JP2020155766A - 自発光素子及び自発光素子の製造方法、並びに自発光表示装置、電子機器 - Google Patents

自発光素子及び自発光素子の製造方法、並びに自発光表示装置、電子機器 Download PDF

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Hironori Tsujimura
裕紀 辻村
和弘 横田
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和弘 横田
英幸 白波瀬
Hideyuki Shirahase
英幸 白波瀬
米田 和弘
Kazuhiro Yoneda
和弘 米田
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Abstract

【課題】電子輸送層中にドープされている金属が、外部の酸素や水分によって劣化して短期間で駆動電圧が急上昇するのを抑制して、有機EL素子の発光効率の低下を可及的に抑制し、長寿命化を図る。【解決手段】画素電極11と、前記画素電極11の上方に配された有機発光層14と、前記有機発光層14上方に配され、仕事関数の低い金属がドープされた電子輸送層23と、前記電子輸送層23の上方に配された対向電極18とを備え、前記電子輸送層23は、第1層部分15、第2層部分16、第3層部分17を順に積層した3層構造を有し、第2層部分16における金属のドープ濃度が、各第1層部分15と第3層部分17における金属のドープ濃度よりも低い。【選択図】図4

Description

本発明は、有機電界発光素子(以下「有機EL素子」と称する)などの自発光素子、及びその製造方法、並びに当該自発光素子を基板上に行列状に配した自発光パネルを画像表示部として用いた自発光表示装置、電子機器に関する。
近年、発光型のディスプレイとして、基板上に行列方向に沿って、有機EL素子を複数配列した有機ELパネルが、電子機器のディスプレイとして実用化されている。有機EL素子は、陽極と陰極の一対の電極対の間に有機発光材料を含む有機発光層が配設された基本構造を有し、駆動時に一対の電極対間に電圧を印加し、陽極から有機発光層に注入される正孔と、陰極から有機発光層に注入される電子との再結合に伴って発生する電流駆動型の自発光素子である。
通常、このような有機ELパネルにあっては、陰極からの有機発光層への電子の注入性を向上させるために、陰極と有機発光層との間に電子輸送層が設けられている。光の干渉効果による光取り出し向上を目的として陰極として銀等の金属薄膜やIZO等の透明金属酸化膜が用いられるが、これらの陰極と有機発光層とはLUMOのエネルギー準位に差がありエネルギー障壁が大きいため、電子注入性がよいとは言えない。
そこで、例えば、特許文献1には、電子輸送層を形成する有機層に、アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物をドープさせた構成が開示されている。
このようなアルカリ金属等は、仕事関数が低く、陰極から電子を注入・輸送する能力が高いので、有機EL素子の発光に必要な電流を供給するために陽極と陰極に印加する電圧(以下、「駆動電圧」という。)を低く抑えることができ、消費電力の低減に資する。
特開2009−94456号公報
ところが、このような構成の有機EL素子において、特定の条件の下での駆動時間が一定以上になると駆動電圧が急激に上昇し、これにより、有機EL素子の輝度が低下し、製品寿命が短くなる場合がある。
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであって、良好な発光効率を確保しつつ、急激な駆動電圧の上昇を抑えて、長寿命化が可能な自発光素子、及びその製造方法、並びに当該自発光素子を用いた自発光表示装置、電子機器を提供することを目的とする。
本開示の一態様に係る自発光素子は、第1電極と、前記第1電極の上方に配された発光層と、前記発光層上方に配され、金属がドープされた機能層と、前記機能層の上方に配された第2電極と、を備え、前記機能層は、3層以上の多層構造を有し、その最上層と最下層の間の中間層における金属のドープ濃度が、前記最上層と前記最下層における金属のドープ濃度よりも低いことを特徴とする。
また、本開示の別の態様に係る自発光素子は、第1電極と、前記第1電極の上方に配された発光層と、前記発光層上方に配され、金属がドープされた機能層と、前記機能層の上方に配された第2電極と、を備え、前記機能層が、その膜厚方向において、前記発光層側の領域と、前記第2電極側の領域と、前記発光層側の領域と前記第2電極側の領域間の中間領域と、に分かれており、前記中間領域の金属のドープ濃度が、前記発光層側の領域および前記第2電極側の領域の各ドープ濃度よりも低いことを特徴とする。
上記態様によれば、良好な発光効率を確保しつつ、駆動電圧が急激に上昇することを抑制し、長寿命化が可能な自発光素子や自発光表示装置、電子機器を提供できる。
本開示の一態様に係る有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。 上記有機EL表示装置における有機ELパネルの画像表示面の一部を拡大した模式平面図である。 図2のA−A線に沿った模式断面図である。 本開示の一態様に係る有機EL素子の要部における積層構造を模式的に示す図である。 本開示の一態様に係る有機EL素子における駆動電圧上昇抑制の効果を電子輸送層が単層および2層の場合と比較して示すグラフである。 本開示の一態様に係る有機EL素子の製造工程の一例を示すフローチャートである。 (a)〜(f)は、本開示の一態様に係る有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 (a)〜(d)は、図7に続く有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 (a)、(b)は、図8に続く有機EL素子の製造過程を模式的に示す部分断面図である。 本開示の一態様に係る有機EL素子における電子輸送層の別の積層構造の例を示す図である。 本開示の一態様に係る有機EL素子における電子輸送層のさらに別の積層構造の例を示す図である。 (a)は、本開示の一態様に係る有機EL素子における電子輸送層のさらに別の例を示す図であり、(b)、(c)は、当該電子輸送層の膜厚方向におけるYbのドープ濃度の変化の一例を示すグラフである。 本開示の一態様に係る有機EL表示装置を搭載した電子機器としてテレビ装置の例を示す図である。 (a)は、異なる環境温度に対する従来の有機EL素子の駆動電圧の変化状態を示すグラフであり、(b)は、従来の有機EL素子に通電する負荷電流を増加させた場合の駆動電圧の変化状態を示すグラフである。 (a)〜(d)は、電子輸送層におけるドープ金属の酸化により電子輸送層における電子注入・輸送性が劣化することを説明するための図である。 有機EL素子における発光層をウエットプロセスで形成したときにおける負荷電流の副画素内における集中を模式的に示す図である。
≪本開示の一態様に至った経緯≫
特許文献1にもあるように、従来の有機EL素子は、陰極と有機発光層の間に、有機発光層への電子の移動を容易にするために、有機材料に低仕事関数のアルカリ金属やアルカリ土類金属をドープした電子輸送層を介在させ、これにより良好なキャリアバランスを維持して有機発光層における発光効率が最適になるように構成されている。
ところが、このような従来の構成によれば、環境温度が一定以上になったり、負荷電流が必要以上に大きくなったりすると、駆動時間の経過と共に急激に駆動電圧が上昇してしまうという問題があることが分かった。
図14(a)は、有機EL素子の環境温度が、25℃、50℃、75℃、85℃の場合のそれぞれについて、有機EL素子を発光させるための所定の駆動電流となるように定電流制御した場合における、駆動電圧の変化(駆動初期からの電圧上昇幅)を示す実験結果である。横軸が、有機EL素子の連続駆動時間(経過時間[h])を示し、縦軸が、駆動開始時からの駆動電圧の上昇幅(ΔV[V])を示している。
なお、本例では、駆動電流を、通常の駆動時の電流の2倍(約12mA/cm2)として、加速実験した結果が示されている。
