JP2019151962A - 積層不織布およびフィルター材 - Google Patents

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Abstract

【課題】実用に耐えうる耐久性や剛性を備え、フィルター材用途として捕集性能および寿命に優れ、さらには成形性にも優れた不織布を提供する。【解決手段】スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とが積層されてなり、少なくとも片面のスパンボンド不織布の平均単繊維径が6.5〜11.9μmであり、メルトブロー不織布の平均単繊維径が0.1〜6μmであり、通気量と目付の積が100〜1500(cc/(cm2・秒))・(g/m2)である、積層不織布である。さらに本発明のフィルター材は、前記積層不織布からなる。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂からなる繊維から構成され、耐久性に優れ、フィルター材用途として捕集性能および寿命に優れた積層不織布、およびこれからなるフィルター材に関するものである。
従来から、タービン等の吸気用フィルターや液体フィルターなどの材料として種々の不織布が提案されている。特に近年では、剛性に優れる熱圧着タイプの長繊維不織布がプリーツ形状のフィルターとして好適に使用されている。プリーツ形状のフィルター材を使用すると濾過面積を大幅に増加させることができるため、濾過風速を低減することが可能であり、粉塵の捕集能力の向上や圧力損失の低減を図れるという利点がある。
吸気用フィルターとしては静電気による電気的捕集を強みとするタイプが広く使用されているが、目詰まりしたあとの洗浄に水などを使用すると電荷が失われて性能が大幅に低下するという問題があった。また、液体中で使用したり、水分を多量に含むダストを捕集したりする場合には電気的な捕集効果が作用しないため、このような用途では機械的捕集を強みとするフィルターが求められている。
従来、このような機械的捕集を強みとする吸気用フィルターとして、ポリエステル系繊維からなるメルトブロー不織布と、ポリエステル系繊維からなるスパンボンド不織布が積層一体化されてなる不織布が提案されている(特許文献1参照。)。
また他にも、抽出パックに使用される液体フィルターとして、メルトブロー不織布の上下にスパンボンド不織布が積層され、最大開孔径が100μm以下である不織布が提案されている(特許文献2参照。)。
特開2008−114177号公報 特開2004−154760号公報
特許文献1や2等に開示された方法では、一定の捕集性能を得るために、極細繊維からなる緻密なメルトブロー不織布層を設けている。そのため、圧損が大きくなる他、目詰まりを起こした塵埃を洗浄で除去しにくいという課題があった。
そこで、本発明の目的は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、実用に耐えうる耐久性や剛性を備え、フィルター材用途として捕集性能および寿命に優れ、さらにはフィルター形状への成形性にも優れた不織布を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、スパンボンド不織布層と、メルトブロー不織布層とが積層されてなる積層不織布を用いた際、積層不織布の表面構造および通気性を適切に制御することによって、積層不織布の捕集性能や塵埃の洗浄除去性を向上できるという知見を得た。さらに、この積層不織布が、目的とする高い水準の耐久性や剛性、加工性を持たせることを可能とすることも判明した。
本発明はこれら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
本発明の積層不織布は、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とが積層されてなる積層不織布であって、少なくとも片面のスパンボンド不織布の平均単繊維径が6.5〜11.9μmであり、メルトブロー不織布の平均単繊維径が0.1〜6μmであり、通気量と目付の積が100〜1500(cc/cm・秒)・(g/m)である、積層不織布である。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、少なくとも片面のKES法による表面粗さSMDは、1.0〜3.0μmである。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、単位目付あたりの縦方向の引張強度は、1.8(N/5cm)/(g/m)以上である。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、メルトブロー不織布層の含有量は、積層不織布質量に対し1質量%以上30質量%以下である。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、メルトブロー不織布は、ポリオレフィン系樹脂(B)からなる繊維で構成される。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、スパンボンド不織布は、ポリオレフィン系樹脂(A)からなる繊維で構成される。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、積層不織布のメルトフローレートは、80〜850g/10分である。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、大気塵中の粒径0.3〜0.5μmの単位目付あたりの機械捕集効率は、0.3%/(g/m)以上である。
本発明の積層不織布の好ましい態様によれば、本発明の積層不織布からなるフィルター材である。
本発明によれば、実用に耐えうる耐久性や剛性を備え、フィルター材用途として捕集性能および寿命に優れ、さらには成形性にも優れた積層不織布が得られる。
捕集効率および圧力損失の測定装置を示す概略側面図である。
本発明の積層不織布は、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とが積層されてなる積層不織布であって、少なくとも片面のスパンボンド不織布は平均単繊維径が6.5〜11.9μmであり、メルトブロー不織布の平均単繊維径が0.1〜6μmであり、通気量と目付の積が100〜1500(cc/cm・秒)・(g/m)である、積層不織布である。以下に、この詳細を詳述する。
[樹脂]
本発明で用いられるメルトブロー不織布およびスパンボンド不織布を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、共重合ポリエステル樹脂などのポリエステル系樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂などの生分解性樹脂などを用いることができる。これらのうち、ポリエチレン樹脂としては、エチレンの単独重合体もしくはエチレンと各種α−オレフィンとの共重合体などが挙げられ、また、ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体もしくはプロピレンと各種α−オレフィンとの共重合体などが挙げられる。中でも、紡糸性や強度の特性の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン樹脂が特に好ましく用いられる。
本発明で用いられるメルトブロー不織布およびスパンボンド不織布を構成する熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を用いる場合、プロピレンの単独重合体の割合が60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。このようにすることで良好な紡糸性を維持し、かつ強度を向上させることができる。
