JP2019147869A - コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、それを用いたコンクリート表面被覆部材及びコンクリート表面被覆方法 - Google Patents

コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、それを用いたコンクリート表面被覆部材及びコンクリート表面被覆方法 Download PDF

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【課題】設置の作業が容易で、構造物のコンクリート表面を様々な外的環境から長期間に渡って保護することができ、比重が小さく、断熱性を備えるコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、それを用いたコンクリート表面被覆部材及びコンクリート表面被覆方法を提供する。【解決手段】定形性と可塑性とを有するコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物であって、前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムと、樹脂を含有する外殻を備えた中空のマイクロバルーンとを含有し、構造物のコンクリート表面に貼付けて前記コンクリート表面を被覆するシリコーンゴムシートを備えたコンクリート表面被覆部材の、前記シリコーンゴムシートに用いる、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、それを用いたコンクリート表面被覆部材及びコンクリート表面被覆方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、構造物の表面のコンクリートの保護のために使用されるコンクリート表面被覆部材に用いるシリコーンゴム組成物、その組成物を用いたコンクリート表面被覆部材、及びそれを用いたコンクリート表面被覆方法に関する。
従来、構造物を構成するコンクリートは、経年の老朽化によりひび割れが発生し、そのひび割れに水分等が侵入することで、さらなるコンクリートの劣化を招くことがあった。例えば、鉄筋コンクリートの表面のコンクリートにひび割れが生じると、ひび割れを通じて鉄筋コンクリートに水が浸入し、鉄筋に水が接触し、鉄筋の錆びの原因となることがあった。このようなコンクリートの劣化を防ぐため、コンクリートの表面を被覆する部材を設け、コンクリートの劣化の原因となる環境との接触を防ぎ、コンクリートのひび割れを塞ぎ、加えて、さらなるひび割れを防止する技術が開発されている。
特許文献1には、電気化学的防食工法でコンクリートを脱塩処理した後、表面保護材を塗布する前に、水性エポキシ樹脂やポリマーを混和したポリマーセメントモルタルを下地処理モルタルとして使用してなり、ポリマーセメントモルタルが、水性エポキシ樹脂をセメント100質量部に対して30〜200質量部、ポリマーとしてポリアクリル酸エステルをセメント100質量部に対して0.01〜15質量部配合したものである、コンクリート脱塩処理後の下地処理方法の技術が開示されている。この技術は、エポキシ樹脂等の表面保護材の塗布前のコンクリート表面に下地処理対策を行うことで表面保護材の変質、膨れ、剥がれなどの不具合をなくそうとするものである。
特許文献2には、土木構造物及び建築構造物の表面に貼付して使用される保護用シートであって、保護用シートが粘着剤層からなる土木構造物及び建築構造物の保護用シートの技術が開示されている。この技術は、土木構造物及び建築構造物に発生するひび割れを防止あるいは補修をすることができ、雨水などの漏水を防止できるとともに、粘着剤の持
つ柔軟性や応力緩和性によって、構造部材の耐久性を高めようとするものである。
特許第5868739号公報 特開2005−200958号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、下地処理剤及び表面保護材がともに液状の塗料であるため、コンクリート表面を保護する層の厚みが薄い。そのため、様々な外的環境に対するコンクリートの保護が十分でないことがあった。例えば、下地処理剤及び表面保護材を設けた後に、コンクリートに新たなひび割れが生じた際には、下地処理剤及び表面保護材がコンクリート面に伴ってひび割れることがある。したがって、この技術では一部のひび割れからコンクリートの充分な保護ができないことがあった。また、液状の塗料をコンクリート表面に塗布する際にはスプレー等を用いていたため、施工に時間と手間を要し、作業者によって下地処理剤及び表面保護材の設ける状態(施工の仕上がり)に差が生じることがあった。
特許文献2に記載されている技術では、保護用シートを粘着剤層を介してコンクリート表面に張付けるため、コンクリートを保護する層に厚みを持たせることができ、コンクリートに新たなひび割れが生じても保護用シートによって塞がれた状態を維持することができる。しかしながら、コンクリートのひび割れ又はコンクリート表面と保護用シートとの隙間を介して粘着剤層に水分が接触すると、粘着剤層が劣化し、保護用シートの粘着を保持できないことがあった。そのため、この技術では長期間に渡るコンクリート表面の保護が十分に行えないことがあった。
また、コンクリート表面保護部材は、コンクリートの充分な保護の得られる厚みを持つと共に、できるだけ体積あたりの重量が小さい、すなわち比重が小さいことも望まれている。具体的には、比重が小さいほど、運搬などが容易であり、コンクリート表面を被覆する作業時における作業性も高い。さらに、コンクリート表面への設置後において、比重が小さい方が剥離強度(接着力)に対する重量が小さいためコンクリート表面から脱落しにくい。また、コンクリート表面保護部材は設置した重量の分、コンクリート構造物に重量の負荷を与えるが、コンクリート表面保護部材の比重が小さければ、この負荷が小さい。
これらの利点から、比重の小さいコンクリート表面保護部材が強く望まれている。
加えて、コンクリート表面保護部材は、コンクリートの充分な保護の得られる厚みを持つと共に、高い断熱性を有することも望まれている。具体的には、コンクリートは日光等により高温となりやすい。そのため、コンクリートの表面を覆うコンクリート表面保護部材の断熱性を高めることで、コンクリートの温度の上昇を防ぐことができ、コンクリートの用いられる構造物の居住性等を高めることが望まれている。
本発明は上記のような事情を鑑みてなされたものであり、設置の作業が容易で、構造物のコンクリート表面を保護することができ、比重が小さく、断熱性を備えるコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、それを用いたコンクリート表面被覆部材及びコンクリート表面被覆方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を有する。
