JP2019160495A - 有機el表示パネルの製造方法および製造装置 - Google Patents

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康弘 山内
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真一郎 石野
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智彦 尾田
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Mineki Hasegawa
峰樹 長谷川
康宏 関本
Yasuhiro Sekimoto
康宏 関本
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Abstract

【課題】有機発光層を湿式法で形成する場合の膜厚の均一化を図る。【解決手段】基板上に、有機層を含む有機EL素子を複数配してなる有機EL表示パネルの製造方法において、有機材料を溶剤に溶解もしくは分散してなるインク170を、基板11上方の予め設定された塗布領域に塗布する塗布工程と、前記塗布工程で塗布されたインクを、当該インクが乾燥に至るまでの間に冷却プレート1110、1210、1310により冷却して塗布時におけるインクの第1の温度よりも低い第2の温度まで低下させる冷却工程とを含む。【選択図】図8

Description

本発明は、有機EL表示パネルの製造方法および製造装置に関し、特に、塗布方式により有機層をできるだけ均一な膜厚で成膜する技術に関する。
近年、有機EL(Electroluminescence:電界発光)素子の発光を利用した有機EL表示パネルの開発が盛んに行われている。有機EL素子は、基板の上方に、画素ごとの画素電極(下部電極)と、有機発光層を含む有機機能層と、複数の有機EL素子に共通の対向電極(上部電極)と、をこの順に備え、画素電極及び対向電極から供給された正孔及び電子が有機発光層で再結合することにより有機発光材料が発光する。
有機EL表示パネルにおける有機発光層は、従来は真空蒸着などの乾式法(ドライプロセス)により成膜される場合が多かったが、塗布技術の進歩に伴い、近年では、湿式法(ウエットプロセス)で有機発光層を形成する技術が普及しつつある。
湿式法は、有機発光材料を有機溶媒に溶解もしくは分散させた溶液(以下、単に「インク」という。)を塗布装置により必要箇所に塗布した後、乾燥させて有機発光層を形成するものであり、大型の有機EL表示パネルであってもその設備費が抑制できると共に材料利用率が高いなどコスト面で優れている。
特開2010−97956号公報 特開2012−209138号公報 特開2014−225432号公報 特開2010−115577号公報
しかしながら、異なる有機発光材料のインクが混ざり合うのを避けて画素を画定するため、基板上に隔壁(バンク)が設けられており、隔壁で囲まれた塗布領域内にインクを塗布してそのまま乾燥させると、隔壁の側面に接する部分がせり上がると共に、有機発光層の中央部が凹入した形状となり、隔壁内における有機発光層の膜厚を均一に形成することが難しい。
そのため、上記有機発光層の画素内における発光の均一性が損なわれ、発光効率の低下や画像品質の劣化、有機EL表示パネル自体の短寿命化を惹き起こすおそれがあった。
このことは、有機発光層のみならず、正孔注入層や正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などの他の有機層を湿式法で形成する場合にも生じ得る問題である。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、湿式法により有機層を成膜しても、それらの膜厚ができるだけ均一になるようにして、発光効率の低下や画像品質の劣化、短寿命化を抑止することが可能な有機EL表示パネルの製造方法および、その方法の実施に直接使用する製造装置を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板上に、有機層を含む有機EL素子を複数配してなる有機EL表示パネルの製造方法であって、有機材料を溶剤に溶解もしくは分散してなるインクを、前記基板上方の予め設定された塗布領域に塗布する塗布工程と、前記塗布工程において塗布されたインクを、当該インクが乾燥するまでの間に冷却して、塗布時におけるインクの第1の温度よりも低い第2の温度まで下げる冷却工程と、を含む。
また、本開示の別の態様に係る有機EL表示パネルの製造装置は、基板上に、有機層を含む有機EL素子を複数配してなる有機EL表示パネルの製造装置であって、有機材料を溶剤に溶解もしくは分散してなるインクを、前記基板上方の予め設定された塗布領域に塗布する塗布部と、前記塗布部により塗布されたインクを、当該インクが乾燥するまでの間に冷却して塗布時におけるインクの第1の温度よりも低い第2の温度まで低下させる冷却部と、を備える。
上記態様に係る有機EL表示パネルの製造方法や製造装置によれば、湿式法により有機層を成膜する場合でも、それらの膜厚をできるだけ均一化でき、発光効率の低下や画像品質の劣化、短寿命化を抑止することが可能な有機EL表示パネルを提供できる。
有機EL表示パネル10を搭載した有機EL表示装置100の構成を示す平面図である。 有機EL表示パネル10における有機EL素子1の積層構造を模式的に示す断面図である。 (a)〜(e)は、有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 (a)〜(d)は、図3に続く有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 (a)〜(d)は、図4に続く有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 有機EL素子の製造工程を示すフローチャートである。 従来の有機EL素子の製造方法における発光層の形成過程を説明するための模式図である。 実施の形態に係る有機EL素子の製造方法における発光層の形成過程を説明するための模式図である。 実施の形態に係る発光層形成装置の構成を示す概略図である。 冷却プレートの構成の一例を示す概略断面図である。 発光層形成装置の制御部の構成を示すブロック図である。 発光層形成装置におけるインク塗布部の構成を示す斜視図である。 発光層形成装置における制御部の制御内容を示すフローチャートである。 実施の形態に係る成膜工程よって形成された発光層の膜形状を、従来の成膜工程による膜形状と比較して示すグラフである。 発光層形成装置における冷却プレートによる冷却範囲の変形例を示す図である。 発光層形成装置の搬送部における冷却構造の変形例を示す図である。 発光層形成装置の乾燥部における冷却構造の変形例を示す図である。
≪本開示の一態様に至った経緯≫
有機EL表示パネルにおける有機発光層は、従来は真空蒸着などの乾式法(ドライプロセス)により成膜される場合が多かったが、塗布技術の進歩に伴い、製造コストの面で優れた、湿式法(ウエットプロセス)で有機発光層を形成する開発が進んでいる。
ところが、上述のような湿式法で有機発光層を形成する際に、隔壁の側面に沿ってインクがせりあがると共に中央部が凹入した膜形状になってしまい、膜厚を均一化することが難しい。
このような現象を解消すべく、従来から隔壁の側面に撥液性を付与したり(例えば、特許文献1)、隔壁の側面が発光層側に向けて傾斜(逆テーパー)するようにして(例えば、特許文献2)、塗布したインクができるだけ隔壁側面に沿ってせり上がらないようにする工夫が講じられていたが、十分に発光層の膜厚を均一化するには至っていない。