本発明に係る、スパンボンド不織布層を構成する繊維の熱可塑性樹脂(A)、および、メルトブロー不織布層を構成する繊維の熱可塑性樹脂(B)について、その流動特性を示すメルトフローレート(MFRと略記することがある)は、ASTM D1238 (A法)によって測定される値を採用する。
なお、この規格によれば、例えば、ポリプロピレンは荷重:2.16kg、温度:230℃にて、ポリエチレンは荷重:2.16kg、温度:190℃にて測定することが規定されている。
まず、前記のスパンボンド不織布層を構成する繊維の熱可塑性樹脂(A)のMFRは、75〜850g/10分であることが好ましい。MFRを好ましくは75〜850g/10分とし、より好ましくは120〜600g/10分とし、さらに好ましくは155〜400g/10分とすることにより、スパンボンド不織布層を紡糸する際の繊維の細化挙動が安定し、生産性を高くするために速い紡糸速度で延伸したとしても、安定した紡糸が可能となる。また細化挙動を安定させることにより糸揺れを抑制し、シート状に捕集する際のムラが発生しにくくなる。さらに、安定して速い紡糸速度で延伸することが可能となるため、繊維の配向結晶化を進め、高い機械強度を有する繊維とすることができる。
また、前記のメルトブロー不織布層を構成する繊維の熱可塑性樹脂(B)のMFRは、200〜2500g/10分であることが重要である。MFRを200〜2500g/10分とし、好ましくは400〜2000g/10分とし、より好ましくは600〜1500g/10分とすることにより、安定した紡糸を行いやすくなり、かつ数μmレベルの繊維を得ることができる。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、2種以上の混合物であってもよく、またその他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等を含有する樹脂組成物を用いることもできる。当然、MFRの異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を任意の割合でブレンドして、熱可塑性樹脂(A)および/または熱可塑性樹脂(B)のMFRを調整することもできる。
ブレンドにより熱可塑性樹脂(A)のMFRを調整する場合、主となる熱可塑性樹脂に対してブレンドする樹脂のMFRは、10〜1000g/10分であることが好ましく、より好ましくは20〜800g/10分、さらに好ましくは30〜600g/10分である。このようにすることにより、ブレンドしたポリオレフィン系樹脂に部分的に粘度斑が生じ、繊度が不均一化したり、紡糸性が悪化したりすることを防ぐことができる。
また、後述する繊維を紡出する際、部分的な粘度斑の発生を防ぎ、繊維の繊度を均一化し、さらに繊維径を後述するように細くするため、用いる樹脂に対して、この樹脂を分解してMFRを調整することも考えられる。しかしながら、例えば、過酸化物、特に、ジアルキル過酸化物等の遊離ラジカル剤などを添加しないことが好ましい。この手法を用いた場合、部分的に粘度斑が発生して繊度が不均一化し、十分に繊維径を細くすることが困難となる他、粘度斑や分解ガスによる気泡で紡糸性が悪化する場合もある。
本発明の積層不織布においては、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布のそれぞれを構成する熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂(B)のMFRの比(MFR/MFR)が1〜13の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1.5〜12の範囲である。MFRの比(MFR/MFR)が上記範囲となることでスパンボンド不織布にメルトブロー不織布を積層する際に接着が進みやすく、剥離強力等の物性向上効果が得られる。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、紡曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、および顔料等の添加物、あるいは他の重合体を必要に応じて添加することができる。
本発明で用いられる熱可塑性樹脂の融点は、80〜200℃であることが好ましく、より好ましくは100〜180℃であり、さらに好ましくは120〜180℃である。融点を好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上とすることにより、実用に耐え得る耐熱性が得られやすくなる。また、融点を好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下とすることにより、口金から吐出された糸条を冷却し易くなり、繊維同士の融着を抑制し安定した紡糸が行い易くなる。
本発明の積層不織布には、滑り性や柔軟性を向上させるために、スパンボンド不織布を構成する前記の熱可塑性樹脂(A)に、炭素数が23以上50以下の脂肪酸アミド化合物が含有されていることが好ましい態様である。
脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは23以上とし、より好ましくは30以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が過度に繊維表面に露出することを抑制し、紡糸性と加工安定性に優れたものとし、高い生産性を保持することができる。一方、脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは50以下とし、より好ましくは42以下とすることにより、脂肪酸アミド化合物が繊維表面に移動しやすくなり、積層不織布に滑り性と柔軟性を付与することができる。
本発明で使用される炭素数が23以上50以下の脂肪酸アミド化合物としては、飽和脂肪酸モノアミド化合物、飽和脂肪酸ジアミド化合物、不飽和脂肪酸モノアミド化合物および不飽和脂肪酸ジアミド化合物などが挙げられる。
具体的には、炭素数が23以上50以下の脂肪酸アミド化合物としては、テトラドコサン酸アミド、ヘキサドコサン酸アミド、オクタドコサン酸アミド、ネルボン酸アミド、テトラコサエンタペン酸アミド、ニシン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、およびヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられ、これらは複数組み合わせて用いることもできる。
本発明では、これらの脂肪酸アミド化合物の中でも、特に飽和脂肪酸ジアミド化合物であるエチレンビスステアリン酸アミドが好ましく用いられる。エチレンビスステアリン酸アミドは、熱安定性に優れているため溶融紡糸が可能であり、このエチレンビスステアリン酸アミドが配合された熱可塑性樹脂(A)により、高い生産性を保持することができる。さらに、繊維同士の滑り性が向上することから、捕集時に繊維が均一に分散させることができるため、不織布平滑性向上にも寄与する。またフィルターとして用いる際には、目詰まりを起こした塵埃を洗浄で除去しやすくすることができる。
本発明では、この熱可塑性樹脂(A)に対する脂肪酸アミド化合物の添加量は、0.01〜5.0質量%であることが好ましい。脂肪酸アミド化合物の添加量を好ましくは0.01〜5.0質量%とし、より好ましくは0.1〜3.0質量%とし、さらに好ましくは0.1〜1.0質量%とすることにより、紡糸性を維持しながら適度な滑り性や平滑性を付与することができる。
ここでいう添加量とは、本発明の積層不織布を構成するスパンボンド不織布層を構成する熱可塑性樹脂(A)全体に対して添加した脂肪酸アミド化合物の質量パーセントを言う。例えば、後述するような芯鞘型複合繊維を構成する鞘部成分のみに脂肪酸アミド化合物を添加する場合でも、芯鞘成分全体量に対する添加割合を算出している。
