JP2019147864A - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
ガスエンジン油は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の液体燃料を使用するエンジンと比べて、劣化が促進され易い。
そのため、高温で、高濃度のNOxの環境下での長期間使用に耐え得るような長寿命化されたガスエンジン油が求められており、様々なガスエンジン油が提案されている。
また、特許文献2には、鉱油系潤滑油等の基材に対して、所定の過塩基性硫化アルキル土類金属フォネートと、ビスタイプ高分子量アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛とを所定の割合で含有してなるガスエンジン油が開示されている。
特許文献1及び2に記載のガスエンジン油は、ビスタイプ高分子量アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体を含有しているが、当該ガスエンジン油を高出力化されたガスエンジンに用いた場合、寿命の低下の抑制効果が不十分であり、ガスエンジン油の長寿命化が求められている。
[1]基油(A)、
ジチオリン酸亜鉛(B)、及び
非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)
を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B)の亜鉛原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400質量ppm以上であり、
成分(C1)に由来する窒素原子と成分(B)に由来する亜鉛原子との含有量比〔N/Zn〕が、0.50以上である、
ガスエンジンに用いられる、潤滑油組成物。
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)、ジチオリン酸亜鉛(B)、及び非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)を含有し、ガスエンジンに用いられるものである。
その上で、本発明の潤滑油組成物は、成分(B)の亜鉛原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400質量ppm以上であり、成分(C1)に由来する窒素原子と成分(B)に由来する亜鉛原子との含有量比〔N/Zn〕が、0.50以上となるように調製したものである。
これは、高出力化されたガスエンジンによって、エンジン内の温度がより高温になること、及び、エンジン内に漏れ出すブローバイガス中のNOx濃度が100〜500体積ppm程まで高くなることで、ガスエンジン油中に含まれるジチオリン酸亜鉛の熱・酸分解が促進されてしまうことに起因すると考えられる。
その結果、ジチオリン酸亜鉛を配合することによる機能(酸化安定性、耐摩耗性等)が使用と共に低下し、ガスエンジン油の寿命が低下してしまうと推測される。
なお、特許文献1及び2に記載されたように、ビスタイプ高分子量アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体を配合しても、寿命の低下の抑制効果は未だ不十分であり、高出力化されたガスエンジンに用いた場合においても、長寿命化されたガスエンジン油が求められている。
それは、所定量以上のジチオリン酸亜鉛(B)に対して、ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)が相互作用することで、NOxによるジチオリン酸亜鉛(B)の分解が抑制されるものと推測される。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、高温であり、NOx濃度が100〜500体積ppm程の高い環境下で使用しても劣化を抑制し、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持し得、長寿命化することが可能となる。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは75〜100質量%、より更に好ましくは80〜100質量%である。
以下、本発明の潤滑油組成物に含まれる各成分について説明する。
本発明の潤滑油組成物に含まれる基油(A)としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上であればよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油(A)の含有量としては、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
これらの鉱油は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる鉱油としては、API(米国石油協会)の基油カテゴリーのグループ2又は3に分類される鉱油が好ましく、グループ3の分類される鉱油がより好ましい。
これらの合成油は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の一態様において、2種以上の基油を組み合わせた混合基油を用いる場合、当該混合基油の動粘度及び粘度指数が上記範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書において、NOACK値は、JPI−5S−41−2004に準拠して測定された値を意味する。
また、本発明の一態様において、2種以上の基油を組み合わせた混合基油を用いる場合、当該混合基油のNOACK値が上記範囲内であることが好ましい。
・要件(I):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の条件下で計測した、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|(以下、単に「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」ともいう)が、10Pa・s/℃以下である。
