図1は、本発明の実施形態に係る建設機械としての掘削機(ショベル100)が接続される通信ネットワーク200を示す概略図である。
ショベル100の下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
ブーム4、アーム5及びバケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成する。ブーム4はブームシリンダ7により駆動され、アーム5はアームシリンダ8により駆動され、バケット6はバケットシリンダ9により駆動される。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3は、集合的に「姿勢センサ」とも称される。アタッチメントの姿勢を特定する際に利用されるためである。
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度(以下、「ブーム角度」とする。)を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」とする。)を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」とする。)を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2及びバケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成される慣性計測装置等であってもよい。
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。
振動センサS10は、旋回減速機20の振動を検出する。本実施形態では、振動センサS10は、加速度センサで構成されている。圧電素子を利用したアコースティックエミッション(AE)センサであってもよい。振動センサS10は、旋回減速機20を定期的に診断できるように、旋回減速機20にワンタッチで着脱できるように構成されている。但し、振動センサS10は、ショベル100の稼働中にも旋回減速機20の振動を検出できるように旋回減速機20に固定されていてもよい。
上部旋回体3には運転室であるキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、入力装置42、音声出力装置43、記憶装置47、測位装置P1、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6及び通信装置T1が取り付けられている。
コントローラ30は、ショベル100の駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、ROM等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30における1又は複数の機能は、例えば、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。
表示装置40は、情報を表示する。表示装置40は、CAN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよく、専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
入力装置42は、操作者が情報をコントローラ30に入力できるようにする。入力装置42は、キャビン10内に設置されたタッチパネル、ノブスイッチ、メンブレンスイッチ等を含む。
音声出力装置43は、音声を出力する装置である。音声出力装置43は、例えば、コントローラ30に接続される車載スピーカであってもよく、ブザー等の警報器であってもよい。本実施形態では、音声出力装置43は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて情報を音声出力する。
記憶装置47は、情報を記憶するための装置である。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に1又は複数の機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に1又は複数の機器を介して取得する或いは入力される情報を記憶してもよい。記憶装置47は、例えば、通信装置T1等を介して取得される目標施工面に関するデータを記憶していてもよい。目標施工面は、ショベル100の操作者が設定したものであってもよく、施工管理者等が設定したものであってもよい。
測位装置P1は、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置P1は、例えばGNSSコンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。そのため、測位装置P1は、上部旋回体3の向きを検出する向き検出装置として機能し得る。向き検出装置は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサであってもよい。
機体傾斜センサS4は水平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸回りの前後傾斜角及び左右軸回りの左右傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、ショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点で互いに直交する。機体傾斜センサS4は、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせで構成される慣性計測装置であってもよい。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
