JP6975660B2 - 潤滑油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、潤滑油組成物に関する。
ガスエンジンは、燃焼性が良く、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに比べて燃焼温度も高いため、酸化が促進され易く、ブローバイガス中のNO濃度も高くなる傾向がある。
ガスエンジン油は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の液体燃料を使用するエンジンと比べて、劣化が促進され易い。
そのため、高温で、高濃度のNOの環境下での長期間使用に耐え得るような長寿命化されたガスエンジン油が求められており、様々なガスエンジン油が提案されている。
例えば、特許文献1には、鉱油系潤滑油等の基材に対して、所定の塩基価のアルカリ土類金属サリシレートと、ビスタイプ高分子量アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛とを所定の割合で含有してなるガスエンジン油組成物が開示されている。
また、特許文献2には、鉱油系潤滑油等の基材に対して、所定の過塩基性硫化アルキル土類金属フォネートと、ビスタイプ高分子量アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体と、ジアルキルジチオリン酸亜鉛とを所定の割合で含有してなるガスエンジン油が開示されている。
特開平7−258678号公報 特開平11−152485号公報
ところで、近年、ガスエンジンの高出力化が進められている。高出力化されたガスエンジンでは、エンジン内に漏れ出すブローバイガス中のNO濃度が100〜500体積ppm程まで高くなり、それがガスエンジン油の更なる劣化を引き起こす要因となる。
特許文献1及び2に記載のガスエンジン油は、ビスタイプ高分子量アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体を含有しているが、当該ガスエンジン油を高出力化されたガスエンジンに用いた場合、寿命の低下の抑制効果が不十分であり、ガスエンジン油の長寿命化が求められている。
本発明は、高温であり、NO濃度が高い環境下で使用しても劣化を抑制し、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持し得、長寿命化することが可能であるため、高出力化されたガスエンジンに好適に使用し得る、潤滑油組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、ジチオリン酸亜鉛と、無灰系分散剤として非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミドとを含有し、両者の含有量比を特定の範囲に調製した潤滑油組成物が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち本発明は、下記[1]を提供する。
[1]基油(A)、
ジチオリン酸亜鉛(B)、及び
非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)
を含有する潤滑油組成物であって、
成分(B)の亜鉛原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400質量ppm以上であり、
成分(C1)に由来する窒素原子と成分(B)に由来する亜鉛原子との含有量比〔N/Zn〕が、0.50以上である、
ガスエンジンに用いられる、潤滑油組成物。
本発明の潤滑油組成物は、高温であり、NO濃度が高い環境下で使用しても劣化を抑制し、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持し得、長寿命化することが可能であるため、高出力化されたガスエンジンに好適に使用し得る。
〔潤滑油組成物〕
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)、ジチオリン酸亜鉛(B)、及び非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)を含有し、ガスエンジンに用いられるものである。
その上で、本発明の潤滑油組成物は、成分(B)の亜鉛原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400質量ppm以上であり、成分(C1)に由来する窒素原子と成分(B)に由来する亜鉛原子との含有量比〔N/Zn〕が、0.50以上となるように調製したものである。
上述のとおり、従来のジチオリン酸亜鉛を含むガスエンジン油では、高出力化されたガスエンジンに用いた場合、ガスエンジン油の寿命の低下の抑制効果が不十分であった。
これは、高出力化されたガスエンジンによって、エンジン内の温度がより高温になること、及び、エンジン内に漏れ出すブローバイガス中のNO濃度が100〜500体積ppm程まで高くなることで、ガスエンジン油中に含まれるジチオリン酸亜鉛の熱・酸分解が促進されてしまうことに起因すると考えられる。
その結果、ジチオリン酸亜鉛を配合することによる機能(酸化安定性、耐摩耗性等)が使用と共に低下し、ガスエンジン油の寿命が低下してしまうと推測される。
なお、特許文献1及び2に記載されたように、ビスタイプ高分子量アルケニルコハク酸イミド又はその誘導体を配合しても、寿命の低下の抑制効果は未だ不十分であり、高出力化されたガスエンジンに用いた場合においても、長寿命化されたガスエンジン油が求められている。
このような問題点に対して、本発明者は、所定量以上のジチオリン酸亜鉛(B)に対して、非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を特定の割合で配合することで、ジチオリン酸亜鉛の機能低下を効果的に抑制し得ることを発見し、本発明を完成するに至った。
それは、所定量以上のジチオリン酸亜鉛(B)に対して、ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)が相互作用することで、NOによるジチオリン酸亜鉛(B)の分解が抑制されるものと推測される。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、高温であり、NO濃度が100〜500体積ppm程の高い環境下で使用しても劣化を抑制し、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持し得、長寿命化することが可能となる。
