厚さδと被覆部30の厚さtmと等しくなる周波数f1よりも高くすることで、信号の送信や電力供給のために用いる周波数帯では低損失で、伝導ノイズが流れる周波数帯では高損失な線路が得られる。
本実施形態では、中心導体20の断面形状は、一例として、図2に示すように四角形である。中心導体20の断面形状は、磁気飽和による透磁率の減少を防ぐために、被覆部30に印加される磁界強度が軟磁性体の異方性磁界の値よりも小さくなるように形成される。被覆部30に印加される磁界強度は、アンペールの法則によって算出できる。例えば、中心導体20の断面が円径であり、直径がdの場合、電流値Iの電流を被覆部30に印加する磁界強度Hは、アンペールの法則によって、H=I/(π×d)である。アンペールの法則を用いる以外の手段としては、電磁界シミュレーションによって得ることもできる。
次に、線路10のインダクタンスの周波数特性を解析した結果を説明する。この解析では、線路10は、周波数が10MHz以下の信号を透過させて、周波数が300MHz以上の伝送ノイズを抑制するように形成されている。
具体的には、被覆部30は、一軸異方性の困難軸方向の比透磁率の実部が直流で1000を有するCo85Nb12Zr3で形成されている。Co85Nb12Zr3は、軟磁性体の一例である。Co85Nb12Zr3の導電率は、8.3×10S/mである。Co85Nb12Zr3の強磁性共鳴周波数f2は、890MHzである。
被覆部30の表皮深δと被覆部30の厚さtmとが同じになる周波数f1を300MHzとすると、300MHzのときの被覆部30の表皮深さδは、1.0μmとなるので、被覆部30の厚さtmを、1.0μmとする。
被覆部30を形成する軟磁性体は、一軸磁気異方性を有して高周波磁界が印加する方向を困難軸方向にすると、特性として、高透磁率を有するようになる。本実施形態では、被覆部30には、線路10の延びる直線方向に沿って一軸磁気異方性の容易軸が誘導されている。
図4は、本解析で用いられる線路10を示している。図4は、線路10が基材40上に固定された状態を示している。基材40の材質は、FR−4(Flame Retardant Type 4)である。基材40の厚さは、0.1mmである。
ここで、方向を定義する。線路10が延びる方向をx軸とする。x軸に直交するとともに、基材40の表面に平行な方向をy軸yとする。基材40の表面41に垂直な方向をz軸とする。x,y,z軸は、互いに直交する。
線路10の中心導体20は、銅(Cu)で形成されており、長さは10mm、幅は0.158mm、厚さは、0.035mmである。被覆部30は、上述のCo85Nb12Zr3で形成されており、厚さは1μmである。被覆部30は、一軸磁気異方性の容易軸方向がx軸方向に誘導されている。このため、被覆部30のx軸、y軸、z軸の透磁率である(μx,μy,μz)は、(1,μr,μr)となる。なお、μxはx軸方向の透磁率であり、μyはy軸方向の透磁率であり、μzは、z軸方向の透磁率である。
なお、比較用として、比較用線路のインダクタンスも解析した。比較用線路は、被覆部30を有しておらず、中心導体20のみを有している。比較用線路の中心導体20は、長さが10μmであり、幅が0.16mmであり、厚さが0.37mmである。このように、比較用線路の外観形状は、線路10と同じである。
図6は、線路10と比較用線路の、周波数に対するインダクタンスの解析結果を示すグラフである。図6では、横軸は周波数を示しており、縦軸はインダクタンスを示している。図6中では、線路10の特性は実線で示されており、比較用線路の特性は1点鎖線で示されている。 図6に示すように、線路10のインダクタンスは、120MHz以下では、34nHであり、おおよそ一定である。これに対し、比較用線路は、120MHz以下では、3.4nHであり、おおよそ一定である。このように、120MHz以下では、線路10は、比較用線路に対しておおよそ約10倍のインダクタンス値を有する。
図7は、線路10のノイズ抑制の指標となる、Ploss/Pinの周波数特性を示すグラフである。Pinは、線路10に入力されるエネルギ量であり、Plossは、線路10で消費されるエネルギ量である。図7では、線路10の周波数特性は実線で示されており、比較用の導体のみからなる線路の周波数特性は1点鎖線で示されている。
図7に示すように、線路10は、300MHz以上でありかつ5GHz以下の帯域では、Ploss/Pinは35パーセント以上である。また、1500MHzでは、Ploss/Pinは、54パーセントとなった。
これに対して比較用の導体のみからなる線路では、1GHz以下では、Ploss/Pinはおおよそほぼ0パーセントである。
また、線路10のインダクタンスは、周波数fと、被覆部30を形成する軟磁性体の透磁率μrと、軟磁性体の導電率σとによって、決定される。線路10における、周波数fと、被覆部30の軟磁性体の透磁率μrと、被覆部30を形成する軟磁性体の導電率σを変化させたときの線路10のインダクタンスLを解析した。図8は、この解析結果を示すグラフである。
