以下、本発明の気体圧縮機に含まれるいくつかの実施形態のうち、代表的な空気圧縮機の実施形態を、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
空気圧縮機の実施形態1は、図1、図2、図3、図4、図5及び図6に示されている。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付してある。
空気圧縮機10は、枠部材11、電動モータ12、圧縮部13及びタンク14を有する。枠部材11は、金属または合成樹脂の単独で形成されるか、あるいは金属と合成樹脂の組み合わせにより形成されている。枠部材11は、2つのエンド部15,16、接続部17を有する。接続部17は、エンド部15とエンド部16とを接続している。図1及び図4のように、エンド部15,16の外周部113の形状は、空気圧縮機10の正面視で共に略三角形である。つまり、外周部113は、3つの長辺113A,113B,113Cを有する。接続部17は3つ設けられ、略三角形のエンド部15,16のそれぞれの頂点に相当する箇所同士を接続している。エンド部15,16同士は互いに平行であり、かつ、接続部17同士は互いに平行である。空気圧縮機10の正面視の意味は、後述する。
枠部材11は、弾性部材50を介してユニット51を支持している。弾性部材50は、一例として合成ゴムである。ユニット51は、支持部材77、モータハウジング21、クランクケース28、減速機カバー29、圧縮部13及びタンク14を有する。支持部材77は、モータハウジング21、クランクケース28、減速機カバー29、圧縮部13及びタンク14を支持する要素である。支持部材77は、一例として、金属製または合成樹脂製である。支持部材77は、プレート形状またはフレーム形状の何れでもよい。
図1のように、エンド部15の内側にカバー18が設けられている。カバー18は、一例として金属製または合成樹脂製である。カバー18を厚さ方向に貫通する吸気口19が、複数設けられている。エンド部15,16同士の間にカバー20が設けられている。カバー20は、一例として金属製または合成樹脂製である。タッチパネル49がカバー20に設けられている。タッチパネル49は、作業者によって操作可能な操作部及び表示部を有する。
表示部は、空気圧縮機の状態、操作部における操作内容、を作業者に告知する。表示部は、一例として液晶ディスプレイを含む。作業者が操作部を操作すると、電源のオン・オフ切り替え、モード切り替え、表示部における表示内容の切り替え、などを行うことが可能である。表示部は、タンク14内の空気圧、タンク14から外部に送られる圧縮空気の圧力、運転モード、電動モータに印加される電圧、時刻、空気圧縮機の周囲の温度、などを表示する。
図4および図5に示す空気圧縮機10の正面視で、電動モータ12、圧縮部13及びタンク14は、エンド部15,16の外周部113よりも内側に配置されている。枠部材11は、モータハウジング21を支持している。図6のように、電動モータ12は、モータハウジング21の内部48に配置、つまり、収容されている。モータハウジング21は筒形状である。モータハウジング21は一例として金属製、または合成樹脂製である。モータハウジング21は、図示しない通気路を有し、モータハウジング21の内部48は、通気路を介して、モータハウジング21の外部E1につながっている。
電動モータ12は、ステータ22及びロータ23を有する。ステータ22はモータハウジング21内で回転しないように設けられている。ステータ22は電流が流れるコイル24を有する。電動モータ12は、ブラシレスモータである。基板25がモータハウジング21の内部48に設けられ、コイル24は基板25に接続されている。基板25は、電線26及びインバータ回路を介して電源に接続される。
ロータ23は駆動軸27に固定されている。図3及び図6のように、モータハウジング21にクランクケース28が固定され、クランクケース28に減速機カバー29が固定されている。クランクケース28は一例として金属製であり、減速機カバー29は一例として金属製である。クランクケース28の一部は、モータハウジング21と減速機カバー29との間に配置されている。クランクケース28は軸受30を支持し、モータハウジング21は軸受31を支持している。軸受30,31は駆動軸27を中心線A1を中心として回転可能に支持している。
