JP2019151689A - ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法及びその用途 - Google Patents

ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】 可塑剤と混練した際に、ゾルの粘度経時変化が少なく、低温加工した際の機械的強度に優れるペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法、及び、コート剤、特に自動車アンダーボディコート、又は自動車用シーラント等に代表されるその用途を提供する。【解決手段】 乳化剤を含む水媒体中でシードミクロ懸濁重合法によりペースト加工用塩化ビニル重合体を製造するに際し、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体100重量部に対し高級アルコール0.1〜3重量部を混合し、均質化処理を行った後に、油溶性開始剤を含有したシードを添加し重合を行うことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明はペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその用途に関するものであり、さらに詳細には、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車シーラント用として有用なペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその用途に関するものである。
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合もある。)は、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより、ペースト塩ビゾルを調製し、該ペースト塩ビゾルを使用し種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋などの様々な成形加工品に用いられている。また、加工温度の低い用途用として、比較的低温でも機械的強度が得られるゲル化溶融性に優れた特性を持つペースト塩ビとして、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂が知られており、さらに、ペースト塩ビゾル調製後から加工までの長期の保存安定性に対する対策として、ゾル粘度の経時変化が少ないペースト塩ビが求められている。
ゾル粘度の経時変化の少ないペースト塩ビを製造する方法として、特定の界面活性剤を使用したシードミクロ懸濁重合によるペースト加工用ポリ塩化ビニル樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
その他に、ペースト塩ビゾルに特定の化合物を配合するポリ塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
特開平06−056915号公報 特開2010−241977号公報
しかし、特許文献1に提案の方法によって得られるペースト塩ビは、ゾル粘度の経時変化に対する厳しい安定性を要求される用途、例えば自動車用アンダーコート、自動車用シーラント等の用途に用いる場合には、市場要求を満足できるものではなかった。
一方、特許文献2に提案の方法において、粘度の経時変化が比較的少ないペースト塩ビゾルを提供することが可能なものの、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の提供を目的としたものではなく、また長期の粘度安定性については検討されていないものであった。
そこで、本発明は、ゾル粘度の経時変化が極めて少なく、低温加工時の機械的強度にも優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法及びその用途を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、シードミクロ懸濁重合の際に、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体と高級アルコールを十分に混合単量体に溶解した後、シードを重合系にて添加し重合することにより、機械的強度に優れ、ゾル粘度の経時変化が極めて少ないペースト塩ビゾルの提供が可能なペースト塩ビを製造可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、乳化剤を含む水媒体中でシードミクロ懸濁重合法によりペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造するに際し、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体100重量部に対し高級アルコール0.1〜3重量部を混合し、均質化処理を行った後に、油溶性開始剤を含有したシードを添加し重合を行うことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法に関するものである。
以下、本発明に関し詳細に説明する。
本発明で用いられる重合法は、シードミクロ懸濁重合法である。シードミクロ懸濁重合法とは、ミクロ懸濁重合法により得られる油溶性重合開始剤を含有する平均粒子径0.3〜0.7μmの塩化ビニル系樹脂粒子を含んだ塩化ビニル系樹脂ラテックス(以下、単にシードと記す。)を得、続いて該シードと塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体を水、乳化剤、必要に応じて緩衝剤及び/又は乳化補助剤を緩やかな攪拌下において、重合を行い、該シードを肥大化させて塩化ビニル系樹脂ラテックスを得る重合方法である。
本発明におけるシードとは、ミクロ懸濁重合法により得られる油溶性重合開始剤を含有する塩化ビニル系樹脂粒子を含んだ塩化ビニル系樹脂ラテックスであり、シードミクロ懸濁重合法において、シード(種子)が起点となって粒子成長が行われる重合の場となるものである。
本発明は、上述したシードミクロ懸濁重合法のシードを肥大化させるプロセスにおいて、高級アルコールを塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体100重量部に対し0.1〜3.0重量部を混合し、均質化処理を行った後に、油溶性重合開始剤を含有したシードを添加し重合を行うものであり、シードを仕込む前に、予め、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体中に高級アルコールを十分に溶解させるために、均質化処理を行うことを特徴するものであり、該均質化により得られるペースト加工用塩化ビニル系樹脂は機械的強度に優れ、ゾル粘度の経時変化が極めて少なくなる。なお、ここでいう高級アルコールの配合量は、混合単量体の全仕込量に対する配合量であり、例えば混合単量体を分割投入する際には、均質化処理の際に3.0重量部を越えていても均質化処理後に投入された単量体をも含めた概念の配合量である。
本発明における均質化処理とは、均質化を行う処理が達成できる方法であればいずれの方法を行ってもよく、例えば塩化ビニル系単量体、水、乳化剤、高級アルコール、その他必要により添加させる重合助剤とを攪拌機付予備攪拌容器、静止型管内混合器、攪拌機付小型混合器などの混合機器または超音波などを用いて予備混合を行った後、一段または二段加圧式高圧ポンプ、コロイドミル、ホモミキサー、振動式攪拌機、ノズルまたはオリフィスよりの高圧噴射、超音波などの公知の機器並びに方法によって行うことができる。
