以下、本開示の一実施形態について説明する。尚、本明細書においては、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す。また、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す。また、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
1.本開示の概要
本実施形態に係る黒色感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性化合物(C)、エポキシ樹脂(D)、及び顔料(E)を含有する。
本実施形態では、23〜27μmの厚み寸法を有する黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜が形成された場合、この乾燥塗膜は、波長700nmの吸光度に対する波長365nmの吸光度の比が1.8未満である。この場合の乾燥塗膜は、波長365nmの光を相対的に吸収しにくいため、黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を露光する際に、波長365nmの光を、表層部から深部まで到達させやすい。黒色感光性樹脂組成物は波長365nm付近の光によって硬化しやすいことから、黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を表層から深部まで十分に硬化させることができる。また乾燥塗膜は、波長700nmの光を相対的に吸収しやすいため、黒色感光性樹脂組成物の硬化皮膜が十分な黒色度を有することができる。さらに本実施形態では、銅板上で黒色感光性樹脂組成物を光硬化させてから熱硬化させることで23〜27μmの厚み寸法を有する硬化皮膜が形成された場合、この硬化皮膜は、L*値が32未満であり、a*値が−6〜+6の範囲内であり、b*値が−6〜+6の範囲内である。銅板上に硬化皮膜が設けられた場合のL*値、a*値、b*値、すなわち銅板の色味を加味した硬化皮膜のL*値、a*値、b*値が、これらの条件を満たすことにより、硬化皮膜が十分な黒色度を有することができ、硬化皮膜による導体配線の隠蔽性を向上させることができる。
2.詳細
2−1.黒色感光性樹脂組成物
以下、本実施形態の黒色感光性樹脂組成物を、詳しく説明する。上述の通り、黒色感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性化合物(C)、エポキシ樹脂(D)、及び顔料(E)を含有する。黒色感光性樹脂組成物は、これらの成分以外の成分を含有することができ、例えば、界面活性剤(F)、メラミン(G)、無機充填剤(H)、添加剤(I)等を含有してもよい。
(1)カルボキシル基含有樹脂(A)
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ポリオール化合物と多価カルボン酸類との反応物を
含有することが好ましい。
ポリオール化合物としては、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、例えばエポキシ樹脂にカルボン酸を付加させて生じる水酸基を2つ以上有する化合物を含む。
多価カルボン酸類としては、多塩基酸、及び多塩基酸無水物等が挙げられ、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸の多価カルボン酸と、これらの多価カルボン酸の無水物とからなる群から選択される一種以上の化合物が挙げられる。本実施形態では、多価カルボン酸類が酸二無水物を含むことが好ましい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A)が、ポリオール化合物と酸二無水物との反応物を含有することが好ましい。
ポリオール化合物と多価カルボン酸類との反応物の重合平均分子量は、700〜40000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が700以上であると、ドライフィルムのタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。また、重量平均分子量が40000以下であると、黒色感光性樹脂組成物から形成した塗膜のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。なお、重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる次の条件での分子量の測定結果から算出される。
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF−800P、KF−005、KF−003、KF−001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
ポリオール化合物と多価カルボン酸類との反応物の酸価は50〜200mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。この場合、ドライフィルムの現像性が特に向上する。酸価が60〜140mgKOH/gの範囲内であればより好ましく、80〜135mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましく、酸価が90〜130mgKOH/gの範囲内であれば特に好ましい。
ポリオール化合物と多価カルボン酸との反応物は、例えばビスフェノールフルオレン骨格を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含むことが好ましい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有することが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成された塗膜の硬化物に高い耐熱性、及び耐メッキ性を付与することができる。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えば下記式(1)で示され、式(1)中、R1〜R8は各々独立に水素、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンであるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)と、不飽和基含有カルボン酸(a2)との反応物である中間体と、酸無水物との反応物を含有することも好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成するためには、まず式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基(式(2)参照)の少なくとも一部と、不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させることで、中間体を合成する。中間体は、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた下記式(3)に示す構造を有する。すなわち、中間体は、式(3)に示す構造中に、エポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応により生じた二級の水酸基を有する。式(3)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基である。
次に、中間体中の二級の水酸基と酸無水物とを反応させることによって、カルボキシル基含有樹脂(A1)を合成できる。酸無水物は、酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)のうち少なくとも一方を含有することができる。本実施形態では、酸無水物が酸二無水物(a3)を含有することが特に好ましい。酸無水物が、酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)を含有する場合には、中間体中の二級の水酸基のうちの一部と酸二無水物(a3)とが反応し、中間体中の二級の水酸基のうちの別の一部と酸一無水物(a4)とが反応する。
このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有し、酸無水物が酸一無水物(a4)を含有する場合は下記式(4)に示す構造を有し、酸無水物が酸二無水物(a3)を含有する場合は、下記式(5)に示す構造を有する。本実施形態では、カルボキシル基含有樹脂(A1)が、下記式(5)に示す構造を有することが特に好ましい。
式(4)に示す構造は、中間体の式(3)で示す構造中の二級の水酸基と、酸一無水物(a4)における酸無水物基とが反応することで生じる。式(4)において、Aは不飽和
基含有カルボン酸残基であり、Bは酸一無水物残基である。
式(5)に示す構造は、酸二無水物(a3)中の二つの酸無水物基と、中間体における二つの二級の水酸基とが、それぞれ反応することで生じる。すなわち、式(5)に示す構造は、二つの二級の水酸基同士を酸二無水物(a3)が架橋することで生成する。なお、中間体の一つの分子中に存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合と、中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋される場合とが、ありうる。中間体の二つの分子中にそれぞれ存在する二つの二級の水酸基同士が架橋されると、分子量の増大が得られる。式(5)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。
カルボキシル基含有樹脂(A1)が、更に下記式(6)で示す構造を有することもありうる。式(6)で示す構造は、酸二無水物(a3)中の二つの酸無水物基のうち、一つのみが、中間体における二級の水酸基と反応することで生じる。式(6)において、Aは不飽和基含有カルボン酸残基であり、Dは酸二無水物残基である。
中間体の合成時にエポキシ化合物(a1)中のエポキシ基の一部が未反応のまま残存する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は式(2)に示す構造、すなわち、エポキシ基を有することがありうる。また、中間体における式(3)に示す構造の一部が未反応のまま残存する場合に、カルボキシル基含有樹脂(A1)は式(3)に示す構造を有することもありうる。