撮像装置S6はショベル100の周辺の画像を取得する。本実施形態では、撮像装置S6は、ショベル100の前方の空間を撮像する前カメラS6F、ショベル100の左方の空間を撮像する左カメラS6L、ショベル100の右方の空間を撮像する右カメラS6R、及び、ショベル100の後方の空間を撮像する後カメラS6Bを含む。
撮像装置S6は、例えば、CCD、CMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。撮像装置S6は、ステレオカメラ、距離画像カメラ等であってもよい。
前カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、すなわちキャビン10の内部に取り付けられている。但し、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。左カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、右カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、後カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
通信装置T1は、ショベル100の外部にある外部機器との通信を制御する。本実施形態では、通信装置T1は、衛星通信網、携帯電話通信網、インターネット網等を介した外部機器との通信を制御する。
通信ネットワーク200は、主に、ショベル100、基地局21、サーバ22、及び通信端末23で構成される。通信端末23は、携帯通信端末23a、固定通信端末23b等を含む。基地局21、サーバ22及び通信端末23は、例えば、インターネットプロトコル等の通信プロトコルを用いて互いに接続され得る。ショベル100、基地局21、サーバ22及び通信端末23のそれぞれは1つであってもよく複数であってもよい。携帯通信端末23aは、ノートパソコン、携帯電話、スマートフォン等を含む。
基地局21は、ショベル100が送信する情報を受信する外部施設であり、例えば、衛星通信網、携帯電話通信網、インターネット網等を通じてショベル100との間で情報を送受信する。
サーバ22は、ショベル100の管理装置として機能する。本実施形態では、サーバ22は、管理センタ等の外部施設に設置される装置であり、ショベル100が送信する情報を保存し且つ管理する。サーバ22は、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、入力装置、ディスプレイ等を備えたコンピュータである。具体的には、サーバ22は、通信ネットワーク200を通じ、基地局21が受信した情報を取得・保存し、操作者(管理者)が必要に応じてその保存した情報を参照できるように管理する。
サーバ22は、通信ネットワーク200を通じてショベル100に関する1又は複数の設定を行うように構成されていてもよい。具体的には、サーバ22は、1又は複数の設定に関する値をショベル100に対して送信し、コントローラ30に記憶されている1又は複数の設定に関する値を変更してもよい。
サーバ22は、通信ネットワーク200を通じてショベル100に関する情報を通信端末23に送信してもよい。具体的には、サーバ22は、所定の条件が満たされた場合に、或いは、通信端末23からの要求に応じ、ショベル100に関する情報を通信端末23に対して送信し、ショベル100に関する情報を通信端末23の操作者に伝えるようにしてもよい。
通信端末23は、ショベル100の支援装置として機能する。本実施形態では、通信端末23は、サーバ22に保存された情報を参照可能な装置であり、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、入力装置、ディスプレイ等を備えたコンピュータである。通信端末23は、例えば、通信ネットワーク200を通じてサーバ22に接続され、ショベル100に関する情報を操作者(管理者)が閲覧できるように構成されていてもよい。すなわち、通信端末23は、サーバ22が送信するショベル100に関する情報を受信し、受信した情報を操作者(管理者)が閲覧できるように構成されていてもよい。
本実施形態では、サーバ22は、ショベル100が送信したショベル100に関する情報を管理する。そのため、操作者(管理者)は、サーバ22又は通信端末23に付属するディスプレイを通じてショベル100に関する情報を任意のタイミングで閲覧できる。
図2は、表示装置40が設けられたキャビン10の内部を示す概略図である。運転者は、例えば、バケット6を目視しながらショベル100を運転する。本実施形態では、表示装置40は、運転者の視界の妨げとなる部分である運転席60の右前部のピラーに取り付けられている。すなわち、表示装置40は、もともと視界の妨げとなっていた部分に取り付けられている。そのため、表示装置40自体が運転者の視界を大きく妨げることはない。表示装置40は、例えば、表示装置40全体がピラーの幅に収まるよう、縦長となるように構成されていてもよい。
図3は、ショベル100の基本システムの構成例を示すブロック図であり、機械的動力伝達ライン、作動油ライン、パイロットライン及び電気制御ラインをそれぞれ二重線、実線、破線及び点線で示している。