ロータ23及びステータ22は、中心線A1方向で軸受30と軸受31との間に配置されている。中心線A1方向において、ロータ23の配置範囲の少なくとも一部と、ステータ22の配置範囲の少なくとも一部とが重なっている。ファン32が駆動軸27に取り付けられている。ファン32は、中心線A1方向で軸受30と電動モータ12との間に配置されている。
駆動軸27の中心線A1方向の一部は、クランクケース28の内部に配置されている。駆動軸27においてクランクケース28の内部に配置された箇所に、プーリ33が取り付けられている。回転軸34が、クランクケース28の内部及び減速機カバー29の内部47に亘って設けられている。クランクケース28は軸受35を支持し、軸受35は回転軸34を中心線A2を中心として回転可能に支持している。回転軸34に第1プーリ36及び第2プーリ37が取り付けられている。第1プーリ36の外径は、プーリ33の外径よりも大きく、環状のベルト38が、プーリ33及び第1プーリ36に巻き掛けられている。プーリ33、第1プーリ36及びベルト38は、第1減速部39を構成する。
クランクシャフト40が、クランクケース28の内部及び減速機カバー29の内部47に亘って設けられている。クランクケース28は、軸受41,42を支持しており、軸受42,42はクランクシャフト40を中心線A3を中心として回転可能に支持している。バランサ58がクランクシャフト40に取り付けられ、クランクピン59がバランサ58に取り付けられている。クランクピン59は、中心線A3から偏心した位置に配置されている。クランクケース28の内部に第1圧縮室46が形成されている。クランクシャフト40の少なくとも一部、コネクティングロッド60、クランクピン59は、第1圧縮室46に配置されている。第1圧縮室46は、シリンダ55の内部につながっている。軸受42は、シール部材を有している。シール部材は、第1圧縮室46を気密にシールする。
図6及び図7に示すように、隔壁52が、モータハウジング21とクランクケース28との間に設けられている。隔壁52は、第1圧縮室46と内部48とを仕切る要素であり、隔壁52は通気孔53を有する。モータハウジング21は、通気路110を有する。内部48は、通気路110、通気孔53を介して第1圧縮室46につながっている。リードバルブ54が、第1圧縮室46に設けられている。リードバルブ54は、内部48の空気が、通気路110及び通気孔53を経由して第1圧縮室46に流れることを許容し、かつ、第1圧縮室46の空気が、通気孔路53及び通気路110を経由して内部48に流れることを阻止する逆止弁である。
空気圧縮機10の平面視で、中心線A1と中心線A2と中心線A3とが、平行に配置されている。空気圧縮機10の平面視で、中心線A3は、中心線A1と中心線A2との間に配置されている。図4に示すように、空気圧縮機10を水平な床B1に置いた状態で、3つの中心線A1,A2,A3は、鉛直方向で略同じ高さに位置する。
プーリ43がクランクシャフト40に取り付けられている。プーリ43の外径は、第2プーリ37の外径よりも大きい。環状のベルト44が、第2プーリ37及びプーリ43に巻き掛けらている。第2プーリ37、プーリ43及びベルト44は、第2減速部45を構成する。空気圧縮機10を中心線A1,A2,A3に対して垂直な平面内で視ることが、本開示における空気圧縮機10の正面視である。図4に示すように空気圧縮機10を床B1に置いた状態で、空気圧縮機10を上から視ることが、本開示における空気圧縮機10の平面視である。そして、図4のように空気圧縮機10を正面視すると、第2減速部45は、ベルト38の内側の空間に配置されている。また、図6のように空気圧縮機10を平面断面視すると、ベルト38は、中心線A3方向でベルト44とファン32との間に配置されている。