図8では、第1〜8のパターンについて解析している。第1〜8のパターンは、互いに、透磁率μrと周波数fとが異なるように設定されており、各々において導電率σを変化させている。図8では、横軸は軟磁性体の導電率σであり、縦軸はインダクタンスLを示している。図8に示される解析では、第1〜8のパターンにおいて、軟磁性体の導電率σを、1.0×104S/m〜5.0×107S/mの間で変化させている。
なお、第1〜8のパターンの線路は、図1に示す線路10と同様の形状であり、図4に示されるように、基材40に固定されている。
第1〜8のパターンの線路では、被覆部30の一軸磁気異方性の容易軸方向は、各線路の延びる方向、つまりx軸方向に誘導されている。
第1〜8のパターンの比透磁率μrと、周波数fについて具体的に説明する。第1のパターンでは、被覆部30の軟磁性体の比透磁率μrは、100であり、周波数fは30MHzである。第2のパターンでは、被覆部30の軟磁性体の比透磁率μrは、100であり、周波数fは、100MHzである。第3のパターンでは、被覆部30を形成する軟磁性体の比透磁率μrは300であり、周波数fは、10MHzである。
第4のパターンでは、被覆部30を形成する軟磁性体の比透磁率μrは300であり、周波数fは30MHzである。第5のパターンでは、被覆部30を形成する軟磁性体の透磁率μrは300であり、周波数fは100MHzである。第6のパターンでは、被覆部30を形成する軟磁性体の比透磁率μrは1000であり、周波数fは10MHzである。第7のパターンでは、被覆部30を形成する軟磁性体の透磁率は1000であり、周波数fは30MHzである。第8のパターンでは、被覆部30を形成する軟磁性体の透磁率は1000であり、周波数fは100MHzである。
図8では、第1のパターンの解析結果は1点鎖線で示され、第2のパターンの解析結果は2点鎖線で示され、第3のパターンの解析結果は3点鎖線で示され、第4のパターンの解析結果は4点鎖線で示され、第5のパターンの解析結果は5点鎖線で示され、第6のパターンの解析結果は6点鎖線で示され、第7のパターンの解析結果は7点鎖線で示され、第8のパターンの解析結果は8点鎖線で示されている。
図8に示すように、第1,2のパターンでは、インダクタンスLの値は、おおよそ一定であり、変化していない。また、第1,2のパターンのインダクタンスLは、互いにおおよそ同じ値である。これに対して第3〜4のパターンでは、軟磁性体の導電率σが低い場合はインダクタンスLが高く、導電率σが高くなるにつれてインダクタンスLが低くなることがわかる。
ここで、図8において、軟磁性体の導電率σが1.0×104S/mのときの線路のインダクタンスをLmax、軟磁性体の表皮深さδと軟磁性体の厚さtmが等しくなる軟磁性体の導電率をσ’とする。f、μr、tm、σ’は以下の式(2)のような関係がある。
σ/σ’とL/Lmaxの関係を示すと図9のようになる。図9では、横軸は、σ/σ’を示している。縦軸は、L/Lmaxを示している。図9では、第1〜8のパターンは、図8と同様に示されている。
図9を見ると、σ/σ’≦0.4の範囲では、どのようなf、μrの値においても曲線が重なり、L/Lmax≧0.9となった。図10中の曲線L1,L2,L3について説明する。曲線L1は、第1のパターンを示す1点鎖線と第2のパターンを示す2点鎖線とが重なった曲線である。曲線L2は、第3,4,5のパターンを示す3点鎖線と4点鎖線と5点鎖線とが重なった曲線である。曲線L3は、第6,7,8のパターンを示す6点鎖線と7点鎖線と8点鎖線とが重なった曲線である。従って、σ/σ’≦0.4の関係となるとき、すなわちtm≦0.63δの関係にあるとき、インダクタンスLはLmaxの0.9倍以上の高い値となる。
また、高周波数帯では、線路10に入力されるエネルギに対する線路10で消費されるエネルギの割合である、Ploss/Pinは、被覆部30の軟磁性体のシート抵抗によって決定される。ここで、図4に示す線路10を用いて、1GHzにおけるシート抵抗の変化に伴うPloss/Pinの変化を解析した。
図10は、シート抵抗の変化に伴うPloss/Pinの変化を示すグラフである。図10では、横軸はシート抵抗を示し、縦軸はPloss/Pinを示す。線路10は、一軸磁気異方性が線路10の延びる方向に誘導されており、x軸、y軸、z軸の透磁率は、(1,μr,μr)である。比透磁率μrは、複素比透磁率であり、図5に示す周波数特性に示される1GHzのときの値を用いている。
図10に示すように、シート抵抗が0.04Ω以上でPloss/Pinが10パーセント以上になり、シート抵抗が1Ωでは、Ploss/Pinが52パーセントとなり、極大値になる。
本実施形態では、線路10の断面形状は、図2に示すように、四角形である。他の例としては、図3に示すように、線路10の断面形状は、円であってもよい。この場合、一例として、中心導体20は半径一定の円であり、被覆部30は、厚さが一定である。このことによって、線路10の断面形状は、半径が一定の円となる。