ポリオレフィン系樹脂からなる繊維に対する脂肪酸アミド化合物の添加量を測定する方法としては、例えば、前記の繊維から添加剤を溶媒抽出し、液体クロマトグラフ質量分析(LS/MS)などを用いて定量分析する方法が挙げられる。このとき抽出溶媒は脂肪酸アミド化合物の種類に応じて適宜選択されるものであるが、例えばエチレンビスステアリン酸アミドの場合には、クロロホルム−メタノール混液などを用いる方法が一例として挙げられる。
[繊維]
本発明に係るスパンボンド不織布層を構成する繊維は、その平均単繊維径が6.5〜11.9μmであることが重要である。平均単繊維径を6.5μm以上とし、好ましくは7.5μm以上とし、より好ましくは8.4μm以上とすることにより、紡糸性の低下を防ぎ、安定して品質の良い不織布層を形成することができる。一方、平均単繊維径を11.9μm以下とし、好ましくは11.2μm以下とし、より好ましくは10.6μm以下とすることにより、均一性や緻密性を向上させることができる。フィルターとして使用する際にはスパンボンド不織布層で精度よく粗濾過を行うことができるため、フィルターライフの長い積層不織布とすることができる。また、従来の不織布フィルターと比較して粒径の細かいダストまで粗濾過することができるため、メルトブロー不織布層の含有比率を低くした場合においても高い捕集効率とすることができ、濾過装置運転時のフィルター圧損を低減することができる。
なお、本発明においては、前記のスパンボンド不織布層を構成する繊維の平均単繊維直径(μm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)熱可塑性樹脂(A)を溶融紡糸し、エジェクターで牽引・延伸した後、ネット上に不織繊維ウェブを捕集する。
(2)不織繊維ウェブから小片サンプル(100×100mm)を10枚採取する。
(3)マイクロスコープで500〜1000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本のポリオレフィン繊維の幅を測定する。
(4)測定した100本の値の平均値から平均単繊維直径(μm)を算出する。
一方、本発明に係るメルトブロー不織布を構成する繊維は、その平均単繊維径が0.1〜6μmであることが好ましく、0.4〜4μmであることがより好ましく、0.8〜3μmであることがさらに好ましい。このようにすることにより、メルトブロー不織布層を緻密化し、機械捕集性能を向上させることができ、水分を多量に含むダストを濾過したり、液体中で使用したりする場合にも、微細なダストまで優れた捕集効率で除去することができる。
なお、本発明においては、メルトブロー不織布層を構成する繊維の平均単繊維直径(μm)は、以下の手順によって算出される値を採用するものとする。
(1)熱可塑性樹脂(B)を溶融紡糸し、熱風で細化した後、ネット上に不織繊維ウェブを捕集する。
(2)不織繊維ウェブから小片サンプル(100×100mm)を10枚採取する。
(3)マイクロスコープで500〜2000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の幅を測定する。
(4)測定した100本の値の平均値から平均単繊維直径(μm)を算出する。
また、本発明では、上記の熱可塑性樹脂を組み合わせた複合型繊維としても用いることができる。複合型繊維の複合形態としては、例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型および海島型などの複合形態を挙げることができる。中でも、紡糸性に優れ、鞘成分に低融点成分を配することにより熱接着により繊維同士を均一に接着させることができることから、同心芯鞘型の複合形態とすることが好ましい態様である。
[積層不織布]
本発明の積層不織布は、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを積層させてなることが重要である。このように構成することにより、フィルターとして要求されるレベルの捕集性能と耐久性を両立することができる。
本発明の積層不織布は、少なくとも片面のKES法による表面粗さSMDが1.0〜3.0μmであることが好ましい。KES法による表面粗さSMDを好ましくは1.0μm以上とし、より好ましくは1.3μm以上とし、さらに好ましくは1.6μm以上とすることにより、繊維が過度に緻密化してフィルターとして使用した際に目詰まりしやすくなることを防ぐことができる。
一方、KES法による表面粗さSMDを好ましくは3.0μm以下とし、より好ましくは2.9μm以下とし、さらに好ましくは2.8μm以下とすることにより、不織布表面を適度な滑らかさとし、フィルターとして使用する際には堆積した微細な塵埃の払い落とし性や洗浄性を向上させることができる。またスパンボンド不織布層で精度よく粗濾過を行うことができ、フィルターライフの長い積層不織布とすることができる。
KES法による表面粗さSMDは、平均単繊維径や積層不織布のMFRなどを適切に調整することにより制御することができる。
なお、本発明においてKES法による表面粗さSMDは、以下のように測定される値を採用するものとする。
(1)積層不織布から幅200mm×200mmの試験片を3枚採取する。
(2)試験片を試料台にセットする。
(3)10gfの荷重をかけた表面粗さ測定用接触子(素材:φ0.5mmピアノ線、接触長さ:5mm)で試験片の表面を走査して、表面の凹凸形状の平均偏差を測定する。
(4)上記の測定を、すべての試験片の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)で行い、これらの計6点の平均偏差を平均して小数点以下第二位を四捨五入し、表面粗さSMD(μm)とする。
本発明の積層不織布の少なくとも片面のKES法による摩擦係数MIUは、0.1〜0.5であることが好ましい。摩擦係数MIUを好ましくは0.5以下とし、より好ましくは0.45以下とし、さらに好ましくは0.4以下とすることにより、不織布表面の滑り性を向上させ、フィルターとして使用する際には堆積した微細な塵埃の払い落とし性や洗浄性を向上させることができる。
一方、摩擦係数MIUを好ましくは0.1以上とし、より好ましくは0.15以上とし、さらに好ましくは0.2以上とすることにより、滑剤を過度に添加して紡糸性が悪化したり、糸条をネットに捕集する際に糸条が滑り地合が悪化したりすることを防ぐことができる。KES法による摩擦係数MIUは、平均単繊維径や積層不織布のMFRなどを適切に調整したり、熱可塑性樹脂に滑剤を添加したりすることにより制御することができる。
なお、本発明においてKES法による摩擦係数MIUは、以下のように測定される値を採用するものとする。
(1)積層不織布から幅200mm×200mmの試験片を3枚採取する。
(2)試験片を試料台にセットする。
(3)50gfの荷重をかけた接触摩擦子(素材:φ0.5mmピアノ線(20本並列)、接触面積:1cm)で試験片の表面を走査して、摩擦係数を測定する。
(4)上記の測定を、すべての試験片の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)で行い、これらの計6点の平均偏差を平均して小数点以下第四位を四捨五入し、摩擦係数MIUとする。
本発明の積層不織布のMFRは、80〜850g/10分であることが好ましい。MFRを好ましくは80〜850g/10分とし、より好ましくは120〜600g/10分とし、さらに好ましくは155〜400g/10分とすることにより、スパンボンド不織布層を紡糸する際の繊維の細化挙動が安定し、生産性を高くするために速い紡糸速度で延伸したとしても、安定した紡糸が可能となる。またスパンボンド繊維の細化挙動を安定させることにより糸揺れを抑制し、シート状に捕集する際のムラが発生しにくくなる。さらに、前記のスパンボンド不織布とメルトブロー不織布のMFRの比(MFR/MFR)が小さくなり、スパンボンド不織布にメルトブロー不織布を積層する際に接着が進みやすく、剥離強力等の物性向上効果が得られる。