圧縮部13は、シリンダ55、シリンダヘッド56、ピストン57及びクランクケース28を有する。シリンダ55は、一例として金属製であり、かつ、筒形状である。シリンダ55はクランクケース28に固定されている。バランサ58がクランクシャフト40に取り付けられ、クランクピン59がバランサ58に取り付けられている。クランクピン59は、中心線A3から偏心した位置に配置されている。コネクティングロッド60が設けられ、コネクティングロッド60は、クランクピン59とピストン57とを連結している。ピストン57は円柱形状であり、シリンダ55内で中心線C1方向に往復作動可能である。中心線C1は、シリンダ55の中心である。
弁座71が、シリンダ55とシリンダヘッド56との間に設けられている。弁座71は、一例として金属製である。シリンダ55内でピストン57と弁座71との間に第2圧縮室61が形成されている。ピストン57は、クランクケース28の第1圧縮室46と、第2圧縮室61とを気密に隔てている。
シリンダヘッド56と弁座71との間に、中継室62及び排気室63が設けられている。弁座71は、第2圧縮室61と、中継室62及び排気室63とを隔てる隔壁である。シリンダ55は第1通気路64を有し、弁座71は、第2通気路65、第3通気路66及び第4通気路67を有する。クランクケース28の第1圧縮室46は、第1通気路64及び第2通気路65を介して中継室62につながっている。中継室62は、第3通気路66を介して第2圧縮室61につながる。
リードバルブ68が、第2圧縮室61に設けられている。リードバルブ68は、中継室62の空気が、第3通気路66を経由して第2圧縮室61に流れることを許容し、かつ、第2圧縮室61の空気が、第3通気路66を経由して中継室62に流れることを阻止する逆止弁である。
第2圧縮室61は、第4通気路67を介して排気室63につながる。リードバルブ69が、排気室63に設けられている。リードバルブ69は、第2圧縮室61の空気が、第4通気路67を経由して排気室63に流れることを許容し、かつ、排気室63の空気が、第4通気路67を経由して第2圧縮室61に流れることを阻止する逆止弁である。
通気管70が設けられている。通気管70は、排気室63とタンク14の内部とを接続する。通気管70は、一例としてフレキシブルホースを用いる。フレキシブルホースは、湾曲形状を任意に変更可能である。図3及び図5のように、タンク14にリリーフバルブ72が設けられている。タンク14内の空気圧が所定値未満では、リリーフバルブ72が閉じられている。タンク14内の空気圧が所定値以上になると、リリーフバルブ72が開き、タンク14内の圧縮空気をタンク14の外部に排出する。
タンク14は、減圧弁73を介して供給管74に接続されている。減圧弁73にレギュレータハンドル76が設けられている。作業者がレギュレータハンドル76を操作して減圧弁73の減圧程度を調整する。減圧弁73は、タンク14から供給管74に吐出される空気の圧力を調整、具体的には減圧する。エアソケット75が供給管74に取り付けられている。エアソケット75は、エアホースに取り付け及び取り外しが可能である。エアソケット75は、エアホースを介して作業機に接続される。
制御部78が支持部材77に設けられている。制御部78は、制御基板に、入力インタフェース、出力インタフェース、記憶装置、演算処理装置を設けたマイクロコンピュータである。制御部78は、電力ケーブルを介して電源に接続される。タッチパネル49は、電線及び信号線を介して制御部78に接続されている。空気圧縮機10は、タンク14内の圧力を検出するセンサ、減圧弁73で調整された空気圧を検出するセンサ、気温を検出するセンサ、電源の電圧を検出するセンサを有する。これらのセンサから出力される信号は、制御部78に入力される。
作業者は、タッチパネル49を操作して電源スイッチをオンし、かつ、運転モードを選択する。運転モードに応じてタンク14内の空気圧が設定される。電源の電流が電動モータ12に供給され、電動モータ12の駆動軸27が回転する。駆動軸27の回転力は、第1減速部39及び第2減速部45を経由してクランクシャフト40に伝達される。第1減速部39は、駆動軸27の回転力を回転軸34に伝達する際、駆動軸27の回転速度に対して回転軸34の回転速度を低速とすることで、回転力を増幅する。第2減速部45は、回転軸34の回転力をクランクシャフト40に伝達する際、回転軸34の回転速度に対してクランクシャフト40の回転速度を低速とすることで、回転力を増幅する。