ただし、本実施形態では、カルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件を最適化することで、カルボキシル基含有樹脂(A1)中の式(2)に示す構造、及び式(6)に示す構造の含有割合を低減し、或いは殆どなくすことが可能である。
以上により、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有し、酸無水物が酸二無水物(a3)を含有する場合は、式(4)に示す構造も有し、酸無水物が酸一無水物(a4)を含有する場合は、式(5)に示す構造も有する。さらに、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、式(2)に示す構造と、式(3)に示す構造と、式(6)に示す構造とのうち少なくとも一種を有することがある。
また、エポキシ化合物(a1)自体が二級の水酸基を有する場合、すなわち、例えば後述する式(7)においてn=1以上である場合には、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エポキシ化合物(a1)中の二級の水酸基と酸無水物とが反応することで生じる構造を有することもある。
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、不飽和基含有カルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基を有するため、後述する光重合開始剤(B)が併用されると光反応性を有する。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)は黒色感光性樹脂組成物から形成される塗膜に感光性、具体的には紫外線硬化性、を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物に由来するカルボキシル基を有することで、黒色感光性樹脂組成物から形成される塗膜に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。さらに、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物が酸二無水物(a3)を含有する場合、酸二無水物(a3)によって架橋されていることで分子量が調整されている。このため、分子量と酸価とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。すなわち、酸無水物が酸二無水物(a3)及び酸一無水物(a4)を含む場合は、酸無水物の量、並びに酸二無水物(a3)に対する酸一無水物(a4)の量を制御することで、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量及び酸価を容易に調整できる。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の原料、並びにカルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(7)に示す構造を有する。式(7)中のnは、例えば0〜20の範囲内の数である。カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0〜1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0〜1の範囲内であれば、特に、酸無水物が酸二無水物(a3)を含有する場合は、酸二無水物(a3)の付加による過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。
不飽和基含有カルボン酸(a2)は、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、不飽和基含有カルボン酸(a2)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。好ましくは、不飽和基含有カルボン酸(a2)がアクリル酸を含有する。
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)の溶剤溶液に不飽和基含有カルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、中間体を得ることができる。溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は、例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は、例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
触媒が特に、トリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、或いは97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。このため、式(3)に示す構造を有する中間体が高い収率で得られる。また、ドライフィルムの硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁信頼性が更に向上する。
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対する不飽和基含有カルボン酸(a2)の量は0.8〜1.2モルの範囲内であることが好ましい。この場合、ドライフィルムの優れた感光性と保存安定性が得られる。
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、不飽和基の付加重合反応を抑制して、中間体の分子量の増大及び中間体の溶液のゲル化を抑制できる。また、最終生成物であるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な着色を抑制できる。
このようにして得られる中間体は、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)におけるカルボキシル基とが反応することで生成した水酸基を備える。
酸二無水物(a3)は酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a3)は、テトラカルボン酸の無水物を含有することが好ましい。酸二無水物は、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト〔1,2−c〕フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に、酸二無水物(a3)が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。すなわち、式(5)及び式(6)におけるDが3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物残基を含むことが好ましい。この場合、ドライフィルムの良好な現像性を確保しながら、ドライフィルムのタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。酸二無水物(a3)全体に対して、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
酸一無水物(a4)は、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a4)は、ジカルボン酸の無水物を含有することが好ましい。酸一無水物(a4)は、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、トリメリット酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物及びイタコン酸無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。特に、酸一無水物(a4)が1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸を含有することが好ましい。すなわち、式(4)におけるBが1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸残基を含むことが好ましい。この場合、ドライフィルムの良好な現像性を確保しながら、ドライフィルムのタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。酸一無水物(a4)全体に対して、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸は20〜100モル%の範囲内であることが好ましく、40〜100モル%の範囲内であることがより好ましいが、これに限られない。
中間体と酸無水物とを反応させるに当たっては、公知の方法が採用され得る。例えば中間体の溶剤溶液に酸無水物を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)を得ることができる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、中間体と、酸無水物とを反応させることが好ましい。この場合、中間体における二級の水酸基と酸無水物との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、或いはほぼ100%の反応率(転化率)を達成することが可能である。このため、式(4)に示す構造及び式(5)に示す構造を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)が高い収率で得られる。また、黒色感光性樹脂組成物の硬化物を含む層におけるイオンマイグレーションの発生が抑制され、硬化物を含む層の絶縁信頼性が更に向上する。
中間体と、酸無水物とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量増大が抑制されることで、ドライフィルムのアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