なお、本実施形態では、線路10は、一例として、信号または電力伝送の動作周波数がMHz帯である回路に用いられることを説明した。他の例としては、線路10は、動作周波数が1MHzより低い周波数であるモータや、動作周波数が1GHzよりも大きい周波数であるICなどに用いられてもよい。
動作周波数が1MHzよりも小さい周波数となるモータなどの回路に線路10が用いられる場合は、被覆部30の表皮深さが厚くなるので、これに伴って被覆部30の厚さを厚くする。また、動作周波数が1GHzよりも高い周波数となるICなどに用いられる場合は、被覆部の表皮深さが薄くなるので、これに伴って被覆部の厚さを薄くする。
さらに、動作周波数が1MHzよりも小さい周波数となるモータなどの回路に線路10が用いられる場合は、強磁性共鳴周波数が低い軟磁性体を用いて被覆部を形成すると、高いノイズ抑制効果が得られる。また、動作周波数が1GHzよりも大きい周波数となるICなどに用いられる場合は、強磁性共鳴周波数が高い軟磁性体を用いて被覆部を形成すると、高いノイズ抑制効果が得られる。
また、中心導体20と被覆部30との間に、原子や分子の拡散を防ぐために絶縁層が挿入された場合であっても、近接効果によって、上述と同様の、インダクタンスの上昇効果と、ノイズ抑制効果とが得られる。
次に、第2の実施形態に係る線路を、図11〜14を用いて説明する。なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、被覆部30は、複数の層を有する。また、線路10の形状が第1の実施形態と異なる。上記異なる点について具体的に説明する。
図11は、本実施形態の線路10を示す断面図である。中心導体20は、電気抵抗を下げる目的で、導電率が高い材料で形成されることが好ましい。本実施形態では、一例として、中心導体20は、銅(Cu),銀(Ag),金(Au),アルミニウム(Al)のいずれかで形成されている。
被覆部30は、中心導体20からの厚みが一定となるように、中心導体20を被覆している。被覆部30は、第1の層31と、第2の層32とを備えている。第1の層31は、中心導体20を被覆している。第1の層31の厚さは一定である。
第1の層31は、導電率が、1S/m以上の導電性の軟磁性体、または、絶縁性の軟磁性体から形成されている。第1の層31を形成する軟磁性体は、アモルファス構造のCoNbZr、CoFeBのいずれか一方、または、グラニュラ構造のCoZrO、CoAlOのいずれか一方、または、NiZnフェライト、MnZnフェライトの一方、などである。
第2の層32は、第1の層31を被覆している。第2の層32は、第1の層31に接触している。第2の層32の厚さは、一定である。このため、第2の層32の断面形状は、正八角形である。第2の層32は、1S/m以上の導電性の軟磁性体、または、絶縁性の軟磁性体から形成されている。第2の層32を形成する軟磁性体は、アモルファス構造のCoNbZr、CoFeBのいずれか一方、または、グラニュラ構造のCoZrO、CoAlOのいずれか一方、などである。
信号や電力を伝送する低周波帯において、中心導体を流れる電流により第1の層31、第2の層32に印加される磁界は、アンペールの法則より、線路の外側に配置された第2の層32よりも線路の内側に配置された第1の層31のほうが高くなる。従って、磁性体の磁気飽和を考慮すると、第2の層32の異方性磁界は、第1の層31の異方性磁界よりも小さくすることができる。また、透磁率は飽和磁束密度を異方性磁界で割った値であるため、異方性磁界が低い第2の層32の比透磁率は、第1の層31の比透磁率よりも高い場合が多い。
このため、磁気飽和の観点から第1の層31では用いることができない軟磁性体を、第2の層32では用いることができる。
第1の層31の表皮深さδ1と、第1の層31の厚さtm1とが同じとなる周波数をf4とし、第2の層32の表皮深さδ2と第2の層32の厚さtm2とが同じとなる周波数をf5とすると、本実施形態の線路10に印加される、信号や電力を伝送する周波帯は、周波数f4,f5よりも低くする。
また線路10は、周波数f4,f5のうち低いほうの周波数より高い周波数帯で、高いノイズ抑制効果を有する。また、線路10は第1,2の層31,32の比透磁率μrの虚部μr"の値が高くなる周波数成分を抑制する。つまり、高いノイズ抑制効果を有する。
ここで、第1〜5の線路に対して、周波数に対するインダクタンス、及び、周波数に対するPloss/Pinの解析結果を説明する。まず、第1〜5の線路について説明する。
第1の線路は、中心導体20のみを有しており、被覆部30を有していない。中心導体20は、銅(Cu)で形成されている。
第2の線路は、中心導体20と、被覆部30とを備えている。第2の線路の中心導体20は、銅(Cu)で形成されている。第2の線路の被覆部30は、1層のみ有している。このため、第2の線路は、第1の実施形態で説明された線路10と同じ構造である。