本発明に用いられる高級アルコールとしては、高級アルコールと称する範囲のものであればいずれでもよく、例えば炭素数8以上の高級アルコールを挙げることができ、より詳細には炭素数が8〜20のアルコールを挙げることができる。その具体例としてば、ラウリルアルコール、ミスリチルアルコール、セチルアルコール(セタノールと称する場合もある。)、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレニルアルコール、2−オクチルドデカノール、べへニルアルコール等が挙げられ、中でも、より機械的強度、ゾル粘度の経時変化に効果的なペースト加工用塩化ビニル系樹脂が得られることからラウリルアルコール、ミスリチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等をより好ましい例として挙げることができ、これらは単独または組み合わせて使用することができる。ここで、該高級アルコールの添加量は、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体100重量部に対し0.1〜3.0重量部、好ましくは0.5〜2.5重量部である。高級アルコールの添加量が該混合単量体100重量部に対して0.1重量部未満である場合、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が大きいものとなるため好ましくない。一方、3.0重量部を超える場合、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂とする際の重合が不安定となり、安定して本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることが困難となるため好ましくない。また、メチルアルコール、エチルアルコール等に代表される低級アルコールである場合、該混合単量体との均質化処理を行っても均質化が不十分なものしか得られず、得られるペースト塩ビは、機械的強度、ゾル粘度の経時変化安定性に劣るものとなる。
本発明において、酢酸ビニル単量体と塩化ビニル単量体の混合割合は任意であり、中でも低温加工性に優れる酢酸ビニル残基単位含量5〜15重量%のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量/重量)よりなる混合単量体を用いてなることが好ましく、特に低温加工での機械的強度、ペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が共に極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れるペースト加工用塩化ビニル系樹脂を効率的に製造することが可能となることから、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=92/8〜85/15(重量/重量)よりなることが好ましい。
本発明で用いられる乳化剤としては、一般的なアニオン性乳化剤又はノニオン性乳化剤があげられ、アニオン性乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジへキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテル燐酸エステルナトリウム塩などを挙げることができる。また、ノニオン性乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどを挙げることができる。そしてその中でも、より安定にペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造が可能となることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩又はアルキルベンゼンスルホン酸塩とアルキル硫酸エステル塩との混合物を使用することが好ましい。また、該乳化剤の添加時期としては、いずれでもよく、中でも均質化処理がより効率的なものとなることから均質化処理時に乳化剤が存在していることが好ましく、均質化前又は均質化時に全部添加しても、均質化前又は均質化時に一部を添加し、残りの乳化剤を重合中に断続あるいは連続して添加してもよい。
本発明に使用される油溶性重合開始剤を含んだシードとは、一般的なミクロ懸濁重合法により調製されたシードを用いることができ、その方法としては、例えば、まず、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニル単量体を主体とする混合物である塩化ビニル系単量体、塩化ビニル系単量体に可溶な油溶性重合開始剤、界面活性剤、緩衝剤、高級アルコール,高級脂肪酸,高級脂肪酸エステル,塩素化パラフィンなどの分散助剤、必要に応じて重合度調整剤を加えてプレミックスし、ホモジナイザー等により均質化処理を行い塩化ビニル系単量体油滴の調整を行う。その際のホモジナイザーとしては、例えばコロイドミル、振動攪拌機、二段式高圧ポンプなどを用いることができる。均質化処理を行った後の液を重合器に送り、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、以後所定の転化率に達するまで重合を行うことにより油溶性重合開始剤を含んだシードの調製を行うことができる。その際の重合温度としては、30〜55℃であることが好ましい。
その際の油溶性重合開始剤としては、油溶性重合開始剤の範疇に属するものであればいかなるものでもよく、その中でも10時間半減期温度が30〜70℃の範囲であるジアシルパーオキサイドが好ましく、そのような油溶性重合開始剤としては、例えばイソブチリルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、カプロイルパーオキサイドなどがあげられる。そして、本発明の製造方法に用いるシードには、油溶性重合開始剤をシード中に含有していることが必要であり、その際シード調製時の油溶性重合開始剤の分解量は、全油溶性重合開始剤の5〜50重量%とする事が好ましい。該油溶性重合開始剤の分解速度は反応温度に依存おり、比較的容易に該分解量の調整を行うことが可能となる半減期を有する油溶性重合開始剤を用いることが好ましく、そのような油溶性重合開始剤としては、例えば3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドを挙げることができる。
本発明に用いられるシードを製造する際に使用される塩化ビニル系単量体とは、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニル単量体を主体とする混合物であり、該混合物には塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体が挙げられ、該塩化ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル類等の不飽和カルボン酸エステル類:ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。また、シードを製造する際に使用される乳化剤は、前記にあげた乳化剤を単独あるいは、2種類以上を混合しても用いることができる。