[1] 定形性と可塑性とを有するシリコーンゴム組成物であって、前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムと、樹脂を含有する外殻を備えた中空のマイクロバルーンとを含有し、構造物のコンクリート表面に貼付けて前記コンクリート表面を被覆するシリコーンゴムシートを備えたコンクリート表面被覆部材の、前記シリコーンゴムシートに用いる、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[2] 前記マイクロバルーンの含有量は、前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の全体質量あたり0.19〜1.48質量%である、[1]に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[3] 前記マイクロバルーンは、前記樹脂が塩化ビニリデン系、アクリロニトリル系、アクリレート系、アクリロニトリル系樹脂である、[1]または[2]に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[4] 前記マイクロバルーンの平均粒子径が20〜130μmである、[1]から[3]のいずれかに記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[5] 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の硬化前の25℃において、平行板可塑度計による可塑度が100〜200の範囲であり、傾斜式ボールタック試験で、転球装置傾斜角30°で、ボールナンバー3〜7(3/32インチ〜7/32インチ)の範囲で停止する粘着性がある、[1]から[4]のいずれかに記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[6] 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は縮合反応により硬化する、[1]から[5]のいずれかに記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[7] 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、比重が0.78〜0.98である、[1]から[6]のいずれかに記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[8] 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、熱伝導率が0.16〜0.20W/mkである、[1]から[7]のいずれかに記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[9] 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、ゴム硬度がJISA硬度で15〜50Hs、JIS K6251ダンベル形状3号での引張り強さが0.4〜8.0N/mm、JIS K6252切込なしアングル形形状での引裂き強度が1.0〜18N/mmである、[1]から[8]のいずれか1に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[10] 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後においてモルタルとの間の剥離強度が3.0N/cm以上である、[1]から[9]のいずれか1に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
[11] [1]から[10]のいずれか1に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を用いたシリコーンゴムシートを備えた、コンクリート表面被覆部材。
[12] 構造物のコンクリート表面に、[11]に記載のコンクリート表面被覆部材を貼付ける工程を有する、コンクリート表面被覆方法。
[13] 前記コンクリート表面被覆部材を貼付ける工程の前に、前記コンクリート表面を洗浄又は表層部分を除去する表面処理工程をさらに有する、[12]に記載のコンクリート表面被覆方法。
本発明によれば、設置の作業が容易で、構造物のコンクリート表面を保護することができ、比重が小さく、断熱性を備えるコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、それを用いたコンクリート表面被覆部材及びコンクリート表面被覆方法が得られる。
本発明の第1の実施形態に係るコンクリート表面被覆部材を示す断面模式図である。 図1のコンクリート表面被覆部材を用いたコンクリート表面被覆方法を示す断面模式図である。 本発明の実施例に係る剥離強度の測定試験の試験片を説明する断面模式図である。
以下、本発明のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、コンクリート表面被覆部材及びコンクリート表面被覆方法について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[第1の実施形態]
本実施形態のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、図1に例示するように、構造物のコンクリート表面を被覆するためのコンクリート表面被覆部材10が備えるシリコーンゴムシート11に用いる。ここで構造物は土木構造物や建築構造物(建造物)を広く指す。コンクリート表面とは、前記構造物がコンクリートからなる部位(例えば図2に示すコンクリート部位20)を含んでいる場合、その表面部分、屋内及び屋外の外気に触れている部分を広く指す。
本実施形態では、図1に示すように、コンクリート表面被覆部材10は、シリコーンゴムシート11と、フィルム12を含んで概略構成される。
本実施形態のシリコーンゴムシート11は、定形性と可塑性とを有するコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を含む。
定形性とは、外力が加わらない限り形状が一定に保持される性質を指す。例えば、流動性のない状態であること等である。可塑性を有するとは、外力により形状を変化できることを指す。より具体的には、前記外力は指で押す程度の力であればよい。なお、本実施形態では、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は後述するように使用後(設置後)には各種反応により硬化するが、硬化前において定形性と可塑性とを有する。