クランクシャフト40が回転すると、ピストン57はシリンダ55内で往復作動する。圧縮部13の作動を、図7A、図7B、図7C及び図7Dを参照して説明する。便宜上、ピストン57が図7Aに示す上死点にある位置から、クランクシャフト40が反時計回りに回転する例を説明する。ピストン57の上死点は、ピストン57が中心線C1方向で、弁座71に最も近づいた位置である。
ピストン57が、図7Aに示す上死点から、図7Bのように、ピストン57が下死点に向けて作動する。ピストン57が弁座71から離れる向きに作動すると、第1圧縮室46で空気が圧縮され、リードバルブ54は導入路53を閉じる。また、第1圧縮室46で圧縮された空気は、第1通気路64及び第2通気路65を経由して中継室62に進入し、中継室62の空気圧が上昇する。ピストン57の作動により、第2圧縮室61の圧力が低下している。このため、リードバルブ68が第3通気路66を開き、中継室62の空気は第3通気路66を経由して第2圧縮室61に吸入される。
そして、クランクシャフト40の回転に伴い、ピストン57は図7Cのように下死点に到達する。ピストン57の下死点は、ピストン57が中心線C1方向で、弁座71から最も離れた位置である。
さらに、ピストン57が図7Cに示す下死点から上死点に向けて作動すると、第1圧縮室46の圧力が低下する。このため、図7Dのように、リードバルブ54が導入路53を開き、モータハウジング21の内部48の空気が、通気孔110及び導入路53を経由して第1圧縮室46に進入する。また、ピストン57が下死点から上死点に向けて作動することで、第2圧縮室61内で空気が再度、圧縮される。このため、リードバルブ68は第3通気路66を閉じる。また、リードバルブ69が第4通気路67を開き、第2圧縮室61の空気は、第4通気路67を経由して排気室63に吐出される。排気室63の空気は、通気管70を経由してタンク14内に蓄えられる。
そして、クランクシャフト40の回転に伴い、ピストン57は図7Aに示す上死点に到達する。このように、駆動軸27の回転力がクランクシャフト40に回転され、かつ、ピストン57がシリンダ55内で往復作動する。圧縮部13は気体を2段階で圧縮し、圧縮部13から吐出された空気は、タンク14内に蓄えられる。タンク14内の空気圧が、タッチパネル49で設定された目標圧力、または、目標圧力に対応する圧力になると、制御部78は電動モータ12を停止させる。
このように、空気圧縮機10の圧縮部13は、クランクケース28の第1圧縮室46において第1段階の空気圧縮を行い、第2圧縮室61で第2段階の空気圧縮を行う。このため、1段階で空気を圧縮する空気圧縮機に比べて、高圧の圧縮空気を生成可能である。また、ピストン57及びコネクティングロッド60は、第1段階の空気圧縮を行う要素としての機能と、第2段階の空気圧縮を行う要素としての機能と、を兼ねている。このため、本開示の空気圧縮機10は、2段階で空気を圧縮する空気圧縮機に対して、第1段階の空気圧縮を行う要素と、第2段階の空気圧縮を行う要素とを別々に設ける必要が無い。例えば、ピストン及びコネクティングロッドのような作動部品を削減できる。特に、第1段階の空気圧縮を行う要素のための部品点数の増加を抑制でき、空気圧縮機10の製造コストの上昇を抑制できる。また、クランクケースが小型化し、第1段階の空気圧縮を行う要素と、第2段階の空気を行う要素とが共通化されたことで、空気圧縮機10の重量を軽減でき、かつ、体格を小型化できる。
さらに、ファン32が駆動軸27と共に回転すると、モータハウジング21の外部E1の空気が、モータハウジング21の内部48に吸い込まれる。モータハウジング21の内部48に吸い込まれた空気の一部は、導入路53を経由してクランクケース28の第1圧縮室46に進入する。さらに、モータハウジング21の内部48に吸い込まれた空気の一部は、基板25、電動モータ12を冷却し、モータハウジング21の外部E1に排出される。
また、中心線A1,A3が互いに平行に配置されているため、空気圧縮機10を床B1の高さ方向で小型化することが可能である。さらに、制御部78は制御基板を有し、その制御基板の表面に沿った方向と、中心線A1または中心線A3の少なくとも一方とが、平行となるように配置されている。したがって、空気圧縮機10を床B1の高さ方向で小型化することが可能である。