中間体と、酸無水物とを反応させる際、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a3)の量は、0.02〜0.4モルの範囲内であることが好ましく、0.05〜0.24モルの範囲内であることがより好ましい。また、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a4)の量は0.1〜0.8モルの範囲内であることが好ましく、0.3〜0.7モルの範囲内であることがより好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。また、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量増大が抑制されることで、ドライフィルムのアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は700〜10000の範囲内であることが好ましい。重量平均分子量が700以上であると、ドライフィルムのタック性を更に抑制すると共に硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。また、重量平均分子量が10000以下であると、ドライフィルムのアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。カルボキシル基含有樹脂(A1)の重量平均分子量は、900〜8000の範囲内であることが更に好ましく、1000〜5000の範囲内であることが特に好ましい。
また、カルボキシル基含有樹脂(A1)の固形分酸価は60〜140mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。この場合、ドライフィルムの現像性が特に向上する。酸価が80〜135mgKOH/gの範囲内であればより好ましく、酸価が90〜130mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂(J)ともいう)を含有してもよい。カルボキシル基含有樹脂(J)は、ポリオール化合物と多価カルボン酸類との反応物に含まれることが好ましいが、ポリオール化合物と多価カルボン酸類との反応物に含まれない成分を含有してもよい。
カルボキシル基含有樹脂(J)は、例えばカルボキシル基を有し光重合性を有さない化合物(以下、(J1)成分という)を含有できる。(J1)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート等の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等と二塩基酸無水物との反応物も含有できる。エチレン性不飽和単量体は、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。
カルボキシル基含有樹脂(J)は、カルボキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、(J2)成分という)を含有してもよい。(J2)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(j1)とエチレン性不飽和化合物(j2)との反応物である中間体と、多価カルボン酸及びその無水物の群から選択される少なくとも一種の化合物(j3)との反応物である樹脂(第一の樹脂(j)という)を含有する。この中間体はポリオール化合物であり、化合物(j3)は多価カルボン酸類であるため、第一の樹脂(j)はポリオール化合物と多価カルボン酸類との反応物に含まれる。第一の樹脂(j)は、例えばエポキシ化合物(j1)中のエポキシ基と、エチレン性不飽和化合物(j2)中のカルボキシル基とを反応させて得られた中間体に化合物(j3)を付加させて得られる。エポキシ化合物(j1)は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の適宜のエポキシ樹脂を含有できる。エポキシ化合物(j1)は、エチレン性不飽和化合物(k)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(k)は、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する化合物(k1)を含有し、或いは更に2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート等のエポキシ基を有さない化合物(k2)を含有する。エチレン性不飽和化合物(j2)は、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。化合物(j3)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸と、これらの多価カルボン酸の無水物とからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。
(J2)成分は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂(第二の樹脂(l)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。第二の樹脂(l)は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エチレン性不飽和単量体は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
カルボキシル基含有樹脂(A)は、例えばカルボキシル基含有樹脂(A1)のみ、又はカルボキシル基含有樹脂(A1)とカルボキシル基含有樹脂(J)とを含有する。カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、100質量%含有することが更に好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性及び絶縁信頼性を特に向上させることができる。また、ドライフィルムのタック性を十分に抑制することができる。さらに、ドライフィルムのアルカリ性水溶液による現像性を確保することができる。なお、カルボキシル基含有樹脂(A)はカルボキシル基含有樹脂(J)のみを含有しても良い。
(2)光重合開始剤(B)
本実施形態では、光重合開始剤(B)が、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、及び2−(ジメチルアミノ)−2−[(4-メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンからなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−ホスフィネート、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、及び(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドからなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
オキシムエステル系光重合開始剤は、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、及びエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
本実施形態では、光重合開始剤(B)が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することがより好ましい。光重合開始剤(B)は、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドを含有することが特に好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。
本実施形態では、光重合開始剤(B)が、水素引抜型光重合開始剤を含有することも好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物の硬化性を向上させることができる。水素引抜型光重合開始剤は、例えば水素引抜型のラジカル重合開始剤であり、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−(メチルフェニルチオ)フェニルフェニルメタン、メチル−2−ベンゾフェノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルスルフォニル)プロパン−1−オン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及び4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、及びチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、3−[3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イル−オキシ]−2−ヒドロキシプロピル−N,N,N―トリメチルアンモニウムクロライド及びフルオロチオキサントン等のチオキサントン系化合物のうち一種以上の成分を含有することができる。特に水素引抜型光重合開始剤は、チオキサントン系化合物を含有することが好ましく、2,4−ジエチルチオキサントンを含有することが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物の硬化性を特に向上させることができる。
光重合開始剤(B)は、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分と、水素引抜型光重合開始剤とのうち両方を含むことも好ましい。
光重合開始剤(B)は、ヒドロキシケトン系光重合開始剤を含有してもよい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成される塗膜に紫外線を照射して硬化させる場合、塗膜の表面を十分に硬化させることが可能となる。ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが挙げられる。
光重合開始剤(B)は、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分と、ヒドロキシケトン系光重合開始剤とのうち両方を含むことも好ましい。
(3)光重合性化合物(C)
光重合性化合物(C)は、黒色感光性樹脂組成物に光硬化性を付与することができる。光重合性化合物(C)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。