第3の線路は、中心導体20と、被覆部30とを備えている。第3の線路の中心導体20は、銅(Cu)で形成されている。第3の線路の被覆部30は、第1,2の層31,32を備えている。第3の線路は、図11で説明した線路10と同様の構造を有している。第3の線路の第1の層31は、軟磁性体である、CoAlOで形成されている。第2の層32は、軟磁性体である、CoNbZrで形成されている。
第4の線路は、中心導体20と被覆部30とを備えている。第4の線路の中心導体20は、銅(Cu)で形成されている。第4の線路の被覆部30は、1層のみ有している。つまり、第1の実施形態で説明された線路10と同様の構造である。第4の線路の被覆部30は、絶縁性の軟磁性体であるNiZnフェライトで形成されている。
第5の線路は、中心導体20と被覆部30とを備えている。第5の線路の中心導体20は、銅(Cu)で形成されている。第5の線路の被覆部30は、第1,2の層31,32を備えている。第5の線路は、図11に示す線路10と同様の構造である。第1,の層31はNiZnフェライト,第2の層32は、CoNbZrで形成されている。
インダクタンスとPloss/Pinの解析をするにあたり、第1〜5の線路の断面形状の寸法を設定する。第1〜5の線路の中心導体は、各頂点から最も遠い頂点までの距離が0.1mmである。第2〜5の線路では、第1の層31の厚さL2は、0.05mmである。第3,5の線路の第2の層32の厚さは、1μmである。
第2,3の線路において、軟磁性体であるCoAlOの比透磁率は、一軸磁気異方性を、線路の延びる方向誘導している。このため、x軸方向、y軸方向、z軸方向の比透磁率である(μx,μy,μz)は、(1,60,60)としている。なお、x軸方向は、線路の延びる方向であり、y軸は、線路の幅方向であり、z軸方向は、線路の高さ方向である。そして、第1層31は、導電率103S/mとした。第1の層31の表皮深さδ1と厚さtm1とが等しくなる周波数f4は、1700MHzである。
第4、5の線路において、軟磁性体であるNiZnフェライトの比透磁率は、x軸方向、y軸方向、z軸方向全てに設定されている。NiZnフェライトの比透磁率の周波数特性は、図12に示されている。なお、図12では、横軸が周波数を示し、縦軸が比透磁率を示している。図12では、NiZnフェライトの比透磁率の実部の周波数特性は、実線で示されている。NiZnフェライトの比透磁率の虚部の周波数特性は、1点鎖線で示されている。
第3,5の線路の第2の層32を形成する軟磁性体であるCoNbZrは、一軸磁気異方性の容易軸方向は、線路の延びる方向に誘導されている。第3,5の線路の第2の層32のx軸方向、y軸方向、z軸方向の比透磁率である(μx,μy,μz)は(1,μr,μr)となる。比透磁率μrの周波数特性は、第1の実施形態の図5で説明された周波数特性を有している。第3,5の線路では、第2の層32の表皮深さδ2が厚さtm2と同じになる周波数、つまり、第2の層32の表皮深さが1μmとなる周波数f5は、300MHzである。
図13は、第1〜5の線路の、周波数fに対するインダクタンスLを示している。図13では、横軸は周波数を示し、縦軸は、インダクタンスを示している。図13では、第1の線路の周波数特性は、1点鎖線で示されており、第2の線路の周波数特性は、2点鎖線で示されており、第3の線路の周波数特性は、3点鎖線で示されており、第4の線路の周波数特性は4点鎖線で示されており、第5の線路の周波数特性は、5点鎖線で示されている。
図13に示すように、第2〜5の線路では、被覆部30の表皮深さが被覆部の厚さよりも厚くなる低周波数帯域では、インダクタンスが高いことがわかる。この点を具体的に説明すると、被覆部30を備えていない第1の線路では、周波数が10MHzのときに、インダクタンスが11nHであるが、第2の線路では周波数が10MHzのときに93nHであり、第3の線路では、周波数が10MHzのときに106nHであり、第4の線路では、周波数が10MHzのときに53nHであり、第5の線路では、周波数が10MHzのときに72nHである。
これらのことより、第2の層32を備えるとともに、第2の層32が高い透磁率を有する材料で形成されることによって、インダクタンスLが上昇することがわかる。
図14は、第1〜5の線路の、周波数に対するPloss/Pinを示すグラフである。図14は、線路のノイズ抑制の指標を示している。図14では、横軸は周波数であり、縦軸はPloss/Pinである。図14では、第1の線路の周波数特性は、1点鎖線で示されており、第2の線路の周波数特性は、2点鎖線で示されており、第3の線路の周波数特性は、3点鎖線で示されており、第4の線路の周波数特性は4点鎖線で示されており、第5の線路の周波数特性は、5点鎖線で示されている。
図14に示すように、10MHz以下では、第1〜5の線路の全てにおいて、Ploss/Pinは、0.6パーセント以下である。第3の線路は、周波数が100MHzのときに8.9パーセントになり最も高くなっており、10MHz〜400MHzの帯域では第2の線路のPloss/Pinよりも高い値である。第5の線路は、800MHzで、Ploss/Pinが46パーセントになり最も高くなっており、100MHz〜1GHz以下の帯域では、第4の線路よりも大きくなっている。