ファン32の径方向において、ファン32の外側に通気孔53が設けられている。ファン32の回転により流れる空気を、積極的に通気孔53に送り込むことで、第1圧縮室46に流入する空気量を増加することができる。したがって、ファン32及び通気孔53は、一種の過給機のように働く。
通気孔53は、モータハウジング21とクランクケース28とにより覆われた個所に設けられる。このため、内部48の空気が通気孔53から第1圧縮室46に排出される音が、モータハウジング21及びクランクケース28の外部に漏れることを低減できる。したがって、圧縮機10の騒音を低減できる。
(実施形態2)
空気圧縮機10の実施形態2を図8A、図8Bを参照して説明する。空気圧縮機10の実施形態2の構成において、空気圧縮機10の実施形態1の構成と共通するものは、空気圧縮機10の実施形態1と同じ符号を付してある。
図8Aに示す空気圧縮機10は、駆動軸27及びクランクシャフト40が、中心線A4を中心として同心状に配置されている。駆動軸27及びクランクシャフト40は、一体回転するように連結されている。クランクケース28は、第1ボス部80及び第2ボス部81を有する。第1ボス部80と第2ボス部81とを互いに固定してある。
第2ボス部81の外面から突出した筒部96が設けられ、筒部96にシリンダ55が固定されている。また、筒部96の一部は切り欠き部を有し、ゴムブッシュ111が切り欠き部を封止している。切り欠き部はコネクティングロッド60をクランクケース28に挿入するために設けられたものである。ゴムブッシュ111は切り欠き部に挿入され、かつ、第1圧縮室84を気密に封止する。さらに、シリンダ55の外面から径方向に突出し、かつ、中心線C1方向に沿ったフィン97が設けられている。
第1ボス部80は筒形状であり、第1ボス部80の内面から内側に向けて突出した壁部82が設けられている。第2ボス部81は筒形状であり、第2ボス部81の内面から内側に向けて突出した壁部83が設けられている。壁部82と壁部83との間、及び筒部96内に亘って第1圧縮室84が形成されている。第1圧縮室84は、シリンダ55内につながっている。
壁部82に接続された筒部85が設けられ、筒部85は軸受86を支持している。壁部83に接続された筒部87が設けられ、筒部87は軸受88を支持している。軸受86,88は、クランクシャフト40を回転可能に支持している。軸受86は、内輪86A、外輪86B及びシール部材86Dを有する。軸受88は、内輪88A、外輪88B及びシール部材88Dを有する。シール部材86D,88Dは、第1圧縮室84と外部E1とを気密に遮断する。また、軸受88は、軸受押さえ88Cによって移動が規制され、軸受86は、軸受押さえ86Cによって移動が規制されている。
クランクケース28は通気路91を有する。通気路91は、クランクケース28の外部E1と第1圧縮室84とをつなぐ。第1圧縮室84にリードバルブ90が設けられている。リードバルブ90は、クランクケース28の外部の空気が、通気路91を経由して第1圧縮室84に流れることを許容し、かつ、第1圧縮室84の空気が、通気路91を経由してクランクケース28の外部E1に流れることを阻止する逆止弁である。
クランクシャフト40の一部は、クランクケース28の外部に配置されている。クランクケース28の外部E1に、フライホイール89が設けられている。フライホイール89は、一例として金属製であり、かつ、クランクシャフト40に固定されている。
駆動軸27にファン32が取り付けられている。電動モータ12はクランクケース28の外部E1に配置され、電動モータ12は、中心線A4方向でファン32とクランクケース28との間に配置されている。さらに、壁部82,83は、中心線A4方向で電動モータ12とフライホイール89との間に配置されている。電動モータ12と壁部82、83との間にフライホイール89が配置されてもよい。
