JP2019159683A - 高分子材料のシミュレーション方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 計算精度を向上させる。【解決手段】 コンピュータを用いて、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法である。この方法は、高分子鎖を、高分子鎖を構成する原子の数よりも少ない複数の粒子を用いて表現した粗視化分子モデルを、コンピュータに入力する工程S1と、分子動力学に基づく構造緩和の計算時において、粗視化分子モデルのKuhn長をPacking長で除した値である実効的な密度が、高分子鎖、前記高分子鎖の全原子モデル、又は、前記高分子鎖のユナイテッドアトムモデルのいずれかのKuhn長をPacking長で除した値である実効的な密度に近づくように、粗視化分子モデルの隣り合う粒子間に相互作用を定義する工程S2と、コンピュータが、相互作用が定義された粗視化分子モデルを対象に、構造緩和を計算する工程S3とを含む。【選択図】図5

Description

本発明は、高分子材料を解析するためのシミュレーション方法に関する。
近年、ゴム材料等の高分子材料の反応を、コンピュータを用いて評価するためのシミュレーション方法(数値計算)が種々提案されている。下記特許文献1及び2では、高分子鎖を複数のビーズでモデル化した粗視化モデルを作り、その後、このモデルの空間の単位及び時間の単位を、全原子モデルの空間の単位及び時間の単位に対応付けている。
特許第6097130号公報 特許第6050903号公報
上記特許文献2では、粗視化モデルの長さを調節することで、全原子モデルに対応付けている。発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、上記特許文献2において、粗視化モデルのKuhn長をPacking長で除した値である実効的な密度が、実際の高分子鎖のそれから乖離する場合があり、熱平衡状態の粗視化モデルの座標を全原子モデルへ長さの単位換算を行うことで取得できる全原子モデルの座標の密度が、全原子モデルの平衡密度から乖離しうることを見出した。したがって、計算精度の向上には、さらなる改善の余地がある。
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、計算精度を向上しうる高分子材料のシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。
本発明は、コンピュータを用いて、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法であって、前記高分子鎖を、前記高分子鎖を構成する原子の数よりも少ない複数の粒子を用いて表現した粗視化分子モデルを、前記コンピュータに入力する工程と、分子動力学に基づく構造緩和の計算時において、前記粗視化分子モデルのKuhn長をPacking長で除した値である実効的な密度が、前記高分子鎖、前記高分子鎖の全原子モデル、又は、前記高分子鎖のユナイテッドアトムモデルのいずれかのKuhn長をPacking長で除した値である実効的な密度に近づくように、前記粗視化分子モデルの隣り合う前記粒子間に相互作用を定義する工程と、前記コンピュータが、前記相互作用が定義された前記粗視化分子モデルを対象に、前記構造緩和を計算する工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記相互作用は、前記粗視化分子モデルの屈曲性に影響を与えてもよい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記相互作用は、下記式(1)で定義されてもよい。
Figure 2019159683
ここで、
E:相互作用ポテンシャル関数
K:相互作用パラメータ
θ:隣り合う3つの粒子がなす角度
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記相互作用を定義する工程は、前記相互作用の相互作用パラメータが異なる複数の前記粗視化分子モデルを定義して、前記高分子鎖、前記高分子鎖の全原子モデル、又は、前記高分子鎖のユナイテッドアトムモデルのいずれかの実効的な密度に近似する実効的な密度を有する前記粗視化分子モデルの前記相互作用を決定する工程を含んでもよい。
本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記コンピュータが、前記相互作用が定義された前記粗視化分子モデルの構造緩和後の第1屈曲度合と、前記全原子モデル又は前記ユナイテッドアトムモデルの構造緩和後の第2屈曲度合とに基づいて、前記粗視化分子モデルの粒子数と、前記高分子鎖のモノマー数との比を計算する工程を含んでもよい。
本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、分子動力学に基づく構造緩和の計算時において、粗視化分子モデルの実効的な密度が、高分子鎖、前記高分子鎖の全原子モデル、又は、前記高分子鎖のユナイテッドアトムモデルのいずれかの実効的な密度に近づくように、粗視化分子モデルの隣り合う前記粒子間に相互作用を定義する工程を含んでいる。これにより、前記高分子鎖、前記全原子モデル、又は、前記ユナイテッドアトムモデルの空間(長さ)の単位を、前記粗視化分子モデルの空間(長さ)の単位に高精度に対応付けることができ、粗視化モデルを用いたシミュレーションの計算精度を向上させることができる。
高分子材料のシミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。 ポリブタジエンの構造式である。 粗視化分子モデルの一例を示す概念図である。 理想鎖に近似したときの粗視化分子モデルの部分拡大図である。 シミュレーション方法の一例を示すフローチャートである。 屈曲ポテンシャルの一例を説明する図である。 相互作用定義工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 全原子モデルの一例を示す概念図である。 第1計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。 全原子モデルが配置された高分子材料モデルの一例を示す概念図である。 各全原子モデルの実効的な密度l/pと、モノマー数との関係を示すグラフである。 第2計算工程の一例を示すフローチャートである。 粗視化分子モデルが配置された高分子材料モデルの一例を示す概念図である。 各粗視化分子モデルの実効的な密度l/p、屈曲ポテンシャルの相互作用パラメータK、及び、粒子数Nの関係を示すグラフの一例である。 全原子モデルのKuhnセグメント数とモノマー数との関係と、粗視化分子モデルのKuhnセグメント数と粗視化粒子数との関係とをフィッティングした結果のグラフである。 全原子モデルのKuhnセグメント数とモノマー数との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
高分子材料のシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある)は、コンピュータを用いて、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法である。高分子材料としては、例えば、ゴム、樹脂又はエラストマー等が含まれる。
図1は、本発明の高分子材料のシミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c、及び、ディスプレイ装置1dを含んで構成されている。この本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ、磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するためのソフトウェア等が予め記憶されている。
