JP2019147190A - フラックス組成物、ソルダペースト及び電子回路基板 - Google Patents
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Abstract
Description
特にSn−Ag−Cu系はんだ合金にBi、In及びSbといった酸化性の高い元素を添加する場合、Sn−3Ag−0.5Cu系はんだ合金よりも表面酸化膜を十分に除去し難い傾向にある。そのため使用するフラックス組成物の活性力が不十分であると、特にこれをソルダペーストに用いてはんだ接合する場合、溶融した前記はんだ合金からなる合金粉末の粘性が下がり難くなりはんだ接合部にボイドが残留し易く、当該合金粉末同士が凝集・融合し難くなりはんだボールが発生し易いという問題がある。はんだボールは基板上に実装された電子部品の電極とソルダペーストとの未融合現象といったオープン不良やショートの原因となるため、特に高信頼性が要求される車載用電子回路基板においては、はんだボールの発生の抑制は重要な課題の一つである。
またBall Grid Array(BGA)部品等のはんだ接合に用いられるソルダボールにおいても、はんだ合金の酸化膜の除去が不十分であると基板上の電極と電子部品上の電極との接合不良が起こり易くなる。特にSn−Ag−Cu系はんだ合金にBi、In及びSbといった酸化性の高い元素を添加したソルダボールを使用する場合、上述の接合不良は更に起こり易くなる。
本実施形態のフラックス組成物は、(A)ベース樹脂と、(B)活性剤と、(C)チキソ剤と、(D)溶剤とを含むことが好ましい。
前記ベース樹脂(A)としては、例えば(A−1)ロジン系樹脂及び(A−2)合成樹脂の少なくとも一方を用いることが好ましい。
前記ロジン系樹脂(A−1)としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;ロジンを重合化、水添化、不均一化、アクリル化、マレイン化、エステル化若しくはフェノール付加反応等を行ったロジン誘導体;これらロジンまたはロジン誘導体と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等)とをディールス・アルダー反応させて得られる変性ロジン樹脂等が挙げられる。これらの中でも特に変性ロジン樹脂が好ましく用いられ、アクリル酸を反応させて水素添加した水添アクリル酸変性ロジン樹脂が特に好ましく用いられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
次に前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物としては、例えばダイマージオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルダイマージオールのようなダイマー酸から誘導される化合物であって、その末端にアルコール基を有するもの等が挙げられ、例えばPRIPOL2033、PRIPLAST3197、PRIPLAST1838(以上、クローダジャパン(株)製)等を用いることができる。
前記ロジン誘導体化合物は、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合することにより得られる。この脱水縮合の方法としては一般的に用いられる方法を使用することができる。また、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合する際の好ましい質量比率は、それぞれ25:75から75:25である。
前記活性剤(B)として、(B−1)炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上3質量%以下、(B−2)炭素数が5から13のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下、及び(B−3)炭素数が20から22のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下含むことが好ましい。
当該活性剤(B)の配合量は、4.5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
また当該炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸(B−1)のより好ましい配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%から2質量%である。
また前記炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)のより好ましい配合量は、フラックス組成物全量に対して3質量%から12質量%である。
但し前記炭素数20から22のジカルボン酸(B−3)は活性力が低く、前記炭素数3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸(B−1)との組み合わせのみでは前記合金粉末表面の酸化膜を十分に除去できない虞がある。そのため、特にBi、In及びSb等を含むはんだ合金の粉末を用いた場合、当該合金粉末への酸化作用が不十分となり、はんだボールやボイドの抑制効果を十分に発揮し難い。
このような他の活性剤としては、例えば有機アミンのハロゲン化水素塩等のアミン塩(無機酸塩や有機酸塩)、有機酸、有機酸塩、有機アミン塩等が挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アントラニル酸、ピコリン酸及び3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