光重合性化合物(C)は、二官能〜六官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を2つ〜6つ有する化合物を含有することが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、感光性樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
光重合性化合物(C)が、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド)との付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。
光重合性化合物(C)が、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
(4)エポキシ樹脂(D)
エポキシ樹脂(D)は、黒色感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。エポキシ樹脂(D)は、結晶性エポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物の現像性を向上させることができる。エポキシ樹脂(D)は、非晶性エポキシ樹脂を更に含有してもよい。ここで「結晶性エポキシ樹脂」は融点を有するエポキシ樹脂であり、「非晶性エポキシ樹脂」は融点を有さないエポキシ樹脂である。
結晶性エポキシ樹脂は、例えば、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名YX−4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR−1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として式(7)に示す構造を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。結晶性エポキシ樹脂は、1分子中に2個のエポキシ基を有することが好ましい。
結晶性エポキシ樹脂は150〜300g/eqのエポキシ当量を有することが好ましい。このエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する結晶性エポキシ樹脂のグラム重量である。結晶性エポキシ樹脂は融点を有する。結晶性エポキシ樹脂の融点としては、例えば70〜180℃が挙げられる。結晶性エポキシ樹脂の融点は100℃以上であることが好ましい。この場合、硬化皮膜による導体配線の隠蔽性を向上させることができる。結晶性エポキシ樹脂の融点は、130℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
非晶性エポキシ樹脂は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−156)、並びにゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX−136)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
エポキシ樹脂(D)がリン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂は結晶性エポキシ樹脂に含有されてもよいし、或いは非晶性エポキシ樹脂に含有されてもよい。リン含有エポキシ樹脂としては、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX−305等が挙げられる。
(5)顔料(E)
本実施形態の黒色感光性樹脂組成物は、顔料(E)を含有する。顔料(E)は、黒色感光性樹脂組成物に色を付与することができる。
本実施形態の顔料(E)は、黒色着色剤(E1)を含有することが好ましい。黒色着色剤(E1)は、黒色感光性樹脂組成物に黒色を付与することができる。また黒色感光性樹脂組成物の硬化物の開口性を向上させることができる。黒色着色剤(E1)の例には、カーボンブラック、チタンブラック、ペリレン系黒色顔料、ラクタム系黒色顔料、銅、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛、カルシウム、銀等の金属酸化物、複合酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、金属炭酸塩等が含まれる。黒色着色剤(E1)は、これらの成分のうち、一種以上を含有することができる。
黒色着色剤(E1)は特にチタンブラックを含有することが好ましい。すなわち、顔料(E)がチタンブラックを含有することが好ましい。カーボンブラック等の黒色顔料は、波長が365nm付近の光を吸収しやすく、すなわちカーボンブラック等の黒色顔料は紫外領域の光を吸収しやすい。これに対してチタンブラックは、波長が700nm付近の光を吸収しやすく、すなわちチタンブラックは紫外領域の光を吸収しにくい。黒色着色剤(E1)がカーボンブラック等の黒色顔料を含む場合、黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜に光を照射すると、乾燥塗膜の表層付近で紫外領域の光が吸収されて、塗膜の深部まで紫外領域の光が到達しにくい。これに対して、黒色着色剤(E1)がチタンンブラックを含有することにより、黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜に光を照射した際に、乾燥塗膜の表層付近で波長365nm付近の光が吸収されることを抑制することができ、乾燥塗膜の深部まで365nmの光を到達させることができる。黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜の深部に紫外領域の光を到達させることにより、塗膜を表層から深部まで硬化させやすい。また黒色感光性樹脂組成物がペリレン系黒色顔料を含む場合、乾燥塗膜の表層付近で波長365nm付近の光が吸収されることを抑制することができ、乾燥塗膜の深部まで365nmの光を到達させることができる。しかし、ペリレン系黒色顔料自身は黒色度が低いため、黒色感光性樹脂組成物の硬化物の黒色度を高くするには、ペリレン系黒色顔料と他の色の顔料とを混合する必要がある。その場合は、結果として、深部硬化性が低くなる傾向となる。これに対して、黒色着色剤(E1)がチタンブラックを含有することにより、黒色感光性樹脂組成物の硬化物に優れた耐熱変色性を付与することができる。また黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜に十分な黒色度を付与することができる。黒色着色剤(E1)に含まれるチタンブラックの平均粒径は、500nm未満であることが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物におけるチタンブラックの分散性を向上させることができ、黒色感光性樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上する。なお、チタンブラック等の顔料(E)の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により、D50として測定される。
(6)その他の成分
黒色感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性化合物(C)、エポキシ樹脂(D)、及び顔料(E)以外の成分を含有することができる。
黒色感光性樹脂組成物は、例えば、界面活性剤(F)を含有することも好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物からドライフィルムを形成する際の気泡等の発生が抑制され、均一なドライフィルムを形成しやすくなる。
界面活性剤(F)は、特にフッ素原子を含むことが好ましい。この場合、樹脂組成物の表面張力を大幅に低下させることができるため、黒色感光性樹脂組成物に含まれる成分の分散性を向上させられ、より均一性の高いドライフィルムを形成しやすい。界面活性剤(F)としては、例えばDIC株式会社製の品番メガファックF−470、メガファックF−477、メガファックF−553、メガファックF−555、メガファックF−556、メガファックF−557、メガファックF−559、メガファックF−562、メガファックF−565、メガファックF−567、メガファックF−568、メガファックF−571、メガファックR−40、及びメガファックR−94;スリーエムジャパン株式会社製のフロラードFC4430、及びフロラードFC−4432;AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンS−241、サーフロンS−242、サーフロンS−243、サーフロンS−420、サーフロンS−611、サーフロンS−651、及びサーフロンS−386;並びにOMNOVA社製のPF636、PF6320、PF656、及びPF6520等が挙げられる。
黒色感光性樹脂組成物は、例えば、メラミン(G)を含有することも好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成されたドライフィルムに、良好な密着性を付与することができ、ドライフィルムの硬化物と銅などの金属との間の密着性が高くなる。このため、プリント配線板用の絶縁材料として特に適する。また、ドライフィルムの硬化物の耐メッキ性、すなわち無電解ニッケル/金メッキ処理時の白化耐性が向上する。
黒色感光性樹脂組成物は、例えば、無機充填材(H)を含有してもよい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成されたドライフィルムから形成される皮膜の硬化収縮を低減させられる。無機充填材(H)は、例えば硫酸バリウム、結晶性シリカ、微粉シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及び酸化チタンからなる群から選択される一種以上の材料を含有できる。ドライフィルム中の無機充填材(H)の割合は適宜設定されるが、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して0〜300質量%の範囲内であることが好ましい。
黒色感光性樹脂組成物は、例えば、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。