本発明の積層不織布のMFRは、ASTM D1238 (A法)によって測定される値を採用する。なお、この規格によれば、例えば、ポリプロピレンは荷重:2.16kg、温度:230℃にて、ポリエチレンは荷重:2.16kg、温度:190℃にて測定することが規定されている。またスパンボンド不織布を構成する熱可塑性樹脂とメルトブロー不織布を構成する熱可塑性樹脂が異なるなど、複数種類の樹脂が使用されている場合は、それぞれの熱可塑性樹脂の測定温度のなかで最も高い温度で測定される。
本発明の積層不織布の通気量と目付の積は100〜1500(cc/(cm・秒))・(g/m)であることが重要である。通気量と目付の積を100(cc/(cm・秒))・(g/m)以上とし、好ましくは200(cc/(cm・秒))・(g/m)以上とし、より好ましくは300(cc/(cm・秒))・(g/m)以上とすることにより、フィルターとして使用する際には濾過装置運転時の圧損を低減するとともに、不織布内部に適度な空隙を付与し、フィルターライフを向上させることができる。
一方、通気量と目付の積を1500(cc/(cm・秒))・(g/m)以下とし、好ましくは1400(cc/(cm・秒))・(g/m)以下とし、より好ましくは1300(cc/(cm・秒))・(g/m)以下とすることにより、フィルターとして使用する際に不織布内部までダストが進入して目詰まりが発生し、洗浄性が損なわれることを防ぐことができる。通気量と目付の積は、スパンボンド不織布層を構成する繊維の平均繊維径、メルトブロー不織布層を構成する繊維の平均繊維径や積層不織布における質量比率、メルトブロー不織布層を構成する繊維同士の融着度合い、積層不織布の熱圧着条件(圧着率、温度および線圧)などにより調整することができる。
なお、本発明において、通気量と目付の積は、JIS L1913(2010年)の「6.8.1 フラジール形法」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)積層不織布から幅150mm×150mmの試験片を3枚採取する。
(2)気圧計の圧力125Paで、各試験片を通過する通気量(cc/(cm・秒))を測定する。
(3)上記3点の平均値について、小数点以下第二位を四捨五入して算出する。
(4)算出した通気量(cc/(cm・秒))に、目付(g/m)を乗じる。
本発明の積層不織布は、メルトブロー不織布層の含有量が積層不織布質量に対し、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい態様である。メルトブロー不織布層の含有量を好ましくは1質量%以上とし、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましく5質量%以上とすることにより、機械捕集性能を向上させることができ、水分を多量に含むダストを濾過したり、液体中で使用したりする場合にも、微細なダストまで優れた捕集効率で除去することができる。また、メルトブロー不織布層の含有量を好ましくは30質量%以下とし、より好ましくは20質量%以下とし、さらに好ましくは15質量%以下とすることにより、濾過装置運転時のフィルター圧損が増加することを防ぐことができる。
また、積層不織布におけるスパンボンド不織布層の含有量を、好ましくは70質量%より多く99質量%未満とすることにより、フィルターとしての粗濾過層を多く設け、目詰まりしやすくなることを防ぐことができる。
なお、本発明において、メルトブロー不織布層の含有比率は、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。なお、非圧着部の採取では圧着部のみを打ち抜いて除去しても良い。
(1)積層不織布から幅100mm×100mmの試験片を3枚採取する。
(2)積層不織布の非圧着部のみを採取する。
(3)採取した試験片および、試験片から採取したメルトブロー不織布の質量をそれぞれ測定する。
(4)積層不織布におけるメルトブロー不織布の含有比率を算出する。
本発明の積層不織布は、単位目付あたりの縦方向の引張強度が1.8(N/5cm)/(g/m)以上であることが好ましい。単位目付あたりの縦方向の引張強度を1.8(N/5cm)/(g/m)以上、好ましくは1.9N/5cm/(g/m)以上、さらに好ましくは2.0(N/5cm)/(g/m)以上とすることにより、耐久性に優れたフィルターとすることができる。単位目付あたりの縦方向の引張強度は、スパンボンド不織布層を構成する繊維の紡糸速度や平均繊維径、積層不織布における質量比率、積層不織布の熱圧着条件(圧着率、温度および線圧)などにより調整することができる。
なお、本発明において単位目付あたりの縦方向の引張強度は、JIS L1913(2010年)の6.3.1に準じ、以下のように測定される値を採用するものとする。
(1)積層不織布から幅5cm×30cmの試験片を3枚採取する。
(2)試験片をつかみ間隔20cmで引張試験機にセットする。
(3)引張速度10cm/分で引張試験を行い、サンプルが破断したときの強度を引張強度(N/5cm)とし、3点の平均値を算出する。
(4)算出した引張強度(N/5cm)を目付(g/m)で除し、小数点以下第二位を四捨五入する。
本発明 積層不織布は、単位目付あたりの5%伸長時応力(以下、目付あたりの5%モジュラスと記載することがある。)が0.12〜0.66(N/5cm)/(g/m)であることが好ましく、より好ましくは0.26〜0.60(N/5cm)/(g/m)であり、さらに好ましくは0.40〜0.54(N/5cm)/(g/m)である。このようにすることにより、実用に供しうる強度を保持し、かつ紡糸性が良好で生産性に優れた積層不織布とすることができる。
なお、本発明において、積層不織布の単位目付あたりの5%伸長時応力は、JIS L1913(2010年)の「6.3 引張強さ及び伸び率(ISO法)」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)5cm×30cmの試験片を、不織布の縦方向(不織布の長手方向)と横方向(不織布の幅方向)それぞれについて幅1m当たり3枚採取する。
(2)試験片をつかみ間隔20cmで引張試験機にセットする。
(3)引張速度10cm/分で引張試験を実施し、5%伸長時の応力(5%モジュラス)を測定する。
(4)各試験片で測定した縦方向と横方向の5%モジュラスの平均値を求め、次の式に基づいて単位目付あたりの5%モジュラスを算出し、小数点以下第三位を四捨五入する。
・単位目付あたりの5%モジュラス((N/5cm)/(g/m))=[5%モジュラスの平均値(N/5cm)]/目付(g/m)。
本発明の積層不織布は、単位目付あたりの縦方向の剛軟度が0.04〜0.20mN/(g/m)であることが好ましい。目付あたりの剛軟度を好ましくは0.04mN/(g/m)以上とすることでプリーツ性を確保し、また使用中にプリーツ山潰れや変形が発生することを防ぐことができる。一方、単位目付あたりの縦方向の剛軟度を好ましくは0.20mN/(g/m)以下とすることで、成形性が悪化することを防ぐことができる。
なお、本発明において単位目付あたりの縦方向の剛軟度は、JIS L1913(2010年度版)の「6.7.4 ガーレ法」に準じて測定される値を採用するものとする。
本発明の積層不織布の目付は、10〜150g/mであることが好ましい。目付を好ましくは10g/m以上とし、より好ましくは30g/m以上とし、さらに好ましくは50g/m以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度や剛性の積層不織布を得ることができる。
一方、目付を好ましくは150g/m以下、より好ましくは120g/m以下、さらに好ましくは100g/m以下とすることにより、濾過装置運転時のフィルター圧損を低減し、成形性に優れる積層不織とすることができる。
なお、本発明において、積層不織布の目付は、JIS L1913(2010年)の「6.2 単位面積当たりの質量」に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)積層不織布から20cm×25cmの試験片を3枚採取する。