特に、最近では、表示画像の高精細化の要請が強く、一つの画素の幅がより狭くなってきている。その一方で、隔壁の側面に沿ってせり上がっている部分(以下、「せり上がり部」という。)を少なくする点での改善はそれほどなされていないので、結果として、一つの画素において、せり上がり部の占める割合が大きくなり、発光層の膜厚の均一性がさらに劣化してしまう。
本願の発明者は、湿式法により形成した発光層の膜厚の均一性を高めるべく鋭意研究し、基板上に塗布されてから乾燥に至るまでの間にインク内部で対流が生じており、この対流が膜厚の均一化に対して大きな阻害要因となっていることを見出した。
すなわち、隔壁で囲まれた塗布領域にインクを塗布すると、インクの表面から溶剤が蒸発していくが、その蒸発速度に部分的な差異があるため、インクの密度が不均一となって塗布されたインク内で対流が生じ、当該対流により隔壁側面にインクを押し付けるように力が作用する。そのまま乾燥が進むと、インクが、隔壁側面にせり上がって付着する量が多くなり、その分だけ中央部のインクの量が少なくなって凹状に窪むため、乾燥後の有機発光層の膜圧が不均一になるということを究明し、この現象を抑制して、湿式法により形成される有機層、とりわけ発光層の膜厚をできるだけ均一化するため本開示の一態様に至ったものである。
≪本開示の一態様の概要≫
本開示の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法は、基板上に、有機層を含む有機EL素子を複数配してなる有機EL表示パネルの製造方法であって、有機材料を溶剤に溶解もしくは分散してなるインクを、前記基板上方の予め設定された塗布領域に塗布する塗布工程と、前記塗布工程において塗布されたインクを、当該インクが乾燥するまでの間に冷却して、塗布時におけるインクの第1の温度よりも低い第2の温度まで下げる冷却工程と、を含む。
係る態様により、塗布されたインクの粘性が高くなってインクの対流を抑制した状態で乾燥させて、膜形状におけるせり上がり部を少なくすることができるので、有機層の膜厚の均一化が可能である。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記第2の温度は、前記第1の温度よりも10℃以上低いことが望ましい。
また、前記第2の温度は、5℃以下であることが望ましい。
第2の温度を上記のように設定することにより、より効果的にインクの対流を阻止して、有機層の膜厚の均一化を図れる。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記冷却工程は、前記塗布されたインクを、その塗布と同時に冷却するのが望ましい。
係る態様により、塗布されたインクの対流が、初期の段階で効果的に抑制される。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記塗布工程でインクが塗布された基板を後段の装置に搬送する搬送工程を含み、前記冷却工程は、前記搬送工程で基板が搬送される間に前記塗布されたインクを冷却するとしてもよい。
また、別の態様として、前記塗布されたインクを乾燥部で乾燥させる乾燥工程と、前記塗布工程でインクを塗布する位置から前記乾燥部の位置まで、前記基板を搬送する搬送工程とを含み、前記冷却工程は、前記搬送工程で基板が搬送される間および/または前記乾燥工程でインクが乾燥されている間に前記塗布されたインクを冷却するとしてもよい。
このように搬送工程および/または乾燥工程においてインクを冷却することによってもインクの対流を抑制することができる。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記乾燥部は、真空乾燥装置であることが望ましい。係る構成により、インク中の溶剤を迅速に蒸発させて有機膜を形成することができる。
本開示の別の態様は、上記態様において、前記有機層は、有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層のうち、少なくとも一つの層を含む。
有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層の少なくとも一つの層を湿式法により形成する際に、上記製造方法を採用することにより膜厚の均一化を図れ、高品質な有機EL表示パネルを提供できる。
また、本開示の別の態様に係る有機EL表示パネル製造装置は、基板上に、有機層を含む有機EL素子を複数配してなる有機EL表示パネルの製造装置であって、有機材料を溶剤に溶解もしくは分散してなるインクを、前記基板上方の予め設定された塗布領域に塗布する塗布部と、前記塗布部により塗布されたインクを、当該インクが乾燥するまでの間に冷却して塗布時におけるインクの第1の温度よりも低い第2の温度まで低下させる冷却部と、を備える。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記第2の温度は前記第1の温度よりも10℃以上低いことが望ましい。
また、本開示の別の態様として、上記態様において、前記第2の温度は、5℃以下であることが望ましい。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記冷却部は、前記塗布されたインクを、その塗布と同時に冷却するとしてもよい。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記冷却部は、冷却プレートを含み、当該冷却プレート上に前記基板を載置することにより、前記基板を介して前記塗布されたインクを冷却することとしてもよい。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記塗布部でインクが塗布された基板を後段の装置に搬送する搬送部を備え、前記冷却部は、前記搬送部により基板が搬送される間に前記塗布されたインクを冷却することとしてもよい。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記塗布部で塗布されたインクを乾燥させる乾燥部と、前記塗布部から前記乾燥部へ前記基板を搬送する搬送部とを備え、前記冷却部は、前記搬送部により基板が搬送される間および/または前記乾燥部で乾燥している間に前記塗布されたインクを冷却することとしてもよい。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記乾燥部は、真空乾燥装置を含むこととしてもよい。
本開示の別の態様として、上記態様において、前記有機層は、有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層のうち、少なくとも一つの層を含むこととしてもよい。
係る有機EL表示パネルの製造装置によれば、上記有機EL表示パネルの製造方法を実施して、有機層における膜厚を可及的に均一にして、高品質な有機EL表示パネルを提供できる。
なお、上記開示の態様において「上」とは、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)を指すものではなく、有機EL表示パネルの積層構造における積層順を基に、相対的な位置関係により規定されるものである。具体的には、有機EL表示パネルにおいて、基板の主面に垂直な方向であって、基板から積層物側に向かう側を上方向とする。また、「基板の上方」と表現した場合は、基板に直接接する領域のみを指すのではなく、積層物を介した基板の上方の領域も含めるものとする。
≪実施の形態≫
以下では、本開示の一態様に係る有機EL表示パネルの製造方法および製造装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的なものを含んでおり、各部材の縮尺や縦横の比率などが実際とは異なる場合がある。
1.有機EL表示装置の全体構成
図1は、本実施の形態に係る有機EL表示パネルの製造方法による製造の対象となっている有機EL表示パネル10を搭載した有機EL表示装置100の全体構成を示すブロック図である。