ショベル100の基本システムは、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30等を含む。
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、コントローラ30は、操作圧センサ29等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む1又は複数の油圧機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。本実施形態では、コントロールバルブ17は、複数の制御弁を含むバルブブロックとして構成されている。コントロールバルブ17は、1又は複数の制御弁を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を、1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R及び旋回用油圧モータ2Aを含む。旋回用油圧モータ2Aは、電動アクチュエータとしての旋回用電動発電機で置き換えられてもよい。
操作装置26は、操作者がアクチュエータの操作のために用いる装置である。アクチュエータは、油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータの少なくとも一方を含む。本実施形態では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量に応じた圧力である。操作装置26は、パイロットラインを介し、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給できるように構成されている。操作装置26は、例えば図2に示すように、左操作レバー26L、右操作レバー26R、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRを含む。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26の操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
コントローラ30は、データ処理ユニット35、判定ユニット36、診断ユニット37及び表示ユニット38を機能要素として有する。本実施形態では、各機能要素は、ソフトウェアとして実現されているが、ハードウェア、ファームウェア等で実現されていてもよい。
データ処理ユニット35は、情報取得装置が取得する情報を処理するように構成されている。本実施形態では、データ処理ユニット35は、情報取得装置が出力するデータを判定ユニット36及び診断ユニット37のそれぞれが利用できるように、情報取得装置が出力するデータを処理する。情報取得装置が取得する情報は、ブーム角度、アーム角度、バケット角度、前後傾斜角、左右傾斜角、旋回角速度、旋回角度、撮像装置S6が撮像した画像、ブームロッド圧、ブームボトム圧、アームロッド圧、アームボトム圧、バケットロッド圧、バケットボトム圧、振動センサS10が検出した旋回減速機の振動、メインポンプ14の吐出圧、操作装置26のそれぞれに関する操作圧等のうちの少なくとも1つを含む。そして、情報取得装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6、ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R、バケットボトム圧センサS9B、振動センサS10、吐出圧センサ28、操作圧センサ29等のうちの少なくとも1つを含む。判定ユニット36及び診断ユニット37のそれぞれが情報取得装置からのデータを直接利用できるのであれば、データ処理ユニット35は省略されてもよい。
データ処理ユニット35は、情報取得装置が出力するデータを所定時間にわたって保持するように構成されている。本実施形態では、データ処理ユニット35は、情報取得装置が出力するデータを揮発性記憶媒体に少なくとも所定時間にわたって一時的に記録する。データ処理ユニット35は、情報取得装置が出力するデータを記憶装置47に記録してもよい。
判定ユニット36は、情報取得装置が出力するデータの集まり(以下、「データセット」とする。)が診断ユニット37による診断に適しているか否かを判定するように構成されている。例えば、判定ユニット36は、振動センサS10が出力するデータセットが診断ユニット37による診断に適しているか否かを判定する。診断ユニット37による診断に適していないデータセットが診断ユニット37に供給されてしまうのを防止するためである。
診断ユニット37は、情報取得装置が出力するデータセットに基づいて検査対象物の故障の予兆の有無を診断するように構成されている。検査対象物は、例えば、旋回減速機20、アタッチメント等を含む。本実施形態では、診断ユニット37は、振動センサS10が出力するデータセットに基づいて旋回減速機20の故障の予兆の有無を診断する。旋回減速機20が故障している状態は、例えば、旋回減速機20が使用できない状態、旋回減速機20が継続的な使用に耐えられない状態等を含む。旋回減速機20の故障の予兆がある状態は、例えば、旋回減速機20を構成する遊星歯車機構における歯車の歯欠け、摩耗、損傷、回転軸の偏心等に起因して不規則な振動が発生している状態を含む。
表示ユニット38は、検査対象物に関する情報を表示装置40に表示させるように構成されている。本実施形態では、コントローラ30からの指令に応じて所定の画面を表示装置40に表示させる。