図14(a)に示すように環境温度が、25℃(線G21)、50℃(線G22)、75℃(線G23)の場合には、1000時間を経過しても、ほとんど駆動電圧の上昇が見られなかったが、85℃(線G24)になると、500時間を経過すると突然、駆動電圧が急上昇するため、有機ELパネルの寿命が短くなってしまう。
今後の有機EL素子の利用の多様性を考えると、例えば、自動車のフロントガラスの内側などでは、夏の炎天下において85℃に至るおそれが十分あるので、このような高温度の使用環境でも十分耐久性のある有機EL素子が望まれる。
また、図14(b)は、有機EL素子に通電する負荷電流の増加と駆動電圧の上昇幅との関係を示すグラフである。本実験では、環境温度を85℃として加速実験を行った。
本実験例では、線G31の負荷電流は、6mA/cm2であり、線G32、G33と左側に移るほど、負荷電流が大きくなって線G34では、負荷電流は、18mA/cm2となっている。
本実験により、有機EL素子への負荷電流が大きくなるほど、駆動電圧が早期に急上昇することが分かった。
本願の発明者らは、図14(a)、(b)の一連の実験結果から、駆動電圧が急上昇する原因について次のように考察した。
図15(a)〜(d)は、上記考察の結果を説明するための、模式図である。
有機EL素子を構成する各機能層は、外部の水分や酸素に晒されるとその特性が劣化するので、通常、陰極の上部は全面が封止層で覆われている。
ところが、当該封止層により完全に外部の酸素や水分の浸入を阻止することは難しく、極めて微少ながらも有機EL素子内部に染み込んでくる。特に、フレキシブルな有機ELパネルでは、その可撓性を確保するため、封止層の材料や膜厚に制限があり、酸素や水分の浸入を完全に阻止することには限界がある。また、封止層を形成する前の製造工程において水分が残留する場合もあり得る。
有機EL素子内部には、陰極と陽極間に印加された電圧により電場が形成され、その膜厚方向に図15(a)に示すような電位勾配が形成されている。酸素分子や水分子の一部は、分解により酸素イオン(O2-)、水酸化物イオン(OH-)などのマイナスイオン(以下、「酸素イオン等」という。)になり、図15(a)の電位勾配に沿って電子輸送層(ETL層)523内を上部の陰極518から下方の有機発光層(EML層)514に向けて移動する(図15(b)参照)。
一方、環境温度が上昇するに連れて、電子輸送層523内のドープ金属の活性が高くなり、その一部もしくは大部分が、酸素イオン等と反応して金属酸化物となってしまうため、ドープ金属であるアルカリ金属等は、その特性である電子注入性を大きく損なう。
これにより、特に電子輸送層523のLUMOのエネルギー準位(以下、「LUMO準位」という)と、有機発光層514のLUMO準位との差が広がって、エネルギー障壁が大きくなり、電子が電子輸送層523から有機発光層514へ移動しにくくなる(図15(d)参照)。
定電流制御において有機発光層に一定の電流を供給するため駆動電圧が調整されるが、上述のようにドープ金属の酸化が進み、エネルギー障壁が大きくなればなるほど、電子が移動しにくくなるため、駆動電圧を大きくしなければならない。
そして、駆動電圧が大きくなるほどアルカリ金属等のイオン化が促進され、酸素イオン等との反応が加速度的に生じるため、駆動電圧も急激に上昇するものと考えられる。
他方、図14(b)に示すように負荷電流が増大すると、ドープ金属が活性化すると共に、酸素イオン等を陰極から陽極に向けて牽引する作用が大きくなり、ドープ金属が膜厚方向に連続して分散しているため、連鎖的にドープ金属が酸化され、この場合でも駆動電圧が急上昇してしまう。
特に、有機発光層514を、インクを塗布して乾燥させて形成する手法(ウエットプロセス)によって形成する場合には、有機発光層514の表面を完全に平坦化するのは難しい。
図16は、ウエットプロセスによって形成された有機EL素子の模式断面図を示す。
同図に示すように、画素電極511上であって、一対の隔壁522間の開口部に正孔注入層512、正孔輸送層513が積層され、次いで有機発光層514がウエットプロセスによって形成されるが、周知のように塗布されたインクは、隔壁522に接触する端の部分の乾燥が早くなり、遅れて中央部の乾燥が進むので、どうしても有機発光層514中央部の膜厚が端の部分に比べて若干薄くなってしまう。
有機発光層514の膜厚が薄い部分の方が、他の箇所よりも抵抗値が低くなるので、画素電極511と対向電極518に電圧を印加すると、電流は、電子輸送層523の中央部(破線Bで囲んだ範囲)に集中して流れる。そのため、この部分の負荷電流が大きくなり、図14(b)で説明したようにドープ金属の酸化が促進されて駆動電圧が急上昇するおそれがより高くなる。
このような問題は、自発光素子として有機EL素子を用いた有機ELパネルに限らず、発光層が、量子ドット発光素子(QLED:Quantum dot Light Emitting Diode)からなる量子ドットパネルなど、およそ自発光素子を備え、ウエットプロセスにより機能層を形成する自発光パネルについて共通に生じ得る。
そこで、本願発明者らは、環境温度の上昇や負荷電流の集中による駆動電圧の急上昇が十分抑制された長寿命の自発光素子の構造を開発すべく、鋭意研究の結果、本開示の一態様に至ったものである。
≪本開示の一態様の概要≫
本開示の一態様に係る自発光素子は、第1電極と、前記第1電極の上方に配された発光層と、前記発光層上方に配され、金属がドープされた機能層と、前記機能層の上方に配された第2電極と、を備え、前記機能層は、3層以上の多層構造を有し、その最上層と最下層の間の中間層における金属のドープ濃度が、前記最上層と前記最下層における金属のドープ濃度よりも低い。
係る態様により、外部から浸入した水分や酸素が、機能層における発光層側の最下層に到達するまでの時間を大幅に遅延させて、駆動電圧の急上昇を回避することができる。
本開示の一態様において、前記第1電極は陽極であり、前記第2電極は陰極であり、前記機能層にドープされた金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属に属する金属群から選択された1または2以上の金属である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属に属する金属は、仕事関数が低いので、陰極からの電子注入性を向上させることができる。
本開示の一態様において、前記機能層は、ホスト材料として電子輸送性および/または電子注入性を有する有機材料を含む。
これにより、電子輸送層の中間層のドープ金属の濃度を低くしても一定の電子の移動を確保できる。
本開示の一態様において、前記中間層には、前記金属がドープされていないノンドープ層が含まれる。
中間層におけるノンドープ層の介在により、酸素や水分の、機能層の最下層への進行がより抑制される。
本開示の一態様において、前記ノンドープ層の膜厚は、5nm以上である。
これにより、ノンドープ層における酸素や水分の進行抑制の効果を十分得ることができる。
本開示の一態様において、前記機能層が、3層構造である。
これにより、最小の積層数で駆動電圧の急上昇を回避でき、製造コストの点で優れる。
本開示の一態様において、前記機能層の前記最下層および前記最上層の各層の膜厚は、5nm以上30nm以下である。
また、本開示の一態様において、前記機能層の前記最下層および前記最上層の各層における金属のドープ濃度は、10wt%以上60wt%以下である。
これにより、電子注入特性を向上させて発光効率を向上させつつ、ドープ金属の濃度が高すぎることにより、光透過率が減少するのを回避できる。
また、本開示の一態様において、前記機能層の前記最下層における金属のドープ濃度は、前記最上層における金属のドープ濃度よりも高い。
特に、発光層と、これに近接する機能層の最下層間におけるエネルギー障壁を低くすることにより、電子注入性が改善されるのであるから、ドープ金属の全量が同じであるなら、最下層のドープ濃度を最上層のドープ濃度より高くすることが有利である。
また、本開示の別態様に係る自発光素子は、第1電極と、前記第1電極の上方に配された発光層と、前記発光層上方に配され、金属がドープされた機能層と、前記機能層の上方に配された第2電極と、を備え、前記機能層が、その膜厚方向において、前記発光層側の領域と、前記第2電極側の領域と、前記発光層側の領域と前記第2電極側の領域間の中間領域と、に分かれており、前記中間領域の金属のドープ濃度が、前記発光層側の領域および前記第2電極側の領域の各ドープ濃度よりも低い。