これらの結果より、被覆部30が第1,2の層31,32を有するとともに、第2の層32を形成する軟磁性体が高透磁率である材料で形成されることによって、特定の周波数のときにPloss/Pinが高くなることがわかった。
なお、本実施形態においても、中心導体20と第1の層31との間に原子や分子の拡散を防ぐ目的で絶縁体層が設けられても、または、第1,2の層31,32間に原子や分子の拡散を防ぐ目的で絶縁層が設けられても、近接効果が作用するため、本実施形態と同様の効果が得られる。
また、本実施形態では、被覆部30が複数の層を有する構造の一例として、被覆部30が第1,2の層31,32を備える構造を説明した。被覆部30は、3層以上有していてもよい。この場合であっても、互いに接触する2層において、相対的に内側に位置する層を形成する軟磁性体の異方性磁界は、相対的に外側に位置する層を形成する軟磁性体の異方性磁界よりも高くすることによって、本実施形態と同様の効果がえられる。
なお、本実施形態では、第1,2の層31,32の一軸磁気異方性の容易軸は、共に、線路の延びる方向に誘導されている。他の例としては、第1,2の層31,32のいずれか一方のみにおいて、一軸磁気異方性の容易軸が線路の延びる方向誘導されてもよい。この場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。同様に、被覆部が複数層有する場合は、これら複数の層のうちの少なくともいずれか一層の一軸磁気異方性の容易軸が線路延びる方向に誘導されることによって、本実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第3の実施形態に係るインダクタを、図15〜17を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第1の実施形態で説明された線路10を用いて形成されるスパイラルインダクタを説明する。
図15は、本実施形態のスパイラルインダクタ50を示す斜視図である。図15に示すように、スパイラルインダクタ50は、基材40の上に構成されている。スパイラルインダクタ50を構成する線路は、第1の実施形態で説明された線路10であり、断面形状は、図2に示すように四角形である。
スパイラルインダクタ50は、上面からみた外形が四角形であり、第1〜4の縁部51〜54を備えている。第1の縁部51と第3の縁部53とは、互いに対向している。第1,3の縁部53,54の延びる方向は、平行である。第2,4の縁部52,54は、互いに対向している。第2,4の縁部52,54が延びる方向は、平行である。第1の縁部51が延びる方向と第2の縁部52が延びる方向とは、互いに直交する。スパイラルインダクタ50は、第1〜4の縁部51〜54に沿って延びるように形成される。
スパイラルインダクタ50の一軸磁気異方性の容易軸は、基材40の表面に平行な平面で一方向に誘導されている。このことによって、スパイラルインダクタ50は、被覆部30の表皮深さδと被覆部30の厚さtmとが同じになる周波数f1より低い周波数では、高インダクタンス、低損失である特性を有する。
スパイラルインダクタ50に一軸磁気異方性の容易軸を誘導する場合は、スパイラルインダクタ50を当該一方向に平行に印加した磁界中で冷却する。このようにすることによって、磁界中冷却効果により、一軸磁気異方性の容易軸を、当該一方向に誘導することができる。
次に、被覆部30を備えず中心導体20のみを有する線路によって図15に示すように形成される第1のスパイラルインダクタと、被覆部30が軟磁性体であるCoNbZrで被覆された線路10で形成される第2,3のスパイラルインダクタについて、インダクタンスとPloss/Pinの解析結果を説明する。第2,3のスパイラルインダクタは、図15に示すスパイラルインダクタと同じ構造である。
第1のスパイラルインダクタの線路幅は、0.102mmである。線路の厚さは、0.102mmである。第1〜4の縁部51〜54において、互いに隣りある線路の間隔は、0.098mmであり、一定である。
第2,3のスパイラルインダクタの線路幅の中心導体20の線路幅は、0.1mmである。中心導体20の厚さは、0.1mmである。被覆部30の厚さは、1.0μmである。第1〜4の縁部51〜54において、互いに隣り合う線路の間隔は、0.098mmである。
このように、第1〜3のスパイラルインダクタにおいて、線路幅は、互いに同じである。同様に、第1〜3のスパイラルインダクタにおいて、線路厚さは、互いに同じである。同様に、第1〜3のスパイラルインダクタにおいて、第1〜4の縁部51〜54における隣り合う線路間隔は、互いに同じである。
本実施形態では、第1〜3のスパイラルインダクタの巻数は、一例として3である。第1〜3のスパイラルインダクタでは、各々、第1の縁部51において最も外側に配置される線路10の長さが最も長い。本実施形態では、第1の縁部51において最も外側に配置される線路の長さを4mmとする。基材40の材質は、FR−4であり、厚さを1mmとする。