次に、図4を参照し、検査対象物に取り付けられたセンサが出力するデータセットに基づいてコントローラ30が検査対象物の故障の予兆の有無を診断する処理(以下、「診断処理」とする。)について説明する。図4は、診断処理のフローチャートである。コントローラ30は、所定の開始条件が満たされた場合にこの診断処理を実行する。所定の開始条件は、例えば、入力装置42の一例である診断スイッチ等の所定のスイッチが操作された場合、所定時刻になった場合、所定日時になった場合等を含む。
最初に、コントローラ30は、所定の動作を行うようにショベル100の操作者に通知する(ステップST1)。本実施形態では、コントローラ30の表示ユニット38は、旋回動作の実行を促すガイド画面を表示装置40に表示させる。所定の動作は、ブーム上昇動作、ブーム下降動作、アーム閉じ動作、アーム開き動作、バケット閉じ動作、バケット開き動作等(以下、集合的に「アタッチメント動作」とも称する。)であってもよい。
図5は、旋回動作の実行を促すガイド画面の一例を示す。図5は、ショベル100の図形と、旋回方向を表す矢印と、テキストメッセージ「旋回停止の指示が出るまで旋回を続けて下さい。」とを含む。ガイド画面を見た操作者は、上部旋回体3を右旋回させるように促されていることを認識できる。そして、そのガイド画面の内容にしたがって上部旋回体3を右旋回させることができる。
操作者は、旋回動作を実行する前に、以下の動作によりアタッチメントを所定の姿勢にすることが望ましい。アタッチメントの姿勢が診断毎に異なると、旋回動作に関する正確な診断ができないおそれがあるためである。このため、まず、コントローラ30は、アタッチメントに関する制御弁に作用するパイロット圧を制御することで、ブーム4等のアタッチメントを所定の姿勢にする。特に、旋回減速機20の診断では、旋回負荷は、アタッチメントの姿勢の変化に基づく旋回慣性モーメントの変化の影響を大きく受けるためである。このため、コントローラ30は、アタッチメントが所定の姿勢になるようにブーム4、アーム5及びバケット6等を駆動する。更に、バケット6の代わりにブレーカ等の重いエンドアタッチメントが装着されている場合には、所定のバケット6が装着されるように操作者を促してもよい。このように、旋回慣性モーメントが所定値となるように、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aを駆動する前に、アタッチメントの姿勢を調整する。調整完了後、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aに関する制御弁に作用するパイロット圧を制御することで、旋回動作を実行させる。具体的には、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aの回転速度を加速、維持或いは減速させる指令を出力することで、旋回用油圧モータ2Aに旋回用の規定動作を実行させることができる。これにより、コントローラ30は、旋回用油圧モータ2A、旋回用油圧モータ2Aに関する油圧回路、及び、旋回減速機20の診断を行うことができる。例えば、油圧回路のリリーフ弁で不具合が生じた場合には旋回加速度が増加し難くなる。コントローラ30は、旋回用油圧モータ2Aに関する油圧回路における圧力の検出値の変化によりこの不具合を把握することができる。
その後、コントローラ30は、所定の動作が開始されたか否かを判定する(ステップST2)。本実施形態では、操作圧センサ29の出力に基づいて上部旋回体3の右旋回が開始されたか否かを判定する。旋回角速度センサS5の出力に基づいて上部旋回体3の右旋回が開始されたか否かを判定してもよい。所定の動作がブーム上昇動作である場合、コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいてブーム上昇動作が開始されたか否かを判定してもよい。或いは、ブームシリンダ7のストローク量を検出するブームストロークセンサの出力に基づいてブーム上昇動作が開始されたか否かを判定してもよい。また、所定の動作がアーム閉じ動作である場合、コントローラ30は、操作圧センサ29の出力に基づいてアーム閉じ動作が開始されたか否かを判定してもよい。或いは、アームシリンダ8のストローク量を検出するアームストロークセンサの出力に基づいてアーム閉じ動作が開始されたか否かを判定してもよい。他のアタッチメント動作についても同様である。
所定の動作が開始されてないと判定した場合(ステップST2のNO)、コントローラ30は、所定の動作が開始されたと判定するまで、ステップST2の判定を繰り返す。
所定の動作が開始されたと判定した場合(ステップST2のYES)、コントローラ30は、データの記録を開始する(ステップST3)。本実施形態では、右旋回動作が開始されたと判定した場合、振動センサS10が出力するデータの記録を開始する。データの記録は、揮発性記憶媒体への記憶(書き込み)であってもよく、不揮発性記憶媒体への記憶(書き込み)であってもよい。揮発性記憶媒体への記憶の場合、データは、所定時間だけ消去されないよう或いは上書きされないように記憶される。コントローラ30は、姿勢センサ、シリンダ圧センサ等の出力を同期して記録してもよい。但し、コントローラ30は、右旋回動作が開始されたか否かにかかわらず、データを継続的に記録するように構成されていてもよい。この場合、コントローラ30は、右旋回動作が開始されたと判定した時点に記録したデータを特定できるように構成されていてもよい。所定の動作が他のアタッチメント動作である場合についても同様である。