黒色感光性樹脂組成物は、例えば、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
黒色感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えばイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有できる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
黒色感光性樹脂組成物は、メラミン(G)以外の密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体が、挙げられる。
黒色感光性樹脂組成物は、例えば、硬化促進剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の添加剤(I)を含有してもよい。
2−2.黒色感光性樹脂組成物の製造方法
黒色感光性樹脂組成物は、例えば、上述のカルボキシル基含有樹脂(A)、光重合開始剤(B)、光重合性化合物(C)、エポキシ樹脂(D)、及び顔料(E)と、必要に応じて界面活性剤(F)、メラミン(G)、無機充填剤(H)、添加剤(I)等を配合して、公知の混錬方法で混錬されることで、調製され得る。混錬方法としては、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の方法が採用され得る。黒色感光性樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、黒色感光性樹脂組成物を調製してもよい。
保存安定性等を考慮して、黒色感光性樹脂組成物の成分の一部を混合することで第一剤を調製し、成分の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、黒色感光性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。この場合、例えば、感光性樹脂組成物の成分のうち光重合性化合物(C)及び有機溶剤の一部及びエポキシ樹脂(D)を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、黒色感光性樹脂組成物の成分のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合して混合液を調製し、この混合液を硬化させて硬化物を得ることができる。
このようにして製造された黒色感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)を5質量%以上含むことが好ましく、10質量%以上含むことがより好ましい。また黒色感光性樹脂組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)を85質量%以下含むことが好ましく、75質量%以下含むことがより好ましい。
また黒色感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(B)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1質量%以上含むことが好ましく、1質量%以上含むことが好ましい。黒色感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(B)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して30質量%以下含むことが好ましく、25質量%以下含むことがより好ましい。
また黒色感光性樹脂組成物は、光重合性化合物(C)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して10質量%以上含むことが好ましく、21質量%以上含むことが好ましい。黒色感光性樹脂組成物は、光重合性化合物(C)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して50質量%以下含むことが好ましく、40質量%以下含むことがより好ましい。
また黒色感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(D)の量に関しては、エポキシ樹脂(D)に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0.5〜2.5の範囲内であることが好ましく、0.6〜2.3の範囲内であればより好ましく、0.7〜2.0の範囲内であれば更に好ましい。更に、結晶性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂(D)に対して10〜100質量%の範囲内であることが好ましく、30〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、35〜100質量%の範囲内であることが更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の熱硬化前までの工程においてカルボキシル基含有樹脂(A)とエポキシ樹脂(D)の熱硬化反応性が抑制され、現像性を向上することができる。
また黒色感光性樹脂組成物は、顔料(E)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.2質量%以上含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましく、1質量%以上含むことが更に好ましい。黒色感光性樹脂組成物は、顔料(E)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して15質量%以下含むことが好ましく、10質量%以下含むことがより好ましく、8質量%以下含むことがより好ましい。
また黒色感光性樹脂組成物が界面活性剤(F)を含有する場合、黒色感光性樹脂組成物は、界面活性剤(F)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、0.005質量%以上含むことが好ましく、0.01質量%以上含むことがより好ましく、0.02質量%以上含むことが更に好ましい。黒色感光性樹脂組成物は、界面活性剤(F)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、5質量%以下含むことが好ましく、1質量%以下含むことがより好ましく、0.5質量%以下含むことがより好ましい。
また黒色感光性樹脂組成物がメラミン(G)を含有する場合、黒色感光性樹脂組成物は、メラミン(G)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、0.1質量%以上含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましい。黒色感光性樹脂組成物は、メラミン(G)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、10質量%以下含むことが好ましく、5質量%以下含むことがより好ましい。
また黒色感光性樹脂組成物が無機充填剤(H)を含有する場合、黒色感光性樹脂組成物は、無機充填剤(H)をカルボキシル基含有樹脂(A)に対して、300質量%以下含むことが好ましい。
2−3.黒色感光性樹脂組成物の特性
上述の黒色感光性樹脂組成物の製造方法によって製造された本実施形態の黒色感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に黒色感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の電気絶縁性の層を形成するために適している。
また上述の黒色感光性樹脂組成物の製造方法によって製造された黒色感光性樹脂組成物は、厚み25μmの皮膜に成形された場合に、皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることが好ましい。この場合、十分に厚みの大きい電気絶縁性の層を黒色感光性樹脂組成物からフォトリソグラフィー法で作製することが可能であるため、黒色感光性樹脂組成物を、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。勿論、黒色感光性樹脂組成物から厚み25μmより薄い電気絶縁性の層を作製することも可能である。
皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることは、次の方法で確認できる。適当な基材上に黒色感光性樹脂組成物を塗布することで湿潤塗膜を形成し、この湿潤塗膜を80℃で40分加熱することで、厚み25μmの皮膜を形成する。この皮膜に紫外線を透過する露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して皮膜に500mJ/cm2の条件で紫外線を照射する。露光後の皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射する。この処理後の皮膜を観察した結果、皮膜における非露光部に対応する部分が除去されて残渣が認められない場合に、現像可能であると判断できる。
本実施形態では、黒色感光性樹脂組成物に含まれる各成分の種類、配合割合等を調整することにより、黒色感光性樹脂組成物から23〜27μmの厚み寸法を有する乾燥塗膜が形成された場合に、この乾燥塗膜は、波長700nmの吸光度に対する波長365nmの吸光度の比を1.8未満とすることができる。これにより、黒色感光性樹脂組成物から形成される乾燥塗膜が、波長365nmの光を吸収しにくくすることができ、乾燥塗膜の表層部から深部まで波長365nmの光が到達しやすくなる。これにより、黒色感光性樹脂組成物から形成される乾燥塗膜を、表層から深部まで十分に硬化させることができる。また黒色感光性樹脂組成物から形成される乾燥塗膜が、波長700mの光を吸収しやすくすることができる。これにより、乾燥塗膜の黒色度を向上させることができる。このため、黒色感光性樹脂組成物の硬化皮膜にも優れた黒色度を付与することでき、黒色感光性樹脂組成物の硬化皮膜による導体配線の隠蔽性を向上させることができる。また波長700nmの吸光度に対する波長365nmの吸光度の比は、1.0以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物に特に優れた深部硬化性を付与することができるとともに、黒色感光性樹脂組成物の硬化物に特に優れた黒色度を付与することできる。なお、黒色感光性樹脂組成物の乾燥塗膜の吸光度は、透明の樹脂フィルム上に乾燥塗膜を形成し、この乾燥塗膜の吸光度の初期値を測定することによって得られる。吸光度の測定機としては、例えば、株式会社島津製作所製の商品名UV−3100PCを用いることができる。