第2,3のスパイラルインダクタは、一軸磁気異方性の誘導方向、すなわち各軸方向の比透磁率が異なる。第2のスパイラルインダクタは、一軸磁気異方性の容易軸がx軸方向に誘導されている。このため、x軸、y軸、z軸の比透磁率である(μx,μy,μz)は、(1,μr,μr)とした。比透磁率μrは、複素比透磁率であり、第1の実施形態の図5で説明した周波数特性を有する。
第3のスパイラルインダクタは、一軸磁気異方性の容易軸は、x軸の間に45度をなす方向に誘導されている。このため、第3のスパイラルインダクタでは、一軸磁気異方性の容易軸は、y軸との間に45度なす方向に誘導されることにもなる。第3のスパイラルインダクタのx軸、y軸、z軸の比透磁率である(μx,μy,μz)は、(μr/√2,μr/√2,μr)となる。
本実施形態では、x軸とy軸とは基材40の表面41に平行であり、z軸は、表面41に垂直である。第1,3の縁部51,53は、y軸に平行であり、第2,4の縁部52,54は、x軸に平行である。
図16は、第1〜3のスパイラルインダクタの、周波数に対するインダクタンスLを示している。図16では、横軸は周波数であり、縦軸はインダクタンスである。図16に示すように、周波数が100MHz以下では、第2のスパイラルインダクタでは145nH以上となり、第3のスパイラルインダクタでは195nH以上となり、第1のスパイラルインダクタでは67nHとなる。
このように、第2のスパイラルインダクタのインダクタンスは、第1のスパイラルインダクタのインダクタンスに対して2.2倍となり、第3のスパイラルインダクタのインダクタンスは、第1のスパライルインダクタのインダクタンスに対して2.9倍となる。
図17は、ノイズ抑制の指標となる、周波数に対するPloss/Pinを示している。図17では、横軸は周波数であり、縦軸はPloss/Pinである。図17では、第1のスパイラルインダクタの周波数特性は、1点鎖線で示されており、第2のスパイラルインダクタの周波数特性は2点鎖線で示されており、第3のスパイラルインダクタの周波数特性は3点鎖線で示されている。
図17に示すように、10MHz以下では、第1〜3のスパイラルインダクタのいずれにおいても、Ploss/Pinは0.8パーセント以下となる。また、第2,3のスパイラルインダクタでは、300MHz〜1GHzの周波数帯域では、Ploss/Pinは、20パーセント以上となる。
このことより、第2,3のスパイラルインダクタのように、被覆部30に対して、スパイラルインダクタが位置する平面(本実施形態では、基材40の表面41)と平行な一方向に一軸磁気異方性の容易軸を誘導することによって、信号の送信や電力送電に用いられる低周波数帯域では、高いインダクタンス値と低いPloss/Pinを有する特性を有し、ノイズとなる高い周波数帯域では、高いPloss/Pinを有する特性を有するようになる。
さらに、被覆部30の一軸磁気異方性の容易軸を、x軸、y軸に対して45度となる方向に誘導することによって、より良い特性を有するようになる。
なお、本実施形態では、スパイラルインダクタを形成する線路は、第1の実施の形態で説明された、断面形状が四角の線路が用いられた。他の例としては、第1の実施形態で説明された、断面形状が円径の線路が用いられてもよい。または、第2の実施形態で説明された、被覆部が複数層を有する線路が用いられてもよい。これらの場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第4の実施形態に係るインダクタを、図18〜20を用いて説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第1の実施形態で説明された線路10を用いて形成されるミアンダインダクタを説明する。
図18は、本実施形態のミアンダインダクタ60を示す平面図である。ミアンダインダクタ60は、第1の実施形態で説明された、断面形状が四角形の線路10で形成される。図18に示すように、ミアンダインダクタは、複数の長辺部61を有している。これら複数の長辺部61は、互いに平行に、かつ、隣り合う長辺部61の間隔が等しくなるように配置されている。隣り合う長辺部61の端部どうしが、短辺部62によって互いに連結されている。それゆえ、ミアンダインダクタ60は、線路10が一続きになるように形成される。短辺部62は、長辺部61に対して直交する。各短辺部62は、互いに平行である。
ミアンダインダクタ60の線路10の被覆部30を形成する軟磁性体は、一軸磁気異方性の容易軸が、長辺部61の延びる方向に誘導されている。ミアンダインダクタは、長辺部61に平行な方向に印加した磁界中で冷却されることによって、磁界中冷却効果によって、長辺部61が延びる方向に一軸磁気異方性の容易軸が誘導される。