その後、コントローラ30は、所定の動作が完了したか否かを判定する(ステップST4)。本実施形態では、コントローラ30は、右旋回動作が所定の旋回角度にわたって継続された場合に所定の動作が完了したと判定する。旋回角度は、例えば、旋回角速度センサS5の出力に基づいて導き出される。所定の動作がブーム上昇動作である場合、コントローラ30は、ブームシリンダ7の伸長が所定のストローク量にわたって継続された場合に所定の動作が完了したと判定してもよい。ブームシリンダ7のストローク量は、例えば、ブームストロークセンサの出力に基づいて導き出される。また、所定の動作がアーム閉じ動作である場合、コントローラ30は、アームシリンダ8の伸長が所定のストローク量にわたって継続された場合に所定の動作が完了したと判定してもよい。アームシリンダ8のストローク量は、例えば、アームストロークセンサの出力に基づいて導き出される。他のアタッチメント動作についても同様である。
所定の動作が完了していないと判定した場合(ステップST4のNO)、コントローラ30は、所定の動作が完了したと判定するまでステップST4の判定を繰り返す。
所定の動作が完了したと判定した場合(ステップST4のYES)、コントローラ30は、ショベル100を停止させるように操作者に通知する(ステップST5)。本実施形態では、表示ユニット38は、ショベルの停止を促すガイド画面を表示装置40に表示させる。
図6は、ショベルの停止を促すガイド画面の一例を示す。図6は、テキストメッセージ「旋回を停止させて下さい。」を含む。ガイド画面を見た操作者は、ショベルを停止させるように、すなわち、上部旋回体3の右旋回を停止させるように促されていることを認識できる。そして、そのガイド画面の内容にしたがって上部旋回体3の右旋回を停止させることができる。
その後、コントローラ30は、データの記録を停止させる(ステップST6)。データを継続的に記録するように構成されている場合には、コントローラ30は、所定の動作が開始されたと判定した時点に記録したデータの場合と同様に、所定の動作が完了したと判定した時点に記録したデータを特定できるように構成されていてもよい。所定の動作の開始時点から完了時点までに記録されたデータセットを特定できるようにするためである。
その後、コントローラ30は、データセットが診断に適しているか否かを判定する(ステップST7)。本実施形態では、コントローラ30の判定ユニット36は、右旋回動作の開始時点から完了時点までに記録された振動センサS10の出力に関するデータセットが診断に適しているか否かを判定する。すなわち、診断ユニット37が旋回減速機20の診断を行う際に利用可能なデータセットであるか否かを判定する。所定の動作がブーム上昇動作である場合、判定ユニット36は、ブーム上昇動作の開始時点から完了時点までに記録されたブーム角度センサS1の出力に関するデータセットが診断に適しているか否かを判定してもよい。すなわち、診断ユニット37がアタッチメント(例えばブームシリンダ7の油漏れの有無)の診断を行う際に利用可能なデータセットであるか否かを判定してもよい。また、所定の動作がアーム閉じ動作である場合、判定ユニット36は、アーム閉じ動作の開始時点から完了時点までに記録されたアーム角度センサS2の出力に関するデータセットが診断に適しているか否かを判定してもよい。すなわち、診断ユニット37がアタッチメント(例えばアームシリンダ8の油漏れの有無)の診断を行う際に利用可能なデータセットであるか否かを判定してもよい。他のアタッチメント動作についても同様である。
判定ユニット36は、例えば、記憶装置47に予め記憶されている診断パターンデータベースを参照し、現に記録されたデータセットの時間的推移が描く現在の出力パターンが、所定の出力パターン(既登録のパターン)に適合するか否かを判定する。所定の出力パターンは、例えば、診断パターンデータベースに登録されている出力パターンである。所定の出力パターンは、例えば、検査対象物毎に、すなわち、診断に利用されるセンサ毎に定められている。また、所定の出力パターンは、例えば、検査対象物に対するセンサの取り付け位置、検査対象物に付属品が取り付けられているか否か等によっても異なるように定められている。所定の出力パターンは、例えば、過去に記録された実際の出力パターンに基づいて生成される。所定の出力パターンは、例えば、正常出力パターン及び異常出力パターンを含む。正常出力パターンは、例えば、旋回減速機20が正常であるときの振動センサS10の出力パターンを含む。異常出力パターンは、例えば、旋回減速機20が正常でないときの振動センサS10の出力パターンを含む。旋回減速機20が正常でないときは、例えば、旋回減速機20を構成する遊星歯車機構における歯車の歯欠け、摩耗、損傷、回転軸の偏心等が発生しているときを含む。所定の動作がブーム上昇動作である場合、異常出力パターンは、例えば、ブームシリンダ7が正常でないときのブーム角度センサS1の出力パターンを含む。ブームシリンダ7が正常でないときは、例えば、ブームシリンダ7におけるオイルシールの摩耗に起因する油漏れが発生しているときを含む。また、所定の動作がアーム閉じ動作である場合、異常出力パターンは、例えば、アームシリンダ8が正常でないときのアーム角度センサS2の出力パターンを含む。アームシリンダ8が正常でないときは、例えば、アームシリンダ8におけるオイルシールの摩耗に起因する油漏れが発生しているときを含む。
判定ユニット36は、現在の出力パターンが所定の正常出力パターンに適合すると判定した場合に、データセットが診断に適していると判定する。また、現在の出力パターンが所定の正常出力パターンに適合しないと判定した場合に、データセットが診断に適していないと判定する。2つの出力パターンが適合するか否かの判定には任意の手法が利用され得る。判定ユニット36は、例えば、各時点における2つの出力パターンのそれぞれに関する値の差の積算値が所定値を上回る場合に2つの出力パターンは適合しないと判定する。2つの出力パターンのそれぞれの波長、振幅、位相等に基づいて判定してもよい。