さらに具体的に、可塑性を有するとは、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物について、硬化前の25℃において、平行板可塑度計によって測定した可塑度が100〜200の範囲であることが好ましい。また、前記可塑度は100〜180の範囲であることがより好ましく、120〜160の範囲であることがさらに好ましく、130〜150の範囲であることが特に好ましい。平行板可塑度計によって測定した可塑度とは本実施形態では特に、JIS K 6249に基づきウイリアムス可塑度計で測定した初期ウイリアムス可塑度を指す。ただし、測定するシリコーンゴム組成物は、2gで球形とした。前記可塑度が100未満である場合には、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が未硬化の状態において定形性を欠き、コンクリート表面被覆部材10が任意の形状を得ることが困難になる場合がある。コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の可塑度が200を超える場合には、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を設置する上で変形させる際に不都合が生じることがある。例えば、コンクリート表面被覆部材10を設置(例えば、構造物に貼着)する際、界面に残留した気泡を取り除くことが困難となる場合がある。さらに、可塑度が200を超えているコンクリート表面被覆部材10をコンクリート表面に設置すると、ひび割れや隙間等にコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を押し込む等の操作の際に、これらの形状にコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が変形して追従せず、コンクリート表面とコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の間に気泡や空隙等が発生する可能性もある。なお、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は可塑性が前記の条件であることで、前記した定形性もより容易に発揮される。
また、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の粘着性は、JISZ 0237の球転法に基づく粘着性の試験、すなわち傾斜式ボールタック試験で、転球装置傾斜角30°で測定したときの、ボールナンバーが3〜7の範囲であることが好ましい。コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の粘着性がこの範囲であることによって、設置する際に構造物等に粘着させて適切に使用できる。粘着性が3以上であると、被着体に対する粘着力がより高まり、シリコーンゴムシート11と被着体の間で位置ずれや剥離が発生することをより抑制しやすくなる。粘着性が7以下であると、粘着性がより適度となりコンクリート表面被覆部材10の使用前の取り扱いがより容易になる。例えば、粘着性が高すぎると、コンクリート表面被覆部材10が後述するフィルム12等を備えている場合に、フィルム12をシリコーンゴムシート11から剥離する際に剥離性が著しく低下し、シリコーンゴムシート11の破損を招く可能性がある。
本実施形態のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴム及びマイクロバルーン13を含有する。
シリコーンゴムとしては、例えば縮合反応により硬化が可能であるものを用いることができる。上記の縮合反応は、硬化前のシリコーン組成物が空気又は水分に接触することによって開始する反応であることが好ましい。このような縮合反応としては、例えばポリオルガノシロキサンの縮合反応を用いることができる。本実施形態では、縮合反応により硬化する樹脂としては、以下のポリオルガノシロキサン、架橋剤、硬化触媒、充填剤、及び接着性賦与成分を含有するものを用いる。
(ポリオルガノシロキサン)
本実施形態でのポリオルガノシロキサンは、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の主剤成分であり、下記化学式(1)又は(2)で表されるジオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
Figure 2019147869
(式中、Rはそれぞれ独立して置換又は非置換の一価炭化水素基、Xはそれぞれ独立して酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基、nは1以上の数である。)
Figure 2019147869
(式中、Yはそれぞれ独立して加水分解性基、Rはそれぞれ独立して置換又は非置換の一価炭化水素基、Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基、nは1以上の数である。)
ここで、上記式(1)及び(2)におけるRは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、若しくはシクロペンチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基、若しくはアリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、若しくはジフェニル基等のアリール基、ベンジル基、若しくはフェニルエチル基等のアラルキル基、又は、これらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフロロプロピル基、2−シアノエチル基、及び3−シアノプロピル基等から選択される、同一又は異種の非置換若しくは置換の好ましくは炭素数1〜12、特に1〜10の一価炭化水素基である。
上記式(1)及び(2)におけるXは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、二価炭化水素基としては−(CH−(mは1〜8)で表されるものが好ましい。これらの中でも酸素原子、−CHCH−がより好ましい。
上記式(1)及び(2)におけるnは1以上の数であるが、以下のように選択されるのが好ましい。すなわち、式(1)及び(2)におけるジオルガノポリシロキサンの粘度は前記nに影響されるが、前記ジオルガノポリシロキサンの25℃における動粘度が100〜1,000,000cs(mm/s)、好ましくは500〜500,000csとなるよう、nの値を選択するのが好ましい。
上記式(2)におけるYは加水分解性基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、若しくはブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、若しくはメチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、又は、イソプロペニルオキシ基、若しくはイソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基等を用いることができる。
このようなジオルガノポリシロキサンは、各種オルガノポリシロキサンの単量体である環状シロキサン若しくは線状オリゴマーを酸若しくは塩基触媒による平衡反応によって得る等の公知の方法により製造することができる。また、ジオルガノポリシロキサンに分岐構造を導入する場合、上記平衡化重合中にSiO3/2単位、及び/又はSiO4/2単位を含むシラン若しくはシロキサンをジオルガノポリシロキサンがゲル化しないレベルで添加するのが常法である。さらに、このジオルガノポリシロキサンは、ストリップや洗浄等により低分子シロキサンを除去しておくことが望ましい。このようなオルガノシロキサンを用いた場合、製造初期及び使用初期の汚れを低減することができる。
(架橋剤)