係る態様によっても、外部から浸入した水分や酸素が、機能層における発光層側の領域に到達するまでの時間を大幅に遅延させて、駆動電圧の急上昇を回避することができる。
また、本開示の一態様において、前記発光層は塗布膜である。
発光層が、塗布膜である場合には、発光層の膜厚の中央部が、薄くなり、この部分に負荷電流が集中するおそれがあるが、この場合でも、機能層を多層構造として、その中間層を最下層および最上層の金属のドープ濃度より低くすることにより、水分や酸素の最下層への浸入を大幅に遅延させて駆動電流の急上昇を回避することができる。
また、本開示の一態様に係る自発光表示装置は、基板上方に上記のいずれかの自発光素子を複数、行列状に配列してなる自発光パネルと、前記自発光パネルを駆動して画像を表示させる駆動部とを備える。
また、本開示の一態様に係る電子機器は、画像表示部として上記の自発光表示装置を備えてなる。
係る自発光表示装置および電子機器は、表示パネルの発光効率に優れ、寿命も長くすることができる。
また、本開示の別態様に係る自発光素子の製造方法は、第1電極を形成する第1工程と、前記第1電極の上方に発光層を形成する第2工程と、前記発光層上方に、金属がドープされた層を含む3層以上の多層構造の機能層を形成する第3工程と、前記機能層の上方に、第2電極を形成する第4工程と、を含み、前記多層構造の機能層は、その最上層と最下層の間の中間層における金属のドープ濃度が、前記最上層と前記最下層における金属のドープ濃度よりも低い。
また、本開示の一態様においては、上記中間層には、前記金属がドープされていないノンドープ層が含まれている。
また、本開示の別態様に係る自発光素子の製造方法は、第1電極を形成する第1工程と、前記第1電極の上方に発光層を形成する第2工程と、前記発光層上方に、金属がドープされた機能層を形成する第3工程と、前記機能層の上方に、第2電極を形成する第4工程と、を含み、前記機能層が、その膜厚方向において、前記発光層側の領域と、前記第2電極側の領域と、前記発光層側の領域と前記第2電極側の領域との間の中間領域と、に分かれており、前記中間領域の金属のドープ濃度が、前記発光層側の領域および前記第2電極側の領域の各ドープ濃度よりも低い。
これにより、外部の水分や酸素が、機能層の最下層に至るまでの時間を大幅に遅延させることができ、長寿命の自発光素子を提供することができる。
なお、本明細書における開示の態様において「上」とは、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)を指すものではなく、自発光素子の積層構造における積層順を基に、相対的な位置関係により規定されるものである。具体的には、自発光素子において、基板の主面に垂直な方向であって、基板から積層物側に向かう側を上方向とする。また、例えば「基板上」と表現した場合は、基板に直接接する領域のみを指すのではなく、積層物を介した基板の上方の領域も含めるものとする。また、例えば「基板の上方」と表現した場合、基板と間隔を空けた上方領域のみを指すのではなく、基板上の領域も含めるものとする。
≪実施形態≫
以下、本開示の一態様として、自発光素子が有機EL素子である場合、および当該有機EL素子を用いた有機ELパネル、有機EL表示装置について、図面を参照しながら説明する。なお、図面は、模式的なものを含んでおり、各部材の縮尺や縦横の比率などが実際とは異なる場合がある。
1.有機EL表示装置1の全体構成
図1は、本実施形態に係る有機EL表示装置1の全体構成を示すブロック図である。有機EL表示装置1は、例えば、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯端末、業務用ディスプレイ(電子看板、商業施設用大型スクリーン)などに用いられる表示装置である。
有機EL表示装置1は、有機ELパネル10と、これに電気的に接続された駆動制御部200とを備える。
有機ELパネル10は、本実施形態では、上面が長方形状の画像表示面であるトップエミッション型の表示パネルである。有機ELパネル10では、画像表示面に沿って複数の有機EL素子(不図示)が配列され、各有機EL素子の発光を組み合わせて画像を表示する。なお、有機ELパネル10は、一例として、アクティブマトリクス方式を採用している。
駆動制御部200は、有機ELパネル10に接続された駆動回路210と、計算機などの外部装置又はアンテナを有する受信装置に接続された制御回路220とを有する。駆動回路210は、各有機EL素子に電力を供給する電源回路、各有機EL素子への供給電力を制御する電圧信号を印加する信号回路、一定の間隔ごとに電圧信号を印加する箇所を切り替える走査回路などを有する。
制御回路220は、外部装置や受信装置から入力された画像情報を含むデータに応じて、駆動回路210の動作を制御する。
なお、図1では、一例として、駆動回路210が有機ELパネル10の周囲に4つ配置されているが、駆動制御部200の構成はこれに限定されるものではなく、駆動回路210の数や位置は適宜変更可能である。また、以下では説明のため、図1に示すように、有機ELパネル10上面の長辺に沿った方向をX方向、有機ELパネル10上面の短辺に沿った方向をY方向とする。
2.有機ELパネル10の構成
(A)平面構成
図2は、有機ELパネル10の画像表示面の一部を拡大した模式平面図である。有機ELパネル10では、一例として、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)(以下、単にR、G、Bともいう。)にそれぞれ発光する副画素100R、100G、100Bが行列状に配列されている。副画素100R、100G、100Bは、X方向に交互に並び、X方向に並ぶ一組の副画素100R、100G、100Bが、一つの画素Pを構成している。
画素Pでは、階調制御された副画素100R、100G、100Bの発光輝度を組み合わせることにより、フルカラーを表現することが可能である。
また、Y方向においては、副画素100R、副画素100G、副画素100Bのいずれかのみが並ぶことでそれぞれ副画素列CR、副画素列CG、副画素列CBが構成されている。これにより、有機ELパネル10全体として画素Pが、X方向及びY方向に沿った行列状に並び、この行列状に並ぶ画素Pの発色を組み合わせることにより、画像表示面に画像が表示される。
副画素100R、100G、100Bには、それぞれR、G、Bの色に発光する有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)(図3参照)が配置されている。
本例では、各副画素100R、100G、100Bは、列方向(Y方向)に延伸する列隔壁22Yと行方向(X方向)に延伸する行隔壁22Xにより囲まれた、いわゆるピクセルバンク方式が採用されている。
なお、以下では、列隔壁22Yと行隔壁22Xを特に区別せずに、単に「隔壁22」という場合もある。
(B)断面構成
図3は、図2のA−A線に沿った模式断面図である。
有機ELパネル10において、一つの画素は、R、G、Bをそれぞれ発光する3つの副画素からなり、各副画素は、対応する色を発光する有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)で構成される。
各発光色の有機EL素子2(R)、2(G)、2(B)は、基本的には、ほぼ同様の構成を有するので、これらを特に区別しないときは、有機EL素子2として説明する。
図3に示すように、有機EL素子2は、基板21、画素電極(陽極)11、正孔注入層12、正孔輸送層13、有機発光層14、隔壁22、電子輸送層23、対向電極(陰極)18、封止部26などからなる。
なお、本実施形態では、基板21、電子輸送層23、対向電極18、および、封止部26などは、副画素ごとに形成されているのではなく、有機ELパネル10が備える複数の有機EL素子に共通して形成されている。
(1)基板21
基板21は、絶縁材料からなる基材上に各有機EL素子2の駆動回路であるTFT(Thin Film Transistor)層を形成し、その上にさらに層間絶縁層を形成してなる。TFT層には、副画素ごとに公知の駆動回路が形成されている。