高分子材料としては、例えば、ゴム、樹脂又はエラストマー等が含まれる。本実施形態では、高分子材料として、cis-1,4ポリブタジエン(以下、単に「ポリブタジエン」ということがある。)が例示される。図2は、ポリブタジエンの構造式である。このポリブタジエンを構成する高分子鎖4は、メチレン基(−CH−)とメチン基(−CH−)とからなるモノマー5{−[CH−CH=CH−CH]−}が、重合度で連結されて構成されている。また、高分子材料の末端には、メチレン基(−CH)に替えて、メチル基(−CH)が連結される。なお、高分子材料には、ポリブタジエン以外の高分子材料が用いられてもよい。
本実施形態のシミュレーション方法では、高分子鎖4を表現した粗視化分子モデルが用いられる。図3は、粗視化分子モデルの一例を示す概念図である。
粗視化分子モデル6は、複数の粒子7と、粒子7、7間を結合する結合鎖8とを含んで構成されている。粗視化分子モデル6は、高分子鎖4を、高分子鎖4を構成する原子の数よりも少ない複数の粒子7を用いて表現されている。本実施形態の粗視化分子モデル6は、Kremer-Grestモデルである場合が例示されるが、特に限定されるわけではなく、例えば、DPD(散逸粒子動力学法)に基づくモデル等であってもよい。粒子7は、例えば、図2に示した高分子鎖4のモノマー5に対応している。
粗視化分子モデル6は、例えば、高分子鎖4の実際の構造に基づいて表現された全原子モデル11(図8に示す)や、ユナイテッドアトムモデル(以下、単に「UAモデル」ということがある。)に比べて、大きな時空間を扱うことができる。一方、粗視化分子モデル6は、現実の高分子鎖4(図2に示す)とは異なる長さの単位が用いられている。このため、粗視化分子モデル6の分子動力学計算の計算結果を、実際の高分子鎖4の運動として取り扱うためには、粗視化分子モデル6の長さの単位を、高分子鎖4の長さの単位に精度よく換算することが重要である。
しかしながら、Kremer-Grestモデルや、DPD(散逸粒子動力学法)に基づくモデルなどのように、個々の原子の座標を扱わない粗視化分子モデル6では、高分子鎖4の太さが考慮されていないため、上記特許文献2のように、高分子鎖4の屈曲性を一致させるように空間(長さ)の単位を換算しても、粗視化分子モデル6の実効的な密度が、高分子鎖
4、全原子モデル11、又は、UAモデルのそれと必ずしも一致しない。
ここで、「実効的な密度」とは、下記式(2)で定義されるKuhn長lを、下記式(3)で定義されるPacking長pで除した値l/pとして表される量である。これは、ゴム域の1本の高分子鎖4が動くことのできるチューブ状の空間の範囲(体積)あたりの高分子鎖4の本数に比例する量として近似的に扱うことができる。
Figure 2019159683
ここで、
L:粗視化分子モデル又は高分子鎖(全原子モデル又はUAモデル)の全長
g:粗視化分子モデル又は高分子鎖(全原子モデル又はUAモデル)の慣性半径
Figure 2019159683
ここで、
M:粗視化分子モデル又は高分子鎖(全原子モデル又はUAモデル)の質量
g:粗視化分子モデル又は高分子鎖(全原子モデル又はUAモデル)の慣性半径
ρ:粗視化分子モデル又は高分子鎖(全原子モデル又はUAモデル)の密度
A:アボガドロ数
図4は、理想鎖に近似したときの粗視化分子モデルの部分拡大図である。上記式(1)のKuhn長lは、長さの単位を持つ量であり、高分子鎖4(図2に示す)の剛直性(即ち、屈曲性とは逆の概念である曲がりにくさ)を表すパラメータである。図4に示されるように、Kuhn長lは、高分子物理で知られている理想鎖6’に高分子鎖4が近似したとき、即ち、慣性半径が再現されるように、粒子7’(Kuhnセグメントと呼ぶ)が一定の距離の間隔でランダムな向きに(理想鎖の結合鎖8’で)接続された直鎖として、粗視化分子モデル6が近似したときにおいて、接続された粒子7’(Kuhnセグメント)の間の距離に対応する。
一方、上記式(2)のPacking長pは、長さの単位を持つ量であり、高分子鎖1本の占める体積と、末端間距離の二乗平均との比として定義される。このPacking長pは、ゴム域の1本の高分子鎖4が動くことのできるチューブ状の空間15の太さに比例する量として近似的に扱うことができる。上記式(2)及び上記式(3)では、高分子鎖4の末端間距離の二乗平均を、慣性半径の二乗平均の6倍として見積もっている。
粗視化分子モデル6と、高分子鎖4、全原子モデル11又はUAモデルとの間で、実効的な密度l/pの乖離(ズレ)が大きくなると、粗視化分子モデル6の長さの単位と、高分子鎖4(図2に示す)の長さの単位との間で換算を行った際に、密度のズレ(即ち、平衡密度からのズレ)が大きくなる。例えば、上記の特許文献2の手法を用いて、粗視化分子モデル6と高分子鎖4との時間単位の換算定数を求める際に、粗視化モデルの構造緩和した座標に重なるように全原子モデルの座標を設定して、全原子モデルの構造緩和した座標を作成すると、得られた座標の密度が、平衡密度から乖離する(即ち、構造緩和が不十分となる)。このような粗視化分子モデル6と、高分子鎖4、全原子モデル11又はUAモデルとの組み合わせが用いられた場合、時間単位の換算定数を精度よく求めることができなくなる。
本実施形態のシミュレーション方法では、構造緩和の計算時において、粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pが、高分子鎖4(図2に示す)、高分子鎖4の全原子モデル11(図8に示す)、又は、高分子鎖4のUAモデル(図示省略)の実効的な密度l/pに近づくように、粗視化分子モデル6の隣り合う粒子7、7間に相互作用を定義して、構造緩和が計算されている。図5は、シミュレーション方法の一例を示すフローチャートである。なお、本実施形態のシミュレーション方法では、粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pが、全原子モデル11(図8に示す)の実効的な密度l/pに近づくように、粗視化分子モデル6の構造緩和が計算される態様が例示されるが、このような態様に限定されない。例えば、UAモデルの実効的な密度l/pに近づくように粗視化分子モデル6の構造緩和が計算されてもよいし、高分子鎖4の実効的な密度l/pが既知の場合には、この既知の実効的な密度l/pに近づくように、粗視化分子モデル6の構造緩和が計算されてもよい。
本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、図3に示した粗視化分子モデル6が、コンピュータ1に入力される(工程S1)。
高分子鎖4(図2に示す)がポリブタジエンである場合には、論文1( Kurt Kremer & Gary S. Grest 著「Dynamics of entangled linear polymer melts: A molecular-dynamics simulation」、J. Chem Phys. vol.92, No.8, 15 April 1990 )に基づいて、例えば1.55個分のモノマー5を構造単位として、該構造単位を1個の粒子7に置換される。これにより、粗視化分子モデル6には、複数(例えば、10〜5000個)の粒子7が設定される。
粒子7は、分子動力学計算において、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、粒子7には、質量、直径、電荷又は初期座標などのパラメータが定義される。これらの各パラメータは、数値情報としてコンピュータ1に記憶される。
結合鎖8は、粒子7、7間に平衡長を定義した結合ポテンシャルとして構成される。ここで、「平衡長」とは、粒子7、7間の結合距離である。平衡長は、隣り合う粒子7、7の中心7a、7a間の距離として定義される。また、結合鎖8の結合ポテンシャルには、例えば、上記論文1に基づいて設定されるのが望ましい。このような粗視化分子モデル6は、高分子材料を分子動力学計算で取り扱うための数値データであり、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1に、粗視化分子モデル6の隣り合う粒子間に、相互作用が定義される(相互作用定義工程S2)。上述したように、相互作用は、分子動力学に基づく構造緩和の計算時において、粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pが、高分子鎖4(図2に示す)の実効的な密度l/pに近づけるためのものである。