判定ユニット36は、現在の出力パターンが所定の異常出力パターンに適合すると判定した場合に、データセットが診断に適していると判定してもよい。また、現在の出力パターンが所定の出力パターンの何れかに適合すると判定した場合に、データセットが診断に適していると判定してもよい。また、現在の出力パターンが所定の出力パターンの何れにも適合しないと判定した場合に、データセットが診断に適していないと判定してもよい。或いは、判定ユニット36は、現在の出力パターンの波長、振幅、位相等に関する閾値を利用してデータセットが診断に適しているか否かを判定してもよい。この場合、閾値は、記憶装置47等に予め記憶されていてもよい。
判定ユニット36は、データセットが診断に適していないと判定した場合、他の関連するセンサの出力パターンが正常であることを確認した上で、最終的な判定を行うように構成されていてもよい。例えば、他の関連するセンサの出力パターンが正常である場合に限り、データセットが診断に適していないと判定するように構成されていてもよい。
ここで、図7を参照し、診断処理の具体例について説明する。図7は、振動センサS10の出力パターンの一例を示す。出力パターンは、例えば、鉛直軸方向における振動センサS10の変位の時間的推移に対応する。図7の横軸は時間に対応し、縦軸は振動センサS10の変位に対応する。実線で示す推移は正常出力パターンTR1であり、破線で示す推移は異常出力パターンTR2であり、点線で示す推移は現に記録された出力パターンTR3である。出力パターンTR3は、例えば、振動センサS10の取り付け不良が発生しているときに記録されたデータセットの出力パターンである。
図7の例では、判定ユニット36は、出力パターンTR3が正常出力パターンTR1に適合しないと判定し、その上で、データセットが診断に適していないと判定する。各時点における2つの出力パターンのそれぞれに関する値(変位)の差の積算値が所定値を上回るためである。或いは、判定ユニット36は、出力パターンTR3では、時刻t1において変位がゼロに戻っていない、すなわち、出力波形の波長が正常出力パターンTR1に関する出力波形の波長とは異なると判断し、出力パターンTR3が正常出力パターンTR1に適合しないと判定してもよい。この場合、判定ユニット36は、時刻t1において、すなわち、リアルタイムに、出力パターンTR3が正常出力パターンTR1に適合しないと判定してもよい。
表示ユニット38は、図7に示すような振動センサS10の出力パターンを表示装置40に表示させてもよい。例えば、正常出力パターンTR1と出力パターンTR3とを管理者が対比できるようにするためである。
データセットが診断に適していないと判定した場合(ステップST7のNO)、コントローラ30は、データセットが診断に適していない旨を操作者に通知する(ステップST8)。本実施形態では、表示ユニット38は、その旨を通知するガイド画面を表示装置40に表示させる。振動センサS10の取り付け不良が発生しているおそれがある旨を通知してもよい。また、振動センサS10を取り付け直した上で旋回減速機20の診断をやり直すように促す旨を通知してもよい。操作者は、例えば、振動センサS10を取り付け直した後で診断スイッチを押下することで診断処理をやり直すことができる。
図8は、データセットが診断に適していない旨を通知するガイド画面の一例を示す。図8は、テキストメッセージ「センサの出力が異常です。センサを確認して下さい。」を含む。ガイド画面を見た操作者は、センサの取り付け不良等、センサに関する何らかの異常が生じているおそれがあることを認識できる。そして、そのガイド画面の内容にしたがってセンサの取り付け状態等を確認できる。センサの取り付け不良は、例えば、不適切な取り付け作業が行われたこと、旋回動作中若しくはアタッチメント動作中に大きな振動が発生したこと等によって発生し得る。
データセットが診断に適していると判定した場合(ステップST7のYES)、コントローラ30は、故障の予兆があるか否かを診断する(ステップST9)。本実施形態では、コントローラ30の診断ユニット37は、振動センサS10が出力するデータセットに基づいて旋回減速機20の故障の予兆の有無を診断する。
例えば図7の例において、現に記録された出力パターンが正常出力パターンTR1と同じであった場合、判定ユニット36は、その出力パターンが正常出力パターンTR1に適合すると判定し、その上で、データセットが診断に適していると判定する。また、現に記録された出力パターンが異常出力パターンTR2と同じであった場合にも、判定ユニット36は、その出力パターンが(異常出力パターンTR2ではなく)正常出力パターンTR1に適合すると判定し、その上で、データセットが診断に適していると判定する。各時点における2つの出力パターンのそれぞれに関する値(変位)の差の積算値が所定値を下回るためである。この場合、判定ユニット36は、現に記録された出力パターンが異常出力パターンTR2に適合すると判定し、その上で、データセットが診断に適していると判定してもよい。
振動センサS10が出力するデータセットが診断に適していると判定ユニット36によって判定された場合、診断ユニット37は、振動センサS10が出力するデータセットに基づいて旋回減速機20の故障の予兆の有無を診断する。