上記観点から、成分(C1)に由来する窒素原子と成分(B)に由来する亜鉛原子との含有量比〔N/Zn〕としては、0.50以上であるが、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.57以上、更に好ましくは0.60以上、より更に好ましくは0.65以上であり、また、ガスエンジン油の寿命の低下を防止する観点から、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.00以下、更に好ましくは1.80以下、より更に好ましくは1.50以下である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに成分(B)及び(C)以外の各種添加剤を含有してもよい。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、(B)及び(C)の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは65〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは75〜100質量%、より更に好ましくは80〜100質量%である。
以下、本発明の潤滑油組成物に含まれる各成分について説明する。
<基油(A)>
本発明の潤滑油組成物に含まれる基油(A)としては、鉱油及び合成油から選ばれる1種以上であればよい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油(A)の含有量としては、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは75質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス(Gas To Liquids WAX))を異性化することで得られる鉱油(GTL)等が挙げられる。
これらの鉱油は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる鉱油としては、API(米国石油協会)の基油カテゴリーのグループ2又は3に分類される鉱油が好ましく、グループ3の分類される鉱油がより好ましい。
また、合成油としては、例えば、ポリα−オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル、二塩基酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリアルキレングリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;等が挙げられる。
これらの合成油は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の一態様で用いる基油(A)の100℃における動粘度としては、好ましくは2.0〜12.0mm/s、より好ましくは3.0〜9.0mm/s、更に好ましくは3.5〜8.5mm/s、より更に好ましくは4.0〜8.0mm/sである。
本発明の一態様で用いる基油(A)の粘度指数としては、好ましくは100以上、より好ましくは105以上、更に好ましくは110以上、より更に好ましくは120以上である。
なお、本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
また、本発明の一態様において、2種以上の基油を組み合わせた混合基油を用いる場合、当該混合基油の動粘度及び粘度指数が上記範囲内であることが好ましい。
本発明の一態様で用いる基油(A)のNOACK値としては、低蒸発性化された潤滑油組成物とする観点から、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは14.5質量%以下、更に好ましくは13.0質量%以下、より更に好ましくは12.0質量%以下であり、また、通常1.0質量%以上、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上である。
なお、本明細書において、NOACK値は、JPI−5S−41−2004に準拠して測定された値を意味する。
また、本発明の一態様において、2種以上の基油を組み合わせた混合基油を用いる場合、当該混合基油のNOACK値が上記範囲内であることが好ましい。
ここで、本発明の一態様で用いる基油(A)が鉱油を含む場合、当該鉱油は、少なくとも下記要件(I)又は(II)を満たす鉱油(A1)であることが好ましい。
・要件(I):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の条件下で計測した、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|(以下、単に「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」ともいう)が、10Pa・s/℃以下である。
・要件(II):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1%の条件下で計測した、−35℃における複素粘度η*(以下、単に「−35℃における複素粘度η*」ともいう)が150Pa・s以下である。
以下、上記要件(I)又は(II)を満たす鉱油を「鉱油(A1)」と標記する。
そして、鉱油(A1)としては、上記要件(I)及び(II)を共に満たすことが好ましい。
なお、本発明で用いる鉱油が2種以上の鉱油を組み合わせた混合鉱油である場合、当該混合油が、上記要件(I)及び/又は(II)を満たすものであれば、当該混合鉱油は、鉱油(A1)に該当するものとする。
また、当該混合鉱油に含まれる「2種以上の鉱油」のそれぞれが上記要件(I)、(II)を満たすものであれば、これらの鉱油を組み合わせた当該混合基油も、上記要件(I)、(II)を満たすとみなすこともできる。
上記要件(I)で規定の「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」は、−10℃における複素粘度η*の値と、−25℃における複素粘度η*の値とを、それぞれ独立に、もしくは、−10℃から−25℃又は−25℃から−10℃まで温度を連続的に変化させながら測定し、当該値を温度−複素粘度の座標平面においた際、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の単位あたりの変化量(傾きの絶対値)を示す値である。より具体的には、下記計算式(f1)から算出される値を意味する。
・計算式(f1):複素粘度の温度勾配Δ|η*|=|([−25℃における複素粘度η*]−[−10℃における複素粘度η*])/(−25−(−10))|
