JP2019151927A - 遮熱コーティング用材料及び物品 - Google Patents
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Abstract
Description
これまで、この遮熱コーティングの形成は、例えば、イットリア安定化ジルコニアを含む遮熱コーティング用材料を使用して行われていた。また、より耐熱性に優れた遮熱コーティングの開発も行われてきた。
M1M2 3O9 (1)
(式中、M1は、希土類元素から選ばれた1種の原子であり、M2は、タンタル原子又は
ニオブ原子である。)
一方、特許文献1には、上記一般式(1)で表される化合物は遮熱コーティングとして使用することができることが記載されているものの、実際に検討されている化合物は、YTa3O9及びLaTa3O9のみである。特許文献1では、一般式(1)におけるM1が他の希土類元素である化合物の耐熱性能については実際には検討されていない。
本発明の遮熱コーティング用材料によれば、低熱伝導性及び耐久性に優れる遮熱コーティング(TBC)を形成することができる。
上記遮熱コーティングは、YTa3O9からなる皮膜とは異なり、温度上昇に伴って熱伝導率が上昇に転じることがない(負の温度依存性を有する)。従って、低熱伝導性に優れ、特に高温領域における低熱伝導性に優れる。
また、上記遮熱コーティングは、常温〜高温領域(例えば、100℃〜1300℃の範囲)における昇温時及び/又は降温時に相変態(相転移)が発生しにくい。そのため、上記遮熱コーティング用材料は、高温領域で昇温及び降温を繰り返すようなヒートサイクル条件下であっても、相変態に起因する変形や破断等が発生しにくく、耐久性に優れる。
本発明の物品は、基体の表面に、直接又は中間層を介して上記遮熱コーティング用材料を用いて形成された皮膜(遮熱コーティング)が積層されている。
上記皮膜は、上述した通り、低熱伝導性及び耐久性に優れる遮熱コーティング(TBC)である。
そのため、上記物品は、低熱伝導性、高温領域における耐久性が求められる高温部品として好適に使用することができる。
YTa3O9からなる遮熱コーティングは、約600℃を超えると温度の上昇に伴って徐々に熱伝導率が増加することになる(正の温度依存性を示すようになる。)。一方、上記物品が備えるYbTa3O9からなる皮膜(遮熱コーティング)は600℃を超えても熱伝導率が増加に転じることはなく、その熱伝導率は、徐々に低下するか、又はほぼ一定値を維持する。
従って、上記物品は、少なくとも600℃の雰囲気に晒されるガスタービン部品又はジェットエンジン部品に使用される場合であっても、低熱伝導性に優れることになる。
本発明の物品は、上記遮熱コーティング用材料を含む皮膜を備えており、低熱伝導性及び耐久性に優れるため、高温部品として好適である。
本発明の実施形態に係る遮熱コーティング用材料は、YbTa3O9で表される化合物を含むことを特徴とする。
YbTa3O9で表される化合物は、カチオン欠損型の欠陥ペロブスカイト型複合酸化物(以下、「複合酸化物」ともいう。)の1つであり、図1に示すような構造を有する。この構造は、A3B3O9で表されるペロブスカイト構造から、a1面で1/3のAイオンが、a2面で全てのAイオンが欠損した構造であり、結晶格子全体として2/3のAイオンが欠損している。
本発明の遮熱コーティング用材料は、YbTa3O9で表される複合酸化物を含むことにより、低熱伝導性に優れ、ヒートサイクル環境下で相変態しない皮膜を提供することができる。
また、上記YbTa3O9で表される複合酸化物は、耐食性、耐酸化性及び耐熱性にも優れる。
上記遮熱コーティング用材料は、JIS R 1611に準じて、レーザーフラッシュ法により測定される熱伝導率(測定温度:100℃〜1300℃)が、1.7W/(m・K)未満である。
また、上記YbTa3O9の熱伝導率は、少なくとも上記測定温度では、温度上昇に伴って低下する負の温度依存性を示す。従って、YbTa3O9は、温度上昇に伴う熱伝導率の挙動がYTa3O9とは異なり、温度上昇に伴って熱伝導率が増加に転じることが無いため、YTa3O9よりも遮熱コーティングの材料として好適である。