有機EL表示装置100は、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯端末、業務用ディスプレイ(電子看板、商業施設用大型スクリーン)などに用いられる表示装置である。
有機EL表示装置100は、有機EL表示パネル10と、これに電気的に接続された駆動制御部500とを備える。
有機EL表示パネル10は、本実施の形態では、上面が長方形状の画像表示面であるトップエミッション型の表示パネルである。有機EL表示パネル10では、画像表示面に沿って複数の有機EL素子(不図示)が配列され、各有機EL素子の発光を組み合わせて画像を表示する。なお、有機EL表示パネル10は、一例として、アクティブマトリクス方式を採用している。
駆動制御部500は、有機EL表示パネル10に接続された駆動回路510と、計算機などの外部装置又は受信装置に接続された制御回路520とを有する。駆動回路510は、各有機EL素子に電力を供給する電源回路、各有機EL素子への供給電力を制御する電圧信号を印加する信号回路、一定の間隔ごとに電圧信号を印加する箇所を切り替える走査回路などを有する。
制御回路520は、外部装置や受信装置から入力された画像情報を含むデータに応じて、駆動回路510の動作を制御する。
なお、図1では、一例として、駆動回路510が有機EL表示パネル10の周囲に4つ配置されているが、駆動制御部500の構成はこれに限定されるものではなく、駆動回路510の数や位置は適宜変更可能である。また、以下では説明の便宜上、図1に示すように、有機EL表示パネル10上面の長辺に沿った方向をX方向、有機EL表示パネル10上面の短辺に沿った方向をY方向とする。
2.有機EL表示パネルの構成
有機EL表示パネル10において、一つの画素は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)をそれぞれ発光する3つの副画素からなる。各副画素は、対応する色を発光する有機EL素子で構成される。
各色の有機EL素子は、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子1として説明する。
図2は、一つの有機EL素子1の積層構造を模式的に示す部分断面図である。同図に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁14、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、および、封止層21とからなる。
基板11、層間絶縁層12、電子輸送層18、電子注入層19、対向電極20、および、封止層21は、画素ごとに形成されているのではなく、有機EL表示パネル10が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
(1)基板
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、副画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素などの半導体基板、プラスチック基板等を採用することができる。
プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
(2)層間絶縁層
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。また、図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、副画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
(3)画素電極
画素電極13は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、副画素ごとに設けられ、コンタクトホール(不図示)を通じてTFT層112と電気的に接続されている。
本実施の形態においては、画素電極13は、陽極として機能する。
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
(4)隔壁
隔壁14は、画素電極13と正孔注入層15の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で正孔注入層15上に形成されている。正孔注入層15上面において隔壁14で被覆されていない領域(開口部14a)がある。
本実施の形態においては、隔壁14は、画素電極13が形成されていない部分においては、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、画素電極13が形成されていない 部分においては、隔壁14の底面は層間絶縁層12の上面と接している。隔壁14は、発光層17を塗布法で形成する場合に塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能する。
隔壁14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂など)の材料からなる。本実施の形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
(5)正孔注入層
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15は、例えば、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる層である。
上記のうち、酸化金属からなる正孔注入層15は、正孔を安定的に、または、正孔の生成を補助して、発光層17に対し正孔を注入する機能を有し、大きな仕事関数を有する。
本実施の形態では、正孔注入層15は、酸化タングステンからなる。正孔注入層15を遷移金属の酸化物で形成すると、複数の酸化数を取るため、複数の準位を取ることができ、その結果、正孔注入が容易になり、駆動電圧の低減に寄与する。
(6)正孔輸送層
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有する。正孔輸送層16は、例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物であって、親水基を備えないものなどを用いて湿式法により形成される。
(7)発光層
発光層17は、開口部14a内に形成されており、正孔と電子の再結合により、R、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。
有機発光層の材料としては、公知の材料を利用することができる。具体的には、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
(8)電子輸送層
電子輸送層18は、対向電極20からの電子を発光層17へ輸送する機能を有する。電子輸送層18は、電子輸送性が高い有機材料からなり、アルカリ金属、および、アルカリ土類金属を含まない。
電子輸送層18に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
(9)電子注入層
電子注入層19は、対向電極20から供給される電子を発光層17側へと注入する機能を有する。電子注入層19は、例えば、電子輸送性が高い有機材料に、アルカリ金属、または、アルカリ土類金属から選択されるドープ金属がドープされて形成されている。
アルカリ金属に該当する金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)であり、アルカリ土類金属に該当する金属は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)である。
本実施の形態では、バリウム(Ba)がドープされている。