(2)標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量る。
(3)その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表する。
本発明の積層不織布の厚みは、0.05〜1.0mmであることが好ましい。厚みを好ましくは0.05〜1.0mm、より好ましくは0.1〜0.7mm、さらに好ましくは0.2〜0.5mmとすることにより、フィルター材としての使用に適した剛性を備え、成形性に優れた積層不織布とすることができる。
なお、本発明において、積層不織布の厚さ(mm)は、JIS L1906(2000年)の5.1に準じ、以下の手順によって測定される値を採用するものとする。
(1)直径10mmの加圧子を使用し、荷重10kPaで不織布の幅方向等間隔に1mあたり10点の厚さを0.01mm単位で測定する。
(2)上記10点の平均値の小数点以下第三位を四捨五入する。
本発明の積層不織布の見掛密度は、0.05〜0.4g/cmであることが好ましい。見掛密度を好ましくは0.4g/cm以下とし、より好ましくは0.35g/cm以下とし、さらに好ましくは0.3g/cm以下とすることにより、繊維が密にパッキングして目詰まりしやすくなることを防ぐことができる。
一方、見掛密度を好ましくは0.05g/cm以上とし、より好ましくは0.10g/cm以上とし、さらに好ましくは0.15g/cm以上とすることにより、毛羽立ちや層間剥離の発生を抑え、実用に耐え得る強力や剛性を備えた積層不織布とすることができる。
なお、本発明において、見掛密度(g/cm)は、上記の四捨五入前の目付と厚みから、次の式に基づいて算出し、小数点以下第三位を四捨五入したものとする。
・見掛密度(g/cm)=[目付(g/m)]/[厚さ(mm)]×10−3
本発明の積層不織布は、大気塵中の粒径0.3〜0.5μmの単位目付あたりの機械捕集効率が0.3%/(g/m)以上であることが好ましい。大気塵中の粒径0.3〜0.5μmの単位目付あたりの機械捕集効率を好ましくは0.3%/(g/m)以上とし、より好ましくは0.4%/(g/m)以上とし、さらに好ましくは0.5%/(g/m)以上とすることにより、水分を多量に含むダストを濾過したり、液体中で使用したりする場合にも、高捕集フィルターとして好適に使用することができる。
本発明の積層不織布の大気塵中の粒径0.3〜0.5μmの単位目付あたりの機械捕集効率は、スパンボンド不織布層を構成する繊維の平均繊維径や不織布層表面繊維の分散性、メルトブロー不織布層を構成する繊維の平均繊維径や積層不織布における質量比率、メルトブロー不織布層を構成する繊維同士の融着度合い、積層不織布の見掛密度などにより制御することができる。
[積層不織布の製造方法]
次に、本発明の積層不織布を製造する方法の好ましい態様について、具体的に説明する。
本発明の積層不織布は、スパンボンド(S)法とメルトブロー(M)法により製造される不織布からなる積層不織布である。本発明の積層不織布の製造方法は、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを積層できる方法であれば、いずれの方法にしたがっても行うことができる。例えば、メルトブロー法によって形成される繊維を、スパンボンド法で得られる不織布層の上に直接堆積させてメルトブロー不織布層を形成した後、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを融着させる方法、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを重ね合わせ、加熱加圧により両不織布層を融着させる方法、スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とを、ホットメルト接着剤や溶剤系接着剤等の接着剤によって接着する方法等を採用することができる。生産性の観点からは、スパンボンド不織布層の上に、直接メルトブロー不織布層を形成する方法が好ましい態様である。
また、目的に応じて、スパンボンド不織布層(S)とメルトブロー不織布層(M)を、SM、SMS、SMMS、SSMMS、およびSMSMSと積層した構造とすることができる。
スパンボンド不織布層は、まず、溶融した熱可塑性樹脂を紡糸口金から長繊維として紡出し、これをエジェクターにより圧縮エアで吸引延伸した後、移動するネット上に繊維を捕集して不織繊維ウェブ化する。
紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等、種々の形状のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なくエネルギーコストに優れること、糸条同士の融着や擦過が起こりにくく、糸条の開繊も容易であることから、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましく用いられる。
本発明では、熱可塑性樹脂を押出機において溶融し、計量して紡糸口金へと供給し、長繊維として紡出する。熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂を溶融し紡糸する際の紡糸温度は、200〜270℃であることが好ましく、より好ましくは210〜260℃であり、さらに好ましくは220〜250℃である。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
紡出された長繊維の糸条は、次に冷却される。紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸温度および雰囲気温度等を考慮して、適宜調整して採用することができる。
次に、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。紡糸速度は、3,000〜6,500m/分であることが好ましく、より好ましくは3,500〜6,500m/分であり、さらに好ましくは4,000〜6,500m/分である。紡糸速度を3,000〜6,500m/分とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み、高強度の長繊維を得ることができる。通常では紡糸速度を上げていくと、紡糸性は悪化して糸状を安定して生産することができないが、前述したとおり特定の範囲のMFRを有する熱可塑性系樹脂を用いることにより、意図する繊維を安定して紡糸することができる。
続いて、得られた長繊維を、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブ化する。本発明では、不織繊維ウェブに対して、ネット上でその片面から熱フラットロールを当接して仮接着させることも好ましい態様である。このようにすることにより、ネット上を搬送中に不織繊維ウェブの表層がめくれたり吹き流れたりして地合が悪化することを防ぎ、糸条を捕集してから熱圧着するまでの搬送性を改善することができる。
次に、メルトブロー不織布は、従来公知の方法を採用することができる。まず、熱可塑性樹脂を押出機内で溶融して口金部に供給し、口金から押し出した糸条に熱風を吹きつけ、細化させた後、捕集ネット上に不織繊維ウェブを形成する。メルトブロー法では、複雑な工程を必要とせず、数μmの細繊維を容易に得ることができ、高い捕集効率を達成しやすくすることができる。
続いて、得られたスパンボンド不織繊維ウェブとメルトブロー不織繊維ウェブを積層し、これらを熱接着することによって、意図する積層不織布を得ることができる。
不織繊維ウェブを熱接着する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱接着する方法や、ホーンの超音波振動により熱溶着させる超音波接着などの方法が挙げられる。なかでも、生産性に優れ、部分的な熱接着部で強度を付与し、かつ非接着部で不織布ならではの風合いや肌触りを保持することができることから、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、または片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロールを用いることが好ましい態様である。