黒色感光性樹脂組成物に含まれる各成分の種類、配合割合等を調整することにより、黒色感光性樹脂組成物から23〜27μmの厚み寸法を有する乾燥塗膜が形成された場合に、この乾燥塗膜は、波長500〜800nmの吸光度が1以上であることが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成される乾燥塗膜に、特に優れた黒色度を付与することができる。このため、黒色感光性樹脂組成物の硬化皮膜にも特に優れた黒色度を付与することでき、黒色感光性樹脂組成物の硬化皮膜による導体配線の隠蔽性を特に向上させることができる。
また黒色感光性樹脂組成物に含まれる各成分の種類、配合割合等を調整することにより、黒色感光性樹脂組成物から23〜27μmの厚み寸法を有する乾燥塗膜が形成された場合に、この乾燥塗膜は、波長365nmの吸光度が3未満であることが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成される乾燥塗膜が、波長365nmの光を特に吸収しにくくすることができ、波長365nmの光が、乾燥塗膜の表層部から深部まで特に到達しやすくすることができる。これにより、黒色感光性樹脂組成物から形成される乾燥塗膜を表層から深部まで特に硬化させやすい。
本実施形態の黒色感光性樹脂組成物は、銅板上で光硬化させてから熱硬化させることで膜厚23〜27μmの厚み寸法を有する皮膜が形成された場合、この皮膜は、L*値が32未満であり、a*値が−6〜+6の範囲内であり、b*値が−6〜+6の範囲内である。尚、23〜27μmの範囲内の一つの厚みの皮膜のL*値、a*値、及びb*値が上記の条件を備えれば、その他の厚みを有する皮膜は上記の条件を備えなくてもよい。例えば、25μmの厚みの皮膜が上記の条件を備えていれば、23μmの皮膜が上記の条件を備えていなくてもよい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成される硬化皮膜による導体配線の隠蔽性が十分に確保される。尚、皮膜のL*値、a*値、及びb*値は、例えば、分光測色計によって測定することができる。この分光測色計として、例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製の型番CM−600dが挙げられる。
黒色感光性樹脂組成物に含まれる各成分の種類、配合割合等を調整することにより、銅板上で黒色感光性樹脂組成物を光硬化させてから熱硬化させることで23〜27μmの厚み寸法を有する硬化皮膜が形成された場合に、銅板上の硬化皮膜のL*値が28未満であり、a*値が−5〜+5の範囲内であり、b*値が−5〜+5の範囲内であることが好ましい。この場合、黒色感光性樹脂組成物から形成される硬化皮膜の黒色度を特に向上させることができ、硬化皮膜による導体配線の隠蔽性を特に確保しやすい。
2−4.ドライフィルム
本実施形態のドライフィルムを作製する方法の一例を説明する。
ベースフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム上に黒色感光性樹脂組成物を塗布してから、乾燥することで、ベースフィルム上にドライフィルムを形成することができ、ベースフィルム付きドライフィルムが得られる。すなわちドライフィルムは、黒色感光性樹脂組成物の乾燥物を含む。黒色感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。黒色感光性樹脂組成物の乾燥温度は、黒色感光性樹脂組成物が含有する有機溶剤を揮発させるために、例えば40〜150℃の範囲内である。
このドライフィルムに、カバーフィルムである延伸ポリプロピレンフィルムを圧着させることで、ドライフィルム積層体を作製してもよい。このドライフィルム積層体は、例えばロール状に巻いて保管することができる。すなわちドライフィルム積層体は、保管してもエポキシ樹脂等が析出しにくく、かつ、ドライフィルムからカバーフィルムを剥離しやすい。
本実施形態のドライフィルムは、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に、ドライフィルムは、ソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層、層間絶縁層等の、電気絶縁性の層を形成するために適している。
ドライフィルムからなる皮膜の厚みが25μmの場合に、この皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であることが好ましい。この場合、十分に厚みの大きい電気絶縁性の層をフォトリソグラフィー法で作製することが可能であるため、ドライフィルムを、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。勿論、ドライフィルムから厚み25μmより薄い電気絶縁性の層を作製することも可能である。
2−5.プリント配線板
本実施形態のプリント配線板を製造する方法の一例を、図1Aから図1Eを参照しながら説明する。本方法では、層間絶縁層にフォトリソグラフィー法でスルーホールを形成する。
まず、図1Aに示すようにコア材1を用意する。コア材1は、例えば少なくとも一つの絶縁層2と少なくとも一つの導体配線3とを備える。コア材1の一面上に設けられている導体配線3を、以下、第一の導体配線3という。図1Bに示すように、コア材1の第一の導体配線3が設けられている面上に、黒色感光性樹脂組成物から皮膜4を形成する。皮膜4の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。
塗布法では、例えばコア材1上に黒色感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。黒色感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、黒色感光性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、皮膜4を得ることができる。
ドライフィルム法では、上述のベースフィルム付きドライフィルムを用意する。このベースフィルム付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、ドライフィルムとコア材1に圧力をかけ、続いてベースフィルムをドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムをベースフィルム上からコア材1上へ転写する。これにより、コア材1上に、ドライフィルムからなる皮膜4が設けられる。
皮膜4を露光することで図1Cに示すように部分的に光硬化させる。そのために、例えばネガマスクを皮膜4に当てがってから、ネガマスクを介して皮膜4に紫外線を照射する。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部はスルーホール10の位置と合致する位置に設けられる。ネガマスクは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。
なお、露光方法として、ネガマスクを用いる方法以外の方法が採用されてもよい。例え
ば光源から発せられる紫外線を皮膜4上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で皮膜を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。
また、ドライフィルム法では、ベースフィルム付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、支持体を剥離することなく、支持体を透過させて紫外線をドライフィルムからなる皮膜4に照射することで皮膜4を露光し、続いて現像処理前に皮膜4から支持体を剥離してもよい。
続いて、皮膜4に現像処理を施すことで、図1Cに示す皮膜4の露光されていない部分5を除去し、これにより、図1Dに示すようにスルーホール10が形成される位置に穴6を設ける。現像処理では、感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
続いて、皮膜4を加熱することで熱硬化させる。加熱の条件は、例えば加熱温度120〜200℃の範囲内、加熱時間30〜120分間の範囲内である。このようにして皮膜4を熱硬化させると、層間絶縁層7の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜4に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜4の光硬化を更に進行させることができる。
以上により、コア材1上に、黒色感光性樹脂組成物の硬化物からなる層間絶縁層7が設けられる。この層間絶縁層7上に、アディティブ法などの公知の方法で、第二の導体配線8及びホールめっき9を設けることができる。これにより、図1Eに示すように、第一の導体配線3、第二の導体配線8、第一の導体配線3と第二の導体配線8との間に介在する層間絶縁層7、並びに第一の導体配線3と第二の導体配線8とを電気的に接続するスルーホール10を備えるプリント配線板11が得られる。なお、図1Eにおいて、ホールめっき9は穴6の内面を覆う筒状の形状を有するが、穴6の内側全体にホールめっき9が充填されていてもよい。
また、図1Eのようなホールめっき9を設ける前に、穴6の内側面全体と層間絶縁層7の外表面の一部とを粗化することができる。このようにして、層間絶縁層7の外表面の一部と、穴6の内側面とを粗化することでコア材1とホールめっき9との密着性を向上することができる。
層間絶縁層7の外表面の一部と穴6の内側面全体とを粗化するにあたって、酸化剤を用いた一般的なデスミア処理と同じ手順で行うことができる。例えば、層間絶縁層7の外表面に酸化剤を接触させて層間絶縁層7に粗面を付与する。しかし、これに限らず、プラズマ処理、UV処理やオゾン処理等の硬化物に粗面を付与する手法を適宜採用することができる。
前記酸化剤は、デスミア液として入手可能な酸化剤であってもよい。このような酸化剤は、例えば過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムの群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸塩を含有することができる。