また、電子注入層19に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。
(10)対向電極
対向電極20は、透光性の導電性材料からなり、電子注入層19上に形成されている。対向電極20は、陰極として機能する。
対向電極20の材料としては、例えば、ITOやIZOなどを用いることができる。あるいは、対向電極20の材料として、銀、銀合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属を用いてもよい。この場合、対向電極20は透光性を有する必要があるため、膜厚は
約20nm以下の薄膜として形成される。
(11)封止層
封止層21は、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19などの有機層が水分に晒されたり、空気に晒されたりして劣化するのを防止するために設けられるものである。
封止層21は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性材料を用いて形成される。
(12)その他
図2には示されてないが、封止層21上に接着剤を介してカラーフィルタや上部基板を貼り合せてもよい。これらを貼り合せることによって、正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18、電子注入層19を水分および空気などからさらに保護できる。
3.有機EL表示パネル10の製造方法
以下、有機EL表示パネル10の製造方法について、図面を用いて説明する。
図3(a)〜(e)、図4(a)〜(d)および図5(a)〜(d)は、有機EL表示パネル10の製造における各工程での状態を示す模式断面図である。図6は、有機EL表示パネル10の製造工程を示すフローチャートである。
(1)基板11の形成
まず、図3(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成する(図6のステップS1)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
次に、図3(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(図6のステップS2)。具体的には、一定の流動性を有する樹脂材料を、例えば、ダイコート法により、基板11の上面に沿って、TFT層112による基板11上の凹凸を埋めるように塗布する。これにより、層間絶縁層12の上面は、基材111の上面に沿って平坦化した形状となる。
層間絶縁層12における、TFT素子の例えばソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホール(不図示)を形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するようにパターニングなどを用いて形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウエットエッチング法を用いてパターニングすればよい。
(2)画素電極13、正孔注入層15の形成
次に、図3(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
次に、図3(d)に示すように、画素電極材料層130上に正孔注入材料層150を形成する(図6のステップS4)。正孔注入材料層150は、例えば、反応性スパッタ法などを用いて形成することができる。
そして、図3(e)に示すように、画素電極材料層130と正孔注入材料層150とをエッチングによりパターニングして、副画素ごとに区画された複数の画素電極13と正孔注入層15とを形成する(図6のステップS3)。
なお、画素電極13、正孔注入層15の形成方法は上述の方法に限られず、例えば、画素電極材料層130をパターニングして画素電極13を形成してから、正孔注入層15を形成してもよい。
また、隔壁14を形成してから、正孔注入層15は湿式法によって形成するようにしてもよい。
(3)隔壁14の形成
次に、図4(a)に示すように、正孔注入層15および層間絶縁層12上に、隔壁14の材料である隔壁用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を正孔注入層15上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。
そして、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで隔壁14を形成する(図4(b),図6のステップS4)。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。
(4)正孔輸送層16の形成
次に、図4(c)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、塗布装置(後述)の塗布ヘッド301のノズル3011から吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布した後、乾燥させて、正孔輸送層16を形成する(図6のステップS5)。
(5)発光層17の形成
次に、図4(d)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、塗布ヘッド301のノズル3011から吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、乾燥させて発光層17を形成する(図6のステップS6)。
本実施の形態では、基板11を予め所定の温度に冷却することにより、開口部14a内に塗布されたインクをすばやく冷却してその粘度を大きくし、インク内部での対流を抑制することにより、発光層17の膜厚が可及的に均一になるようにしている。詳しくは後述する。
(6)電子輸送層18の形成
次に、図5(a)に示すように、発光層17および隔壁14上に、電子輸送層18を形成する(図6のステップS7)。電子輸送層18は、例えば、電子輸送性の有機材料を蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(7)電子注入層19の形成
次に、図5(b)に示すように、電子輸送層18上に、電子注入層19を形成する(図6のステップS8)。電子注入層19は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属を共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
(8)対向電極20の形成
次に、図5(c)に示すように、電子注入層19上に、対向電極20を形成する(図6のステップS9)。対向電極20は、ITO、IZO、銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。
(9)封止層21の形成
次に、図5(d)に示すように、対向電極20上に、封止層21を形成する(図6のステップS10)。封止層21は、SiON、SiN等を、スパッタリング法、CVD法などにより成膜することにより形成することができる。
これにより、有機EL表示パネル10が完成する。
4.発光層形成過程および発光層形成装置
(1)発光層形成過程
図7は、従来の湿式法による発光層の形成過程を模式的に示す図であり、層間絶縁層12や画素電極13、正孔注入層15などは図示を省略している。
図7(a)に示すように、塗布ヘッド301から有機層形成用のインク170を基板11上の開口部14aに滴下すると、同図(b)に示すように開口部14a内にインク溜まり171が形成される。
通常、この工程においては、基板11、インク170も室温(20℃〜25℃程度)とほぼ同じ温度となっている。