図18に示すように、ミアンダインダクタ60は、基材40上に固定されている。他の例としては、ミアンダインダクタは、半導体の配線層に固定されてもよい。または、中空に浮いた状態で固定されてもよい。
次に、被覆部30を有さずに中心導体20のみを有する線路で形成される第1のミアンダインダクタと、被覆部30を有する線路10で形成される第2のミアンダインダクタとの、周波数に対するインダクタンスとPloss/Pinを解析した結果を説明する。第2のミアンダインダクタは、図18に示されるミアンダインダクタと同様の構造である。
第1のミアンダインダクタを形成する線路の幅は、0.102mmである。第1のミアンダインダクタでは、隣り合う長辺部61間隔は、0.098mmである。第1のミアンダインダクタでは、線路の厚さは、0.102mmである。
第2のミアンダインダクタを形成する線路10の幅は、0.1mmである。線路10の厚さは、0.1mmである。線路10の被覆部30の厚さは、1μmmである。第2のミアンダインダクタの隣り合う長辺部61間隔は、0.09mmである。このように、第1,2のミアンダインダクタの形状は、同じである。第1,2のミアンダインダクタは、4つの長辺部61を有している。基材40の材質は、FR−4である。基材40の厚さは、1mmである。
第2のミアンダインダクタでは、一軸磁気異方性の容易軸は、長辺部61が延びる方向に誘導されている。本実施形態では、長辺部61は、x軸に平行に延びている。このため、第2のミアンダインダクタのx軸、y軸、z軸の比透磁率である(μx,μy,μz)は、(1,μr,μr)となる。なお、比透磁率μrは、複素比透磁率であり、第1の実施形態の図5で説明した周波数特性を有する。
図19は、周波数に対するインダクタンスを示すグラフである。図19では、横軸は周波数を示し、縦軸はインダクタンスを示している。図19では、第1のミアンダインダクタの周波数特性は、1点鎖線で示されており、第2のミアンダインダクタの周波数特性は、2点鎖線で示されている。
図19に示すように、第1のミアンダインダクタのインダクタンスは、8.6nHで一定である。これに対して、周波数が120MHz以下では、第2のミアンダインダクタのインダクタンスは96nHと以上となり、第1のミアンダインダクタのインダクタンスの11倍以上となる。
図20は、ノイズ抑制の指標である、周波数に対するPloss/Pinを示すグラフである。図20では、横軸は周波数を示し、縦軸はPloss/Pinを示している。図20では、第1のミアンダインダクタの周波数特性は1点鎖線で示されており、第2のミアンダインダクタの周波数特性は2点鎖線で示されている。
図20に示すように、第2のミアンダインダクタは、30MHzを越えるとPloss/Pinが大きくなり、300MHzから1GHz帯域では、Ploss/Pinが34パーセント以上となる。このように、第2のミアンダインダクタは、信号の送信や電力伝送に用いられる低周波数帯域ではインダクタンス値が高くなりPloss/Pinが低くなる特性を有し、ノイズとなる高周波数帯域ではPloss/Pinが高くなる特性を有する。
なお、本実施形態では、ミアンダインダクタを形成する線路は、第1の実施の形態で説明された、断面形状が四角の線路が用いられた。他の例としては、第1の実施形態で説明された、断面形状が円径の線路が用いられてもよい。または、第2の実施形態で説明された、被覆部が複数層を有する線路が用いられてもよい。これらの場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
次に、第5の実施形態に係るインダクタを、図21〜22を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、第1の実施形態で説明された線路10を用いて形成されるソレノイドコイルを説明する。ソレノイドコイルは、インダクタの一例である。
図21は、ソレノイドコイル70を示す斜視図である。本実施形態では、ソレノイドコイル70は、基材40上に支持されている。本実施形態では、ソレノイドコイル70は、一軸磁気異方性の容易軸は、巻き線方向に誘導されている。なお、図21中、巻き線方向を示す矢印F21を図示している。ソレノイドコイル70の中心線Cに沿って電流を流しながらソレノイドコイルを冷却することによって、磁界冷却効果によって、一軸磁気異方性の容易軸を、巻き線方向F20に誘導することができる。
次に、第1のソレノイドコイルと第2のソレノイドコイルとの、周波数に対するインダクタンスとPloss/Pinの解析結果を説明する。
第1のソレノイドコイルは、銅(Cu)から形成される中心導体のみを有しており、被覆部を備えない線路で形成される。第1のソレノイドコイルの線路の断面形状は、一辺が0.102mmの正方形であり、線路のピッチは、0.2mmであり、巻数は、4である。第1のソレノイドコイルの内径は、0.399mmである。
第2のソレノイドコイルは、第1の実施形態で説明した線路10で形成されている。中心導体20は、断面形状が一辺の長さが0.1mmの正方形であり、被覆部30は、軟磁性体としてCoNbZrで形成されており、厚さは1.0μmで一定である。第2のソレノイドコイルのピッチは、0.2mmである。第2のソレノイドコイルの巻数は、4である。