架橋剤としては、加水分解性の基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するシラン又はその部分加水分解縮合物を用いることができる。加水分解性の基としては、メトキシ基、エトキシ基、若しくはブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、若しくはメチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、若しくはイソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、又は、N−ブチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等のアミノ基、若しくはN−メチルアセトアミド基等のアミド基等があげられる。これらの中でも、アルコキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、又はアルケニルオキシ基が好ましい。架橋剤の配合量は、上記ジオルガノポリシロキサン100部(質量部、以下同様)に対して1〜50部、好ましくは2〜30部、より好ましくは5〜20部を用いることができる。1質量部以上であることで、硬化前には適度な定型性が得られ、硬化後には適度な硬度及び強度が得られる。50質量部以下であることで、硬化前にはある程度の可塑性を得ることができ、硬化後にも適度な弾性が維持されひび割れ等に対する強さが得られる。
(硬化触媒)
コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化触媒を使用することにより硬化を促進することができる。この硬化触媒としては、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、若しくはチタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、若しくはアルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、若しくはリン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、若しくは蓚酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、若しくはジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、又は、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、若しくはテトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等があげられる。これらは、1種に限定されず、2種若しくはそれ以上の混合物を用いても良い。
これら硬化触媒の配合量は、上記ジオルガノポリシロキサン100部に対して0〜20部、好ましくは0.001〜10部、より好ましくは0.01〜5部を用いても良い。0質量部以上であることで、硬化前には適度な定型性が得られ、硬化後には適度な硬度及び強度が得られる。20質量部以下であることで、硬化前にはある程度の可塑性を得ることができ、硬化後にも適度な弾性が維持されひび割れ等に対する強さが得られる。
(マイクロバルーン)
本実施形態のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、マイクロバルーン13を含有する。本実施形態のマイクロバルーン13は、樹脂を含有する外殻を備えた中空の粒子である。
上述のマイクロバルーン13は、さらに具体的には、実質的に樹脂から構成される中空の外殻を備えている。外殻の形状は中空状であれば特に限定されないが、後述するマイクロバルーン13の製造過程において熱膨張で製造されることで、略楕円球(球を含む)の外殻を有するものが好ましく用いられる。外殻内には、空気又は後述のマイクロバルーン13の製造過程で充填された炭化水素気体などの気体を有する。前記外殻を構成する樹脂は、熱可塑性高分子又は熱硬化性高分子等から適宜選択できる。さらに具体的には、塩化ビニリデン系、アクリロニトリル系、アクリレート系又はアクリロニトリル系樹脂であってもよい。これらの樹脂には、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、アクリレート、アクリロニトリル又はこれらの誘導体をモノマー単位として含有する、各種のホモポリマー又はコポリマーが含まれる。こうした樹脂としては、例えば塩化ビニリデン及びアクリロニトリルのモノマー単位が共重合した共重合体等を利用できる。
上述のマイクロバルーン13は、平均粒子径が20〜130μmであるものが好ましく、50〜110μmであるものがより好ましい。この範囲の粒子径のマイクロバルーン13を用いることで、硬化後のコンクリート表面被覆部材の物性を悪化させることなく、好適に比重を下げ、熱伝導率を低くして断熱性を上げることができる。
コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物におけるマイクロバルーン13の含有量は、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の全体質量に対して0.2〜1.5質量%であることが好ましく、0.5〜1.0質量%であることがより好ましい。上記下限以上の含有量とすることで、好適に比重を下げ、熱伝導率を低くして断熱性を上げることができる。上記上限以下の含有量とすることで、硬化後のコンクリート表面被覆部材の引張強さ、引裂強度、及び可塑性等の物性を悪化させることがない。
上記条件を満たすマイクロバルーン13としては、例えば、未膨張のマイクロバルーンを予め膨張させた既膨張マイクロバルーンが好ましい。この未膨張のマイクロバルーンは、前記した熱可塑性高分子又は熱硬化性高分子からなる外殻中に、低沸点の液状炭化水素等の蒸発性成分を内包した樹脂微粒子で、この未膨張のマイクロバルーンを加熱すると、内包されている蒸発性成分が蒸発して前記外殻が膨張する。ここで、既膨張マイクロバルーンとは、この膨張後のマイクロバルーンであり、前記平均粒子径は、膨張後の値である。
(充填剤)
本実施形態のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物には、上記成分以外に補強等の目的で1種以上の充填剤を用いることができる。このような充填剤としては、例えば、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、これらのシリカ表面を有機珪素化合物で疎水化処理したシリカ、石英粉末、カーボンブラック、タルク、ゼオライト若しくはベントナイト等の補強剤、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維若しくは有機繊維等の繊維質充填剤、又は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、若しくはセライト等の塩基性充填剤等が例示される。