上述のようにインク170は、有機発光材料を揮発性の溶剤(有機溶媒)に溶解して形成されており、溶剤はインクの表面から徐々に蒸発していく。この蒸発の程度は一様ではなく、一般的にインク溜まり表面の隔壁14に近い端の部分(インク溜まり171表面の外周部)Eの方が、中央の部分Cよりも蒸発の速度が速く、これによって、インク溜まり171内部に対流が生じることが知られている。
すなわち、有機発光材料と溶剤の比重は、全く同一ではなく、組み合わせの種類によっては、有機発光材料の比重が溶剤の比重よりも大きくなったり小さくなったりする。上記のように溶剤の蒸発速度が部位によって異なることにより、インクの比重(密度)に部分的な差異が生じ、重力の影響を受けて相対的に比重の大きなインクが下方に移動しようとする。また、インクの密度に差があると、これを均一化しようとして粒子が拡散する力も発生する。さらには、温度分布の差によって起こるレーリー対流や表面張力差によって起こるマランゴニ対流なども誘発し、これらの対流が複雑に合わさった結果、図7(b)の太線の矢印で例示的に示すようにインクの対流が生じることになる。
このような対流が生じる結果、インクは、隔壁14の内側面に押し付けられながら当該内側面に沿って移動することになり、しかも、上述のようにインク溜まり171の外側(すなわち、隔壁14の内側面に近い側)ほど溶剤の蒸発速度が速いので、図7(c)に示すように隔壁14の内側面に付着しながら乾燥する量も多くなり(せり上がり部17b)、その分だけ中央部17aに大きく窪みができた状態で発光層17が形成されると考えられる。
なお、図7(b)において破線の矢印で示したインクの対流方向はあくまでも一例であり、有機発光材料と溶剤の組み合わせの仕方やその他の条件によっては、インクの対流方向が図7(b)に示したものと逆になる場合もあると考えられるが、いずれにしろ塗布されたインク内で対流が発生する以上、隔壁14の内側面に沿って移動するインクの量が増大し、図7(c)に示すような膜厚の不均一の問題が生じることに変わりはない。
したがって、溶剤の蒸発速度の部分的な差異に基づくインクの対流を抑制することが発光層の膜厚の均一化を図るための重要な要素である。
そこで、本発明者は、インクの対流を抑制すべく、塗布されたインクを冷却してインクの粘性を上げることを考えた。
図8は、本実施の形態に係る発光層17の形成過程を示す模式図である。
まず、基板11を冷却プレート1110により予め塗布時のインクの温度(第1の温度)よりも低い温度(第2の温度)に冷却しておく。
塗布ヘッド301から基板11上方の開口部14aに向けてインク170を吐出する(図8(a))。
インク溜まり171の表面からは、溶剤が部分的に異なる速度で蒸発するが、着弾後のインク170が基板11を介して冷却されて粘度が高くなると共に、冷却により溶剤全体の蒸発速度が遅くなってインク溜まり171からの部分的な蒸発速度の差が小さくなるため、対流速度が大きく抑制され(図8(b))、その結果、乾燥過程において隔壁14の内側面に沿って下降(あるいは上昇)するインク量も少なくなる。また、冷却によってインク溜まり171の外側(隔壁14の内側面に近い側)の乾燥速度自体も低下する。
これにより、隔壁14の内側面に付着して乾燥するインクの量も少なくなって、せり上がり部17bの幅が小さくなり、その結果として中央部17aの平坦性が増し、膜厚の均一性が向上する(図8(c))。
実験の結果、インクの対流速度を抑制して、従来よりも膜厚を均一化させる効果を得るためには、インクの冷却温度を、インクの塗布時の温度(使用する塗布装置による塗布に適した流動性(低い粘度)を有する温度(本実施の形態では、この温度が室温となるように、インクにおける有機材料や溶媒の種類および濃度を調整している))よりも10℃以上低くすることが望ましいことが分かった。
さらに、塗布後のインクを、塗布時のインクの粘度の2倍以上の粘度となる温度まで冷却する方が望ましく、具体的には、5℃以下であることが望ましい。
なお、インクの冷却温度が低ければ低いほど粘度が高まり、対流が抑制されて膜厚の均一の効果が得られると考えられる。しかし、必要以上に冷却すると電力の無駄な消費となる上、雰囲気中の水蒸気が結露すると、発光層などの有機層に吸収されて品質や寿命に影響を与えるので、結露を生じるような温度以下にすることは避けるべきである。したがって、当該雰囲気において結露が生じない温度が冷却温度の下限となる。
また、インクを塗布ヘッド301から吐出する前に冷却することはできない。この段階でインクの粘度が増加すると、ノズル3011が詰まって故障が生じ、また、インクの成分が析出して塊になって吐出されるため、開口部14a内に濡れ広がらず、却って膜厚の均一化が困難になるからである。
(2)発光層形成装置1000の構成
以下、上記図8で説明した有機EL表示パネル10の発光層17を湿式法で形成する発光層形成装置の構成について説明する。
図9は、本実施の形態に係る発光層形成装置1000の構成を示す模式図である。
同図に示すように、発光層形成装置1000は、有機発光材料を含むインク170を塗布するインク塗布部1100と、インク170が塗布された基板11を搬送する搬送部1200と、搬送された基板11上の発光層用のインクを短時間で乾燥させる乾燥部1300、およびこれらの動作を制御する制御部1400とを備える。
(2−1)インク塗布部1100
インク塗布部1100の印刷ステージ1120には、冷却プレート1110が設置されており、基板11は、冷却プレート1110上に載置され、インク170は、その塗布時の温度(本実施の形態では室温(20℃〜25℃))よりも低い温度(以下、「対流抑制温度」ともいう。)まで冷却される。この対流抑制温度は、本実施の形態では5℃としている。
なお、この発光層形成工程は、設定された対流抑制温度においても雰囲気中の水蒸気の結露が生じないような低湿度の環境下(ドライ環境)で行うことが望ましい。より理想的には、露点温度が−30℃以下(相対湿度が1%以下)のドライ環境にするのが望ましい。
図10は、冷却プレート1110の構成を示す模式的な縦断面図である。
冷却プレート1110は、金属などの熱伝導性の高い材料からなるベースプレート1111の裏面に、ペルチェ素子などの熱電変換素子1112を、その吸熱面をベースプレート1111の裏面に接触させた状態で複数個、例えば、平面視においてマトリクス状に配置してベースプレート1111が全体的に均一な温度に冷却されるようにする。基板11の冷却温度にムラが生じると基板11が変形してしまうおそれがあるからである。
熱電変換素子1112の裏面(放熱面)は印刷ステージ1120(図9)の上面に接触している。この印刷ステージ1120を熱導電性の高い材料で形成することにより、熱電変換素子1112の裏面からの放熱性を向上させて効率よく冷却できる。
また、ベースプレート1111には、ベースプレート1111の温度を監視するための温度検出センサ1113が付設される。制御部1400は、温度検出センサ1113からの検知出力に基づき熱電変換素子1112へ供給する電力を制御して、ベースプレート1111を目標となる対流抑制温度まで冷却した状態で維持する。
他の冷却プレート1210、1310についても、冷却プレート1110の構成と全く同じである。
図12は、インク塗布部1100の一例としての塗布装置の主要構成を示す図である。同図に示すように、塗布装置は、インク塗布テーブル200、ヘッド部300で構成される。
(ア)インク塗布テーブル
図12に示すように、インク塗布テーブル200は、いわゆるガントリー式の動作テーブルであり、基台のテーブルの上をガントリー部(移動架台)が一対のガイドシャフトに沿って移動可能に配されている。
具体的構成として、板状の基台201には、その上面の四隅に柱状のスタンド202A、202B、203A、203Bが立設されている。これらのスタンド202A、202B、203A、203Bに囲まれた内側領域には、印刷ステージ1120とその上に載置された冷却プレート1110があり、冷却プレート1110上に塗布対象となる基板が載置される。また、塗布直前にインクを吐出させることにより吐出特性を安定化させるために用いるインクパン(皿状容器)IPも配設されている。