熱エンボスロールの表面材質としては、十分な熱圧着効果を得て、かつ片方のエンボスロールの彫刻(凹凸部)が他方のロール表面に転写することを防ぐため、金属製ロールと金属製ロールを対にすることが好ましい態様である。
このような熱エンボスロールによるエンボス接着面積率は、5〜30%であることが好ましい。接着面積を好ましくは5%以上とし、より好ましくは8%以上とし、さらに好ましくは10%以上することにより、積層不織布として実用に供し得る強度を得ることができる。一方、接着面積を好ましくは30%以下とし、より好ましくは25%以下とし、さらに好ましくは20%以下とすることにより、フィルターとしての濾過面積を確保することができる。超音波接着を用いる場合でも、接着面積率は同様の範囲であることが好ましい。
ここでいう接着面積とは、接着部が積層不織布全体に占める割合のことを言う。具体的には、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織布層に当接する部分(接着部)の積層不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織布層に当接する部分(接着部)の積層不織布全体に占める割合のことを言う。また、超音波接着する場合は、超音波加工により熱溶着させる部分(接着部)の積層不織布全体に占める割合のことを言う。
熱エンボスロールや超音波接着による接着部の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。また接着部は、積層不織布の長手方向(搬送方向)と幅方向に、それぞれ一定の間隔で均一に存在していることが好ましい。このようにすることにより、積層不織布の強度のばらつきを低減することができる。
熱接着時の熱エンボスロールの表面温度は、スパンボンド不織布層を構成する繊維の熱可塑性樹脂(A)の融点に対し−50〜−15℃とすることが好ましい態様である。熱ロールの表面温度を前記の熱可塑性樹脂(A)の融点に対し好ましくは−50℃以上とし、より好ましくは−45℃以上とすることにより、適度に熱接着させ実用に供しうる強度の積層不織布を得ることができる。また、熱エンボスロールの表面温度を前記の熱可塑性樹脂(A)の融点に対し好ましくは−15℃以下とし、より好ましくは−20℃以下とすることにより、過度な熱接着を抑制し、加工中や使用中に引裂による破壊が発生することを抑制するとともに、積層不織布が過度に緻密化して、フィルターとしての圧損が増加したり、目詰まりが発生したりしやすくなることを防ぐことができる。
熱接着時の熱エンボスロールの線圧は、50〜500N/cmであることが好ましい。ロールの線圧を好ましくは50N/cm以上とし、より好ましくは100N/cm以上とし、さらに好ましくは150N/cm以上とすることにより、適度に熱接着させ実用に供しうる強度の積層不織布を得ることができる。
一方、熱エンボスロールの線圧を好ましくは500N/cm以下とし、より好ましくは400N/cm以下とし、さらに好ましくは300N/cm以下とすることにより、積層不織布が過度に緻密化して、フィルターとしての圧損が増加したり、目詰まりが発生しやすくなったりすることを防ぐことができる。
また、本発明では、積層不織布の厚みを調整することを目的に、上記の熱エンボスロールによる熱接着の前および/あるいは後に、上下一対のフラットロールからなる熱カレンダーロールにより熱圧着を施すことができる。上下一対のフラットロールとは、ロールの表面に凹凸のない金属製ロールや弾性ロールのことであり、金属製ロールと金属製ロールを対にしたり、金属製ロールと弾性ロールを対にしたりして用いることができる。
また、ここで弾性ロールとは、金属製ロールと比較して弾性を有する材質からなるロールのことである。弾性ロールとしては、ペーパー、コットンおよびアラミドペーパー等のいわゆるペーパーロールや、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、ポリエステル系樹脂および硬質ゴム、およびこれらの混合物からなる樹脂製のロールなどが挙げられる。
次に、実施例に基づき、本発明の積層不織布について具体的に説明する。各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。また各評価に用いる試験片の採取はシートの幅方向等間隔に実施した。
(1)熱可塑性樹脂のMFR:
熱可塑性樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)のMFRは、荷重が2.16kg、温度が230℃の条件で測定した。
(2)積層繊維のMFR(g/10分):
積層不織布のMFRは、荷重が2.16kgで、温度が230℃の条件で測定した。
(3)紡糸速度(m/分):
前記の平均単繊維直径と、使用する熱可塑性樹脂(A)の固体密度から、長さ10,000m当たりの質量を平均単繊維繊度(dtex)として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した。このときホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂の固体密度はすべて0.91g/cmを採用した。続いて、平均単繊維繊度と、各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量(以下、単孔吐出量と略記する。)(g/分)から、次の式に基づいて紡糸速度を算出し、十の位を四捨五入して求めた。
・紡糸速度(m/分)=(10000×[単孔吐出量(g/分)])/[平均単繊維繊度(dtex)]。
(4)積層不織布の通気量と目付の積:
前記の方法に基づいて、通気量の測定を行った。なお、算出した通気量(cc/(cm・秒))を、上記の方法に基づいて求めた目付(g/m)から、次の式より小数点以下第二位を四捨五入して通気量と目付の積を算出した。
・通気量と目付の積=通気量(cc/(cm・秒))×目付(g/m)。
(5)積層不織布のKES法による表面粗さSMD:
測定には、カトーテック社製自動化表面試験機「KES−FB4−AUTO−A」を用いた。表面粗さSMDは積層不織布の両面で測定し、表1にはこれらのうち小さい方の値を記載した。
(6)積層不織布のKES法による摩擦係数MIU:
測定には、カトーテック社製自動化表面試験機「KES−FB4−AUTO−A」を用いた。摩擦係数MIUは積層不織布の両面で測定し、表1にはこれらのうち小さい方の値を記載した。
(7)積層不織布の単位目付あたりの機械捕集性能:
積層不織布から幅15cm×15cmのサンプルを幅方向等間隔に3枚採取し、それぞれのサンプルについて、図1に示す捕集性能測定装置で捕集性能を測定した。捕集性能測定装置は試験サンプルMをセットするサンプルホルダー1の上流側にダスト供給装置5が連結され、下流側に流量計2、流量調整バルブ3、ブロワ4、およびパルスジェット装置6を連結した構成となっている。サンプルホルダー1には圧力計7が接続されており、試験サンプルMの圧力損失が測定できるようになっている。また、サンプルホルダー1にはパーティクルカウンター9を接続し、切替コック8を介して、試験サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数をそれぞれ測定することができる。試験サンプルの評価面積は、0.01mとした。