これらの充填剤のうち、シリカ、炭酸カルシウム、又はゼオライト等が好ましく、特に表面を疎水化処理した煙霧質シリカ、又は炭酸カルシウムが最適である。充填剤の配合量は、目的や充填剤の種類により選択すれば良いが、前述のベースポリマーのジオルガノポリシロキサン成分100部に対して1〜500部、特に5〜100部が良い。1質量部以上であることで、硬化前には適度な定型性が得られ、硬化後には適度な硬度及び強度が得られる。500質量部以下であることで、硬化前にはある程度の可塑性を得ることができ、硬化後にも適度な弾性が維持されひび割れ等に対する強さが得られる。
(接着性賦与成分)
接着性賦与成分(接着促進剤)としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有オルガノアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有オルガノアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト含有オルガノアルコキシシラン、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物が例示される。本成分の配合量は、通常、前述のジポリオルガノシロキサン成分100質量部に対して0.1〜5質量部である。0.1質量部以上であることで、硬化前には適度な定型性が得られ、硬化後には適度な硬度及び強度が得られる。また、コンクリート表面に対する良好な接着性が容易に得られる。5質量部以下であることで、硬化前にはある程度の可塑性を得ることができ、硬化後にも適度な弾性が維持されひび割れ等に対する強さが得られる。
(硬化後の物性)
本実施形態のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、比重が0.78〜0.98であることが好ましく、0.8〜0.9であることがさらに好ましい。比重が上記下限値以上であることで、シリコーンゴム組成物中のマイクロバルーン13及び空気の含有量が好適であるためコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の可塑度、引張強さや引張強度といった物性の低下を抑制することができる。比重が上記上限値以下であることで、設置前のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が軽量となるために、運搬や設置の際の作業性が向上し、設置後のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が軽量となり、剥離強度に対する重量が小さいためコンクリート表面から脱落しにくく、構造物に与えるコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の重量の負荷が小さい。
コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、熱伝導率が0.16〜0.20W/mkであることが好ましく、0.16〜0.19W/mkであることがさらに好ましい。熱伝導率が上記値であることで、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を構造物等のコンクリートに設置した際に充分な断熱性が得られる。
コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、ゴム硬度がJISA硬度で15〜50Hsであることが好ましい。ゴム硬度が上記下限値以上であることで、コンクリート表面の保護が十分に行える。ゴム硬度が上記上限値以下であることで、設置後に生じたコンクリートのひび割れ等、コンクリート表面の状態が変化した際に追随することができる。
コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、JIS K6251ダンベル形状3号での引張り強さが0.4〜8.0N/mmであることが好ましい。ゴム硬度が上記下限値以上であることで、コンクリート表面の保護が十分に行える。ゴム硬度が上記上限値以下であることで、設置後に生じたコンクリートのひび割れ等、コンクリート表面の状態が変化した際に追随することができる。
コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、JIS K6252切込なしアングル形状での引裂き強度が1.0〜18N/mmであることが好ましい。ゴム硬度が上記下限値以上であることで、コンクリート表面の保護が十分に行える。ゴム硬度が上記上限値以下であることで、設置後に生じたコンクリートのひび割れ等、コンクリート表面の状態が変化した際に追随することができる。
ゴム硬度が上記下限値以上であることで、コンクリート表面の保護が十分に行える。ゴム硬度が上記上限値以下であることで、設置後に生じたコンクリートのひび割れ等、コンクリート表面の状態が変化した際に追随することができる。
前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、モルタルとの間の剥離強度が3.0N/cm以上であることが好ましい。剥離強度は、具体的にはJIS Z 0237(2009)の接着力の試験法によって測定することができ、試験用モルタルであるISOモルタルに、PET樹脂シートで補強されたコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を厚さ2〜3mm幅10mm長さ50〜200mmにし、PET樹脂シートで補強されていない側のシリコーンゴム組成物の表面の少なくとも一部を、ISOモルタルに貼付け、引張試験機で測定される接着力の値を剥離強度とする。コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物がこのように構成されていることで、コンクリート表面被覆部材10がコンクリート表面に設けられた際に充分な強さで密着する。前記剥離強度の上限は特に限定されないが、100N/cm以下であることが好ましい。
(コンクリート表面被覆部材の構成)
本実施形態のコンクリート表面被覆部材10は、前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を用いたシリコーンゴムシート11を備える。以下に述べるコンクリート表面被覆部材10の構成は、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が硬化前の状態であっても、硬化後の状態であってもよい。コンクリートを被覆した状態においては硬化していることが好ましく、コンクリートを被覆する前の使用前の状態においては未硬化であることが好ましい。本実施形態では、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物をシート状とし、シリコーンゴムシート11を形成している。シート状とは、幅方向の寸法が厚み方向よりも大きく、長手方向の寸法が幅方向とほぼ同じ、又は大きい形状である。シート状の各寸法の大きさは限定されないが、このような大きさの目安として、厚み方向が0.2〜10.0mmである。厚みが0.2mm以上であることで、コンクリート表面被覆部材10をコンクリート表面に設けた際に、コンクリート表面を様々な外的環境から充分に保護することができる。シリコーンゴムシート11の幅方向及び長手方向の長さは限定されず、設ける対象となるコンクリート表面の大きさに対して適宜選択してよい。前記長さとしては、例えば、数百〜数千mmから適宜選択できる。