なお、上記要件(I)で規定の「歪み量」は、0.1〜100%の範囲で測定温度に応じて適宜設定される測定条件パラメータであり、例えば、後述の実施例では、−10℃での測定では「2.1%」、−25℃での測定では「0.4%」と設定した。
ところで、鉱油には、ワックス分が含まれているため、鉱油の温度を徐々に低下させていくと、鉱油中のワックス分が析出し、ゲル状構造を形成する。ワックス分は、パラフィン等の構造によって、析出してくる温度が異なる。このゲル状構造は、壊れ易く、機械的な作用で、粘度が変化してしまう。従来、一般的に用いられている低温粘度特性を示す物性パラメータは、このようなワックス分の析出を考慮したものではなかった。
それに対して、要件(I)で規定する「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」は、鉱油中に含まれるワックス分の析出速度を加味し、ワックス分の析出に伴う摩擦係数の変化を考慮した、鉱油の低温粘度特性をより示す正確に評価し得る指標である。
要件(I)を満たす鉱油は、複素粘度の温度勾配Δ|η*|が1.0Pa・s/℃以下であり、ワックス分の析出速度を速くならないように調整されているため、摩擦係数の上昇を引き起こし難く、低温粘度特性も良好である。
また、要件(I)を満たす鉱油を用いることで、清浄性の向上にも寄与する。
要件(I)で規定する、鉱油(A1)の複素粘度の温度勾配Δ|η*|は、10Pa・s/℃以下であるが、上記観点から、好ましくは5.0Pa・s/℃以下、より好ましくは2.0Pa・s/℃以下、更に好ましくは1.0Pa・s/℃以下、より更に好ましくは0.4Pa・s/℃以下である。
また、鉱油(A1)の要件(I)で規定する複素粘度の温度勾配Δ|η*|は、下限値については特に制限は無いが、好ましくは0.001Pa・s/℃以上、より好ましくは0.01Pa・s/℃以上である。
一方、要件(II)で規定する「−35℃における複素粘度η*」は、鉱油の低温環境下での低温粘度特性を示す指標の一つである。
−35℃における複素粘度η*が低い鉱油ほど、直鎖パラフィン分(ノルマルパラフィン分)が低い傾向にある。直鎖パラフィン分が低い鉱油を用いることで、低温粘度特性が良好である潤滑油組成物となり得る。
また、直鎖パラフィン分が低い鉱油を用いることで、潤滑油組成物の長寿命化にも寄与する。
要件(II)で規定する、鉱油(A1)の−35℃における複素粘度η*は、150Pa・s以下であるが、上記観点から、好ましくは120Pa・s以下、より好ましくは100Pa・s以下、更に好ましくは50Pa・s以下、より更に好ましくは35Pa・s以下である。
また、鉱油(A1)の−35℃における複素粘度η*は、下限値については特に制限は無いが、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上、更に好ましくは1.0Pa・s以上であり、特に、NOACKを低く調整し、低蒸発性の潤滑油組成物とする観点から、より好ましくは3.5Pa・s以上、特に好ましくは4.0Pa・s以上である。
鉱油(A1)のナフテン分(%C)としては、好ましくは3〜30、より好ましくは4〜30、更に好ましくは5〜30、より更に好ましくは5.5〜20である。
鉱油(A1)の芳香族分(%C)としては、好ましくは1.0未満、より好ましくは0.5未満、更に好ましくは0.1以下である。
なお、本明細書において、鉱油(A1)のナフテン分(%C)及び芳香族分(%C)は、ASTM D−3238環分析(n−d−M法)により測定した値を意味する。
[要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)の調製例]
少なくとも要件(I)又は(II)を満たす鉱油(A1)は、以下に示す事項を適宜考慮することで、容易に調製することができる。なお、以下の事項は、調製法の一例であって、これら以外の事項を考慮することによっても調製可能である。
(1)鉱油(A1)の質量平均分子量の調整
鉱油(A1)の質量平均分子量(Mw)は、上記要件(I)及び(II)で規定の性状に影響を及ぼす物性である。
鉱油(A1)の質量平均分子量(Mw)は、上記要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)とする観点から、好ましくは550以下であり、また、好ましくは300以上である。
(2)鉱油(A1)の原料である原料油の選択
鉱油(A1)の原料である原料油としては、石油由来のワックス(スラックワックス等)を含む原料油、並びに、石油由来のワックス及びボトム油を含む原料油であることが好ましい。また、溶剤脱ろう油を含む原料油を用いてもよい。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物に含まれる鉱油(A1)は、石油由来のワックスを含む原料油を精製して得られたものであることが好ましい。
石油由来のワックス及びボトム油を含む原料油を用いる場合、当該原料油中のワックスとボトム油との含有量比〔ワックス/ボトム油〕としては、質量比で、好ましくは50/50〜99/1、より好ましくは60/40〜98/2、更に好ましくは70/30〜97/3、より更に好ましくは80/20〜95/5である。
なお、上記原料油中のボトム油の割合が多くなると、要件(I)で規定する複素粘度の温度勾配Δ|η*|の値、及び、要件(II)で規定する−35℃における複素粘度η*の値が、上昇する傾向にある。
一方、ボトム油にはナフテン分が多く含まれるため、ボトム油を含む原料油を用いることで、ナフテン分(%C)が高い鉱油を調製することができる。鉱油中のナフテン分は、潤滑油組成物の高温清浄性の向上に寄与する。
ボトム油としては、原油を原料とした通常の燃料油の製造工程において、減圧蒸留装置から得られた重質燃料油を含む油を、水素化分解して、ナフサ及び灯軽油を分離除去した後に残るボトム留分が挙げられる。
また、ワックスとしては、上記のボトム留分を溶剤脱ろうして分離されるワックスのほか、パラフィン系原油、中間基系原油、ナフテン系鉱油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を溶剤脱ろうして得られるワックス;当該常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油を溶剤脱ろうして得られるワックス;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化仕上げしたものを溶剤脱ろうして得られるワックス;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるGTLワックス等が挙げられる。