図8Bのように、コネクティングロッド60の第1端部は、第1圧縮室84でクランクシャフト40に連結されている。コネクティングロッド60は、中心線A4方向で壁部82と壁部83との間に配置されている。コネクティングロッド60の第2端部に円板形状のボス部92が設けられている。ボス部92には、円板形状のリテーナ93が取り付けられている。リテーナ93は、ねじ部材94を締め付けてボス部92に取り付けられている。ボス部92及びリテーナ93により、ピストン57が形成されている。
ピストン57は、シリンダ55内で中心線C1方向に往復作動可能である。中心線C1と中心線A4とは直角である。ボス部92とリテーナ93との間に、環状のシール部材95が取り付けられている。シール部材95は、一例として、合成樹脂製のリップパッキンを用いることが可能である。シール部材95は、合成ゴム製でも良い。シール部材95は、シリンダ55の内周面に接触する。ピストン57と弁座71との間に第2圧縮室61が形成されている。ピストン57及びシール部材95は、第1圧縮室84と第2圧縮室61とを気密に隔てる。第1圧縮室84は、空気圧縮機10の実施形態1と同様の構成により、中継室62、第2圧縮室61につながる。
空気圧縮機10の実施形態2において、電動モータ12の駆動軸27の回転力がクランクシャフト40に伝達されると、ピストン57が中心線C1方向に往復作動する。ピストン57が上死点から下死点に向けて作動すると、リードバルブ90が通気路91を閉じ、第1圧縮室84で空気が圧縮される。ピストン57が下死点から上死点に向けて作動すると、リードバルブ90が通気路91を開き、通気路91から第1圧縮室84に空気が吸入される。また、図7Dと同様に第2圧縮室61で空気が圧縮され、かつ、圧縮された空気は、排気室63に吐出される。
空気圧縮機10の実施形態2においても、2段階で空気を圧縮する空気圧縮機に対して、第1段階の空気圧縮を行う要素と、第2段階の空気圧縮を行う要素とを別々に設ける必要が無い。例えば、ピストン及びコネクティングロッドのような作動部品を削減できる。特に、第1段階の空気圧縮を行う要素のための部品点数の増加を抑制でき、空気圧縮機10の製造コストの上昇を抑制できる。また、クランクケースが小型化し、第1段階の空気圧縮を行う要素と、第2段階の空気を行う要素とが共通化されたことで、空気圧縮機10の重量を軽減でき、かつ、体格を小型化できる。
また、空気圧縮機10の実施形態2においては、壁部82の内面82Aと、壁部83の内面83Aとの間の距離L1が、ピストン57の外径D1よりも小さい。このため、ピストン57の有効面積に対する第1圧縮室84の容積を、なるべく小さくすることができる。言い換えると、第1圧縮室84で第1段階の空気圧縮を行う際の圧縮比を、なるべく大きくすることが可能である。
さらに、フライホイール89はクランクケース28の外部E1に設けられている。したがって、距離L1を一層小さくすることが可能である。また、中心線A4方向で、軸受86,88の少なくとも一部は、壁部82の内面82Aと、壁部83の内面83Aとの間から外れた個所に配置されている。したがって、距離L1を一層小さくすることが可能である。
(実施形態3)
空気圧縮機10の実施形態3は、図9に示してある。空気圧縮機10の実施形態3の構成において、空気圧縮機10の実施形態1及び実施形態2の構成と共通するものは、空気圧縮機10の実施形態1及び実施形態2と同じ符号を付してある。
図9に示す空気圧縮機10は、駆動軸27及びクランクシャフト40が、中心線A4を中心として同心状に配置されている。駆動軸27及びクランクシャフト40は、一体回転する。クランクケース28は、第1ボス部80及び第2ボス部81を有する。第1ボス部80と第2ボス部81とを互いに固定してある。
第1ボス部80は円板形状であり、筒部85が第1ボス部80の内周端に設けられている。筒部85は軸受86を支持している。第2ボス部81は、開口部98,99を有する。さらに、第2ボス部81は、壁部83及び筒部87を有し、筒部87は軸受88を支持している。開口部98はシリンダ55内につながっている。第1ボス部80と第2ボス部81との間、及び開口部98に亘って第1圧縮室84が形成されている。