コンクリート表面被覆部材10は、離型用のフィルム12を備えていてもよい。フィルム12は、樹脂等を構成素材とする断面板形の薄い部材で、シリコーンゴムシート11の一面又は両面に剥離可能に貼着される。フィルム12の構成素材としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、又はポリエチレン等のプラスチックフィルムが挙げられる。このフィルム12は、コンクリート表面被覆部材10を保持する役目を果たすが、この他にも、貼着状態でシリコーンゴムシート11にフィルム12の形状(平面等)を付加することによる作業性の向上、塵埃及び黴の付着防止、目地部の損傷防止、表面の平滑性、表面の硬度、自由な着色及び表面加工が可能等、意匠性に優れるという種々の機能も具備する。
(コンクリート表面被覆方法)
次に、本実施形態の封止方法の具体的な工程について説明する。
まず、図2(a)に示す構造物のコンクリート部位20について、コンクリート表面21を洗浄又は表層部分22を除去する表面処理工程を行う。
表面処理工程は、コンクリート表面21を洗浄してもよいし、研磨を行ってよい。具体的には、高圧洗浄機で表面汚れや、風雨での劣化、物理的要因での破損部分等を、ケレン(研磨)機器によって除去操作を行う。図に示した例では、表面処理工程は研磨により表層部分22を除去する工程である。
この工程により、コンクリート表面21に付着した汚れ(例えば、泥、埃、黴又は苔など)を、洗浄によって、又はコンクリート表面21の表層部分22を除去することによって取り除くことで、コンクリート表面21とコンクリート表面被覆部材10の密着性を高めることができる。
ついで、図2(b)に示すように、構造物のコンクリート表面21に、本実施形態のコンクリート表面被覆部材10を貼付ける工程を行う。
本実施形態のコンクリート表面被覆部材10のうち、フィルム12が設けられていないシリコーンゴムシート11の表面の側を、構造物のコンクリート表面21に貼付ける。このとき、コンクリート表面被覆部材10をフィルム12側から軽く押し付ける等によって形状を整えながら設置してもよい。貼付け時のシリコーンゴムシート11に含まれるコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化完了前の状態であるため、貼付けに必要な接着性を有する。また、定形性及び可塑性を有するため、貼付けた後のシート形状が充分に維持される。
必要に応じて、フィルム12側から、コンクリート表面被覆部材10をローラで押圧する等の操作を行うことができる。この操作によって、コンクリート表面の隙間やひび割れ部分を埋めるように形成することもできる。また、コンクリート表面被覆部材10のシリコーンゴムシート11がコンクリート表面の凹凸に入り込むため、コンクリート表面被覆部材10の密着力が高まる。また、必要に応じて、コンクリート表面被覆部材10の表面に対してへらで形状を整える等の操作を行ってもよい。本実施形態のシリコーンゴムシート11は、フィルム12を剥がすとコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の硬化が始まるため、シリコーンゴムシート11の設置を行ってからフィルム12を剥がすのが好ましい。
図2(c)に示すようにフィルム12を剥がした後、コンクリート表面被覆部材10を常温で放置すると、未硬化のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が硬化し、コンクリート表面とシリコーンゴムシート11が密着する。数時間放置することで、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の表面が硬化し、シリコーンゴムシート11がコンクリート表面を保護する効果が得られる。さらに、目安として1週間以上放置することでコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が完全に硬化し、その後長期間に渡ってコンクリート表面が様々な外的環境から十分に保護される。
本実施形態のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、コンクリート表面被覆部材10及びそれを用いたコンクリート表面被覆方法によれば、シリコーンゴムシート11が定形で、あらかじめシート状に賦形してあるため、従来の液状の保護材等に比すると、構造物の隙間部分への設置が容易で、短時間に行うことができる。シリコーンゴムシート11は、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物が硬化するまでは可塑性を有するため形状や設置範囲等を整えることが可能で、形状を整える操作も容易である。そのため、設置時間を短縮することができ、作業が容易で、作業者の個人差が出にくく、一定の仕上がりを得やすい。従来の保護用シート及び粘着剤層を有する保護用シートに比すると、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、粘着剤層よりもコンクリート表面に強く密着し、水分等の外的環境等による劣化が少ない。そのため、コンクリート表面を様々な外的環境から長期間に渡って保護することができるコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物、コンクリート表面被覆部材、及びコンクリート表面被覆方法を提供することができる。さらに、比重が小さいことで、設置前に運搬などが容易であり、コンクリート表面を被覆する作業時における作業性も高い。比重が小さいため、設置後において剥離強度に対する重量が小さいためコンクリート表面から脱落しにくく、コンクリート構造物に対する重量による負荷が小さい。加えて、熱伝導性が低いことで高い断熱性を備え、コンクリートの温度の上昇を防ぐことができ、コンクリートの用いられる構造物の居住性等を高めることができる。
以下に、実施例を示して本実施形態を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
分子鎖両末端に水酸基を持つオルガノポリシロキサンを主成分とするシリコーン生ゴム:KE−76S(信越化学工業社製、商品名、平均重合度8,000)100質量部に、フュームドシリカ:アエロジルR−972(日本アエロジル社製、商品名)と平均粒径15μmの煙霧質シリカを適量、マイクロバルーン:マツモトマイクロスフェアー(登録商標)既膨張のF−80DE(平均粒子径110μm)(松本油脂製薬製、商品名)を、後述する架橋剤添加後にはコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の全体質量に対する含有量となるよう添加し、及び湿潤剤としての両末端に水酸基を持つ重合度10のシリコーンオイル2質量部を添加配合し、シリコーンゴムコンパウンドを得た。
