JP2019151043A - シリコーンゴム成形体及びその製造方法 - Google Patents
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本成形体は、シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を備える。薄膜層を設ける方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用すればよいが、例えば、シリコーンゴムシートに塗布して設ける方法や、後述する保護フィルムから転写する転写法により設けることができる。工程の簡便性や保護フィルムを積層した形でのハンドリング性等の観点から、転写法によることが好ましい。
本発明のシリコーンゴムシートは、JIS K6253−3:2012に基づいて測定されるタイプAデュロメータ硬さが1〜50である。硬さが1以上であることにより、本シリコーンゴムシートに、取扱い性及び保護フィルムに対する剥離性を付与することができる。かかる観点から、硬さは5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。一方、硬さが50以下であれば、部品に対する追従性及び密着性を付与することができる。かかる観点から、硬さは40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
シリコーンゴムシートのタイプAデュロメータ硬さを1〜50に調整する方法としては、例えば、放射線の照射量を調整する方法、シリコーンゴムに補強材として配合するシリカ等のフィラーの充填量を調整する方法、原料のシリコーンエラストマー樹脂の種類を適宜選択する方法、具体的には、フェニル基を有する樹脂を採用しフェニル基の含有量を調整する方法等が好ましく挙げられるが、上述したように、放射線照射量を調整する方法が簡便でより好ましい。
薄膜層としては、付加型シリコーン樹脂、縮合型シリコーン樹脂、UV硬化型シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂であって、塗布後、加熱あるいはUV照射等で架橋被膜を形成するものや、前述のシリコーンゴムシート架橋時に同時に架橋被膜を形成するもの等が挙げられる。中でも、前述のシリコーンゴムシートと親和性を有し、また、保護フィルムに対する剥離性を向上させる観点から、アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂を含むことが好ましい。アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂としては、官能基としてアルケニル基及びアルキル基の両方を含むシリコーン樹脂を1種類用いてもよいし、官能基としてアルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)とアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)をそれぞれ別々に含むことも好ましい。本発明においては、薄膜層は、アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)とアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)を両方含むことがより好ましい。
かかる観点から、薄膜層の厚さは、より好ましくは0.015μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
本発明において、保護フィルムは、薄膜層の表面に設けられ、シリコーンゴム成形体を保護する役割を担う。また、シリコーンゴムシートに薄膜層を転写して設ける場合には、転写する前の薄膜層の支持体としての役割も担う。
本成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、以下のような方法を用いることができる。
まず、保護フィルムの表面に薄膜層を形成させる。薄膜層の形成方法としては、シリコーンゴムシート上に薄膜層を形成させる方法と同様に公知の方法を適宜採用することができる。また、保護フィルムと薄膜層との密着性を調整する目的で、保護フィルム表面にコロナ処理等の表面処理を行ってもよいし、保護フィルムと薄膜層との間に下塗り層等の他の層を適宜設けてもよい。
本成形体の用途は特に限定されないが、部品への適度な密着性と追従性を活かして様々な用途に使用することができる。例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の電子機器内のクッション材やパッキン材、液晶ディスプレイやフレームの固定、液晶パネルと保護パネルとの層間充填材、タッチパネル用貼り合わせ材、液晶テレビやモニターのフレーム内クッション材、固定材等に使用できる。
これらの中でも、部品への密着性及び透明性に優れるものは光学用途に好適に使用することができる。
(粘着力)
本成形体は、薄膜層を備えた側の表面の粘着力が、接触圧2.16kgf/cm2、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒、剥離速度10mm/秒で測定したプローブタック強度において50〜180gfである。なお、後述の通り、本発明におけるプローブタック強度とは、厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをプローブに貼り付けて測定を行った際のプローブタック強度をいう。
図2は、プローブタックテスターを用いた粘着力の測定方法を示す。あらかじめ、プローブ(10)に、保護フィルム(1c)の代替となる厚み100μmのPETフィルム(1c)(三菱ケミカル(株)製二軸延伸PET:T−100)を、両面テープ(日東電工(株)製 No.501F)で貼り付けておく。次に、先端にPETフィルム(1c)が貼着されたプローブ(10)を、接触圧2.16kgf/cm2、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒の条件でシリコーンゴム成形体(2)と接触させる。その後、ただちに10mm/秒の速度でプローブを粘着面から垂直方向に引きはがし、引きはがす際の最大荷重をシリコーンゴム成形体の粘着力とした。
本発明においては、シリコーンゴムシートの硬さが1〜50と比較的低硬度であるにもかかわらず、プローブタック強度を50〜180gfの適切な範囲に調整することにより、部品に対する追従性と保護フィルムからの剥離性の相反する2つの特性をバランスよく優れたものとすることができる。
また、薄膜層を形成させるにあたり、薄膜層と未架橋のシリコーンエラストマー樹脂を同時に架橋する際のγ線の照射量を適宜調整することもまた好ましい。粘着力を調整しやすい観点から、γ線の照射量は20kGy以上であることが好ましく、40kGy以上であることがより好ましく、50kGy以上であることがさらに好ましい。照射量の上限は150kGyであることが好ましく、120kGyであることがより好ましく、100kGyであることがさらに好ましい。
本成形体が光学用途に適用される場合、厚み300μmにおける全光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。全光線透過率が85%以上であれば、シートの透明性が十分であるために光学用途に好ましく適用することができる。なお、全光線透過率は、JIS K7361−1:1997に準じて分光光度計を用いて測定することができる。