機械捕集効率の測定にあたっては、各サンプルをイソプロピルアルコールに2分間浸漬したのち、24時間大気中で自然乾燥させて除電処理を施した。続いて、サンプルMをサンプルホルダー1にセットし、ダスト供給装置を開放して大気塵を供給し、風量をフィルター通過速度が3.0m/分となるように流量調整バルブ3を調整した。この条件で、サンプルMの上流側の粒径0.3〜0.5μmのダスト個数D2(3回の合計)および下流側の粒径0.3〜0.5μmのダスト個数D1(3回の合計)をパーティクルカウンター6(リオン社製、KC−01D)でそれぞれ測定し、下記計算式にて求めた数値の小数点以下第二位を四捨五入して機械捕集効率(%)を求めた。
・捕集効率(%)=〔1−(D1/D2)〕×100
続いて、得られた機械捕集効率を下記計算式のとおり目付で除し、小数点以下第三位を四捨五入して単位目付あたりの機械捕集効率(%/(g/m))を求めた。
・単位目付あたりの機械捕集効率(%/(g/m))=捕集効率(%)/目付(g/m
(8)積層不織布のダスト払い落とし試験:
試験片は積層不織布から幅40cm×40cmのサンプルを幅方向等間隔に3枚採取し、図1に示す捕集性能測定装置で積層不織布のダスト払い落とし試験を実施した。試験サンプルの評価面積は、0.09mとした。払い落とし性の試験にあたっては、まずサンプルMをサンプルホルダー1にセットし、風量をフィルター通過速度が2.0m/分となるように流量調整バルブ3を調整して、初期圧損を測定した。続いて、ダスト供給装置5からJIS10種フライアッシュダストを5g/mの一定濃度になるように連続供給し、圧損が1000Paに到達したらパルスジェット装置6から、0.5MPaの圧縮空気を0.05sec噴射し、払い落とし試験を行った。この払い落としを30回繰り返し、30回目の払い落とし直後の残留圧損を測定した。測定した残留圧損を初期圧損で除し、圧損上昇比を求めた。この測定を各サンプルで行い、それぞれの圧損上昇比を平均し、小数点以下第二位を四捨五入した。ダストの払い落とし性が悪いほど、圧縮空気によるダスト洗浄性(除去性)が低下し、圧損上昇比は大きくなる。
[実施例1]
(スパンボンド不織布層(下層))
MFRが200g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を押出機で溶融し、孔径φが0.30mm、孔深度が2mmの矩形口金から、紡糸温度が235℃、単孔吐出量が0.32g/分の条件で紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、これを矩形エジェクターにおいて、エジェクター圧力を0.35MPaとした圧縮エアによって牽引、延伸し、移動するネット上に捕集した。これによって、ポリプロピレン長繊維からなる、目付が45g/mのスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は10.1μmであり、これから換算した紡糸速度は4,400m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。
(メルトブロー不織布層)
次に、MFRが1100g/分のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を押出機で溶融し、孔径φが0.25mmの口金から、紡糸温度が260℃、単孔吐出量が0.10g/分で紡出した。その後、エア温度が290℃、エア圧力が0.10MPaの条件でエアを糸条に噴射し、前記のスパンボンド不織布層上に捕集し、メルトブロー不織布層を形成した。この時、同条件で捕集ネット上に別途採取したメルトブロー不織繊維ウェブの目付は10g/mであり、平均繊維径は1.5μmであった。
(スパンボンド不織布層(上層))
さらに、このメルトブロー不織繊維ウェブの上に、下層のスパンボンド不織繊維ウェブを形成した条件と同じ条件で、ポリプロピレン長繊維を捕集させ、スパンボンド不織繊維ウェブを形成した。これによって、総目付100g/mの、スパンボンド−メルトブロー−スパンボンド積層繊維ウェブを得た。
(積層不織布)
引き続き、得られた積層繊維ウェブを、上ロールに金属製で水玉柄の彫刻がなされた接着面積率16%のエンボスロールを、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の熱エンボスロールを用いて、線圧を300N/cm、熱接着温度を140℃の条件で熱接着し、目付が100g/mの積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例2]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
各層の目付を47.5g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法で、スパンボンド不織繊維ウェブを得た。
(メルトブロー不織布層)
目付を5g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法で、メルトブロー不織繊維ウェブを得た。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例3]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
実施例1と同じ方法で、スパンボンド不織繊維ウェブを得た。
(メルトブロー不織布層)
エア圧力を0.05MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にしてメルトブロー不織繊維ウェブを形成した。形成したメルトブロー不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均繊維径が3.5μmであった。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例4]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
各層の目付を35g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法で、スパンボンド不織繊維ウェブを得た。
(メルトブロー不織布層)
エア圧力を0.05MPaとし、目付を30g/mとしたこと以外は、実施例1と同様にしてメルトブロー不織繊維ウェブを形成した。形成したメルトブロー不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均繊維径が3.5μmであった。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例5]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
ホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂のMFRを800g/10分、融点を163℃とし、単孔吐出量を0.21g/分としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は7.2μmであり、これから換算した紡糸速度は5,700m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。
(メルトブロー不織布層)
実施例1と同様にしてメルトブロー不織繊維ウェブを形成した。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例6]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
ホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂のMFRを300g/10分、融点を163℃とし、単孔吐出量を0.28g/分としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は8.9μmであり、これから換算した紡糸速度は5,000m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。