各調合したシリコーンゴムコンパウンドに、架橋剤としてのメチルトリメトキシシラン、テトラブチルチタネート、及びジブチルスズラウレートを架橋に必要な量を適宜添加して2本ロールで十分に混練し、前記シリコーン生ゴムが縮合反応により硬化するコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を配合した。なお、配合時の温度は23℃、湿度は7%であった。
このコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物のシリコーンゴムコンパウンド100質量部に対して、マイクロバルーンの含有量は0.85質量部であった。すなわち、シリコーンゴム組成物の全体質量に対して、マイクロバルーンの含有量は0.8428質量%であった。
(実施例2)
前記マイクロバルーンの含有量を、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物のシリコーンゴムコンパウンド100質量部に対して0.2質量部となるよう添加した他は、実施例1と同様に調整した。すなわち、シリコーンゴム組成物の全体質量に対して、マイクロバルーンの含有量は0.1996質量%であった。
(実施例3)
前記マイクロバルーンの含有量を、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物のシリコーンゴムコンパウンド100質量部に対して1.5質量部となるよう添加した他は、実施例1と同様に調整した。すなわち、シリコーンゴム組成物の全体質量に対して、マイクロバルーンの含有量は1.477質量%であった。
(比較例1)
前記マイクロバルーンの含有量を、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物のシリコーンゴムコンパウンド100質量部に対して1.6質量部となるよう添加した他は、実施例1と同様に調整した。すなわち、シリコーンゴム組成物の全体質量に対して、マイクロバルーンの含有量は1.574質量%であった。
(比較例2)
マイクロバルーンを添加しない(0質量%)他は実施例1と同様に調整し、比較例1のシリコーンゴム組成物とした。
(シリコーンゴムシートとモルタルとの剥離強度の測定)
シリコーンゴムシートとモルタルとの剥離強度の測定は、JIS Z 0237(2009)に基づいて試験を行った。株式会社テストピース社製 ISOモルタル(50mm×50mm×10mm)の表面を、#100の紙やすりで研磨して表面の白層を除去した。このモルタルを水洗い後エアーブローし、表面の水分を除去した。さらに、23℃ 50%の環境下で3日以上乾燥させ、モルタル試験体とした。
一方、PET樹脂シート(145mm×205mm×0.1mm)に、接着用プライマーを塗布し、およそ30分風乾させた。
ついで、各実施例のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を75〜85g計量し、ミキシングローラで厚さ3〜5mm程度に伸ばし、未硬化のシリコーンゴムシートとした。このシリコーンゴムシートを、前記PET樹脂シートのうちプライマーを塗布した側と、145mm×205mm×0.1mmのOPP樹脂(Oriented PolyPropylene)シートとの間で挟んだ。
ついで、このシリコーンゴムシートを、シートの両側から、厚さ2.2mmの金枠をセットした金型で、常温で5分間圧力をかけてプレスした。
金型から取り出した未硬化のシリコーンゴムシート(厚さ2.0mm)を、幅10mm、長さ120mmにカットし、試験体とした。
前記PET樹脂シートは未硬化のシリコーンゴムシートの取り扱いを容易にする支持部材であり、後で取り外すことができる。
この試験体を引張試験機に取り付ける工程について、図3(a)〜(c)に示した。図3(a)に示すように、前記試験体からPET樹脂シートを全て剥がし、シリコーンゴムシート11及びOPP樹脂シート12Aを有する試験体10Aとした。ついで、図3(b)に示すように、試験体10AからOPP樹脂シート12Aを端11Abから30mmだけ剥がした。この剥がした端11Abを含む部位(接着面積:30mm×10mm)を、前記モルタル試験体21Aの研磨表面に対して、一方の端21Abから他方の端21Aaに向かって貼り付けた(モルタル試験体21Aの一部を試験体10Aで被覆した)。なお、モルタル試験体21Aの表面に試験体10Aを一部のみ貼り付けるのは、モルタル試験体21A、及び試験体10Aの貼り付いていない部位をそれぞれ引張試験時のチャックに挟み込む目的で使用するためである。1枚のモルタル試験体21Aにつき、3本の試験体10Aを貼り付けた(n=3)。
このモルタル試験体21Aに貼り付けた試験体10Aの、モルタル試験体21Aに貼り付けた面の逆側の表面に500gの荷重を加え、10分間養生させた。さらに、試験体10Aの、モルタル試験体21Aに貼り付けた側の面を下部にして、平面板に載せ恒温恒湿槽で、温度23℃湿度50%環境下で、7日間養生した。この7日間の養生後には、シリコーンゴムシート11を構成するコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の硬化が完了した。
剥離強度の測定には、ミネベア株式会社製引張圧縮試験機「TGI−500N」を用いた。測定前の上部チャックと下部チャックのチャック間距離は50mmであった。
図3(c)に示すように、前記試験体10AのOPP樹脂シート12Aを全て剥がし、厚さ2mmの試験体10Aのモルタル試験体21Aに貼り付いていない側の端11Aaを180°曲げた(折ってはいない)。
前記下部チャックに、モルタル試験体21Aの、試験体10Aの張付いていない側の端21Aaから20mmを挟んだ。前記上部チャックに、試験体10Aの、前記曲げた側の端11Aaを挟み込んだ。
上部チャックと下部チャックを引張り、上部チャックと下部チャックを引張って離した距離(変位量)ごとに、モルタル試験体21Aと試験体10Aが剥がれるまでの力を測定することによって剥離強度を測定した。引張速度は、50mm/minで、常に測る試験体10Aをチャック中央の部位に設定した。なお、測定はある程度剥離強度が安定する変位量5mm以上、すなわちモルタル試験体21Aから試験体10Aを5mm以上剥がしてからの剥離強度について行った。
(比重、熱伝導率、引張強さ及び引張強度の測定)
実施例1〜3及び比較例1の配合量のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を75〜85g計量し、ミキシングローラで厚さ3〜5mm程度に伸ばした。このシート状のシリコーンゴム組成物の両面を、OPP樹脂シート(145mm×205mm×0.1mm)で挟み、試験体とした。ついで、この試験体を、シートの両側から、厚さ2.2mmの金枠をセットした金型で、常温で5分間圧力をかけてプレスした。
金型から取り出した試験体の片側のOPP樹脂シートを剥がし、試験体が平面板に張付かないようにOPP樹脂シートが残った側を平面板に接するように載せ、恒温恒湿槽で、温度23℃湿度50%環境下で、7日間養生した。この7日間の養生後には、試験体を構成する、シート状のシリコーンゴム組成物の硬化が完了した。試験体の硬化後、残ったOPP樹脂シートを剥がし、厚さ2mmのシリコーンゴムシートを作成した。