相互作用としては、粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pが、高分子鎖4、全原子モデル11又はUAモデル(本実施形態では、全原子モデル11)の実効的な密度l/pに近づくものであれば、特に限定されない。本実施形態の相互作用としては、粗視化分子モデル6の屈曲性に影響を与える相互作用(以下、単に「屈曲ポテンシャル」ということがある。)が採用される。
屈曲ポテンシャルとしては、粗視化分子モデル6の屈曲性に影響を与えるものであれば、特に限定されない。図6は、屈曲ポテンシャルの一例を説明する図である。本実施形態の屈曲ポテンシャルは、下記式(1)で定義される。
Figure 2019159683
ここで、
E:相互作用ポテンシャル関数(屈曲ポテンシャル)
K:相互作用パラメータ
θ:隣り合う3つの粒子がなす角度
上記式(1)において、相互作用パラメータKが正の場合、隣り合う3つの粒子7がなす角度θが小さくなるほど、屈曲ポテンシャルE(θ)が大きくなる。一方、相互作用パラメータKが負の場合には、正の場合の逆の傾向となる。このように、相互作用パラメータKの値を調節することで、屈曲ポテンシャルE(θ)を適宜設定することができる。このような屈曲ポテンシャルE(θ)により、曲がりやすい粗視化分子モデル6や、曲がりにくい粗視化分子モデル6を設定できる。
粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pを、高分子鎖4、全原子モデル11又はUAモデル(本実施形態では、全原子モデル11)の実効的な密度l/pに効果的に近づけるためには、相互作用パラメータKを適切に決定することが重要である。本実施形態の相互作用定義工程S2は、相互作用パラメータKが異なる複数の粗視化分子モデルを定義して、これらの粗視化分子モデルのうち、高分子鎖4、全原子モデル11又はUAモデル(本実施形態では、全原子モデル11)の実効的な密度によく近似する実効的な密度を有する粗視化分子モデル6の相互作用10を決定している。
さらに、本実施形態の相互作用定義工程S2では、上述の相互作用10を決定するとともに、粗視化分子モデル6(図3に示す)の粒子数と、高分子鎖4(図2に示す)のモノマー数との比も計算している。図7は、相互作用定義工程S2の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の相互作用定義工程S2では、先ず、全原子モデル11の実効的な密度l/pが取得される(第1計算工程S21)。図8は、全原子モデルの一例を示す概念図である。
全原子モデル11は、高分子鎖4(図2に示す)の実際の構造に基づいて、原子をモデル化した原子モデル12で表現したものである。全原子モデル11を用いた分子動力学計算では、現実の高分子鎖4に基づいた長さの単位が用いられている。従って、全原子モデル11の実効的な密度l/pを求めることで、高分子鎖4の実効的な密度l/pを求めることができる。
本実施形態の第1計算工程S21では、全原子モデル11の実効的な密度l/pを求めるとともに、全原子モデル11のKuhnセグメント数が求められている。なお、Kuhnセグメント数は、粗視化分子モデル6(図3に示す)の粒子数と、高分子鎖4(図2に示す)のモノマー数との比を計算するのに用いられる。図9は、第1計算工程S21の処理手順の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第1計算工程S21では、先ず、モノマー数が異なる複数の全原子モデル11(図8に示す)が設定される(工程S41)。図8に示されるように、全原子モデル11は、複数の原子モデル12と、原子モデル12、12間を結合するボンド13とを含んで構成されている。図2に示した高分子鎖4のモノマー5を表す単位構造に基づいて、原子モデル12がボンド13で連結されることにより、モノマーモデル14が設定される。このモノマーモデル14が、予め定められた複数のモノマー数(即ち、分子量(重合度))に基づいて連結される。これにより、モノマー数が異なる複数の全原子モデル11が設定される。
モノマー数については、高分子材料の種類や、後述の分子動力学計算を実施するコンピュータ1の性能等に基づいて、構造緩和計算が現実的な計算時間で完了しうる範囲内で設定されるのが望ましい。なお、モノマー数は、計算精度を維持するために、極端に小さい値を除外するのが望ましい。モノマー数の一例としては、10〜60から選択されうる。なお、このモノマー数に限定されるわけではない。
原子モデル12は、後述の分子動力学計算に基づいたシミュレーションにおいて、運動方程式の質点として取り扱われる。即ち、原子モデル12には、質量、直径、電荷、又は、初期座標などのパラメータが定義される。本実施形態の原子モデル12は、高分子鎖4(図2に示す)の炭素原子をモデル化した炭素原子モデル12C、及び、高分子鎖4の水素原子をモデル化した水素原子モデル12Hを含んでいる。
ボンド13は、原子モデル12、12間を拘束するものである。本実施形態のボンド13は、炭素原子モデル12C、12Cを連結する主鎖13A、及び、炭素原子モデル12Cと水素原子モデル12Hとの間を連結する側鎖13Bとを含んでいる。これらの主鎖13A及び側鎖13Bは、例えば、平衡長とバネ定数とが定義されたバネとして取り扱われる。
全原子モデル11は、各原子モデル12、12間の結合長さである結合長、ボンド13を介して連続する3つの原子モデル12がなす角度である結合角、及び、ボンド13を介して連続する4つの原子モデル12において、隣り合う3つの原子モデル12が作る二面角などが定義される。これにより、全原子モデル11は、三次元構造を有する。全原子モデル11は、慣例に従い、外力又は内力を受けることによって、結合長、結合角及び二面角が変化する。これにより、全原子モデル11は、その三次元構造を変化させることができる。
結合長、結合角及び二面角は、例えば、論文2(J. Comput. Chem. 25, 1157-1174 (2004))に基づいて設定されるポテンシャル(GAFF)によって定義されうる。ポテンシャルは、高分子鎖4の構造に応じて設定されるのが望ましい。このような全原子モデル11は、材料物性シミュレーションソフトウェア(例えば、(株)JSOL社製のJ−OCTA)を用いて作成することができる。各全原子モデル11は、コンピュータ1で取り扱い可能な数値データであり、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、モノマー数が異なる各全原子モデル11の初期配置が決定される(工程S42)。工程S42では、予め定められた空間に、全原子モデル11が配置された高分子材料モデルが設定される。図10は、全原子モデル11が配置された高分子材料モデル18の一例を示す概念図である。
本実施形態の工程S42では、モノマー数が異なる各全原子モデル11が、独立して設けられた空間16にそれぞれ配置される。これにより、工程S42では、各全原子モデル11の初期配置が決定された高分子材料モデル18がそれぞれ定義される。各高分子材料モデル18には、同一のモノマー数の全原子モデル11が複数本配置されている。全原子モデル11は、モンテカルロ法に基づいて、空間16内に配置されるのが望ましい。
空間16は、解析対象の高分子材料の微小構造部分に相当する。本実施形態の空間16は、互いに向き合う三対の平面17、17を有する立方体として定義されている。各平面17には、周期境界条件が定義されている。従って、一方の平面17と、反対側の平面17とが連続している(繋がっている)ものとして取り扱うことができる。
各空間16に配置される全原子モデル11の本数については、モノマー数や、空間16の大きさに基づいて適宜設定される。全原子モデル11の本数としては、全原子モデル同士の絡まりを防ぐ観点より、平衡時の周期境界長が平衡時の慣性半径の3倍以上に長くなりうる本数が選択されるのが望ましい。本実施形態では、好ましくは20本以上であり、また、好ましくは200本以下である。