YbTa3O9は、特に、ガスタービン部品又はジェットエンジン部品の遮熱コーティングを形成するための材料として好適である。
上記遮熱コーティング用材料は、YbTa3O9で表される複合酸化物を主成分とする。ここで「主成分」とは、全成分の中で最も含有比が高く、かつ全成分に対して40モル%以上含まれる成分をいう。上記主成分は、全成分の中で80モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがより好ましい。
初めに、原子Yb及び原子Taのモル比が1:3となるように配合した、化合物(m1)及び化合物(m2)と、尿素とを含む水溶液又は水分散液(懸濁液)を調製する。化合物(m1)の濃度は、好ましくは0.02〜0.1mol/l、より好ましくは0.02〜0.05mol/lである。化合物(m2)の濃度は、好ましくは0.02〜0.1mol/l、より好ましくは0.02〜0.05mol/lである。尿素の濃度は、好ましくは2〜10mol/l、より好ましくは2〜5mol/lである。
次に、混合液を、還流冷却下、80℃〜95℃の温度で加熱して尿素加水分解反応を行う。反応時間は、通常、10〜20時間である。
その後、反応系に含まれる反応生成物の形態によって、必要に応じて、遠心分離等を行い、反応生成物を回収する。そして、水、アルコール等を用いて洗浄し、乾燥させ、必要に応じて、粉砕することにより、第1前駆化合物からなる粉体を得る。
次に、第1前駆化合物からなる粉体を整粒し、必要に応じて、プレス成形等に供して、板状、塊状等の成形物を作製する。そして、この成形物を、酸素ガスを含む雰囲気下、1200℃〜1500℃の温度で、1〜3時間程度の熱処理(仮焼)を行い、仮焼物を得る。その後、得られた仮焼物を、必要に応じて、粉砕、整粒する。そして、必要に応じて、プレス成形等に供して、板状、塊状等の成形物を作製し、この成形物を、酸素ガスを含む雰囲気下、1400℃〜1700℃の温度で、1〜3時間程度の熱処理を行う。これによって、YbTa3O9で表される複合酸化物を得ることができる。
本発明の実施形態に係る物品は、基体と、上記基体に積層された上記遮熱コーティング用材料を含む皮膜(遮熱コーティング)とを備えることを特徴とする。
図2は、本発明の実施形態に係る物品の一例を示す概略断面図である。
図2に示す物品1は、基体15と、この基体15の表面に積層された遮熱コーティング11とを備えている。
基体15は、金属、合金、セラミックス等の材料からなる部材であり、Ni基超合金、Co基超合金、Fe基超合金等の耐熱材料からなる部材が好ましい。
遮熱コーティング11は、上記遮熱コーティング用材料を電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)、化学蒸着(CVD)、大気圧プラズマ溶射、減圧プラズマ溶射、サスペンション溶射(サスペンションプラズマ溶射、サスペンション高速フレーム溶射等)、高速フレーム溶射、焼結等の方法により形成することができる。このような方法によれば、基体15の表面に安定な遮熱コーティング11を形成することができる。
図3は、本発明の実施形態に係る物品の別の一例を示す概略断面図である。
基体25は、基体15と同様の部材であり、Ni基超合金、Co基超合金、Fe基超合金等の耐熱材料からなることが好ましい。
中間層23は、基体25及び遮熱コーティング21のそれぞれと密着性を有する層である。中間層23の材料は、基体25及び遮熱コーティング21のそれぞれと密着性を有するものであれば良く、基体25及び遮熱コーティング21のそれぞれの材質を考慮して適宜選択すれば良い。
一方、上記遮熱コーティングの厚さが大きいほど、上記性質に優れることは言うまでもないが、上記遮熱コーティングは、YSZからなる公知の遮熱コーティングに比べて、薄い厚さで同程度の上記性質を確保することができる。そのため、従来の物品に比べて軽量化を図ることができ、特に大型の物品においては、大きく重量を減らすことができる。
さらに、本発明の実施形態に係る物品を構成する遮熱コーティングは、セグメント構造を有していても良い。
図4は、本発明の実施形態に係る物品の更に別の一例を構成する遮熱コーティングの一部を拡大した概略断面図である。