・要件(II):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1%の条件下で計測した、−35℃における複素粘度η*(以下、単に「−35℃における複素粘度η*」ともいう)が150Pa・s以下である。
そして、鉱油(A1)としては、上記要件(I)及び(II)を共に満たすことが好ましい。
また、当該混合鉱油に含まれる「2種以上の鉱油」のそれぞれが上記要件(I)、(II)を満たすものであれば、これらの鉱油を組み合わせた当該混合基油も、上記要件(I)、(II)を満たすとみなすこともできる。
・計算式(f1):複素粘度の温度勾配Δ|η*|=|([−25℃における複素粘度η*]−[−10℃における複素粘度η*])/(−25−(−10))|
なお、上記要件(I)で規定の「歪み量」は、0.1〜100%の範囲で測定温度に応じて適宜設定される測定条件パラメータであり、例えば、後述の実施例では、−10℃での測定では「2.1%」、−25℃での測定では「0.4%」と設定した。
それに対して、要件(I)で規定する「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」は、鉱油中に含まれるワックス分の析出速度を加味し、ワックス分の析出に伴う摩擦係数の変化を考慮した、鉱油の低温粘度特性をより示す正確に評価し得る指標である。
また、要件(I)を満たす鉱油を用いることで、清浄性の向上にも寄与する。
また、鉱油(A1)の要件(I)で規定する複素粘度の温度勾配Δ|η*|は、下限値については特に制限は無いが、好ましくは0.001Pa・s/℃以上、より好ましくは0.01Pa・s/℃以上である。
−35℃における複素粘度η*が低い鉱油ほど、直鎖パラフィン分(ノルマルパラフィン分)が低い傾向にある。直鎖パラフィン分が低い鉱油を用いることで、低温粘度特性が良好である潤滑油組成物となり得る。
また、直鎖パラフィン分が低い鉱油を用いることで、潤滑油組成物の長寿命化にも寄与する。
また、鉱油(A1)の−35℃における複素粘度η*は、下限値については特に制限は無いが、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上、更に好ましくは1.0Pa・s以上であり、特に、NOACKを低く調整し、低蒸発性の潤滑油組成物とする観点から、より好ましくは3.5Pa・s以上、特に好ましくは4.0Pa・s以上である。
鉱油(A1)の芳香族分(%CA)としては、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.5未満、更に好ましくは0.1以下である。
なお、本明細書において、鉱油(A1)のナフテン分(%CN)及び芳香族分(%CA)は、ASTM D−3238環分析(n−d−M法)により測定した値を意味する。
少なくとも要件(I)又は(II)を満たす鉱油(A1)は、以下に示す事項を適宜考慮することで、容易に調製することができる。なお、以下の事項は、調製法の一例であって、これら以外の事項を考慮することによっても調製可能である。
鉱油(A1)の質量平均分子量(Mw)は、上記要件(I)及び(II)で規定の性状に影響を及ぼす物性である。
鉱油(A1)の質量平均分子量(Mw)は、上記要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)とする観点から、好ましくは550以下であり、また、好ましくは300以上である。
鉱油(A1)の原料である原料油としては、石油由来のワックス(スラックワックス等)を含む原料油、並びに、石油由来のワックス及びボトム油を含む原料油であることが好ましい。また、溶剤脱ろう油を含む原料油を用いてもよい。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる鉱油(A1)は、石油由来のワックスを含む原料油を精製して得られたものであることが好ましい。
なお、上記原料油中のボトム油の割合が多くなると、要件(I)で規定する複素粘度の温度勾配Δ|η*|の値、及び、要件(II)で規定する−35℃における複素粘度η*の値が、上昇する傾向にある。
一方、ボトム油にはナフテン分が多く含まれるため、ボトム油を含む原料油を用いることで、ナフテン分(%CN)が高い鉱油を調製することができる。鉱油中のナフテン分は、潤滑油組成物の高温清浄性の向上に寄与する。
なお、要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)に調製する観点から、溶剤脱ろうにおける低温環境下の具体的な温度としては、一般的な溶剤脱ろうでの温度よりも低いことが好ましく、具体的には、−25℃以下であることが好ましく、−30℃以下であることがより好ましい。
上記の原料油に対して、精製処理を施すことが好ましい。
精製処理としては、水素化異性化脱ろう処理及び水素化処理の少なくとも一方を含むことが好ましい。なお、使用する原料油の種類に応じて、精製処理の種類や精製条件は適宜設定されることが好ましい。
・石油由来のワックスとボトム油とを上述の含有量比で含む原料油(α)を用いる場合、当該原料油(α)に対して、水素化異性化脱ろう処理及び水素化処理の双方を含む精製処理を行うことが好ましい。
・溶剤脱ろう油を含む原料油(β)を用いる場合、当該原料油(β)に対して、水素化異性化脱ろう処理を行わず、水素化処理を含む精製処理を行うことが好ましい。
水素化異性化脱ろう処理によって、芳香族分、硫黄分、及び窒素分を除去し、これらの含有量の低減を図ることができる。
水素化異性化脱ろう処理は、ワックス中の直鎖パラフィンを分岐鎖のイソパラフィンへとすることで、要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)を調製し易くなる。
本発明の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)(B)を含有する。
そして、本発明の潤滑油組成物において、成分(B)の亜鉛原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、400質量ppm以上である。