空間16の一辺の長さLaは、系内の原子モデル12の初期密度が、例えば0.001g/cm3となるように設定されるのが望ましい。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、全原子モデル11の初期配置が決定された高分子材料モデル18において、隣接する全原子モデル11、11の原子モデル12、12間に、相互作用ポテンシャルP1が定義される(工程S43)。
本実施形態の相互作用ポテンシャルP1は、LJポテンシャルULJ(rij)であり、下記式(4)で定義される。このような相互作用ポテンシャルは、原子モデル12、12間の距離rijに応じて、斥力及び引力を定義することができる。
Figure 2019159683

ここで、各定数及び変数は、Lennard-Jones ポテンシャルのパラメータであり、次のとおりである。
ij:原子モデル間の距離
c:カットオフ距離
ε:原子モデル間に定義されるLJポテンシャルの強度
σ:原子モデルの直径に相当
なお、距離rij及びカットオフ距離rcは、各原子モデル12、12の中心間の距離として定義される。
相互作用ポテンシャルは、炭素原子モデル12C、12C(図8に示す)間に設定される第1ポテンシャル、水素原子モデル12H、12H(図8に示す)間に設定される第2ポテンシャル、及び、炭素原子モデル12Cと水素原子モデル12Hとの間に設定される第3ポテンシャルを含んでいる。なお、上記式(4)中の各定数は、上記論文1に基づいて、適宜設定することができる。これらの全原子モデル11の初期配置が決定された高分子材料モデル18は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、初期配置された全原子モデル11の構造緩和が計算される(工程S44)。工程S44では、全原子モデル11の初期配置が決定された各高分子材料モデル18(図10に示す)について、分子動力学計算が実施される。分子動力学計算は、例えば、図10に示した空間16について所定の時間、配置した全ての全原子モデル11が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻での全ての原子モデル12の動きが追跡され、コンピュータ1に記憶される。また、分子動力学計算の条件は、例えば、系内の原子モデル12の個数、体積及び温度は一定で行われる。このような分子動力学計算は、例えば、分子動力学計算プログラムLAMMPSを用いて行うことができる。
工程S44では、全原子モデル11の初期配置が十分に構造緩和されるまで、分子動力学計算が実施される。なお、初期配置の構造緩和の判断基準については、全原子モデル11の人為的な初期配置が十分に排除されたとみなせる基準であれば、適宜設定されうる。工程S44では、構造緩和計算によって、空間16の最終的な大きさが、例えば1atmの平衡体積に設定されるのが望ましい。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、全ての全原子モデル(即ち、モノマー数が異なる全ての全原子モデル)11の構造緩和が計算されたか否かが判断される(工程S45)。工程S45において、全ての全原子モデル11の構造緩和が計算されたと判断された場合(工程S45で、「Y」)、次の工程S46が実施される。他方、全ての全原子モデル11の構造緩和計算が終了していないと判断された場合(工程S45で、「N」)、構造緩和が計算されていない全原子モデル11(即ち、図10に示した高分子材料モデル18)が選択され(工程S47)、工程S44〜工程S45が実施される。これにより、全ての全原子モデル11の熱平衡状態(構造緩和状態)がそれぞれ計算される。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、全原子モデル11の全長L(図示省略)が計算される(工程S46)。工程S46では、構造緩和した全ての全原子モデル(即ち、モノマー数が異なる全ての全原子モデル)11について、その全長Lがそれぞれ計算される。全長Lは、例えば、上記特許文献1の方法に基づいて、全原子モデル11を主鎖方向に強制的に引き伸ばす変形計算によって求めることができる。各全原子モデル11の全長Lは、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、全原子モデル11の慣性半径Rgが計算される(工程S48)。工程S48では、構造緩和した全ての全原子モデル(即ち、モノマー数が異なる全ての全原子モデル)11について、その慣性半径Rgがそれぞれ計算される。全原子モデル11の慣性半径Rgは、例えば、上記論文1に記載されている式2.5に基づいて、工程S44の分子動力学計算で求められた全原子モデル11の原子モデル12の座標値から計算される。各全原子モデル11の慣性半径は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、全原子モデル11の密度ρが計算される(工程S49)。密度ρについては、適宜計算することができる。
本実施形態の工程S49では、重合度が異なる(即ち、モノマー数が異なる)全原子モデル11について、それぞれ構造緩和された高分子材料モデル18(図10に示す)の密度ρが計算される。計算された密度ρは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、全原子モデル11の第2屈曲度合が計算される(工程S50)。本実施形態の第2屈曲度合は、構造緩和後の全原子モデル11のKuhnセグメント数である。工程S50では、構造緩和した全ての全原子モデル(即ち、モノマー数が異なる全ての全原子モデル)11について、そのKuhnセグメント数がそれぞれ計算される。Kuhnセグメント数は、高分子物理で知られている理想鎖のパラメータの一つであり、下記式(5)で計算される。
Figure 2019159683
ここで、
kuhn:Kuhnセグメント数
L:全原子モデルの全長
g:全原子モデルの慣性半径
上記式(5)では、例えば、全原子モデル11の末端間ベクトルV1(図8に示す)の長さのアンサンブル平均を用いる上記特許文献1とは異なり、工程S48で求められた全原子モデルの慣性半径Rgと、工程S46で求められた全原子モデルの全長Lとを用いて、Kuhnセグメント数Nkuhnが求められる。これにより、本実施形態では、全原子モデル11の末端側の原子モデル12の高い運動性の影響を小さくできるため、Kuhnセグメント数Nkuhnを精度よく求めることができる。
上記式(5)において、Kuhnセグメント数Nkuhnの値が大きいほど、全原子モデル11は、コンパクトに折り畳んだ形状となる。他方、Kuhnセグメント数Nkuhnの値が小さいほど、全原子モデル11の折れ曲がりが小さくなり、直線状に連続してのびる形状となる。従って、Kuhnセグメント数Nkuhnは、全原子モデルの屈曲度合を示すパラメータとして用いられる。Kuhnセグメント数Nkuhnは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の第1計算工程S21では、全原子モデル11の実効的な密度l/pが計算される(工程S51)。本実施形態では、重合度依存性の少ない(長鎖長極限の)全原子モデル11の実効的な密度l/pが計算される。
本実施形態の工程S51では、先ず、重合度が異なる(即ち、モノマー数が異なる)構造緩和した全原子モデル11の実効的な密度l/pがそれぞれ計算される。上述したように、実効的な密度l/pは、上記式(2)で定義されるKuhn長lを、上記式(3)で定義されるPacking長pで除した値l/pで取得することができる。
上記式(2)の全原子モデル11の全長Lには、工程S46で求められた全長Lが代入される。上記式(2)、(3)の全原子モデル11の慣性半径Rgには、工程S48で求められた慣性半径Rgが代入される。上記式(3)の全原子モデル11の質量Mには、1本の全原子モデル11を構成する原子モデル12の合計質量が代入される。上記式(3)の全原子モデル11の密度ρには、工程S49で求められた全原子モデル11の密度ρが代入される。これにより、工程S51では、各全原子モデル11の実効的な密度l/pを計算することができる。図11は、各全原子モデルの実効的な密度l/pと、モノマー数との関係を示すグラフである。