スタンド202A、202Bおよびスタンド203A、203Bは、ガイドシャフト204A、204Bを、基台201の長手(Y)方向に沿って平行に保持している。
また、ガントリー部210は、リニアモータ205、206を介してガイドシャフト204A、204Bに保持されている。
この構成により、塗布装置の駆動時において、一対のリニアモータ205、206が駆動されることで、ガントリー部210がガイドシャフト204A、204Bの長手方向(Y軸方向)に沿ってスライド自在に往復運動する。
ガントリー部210には、L字型の台座からなる移動体(キャリッジ)220が配設される。移動体220にはサーボモータ221が配設され、当該モータの駆動軸の先端に不図示のギヤが取着されている。ギヤはガントリー部210の長手方向(X方向)に沿って形成されたガイド溝211に形成された微小ピッチのラックと噛合しており、サーボモータ221が駆動すると、移動体220はいわゆるピニオンラック機構によって、X軸方向に沿って往復自在に精密に移動する。
移動体220には、ヘッド部300が装着されており、移動体220をガントリー部210に対して固定した状態でガントリー部210をガイドシャフト204A、204Bの長手方向に沿って移動させることによって、また、ガントリー部210を停止させた状態で移動体220をガントリー部210の長手方向に沿って移動させることによって、塗布対象基板に対してヘッド部300を走査させることができる。ヘッド部300の主走査方向は行(Y軸)方向であり、副走査方向は列(X軸)方向である。
(イ)ヘッド部
ヘッド部300は、公知のピエゾ方式を採用し、塗布ヘッド301及び本体部302で構成されている。塗布ヘッド301は本体部302を介して移動体220に固定されている。本体部302はサーボモータを内蔵しており、塗布ヘッド301を上下方向(Z軸方向)に移動させる。
塗布ヘッド301は固定ステージSTに対向する面(吐出面)に複数のノズル3011(図12では不図示。図4(d)等参照)を備えており、これらのノズル3011は塗布ヘッド301の長手方向に沿って列状に配置されている。塗布ヘッド301に供給されたインクは、各ノズル3011から液滴として塗布対象基板に対して吐出される。
各ノズル3011における液滴の吐出動作は、各ノズル3011が備えるピエゾ素子(圧電素子)に与えられる駆動電圧によって制御される。制御部1400(図9)から、各ピエゾ素子に与える駆動信号を制御することにより、各ノズル3011からそれぞれ液滴吐出を行わせる。
(2−2)搬送部1200
図9に戻り、搬送部1200は、搬送ステージ1220と、搬送ステージ1220上に設置された冷却プレート1210と、冷却プレート1210および搬送ステージ1220とを乾燥部1300に向けて搬送するベルトコンベア装置1230を含む。
もちろん、ベルトコンベア装置1230の代わりに他の適当な移送装置、例えば、空気圧アクチュエータや油圧アクチュエータまたはリニアモータなどを駆動源として搬送ステージ1220をガイドレールに沿って移動させるような構成でも構わない。
(2―3)乾燥部1300
乾燥部1300は、冷却プレート1310を載置したステージ1320を気密な真空乾燥室1330内に配置してなる。不図示の扉を開けて搬送部1200により搬送されてきた基板11を冷却プレート1310上に載置し、扉を閉めて真空ポンプ(不図示)により気圧を下げ、真空もしくは真空に近い状態にする。これによりインク中の溶剤の蒸発が促進され短時間で完全に乾燥することができる。
この乾燥工程の間も、冷却プレート1310で基板11を冷却しているので、インクも低温のまま内部に対流があまり生じない状態で乾燥させることができ、膜厚のさらなる均一化が図れる。
(2−4)制御部1400
図11は、発光層形成装置1000における制御部1400の主要な構成を示すブロック図である。
同図に示すように制御部1400は、CPU(Central Processing Unit)1401、RAM(Random Access Memory)1402、ROM(Read Only Memory)1403、タイマー1404などからなる。
CPU1401は、発光層形成装置1000への電源投入時などにおいて、ROM1403から、発光層形成用のプログラムを読み出し、RAM1402を作業用記憶領域として当該プログラムを実行し、インク塗布部1100や搬送部1200、乾燥部1300を制御して、発光層形成動作を円滑に実行させる。また、タイマー1404は、各工程における処理時間を管理するためのものである。
制御部1400は、特に、各冷却プレート1110〜1310(冷却部)における温度検出センサからの検知信号を受けて、それぞれの熱電変換素子への電力供給量を調整して各冷却プレート1110〜1310が対流抑制温度になるように制御する。
(2−5)発光層形成工程における制御部1400の制御内容
図13は、制御部1400で実行される発光層形成工程における制御内容を示すフローチャートである。
まず、インク塗布部1100の冷却プレート1110〜1310を対流抑制温度である5℃まで冷却し維持する(ステップS101)。
基板11を例えばロボットハンドなどの適当な移し換え装置によりインク塗布部1100の冷却プレート1110上に載置する(ステップS102)。基板11自体は、大変薄いものなので、室温状態であった基板11およびその上層の層間絶縁層12などは、冷却プレート1110によって、数秒足らずで5℃まで低下する。
そして、塗布ヘッド301を走査させて、各色のインク170を予めプログラムされたパターンで、基板11上に塗布していく(ステップS103)。
全画素についてインク170の塗布が完了すると、上記と同様な移し換え装置により基板11を搬送部1200の冷却プレート1210上に載置し(ステップS104)、乾燥部1300の真空乾燥室1330まで搬送する(ステップS105)。
移し換え装置により、基板11を乾燥部1300の冷却プレート1310上に載置する(ステップS106)。
真空ポンプを動作させて乾燥部1300の真空乾燥室1330内の気圧を一定の値まで下げる(ステップS107)。そして、タイマー1404で計時して、予め実験などにより決定しておいた時間だけ真空乾燥室1330内に放置し(ステップS108:YES)、発光層17を完全に乾燥させた後、基板11を真空乾燥室1330から取り出して(ステップS109)、発光層形成工程を終了する。
なお、上記制御内容はあくまでも一例であり、本発明の内容はこれに拘束されない。
例えば、上記ではステップS101において、冷却部としての冷却プレート1110〜1310を同時に5℃まで冷却したが、対流抑制温度の範囲内であれば、必ずしも、全ての冷却プレートを同一温度にする必要もなく、また、塗布工程、搬送工程、乾燥工程のそれぞれの工程の実施に間に合うのであれば、同時でなく順次冷却を開始するようにしても構わない。ただし、製品ごとのばらつきをなくするために、塗布後のインクの温度管理は極めて重要であり、基板を載置するまでには各冷却プレートの温度を目標の対流抑制温度まで降下させて、その温度で維持するように制御することが望ましい。
また、基板11を冷却プレート1110ごと、インク塗布部1100から制御部1400まで搬送するような構成にしてもよい。この場合には冷却プレート1210、1310を省略することができる。
(3)検証
図14は、上記実施の形態に係る発光層形成工程よって形成された発光層の膜形状を、従来の工程により形成された膜形状と比較して示すグラフである。
同グラフの縦軸は、発光層の膜厚方向の高さをnm単位で示し、横軸は、開口部14a(図2参照)の開口幅方向における位置をμm単位で示す。なお、測定は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて行った。