本発明の製造方法における重合温度としては、所望するペースト加工用塩化ビニル系樹脂の重合度により適宜選択すればよい。更に、重合速度を増加するためには、鉄、銅などの金属塩、アスコルビン酸などの還元物質からなるレドックス系物質で賦活することがこのましい。
そして、本発明の製造方法においては、重合の進行により、重合系の圧力が低下した後に反応を停止して、未反応の単量体を除去する。本発明の方法によって得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスは噴霧乾燥のような既知の方法により乾燥しペースト加工用塩化ビニル系樹脂として回収を行うことができる。
本発明の製造方法においては、重合反応により得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスからペースト加工用塩化ビニル系樹脂を回収する方法としては、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂が回収できる限りにおいていかなる方法を用いてもよく、その中でも、特に効率よく該ラテックスから水分を除去しペースト加工用塩化ビニル系樹脂を回収することができることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。この際の噴霧乾燥に使用する乾燥機としては、一般的に使用されているものでよく、例えば「SPRAY DAYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、George godwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種のスプレー乾燥機があげられる。そして、乾燥条件である乾燥温度としては、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂回収時の温度でよく、乾燥機入口温度で80〜200℃、また乾燥機出口温度で40〜70℃、好ましくは45〜65℃がよい。
また、噴霧乾燥により得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、一般的には重合反応により得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスを構成する粒子の凝集体であり、通常平均粒径10〜150μmを有する顆粒状である。そこで、本発明の製造方法において噴霧乾燥によりペースト加工用塩化ビニル系樹脂を回収する場合にその乾燥機出口温度が52℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を粉砕した方がプラスチゾルとする際の可塑剤等への分散性に優れることから好ましい。また、乾燥機出口温度が52℃以下である場合には、顆粒状のままでも粉砕してもどちらでもよい。
そして、本発明により得られるペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、特にペースト塩ビゾルとした際の粘度の経時変化が極めて優れたものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、増粘率が100%未満となるものが好ましい。その際の増粘率の測定方法については後述する。
また、本発明により得られるペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、特に低温加工での機械的強度に優れるものとなり、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れたものとなることから、引張強度が4.0MPa以上であることが好ましい。その際の引張強度の測定方法としては、例えば、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル100重量部、炭酸カルシウム70重量部、ナフテン系炭化水素溶剤15重量部を配合し、ペースト塩ビゾルを調製し、2mm厚に塗布したシートから、JIS3号ダンベル試験片を用い、23℃、50mm/minの条件で測定し、引張強度を求めることができる。
本発明によれば、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの粘度の経時変化が少なく、低温加工時の機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造することができる。
以下に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例より得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂の評価方法を示す。
<増粘率の測定方法>
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部(株式会社ジェイプラス製)、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム((商品名)Viscolite−OS 白石工業株式会社製)70重量部、及びナフテン系炭化水素溶剤((商品名)Exxsol D40 東燃ゼネラル石油株式会社製)15重量部を混練し、ペースト塩ビゾルを得た。得られたペースト塩ビゾルを23℃にて2時間保管した後、B8H型回転粘度計で23℃、20rpm条件にて測定した粘度を粘度Aとし、該ゾルを、更に40℃にて7日間保管した後、B8H型回転粘度計で40℃、20rpm条件にて測定した粘度を粘度Bとした。粘度A及び粘度Bを下記式にて、得られたペースト塩ビゾルの増粘率を求めた。
増粘率(%)=100×(B−A)/A
<引張強度および破断伸びの測定方法>
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部、フタル酸ジイソノニル100重量部(株式会社ジェイプラス製)、脂肪酸塩表面処理炭酸カルシウム((商品名)Viscolite−OS 白石工業株式会社製)70重量部、及びナフテン系炭化水素溶剤((商品名)Exxsol D40 東燃ゼネラル石油株式会社製)15重量部を混練してペースト塩ビゾルを製造した。脱泡処理した前記ペースト塩ビゾルを離型紙で2mm厚に塗布し、140℃×30min分間加熱してペースト塩ビシートを作成した。得られたペースト塩ビシートからJIS3号ダンベルを用いて試験片を作成し、試験片の中央に20mm間隔の標線を入れ、引張り試験装置に取り付け、23℃で50mm/分の速度で引張り、引張強度を測定した。また破断時の荷重及び標線間の伸びを測定し、破断伸びを求めた。
<平均重合度の測定>
JIS−K6721に準拠し求めた。
<酢酸ビニル含量の測定方法>
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂中に含有する酢酸ビニル残基重量%(VAc含量)は、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100mgと臭化カリウム10mgを混合し、すりつぶして成形した測定サンプルと、赤外分光光度計(島津社製、(商品名)FTIR−8100A)を用いて、下記式より算出した。
VAc含量=(3.73×B/A+0.024)×1.04
A:1430cm−1付近のC−H面内変角による吸収ピークトップのAbs.値。