基材としては、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、硫化モリブデン、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、マグネシウム、鉄、ニッケル、金、銀などの金属基板、ガリウム砒素などの半導体基板等を採用することができる。
特に、フレキシブルな有機ELパネルの場合には、プラスチック基板が使用され、具体的な材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうち1種、または2種以上を積層した積層体を用いることができる。
また、層間絶縁層は、絶縁性の樹脂材料からなり、TFT層の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。
なお、図3の断面図には示されていないが、基板21の層間絶縁層には、副画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
(2)画素電極11
画素電極11は、基板21の層間絶縁層上に形成されている。画素電極11は、副画素毎に設けられ、コンタクトホールを通じて対応するTFT層の駆動回路と電気的に接続されている。画素電極11は、光反射性の金属材料からなる金属層を含み、本実施形態においては陽極として機能する。
光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、MoW(モリブデンとタングステンの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などが挙げられる。
画素電極11は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
(3)隔壁22
隔壁22は、画素電極11の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で基板21上に形成されている。
隔壁22は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。隔壁22は、有機発光層14を塗布法で形成する場合には、塗布されたインクがあふれ出ないようにするための構造物として機能し、有機発光層14を蒸着法で形成する場合には、蒸着マスクを載置するための構造物として機能する。本実施形態では、隔壁22は、樹脂材料からなり、隔壁22の材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、シロキサン系樹脂、フェノール系樹脂が挙げられる。本実施形態においては、フェノール系樹脂が用いられている。
(4)正孔注入層12
正孔注入層12は、画素電極11から有機発光層14への正孔の注入を促進させる目的で、画素電極11上に設けられている。正孔注入層12は、例えば、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、V(バナジウム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などの酸化物、あるいは、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)などの導電性ポリマー材料からなる。これらのうち、酸化金属からなる正孔注入層12は、仕事関数が大きく、有機発光層14に対し安定的に正孔を注入する。
(5)正孔輸送層13
正孔輸送層13は、正孔注入層12から注入された正孔を有機発光層14へ輸送する機能を有する。正孔輸送層13は、例えば、ポリフルオレンやその誘導体、あるいは、ポリアリールアミンやその誘導体などの高分子化合物などからなる。
(6)有機発光層14
有機発光層14は、隔壁22の開口部22a(図7(f)等参照)内に形成されており、正孔と電子の再結合により、R、G、Bの各色の光を発光する機能を有する。
有機発光層14の材料としては、公知の材料を利用することができる。具体的には、例えば、オキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
(7)電子輸送層23
電子輸送層(機能層)23は、対向電極18から供給される電子を有機発光層14側へと注入・輸送する機能を有するものであって、本実施形態では、有機発光層14側から順に第1層部分15、第2層部分16、第3層部分17を積層してなる3層構造としている。
各層は、電子輸送性および/または電子注入性を有する有機材料をホスト材料として、最下層の第1層部分15と最上層の第3層部分17には、仕事関数の低い金属が所定量ドープされており、中間層である第2層部分16には、上記金属がドープされていない構成となっている。詳しくは後述する。
電子輸送性・注入性を有する有機材料(ホスト材料)として、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられるが、これらに限定されない。
また、仕事関数の低い金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類元素(ランタノイド)(以下、「アルカリ金属等」と称する。)に属する金属群から選択された1もしくは2以上の金属が採用されるが、そのなかでも、イオン化エネルギーが大きな希土類元素であって、特に周期律表の右側(原子番号が大きい側)に位置するEr、Tm、Yb等が、安定性が高く酸化されにくいのでより望ましい。
(8)対向電極18
対向電極18は、透光性の導電性材料からなり、電子輸送層23の上に形成されている。対向電極18は、陰極として機能する。
対向電極18としては、例えば、金属薄膜または、ITOやIZOなどの透明導電膜を用いることができる。光共振器構造をより効果的に得るためには、対向電極18の材料として、アルミニウム、マグネシウム、銀、アルミニウム−リチウム合金、マグネシウム−銀合金等のうち少なくとも1つの材料からなる金属薄膜を形成するのが望ましい。この場合において、金属薄膜の膜厚は、5nm以上30nm以下とすることが望ましい。
また、対向電極18上に同じくITOやIZOなどの透明導電膜を形成して、これにより、色度や視野角を調整するようにしてもよい。
(9)封止部26
上記対向電極18上には、有機発光層14、電子輸送層23などが水分や酸素等に触れて劣化することを抑制する目的で、封止部26が形成されている。
封止部26は、対向電極18上に形成された樹脂材料からなる樹脂封止層24と、樹脂封止層24上に形成されたガラス封止層25とを含む。
樹脂封止層24の材料としては、例えば、透光性を有する紫外線硬化性樹脂材料からなる。紫外線硬化性樹脂は、硬化速度が速く、作業時間を短縮できる。また、紫外線を照射しないと硬化しないので、塗布工程の制約が少なく、また低温硬化が可能であるという利点を有する。紫外線硬化性樹脂として、例えば、アクリレート系樹脂やエポキシ系樹脂などが使用できる。
もっとも、場合によっては、熱硬化性樹脂を使用してもよい。熱硬化性樹脂としては、UFユリア樹脂、MFメラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
ガラス封止層25は、透光性を有するガラスシートからなる。
<有機EL素子の評価>
次に、上記実施形態に係る有機EL素子の駆動電圧の経時的な変化について評価実験を行った。
図4は、評価対象となった有機EL素子における画素電極11から対向電極18までの積層構造を模式的に示す図であり、電子輸送層23のドープ金属としてYbを用いた場合の一例である。
評価対象となる有機EL素子2(実施品)では、画素電極11(陽極)上に、正孔注入層12、正孔輸送層13、有機発光層14、電子輸送層23(第1層部分15、第2層部分16、第3層部分17)、対向電極(陰極)18を順に積層している。
電子輸送層23の第1層部分15〜第3層部分17のホスト材料は、電子輸送性を有する同一の有機材料からなり、各層の膜厚は、全て10nmとした。また、第1層部分15と第3層部分17のみYbを20wt%の濃度でドープし、中間の第2層部分16には金属をドープしていない。