グラフG1は、室温のインクを開口部14a内に塗布後、5℃まで冷却した状態で乾燥させたときの発光層17の表面形状を示す。因みに、5℃のときのインクの粘度は、吐出前の室温状態のインクの粘度の約2倍になっており、インク内部の対流が大きく抑制されている。
また、グラフG2は、従来のようにインクを冷却せずに室温のまま乾燥させた場合の発光層17の表面形状を示す。グラフG3は、インクを塗布する前の下地の表面形状を示す。
グラフG1とG2を比較しても明らかなように、本実施の形態に係る製造方法で成膜した発光層の方が、中央部において凹入しておらず、従来の場合よりも平坦部が拡大しており、膜厚の均一性が向上しているのが分かる。
なお、有機EL表示パネルの高精細化により画素の幅(開口部14a)の幅も例えば5μm〜30μm程度まで小さくなり、塗布装置により高精細のパターン印刷をするため、インクの流動性を上げることが望ましく、この場合にはインクにおける溶剤の割合が増えて更に対流しやすくなるので、上記のように冷却によりインク内の対流を抑制して得られる膜厚均一化の効果が、尚一層期待できる。
5.効果
上述のように本実施の形態によれば、次のような効果が得られる。
(1)塗布後のインクを冷却することによりインクの粘度が増大して、インク内部の対流が抑制されると共に、塗布されたインクの外側における溶剤の蒸発速度も遅くなる。これにより、隔壁側面に沿って移動しながら乾燥するインク量が少なくなるので、隔壁側面でのせり上がり部が減少し、それだけ中央部で凹入する程度が、従来の製造方法に比べて少なくなって、発光層の膜厚の均一化が促進される。これによって発光効率の改善、表示画像の品質向上、および長寿命化が図れる。
(2)塗布後にインクを冷却するので、塗布装置において不具合が生じるおそれがなく、今までのインク材料をそのまま使用できる。
(3)なお、先行技術として記載した特許文献3には、基板上に塗布されたインクをその塗布と同時もしくは直後に加熱した後、塗布されたインクの表面に紫外線を照射して、インク表面を仮硬化させ、その後、冷却する構成が開示されている。
この先行技術では、インクをまず加熱しているため、塗布されたインク内部の対流を促進することになるし、塗布後のインク表面は、本願の図7(b)でも示すように表面張力で中央部が上方に盛り上がっているので、この状態で紫外線を照射して仮硬化させたところで、膜厚が均一になるとは言えない。また、紫外線の照射後に基板を冷却しているが、加熱したインクの温度をどの程度まで降下させるかについて一切開示されていない。すなわち、先行技術では湿式法により形成された膜厚の不均一の主要因が、塗布されたインク内部の対流にあることが全く理解されておらず、本願と構成および効果上の差異は歴然である。
≪変形例≫
以上、本発明の一態様として、有機EL表示パネル及び有機EL表示パネルの製造方法の実施の形態について説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の説明に何ら限定を受けるものではない。以下では、本発明の他の態様例である変形例を説明する。
(1)上記実施の形態における発光層17の形成方法は、他の有機層を湿式法で形成する場合にも適用可能である。その場合には発光層形成装置1000と同じ構成の装置を有機層形成装置として使用し、形成すべき有機層の機能に応じたインクを使用すればよい。
なお、上記実施の形態による湿式法で形成可能な有機層として上記発光層のほか、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層などがある。これらのうち、少なくとも一つの有機層を上記実施の形態で形成することにより、製造コストを低減しながらも、従来よりも高品質な有機EL表示パネルを提供することができる。
(2)上記発光層の場合のように隔壁間の開口部に塗布するのではなく、いわゆるベタ塗りの場合でも、溶剤の蒸発速度はインク塗布面の端部分と中央部分で一律ではなく、必ずインク内部で対流が生じて膜厚の均一化を阻害するので、インク塗布後乾燥するまでに冷却することによって膜厚の均一化の効果が得られる。
(3)上記実施の形態では、図9に示すように冷却プレート1110で基板11の裏面の全面を冷却するようにしていたが、これに限らず、図15に示すように基板11の印刷エリア(有機EL素子の形成領域。なお、例えば、特開2012−252983号公報に開示されているように、画面表示領域における有機EL素子の周囲にダミー領域を備える場合には、それらの領域も含むのが望ましい。)に対応する部分のみを冷却するようにしてもよい。
また、冷却プレート1110は、ベースプレート1111を熱電変換素子1112で冷却するように構成したが、目標温度まで冷却できる冷却装置であれば、他の構成でも構わない。例えば、ベースプレート1111内に空洞を設けて、当該空洞内に冷却された液体もしくは気体を循環させて冷却するような構成でも構わない。空洞内に循環させる液体や気体の冷却は、冷蔵庫やエアコンに使用される公知の冷却サイクル(冷媒をコンプレッサーで凝縮して液化させ、これを減圧し蒸発しやすい状態にして、気化させることにより熱を奪い取るサイクル)を利用した冷却装置で行われる。
さらには、熱容量の大きなベースプレート1111を別途冷蔵室に保管して冷却しておき、必要に応じて交換するようにすることも可能である。
他の冷却プレート1210、冷却プレート1310においても上記と同様にしてもよい。
なお、ペルチェ素子と同様な熱電変換モジュールをフォトリソグラフィ法などで基板11内に形成し、基板11自体を冷却部とする構成も可能である。さらには隔壁内に熱電変換モジュールを形成することも将来的に可能になるかも知れない。
(4)上記実施の形態では、基板を冷却プレートの上に載置して、基板上方に塗布されたインクを冷却するようにしたが、それ以外の方法によって冷却するようにしてもよい。
例えば、搬送部1200において、図16に示すように搬送ステージ1220やベルトコンベア装置1230の全体を収納する収納室1240を設け、収納室1240内の雰囲気を、上記冷却サイクルを利用した冷却装置1241により冷却するようにしてもよい。
同様に、図17に示すように、乾燥部1300において、真空乾燥室1330内の雰囲気を冷却装置1331で冷却するようにしてもよい。
その他、塗布されたインクを対流抑制温度まで冷却できるのであれば、その構成や配置などは、特に限定されない。
(5)上記実施の形態では、インク塗布部1100における塗布工程、搬送部1200における搬送工程、乾燥部1300における乾燥工程の全ての工程において、基板上方に塗布されたインクを冷却するようにしたが、それらのうち少なくとも一つの工程においてインクを冷却するようにしてもよい。インクの塗布から乾燥に至るまでのどこかの段階で温度が塗布時の温度より低くなるようにすれば、少なくとも従来よりはインクの対流を抑制でき、有機層の膜厚の均一化に資するからである。
もっとも、乾燥部1300においては、必ずしも塗布されたインクが完全に乾燥するまで冷却する必要はない。インクがある程度乾燥して膜厚に影響を与える対流が生じないと考えられる時間の経過後は、それ以上強制的に冷却する必要がないからである。この経過時間は予め実験などにより求めることができる。
(6)隔壁14の形成工程(図6のステップS4)において、さらに、隔壁14の表面を所定の有機溶媒等によって表面処理するか、プラズマ処理を施すこととしてもよい。これにより、隔壁14の表面に撥液性が付与され、さらに隔壁14側面へのインクの付着量を低減させて、発光層17の膜厚の均一性を向上させることが期待できる。
(7)上記実施の形態においては、陰極が対向電極であり、かつ、トップエミッション型の有機EL表示装置であるとした。しかしながら、例えば、陽極が対向電極であり、陰極が画素電極であってもよい。また、例えば、ボトムエミッション型の有機EL表示装置であってもよい。