一方、溶剤脱ろう油としては、上述のボトム留分等を溶剤脱ろうし、上記のワックスを分離除去した後の残油が挙げられる。また、溶剤脱ろう油は、溶剤脱ろうの精製処理が施されており、上述のボトム油とは異なるものである。
溶剤脱ろうによりワックスを得る方法としては、例えば、ボトム留分をメチルエチルケントンとトルエンとの混合溶媒を混合し、低温領域下で撹拌しながら、析出物を取り除いて得る方法が好ましい。
なお、要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)に調製する観点から、溶剤脱ろうにおける低温環境下の具体的な温度としては、一般的な溶剤脱ろうでの温度よりも低いことが好ましく、具体的には、−25℃以下であることが好ましく、−30℃以下であることがより好ましい。
(3)原料油の精製条件の設定
上記の原料油に対して、精製処理を施すことが好ましい。
精製処理としては、水素化異性化脱ろう処理及び水素化処理の少なくとも一方を含むことが好ましい。なお、使用する原料油の種類に応じて、精製処理の種類や精製条件は適宜設定されることが好ましい。
より具体的には、要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)に調製する観点から、使用する原料油の種類に応じて、以下のように精製処理を選択することが好ましい。
・石油由来のワックスとボトム油とを上述の含有量比で含む原料油(α)を用いる場合、当該原料油(α)に対して、水素化異性化脱ろう処理及び水素化処理の双方を含む精製処理を行うことが好ましい。
・溶剤脱ろう油を含む原料油(β)を用いる場合、当該原料油(β)に対して、水素化異性化脱ろう処理を行わず、水素化処理を含む精製処理を行うことが好ましい。
上述の原料油(α)は、ボトム油を含むため、芳香族分、硫黄分、及び窒素分の含有量が多くなる傾向にある。芳香族分、硫黄分、及び窒素分の存在は、潤滑油組成物とした際のデポジット発生の要因となり、ピストンの高温洗浄性の低下を引き起こす。
水素化異性化脱ろう処理によって、芳香族分、硫黄分、及び窒素分を除去し、これらの含有量の低減を図ることができる。
水素化異性化脱ろう処理は、ワックス中の直鎖パラフィンを分岐鎖のイソパラフィンへとすることで、要件(I)及び(II)を満たす鉱油(A1)を調製し易くなる。
一方、上述の原料油(β)は、ワックスを含むものであるが、溶剤脱ろう処理によって、低温環境下で直鎖パラフィンを析出させ分離除去しているため、要件(I)及び(II)で規定する複素粘度の値に影響を与える直鎖パラフィンの含有量が少ない。そのため、「水素化異性化脱ろう処理」を行う必要性は低い。
<ジチオリン酸亜鉛(B)>
本発明の潤滑油組成物は、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)(B)を含有する。
そして、本発明の潤滑油組成物において、成分(B)の亜鉛原子換算での含有量は、前記潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、400質量ppm以上である。
当該含有量が400質量ppm未満であると、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持することが難しく、成分(C1)を含有することによる長寿命化の効果も不十分となる。
優れた清浄性及び耐摩耗性を維持し得、長寿命化された潤滑油組成物とする観点から、成分(B)の亜鉛原子換算での含有量は、好ましくは420質量ppm以上、より好ましくは450質量ppm以上、更に好ましくは500質量ppm以上、より更に好ましくは650質量ppm以上である。
また、良好な摩擦低減効果を発揮し得る潤滑油組成物とする観点から、成分(B)の亜鉛原子換算での含有量は、好ましくは1500質量ppm以下、より好ましくは1300質量ppm以下、更に好ましくは1100質量ppm以下である。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)の含有量(配合量)としては、亜鉛原子換算での含有量が上記範囲に属するように調製されればよいが、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1〜3.0質量%、より好ましくは0.2〜2.5質量%、更に好ましくは0.4〜2.0質量%、より更に好ましくは0.6〜1.5質量%である。
ジチオリン酸亜鉛(B)としては、下記一般式(b−1)で表される化合物が好ましい。
なお、ジチオリン酸亜鉛(B)は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
Figure 0006975660
上記式(b−1)中、Rb1〜Rb4は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
b1〜Rb4として選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜16、更に好ましくは3〜12、より更に好ましくは3〜10である。
b1〜Rb4として選択し得る炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等のアルケニル基;シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等のアリール基;トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、メチルベンジル基、ジメチルナフチル基等のアルキルアリール基;フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
これらの中でも、Rb1〜Rb4としては、アルキル基であることが好ましい。
<無灰系分散剤(C)>
本発明の潤滑油組成物は、非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)を含有する。
上述のとおり、成分(C1)を含有することで、成分(B)と成分(C1)との相互作用によって、高温や高濃度のNOによる成分(B)の劣化が抑制され、長寿命化した潤滑油組成物とすることができる。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)中の成分(C1)の含有割合としては、成分(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(B)の劣化をより抑制し、長寿命化した潤滑油組成物とする観点から、無灰系分散剤(C)が、成分(C1)と共に、非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド(C2)を含有することが好ましい。