また、比較品1、2として、上記実施品と電子輸送層の構造のみが異なるものを製作した。すなわち、比較品1に係る有機EL素子の電子輸送層は膜厚が30nmの単層であって、Ybを20wt%でドープしている。また、比較品2に係る有機EL素子の電子輸送層は2層構造であって、有機発光層14側の層の膜厚が15nmでYbのドープ濃度が20wt%、対向電極18側の層の膜厚が15nmでYbのドープ濃度が10wt%とした。
比較品1、2の電子輸送層の膜厚は、実施品の電子輸送層23の3層の合計膜厚と同じである。
上記実施品と比較品1、2を連続駆動し、その初期駆動時からの駆動電圧の上昇(ΔV)を測定した。なお、本例では加速実験のため、環境温度を85℃に設定した。
図5のグラフは、その実験結果を示すものであり、横軸が駆動開始からの経過時間[h]、縦軸が初期駆動時からの駆動電圧の増加量[V]を示す。同グラフにおいて、線G11、G12、G13は、それぞれ比較品1,比較品2、本実施品の実験結果を示している。また、各線G11、G12,G13における矢印P11、P12、P13は、駆動電圧が急上昇に転じる位置(屈曲点)を示している。
図5の実験結果から分かるように、電子輸送層が2層構造の比較品2(G12)では、電子輸送層中のYbの総ドープ量が、比較品1におけるYbの総ドープ量の3/4であるため、酸化されないドープ金属の残量がより早く少なくなり、比較品1(G11)よりも早い時期に駆動電圧が上昇している。
しかし、本実施品(G13)では、比較品2よりも更に全体のYbのドープ量が少ない(比較品1の2/3、比較品2の8/9)にも拘らず、駆動電圧の上昇が比較品1、2に比べてかなり緩慢であるのが分かる。したがって、本実施品によれば、有機EL素子の長寿命化が図れると共に、比較的高価なYbの使用量も少なくなるので、製造コストの低減にも資する。
このような実験結果になったのは、水や酸素が電子輸送層を移動する量および速さは、電子輸送層の膜厚方向における電位勾配のみならず、ドープ金属の分布状態にも大きく依存しているからであると考察される。
すなわち、電子輸送層にドープされるアルカリ金属等は、陽イオン(カチオン)に成りやすく、比較品1や2のように一定濃度以上のアルカリ金属等が電子輸送層の膜厚方向に連続して存在すると、それらの陽イオンと、酸素イオン(O2-)、水酸化物イオン(OH-)(以下、両者を合わせて「酸素イオン等」という。)との間にクーロン力が発生し、酸素イオン等を電子輸送層内部に益々招き入れ、これにより酸素イオン等の浸入速度が速まり、やがては有機発光層14との界面まで達して、その付近のドープ金属まで酸化させてしまうからであると考えられる。
しかし、本実施品によれば、電子輸送層23の最下層である第1層部分15と最上層である第3層部分17のそれぞれについてアルカリ金属等のドープ濃度が、所定値以上であり、かつ、両者の中間には、アルカリ金属等をドープしていない第2層部分16(ノンドープ層)が介在するため、(i)外部から電子輸送層の第3層部分17に浸入した酸素イオン等は、まず、第3層部分17に含まれる所定濃度のドープ金属と反応するため、そこで酸素イオン等の数が減少すると共に、(ii)第3層部分17内のドープ金属と反応しないで残った酸素イオン等が、第3層部分17と第2層部分16との界面に至っても、第2層部分16がノンドープ層であるため、第3層部分17に含まれるドープ金属による電気的な牽引力が遮断されて、酸素イオンの移動速度が失速する。(iii)これにより、酸素イオン等が第2層部分16を通過して第1層部分15に至るまでに多くの時間を要し、第1層部分15のドープ金属の酸化されるのも遅くなって、図5の線G13に示すように駆動電圧の上昇がなだらかになったものと考えられる。
このように、第1層部分15内のドープ金属の、第3層部分17に浸入した酸素イオン等に対する牽引力を効果的に遮断するためには、中間層であるノンドープ層(第2層部分16)の膜厚が、5nm以上あるのが望ましい。
一方、第1層部分15と第3層部分17の膜厚およびアルカリ金属等のドープ濃度は、同一である必要はないが、それぞれ膜厚が5nm以上30nm以下であるのが望ましく、またドープ濃度は、10wt%以上60wt%以下であることが望ましい。
ドープ濃度が、10wt%未満であると必要な電子注入性を得られず、また、60wt%を超えると、有機発光層14で発生した光束を吸収して透過率が悪くなり、光取り出し効率が低下してしまうおそれがあるからである。
さらに、望ましくは、膜厚が20nm以上25nm以下であって、ドープ濃度が、20wt%以上50wt%以下である。
もっとも、第1層部分15と第3層部分17とで、膜厚および/またはドープ濃度が同じである必要はなく、設計によって電子輸送層23に求められる仕様(特に、光共振器構造を構築する場合に必要な電子輸送層の光学的膜厚)などによっても決まってくるので、上述の範囲内で、第2層部分16の膜厚の上限や、第1層部分15と第3層部分17の膜厚およびドープ濃度が具体的に決められる。
なお、図15(d)でも説明したように、主に、電子輸送層と有機発光層との界面におけるエネルギー障壁の増大が駆動電圧の上昇に大きく影響を与えているので、有機発光層側の第1層部分15におけるドープ濃度を、第3層部分17よりも大きくするのが望ましいと考えられる。
<有機EL素子の製造方法>
以下では、有機EL素子2の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図6は、有機EL素子2の製造工程の手順を示すフローチャートであり、図7〜図9は、有機EL素子2の製造過程を模式的に示す断面図である。
(1)基板準備工程(図6:ステップS1)
基材上に、公知のTFTの製造方法によりTFT層を成膜し、TFT層上に層間絶縁層を形成して、基板21を準備する(図7(a))。
層間絶縁層は、一定の流動性を有する樹脂材料を、例えば、ダイコート法により、TFT層上の凹凸を埋めるように塗布する。これにより、層間絶縁層の上面は、基材の上面に沿って平坦化した形状となる。
また、層間絶縁層における、TFT素子の例えばソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホール(不図示)を形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するようにパターニングなどを用いて形成される。
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウエットエッチング法を用いてパターニングすればよい。
(2)画素電極形成工程(図6:ステップS2)
次に、図7(b)に示すように、基板21上に画素電極11を形成する。
そのため、まず、基板21上に画素電極の材料からなる薄膜を、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成した後、エッチングによりパターニングして、副画素ごとに区画された複数の画素電極11を形成する。
(3)隔壁形成工程(図6:ステップS3)
次に、画素電極11上に、隔壁22の材料である隔壁用樹脂を一様に塗布し、隔壁材料層を形成する。隔壁用樹脂には、例えば、ポジ型の感光性材料であるフェノール樹脂が用いられる。この隔壁材料層に露光と現像を行うことで隔壁22の形状にパターン形成し、焼成することによって隔壁22を形成する(図7(c))。この焼成は、例えば、150℃以上210℃以下の温度で60分間行う。生成された隔壁22によって、有機発光層14の形成領域となる開口部22aが規定される。
(4)正孔注入層形成工程(図6:ステップS4)
マスク蒸着法や、インクジェットによる塗布法によって、開口部22a内に正孔注入層12の材料を成膜し、図7(d)に示すように、正孔注入層12を形成する。
(5)正孔輸送層形成工程(図6:ステップS5)
次に、開口部22a内の正孔注入層12上に、正孔輸送層13の構成材料を含むインクを塗布し、焼成(乾燥)を経て、図7(e)に示すように正孔輸送層13を形成する。
(6)発光層形成工程(図6:ステップS6)
次に、各開口部22aに対応する発光色の有機発光材料を含むインクを、印刷装置により順次吐出して開口部22a内の正孔輸送層13上に塗布する(図7(f))。
そして、インク塗布後の基板21を真空乾燥室内に搬入して真空環境下で加熱することにより、インク中の有機溶媒を蒸発させて、発光材料の塗布膜とする。これにより、有機発光層14を形成できる。