次に、工程S51では、各全原子モデルの実効的な密度l/pの近似曲線21が求められる。近似曲線21としては、例えば、l/p=c1×(1−M/c2)を用いることができる。なお、変数c1及びc2は、フィッティングパラメータである。次に、工程S51では、近似曲線21の分子量∞の値(上記近似曲線21の変数c1の値)として、実効的な密度の長鎖長極限l/pが求められる。実効的な密度の長鎖長極限l/pは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の相互作用定義工程S2では、相互作用パラメータKが異なる複数の粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pが取得される(第2計算工程S22)。本実施形態の第2計算工程S22では、粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pを求めるとともに、粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数が求められている。図12は、第2計算工程S22の一例を示すフローチャートである。
本実施形態の第2計算工程S22は、先ず、粒子数(鎖長)が異なる複数の粗視化分子モデル6が設定される(工程S61)。図3に示されるように、粗視化分子モデル6は、複数の粒子7と、粒子7、7間を結合する結合鎖8とを含んで構成されている。
本実施形態の第2計算工程S22は、複数の異なる粒子数(鎖長)に基づいて、粒子7が連結されることにより、粒子数が異なる複数の粗視化分子モデル6が設定される。複数の異なる粒子数については、高分子材料の種類や、後述の分子動力学計算を実施するコンピュータ1の性能等に基づいて、適宜設定することができる。粒子数は、例えば、5〜1000から選択されるのが望ましい。なお、このような粒子数に限定されるわけではない。これらの粗視化分子モデル6は、高分子材料を分子動力学計算で取り扱うための数値データであり、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、相互作用パラメータKが異なる複数の粗視化分子モデル6が定義される(工程S62)。図6に示されるように、本実施形態の相互作用10は、上記式(1)で定義される屈曲ポテンシャルE(θ)である。工程S62では、複数の異なる相互作用パラメータKに基づいて、粗視化分子モデル6の隣り合う粒子7、7間に屈曲ポテンシャルE(θ)が定義されることにより、相互作用パラメータKが異なる複数の粗視化分子モデル6が定義される。
複数の異なる相互作用パラメータKについては、例えば、高分子鎖4がとり得る範囲の実効的な密度l/pに基づいて適宜設定することができる。本実施形態の相互作用パラメータKは、例えば、高分子鎖4の実効的な密度l/pが2.5〜7.0程度の場合、0〜1.5の範囲から選択されるのが望ましい。
工程S62では、工程S61で設定された粒子数が異なる各粗視化分子モデル6について、相互作用パラメータKが異なる複数の粗視化分子モデル6がそれぞれ設定される。即ち、工程S62では、粒子数Nの種類の数(例えば、2種類(図14に示したN=50、100))に、相互作用の種類の数(例えば、3種類(図14に示したK=0.8、1.2、1.6))を乗じた種類の数(例えば、6種類)の粗視化分子モデル6が設定される。粒子数及び相互作用が異なる各粗視化分子モデル6は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、粒子数及び相互作用が異なる各粗視化分子モデル6の初期配置が決定される(工程S63)。工程S63では、予め定められた空間に、各粗視化分子モデル6がそれぞれ配置された高分子材料モデルが設定される。図13は、粗視化分子モデル6が配置された高分子材料モデル20の一例を示す概念図である。
本実施形態の工程S63では、粒子数及び相互作用が異なる各粗視化分子モデル6が、独立して設けられた空間16にそれぞれ配置される。これにより、工程S63では、各粗視化分子モデル6の初期配置が決定された高分子材料モデル20がそれぞれ定義される。各高分子材料モデル20において、空間16には、同一の粒子数かつ同一の相互作用の粗視化分子モデル6が複数本配置されている。粗視化分子モデル6は、モンテカルロ法に基づいて、空間16内に配置されるのが望ましい。
空間16は、解析対象の高分子材料の微小構造部分に相当し、図10に示した空間16と同様に設定される。各空間16に配置される粗視化分子モデル6の本数については、粒子数や、空間16の大きさに基づいて適宜設定される。空間16に配置される粗視化分子モデル6の本数は、好ましくは50本以上であり、また、好ましくは2000本以下である。
工程S63では、各高分子材料モデル20において、隣接する粗視化分子モデル6、6の粒子7、7間に、相互作用ポテンシャルP2がそれぞれ定義される。本実施形態の相互作用ポテンシャルP2は、LJ(Lennard-Jones)ポテンシャルであり、上記式(4)で定義される。なお、上記式(4)において、「原子モデル間」は、「粒子間」に置き換えて適用される。
相互作用ポテンシャルP2の強度ε、相互作用ポテンシャルP2が作用する距離σ、及び、カットオフ距離rcは、例えば、上記論文2に基づいて設定されるのが望ましい。これらの粗視化分子モデル6の初期配置が決定された高分子材料モデル20は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、初期配置された粗視化分子モデル6の構造緩和が計算される(工程S64)。工程S64では、粗視化分子モデル6の初期配置が決定された各高分子材料モデル20(図13に示す)について、分子動力学計算が実施される。工程S64では、各時刻での全ての粒子7の動きが追跡され、コンピュータ1に記憶される。工程S64では、粗視化分子モデル6の初期配置が十分に構造緩和されるまで、分子動力学計算が実施される。なお、初期配置の構造緩和の判断基準については、粗視化分子モデル6の人為的な初期配置が十分に排除されたとみなせる基準であれば、適宜設定されうる。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、全ての粗視化分子モデル(即ち、粒子数及び相互作用が異なる全ての粗視化分子モデル)6の構造緩和が計算されたか否かが判断される(工程S65)。工程S65において、全ての粗視化分子モデル6の構造緩和が計算されたと判断された場合(工程S65で、「Y」)、次の工程S66が実施される。他方、全ての粗視化分子モデル6の構造緩和計算が終了していないと判断された場合(工程S65で、「N」)、構造緩和が計算されていない粗視化分子モデル6(即ち、図13に示した高分子材料モデル20)が選択され(工程S67)、工程S64〜工程S65が実施される。これにより、全ての粗視化分子モデル6の熱平衡状態(構造緩和状態)がそれぞれ計算される。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、粗視化分子モデル6の全長L(図示省略)が計算される(工程S66)。工程S66では、構造緩和した全ての粗視化分子モデル(即ち、粒子数及び相互作用が異なる全ての粗視化分子モデル)6について、その全長Lがそれぞれ計算される。本実施形態では、粗視化分子モデル6内の隣接粒子の平衡核間距離と、粒子数とを乗じることによって、全長Lが求められている。なお、平衡核間距離は、上記の分子動力学計算の結果に基づいて求められる。粗視化分子モデル6の全長Lは、コンピュータ1にそれぞれ入力される。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、粗視化分子モデル6の慣性半径Rgが計算される(工程S68)。工程S68では、構造緩和した全ての粗視化分子モデル(即ち、粒子数及び相互作用が異なる全ての粗視化分子モデル)6について、その慣性半径Rgがそれぞれ計算される。