上記観点から、成分(C1)と、成分(C2)と含有量比〔(C1)/(C2)〕としては、質量比で、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは25/75〜80/20、更に好ましくは30/70〜70/30、より更に好ましくは35/65〜60/40である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(C)として、成分(C1)及び(C2)以外の無灰系分散剤を含有してもよい。
成分(C1)及び(C2)以外の無灰系分散剤として、ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)を含有してもよい。
ただし、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)中の成分(C1)及び(C2)の合計含有割合としては、成分(C)の全量(100質量%)基準で、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、更に好ましくは75〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%である。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)の窒素原子換算での含有量としては、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは500〜3000質量ppm、より好ましくは570〜2500質量ppm、更に好ましくは650〜2000質量ppm、より更に好ましくは750〜1500質量ppmである。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C)の含有量(配合量)としては、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは1.0〜15.0質量%、より好ましくは2.0〜12.0質量%、更に好ましくは2.5〜10.0質量%、より更に好ましくは3.0〜8.0質量ppmである。
<非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)>
本発明の一態様で用いる非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)としては、下記一般式(c−1)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006975660
上記一般式(c−1)中、Rは、質量平均分子量(Mw)が500〜3000(好ましくは1000〜3000)のアルケニル基である。
は、それぞれ独立に、炭素数2〜5のアルキレン基である。
x1は1〜10の整数であり、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは3又は4である。
として選択し得るアルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C1)の窒素原子換算での含有量としては、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは400〜2000質量ppm、より好ましくは420〜1700質量ppm、更に好ましくは450〜1500質量ppm、より更に好ましくは500〜1200質量ppmである。
<非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド(C2)>
本発明の一態様で用いる非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド(C2)としては、下記一般式(c−2)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006975660
上記一般式(c−2)中、RA1及びRA2は、それぞれ独立に、質量平均分子量(Mw)が500〜3000(好ましくは1000〜3000)のアルケニル基である。
B1及びRB2は、それぞれ独立に、炭素数2〜5のアルキレン基である。
x2は0〜10の整数であり、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。
A1及びRA2として選択し得るアルケニル基としては、例えば、ポリブテニル基、ポリイソブテニル基、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、ポリブテニル基又はポリイソブテニル基が好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C2)の窒素原子換算での含有量としては、前記潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは100〜900質量ppm、より好ましくは150〜800質量ppm、更に好ましくは200〜700質量ppm、より更に好ましくは250〜600質量ppmである。
<ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(C)として、さらにホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)を含有してもよい。
ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)としては、前記一般式(c−1)又は(c−2)で表される化合物のホウ素変性物が挙げられる。
ただし、本発明者の検討によれば、成分(C3)は、成分(B)との相互作用は認められず、高温や高濃度のNOによる成分(B)の劣化を抑えきれず、寿命の低下が問題となる。
そのため、成分(C3)の含有量は極力少ないほど好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(C3)のホウ素原子換算での含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0〜400質量ppm、より好ましくは0〜380質量ppm、更に好ましくは0〜200質量ppm、より更に好ましくは0〜100質量ppm、特に好ましくは0〜10質量ppmである。