なお、有機ELパネルの完成品において、有機発光層が塗布膜であるか否かは、当該有機発光層の表面形状を観察することにより判別可能である。既述のように発光材料を含むインクを塗布後乾燥させるときに、隔壁に接触している部位が早く乾燥する傾向にあるため、各副画素内において有機発光層の中央部の膜厚が、隔壁に接する部分の膜厚よりも若干薄くなるからである。
もっとも、マスク蒸着法などのドライプロセスによって、有機発光層14を形成しても構わない。
(7)電子輸送層形成工程(図6:ステップS7)
次に、電子輸送層23を形成する。
まず、有機発光層14上に、電子輸送性の有機材料とドープ金属であるYbを共蒸着法によって各副画素に共通して成膜して、第1層部分15を形成する(図8(a))。この第1層部分15の膜厚は、例えば、10nmであり、Ybのドープ濃度は、例えば、20wt%である。
第1層部分15上に、電子輸送性を有する有機材料のみを蒸着して、例えば膜厚10nmの第2層部分16を形成する。第2層部分16ではYbはドープしない、(図8(b))。
さらに、第2層部分16上に電子輸送性の有機材料とYbを共蒸着法によって各副画素に共通に成膜して、例えば、膜厚10nm、Ybのドープ濃度20wt%の第3層部分17を形成する(図8(c))。
これにより、3層構造の電子輸送層23が形成される。
なお、共蒸着法では、例えば、高真空の雰囲気に設定された真空チャンバー内に、有機材料とYbをそれぞれ蒸発させるための2つの蒸発源を配し、各蒸発源にシャッターを設けて、各シャッターの開放時間や蒸発源の加熱温度を制御することにより、目的の膜厚およびドープ濃度の調整が可能である。
第2層部分16の形成の際には、有機材料の蒸発源のシャッターのみ開放し、Ybの蒸発源のシャッターは閉じたままにすればよい。
なお、本例のように同一の真空チャンバー内で共蒸着法により複数層からなる電子輸送層23を形成した場合、第1層部分15〜第3層部分17における隣接する2つの層部分の境界は、蒸発源の各シャッターの開放時間や加熱温度によっては、必ずしも明確に規定されない場合がある。例えば、第1層部分15と第2層部分16、第2層部分16と第3層部分17の各境界に相当すべき部分におけるYbのドープ濃度もしくは有機材料の濃度は膜厚方向に連続的に変化し、もしくは濃度勾配をもつ場合もあり得るからである。
しかしながら、そのような濃度勾配などの生じる部分(以下、「境界相当部分」という。)の厚みは電子輸送層23全体の膜厚に比べて極めて薄いので、全体として3層構造とみなすことができる。
もっとも、前述のように、第1層部分15と第3層部分17のドープ濃度は、10wt%以上60wt%以下であることが望ましいとしているので、各境界相当部分のうちYbのドープ濃度が10wt%以上の部分については、当該境界相当部分が隣接する第1層部分15、もしくは第3層部分17に含まれるとして、その膜厚の範囲などを規定することが望ましい。4層以上を積層して電子輸送層23を形成する場合においても同じである。
(8)対向電極形成工程(図6:ステップS8)
次に、図8(d)に示すように、電子輸送層23上に、対向電極18を形成する。本実施形態では、対向電極18は、銀、アルミニウム等を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。あるいは。ITO、IZOなどの当面導電膜を真空蒸着するようにしても構わない。
(9)封止部形成工程(図6:ステップS9)
封止部26は、樹脂封止層24とガラス封止層25を積層してなる。
まず、対向電極18の上に、スピンコート法などにより、液状の紫外線硬化樹脂を塗布して、樹脂材料層24’を形成し(図9(a))、その上にガラス封止層25としてガラスシートを載置した後、上方から当該ガラス封止層25を介して、樹脂材料層24’に紫外線を照射することにより、樹脂材料層24’を硬化させる。
これにより樹脂封止層24が形成されると共に、ガラス封止層25が当該樹脂封止層24を介して対向電極18上に貼着される(図9(b))。
ガラス材料は、空気や水分が透過しにくく、また、変色もしにくいので、トップエミッション型の有機ELパネルの封止材料として適している。
もっとも、フレキシブル有機ELパネルを形成する場合には、ガラスシートの代わりに、例えば、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)などの樹脂材料からなるフィルムを用いても構わない。
以上の工程を経て、複数の有機EL素子を含む有機ELパネルが完成する。
なお、上記の製造方法は、あくまで例示であり、適宜変更可能である。
<実施形態の効果のまとめ>
(1)以上、説明したように仕事関数の低いアルカリ金属等が、電子輸送層にドープされることにより、電子注入性を向上させるという優れた特性を有する一方、活性が高いため酸素イオン等を内部に引き寄せる作用も有している。
そこで、本開示の態様に係る有機EL素子によれば、電子輸送層を第1〜第3層部分からなる3層構造とし、第1層部分、第3層部分におけるアルカリ金属等のドープ濃度を所定以上として、それぞれ有機発光層と対向電極と隣接する部分において電子注入性を向上させると共に、中間層である第2層部分には、酸素イオン等の牽引にも影響力のあるアルカリ金属等をドープしないようにした。
これにより、外部から水分や酸素が浸入してきたとしても、まず、第3層部分内に含有されるドープ金属と反応して酸素イオン等の数を減量できると共に、残存する酸素イオン等の移動をノンドープ層である第2層部分で食い止めて遅延させることができるので、それだけ第1層部分にドープされたアルカリ金属等の酸化を遅らせることができ、電子輸送層から有機発光層への電子注入性の低下による駆動電圧の急上昇を阻止して、有機EL素子の寿命を従来の構成よりも長くすることができる。
(2)有機材料が有機溶媒に溶解したインクを印刷装置等により必要箇所に印刷した後、乾燥させて有機層を形成するウエットプロセスによれば、大型の有機ELパネルであってもその設備費が抑制できると共に材料利用率が高いなどコスト面で、真空蒸着法などのドライプロセスよりも優れているが、図16でも説明したように、ウエットプロセスにより発光層を形成すると、どうしても中央の膜厚が薄くなってその部分に電流が集中して、電子輸送層のドープ金属の酸化が促進され、これが駆動電圧急上昇の一因ともなっていたが、本開示の態様のように電子輸送層を3層構造として、中間の層をノンドープ層にすることにより、発光層に近接する第1層部分への酸素イオン等の浸入が食い止められ、長寿命化が図られる。
また、電子輸送層の膜厚が同じで、同じドープ濃度であれば、従来の単層全部にドープする場合に比べ、ドープしない第2層部分の分だけドープ金属の量が減るので、材料費も節約できる。
すなわち、本開示の一態様によれば、ウエットプロセスで有機発光層を形成して、製造コストを低減しつつ、ドープ金属の材料費も節約できると共に、従来の構成よりも有機EL素子の長寿命化を達成できるものである。
≪変形例≫
以上、本発明の一態様として、有機EL素子、及び有機EL素子の製造方法などの実施形態について説明したが、本発明は、その本質的な特徴的構成要素を除き、上記実施形態により何ら限定を受けるものではない。以下では、本開示の他の態様を変形例として説明する。
(1)上記実施形態では、電子輸送層23を3層構造とし、その中間の層である第2層部分16をノンドープ層としたが、第2層部分16には、必ずしもアルカリ金属等が一切ドープされていない状態でなくてもよい。
第1層部分および第3層部分よりもアルカリ金属等のドープ濃度が低ければ、少なくとも従来における電子輸送層が単層でドープ金属が電子注入性を確保する濃度以上に均一にドープされているような場合に比べて、酸素イオン等が有機発光層に近い第1層部分への浸入を食い止める効果が多少なりともあるからである。
(2)上記実施形態では、電子輸送層23の各層のホスト材料は同じ有機材料を用いたが、必ずしも、同じである必要はなく、例えば、有機発光層14と対向電極18のそれぞれに隣接する第1層部分15、第3層部分17には、電子注入性に優れた材料を使用し、中間層である第2層部分16には、電子輸送性に優れた別の材料を使用するようにしてもよい。
特に、中間層である第2層部分16は、その上下の両界面でLUMO準位の異なる他の材料と接していないため、電子注入性よりも電子輸送性が重視されるからである。