診断ユニット37は、例えば、現在の出力パターンが異常出力パターンTR2に適合すると判断した場合、旋回減速機20を構成する歯車に歯欠けがある、すなわち、故障の予兆があると判定する。或いは、診断ユニット37は、図7における異常出力パターンTR2で示されるように、時刻t2において振動センサS10の変位が閾値+THを上回る場合に、旋回減速機20を構成する歯車に歯欠けがある、すなわち、故障の予兆があると判定してもよい。時刻t5において振動センサS10の変位が閾値+THを上回る場合についても同様である。但し、診断ユニット37は、図7における出力パターンTR3で示されるように、時刻t3において振動センサS10の変位が閾値−THを下回る場合であっても、歯車に歯欠けがあるとは判定しない。時刻t4において振動センサS10の変位が閾値+THを上回る場合についても同様である。出力パターンTR3は、ステップST7において、診断に適していないと判定されるためである。なお、出力パターンTR3は、センサ取り付け不良のときの典型的な異常出力パターンとして登録されていてもよい。この場合、診断ユニット37は、判定ユニット36によってデータセットが診断に適していると判定された後で、そのデータセットに基づいてセンサ取り付け不良が発生していると判定するように構成されていてもよい。
診断ユニット37は、現在の出力パターンが正常出力パターンTR1に適合すると判断した場合、故障の予兆がないと判定する。
故障の予兆があると判定した場合(ステップST9のYES)、診断ユニット37は、故障の予兆がある旨をショベル100の操作者に通知する(ステップST10)。本実施形態では、表示ユニット38は、その旨を通知するガイド画面を表示装置40に表示させる。この場合、コントローラ30は、旋回角速度の最大値を制限する等、ショベル100の動作を制限するように構成されていてもよい。
故障の予兆がないと判定した場合(ステップST9のNO)、診断ユニット37は、故障の予兆がない旨をショベル100の操作者に通知する(ステップST11)。本実施形態では、表示ユニット38は、その旨を通知するガイド画面を表示装置40に表示させる。
コントローラ30は、所定の動作が行われたことを検知した場合に、上述の診断処理を自動的に実行するように構成されていてもよい。この場合、ステップST1及びステップST5の実行は省略されてもよい。
次に、図9を参照し、管理装置として機能するサーバ22の構成について説明する。図9は、サーバ22の構成例を示す。図9の例では、サーバ22は、コントローラ30S、表示装置40S及び通信装置T1Sを含む。そして、コントローラ30Sは、データ処理ユニット35S、判定ユニット36S、診断ユニット37S及び表示ユニット38Sを機能要素として有する。図9の例では、コントローラ30Sの各機能要素は、ソフトウェアとして実現されているが、ハードウェア、ファームウェア等で実現されていてもよい。
コントローラ30S、データ処理ユニット35S、判定ユニット36S、診断ユニット37S、表示ユニット38S、表示装置40S及び通信装置T1Sは、それぞれ、ショベル100におけるコントローラ30、データ処理ユニット35、判定ユニット36、診断ユニット37、表示ユニット38、表示装置40及び通信装置T1に対応する。図9の例では、データ処理ユニット35、判定ユニット36、診断ユニット37及び表示ユニット38は省略されてもよい。また、データ処理ユニット35が存在する場合、データ処理ユニット35Sは省略されてもよい。
図9の例では、ショベル100は、所定の動作が行われているときに記録されたデータセットを通信装置T1経由でサーバ22に送信する。サーバ22は、通信装置T1Sを通じそのデータセットを受信して所定の記憶領域に保存する。そして、判定ユニット36Sは、そのデータセットが診断ユニット37Sによる診断に適しているか否かを判定するように構成されている。診断ユニット37Sは、そのデータセットに基づいて検査対象物の故障の予兆の有無を診断するように構成されている。表示ユニット38Sは、検査対象物に関する情報を表示装置40Sに表示させるように構成されている。この構成により、サーバ22のコントローラ30Sは、ショベル100から送られてくるデータセットが診断ユニット37Sによる診断に適しているか否かを判定できる。また、コントローラ30Sは、そのデータセットに基づいて検査対象物の故障の予兆の有無を診断できる。
この構成により、サーバ22は、ショベル100に搭載されている検査対象物が故障する前に、その検査対象物の故障の予兆の有無を判定でき、その判定結果を管理者に提示できる。そして、サーバ22は、検査対象物に対するセンサの取り付け不良等に起因する出力パターンの乱れにより、検査対象物の故障の予兆がないにもかかわらず、検査対象物の故障の予兆があると誤って判定してしまう頻度を抑制できる。
次に、図10を参照し、支援装置として機能する通信端末23の構成について説明する。図10は、通信端末23の構成例を示す。図10の例では、通信端末23は、コントローラ30C、表示装置40C及び通信装置T1Cを含む。そして、コントローラ30Cは、データ処理ユニット35C、判定ユニット36C、診断ユニット37C及び表示ユニット38Cを機能要素として有する。図10の例では、コントローラ30Cの各機能要素は、ソフトウェアとして実現されているが、ハードウェア、ファームウェア等で実現されていてもよい。
コントローラ30C、データ処理ユニット35C、判定ユニット36C、診断ユニット37C、表示ユニット38C、表示装置40C及び通信装置T1Cは、それぞれ、ショベル100におけるコントローラ30、データ処理ユニット35、判定ユニット36、診断ユニット37、表示ユニット38、表示装置40及び通信装置T1に対応する。図10の例では、データ処理ユニット35、判定ユニット36、診断ユニット37及び表示ユニット38は省略されてもよい。また、データ処理ユニット35が存在する場合、データ処理ユニット35Cは省略されてもよい。