ホールめっき9を設けるにあたって、粗化された外表面の一部と、穴6の内側面とに無電解金属メッキ処理を施して初期配線を形成することができる。その後、電解金属メッキ処理で初期配線に電解質メッキ液中の金属を析出させることでホールめっき9を形成することができる。
以上の工程により、図1Eに示すプリント配線板11を得ることができる。さらに、この図1Eに示すプリント配線板11に対して、上述した図1Bの皮膜4の形成から、図1Cの露光、図1Dの現像、熱硬化、図1Eの導体配線及びホールめっきの各工程を繰返し行うことにより、多層プリント配線板12が得られる。
図2は多層プリント配線板12の一例を示す。多層プリント配線板12では、コア材1、第一の導体配線3、層間絶縁層7、第二の導体配線8、第三の導体配線80、及び層間絶縁層70が、この順に積層されている。このため、層間絶縁層70は、第三の導体配線80と第二の導体配線8との間に介在している。また第二の導体配線8と第三の導体配線80とは、スルーホール100によって、電気的に接続されている。層間絶縁層70は、層間絶縁層7と同様に、本実施形態の黒色感光性樹脂組成物から形成することができる。
図2に示す多層プリント配線板12は、第一の導体配線3、第二の導体配線8、及び第三の導体配線80からなる3層の導体配線と、層間絶縁層7及び層間絶縁層70からなる二層の絶縁層とを備えているが、これに限定されない。例えば、多層プリント配線板12が、3層以上の導体配線を備えていてもよく、二層以上の複数の絶縁層を備えていてもよい。この場合、複数の絶縁層のうち、全てが黒色感光性樹脂組成物から形成されていてもよく、少なくとも一つの絶縁層が黒色感光性樹脂組成物から形成されていてもよい。
本実施形態の黒色感光性樹脂組成物から形成されたソルダーレジスト層を備えるプリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
まず、コア材を用意する。コア材は、例えば少なくとも一つの絶縁層と少なくとも一つの導体配線とを備える。コア材の導体配線が設けられている面上に、黒色感光性樹脂組成物から皮膜を形成する。皮膜の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。塗布法とドライフィルム法としては、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。皮膜を露光することで部分的に光硬化させる。露光方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。続いて、皮膜に現像処理を施すことで、皮膜の露光されていない部分を除去し、これにより、コア材上に、皮膜の露光された部分が残存する。続いて、コア材上の皮膜を加熱することで熱硬化させる。現像方法及び加熱方法も、上記の層間絶縁層を形成する場合と同じ方法を採用できる。必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、皮膜に更に紫外線を照射してもよい。この場合、皮膜の光硬化を更に進行させることができる。
以上により、コア材上に、黒色感光性樹脂組成物の硬化物からなるソルダーレレジスト層が設けられる。これにより、絶縁層とその上の導体配線とを備えるコア材、並びにコア材における導体配線が設けられている面を部分的に覆うソルダーレジスト層を備える、プリント配線板が得られる。なお、ソルダーレジスト層には、前記層間絶縁層と同様に粗面が付与されてもよい。それにより、ソルダーレジスト層と、導体配線やはんだ等を構成する金属材料との密着性を向上させることができる。
本実施形態では、黒色感光性樹脂組成物の乾燥物を含有するドライフィルムから、ソルダーレジスト層や層間絶縁層等の電気絶縁性層を特に良好に形成することができる。この電気絶縁性層に粗面を付与することで、電気絶縁性層と前記金属材料との密着性を向上することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(1−1)合成例A−1及び合成例B−1
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、表1中の「第一反応」欄に示す成分を加えて、これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内でエアバブリング下で攪拌しながら、「反応条
件」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に表1の「第二反応」欄に示す成分を投入し、エアバブリング下で攪拌しながら「反応条件(1)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。続いて、合成例B−1を除き、エアバブリング下で攪拌しながら「反応条件(2)」欄に示す反応温度及び反応時間で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂の多分散度(但し、合成例B−1のカルボキシル基含有樹脂を除く)、重量平均分子量、及び酸価は表1中に示す通りである。成分間のモル比も表1に示している。
なお、表1中の(a1)欄に示す成分の詳細は次の通りである。
・エポキシ化合物1:式(7)で示され、式(7)中のR1〜R8がすべて水素であるエポキシ当量250g/eqのビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物。
・エポキシ化合物2:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDC−700−5、エポキシ当量203g/eq)。
[実施例1〜9、比較例1〜8]
後掲の表2、及び3に示す成分の一部を3本ロールで混練してから、後掲の表2に示す全成分をフラスコ内で撹拌混合することで、黒色感光性樹脂組成物を得た。なお、表2に示される成分の詳細は次の通りである。
・光重合性化合物A:トリメチロールプロパントリアクリレート。
・光重合性化合物B:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合体(日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPHA)。
・光重合開始剤A:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASF社製、品番Irgacure TPO)。
・光重合開始剤B:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(BASF社製、品番Irgacure 907)。
・光重合開始剤C:エタノン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−、1−(O−アセチルオキシム)(BASF社製、品番Irgacure OXE 02)。
・光重合開始剤D:2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬株式会社製、品番KAYACURE−DETX−S)。
・エポキシ樹脂A:ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の品名YX−4000、融点105℃、エポキシ当量187g/eq)。
・エポキシ樹脂B:1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ、融点150〜158℃)。
・エポキシ樹脂Cの溶液:長鎖炭素鎖含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製、品番EPICLON EXA−4816、液状樹脂、エポキシ当量410g/eq)を固形分90%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させた溶液(固形分90%換算のエポキシ当量は、455.56g/eq)。
・エポキシ樹脂Dの溶液:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製の品名YDCN−704、軟化点87〜97℃、エポキシ当量208g/eq)を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解させた溶液(固形分70%換算のエポキシ当量は、297.14g/eq)。
・黒色着色剤A:チタンブラック分散液、平均粒子径100〜300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・黒色着色剤B:カーボンブラック分散液、平均粒子径100〜300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・黒色着色剤C:ペリレン系黒色有機顔料分散液、平均粒子径100〜300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・青色着色剤:フタロシアニンブルー分散液、平均粒子径100〜300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・黄色着色剤:ニッケル錯体顔料分散液、平均粒子径100〜300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・赤色着色剤:アントラキノン系赤色顔料分散液、平均粒子径100〜300nm、顔料分20%、固形分25%、分散溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン;感光性樹脂組成物中において平均粒子径8μmで分散。
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製、品番IRGANOX
1010)。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB30。
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製、品番レオロシールMT−10。
・消泡剤:信越化学工業株式会社製、品番KS−66。
・界面活性剤:DIC製、品番メガファックF−477。
・溶剤A:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