また、ドープ金属も1種類に限らず、2以上の複数種類を混在させることもすることも可能であり、第1層部分15と第3層部分17とでドープ金属を同一にする必要は必ずしもない。
(3)また、電子輸送層は、多層構造であれば、3層構造に限られず、4層以上であってもよい。
図10は、電子輸送層が5層構造である場合の有機EL素子の積層構造を模式的に示す図であり、基板21と封止部26は図示を省略している。
同図に示すように、本変形例では、電子輸送層230は、第1有機発光層231〜第5層部分235の5層からなる。図10では、やや誇張して示しているが、第1〜第5層部分231〜235を合わせた全体の膜厚は、実施形態での電子輸送層23の膜厚と同じでよい。
各第1電極層231〜第5層部分235のアルカリ金属等のドープ濃度を、順にY1wt%〜Y5wt%とすると、最上層と最下層に挟まれた中間層である第2層部分232〜第4層部分234のドープ濃度Y2〜Y4wt%は、いずれも第1層部分231のドープ濃度Y1wt%および第5層部分235のドープ濃度Y5wt%よりも小さくなっており、これらの中間層が酸素イオン等の浸入速度を鈍らせる作用を有するため、有機発光層14と隣接する第1層部分231のドープ金属が酸化されるのを遅延させて、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
中間層の第2層部分232〜第4層部分234の相互のドープ濃度の大小関係は、特に問わないが、これらの中間層のうち、少なくとも1層は、ノンドープ層が含まれるのが望ましいのは言うまでもない。
(4)上記実施形態では、電子輸送層23が、直接有機発光層14上に形成されていたが、特に、正孔輸送層13や有機発光層14などをウエットプロセスにより形成する場合、正孔輸送層13や有機発光層14中に水分などの不純物が残留するおそれがあり、この不純物が有機発光層14に隣接する電子輸送層23の第1層部分15中のドープ金属と反応して電子注入性を劣化させる可能性がある。
図11は、本変形例に係る有機EL素子の積層構造を示す模式図であり、基板21と封止部26は、図示を省略している。
同図に示すように、本変形例においては、有機発光層14と電子輸送層23との間に、ブロック層27を形成している。このブロック層27は、アルカリ金属のフッ化物などの不純物を透過しにくい材料からなり、蒸着法によって各有機EL素子に共通に形成される。
アルカリ金属のフッ化物のうち、特に、NaF(フッ化ナトリウム)は、水分などの不純物のブロック能力に優れている。
なお、アルカリ金属のフッ化物は、不純物が透過しにくいという利点がある一方で、電子注入性に劣るというマイナス要素もある。しかしながら、第1層部分15にドープされているBaやYbなどのアルカリ金属等は、還元力が強く、フッ化物の結合を切る性質を有しているため、ブロック層27の膜厚を1nm〜5nmにすることにより、有機発光層からの不純物の浸入を阻止するためのブロック効果を発揮しつつ、必要な電子注入性を確保できる。
したがって、有機発光層14と電子輸送層23との間に上記ブロック層27を介在させることにより、有機EL素子の有機発光層や正孔輸送層13などをウエットプロセスで形成して製造コストを低減させつつ、有機層の含有水分による電子輸送層23の電子注入性の劣化を抑制して、有機EL素子の長寿命化を図ることができる。
また、上記実施形態では、図3に示すように電子輸送層23上に樹脂封止層24を直接形成している。しかし、樹脂材料は水分などの不純物を吸収しやすいという短所があるので、電子輸送層23の劣化をできるだけ抑止するため、図11の変形例に示すように、対向電極18上に水分などの不純物を透過しにくい無機材料からなる保護層28を設けることが望ましい。
当該保護層28は、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸窒化シリコン(SiON)などの透光性の絶縁性無機材料からなり、蒸着法などのドライプロセスにより成膜される。膜厚は、100nm〜1000nmが望ましい。
(5)上記実施形態では、図4に示すように電子輸送層23を第1層部分15、第2層部分16、第3層部分17の3層構造としたが、電子輸送層23が、必ずしも明確な層状に分離される必要はない。
例えば、図12(a)に示すように、電子輸送層23をその膜厚方向に第1領域151、第2領域161、第3領域171の3つの領域に分け、Ybのドープ濃度を連続的に変化させるようにしてもよい。
図12(b)は、電子輸送層23の膜厚方向におけるドープ濃度の変化の一例を示すグラフであって、横軸が電子輸送層23の有機発光層14との界面からの距離、縦軸がYbのドープ濃度を示す。
図12(b)のグラフに示すように、第1領域151では、Ybのドープ濃度は、Z1wt%から緩やかな曲線を描いて減少し、第2領域161において、下に凸の曲線を描いて一旦Z2wt%まで減少した後、増加していく。そして、第3領域171において、緩やかに増加してするドープ濃度Z3wt%に至る。
また、図12(c)に示すように、第1領域151から第2領域161にまたがって、Ybのドープ濃度がZ1wt%からZ2wt%まで、ほぼ一定の勾配で減少し、第2領域161から第3領域171にかけてZ2wt%からZ3wt%までほぼ一定の勾配で増加するようにしてもよい。
なお、図12(b)、図12(c)では、Ybのドープ濃度の変化を示すグラフが左右対称になっているが、これらはあくまでも例示であって、各第1領域151、第3領域171におけるYbのドープ濃度は、10wt%以上、60wt%以下の範囲であり、第2領域161のドープ濃度は、0wt%以上、10wt%未満の範囲内であれば、特に、各領域内におけるドープ濃度の変化状態は限定されない。
このように、電子輸送層23の膜厚方向において、第1領域151(有機発光層側の領域)と第3領域171(対向電極(陰極)側の領域)との間に第2領域161(中間領域)が介在し、第2領域161のアルカリ金属等のドープ濃度が、第1領域151および第3領域171のアルカリ金属等のドープ濃度よりも低いので、本変形例によっても、少なくとも従来における電子輸送層が単層でドープ金属が電子注入性を確保する濃度以上に均一にドープされているような場合に比べて、外部から有機発光層14への酸素イオン等の移動が、当該第2領域161において抑制され、有機EL素子2の長寿命化に資する。
(6)上記実施形態では、列隔壁22Yと行隔壁22X(図2参照)の高さが等しく、各有機EL素子における有機発光層の四方が列隔壁22Yと行隔壁22Xによって仕切られた、いわゆるピクセルバンク方式のものを示したが、ウエットプロセスで有機発光層を形成する場合には、行隔壁22Xの高さが、列隔壁22Yの高さよりも低く、製造工程において有機発光層14の材料を含むインクを印刷装置のノズルより滴下した場合に、インクの液面が行隔壁22Xの高さより高くなる、いわゆるラインバンク方式の構造とするのが望ましい。
このようなラインバンク方式によれば、滴下された有機発光層のインクが同発光色の複数の副画素に跨って流動することができるため、迅速かつ均一に塗布することができ、副画素毎の輝度のバラツキが生じにくい。
下記するのは、上記ラインバンク方式の隔壁の製造方法の一例である。
(ア)まず、Y方向(図2)における画素電極列を副画素毎に仕切るため、基板21上にX方向に伸びる行隔壁22X(画素規制層)を形成する。
そのため、行隔壁22Xの材料となる感光性の樹脂材料を、ダイコート法やスリットコート法、スピンコート法などにより、基板21上方に一様に塗布して乾燥させ、形成すべき行隔壁22Xの高さと等しい膜厚の行隔壁材料層を形成する。
そして、フォトリソグラフィ法を用いて、パターニングして行隔壁22Xを形成する。
(イ)同様にして、列隔壁22Yの材料となる感光性の樹脂材料を、ダイコート法やスリットコート法、スピンコート法などにより、基板21上方に一様に塗布して乾燥させ、形成すべき列隔壁22Yの高さと等しい膜厚の列隔壁材料層を形成し、これをフォトリソグラフィ法を用いてパターニングして列隔壁22Yを形成する。
(7)有機EL素子の積層構造の変形例
上記実施形態では、有機EL素子の積層構造として、正孔注入層12、正孔輸送層13、電子輸送層23を有する構成であるとしたが、これに限られない。例えば、正孔輸送層13を有しない有機EL素子であってもよい。また、例えば、正孔注入層12と正孔輸送層13とに代えて、単一層の正孔注入・輸送層を有していてもよい。