この硬化したシリコーンゴムシートに対して、比重計によって比重を測定した。また、迅速熱伝導率計:QTM−500(京都電子工業社製:品名)の「QTMうす膜測定用ソフト」を用いて、熱伝導率を測定した。加えて、JIS K6251ダンベル形状3号で引張強さを、JIS K6252切込なしアングル形形状での引張強度を測定した。これらの測定結果を表1に示した。
Figure 2019147869
実施例1及び2、3のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、マイクロバルーンを添加しない比較例2に比べて比重及び熱伝導率が低下した。なお、比較例1については、金型で成形の際、試験用シートとして評価できる状態にならなかったため、測定できなかった。
前述したように、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物として好適な性質は、比重が0.78〜0.98、熱伝導率が0.16〜0.20W/mk、引張強さが0.4〜8.0N/mm、及び引裂強度が1.0〜18.0N/mmである。表1から推定すると、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の全体質量あたりのマイクロバルーンの含有量0.19〜1.48質量%の範囲ではコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物がこれらの値を満たす。これらの結果より、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の全体質量あたりのマイクロバルーンの含有量0.19〜1.48質量%の範囲ではコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物として好適な性質が得られることが示された。
以上の結果より、本願発明のシリコーンゴム組成物はコンクリート表面被覆部材用に使用可能であり、設置の作業が容易でコンクリート表面の保護が特に好適に行え、比重が小さく、断熱性を備えることが示された。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
本発明によれば、構造物のコンクリート表面を様々な外的環境から長期間に渡って保護することが可能であり、比重が小さく、断熱性を備えるコンクリート表面被覆部材及びそれを用いたコンクリート表面被覆方法が得られる。
10 コンクリート表面被覆部材
10A 試験体
11、11A シリコーンゴムシート
11Aa、11Ab 端
12 フィルム
12A OPP樹脂シート
13 マイクロバルーン
20 コンクリート部位
21 コンクリート表面
21A モルタル試験体
21Aa、21Ab 端
22 表層部分

Claims (13)

  1. 定形性と可塑性とを有するコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物であって、
    前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムと、樹脂を含有する外殻を備えた中空のマイクロバルーンとを含有し、
    構造物のコンクリート表面に貼付けて前記コンクリート表面を被覆するシリコーンゴムシートを備えたコンクリート表面被覆部材の、前記シリコーンゴムシートに用いる、コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  2. 前記マイクロバルーンの含有量は、前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の全体質量あたり0.19〜1.48質量%である、請求項1に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  3. 前記マイクロバルーンは、前記樹脂が塩化ビニリデン系、アクリロニトリル系、アクリレート系又はアクリロニトリル系樹脂である、請求項1又は2に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  4. 前記マイクロバルーンの平均粒子径が20〜130μmである、請求項1から3のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  5. 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物の硬化前の25℃において、平行板可塑度計による可塑度が100〜200の範囲であり、傾斜式ボールタック試験で、転球装置傾斜角30°で、ボールナンバー3〜7(3/32インチ〜7/32インチ)の範囲で停止する粘着性がある、請求項1から4のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  6. 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は縮合反応により硬化する、請求項1から5のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  7. 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、比重が0.78〜0.98である、請求項1から6のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  8. 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、熱伝導率が0.16〜0.20W/mkである、請求項1から7のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  9. 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後において、ゴム硬度がJISA硬度で15〜50Hs、JIS K6251ダンベル形状3号での引張り強さが0.4〜8.0N/mm、JIS K6252切込なしアングル形形状での引裂き強度が1.0〜18N/mmである、請求項1から8のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  10. 前記コンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物は、硬化後においてモルタルとの間の剥離強度が3.0N/cm以上である、請求項1から9のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載のコンクリート表面被覆部材用シリコーンゴム組成物を用いた前記シリコーンゴムシートを備えた、コンクリート表面被覆部材。
  12. 前記構造物の前記コンクリート表面に、請求項11に記載のコンクリート表面被覆部材を貼付ける工程を有する、コンクリート表面被覆方法。
  13. 前記コンクリート表面被覆部材を貼付ける工程の前に、前記コンクリート表面を洗浄又は表層部分を除去する表面処理工程をさらに有する、請求項12に記載のコンクリート表面被覆方法。
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