また、成分(C3)の窒素原子換算での含有量としては、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0〜400質量ppm、より好ましくは0〜360質量ppm、更に好ましくは0〜200質量ppm、より更に好ましくは0〜100質量ppm、特に好ましくは0〜10質量ppmである。
<成分(B)及び(C)以外の各種添加剤>
また、本発明の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、さらに一般的に用いられる、成分(B)及び(C)以外の各種添加剤を含有してもよい。
このような添加剤としては、例えば、流動点降下剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、極圧剤、消泡剤、摩擦調整剤、防錆剤、金属不活性化剤等が挙げられる。
なお、当該添加剤として、API/ILSAC SN/GF−5規格等に適合した、複数の添加剤を含有する市販品の添加剤パッケージを用いてもよい。
また、上記の添加剤としての機能を複数有する化合物(例えば、耐摩耗剤及び極圧剤としての機能を有する化合物)を用いてもよい。
さらに、これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は、添加剤の種類に応じて適宜調整するものであるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、通常0.001〜15質量%、好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物において、これらの添加剤の合計含有量は、当該潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0〜35質量%、より好ましくは0〜30質量%、更に好ましくは0〜25質量%、より更に好ましくは0〜20質量%である。
なお、これら各種添加剤の中でも、流動点降下剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤、及び金属系清浄剤から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
流動点降下剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられ、ポリメタクリレートが好ましく用いられる。
粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等)等の重合体が挙げられる。
これらの粘度指数向上剤の質量平均分子量(Mw)としては、通常500〜1,000,000、好ましくは5,000〜800,000、より好ましくは10,000〜600,000であるが、重合体の種類に応じて適宜設定される。
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
これらの中でも、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤から選ばれる1種以上が好ましく、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を併用することがより好ましい。
アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を併用する場合、アミン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との含有量比〔アミン/フェノール〕としては、質量比で、好ましくは1/4〜4/1、より好ましくは1/3〜3/1、更に好ましくは1/2〜2/1である。
金属系清浄剤としては、例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子を含有する有機酸金属塩化合物が挙げられ、具体的には、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる金属原子を含有する、金属サリシレート、金属フェネート、及び金属スルホネート等が挙げられる。
金属系清浄剤に含まれる金属原子としては、高温での清浄性の向上の観点から、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、又はバリウムが好ましく、カルシウムがより好ましい。
つまり、カルシウムサリシレート、カルシウムフェネート、及びカルシウムスルホネートから選ばれる1種以上であることが好ましい。
なお、本発明の一態様において、金属系清浄剤は、中性塩、塩基性塩、過塩基性塩及びこれらの混合物のいずれであってもよい。
金属系清浄剤の全塩基価としては、好ましくは0〜600mgKOH/gである。
なお、本発明の一態様において、金属系清浄剤が塩基性塩又は過塩基性塩である場合には、当該金属系清浄剤の全塩基価としては、好ましくは10〜600mgKOH/g、より好ましくは20〜500mgKOH/gである。
なお、本明細書において、「塩基価」とは、JIS K2501「石油製品および潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味する。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)以外の耐摩耗剤を含有してもよい。
成分(B)以外の耐摩耗剤としては、例えば、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジチオリン酸モリブデン、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
ただし、成分(B)以外の耐摩耗剤の含有量は極力少ないほど好ましい。
成分(B)以外の耐摩耗剤の含有量は、成分(B)の全量100質量部に対して、好ましくは20質量部未満、より好ましくは10質量部未満、更に好ましくは5質量部未満、より更に好ましくは1質量部未満である。
〔潤滑油組成物の製造方法〕
本発明の潤滑油組成物の製造方法としては、特に制限は無いが、上述の基油(A)に、成分(B)及び(C)、並びに、上述の各種添加剤を配合する工程を有する方法が挙げられる。
なお、当該工程において、成分(A)〜(C)及び各種添加剤の好適な態様は、上述のとおりである。
基油(A)に、成分(B)及び(C)、並びに、各種添加剤を配合後、公知の方法により、撹拌して基油中に潤滑油用添加剤を均一に分散させることが好ましい。
〔潤滑油組成物の各種物性〕
本発明の一態様の潤滑油組成物の100℃における動粘度としては、好ましくは4.0〜15.0mm/s、より好ましくは5.0〜12.5mm/s、更に好ましくは6.0〜11.0mm/s、より更に好ましくは7.0〜10.5mm/sである。