開口部99を塞ぐカバー100が設けられている。カバー100は、一例として金属製であり、カバー100は通気路101を有する。通気路101は、第1圧縮室84とクランクケース28の外部E1とをつなぐ。リードバルブ102が、第1圧縮室84に設けられている。リードバルブ102は、外部E1の空気が、通気路101を経由して第1圧縮室84に流れることを許容し、かつ、第1圧縮室84の空気が、通気路101を経由して外部E1に流れることを阻止する逆止弁である。
また、第1圧縮室84にスペーサ107が設けられている。スペーサ107は、第1圧縮室84に配置されている作動要素及びピストン57の作動を阻害しない位置、または、阻害しない状態で、第1圧縮室84に配置されている。作動要素は、クランクシャフト40、駆動軸27、内輪86A,88A、コネクティングロッド60である。
スペーサ107は、クランクケース28を構成する材料よりも低密度の材料で構成されている。クランクケース28が、一例としてアルミニウムであると、スペーサ107は、一例として合成樹脂を用いることが可能である。スペーサ107、第1圧縮室84の空間の一部を占有し、第1圧縮室84の実質的な容積を狭めるための要素である。スペーサ107の形状は、ブロック形状、プレート形状、ワイヤー形状等の何れでもよい。
空気圧縮機10の実施形態3において、電動モータ12の駆動軸27の回転力がクランクシャフト40に伝達されると、ピストン57が中心線C1方向に往復作動する。ピストン57が上死点から下死点に向けて作動すると、リードバルブ102が通気路101を閉じ、第1圧縮室84で空気が圧縮される。ピストン57が下死点から上死点に向けて作動すると、リードバルブ102が通気路101を開き、外部E1の空気が通気路101を経由して第1圧縮室84に空気が吸入される。また、図7Dに示す第2圧縮室61で空気が更に圧縮され、かつ、空気は排気室63に吐出される。
空気圧縮機10の実施形態3においても、2段階で空気を圧縮する空気圧縮機に対して、第1段階の空気圧縮を行う要素と、第2段階の空気圧縮を行う要素とを別々に設ける必要が無い。例えば、ピストン及びコネクティングロッドのような作動部品を削減できる。特に、第1段階の空気圧縮を行う要素のための部品点数の増加を抑制でき、空気圧縮機10の製造コストの上昇を抑制できる。また、クランクケースが小型化し、第1段階の空気圧縮を行う要素と、第2段階の空気を行う要素とが共通化されたことで、空気圧縮機10の重量を軽減でき、かつ、体格を小型化できる。
また、空気圧縮機10の実施形態3においては、第1圧縮室84にスペーサ107が配置されて、第1圧縮室84の実質的な容積が狭められている。このため、ピストン57の有効面積に対する第1圧縮室84の容積を、なるべく小さくすることができる。したがって、第1圧縮室84で第1段階の空気圧縮を行う際の圧縮比を、なるべく大きくすることが可能である。
(実施形態4)
空気圧縮機10の実施形態4を図10A、図10Bを参照して説明する。空気圧縮機10の実施形態4の構成において、空気圧縮機10の実施形態1、実施形態2及び実施形態3の構成と共通するものは、空気圧縮機10の実施形態1、実施形態2及び実施形態3と同じ符号を付してある。
圧縮部13は、鉛直方向でモータハウジング21よりも上に配置されている。クランクケース28は、モータハウジング21よりも上に配置され、シリンダ55は、クランクケース28よりも上に配置されている。空気圧縮機10を平面視すると、シリンダ55の配置領域と、クランクケース28の配置領域と、モータハウジング21の配置領域とが、少なくとも一部で重なっている。
タンク14とモータハウジング21とが一体化されている。モータハウジング21の内部48とタンク14の内部14Aとを仕切る隔壁104が設けられている。空気圧縮機10を平面視すると、タンク14とモータハウジング21とが、中心線A1方向に並んでいる。圧力計105が供給管74に取り付けられている。圧力計105は、供給管74内の圧力を表示する。
駆動軸27にプーリ33が取り付けられ、クランクシャフト40にプーリ43が取り付けられている。環状のベルト103が、プーリ33,43に巻き掛けられている。駆動軸27の中心線A1と、クランクシャフト40の中心線A3とが平行に配置されている。駆動軸27の回転力は、ベルト103を介してクランクシャフト40に伝達される。プーリ33、ベルト103及びプーリ43は、減速部106を構成する。