・溶剤B:メチルエチルケトン。
[テストピースの作製]
(実施例1〜8、比較例1〜4、及び8)
黒色感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、95℃で25分加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み23〜27μmのドライフィルムを形成した。
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR−4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/
スペース幅が100μm/100μmであるくし型電極を形成し、これによりコア材を得た。
このコア材の導体配線における厚み1μm程度の表層部分を、エッチング剤(メック株式会社製の品番CZ−8101)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このコア材の一面全面にドライフィルムを真空ラミネーターで加熱ラミネートした。加熱ラミネートの条件を、0.5MPa、80℃、1分間に設定した。これにより、コア材上にドライフィルムからなる膜厚23〜27μmの皮膜を形成した。
この皮膜に、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上から、直径50μm、及び80μmの円形形状を含むパターンの非露光部を有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して皮膜に250mJ/cm2の条件で紫外線(メタルハライド光源)を照射した。なお、露光後、現像前に、ドライフィルム(皮膜)からポリエチレンテレフタレート製のフィルムを剥離した。露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して皮膜に穴を形成した。
続いて、皮膜を160℃で60分間加熱した。これにより、コア材上に、黒色感光性樹脂組成物の硬化物(ドライフィルムの硬化物ともいえる)からなる層を形成した。これにより、テストピースを得た。
(実施例9及び比較例5〜7)
厚み17.5μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR−4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が100μm/100μmであるくし型電極を形成し、これによりコア材を得た。
このコア材の導体配線における厚み1μm程度の表層部分を、エッチング剤(メック株式会社製の品番CZ−8101)で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このコア材の表面上に、黒色感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法で塗布することにより、湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で30分間加熱することで予備乾燥し、厚みが23〜27μmである乾燥塗膜を形成した。
この乾燥塗膜に、直径50μm及び80μmの円形形状を含むパターンの非露光部を有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して皮膜に250mJ/cm2の条件で紫外線(メタルハライド光源)を照射した。露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理に当たっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。続いて皮膜に純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して皮膜に穴を形成した。
続いて、皮膜を160℃で60分間加熱した。これにより、コア材上に、黒色感光性樹脂組成物の硬化物からなる層を形成した。これにより、テストピースを得た。
[評価]
1.色評価(黒色度)
分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製の型番CM−600d)を使用して、銅上に設けられた各実施例及び比較例の黒色感光性樹脂組成物の硬化物の、L*a*b*表色系におけるL*値、a*値、及びb*値を測定した。その結果を、以下の基準で評価した。
A:L*値が28以下、a*値が−5〜+5の範囲内、b*値が−5〜+5の範囲内である。
B:上記「A」を満たさないが、L*値が32以下、a*値が−6〜+6の範囲内、b*値が−6〜+6の範囲内である。
C:上記「A」及び「B」の条件を満たさない。
2.深部硬化性
線幅/線間が0.2mm/0.3mm、厚みが17.5μmである銅製の導体配線を備える配線基板を用意した。この配線基板上に、各実施例及び比較例の黒色感光性樹脂組成物から上述の方法と同様の方法によってテストピースを作製した。なお、露光時には、幅60μm及び80μmのソルダーダムが形成されるようにマスクをあてがった。各実施例及び各比較例のテストピースに形成されたソルダーダムに、セロハン粘着テープを貼り付けた後、このセロハン粘着テープを剥離する剥離試験(テープテスト)を行った。この剥離試験の結果、残存したソルダーダムのうち、最も線幅の細いものの幅を測定した。その結果を以下の基準で評価した。
A:最も細いソルダーダムの線幅が、60μmである。
B:最も細いソルダーダムの線幅が、80μmである。
C:線幅が80μmのソルダーダムが形成されない、或いは剥離した。
3.開口性
各実施例及び比較例のテストピースが備える硬化物からなる層に形成された開口部を観察した。その結果を以下の基準で評価した。
A:直径50μmの開口部が形成されている。
B:直径80μmの開口部が形成されている。
C:直径80μmの開口部が形成されていない。
4.はんだ耐熱性
各実施例及び比較例のテストピースが備える硬化物からなる層に、水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355−11)を塗布した後、260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬して、水洗いを行った。この処理を3回繰り返した後に、テストピースが備える硬化物からなる層の状態を確認した。その結果を、以下の基準で評価した。
A:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色などの異常が認められない。
B:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色などの異常が僅かに認められる。
C:硬化物からなる層にふくれ、剥離、変色などの異常が認められる。
5.金メッキ耐性
各実施例及び比較例のテストピースAの導体配線における外部に露出する部分の上に、市販の無電解ニッケルメッキ浴を用いてニッケルメッキ層を形成してから、市販の無電解金メッキ浴を用いて金メッキ層を形成した。これにより、ニッケルメッキ層及び金メッキ層からなる金属層を形成した。硬化物からなる層及び金属層を目視で観察した。また、硬化物からなる層に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなった。その結果を以下の基準で評価した。
A:めっき層の形成前後で硬化物からなる層の外観に変化が認められず、セロハン粘着テープ剥離試験では、硬化物からなる層の剥離は生じなかった。
B:めっき層の形成前後で硬化物からなる層の外観に変化が認められず、セロハン粘着テープ剥離試験では、硬化物からなる層の剥離が一部生じた。
C:めっき層の形成前後で硬化物からなる層の外観に変化が認められ、セロハン粘着テープ剥離試験では、硬化物からなる層の剥離が生じた。
6.絶縁信頼性
各実施例及び比較例のテストピースのくし型電極に、DC12Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースを121℃、97%R.H.の試験環境下に100時間曝露した。この試験環境下での硬化部からなる層の電気抵抗値を常時測定した。その結果を以下の基準で評価した。
A:試験開始時から100時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上を維持した。
B:試験開始時から70時間経過するまでは電気抵抗値が常に106Ω以上を維持したが、試験開始時から100時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
C:試験開始時から70時間経過する前に電気抵抗値が106Ω未満となった。
7.吸光度評価
ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に、実施例1〜8、比較例1〜4、及び8の黒色感光性樹脂組成物から作製したドライフィルムを用意した。また、実施例9及び比較例5〜7の黒色感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にスクリーン印刷法で塗布することで形成された湿潤塗膜を、80℃で30分間乾燥することで乾燥塗膜を形成した。ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上に形成された各実施例及び比較例の乾燥塗膜を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製の品番UV−3100PC)にセットして、乾燥塗膜の300〜800nmの吸収スペクトルを測定した。リファレンスには、基材であるポリエチレンテレフタレート製のフィルムを使用した。得られた吸収スペクトルを、以下の基準で評価した。
吸光度評価(1):500〜800nmの吸光度
A:500〜800nmの波長領域において、吸光度が1以上である。
B:500〜800nmの波長領域において、吸光度が1未満の波長がある。
吸光度評価(2):365nmの吸光度
A:365nmの吸光度が3未満である。
B:365nmの吸光度が3以上である。
吸光度評価(3):700nmの吸光度に対する365nmの吸光度の比
A:700nmの吸光度に対する365nmの吸光度の比が、1.8未満である。
B:700nmの吸光度に対する365nmの吸光度の比が、1.8以上である。
表2及び表3に以上の結果を示す。なお、吸光度評価(3)に関しては、700nmの吸光度に対する365nmの吸光度の比の具体的な数値を、表2及び表3に示す。