当該含有量が400質量ppm未満であると、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持することが難しく、成分(C1)を含有することによる長寿命化の効果も不十分となる。
また、良好な摩擦低減効果を発揮し得る潤滑油組成物とする観点から、成分(B)の亜鉛原子換算での含有量は、好ましくは1500質量ppm以下、より好ましくは1300質量ppm以下、更に好ましくは1100質量ppm以下である。
なお、ジチオリン酸亜鉛(B)は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
Rb1〜Rb4として選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜16、更に好ましくは3〜12、より更に好ましくは3〜10である。
Rb1〜Rb4として選択し得る炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、Rb1〜Rb4としては、アルキル基であることが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)を含有する。
上述のとおり、成分(C1)を含有することで、成分(B)と成分(C1)との相互作用によって、高温や高濃度のNOXによる成分(B)の劣化が抑制され、長寿命化した潤滑油組成物とすることができる。
成分(C1)及び(C2)以外の無灰系分散剤として、ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)を含有してもよい。
本発明の一態様で用いる非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)としては、下記一般式(c−1)で表される化合物が好ましい。
RBは、それぞれ独立に、炭素数2〜5のアルキレン基である。
x1は1〜10の整数であり、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは3又は4である。
本発明の一態様で用いる非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド(C2)としては、下記一般式(c−2)で表される化合物が好ましい。
RB1及びRB2は、それぞれ独立に、炭素数2〜5のアルキレン基である。
x2は0〜10の整数であり、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(C)として、さらにホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)を含有してもよい。
ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)としては、前記一般式(c−1)又は(c−2)で表される化合物のホウ素変性物が挙げられる。
そのため、成分(C3)の含有量は極力少ないほど好ましい。
また、本発明の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、さらに一般的に用いられる、成分(B)及び(C)以外の各種添加剤を含有してもよい。
このような添加剤としては、例えば、流動点降下剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、極圧剤、消泡剤、摩擦調整剤、防錆剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
なお、当該添加剤として、API/ILSAC SN/GF−5規格等に適合した、複数の添加剤を含有する市販品の添加剤パッケージを用いてもよい。
また、上記の添加剤としての機能を複数有する化合物(例えば、耐摩耗剤及び極圧剤としての機能を有する化合物)を用いてもよい。
さらに、これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの粘度指数向上剤の質量平均分子量(Mw)としては、通常500〜1,000,000、好ましくは5,000〜800,000、より好ましくは10,000〜600,000であるが、重合体の種類に応じて適宜設定される。
これらの中でも、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤から選ばれる1種以上が好ましく、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を併用することがより好ましい。
アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を併用する場合、アミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との含有量比〔アミン/フェノール〕としては、質量比で、好ましくは1/4〜4/1、より好ましくは1/3〜3/1、更に好ましくは1/2〜2/1である。
金属系清浄剤に含まれる金属原子としては、高温での清浄性の向上の観点から、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
つまり、カルシウムサリシレート、カルシウムフェネート、及びカルシウムスルホネートから選ばれる1種以上であることが好ましい。
金属系清浄剤の全塩基価としては、好ましくは0〜600mgKOH/gである。
なお、本発明の一態様において、金属系清浄剤が塩基性塩又は過塩基性塩である場合には、当該金属系清浄剤の全塩基価としては、好ましくは10〜600mgKOH/g、より好ましくは20〜500mgKOH/gである。
なお、本明細書において、「塩基価」とは、JIS K2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
成分(B)以外の耐摩耗剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