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K6900:1994)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
さらにまた、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
JIS K6253−3:2012に基づき、タイプAデュロメータ(高分子計器(株)製)を用い、後述の方法で得られたシリコーンゴム成形体のシリコーンゴムシート側から測定した。得られた結果を表1に示す。
ニチバン(株)製 NS PROBE TACK TESTERを用いて、上述の方法に従い測定した。得られた結果を表1に示す。
後述の方法で得られたシリコーンゴム成形体と保護フィルムとの剥離性について、以下の基準により評価した。得られた結果を表1に示す。
○:剥離が軽く、作業に問題のないレベル。
△:剥離がやや重く、作業性は問題のあるレベル。
×:剥離が重く、作業に支障をきたすレベル。
保護フィルム剥離後のシリコーンゴム成形体の薄膜層側を、段差500μmの凹面に押し込むことにより、追従性を以下基準により目視評価した。
○:シリコーンゴム成形体が凹面に追従して段差に押し込まれている。
×:シリコーンゴム成形体が凹面に追従して段差に押し込まれておらず、シワ、隙間がある。
まず、二軸延伸PETフィルム(厚み75μm)の表面に、下記薄膜層の組成物をバーコート法により塗布し、120℃で乾燥、固化して、下記組成の薄膜層(厚み0.1μm)を予め備えた保護フィルムを準備した。
シリコーンゴムシートの原料として、ミラブル型シリコーンエラストマー樹脂(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE−200A)を使用し、直径100mmの2本カレンダに沿って供給された上記保護フィルムの薄膜層間に上記シリコーンエラストマー樹脂を投入し、ロール温度80℃の条件でロールにバンクを形成させ、保護フィルムとシリコーンゴムシートの積層体を作製した。得られた積層体に、吸収線量が50kGyとなるようにγ線を照射し、シリコーンゴムを架橋させることにより保護フィルムとシリコーンゴムシートとの積層体を得た。シリコーンゴムシートの厚みは1000μmであった。得られた積層体から保護フィルムを剥離する際の剥離性と、剥離した後のシリコーンゴムシートと薄膜層の一体成形体について、上記方法で評価した結果を表1に示す。
(薄膜層組成)
硬化型シリコーン樹脂(X−62−5039:信越化学工業(株)製)14質量部
剥離コントロール剤(KS−3800:信越化学工業(株)製)6.0質量部
架橋剤(X−92−185:信越化学工業(株)製)0.4質量部
触媒(PL−5000:信越化学工業(株)製)1.0質量部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1(体積比))で希釈
実施例1において、シリコーンエラストマー樹脂をモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TSE−2913Uに変更した以外は実施例1と同様にして、保護フィルムとシリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後のシリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
実施例1において、薄膜層を有しない保護フィルム(三菱ケミカル(株)製二軸延伸PET T−100、厚み100μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして保護フィルムとシリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後のシリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
実施例1において、シリコーンエラストマー樹脂を、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TES−2571−5Uに変更した以外は実施例1と同様にして、保護フィルムとシリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後のシリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
実施例1において、保護フィルムをダイセルバリューコーティング(株)製 T788(薄膜層としてシリコーン樹脂を含有しないもの)に変更した以外は、実施例1と同様にして、保護フィルムとシリコーンゴム成形体との積層体を得た。得られた積層体から保護フィルムを剥離した後のシリコーンゴム成形体について評価した結果を表1に示す。
片面に薄膜層を備えた実施例1、2のシリコーンゴム成形体は、低硬度ゴムであるにも関わらず保護フィルムに対する剥離性が高く、段差への追従性も良好であった。
一方、薄膜層を備えない比較例1のシリコーンゴム成形体は、プローブタック強度が180gfを超え、追従性は良好であるものの、保護フィルムの剥離が重く作業上支障をきたすものであった。
シリコーンゴムシートの硬さが高い比較例2のシリコーンゴム成形体は、プローブタック強度が180gfを超え保護フィルムの剥離がやや重く、段差への追従性にも劣るものであった。
シリコーン樹脂を有しない薄膜層を備えた比較例3のシリコーンゴム成形体は、追従性は良好であるものの、プローブタック強度が180gfを超え保護フィルムの剥離性がやや重く、作業性が問題のあるレベルであった。
1a シリコーンゴムシート
1b 薄膜層
1c 保護フィルム(PETフィルム)
2 シリコーンゴム成形体
10 プローブ
11 SUS製枠体
12 調整スペーサー
13 サンプル固定錘
Claims (7)
- シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を備えたシリコーンゴム成形体であって、
JIS K6253−3:2012に基づいて測定される該シリコーンゴムシートのタイプAデュロメータ硬さが1〜50であり、かつ、該シリコーンゴム成形体の薄膜層を備えた側の表面の粘着力が、接触圧2.16kgf/cm2、圧着速度10mm/秒、接触時間10秒、剥離速度10mm/秒の条件で測定したプローブタック強度において50〜180gfであることを特徴とするシリコーンゴム成形体。 - 前記薄膜層が、アルケニル基及びアルキル基を有するシリコーン樹脂を含む、請求項1に記載のシリコーンゴム成形体。
- 前記薄膜層が、アルケニル基を有するシリコーン樹脂(a)及びアルキル基を有するシリコーン樹脂(b)を含む、請求項1又は2に記載のシリコーンゴム成形体。
- 前記薄膜層の表面に保護フィルムを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコーンゴム成形体。
- 前記保護フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項4に記載のシリコーンゴム成形体。
- 前記シリコーンゴムシートの少なくとも片面に薄膜層を形成する工程を備え、該薄膜層を形成する工程を、前記保護フィルムに形成された薄膜層を該シリコーンゴムシートに転写することにより行うことを特徴とする、請求項4又は5に記載のシリコーンゴム成形体の製造方法。
- 前記薄膜層を形成する工程後に、前記シリコーンゴム成形体から前記保護フィルムを剥離する工程を備える、請求項6に記載のシリコーンゴム成形体の製造方法。
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