また、電子輸送層23と対向電極18との間に、電子注入層を介在させて、電子注入輸送層からの電子注入性をより改善する構成であってもよい。電子注入層に用いられる有機材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料が挙げられる。これらの有機材料中に、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)などのアルカリ金属に該当する金属や、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)などのアルカリ土類金属に該当する金属をドープしてもよい。
(8)上記実施形態に係る有機ELパネル10では、R、G、B色にそれぞれ発光する副画素100R、100G、100Bが配列されていたが、副画素の発光色はこれに限られず、例えば、R、G、Bに加えて黄色(Y)の4色であってもよい。また、一つの画素Pにおいて、副画素は1色あたり1個に限られず、複数配置されてもよい。また、画素Pにおける副画素の配列は、図2に示すような、赤色、緑色、青色の順番に限られず、これらを入れ替えた順番であってもよい。
(9)また、上記実施形態に係る有機ELパネル10は、アクティブマトリクス方式を採用したが、これに限られず、パッシブマトリクス方式を採用してもよい。また、トップエミッション型の有機ELパネルだけでなくボトムエミッション型の有機ELパネルにも適用可能である。
(10)上記実施形態で示した有機ELパネルは、図13に示すようにテレビ装置400の表示部401や、その他パーソナルコンピュータ、携帯端末、業務用ディスプレイなど様々な電子機器の表示パネルとして用いることができる。
(11)上記実施形態では、自発光素子として有機EL素子および当該有機EL素子を使用した有機ELパネルなどについて説明したが、その他、自発光素子として量子ドット発光素子(QLED:Quantum dot Light Emitting Diode)を使用した量子ドットパネル(例えば、特開2010−199067号公報参照)などの自発光パネルについても、発光層の構造や種類が異なるだけで、画素電極と対向電極との間に発光層やその他の機能層を介在させるという構成において有機ELパネルと同じであり、本発明を適用することが可能である。
≪補足≫
以上、本開示に係る自発光素子およびその製造方法、並びに自発光表示装置、電子機器について、実施形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。上記実施形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
本開示に係る自発光素子は、様々な電子機器に用いられる表示装置における発光素子として広く利用することができる。
1 有機EL表示装置
2 有機EL素子
10 有機ELパネル
11 画素電極(第1電極)
12 正孔注入層
13 正孔輸送層
14 有機発光層
15 第1層部分
16 第2層部分(中間層)
17 第3層部分
18 対向電極(第2電極)
21 基板
22 隔壁
23、230 電子輸送層(機能層)
24 樹脂封止層
25 ガラス封止層
26 封止部
27 ブロック層
28 保護層
100B、100G、100R 副画素
151 第1領域(発光層側領域)
161 第2領域(中間領域)
171 第3領域(第2電極側領域)

Claims (16)

  1. 第1電極と、
    前記第1電極の上方に配された発光層と、
    前記発光層上方に配され、金属がドープされた機能層と、
    前記機能層の上方に配された第2電極と、
    を備え、
    前記機能層は、3層以上の多層構造を有し、その最上層と最下層の間の中間層における金属のドープ濃度が、前記最上層と前記最下層における金属のドープ濃度よりも低い
    ことを特徴とする自発光素子。
  2. 前記第1電極は陽極であり、前記第2電極は陰極であり、前記機能層にドープされた金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属に属する金属群から選択された1または2以上の金属である
    ことを特徴とする請求項1に記載の自発光素子。
  3. 前記機能層は、ホスト材料として電子輸送性および/または電子注入性を有する有機材料を含む
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の自発光素子。
  4. 前記中間層には、前記金属がドープされていないノンドープ層が含まれる
    ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の自発光素子。
  5. 前記ノンドープ層の膜厚は、5nm以上である
    ことを特徴とする請求項4に記載の自発光素子。
  6. 前記機能層は、3層構造である
    ことを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の自発光素子。
  7. 前記機能層の前記最下層および前記最上層の各層の膜厚は、5nm以上30nm以下である
    ことを特徴とする請求項1から6までのいずれかに記載の自発光素子。
  8. 前記機能層の前記最下層および前記最上層の各層における金属のドープ濃度は、10wt%以上60wt%以下である
    ことを特徴とする請求項1から7までのいずれかに記載の自発光素子。
  9. 前記機能層の前記最下層における金属のドープ濃度は、前記最上層における金属のドープ濃度よりも高い
    ことを特徴とする請求項1から8までのいずれかに記載の自発光素子。
  10. 第1電極と、
    前記第1電極の上方に配された発光層と、
    前記発光層上方に配され、金属がドープされた機能層と、
    前記機能層の上方に配された第2電極と、
    を備え、
    前記機能層が、その膜厚方向において、前記発光層側の領域と、前記第2電極側の領域と、前記発光層側の領域と前記第2電極側の領域間の中間領域と、に分かれており、前記中間領域の金属のドープ濃度が、前記発光層側の領域および前記第2電極側の領域の各ドープ濃度よりも低い
    ことを特徴とする自発光素子。
  11. 前記発光層は、塗布膜である
    ことを特徴とする請求項1から10までのいずれかに記載の自発光素子。
  12. 基板上方に、請求項1から11までのいずれか1項に記載の自発光素子を複数、行列状に配列してなる自発光パネルと、前記自発光パネルを駆動して画像を表示させる駆動部と
    を備える自発光表示装置。
  13. 画像表示部として請求項12に記載の自発光表示装置を備えた
    電子機器。
  14. 第1電極を形成する第1工程と、
    前記第1電極の上方に発光層を形成する第2工程と、
    前記発光層上方に、金属がドープされた層を含む3層以上の多層構造の機能層を形成する第3工程と、
    前記機能層の上方に、第2電極を形成する第4工程と、
    を含み、
    前記多層構造の機能層は、その最上層と最下層の間の中間層における金属のドープ濃度が、前記最上層と前記最下層における金属のドープ濃度よりも低い
    ことを特徴とする自発光素子の製造方法。
  15. 前記中間層には、前記金属がドープされていないノンドープ層が含まれる
    ことを特徴とする請求項14に記載の自発光素子の製造方法。
  16. 第1電極を形成する第1工程と、
    前記第1電極の上方に発光層を形成する第2工程と、
    前記発光層上方に、金属がドープされた機能層を形成する第3工程と、
    前記機能層の上方に、第2電極を形成する第4工程と、
    を含み、
    前記機能層が、その膜厚方向において、前記発光層側の領域と、前記第2電極側の領域と、前記発光層側の領域と前記第2電極側の領域との間の中間領域と、に分かれており、前記中間領域の金属のドープ濃度が、前記発光層側の領域および前記第2電極側の領域の各ドープ濃度よりも低い
    ことを特徴とする自発光素子の製造方法。
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