(メルトブロー不織布層)
実施例1と同様にしてメルトブロー不織繊維ウェブを形成した。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例7]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
ホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂のMFRを100g/10分、融点を163℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は10.2μmであり、これから換算した紡糸速度は4,300m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。
(メルトブロー不織布層)
実施例1と同様にしてメルトブロー不織繊維ウェブを形成した。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例8]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
各層の目付を15.0g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法で、スパンボンド不織繊維ウェブを得た。
(メルトブロー不織布層)
目付を2g/mとしたこと以外は実施例1と同じ方法で、メルトブロー不織繊維ウェブを得た。
(積層不織布)
熱接着温度を135℃としたこと以外は実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[実施例9]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
ホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂に、脂肪酸アミド化合物として、エチレンビスステアリン酸アミドを1.0質量%添加したこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織繊維ウェブを得た。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は10.1μmであり、これから換算した紡糸速度は4,400m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。
(メルトブロー不織布層)
実施例1と同様にしてメルトブロー不織繊維ウェブを形成した。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[比較例1]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
MFRが60g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を用い、エジェクター圧力を0.20MPaとしたこと以外は、実施例1と同じ方法でスパンボンド不織ウェブを形成した。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は11.8μmであり、これから換算した紡糸速度は3,200m/分であった。紡糸性については、1時間の紡糸において糸切れは見られず良好であった。なお、同じ条件でエジェクター圧力を0.35MPaとした場合、糸切れが多発し、紡糸不可であった。
(メルトブロー不織布層)
実施例1と同じ方法でメルトブロー不織繊維ウェブを得た。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
[比較例2]
(スパンボンド不織布層(下層)・(上層))
MFRが35g/10分、融点が163℃のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂を用い、単孔吐出量を0.50g/分とし、エジェクター圧力を0.20MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にしてスパンボンド不織繊維ウェブを形成した。形成したスパンボンド不織繊維ウェブを構成する繊維の特性は、平均単繊維径は14.5μmであり、これから換算した紡糸速度は3,300m/分であった。
(メルトブロー不織布層)
実施例2と同じ方法で、メルトブロー不織布層を得た。
(積層不織布)
実施例1と同様にして、積層不織布を得た。得られた積層不織布について評価した結果を表1に示す。
Figure 2019151962
スパンボンド不織布の平均単繊維径が6.5〜11.9μmであり、メルトブロー不織布の平均単繊維径が0.1〜6μmであり、通気量と目付の積が100〜1500(cc/(cm・秒))・(g/m)である実施例1〜9の積層不織布は、単位目付あたりの引張強度が高く、捕集効率やダスト払い落し性にも優れており、フィルターライフに優れるものであった。さらに、スパンボンド不織布層を構成する繊維に、エチレンビスステアリン酸アミドを添加した実施例9の積層不織布は、摩擦係数が低減され、ダスト払い落し性に優れており、フィルター材として特に好適なものであった。
一方、通気量と目付の積が1500(cc/(cm・秒))・(g/m)よりも大きい比較例1の積層不織布や、スパンボンド不織布の平均単繊維径が11.9μmよりも大きく、かつ通気量と目付の積が1500(cc/(cm・秒))・(g/m)よりも大きい比較例2の積層不織布は、単位目付あたりの引張強度が低く、ダスト払い落とし性にも劣るものであった。
本発明の積層不織布は、実用に耐えうる耐久性や剛性を備え、捕集性能および濾過寿命に優れ、さらには成形性にも優れることから、フィルター材としてとして好適に利用することができる。
本発明の積層不織布、あるいは、フィルター材は、エアフィルター、バグフィルター、液体フィルター等の各種フィルター用途をはじめ、家庭・医療・産業用途向け各種マスク等、幅広い分野に活用することができる。
1:サンプルホルダー
2:流量計
3:流量調節バルブ
4:ブロワ
5:ダスト供給装置
6:パルスジェット装置
7:圧力計
8:切替コック
9:パーティクルカウンター
M:測定サンプル

Claims (9)

  1. スパンボンド不織布層とメルトブロー不織布層とが積層されてなる積層不織布であって、少なくとも片面のスパンボンド不織布の平均単繊維径が6.5〜11.9μmであり、メルトブロー不織布の平均単繊維径が0.1〜6μmであり、通気量と目付の積が100〜1500(cc/(cm・秒))・(g/m)である、積層不織布。
  2. 少なくとも片面のKES法による表面粗さSMDが1.0〜3.0μmである、請求項1記載の積層不織布。
  3. 単位目付あたりの縦方向の引張強度が1.8(N/5cm)/(g/m)以上である、請求項1または2記載の積層不織布。
  4. メルトブロー不織布層の含有量が、積層不織布質量に対し1質量%以上30質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の積層不織布。
  5. メルトブロー不織布がポリオレフィン系樹脂(B)からなる繊維で構成される、請求項1から4のいずれかに記載の積層不織布。
  6. スパンボンド不織布がポリオレフィン系樹脂(A)からなる繊維で構成される、請求項1から5のいずれかに記載の積層不織布。
  7. 積層不織布のメルトフローレートが80〜850g/10分である、請求項1から6のいずれかに記載の積層不織布。
  8. 大気塵中の粒径0.3〜0.5μmの単位目付あたりの機械捕集効率が0.3%/(g/m)以上である、請求項1から7のいずれかに記載の積層不織布。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の積層不織布からなるフィルター材。
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