成分(B)以外の耐摩耗剤の含有量は、成分(B)の全量100質量部に対して、好ましくは20質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは5質量部未満、より更に好ましくは1質量部未満である。
本発明の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限は無いが、上述の基油(A)に、成分(B)及び(C)、並びに、上述の各種添加剤を配合する工程を有する方法が挙げられる。
なお、当該工程において、成分(A)〜(C)及び各種添加剤の好適な態様は、上述のとおりである。
基油(A)に、成分(B)及び(C)、並びに、各種添加剤を配合後、公知の方法により、撹拌して基油中に潤滑油用添加剤を均一に分散させることが好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度としては、好ましくは4.0〜15.0mm2/s、より好ましくは5.0〜12.5mm2/s、更に好ましくは6.0〜11.0mm2/s、より更に好ましくは7.0〜10.5mm2/sである。
なお、本明細書において、塩基価は、JIS K2501:2003に準拠して、電位差滴定法(塩基価・塩酸法)により測定された値を意味する。
なお、ホットチューブ試験の具体的な条件は、後述の実施例に記載のとおりである。
本発明の潤滑油組成物は、高温であり、NOx濃度が100〜500体積ppm程の高い環境下で使用しても劣化を抑制し、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持し得、長寿命化することが可能である。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、ガスエンジンに好適に使用し得、特に、ガスヒートポンプに用いられることが好ましい。
ガスエンジンとしては、家庭用、病院用、学校用、民間施設用、業務用、産業用等のコジェネレーションシステム、ガスヒートポンプシステム等に組み込まれているものが挙げられる。
[1]上述の本発明の潤滑油組成物を用いた、ガスエンジン。
[2]上述の本発明の潤滑油組成物をガスエンジンに用いる、潤滑油組成物の使用方法。
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)NOACK値
250℃、1時間の条件にて、JPI−5S−41−2004に準拠して測定した。
(3)−35℃、−25℃、及び−10℃における複素粘度η*
Anton Paar社製レオメータ「Physica MCR 301」を用いて、以下の手順で測定した。
まず、−35℃、−25℃、及び−10℃のいずれかの測定温度に調整したコーンプレート(直径50mm、傾斜角1°)に、測定対象の試料油を挿入し、同じ温度で10分間保持した。なお、この際、挿入した溶液に歪みを与えないように留意した。
そして、所定の測定温度にて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の範囲で測定温度に応じて適宜設定した値の条件下にて、振動モードで、各測定温度における複素粘度η*を測定した。なお、上記の「歪み量」は、−35℃での測定では「0.1%」とし、−10℃での測定では「2.1%」とし、−25℃での測定では「0.4%」とした。
そして、−25℃及び−10℃における複素粘度η*の値から、前記計算式(f1)から、「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」を算出した。
JIS K2609:1998に準拠して測定した。
(5)亜鉛原子及びホウ素原子の含有量
JPI−5S−38−92に準拠して測定した。
(6)塩基価(塩酸法)
JIS K2501:2003に準拠して、電位差滴定法(塩基価・塩酸法)により測定した。
下記に示す基油及び各種添加剤を、表1に示す配合量にて添加して、潤滑油組成物をそれぞれ調製した。使用した基油及び各種添加剤の詳細は以下のとおりである。
・基油(1):
スラックワックスと、重質燃料油を水素化分解して得られたボトム油とを含む原料油(スラックワックス/ボトム油=90/10(質量比))を、水素化異性化脱ろう処理を施した後に、水素化仕上げ処理を施し得られた鉱油。
100℃動粘度=4.2mm2/s、粘度指数=126、NOACK値=11.8質量%、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|=0.03Pa・s/℃、−35℃における複素粘度η*=4.4Pa・s、%CA=0.0、%CN=16.7。
スラックワックスと、重質燃料油を水素化分解して得られたボトム油を含む原料油(スラックワックス/ボトム油=95/5(質量比))を、水素化異性化脱ろう処理を施した後に、水素化仕上げ処理を施し得られた鉱油。
100℃動粘度=7.7mm2/s、粘度指数=140、NOACK値=2.2質量%、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|=0.2Pa・s/℃、−35℃における複素粘度η*=25.8Pa・s、%CA=0.0、%CN=6.5。
スラックワックスと、重質燃料油を水素化分解して得られたボトム油を含む原料油を、水素化異性化脱ろう処理を施した後に、水素化仕上げ処理を施し得られた鉱油。
100℃動粘度=4.2mm2/s、粘度指数=122、NOACK値=14.3質量%、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|=11.0Pa・s/℃、−35℃における複素粘度η*=15929.9Pa・s、%CA=0.1、%CN=21.6。
API基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油。
100℃動粘度=10.9mm2/s、粘度指数=107、NOACK値=3.3質量%、%CA=0.0、%CN=28.0。
・ZnDTP:前記一般式(b−1)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛、上述の成分(B)に相当する。亜鉛原子の含有量=9.0質量%。