全原子モデル11の慣性半径は、例えば、上記論文1に記載されている式2.5に基づいて、工程S64の分子動力学計算で求められた粗視化分子モデル6の粒子7の座標値から計算される。各粗視化分子モデル6の慣性半径は、コンピュータ1に入力される。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、粗視化分子モデル6の第1屈曲度合が求められる(工程S69)。本実施形態の第1屈曲度合は、構造緩和後の粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数である。工程S69では、構造緩和した全ての粗視化分子モデル(即ち、粒子数及び相互作用が異なる全ての粗視化分子モデル)6のKuhnセグメント数が、それぞれ計算される。上述したように、Kuhnセグメント数は、粗視化分子モデルの慣性半径Rgと、粗視化分子モデルの全長Lとを用いて、上記式(5)で計算される。粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数Nkuhnは、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の第2計算工程S22では、粗視化分子モデルの実効的な密度l/pが計算される(工程S70)。本実施形態では、各相互作用(相互作用パラメータK)について、重合度依存性の少ない(即ち、長鎖長極限の)粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pが計算される。
本実施形態の工程S70では、先ず、全ての粗視化分子モデル(即ち、粒子数及び相互作用が異なる全ての粗視化分子モデル)6の実効的な密度l/pがそれぞれ計算される。上述したように、実効的な密度l/pは、上記式(2)で定義されるKuhn長lを、上記式(3)で定義されるPacking長pで除した値l/pで取得することができる。
上記式(2)の粗視化分子モデル6の全長Lには、工程S66で求められた全長Lが代入される。上記式(2)、(3)の粗視化分子モデル6の慣性半径Rgには、工程S68で求められた慣性半径Rgが代入される。上記式(3)の粗視化分子モデル6の質量Mには、1本の粗視化分子モデル6を構成する粒子7の合計質量が代入される。上記式(3)の粗視化分子モデル6の密度ρには、例えば、0.85mass/σ3が代入される。これにより、工程S70では、各粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pを計算することができる。
本実施形態の工程S70では、相互作用(相互作用パラメータK)毎に、粒子数Nが異なる粗視化分子モデルの実効的な密度l/pが取得される。図14は、各粗視化分子モデルの実効的な密度l/p、屈曲ポテンシャルの相互作用パラメータK、及び、粒子数Nの関係を示すグラフの一例である。図14では、相互作用パラメータKが異なる3つの粗視化分子モデルについて、2種類の粒子数(鎖長)Nの実効的な密度l/p(粒子数N=50を一点鎖線、粒子数N=100を二点鎖線で示す)と、実効的な密度の長鎖長極限の推定値l/p(実線)を示している。
次に、工程S70では、相互作用(相互作用パラメータK)毎に、粒子数Nが異なる粗視化分子モデルの実効的な密度l/pが取得されたグラフについて、粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pの近似曲線28がそれぞれ求められる。近似曲線28としては、例えば、l/p=c1×(1−M/c2)×exp(c3×K)を用いることができる。なお、変数c1、c2及びc3は、フィッティングパラメータである。次に、工程S70では、近似曲線28の分子量∞の値(前記の式ではc1×exp(c3×K))として、粗視化分子モデル6の長鎖長極限での実効的な密度l/pが、相互作用(相互作用パラメータK)の関数として取得される。そして、取得された実効的な密度l/pの近似曲線の全てのパラメータ値が、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の相互作用定義工程S2では、高分子鎖(全原子モデル11)の実効的な密度l/p(図11に示したl/p)に近似する実効的な密度l/p(図14に示したl/p)を有する粗視化分子モデル6の相互作用が決定される(工程S23)。工程S23では、先ず、図11に示した全原子モデル11の実効的な密度l/pと、図14に示した相互作用(相互作用パラメータK)の関数としての長鎖長極限の粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pとが比較される。そして、全原子モデル11の実効的な密度l/pに近似する密度l/pを有する粗視化分子モデル6の相互作用(相互作用パラメータK)が決定される。
本実施形態の相互作用定義工程S2では、相互作用パラメータKが異なる複数の粗視化分子モデル6を定義して、各粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pが計算されている。このため、高分子鎖4の実効的な密度l/pに近似する実効的な密度l/pを有する粗視化分子モデルの相互作用(相互作用パラメータK)を決定することができる。なお、相互作用パラメータKの決定は、フィッティングに用いられた上記式l/p=c1×(1−M/c2)×exp(c3×K)において、全原子モデル11のl/pを用いて、K=ln(l/p/c1)/c3 によって計算できる。
さらに、本実施形態の相互作用定義工程S2では、重合度依存性の少ない(長鎖長極限の)全原子モデル11の実効的な密度l/p(図11に示したl/p)と、重合度依存性の少ない(長鎖長極限の)粗視化分子モデル6の実効的な密度l/p(図14に示したl/p)とが比較されている。これにより、相互作用定義工程S2では、全原子モデル11の重合度や、粗視化分子モデル6の重合度に左右されることなく、粗視化分子モデル6の実効的な密度を、高分子鎖4の実効的な密度に近づけることができる相互作用パラメータKを決定することができる。決定された粗視化分子モデル6の相互作用(相互作用パラメータK)は、コンピュータ1に記憶される。
次に、本実施形態の相互作用定義工程S2では、粗視化分子モデル6(図3に示す)の粒子数と、高分子鎖4(図2に示す)のモノマー数との比を計算する(工程S24)。工程S24では、相互作用が定義された粗視化分子モデル6の構造緩和後の第1屈曲度合と、全原子モデル11又はユナイテッドアトムモデル(図示省略)の構造緩和後の第2屈曲度合とに基づいて、粗視化分子モデル3の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比(粗視化分子モデル6の1個の粒子7あたりの高分子鎖4のモノマー数)を求めている。
第1屈曲度合は、工程S69で取得された粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数である。工程S24では、先ず、全ての粗視化分子モデル6のうち、工程S23で決定された相互作用パラメータKを有する複数の粗視化分子モデル6のみを対象に、Kuhnセグメント数と粒子数との関係が取得される。
一方、第2屈曲度合は、工程S50で取得された全原子モデル11のKuhnセグメント数である。工程S24では、全原子モデル11のKuhnセグメント数とモノマー数との関係が取得される。
次に、工程S24では、全原子モデル11のKuhnセグメント数とモノマー数との関係と、粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数と粒子数との関係とがフィッティングされる。図15は、全原子モデル11のKuhnセグメント数と、粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数とをフィッティングした後の、Kuhnセグメント数とモノマー数との比(NKuhn/NFA)およびKuhnセグメント数と粒子数との比(NKuhn/NCG)の対応関係を示すグラフである。