B:1740cm−1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップのAbs.値。
合成例1(開始剤等含有シードの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル6kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて、重合を進めた。45℃における塩化ビニルの飽和蒸気圧より0.2MPa圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収した。得られた開始剤等含有シードラテックスの平均粒子径は0.60μm、固形分濃度は32%であった。
実施例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水325kg、1段目仕込み単量体として塩化ビニル単量体を252kg(混合単量体の全仕込み量に対して70重量%)と酢酸ビニル単量体を40kg(混合単量体の全仕込み量に対して10重量%)、ラウリル硫酸ナトリウムを540ppm(混合単量体100重量部に対して)、セチルアルコールを2kg、ステアリルアルコールを2kg、硫酸銅を5ppm仕込み、20分間ホモジナイザーを用いて循環し、均質化処理を行った後、合成例1で得られた開始剤等含有シードラテックス40kgを加え、この反応混合物の温度を40℃に上げて1段目重合を開始した。重合転化率が75%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体72kg(混合単量体の全仕込み量に対して20重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、重合温度35℃にして2段目重合した。更に、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が88%となったところで、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体36kg(混合単量体の全仕込み量に対して10重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、混合単量体の合計に対して重合転化率が90%となったところで重合を終了した。重合開始してから重合終了までの間、0.2重量%アスコルビン酸水溶液、ラウリル硫酸ナトリウム6000ppm、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:(商品名)アクアロンHS−10)1000ppmを連続的に添加した。未反応単量体を回収して塩化ビニル系樹脂ラテックスとし、スプレードライヤーにて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、酢酸ビニル残基の含有量7.0重量%、平均重合度は1800の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2
セチルアルコールを2kg、ステアリルアルコールを2kgの代わりに、セチルアルコールを4kg、ステアリルアルコールを4kgを用いた以外は、実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、酢酸ビニル残基の含有量7.0重量%、平均重合度は1800の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例3
セチルアルコールを2kg、ステアリルアルコールを2kgの代わりに、ラウリルアルコールを2kg、ミリスチルアルコールを2kgを用いた以外は、実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、酢酸ビニル残基の含有量7.0重量%、平均重合度は1800の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であった。また、得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。
比較例1
高級アルコールであるセチルアルコール、ステアリルアルコールを用いず、ホモジナイザーによる均質化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
得られたペースト塩ビは、酢酸ビニル残基の含有量7.0重量%、平均重合度は1800の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であった。また、得られたペースト塩ビを用いてペースト塩ビゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。得られた塩ビゾルは、増粘率に劣るものであった。
比較例2
セチルアルコールを2kg、ステアリルアルコールを2kgの代わりに、セチルアルコールを10kg、ステアリルアルコールを10kgを用いた以外は、実施例1と同様に行い、製造を試みた。
しかし、重合反応中に反応系が不安定となり正常な塩化ビニル系樹脂ラテックスを得ることはできなかった。
比較例3
ホモジナイザーによる均質化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に行い、製造を試みた。
しかし、重合反応中に反応系が不安定となり正常な塩化ビニル系樹脂ラテックスを得ることはできなかった。
Figure 2019151689
本発明よる方法で製造されたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、可塑剤に分散させて調製したペースト塩ビゾルの粘度の経時変化が少なく、低温加工した際の機械的強度に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。

Claims (5)

  1. 乳化剤を含む水媒体中でシードミクロ懸濁重合法によりペースト加工用塩化ビニル重合体を製造するに際し、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体100重量部に対し高級アルコール0.1〜3重量部を混合し、均質化処理を行った後に、油溶性開始剤を含有したシードを添加し重合を行うことを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  2. 高級アルコールが炭素数8〜20の高級アルコールであることを特徴とする請求項1に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  3. 塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体よりなる混合単量体が、塩化ビニル単量体/酢酸ビニル単量体=94/6〜85/15(重量%)よりなる混合単量体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法により製造されるペースト加工用塩化ビニル系樹脂を含んでなることを特徴とする自動車アンダーボディコート材。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法により製造されるペースト加工用塩化ビニル系樹脂を含む組成物を熱溶融することを特徴とする自動車アンダーボディコートの製造方法。
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