本発明の一態様の潤滑油組成物の粘度指数としては、好ましくは100以上、より好ましくは120以上、更に好ましくは140以上である。
本発明の一態様の潤滑油組成物の塩基価としては、好ましくは10gKOH/g以上である。
なお、本明細書において、塩基価は、JIS K2501:2003に準拠して、電位差滴定法(塩基価・塩酸法)により測定された値を意味する。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、後述の実施例のNO−ISOT寿命試験に基づき測定された、塩基価が0.5mgKOH/gになるまでの時間としては、好ましくは50時間以上、より好ましくは55時間以上、更に好ましくは60時間以上、より更に好ましくは70時間以上、特に好ましくは80時間以上である。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、JPI−5S−55−99に基づき行われたホットチューブ試験の評点としては、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上である。
なお、ホットチューブ試験の具体的な条件は、後述の実施例に記載のとおりである。
本発明の一態様の潤滑油組成物において、後述の実施例に記載の条件に基づき、ブロックオンリング摩擦試験機(LFW−1)を用いて測定したリングの摩耗量としては、好ましくは480μm以下、より好ましくは450μm以下、更に好ましくは400μm以下、より更に好ましくは360μm以下である。
<潤滑油組成物の用途>
本発明の潤滑油組成物は、高温であり、NO濃度が100〜500体積ppm程の高い環境下で使用しても劣化を抑制し、優れた清浄性及び耐摩耗性を維持し得、長寿命化することが可能である。
そのため、本発明の潤滑油組成物は、ガスエンジンに好適に使用し得、特に、ガスヒートポンプに用いられることが好ましい。
ガスエンジンとしては、家庭用、病院用、学校用、民間施設用、業務用、産業用等のコジェネレーションシステム、ガスヒートポンプシステム等に組み込まれているものが挙げられる。
なお、本発明は、下記[1]に示すガスエンジン、及び、下記[2]に示す使用方法も提供し得る。
[1]上述の本発明の潤滑油組成物を用いた、ガスエンジン。
[2]上述の本発明の潤滑油組成物をガスエンジンに用いる、潤滑油組成物の使用方法。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、各種物性の測定法又は評価法は、下記のとおりである。
(1)40℃及び100℃における動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)NOACK値
250℃、1時間の条件にて、JPI−5S−41−2004に準拠して測定した。
(3)−35℃、−25℃、及び−10℃における複素粘度η*
Anton Paar社製レオメータ「Physica MCR 301」を用いて、以下の手順で測定した。
まず、−35℃、−25℃、及び−10℃のいずれかの測定温度に調整したコーンプレート(直径50mm、傾斜角1°)に、測定対象の試料油を挿入し、同じ温度で10分間保持した。なお、この際、挿入した溶液に歪みを与えないように留意した。
そして、所定の測定温度にて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の範囲で測定温度に応じて適宜設定した値の条件下にて、振動モードで、各測定温度における複素粘度η*を測定した。なお、上記の「歪み量」は、−35℃での測定では「0.1%」とし、−10℃での測定では「2.1%」とし、−25℃での測定では「0.4%」とした。
そして、−25℃及び−10℃における複素粘度η*の値から、前記計算式(f1)から、「複素粘度の温度勾配Δ|η*|」を算出した。
(4)窒素原子の含有量
JIS K2609:1998に準拠して測定した。
(5)亜鉛原子及びホウ素原子の含有量
JPI−5S−38−92に準拠して測定した。
(6)塩基価(塩酸法)
JIS K2501:2003に準拠して、電位差滴定法(塩基価・塩酸法)により測定した。
実施例1〜4、比較例1〜3
下記に示す基油及び各種添加剤を、表1に示す配合量にて添加して、潤滑油組成物をそれぞれ調製した。使用した基油及び各種添加剤の詳細は以下のとおりである。
<成分(A)>
・基油(1):
スラックワックスと、重質燃料油を水素化分解して得られたボトム油とを含む原料油(スラックワックス/ボトム油=90/10(質量比))を、水素化異性化脱ろう処理を施した後に、水素化仕上げ処理を施し得られた鉱油。
100℃動粘度=4.2mm/s、粘度指数=126、NOACK値=11.8質量%、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|=0.03Pa・s/℃、−35℃における複素粘度η*=4.4Pa・s、%C=0.0、%C=16.7。
・基油(2):
スラックワックスと、重質燃料油を水素化分解して得られたボトム油を含む原料油(スラックワックス/ボトム油=95/5(質量比))を、水素化異性化脱ろう処理を施した後に、水素化仕上げ処理を施し得られた鉱油。
100℃動粘度=7.7mm/s、粘度指数=140、NOACK値=2.2質量%、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|=0.2Pa・s/℃、−35℃における複素粘度η*=25.8Pa・s、%C=0.0、%C=6.5。
・基油(3):
スラックワックスと、重質燃料油を水素化分解して得られたボトム油を含む原料油を、水素化異性化脱ろう処理を施した後に、水素化仕上げ処理を施し得られた鉱油。
100℃動粘度=4.2mm/s、粘度指数=122、NOACK値=14.3質量%、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|=11.0Pa・s/℃、−35℃における複素粘度η*=15929.9Pa・s、%C=0.1、%C=21.6。
・基油(4):
API基油カテゴリーのグループ3に分類される鉱油。
100℃動粘度=10.9mm/s、粘度指数=107、NOACK値=3.3質量%、%C=0.0、%C=28.0。
なお、基油(1)〜(3)の原料油として含有する上記ボトム油は、通常の燃料油の製造工程において、減圧蒸留装置から得られた重質燃料油を含む油を、水素化分解し、ナフサ及び灯軽油を分離除去した後に残るボトム留分である。
<成分(B)>