・非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド:前記一般式(c−1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド、上述の成分(C1)に相当する。窒素原子の含有量=2.1質量%。
・非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド:前記一般式(c−2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミド、上述の成分(C2)に相当する。窒素原子の含有量=1.2質量%。
・ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド:前記一般式(c−1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミドのホウ素化物、上述の成分(C3)に相当する。窒素原子の含有量=1.8質量%、ホウ素原子の含有量=1.9質量%。
・酸化防止剤(1):アミン系酸化防止剤。
・酸化防止剤(2):フェノール系酸化防止剤。
・金属系清浄剤:カルシウムサリシレート。
・粘度指数向上剤:オレフィン系共重合体
・混合添加剤:流動点降下剤、分散剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、消泡剤を含む混合添加剤。
[NO2−ISOT寿命試験]
空気中にNO2を2体積%含む混合ガスの流量を50mL/minとし、空気の流量を150mL/minとして混合し、NO2濃度が5000体積ppmになるよう調整したガスを吹き込み、油量を320mL、油温を140℃、回転数を400rpmにした以外は、JIS K2514−1:2013に準拠したISOT試験を行った。試料油の塩基価が0.5mgKOH/gになった時点で試験を終了し、当該時間を測定した。
JPI−5S−55−99に基づいて行った。
具体的には、300℃の温度に保たれた内径2mmのガラス管中に潤滑油組成物を0.3ml/時、空気を10ml/分で16時間流し続けた。ガラス管中に付着したラッカーと色見本とを比較し、透明の場合は10点、黒の場合は0点として評点を付けた。評点が高いほど清浄性が高い潤滑油組成物であるといえる。
密閉式にしたブロックオンリング摩擦試験機(LFW−1)を用いて、以下の測定条件にて試験を行い、リングの摩耗量を測定した。当該摩耗量が少ないほど、耐摩耗性に優れた潤滑油組成物であるといえる。
・リング:S−10標準材
・ブロック:SUJ−2
・油温:100℃
・荷重:200N
・回転数:1000rpm
・試験時間:30分
Claims (10)
- 基油(A)、
ジチオリン酸亜鉛(B)、及び
非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)
を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B)の亜鉛原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400質量ppm以上であり、
成分(C1)に由来する窒素原子と成分(B)に由来する亜鉛原子との含有量比〔N/Zn〕が、0.50以上である、
ガスエンジンに用いられる、潤滑油組成物。 - 成分(C1)の窒素原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400〜2000質量ppmである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 成分(C)が、成分(C1)と共に、非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド(C2)を含む、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 成分(C1)と、成分(C2)と含有量比〔(C1)/(C2)〕が、質量比で、20/80〜90/10である、請求項3に記載の潤滑油組成物。
- 成分(C2)の窒素原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、100〜900質量ppmである、請求項3又は4に記載の潤滑油組成物。
- ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)のホウ素原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0〜400質量ppmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
- 基油(A)が鉱油を含み、当該鉱油が、少なくとも下記要件(I)又は(II)を満たす鉱油(A1)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
・要件(I):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の条件下で計測した、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|が、10Pa・s/℃以下である。
・要件(II):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1%の条件下で計測した、−35℃における複素粘度η*が150Pa・s以下である。 - 基油(A)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、60質量%以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
- 基油(A)のNOACK値が12.0質量%以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
- ガスヒートポンプに用いられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
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