図10の例では、ショベル100は、所定の動作が行われているときに記録されたデータセットを通信装置T1経由でサーバ22に送信する。サーバ22は、通信装置T1Sを通じそのデータセットを受信して所定の記憶領域に保存する。通信端末23は、サーバ22における所定の記憶領域に保存されたデータセットにアクセスできるように構成されている。そして、判定ユニット36Cは、そのデータセットが診断ユニット37Cによる診断に適しているか否かを判定するように構成されている。診断ユニット37Cは、そのデータセットに基づいて検査対象物の故障の予兆の有無を診断するように構成されている。表示ユニット38Cは、検査対象物に関する情報を表示装置40Cに表示させるように構成されている。この構成により、通信端末23のコントローラ30Cは、サーバ22に保存されたデータセットが診断ユニット37Cによる診断に適しているか否かを判定できる。また、コントローラ30Cは、そのデータセットに基づいて検査対象物の故障の予兆の有無を診断できる。
このように、通信端末23は、ショベル100に搭載されている検査対象物が故障する前に、その検査対象物の故障の予兆の有無を判定でき、その判定結果を管理者に提示できる。そして、通信端末23は、検査対象物に対するセンサの取り付け不良等に起因する出力パターンの乱れにより、検査対象物の故障の予兆がないにもかかわらず、検査対象物の故障の予兆があると誤って判定してしまう頻度を抑制できる。
上述のように、本願の実施形態に係る建設機械としてのショベル100は、旋回減速機20、アタッチメント等の検査対象物に取り付けられた、振動センサS10、ブーム角度センサS1等のセンサと、そのセンサが出力するデータセットに基づいて検査対象物の故障の予兆の有無を診断する診断ユニット37と、そのデータセットが診断ユニット37による診断に適しているか否かを判定する判定ユニット36と、を備えている。この構成により、ショベル100は、例えば、そのセンサの取り付け不良等に起因する出力パターンの乱れにより、検査対象物の故障の予兆がないにもかかわらず、検査対象物の故障の予兆があると診断ユニット37に誤って判定されてしまうのを抑制或いは防止できる。例えば、旋回減速機20に対する振動センサS10の取り付け不良に起因する出力パターンの乱れにより、旋回減速機20を構成する歯車に歯欠けが発生していないにもかかわらず、歯車に歯欠けが発生していると診断ユニット37に誤って判定されてしまうのを抑制或いは防止できる。その結果、診断ユニット37による診断の精度を向上させることができる。
診断ユニット37は、判定ユニット36によってデータセットが診断に適していないと判定された場合、検査対象物の故障の予兆の有無の診断を省略するように構成されていてもよい。故障の予兆がないにもかかわらず故障の予兆があると誤って判定されてしまう機会を更に減らすためである。
判定ユニット36は、データセットの出力パターンが所定の出力パターンに適合するか否かに基づき、そのデータセットが診断ユニット37による診断に適しているか否かを判定するように構成されていてもよい。この構成により、判定ユニット36は、簡易且つ迅速に、データセットが診断に適しているか否かを判定できる。
判定ユニット36は、データセットの出力パターンが所定の出力パターンに適合しない場合、そのセンサに異常があると判定するように構成されていてもよい。この構成により、判定ユニット36は、センサ異常のおそれがあることを操作者に知らせることができる。
データセットは、建設機械が所定の動作を行っている際に出力されるデータの集まりであり、判定ユニット36は、そのデータセットの出力パターンが、その所定の動作に対応する所定の出力パターンに適合するか否かを判定するように構成されていてもよい。この構成により、判定ユニット36は、データセットが診断に適しているか否かをより正確に判定できる。
上記センサは、例えば、旋回減速機20の振動を検出するように構成されている振動センサS10である。或いは、上記センサは、例えば、アタッチメントの姿勢を検出するように構成されているブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3等であってもよい。
本発明の実施形態に係る管理装置としてのサーバ22は、旋回減速機20、アタッチメント等の検査対象物に取り付けられた、振動センサS10、ブーム角度センサS1等のセンサを搭載している建設機械の管理装置として機能する。そして、サーバ22は、そのセンサが出力するデータセットに基づいて検査対象物の故障の予兆の有無を診断する診断ユニット37Sと、データセットが診断ユニット37Sによる診断に適しているか否かを判定する判定ユニット36Sと、を備えている。この構成により、サーバ22は、そのセンサの取り付け不良等に起因する出力パターンの乱れにより、検査対象物の故障の予兆がないにもかかわらず、検査対象物の故障の予兆があると誤って判定してしまう頻度を抑制できる。例えば、旋回減速機20に対する振動センサS10の取り付け不良に起因する出力パターンの乱れにより、旋回減速機20を構成する歯車に歯欠けが発生していないにもかかわらず、歯車に歯欠けが発生していると誤って判定してしまう頻度を抑制できる。通信端末23についても同様である。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
例えば、コントローラ30は、基地局21を介さずに、支援装置としての通信端末23に情報を直接送信してもよい。