本実施形態の工程S24では、粗視化分子モデル6のKuhnのセグメント数と、粒子数NCGとの関係、及び、全原子モデル11のKuhnセグメント数と、モノマー数NFAとの関係がフィッティングされる。これにより、鎖長(粒子数NCG、モノマー数NFA)の依存性を考慮して、同一鎖長で空間的な広がりが同じとなるような、粗視化分子モデル6の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比を計算することができる。
工程S24では、粗視化分子モデル6のKuhnのセグメント数と、粒子数NCGとの関係が、図15に示した滑らかな曲線25(破線で示している)でフィッティングされる。図15では、鎖長の依存性を視覚化するため、Kuhnのセグメント数と鎖長との比(NKuhn/NCG、及び、NKuhn/NFA)を縦軸としている。曲線は、下記式(6)で定義される。このような曲線25は、3つのフィッティングパラメータa、b、cが用いられるため、鎖長の依存性(とりわけ、末端の運動性が高い影響)を考慮して精度よくフィッティングすることができる。
Figure 2019159683
ここで、
kuhn:Kuhnのセグメント数
CG:粗視化分子モデルの粒子数
a、b、c:フィッティングパラメータ
次に、工程S24では、下記式(7)に基づいて、全原子モデル11のKuhnセグメント数Nkuhnと、モノマー数NFAとの関係が、曲線25にフィッティングされる。下記式(7)では、単独のフィッティングパラメータdが用いられるため、粗視化分子モデル6に比べて統計誤差の大きい全原子モデル11の関係を、曲線25に精度よくフィッティングすることができる。
Figure 2019159683
ここで、
FA:全原子モデルのモノマー数
CG:粗視化分子モデルの粒子数
d:フィッティングパラメータ
フィッティングの方法やフィッティングに用いる統計誤差については、特許文献(特許第6050903号公報)に記載と同一の方法が用いられる。図15に示したグラフの例において、粗視化分子モデル6の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比(即ち、1個の粒子7あたりのモノマー数)は、1.2である。このような粗視化分子モデル6(図3に示す)の粒子数と、高分子鎖4(図2に示す)のモノマー数との比は、コンピュータ1に入力される。
本実施形態の工程S24では、全原子モデル11(図5に示す)のKuhnセグメント数と、粗視化分子モデル6(図3に示す)のKuhnセグメント数とをフィッティングさせることにより、互いに略同一形状となる全原子モデル11と粗視化分子モデル6とを対応づけることができるため、粗視化分子モデル6の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比を精度よく計算することができる。さらに、本実施形態では、全原子モデル11のKuhnセグメント数、及び、粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数がそれぞれ複数求められているため、精度良くフィッティングすることができる。
さらに、本実施形態の工程S24では、工程S23で決定された相互作用パラメータKを有する複数の粗視化分子モデル6のみを対象に、Kuhnセグメント数と粒子数との関係が取得されている。これにより、実効的な密度l/pが互いに近似する全原子モデル11及び粗視化分子モデル6のKuhnセグメント数でフィッティングすることができるため、粗視化分子モデル6の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比を精度よく計算することができる。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、相互作用が定義された粗視化分子モデル6を対象に、構造緩和が計算される(工程S3)。工程S3では、先ず、図13に示されるように、相互作用が定義された複数の粗視化分子モデル6を空間16に配置した高分子材料モデル20が設定される。粗視化分子モデル6の本数については、例えば、上記範囲内に設定されるのが望ましい。
次に、本実施形態の工程S3では、高分子材料モデル18において、隣接する粗視化分子モデル6、6の粒子7、7間に、相互作用ポテンシャルP2がそれぞれ定義される。相互作用ポテンシャルP2については、上述のとおりである。そして、工程S3では、相互作用が定義された粗視化分子モデル6を対象に、分子動力学に基づく構造緩和が計算される。
このように、本実施形態のシミュレーション方法は、粗視化分子モデル6の隣り合う粒子7、7間に定義された相互作用に基づいて、粗視化分子モデル6の実効的な密度l/pを、高分子鎖4(図2に示す)の実効的な密度l/pに近づけることができる。これにより、構造緩和計算後の高分子材料モデル20の座標から、工程S24で求められた粗視化分子モデル6の粒子数と高分子鎖4のモノマー数との比に基づいて、粗視化分子モデル6の粒子7を、高分子鎖4のモノマーに置き換えて得られる全原子モデル11が配置された高分子材料モデル18の密度を、追加の構造緩和計算を行わなくても、実際の高分子鎖4の密度に近似させることができる。また、追加の構造緩和計算が不要になるため、全原子モデル11の慣性半径も、実際の高分子鎖4の慣性半径に近似させることができる。すなわち、粗視化分子モデル6が配置された高分子材料モデル20を用いて、実際の高分子鎖4に近似する構造緩和が可能となるため、構造緩和計算後の高分子材料モデル18の密度を、実際の高分子鎖4の密度に近似させることができる。本実施形態のシミュレーション方法では、計算精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態の粗視化分子モデル6は、工程S24で求められた粗視化分子モデル6の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比(即ち、1個の粒子7あたりのモノマー数)に基づいて、高分子鎖4のモノマーを1個の粒子7に置換されているため、粗視化分子モデル6の長さの単位を、高分子鎖4の長さの単位に精度よく換算することができる。従って、本実施形態のシミュレーション方法は、計算精度を向上させることができる。
相互作用が定義された粗視化分子モデル6は、例えば、特許文献(特許第6050903号公報)の時間換算工程に用いられることにより、構造緩和計算後の高分子材料モデル20から、工程S24で求められた粗視化分子モデル6の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比に基づいて、粗視化分子モデル6の粒子を高分子鎖4のモノマーに置き換えて高分子材料モデル18を作成することで、時間単位の換算に必要な長鎖長の全原子モデルの構造緩和した座標を、高い精度で作成できるため、粗視化分子モデル6の時間単位を、高分子鎖の時間単位により精度よく換算するのに役立つ。
次に、本実施形態のシミュレーション方法では、図5に示されるように、コンピュータ1が、高分子材料モデル(図示省略)を用いたシミュレーション結果が良好である(即ち、所望の性能を有する)か否かを判断する(工程S4)。工程S4では、例えば、工程S3の構造緩和後の高分子材料モデル20を用いた変形計算後に、粗視化分子モデル6(図3に示す)の長さの単位を、高分子鎖4(図2に示す)の長さの単位に精度よく換算した結果に基づいて、高分子鎖4の物性等が評価される。
工程S4において、シミュレーション結果が良好であると判断された場合(工程S4で、「Y」)、シミュレーションされた高分子材料モデル(図示省略)に基づいて、高分子材料が製造される(工程S5)。他方、シミュレーション結果が良好でないと判断された場合(工程S4で、「N」)、高分子鎖4(図2に示す)の構造や条件等を変更して(工程S6)、工程S1〜工程S4が再度実施される。これにより、本実施形態のシミュレーション方法では、実際に高分子材料を試作しなくても、所望の性能を有する高分子材料を作成することができる。