・ZnDTP:前記一般式(b−1)で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛、上述の成分(B)に相当する。亜鉛原子の含有量=9.0質量%。
<成分(C1)>
・非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド:前記一般式(c−1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミド、上述の成分(C1)に相当する。窒素原子の含有量=2.1質量%。
<成分(C2)>
・非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド:前記一般式(c−2)で表されるアルケニルコハク酸ビスイミド、上述の成分(C2)に相当する。窒素原子の含有量=1.2質量%。
<成分(C3)>
・ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド:前記一般式(c−1)で表されるアルケニルコハク酸モノイミドのホウ素化物、上述の成分(C3)に相当する。窒素原子の含有量=1.8質量%、ホウ素原子の含有量=1.9質量%。
<他の添加剤>
・酸化防止剤(1):アミン系酸化防止剤。
・酸化防止剤(2):フェノール系酸化防止剤。
・金属系清浄剤:カルシウムサリシレート。
・粘度指数向上剤:オレフィン系共重合体
・混合添加剤:流動点降下剤、分散剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、消泡剤を含む混合添加剤。
調製した潤滑油組成物について、以下の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
[NO−ISOT寿命試験]
空気中にNOを2体積%含む混合ガスの流量を50mL/minとし、空気の流量を150mL/minとして混合し、NO濃度が5000体積ppmになるよう調整したガスを吹き込み、油量を320mL、油温を140℃、回転数を400rpmにした以外は、JIS K2514−1:2013に準拠したISOT試験を行った。試料油の塩基価が0.5mgKOH/gになった時点で試験を終了し、当該時間を測定した。
[ホットチューブ試験]
JPI−5S−55−99に基づいて行った。
具体的には、300℃の温度に保たれた内径2mmのガラス管中に潤滑油組成物を0.3ml/時、空気を10ml/分で16時間流し続けた。ガラス管中に付着したラッカーと色見本とを比較し、透明の場合は10点、黒の場合は0点として評点を付けた。評点が高いほど清浄性が高い潤滑油組成物であるといえる。
[LFW−1試験]
密閉式にしたブロックオンリング摩擦試験機(LFW−1)を用いて、以下の測定条件にて試験を行い、リングの摩耗量を測定した。当該摩耗量が少ないほど、耐摩耗性に優れた潤滑油組成物であるといえる。
・リング:S−10標準材
・ブロック:SUJ−2
・油温:100℃
・荷重:200N
・回転数:1000rpm
・試験時間:30分
Figure 0006975660
表1から、実施例1〜4で調製した潤滑油組成物は、高温であり、NO濃度が5000体積ppmと非常に高濃度の環境下で使用しても劣化が抑制され、比較例1〜3に比べて、長寿命である結果となった。また、実施例1〜4の潤滑油組成物は、優れた清浄性及び耐摩耗性も有する。

Claims (9)

  1. 基油(A)、
    ジチオリン酸亜鉛(B)、及び
    非ホウ素化アルケニルコハク酸モノイミド(C1)を含む無灰系分散剤(C)を含有し、 成分(B)の亜鉛原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400質量ppm以上であり、
    成分(C1)に由来する窒素原子と成分(B)に由来する亜鉛原子との含有量比〔N/Zn〕が、0.50以上である、
    ガスエンジンに用いられる、潤滑油組成物であって、
    前記成分(C)が、前記成分(C1)と共に、非ホウ素化アルケニルコハク酸ビスイミド(C2)を含む、潤滑油組成物。
  2. 成分(C1)の窒素原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、400〜2000質量ppmである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
  3. 成分(C1)と、成分(C2)と含有量比〔(C1)/(C2)〕が、質量比で、20/80〜90/10である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
  4. 成分(C2)の窒素原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、100〜900質量ppmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
  5. ホウ素化アルケニルコハク酸イミド(C3)のホウ素原子換算での含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0〜400質量ppmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
  6. 基油(A)が鉱油を含み、当該鉱油が、少なくとも下記要件(I)又は(II)を満たす鉱油(A1)である、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
    ・要件(I):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1〜100%の条件下で計測した、−10℃と−25℃の2点間における複素粘度の温度勾配Δ|η*|が、10Pa・s/℃以下である。
    ・要件(II):回転型レオメータを用いて、角速度6.3rad/s、歪み量0.1%の条件下で計測した、−35℃における複素粘度η*が150Pa・s以下である。
  7. 基油(A)の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、60質量%以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
  8. 基油(A)のNOACK値が12.0質量%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
  9. ガスヒートポンプに用いられる、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
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