図4に示す物品3において、遮熱コーティング31は、基体35側から最外層側(図中、上側)に延びるように立設された、複数の柱状組織(31a〜31h)からなるセグメント構造を有している。
遮熱コーティング31が、上記セグメント構造を有している場合、隣接する柱状組織同士の間には微小な隙間が存在している。そのため、物品3をヒートサイクル条件下で使用した際に基体35に温度変化に応じた膨張・収縮が発生しても、遮熱コーティング31には応力集中が生じにくい。そのため、上記セグメント構造を有する遮熱コーティング31は、ヒートサイクル条件下で特に破損しにくくなっている。
上記物品が航空機用ジェットエンジンにおける動翼である場合には、作動温度をより高温化して燃費の向上を図ることができる。また、上記物品が発電用ガスタービンにおける動翼である場合には、作動温度をより高温化して発電効率の向上を図ることができる。
フッ素樹脂製の反応器に収容した蒸留水649グラムに、純度99.99%以上のY(NO3)3・6H2O粉末(関東化学社製)28グラム(0.065モル)を入れて、室温(25℃)で1時間撹拌し、無色透明の水溶液を得た。
次いで、この水溶液に、尿素491グラム(8モル)を投入し、室温(25℃)で1時間撹拌した。その後、得られた無色透明の水溶液に、純度99.9%以上のTa2O5粉末(レアメタリック社製)43グラム(0.097モル)を投入し、室温(25℃)で7時間撹拌し、懸濁液を得た。
次に、懸濁液を加熱して95℃とし、還流冷却しながら、攪拌下、反応(尿素加水分解反応)させた(反応時間:14時間)。その後、得られた反応液を、25℃、4800rpmで30分間遠心分離し、下層のゲルを回収した。このゲルを、大量の蒸留水に投入し、十分に撹拌したところで、上記と同じ条件で遠心分離し、下層のゲルを回収した。その後、沈殿物を、大気雰囲気中、120℃で14時間加熱し、乾燥粉末とした。
次いで、乾式粉砕物をふるい(100メッシュ)にかけて、微粉末を回収した。そして、この微粉末を、プレス成形(圧力10MPa)に供した。その後、この成形体を大気雰囲気中、1700℃で1時間熱処理した。得られた焼成体を、室温(25℃)で、乳鉢により乾式粉砕し、そのX線回折測定を行ったところ、焼成体は、実質的にYbTa3O9のみからなる正方晶系であることが分かった。また、焼成体を目視観察したところ、1700℃における高温熱処理により、溶融等を伴っていないことを確認した。密度ρは7.99g/cm3であった。
フッ素樹脂製の反応器に収容した蒸留水900グラムに、純度99.99%以上のY(NO3)3・6H2O粉末(関東化学社製)10グラム(0.025モル)を入れて、室温(25℃)で1時間撹拌し、無色透明の水溶液を得た。次いで、この水溶液に、尿素190グラム(3モル)を投入し、室温(25℃)で1時間撹拌した。その後、得られた無色透明の水溶液に、純度99.9%以上のTa2O5粉末(レアメタリック社製)17グラム(0.038モル)を投入し、室温(25℃)で7時間撹拌し、懸濁液を得た。
次に、懸濁液を加熱して95℃とし、還流冷却しながら、攪拌下、反応(尿素加水分解反応)させた(反応時間:15時間)。その後、得られた反応液を、25℃、4800rpmで30分間遠心分離し、下層のゲルを回収した。このゲルを、大量の蒸留水に投入し、十分に撹拌したところで、上記と同じ条件で遠心分離し、下層のゲルを回収した。そして、このゲルを、大量のイソプロピルアルコールに投入し、十分に撹拌したところで、上記と同じ条件で遠心分離し、沈殿物を回収した。
その後、沈殿物を、大気雰囲気中、120℃で24時間加熱し、乾燥粉末とした。次いで、この乾燥粉末をふるい(100メッシュ)にかけて、微粉末を回収した。そして、この微粉末を、プレス成形(圧力5MPa)に供し、円板形状の成形体を作製した。その後、この成形体を、大気雰囲気中、1400℃で1時間熱処理(仮焼)し、仮焼成形体を得た。得られた仮焼成形体を、室温(25℃)で、乳鉢により乾式粉砕し、そのX線回折測定を行ったところ、仮焼物は、YTa7O19を主として含むことが分かった。