本実施形態の相互作用定義工程S2では、粗視化分子モデル6の相互作用10を定義するとともに、粗視化分子モデル6(図3に示す)の粒子数と、高分子鎖4(図2に示す)のモノマー数との比が計算されたが、このような態様に限定されない。例えば、相互作用定義工程S2では、粗視化分子モデル6の相互作用10のみが定義されるものでもよい。このようなシミュレーション方法では、粗視化分子モデル6の粒子数と、高分子鎖4のモノマー数との比に基づいて、高分子鎖4のモノマーを1個の粒子7に置換した粗視化分子モデル6が用いられなくても、相互作用が定義された粗視化分子モデル6の構造緩和を計算する工程S3において、実際の高分子鎖4に近似する構造緩和が可能となる。従って、このようなシミュレーション方法では、計算精度を向上させつつ、計算時間を短縮しうる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
図5に示した処理手順に従って、高分子鎖(cis-1.4ポリブタジエン)をモデル化した粗視化分子モデルがコンピュータに入力され、分子動力学に基づく構造緩和の計算時において、粗視化分子モデルの実効的な密度が、高分子鎖の実効的な密度に近づくように、粗視化分子モデルの隣り合う粒子間に相互作用が定義された(実施例)。
実施例の相互作用を定義する工程では、図7に示した処理手順に基づいて、相互作用パラメータが異なる複数の粗視化分子モデルを定義して、高分子鎖の実効的な密度に近似する実効的な密度を有する粗視化分子モデルの相互作用が決定された。
実施例の相互作用を定義する工程において、全原子モデルの実効的な密度l/pを取得する第1計算工程では、図9に示した処理手順に基づいて、モノマー数(分子量)が異なる複数の全原子モデル(本実施形態では、第1全原子モデル〜第3全原子モデル)が設定され、全原子モデルの実効的な密度l/pが取得された。図11は、各全原子モデルの実効的な密度l/pと、モノマー数との関係を示すグラフである。図16は、全原子モデルのKuhnセグメント数(NKuhn/NFA)とモノマー数との関係を示すグラフである。なお、分子動力学計算において、空間の初期密度が0.001g/cm3に設定され、温度が360Kに設定され、圧力が1atmに設定された。また、各全原子モデルのモノマー数、及び、空間に配置された全原子モデルの本数等については、次のとおりである。
第1全原子モデル:
モノマー数:20、空間内の本数:50本
第2全原子モデル:
モノマー数:30、空間内の本数:75本
第3全原子モデル:
モノマー数:40、空間内の本数:75本
実施例の相互作用を定義する工程において、粗視化分子モデルの実効的な密度l/pを取得する第2計算工程では、図12に示した処理手順に基づいて、粒子数(鎖長)及び相互作用(相互作用パラメータK)が異なる複数の粗視化分子モデル(本実施形態では、第1粗視化モデル〜第6粗視化モデル)が設定され、全原子モデルの実効的な密度l/pが取得された。図14は、各粗視化分子モデルの実効的な密度l/p、屈曲ポテンシャルの相互作用パラメータK、及び、粒子数Nの関係を示すグラフである。各粗視化モデルの粒子数(分子量)、相互作用(相互作用パラメータK)、及び、空間に配置された粗視化モデルの本数等については、次のとおりである。
第1粗視化モデル:
粒子数:50、相互作用パラメータK:0.8、空間内の本数:200本
第2粗視化モデル:
粒子数:50、相互作用パラメータK:1.2、空間内の本数:200本
第3粗視化モデル:
粒子数:50、相互作用パラメータK:1.6、空間内の本数:200本
第4粗視化モデル:
粒子数:100、相互作用パラメータK:0.8、空間内の本数:100本
第5粗視化モデル:
粒子数:100、相互作用パラメータK:1.2、空間内の本数:100本
第6粗視化モデル:
粒子数:200、相互作用パラメータK:1.6、空間内の本数:100本
実施例の相互作用を定義する工程では、相互作用(相互作用パラメータK)毎に取得された粗視化分子モデルの実効的な密度l/p(図14に示した密度l/p)のうち、全原子モデルの実効的な密度l/pに近似する密度l/p(密度l/p)を有する粗視化分子モデルの相互作用(相互作用パラメータK)が決定された。そして、決定された相互作用パラメータKに基づいて、図3に示した粗視化分子モデルの隣り合う粒子間に相互作用が定義され、空間内に100本配置された高分子材料モデルが定義された。そして、高分子材料モデルに配置された粗視化分子モデルを対象に構造緩和が計算され、構造緩和計算後の高分子材料モデルの密度が計算された。
比較のために、高分子鎖(cis-1.4ポリブタジエン)をモデル化した粗視化分子モデルがコンピュータに入力された(比較例)。比較例の粗視化分子モデルには、実施例のような屈曲性に影響を与える相互作用が定義されていない。そして、比較例の粗視化分子モデルが空間内に100本配置された高分子材料モデルが定義された。そして、高分子材料モデルに配置された粗視化分子モデルを対象に構造緩和が計算され、構造緩和計算後の高分子材料モデルの密度が計算された。
比較例の高分子材料モデルの密度は、その座標から、密度が一定になるまで追加の構造緩和計算を行った後の密度に比べて、2倍小さかった。平衡化した後の慣性半径は、平衡時に期待される値より2割小さくなった。一方、実施例の高分子材料モデルの密度は、追加の構造緩和計算後の密度に比べて、その差が1%未満であった。このため、実施例では、追加の構造緩和計算は省略できることが確認できた。また、実施例の計算コストは、比較例の計算コストと略同一であった。従って、実施例は、比較例に比べて、計算コストを維持しつつ、計算精度を向上させることができた。
S1 粗視化分子モデルを入力する工程
S2 相互作用を定義する工程
S3 構造緩和を計算する工程

Claims (5)

  1. コンピュータを用いて、高分子鎖を有する高分子材料を解析するための方法であって、
    前記高分子鎖を、前記高分子鎖を構成する原子の数よりも少ない複数の粒子を用いて表現した粗視化分子モデルを、前記コンピュータに入力する工程と、
    分子動力学に基づく構造緩和の計算時において、前記粗視化分子モデルのKuhn長をPacking長で除した値である実効的な密度が、前記高分子鎖、前記高分子鎖の全原子モデル、又は、前記高分子鎖のユナイテッドアトムモデルのいずれかのKuhn長をPacking長で除した値である実効的な密度に近づくように、前記粗視化分子モデルの隣り合う前記粒子間に相互作用を定義する工程と、
    前記コンピュータが、前記相互作用が定義された前記粗視化分子モデルを対象に、前記構造緩和を計算する工程とを含む、
    高分子材料のシミュレーション方法。
  2. 前記相互作用は、前記粗視化分子モデルの屈曲性に影響を与える請求項1記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  3. 前記相互作用は、下記式(1)で定義される請求項2記載の高分子材料のシミュレーション方法。
    Figure 2019159683
    ここで、
    E:相互作用ポテンシャル関数
    K:相互作用パラメータ
    θ:隣り合う3つの粒子がなす角度
  4. 前記相互作用を定義する工程は、前記相互作用の相互作用パラメータが異なる複数の前記粗視化分子モデルを定義して、前記高分子鎖、前記高分子鎖の全原子モデル、又は、前記高分子鎖のユナイテッドアトムモデルのいずれかの実効的な密度に近似する実効的な密度を有する前記粗視化分子モデルの前記相互作用を決定する工程を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。
  5. 前記コンピュータが、前記相互作用が定義された前記粗視化分子モデルの構造緩和後の第1屈曲度合と、前記全原子モデル又は前記ユナイテッドアトムモデルの構造緩和後の第2屈曲度合とに基づいて、前記粗視化分子モデルの粒子数と、前記高分子鎖のモノマー数との比を計算する工程を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の高分子材料のシミュレーション方法。
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