(8)また、上記実施の形態においては、有機EL素子1は、電子輸送層18や電子注入層19、正孔注入層15や正孔輸送層16を有する構成であるとしたが、これに限られない。例えば、電子輸送層18を有しない有機EL素子や、正孔輸送層16を有しない有機EL素子であってもよい。また、例えば、正孔注入層15と正孔輸送層16とに替えて、単一層の正孔注入輸送層を有していてもよい。また、例えば、発光層17と電子輸送層18との間に、アルカリ金属からなる中間層を備えてもよい。
(9)上記実施の形態では、発光層形成装置1000に真空乾燥装置からなる乾燥部1300を設けたが、必ずしも真空乾燥装置は必須ではなく、製造ラインにおいて時間的に余裕があれば、次段の装置に移送するまでの間に大気圧の雰囲気下で乾燥させるようにしてもよい。
(10)本開示に係る有機EL表示パネルの製造方法では、基板等を冷却するため、その際に熱歪みが発生して基板等が変形するおそれがあるので、基板、層間絶縁層、隔壁などの材料として、できるだけ熱膨張係数の小さな有機材料を用いる方が望ましい。
(11)上記実施の形態におけるインクの塗布装置として、インクを連続的に基板上に吐出するディスペンサー方式の塗布装置やその他の印刷装置を用いることができる。
(12)上記実施の形態に係る有機EL表示パネルは、アクティブマトリクス方式を採用したが、これに限られず、パッシブマトリクス方式を採用してもよい。また、画素ごとに隔壁で囲んで格子状に隔壁を形成するいわゆるピクセルバンク方式のみならず、列状に隔壁を形成するラインバンク方式の有機EL表示パネルであっても構わない。もっとも、対流による隔壁側面へのインクの付着が、膜厚の不均一の主因であることから考えれば、ピクセルバンク方式の有機EL表示パネルの方が、本開示に係る製造方法を採用することによる効果をより一層発揮することができる。
≪補足≫
以上、本開示に係る有機EL表示パネルの製造方法および製造装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本発明は、塗布装置を利用した有機EL表示パネルの製造方法等に適用される。
1 有機EL素子
10 有機EL表示パネル
11 基板
12 層間絶縁層
13 画素電極
14 隔壁
14a 開口部
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子輸送層
19 電子注入層
20 対向電極
21 封止層
100 有機EL表示装置
1000 発光層形成装置
1100 インク塗布部
1110、1210、1310 冷却プレート(冷却部)
1112 熱電変換素子
1113 温度検出センサ
1120 印刷ステージ
1200 搬送部
1220 搬送ステージ
1230 ベルトコンベア装置
1240 収納室
1241、1331 冷却装置
1300 乾燥部
1330 真空乾燥室
1400 制御部

Claims (17)

  1. 基板上に、有機層を含む有機EL素子を複数配してなる有機EL表示パネルの製造方法であって、
    有機材料を溶剤に溶解もしくは分散してなるインクを、前記基板上方の予め設定された塗布領域に塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程において塗布されたインクを、当該インクが乾燥するまでの間に冷却して、塗布時におけるインクの第1の温度よりも低い第2の温度まで下げる冷却工程と、
    を含む
    有機EL表示パネルの製造方法。
  2. 前記第2の温度は、前記第1の温度よりも10℃以上低い
    請求項1に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  3. 前記第2の温度は、5℃以下である
    請求項1または2に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  4. 前記冷却工程は、前記塗布されたインクを、その塗布と同時に冷却する
    請求項1から3までのいずれかに記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  5. 前記塗布工程でインクが塗布された基板を後段の装置に搬送する搬送工程を含み、
    前記冷却工程は、前記搬送工程で基板が搬送される間に前記塗布されたインクを冷却する
    請求項1から4までのいずれかに記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  6. 前記塗布されたインクを乾燥部で乾燥させる乾燥工程と、前記塗布工程でインクを塗布する位置から前記乾燥部の位置まで、前記基板を搬送する搬送工程とを含み、
    前記冷却工程は、前記搬送工程で基板が搬送される間および/または前記乾燥工程でインクが乾燥されている間に前記塗布されたインクを冷却する
    請求項1から4までのいずれかに記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  7. 前記乾燥部は、真空乾燥装置である
    請求項6に記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  8. 前記有機層は、有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層のうち、少なくとも一つの層を含む
    請求項1から7までのいずれかに記載の有機EL表示パネルの製造方法。
  9. 基板上に、有機層を含む有機EL素子を複数配してなる有機EL表示パネルの製造装置であって、
    有機材料を溶剤に溶解もしくは分散してなるインクを、前記基板上方の予め設定された塗布領域に塗布する塗布部と、
    前記塗布部により塗布されたインクを、当該インクが乾燥するまでの間に冷却して塗布時におけるインクの第1の温度よりも低い第2の温度まで低下させる冷却部と、
    を備える
    有機EL表示パネル製造装置。
  10. 前記第2の温度は前記第1の温度よりも10℃以上低い
    請求項9に記載の有機EL表示パネル製造装置。
  11. 前記第2の温度は、5℃以下である
    請求項9または10に記載の有機EL表示パネル製造装置。
  12. 前記冷却部は、前記塗布されたインクを、その塗布と同時に冷却する
    請求項9から11までのいずれかに記載の有機EL表示パネル製造装置。
  13. 前記冷却部は、冷却プレートを含み、当該冷却プレート上に前記基板を載置することにより、前記基板を介して前記塗布されたインクを冷却する
    請求項9から12までのいずれかに記載の有機EL表示パネル製造装置。
  14. 前記塗布部でインクが塗布された基板を後段の装置に搬送する搬送部を備え、
    前記冷却部は、前記搬送部により基板が搬送される間に前記塗布されたインクを冷却する
    請求項9から13までのいずれかに記載の有機EL表示パネル製造装置。
  15. 前記塗布部で塗布されたインクを乾燥させる乾燥部と、前記塗布部から前記乾燥部へ前記基板を搬送する搬送部とを備え、
    前記冷却部は、前記搬送部により基板が搬送される間および/または前記乾燥部で乾燥している間に前記塗布されたインクを冷却する
    請求項9から13までのいずれかに記載の有機EL表示パネル製造装置。
  16. 前記乾燥部は、真空乾燥装置を含む
    請求項15に記載の有機EL表示パネル製造装置。
  17. 前記有機層は、有機発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層および電子輸送層のうち、少なくとも一つの層を含む
    請求項9から16までのいずれかに記載の有機EL表示パネル製造装置。
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