次いで、乾式粉砕物をふるい(100メッシュ)にかけて、微粉末を回収した。そして、この微粉末を、プレス成形(圧力25MPa)に供し、更に、冷間等方静水圧加圧(荷重2.5トン)を行って、円板形状の成形体を作製した。その後、この成形体を大気雰囲気中、1650℃で1時間熱処理した。得られた焼成体を、室温(25℃)で、乳鉢により乾式粉砕し、そのX線回折測定を行ったところ、焼成物は、実質的にYTa3O9のみからなる単斜晶系であることが分かった。また、焼成物を目視観察したところ、1650℃における高温熱処理により、溶融等を伴っていないことを確認した。密度ρは6.94g/cm3であった。
(株)東ソー製TZ−4Y粉末(7wt%Y2O3−ZrO2)を、プレス成形(圧力25MPa)に供し、更に、冷間等方静水圧加圧(荷重2.5トン)を行って、円板形状の成形体を作製した。その後、この成形体を大気雰囲気中、1500℃で5時間熱処理した。密度ρは6.05g/cm3であった。
実施例1で作製した焼成物(YbTa3O9)、比較例1で作製した焼成物(YTa3O9)、及び比較例2で作製した焼成物(7wt%Y2O3−ZrO2)のそれぞれについて、下記の方法により、熱伝導率の測定と線膨張率(%)の測定とを行った。また、熱伝導率の測定結果は図5に、線膨張率(%)の測定結果は図6に示した。
更に、上記焼成体を、レーザーフラッシュ法(JIS R1611に準拠)に供して、25℃、100℃、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、及び1300℃における熱伝導率を測定した。
なお、固体の熱伝導率は気孔の影響を受け、気孔を含むと低めの値となる。そのため、下記式(2)のような補正式(参照文献:C. Wan, et al., Acta Mater., 58, 6166‐6172 (2010))
k′/k=1−4/3φ (2)
(式中、k′は供試体の熱伝導率、kは緻密質としての熱伝導率、φは気孔率である。)を用いて熱伝導率の測定値を補正し、補正した熱伝導率を求めた。
リガク社製、熱機械分析装置「TMA8310」(型式名)を用いて、大気中、昇温速度及び降温速度を毎分10℃として、25℃〜1400℃の範囲において、上記焼成体の加熱及び冷却を行い、圧縮荷重法(荷重:98mN)により寸法変化を測定し、線膨張率(%)を算出した。
また、図6に示した通り、YbTa3O9は、YTa3O9とは異なり、昇温時及び/又は降温時に相変態が発生しなかった。このことから、YbTa3O9からなる遮熱コーティングは、相変態に伴う体積変化による遮熱コーティングの変形や剥離、破損等が発生しにくく、耐久性に優れることが明らかとなった。
遮熱コーティングを積層する基体として、縦50mm、横50mm、厚さ5mmのSUS304ステンレス鋼の板材を用意した。
これとは別に、実施例1の手法で作製した粒子径0.3〜2.9μmのYbTa3O9粉末を固形割合が25wt%となるようにエタノールと混ぜたものを溶射材料として用意した。
この溶射材料を用いたサスペンションプラズマ溶射を行い、基体上に厚さ130μmの溶射皮膜を形成し、サンプルとした。得られたサンプルを切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によって観察した。
図7は、サンプルの切断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図7に示すように、本実施例で形成した遮熱コーティングは、基体側から最外層側に延びるように立設された、複数の柱状組織からなるセグメント構造を有していた。
上記セグメント構造を有する遮熱コーティングは、隣接する柱状組織同士の間には微小な隙間が存在しており、残留応力が生じにくい構造となっていた。そのため、基体がヒートサイクル条件下で熱膨張ないし熱収縮したとしても破損が起こりにくくなっている。
11、21、31 遮熱コーティング
23 中間層
15、25、35 基体
31a〜31h 柱状組織
Claims (3)
- YbTa3O9で表される化合物を含む遮熱コーティング用材料。
- 基体と、前記基体に積層された請求項1に記載の遮熱コーティング用材料を含む皮膜とを備える物品。
- ガスタービン部品又はジェットエンジン部品である請求項2に記載の物品。
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