フライホイール89は、クランクシャフト40に取り付けられ、かつ、第1圧縮室84に配置されている。フライホイール89は、中心線A3方向で、コネクティングロッド60と軸受88との間に配置されている。
空気圧縮機10の実施形態4において、空気圧縮機10の実施形態1、実施形態2及び実施形態3の構成と共通するものは、空気圧縮機10の実施形態1、実施形態2及び実施形態3と同じ効果を得ることができる。また、空気圧縮機10を平面視すると、シリンダ55の配置領域と、クランクケース28の配置領域と、モータハウジング21の配置領域とが、少なくとも一部で重なっている。したがって、空気圧縮機10を床B1の平面方向に小型化することが可能である。
図11は、第1圧縮室の圧力変化の一例、及び第2圧縮室の圧力変化の一例を示す。ピストンが上死点と下死点との間で作動すると、空気圧縮機の実施形態は、第1圧縮室の圧力が実線のように変化し、第2圧縮室の圧力が実線のように変化する。空気圧縮機の比較例では、クランクケースの内部の圧力が、破線で示すように略一定である。実線で示す圧力は、破線で示す圧力に対して高低に変化する。空気圧縮機の比較例は、クランクケースの内部を第1圧縮室として使用しない構造である。
空気圧縮機の実施形態で開示した事項の意味を説明する。空気圧縮機10は、気体圧縮機の一例である。圧縮部13は、圧縮部の一例である。クランクシャフト40は、回転部材の一例である。第1圧縮室46,84は、第1圧縮室の一例である。第2圧縮室61は、第2圧縮室の一例である。ピストン57は、作動部材の一例である。クランクケース28及びシリンダ55は、ケースの一例である。第1通気路64、第2通気路65、第3通気路66及び中継室62は、通気路の一例である。ピストン57は、ピストンの一例である。
距離L1は、第1圧縮室の寸法の一例であり、外径D1は、ピストンの径方向の寸法の一例である。フライホイール89は、慣性体の一例である。外部E1は、ケースの外部の一例である。軸受86,88は、軸受の一例である。内面82A,83Aは、ケースの内面の一例である。スペーサ107は、空間専有物の一例である。枠部材11は、支持要素の一例である。中心線A3は、回転部材の中心線の一例である。電動モータ12は、駆動源の一例である。中心線A1は、駆動源の中心線の一例である。モータハウジング21は、ハウジングの一例である。タンク14は、タンクの一例である。リードバルブ68は、逆止弁の一例である。導入路53は、導入路の一例である。
気体圧縮機は、図面を参照して開示した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、駆動源は、電動モータ、油圧モータ、空気圧モータ、エンジンの何れでもよい。また、空気圧縮機は、モータとクランクシャフトとの間の動力伝達経路に、減速部が設けられているもの、減速部が設けられていないもの、の何れでもよい。
さらに、第1圧縮室の容積を狭める構成は、コネクティングロッドの太さの設計、または形状の設計により得ることも可能である。コネクティングロッドの太さを変更する場合、コネクティングロッドを中空とすることにより、コネクティングロッドの質量が増加することを抑制可能である。さらに、第1圧縮室の容積を狭める構成は、第1圧縮室に設けるフライホイールを大型化して得ることも可能である。
気体圧縮機で圧縮する気体は、空気、不活性ガスを含む。不活性ガスは、窒素ガス、希ガスを含む。希ガスは、アルゴンガス、ヘリウムガスを含む。
さらに、回転部材は、回転軸、ギヤ、プーリ、ベルト等の動力伝達要素を含む。ケースは、内部空間を有する筐体、内部空間を有するハウジングを含む。通気路及び導入路は、孔、開口部、ポート、溝、スリットを含む。軸受は、ラジアル軸受、スラスト軸受を含む。空間専有物は、形態を有する物体または固体である。支持要素は、圧縮部を支持する強度を有し、支持要素は、枠部材、骨格部材、ハウジングを含む。
ハウジングとタンクとが一体とは、ハウジングの少なくとも一部と、タンクの少なくとも一部とが単一の部材で構成されている構造を含む。ハウジングとタンクとが一体とは、ハウジングとタンクとが別々に構成され、かつ、互いに固定されている構造を含む。