このように、第1,2のソレノイドコイルの形状は、同じである。第1,2のソレノイドコイルは、いずれも、基材上に固定されている。基材は、FR―4で形成される。
第2のソレノイドコイルの被覆部の比透磁率は、一軸磁気異方性の容易軸を、巻き線方向に誘導している。このため、x軸、y軸、z軸の比透磁率である(μx,μy,μz)は、(μr,μr,μr)と成る。なお、比透磁率μrは、複素比透磁率であり、第1の実施形態の図5で説明された周波数特性を有する。
図22は、第1,2のソレノイドコイルの、周波数に対するインダクタンスを示すグラフである。図22では、横軸は周波数を示し、縦軸はインダクタンスを示している。図22では、第1のソレノイドコイルの周波数特性は、1点鎖線で示されており、第2のソレノイドコイルの周波数特性は、2点鎖線で示されている。
図22に示すように、第1のソレノイドコイルでは、インダクタンスは、12nHであり、おおよそ一定である。これに対して、第2のソレノイドコイルでは、周波数が100MHz以下では、40nH以上である。
図23は、ノイズ抑制の指標となる、Ploss/Pinを示すグラフである。図23では、横軸は周波数を示し、縦軸はPloss/Pinを示している。図23では、第1のソレノイドコイルの周波数特性は、1点鎖線で示されており、第2のソレノイドコイルの周波数特性は、2点鎖線で示されている。
図23に示すように、第1,2のソレノイドコイルは、ともに、10MHz以下では、vPloss/Pinが0.8パーセント以下となった。また、第2のソレノイドコイルでは、300MHz〜1GHzの高周波数帯域では、Ploss/Pinが30パーセント以上となった。
以上より、第2のソレノイドコイルは、信号の送信や電力送電に用いられる低周波数帯域では、高いインダクタンス値と低いPloss/Pinとを有し、ノイズとなる高い周波数帯域では、高いPloss/Pinを有する特性を有することがわかった。
なお、本実施形態では、ソレノイドコイルを形成する線路は、第1の実施の形態で説明された、断面形状が四角の線路が用いられた。他の例としては、第1の実施形態で説明された、断面形状が円径の線路が用いられてもよい。または、第2の実施形態で説明された、被覆部が複数層を有する線路が用いられてもよい。これらの場合であっても、本実施形態と同様の効果が得られる。
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
10…線路、20…中心導体、30…被覆部、50…スパイラルインダクタ、60…ミアンダインダクタ、70…ソレノイドコイル。
Claims (9)
- 中心導体と
前記中心導体を被覆する被覆部であって、軟磁性体で形成されるとともに信号または電力供給を行う周波数における表皮深さよりも薄い層を少なくとも1層以上有する被覆部と を具備することを特徴とする線路。 - 前記被覆部が1層のみ有する場合、前記被覆部の一軸磁気異方性の容易軸は、前記線路の長手方向に誘導される
ことを特徴とする請求項1に記載の線路。 - 前記被覆部が2層以上有する場合、少なくとも1層の一軸磁気異方性の容易軸方が、前記線路の長手方向に誘導される
ことを特徴とする請求項1に記載の線路。 - 前記軟磁性体は、当該軟磁性体の強磁性共鳴周波数が、前記表皮深さが当該軟磁性体の厚さと同じとなる周波数よりも高い
ことを特徴とする請求項1に記載の線路。 - 前記中心導体に流れる電流に起因して印加される磁界強度が、前記軟磁性体の異方性磁界の強度以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の線路。 - 前記被覆部が2層以上有する場合、互いに接触する2層において、相対的に内側に位置する層を形成する軟磁性体の異方性磁界は、相対的に外側に位置する層を形成する軟磁性体の異方性磁界よりも高い
ことを特徴とする請求項1に記載の線路。 - 中心導体と、前記中心導体を被覆する被覆部であって、軟磁性体で形成されるとともに信号または電力供給を行う周波数における表皮深さよりも薄い層を少なくとも1層以上有する被覆部とを備える線路によって形成される
ことを特徴とするスパイラルインダクタ。 - 中心導体と、前記中心導体を被覆する被覆部であって、軟磁性体で形成されるとともに信号または電力供給を行う周波数における表皮深さよりも薄い層を少なくとも1層以上有する被覆部とを備える線路によって形成される
ことを特徴とするミアンダインダクタ。 - 中心導体と前記中心導体を被覆する被覆部であって、軟磁性体で形成されるとともに信号または電力供給を行う周波数における表皮深さよりも薄い層を少なくとも1層以上有する被覆部とを備える線路によって形成される
ことを特徴とするソレノイドコイル。
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