当該他の活性剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して0質量%超20質量%以下であることが好ましい。
前記チキソ剤(C)としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、飽和脂肪酸ビスアミド類、オキシ脂肪酸、ジベンジリデンソルビトール類が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記チキソ剤(C)の配合量は、フラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
前記溶剤(D)としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルジグリコール、(2−エチルヘキシル)ジグリコール、フェニルグリコール、ブチルカルビトール、オクタンジオール、αテルピネオール、βテルピネオール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビスイソプロピル等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記溶剤(D)の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
前記添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態のソルダペーストは、前記フラックス組成物とはんだ合金からなるはんだ合金粉末とを含むことが好ましい。
前記はんだ合金粉末としては、無鉛のはんだ合金の粉末が好ましく用いられる。そして本実施形態のソルダペーストは、使用するはんだ合金の成分を問わず、またBi、In及びSb等の酸化性の高い成分を使用した場合であってもはんだ接合部のボイド発生、はんだボールの発生及びはんだ接合不良を抑制しつつ、良好な印刷性を発揮することができる。
前記はんだ合金粉末と前記フラックス組成物との配合比率は、はんだ合金粉末:フラックス組成物の比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましいその配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
本実施形態の電子回路基板は、前記ソルダペーストを用いて形成されるはんだ接合部とフラックス残さ(本明細書においては当該はんだ接合部とフラックス残さとを合わせて「はんだ接合体」という。)を有することが好ましい。当該電子回路基板は、例えば基板上の所定の位置に電極及びソルダレジスト膜を形成し、所定のパターンを有するマスクを用いて本実施形態のソルダペーストを印刷し、当該パターンに適合する電子部品を所定の位置に搭載し、これをリフローすることにより作製される。
このようにして作製された電子回路基板は、前記電極上にはんだ接合部が形成され、当該はんだ接合部は当該電極と電子部品とを電気的に接合する。そして前記基板上には、少なくともはんだ接合部に接着するようにフラックス残さが付着している。
このようなはんだ接合体を有する電子回路基板は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。
メタクリル酸10質量%、2−エチルヘキシルメタクリレート51質量%、ラウリルアクリレート39質量%を混合した溶液を作製した。
その後、撹拌機、還流管及び窒素導入管とを備えた500mlの4つ口フラスコにジエチルヘキシルグリコール200gを仕込み、これを110℃に加熱した。次いで前記溶液300gにアゾ系ラジカル開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(製品名:V−601、和光純薬(株)製)を0.2質量%から5質量%を加えてこれを溶解させた。
この溶液を前記4つ口フラスコに1.5時間かけて滴下し、当該4つ口フラスコ内にある成分を110℃で1時間撹拌した後に反応を終了させ、合成樹脂を得た。なお、合成樹脂の重量平均分子量は7,800Mw、酸価は40mgKOH/g、ガラス転移温度は−47℃であった。
※2 日本化成(株)製 ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド
※3 BASFジャパン(株)製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤
前記フラックス組成物を11.2質量%と以下のはんだ合金の粉末を88.8質量混合し、実施例1から16及び比較例1から18に係るソルダペーストを作製した。
実施例1、比較例4:Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金
実施例2、比較例5:Sn−3Ag−59Biはんだ合金
実施例3、比較例6:Sn−2Ag−58Bi−0.5Cu−0.1Niはんだ合金
実施例4、比較例7:Sn−3Ag−0.5Cu−3.5Bi−3Sb−0.04Ni−0.01Coはんだ合金
実施例5から16、比較例1から3及び8から18:Sn−3Ag−0.5Cu−0.5Bi−2.5Sb−4In−0.15Niはんだ合金
※はんだ合金粉末の粒径はいずれも20μmから36μm
2.0mm×1.2mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷し、それぞれ前記チップ部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP−538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、各試験基板中40箇所のランドにおいて、チップ部品の電極下の領域(図1の破線で囲った領域(a))に占めるボイドの面積率(ボイドの総面積の割合。以下同じ。)とフィレットが形成されている領域(図1の破線で囲った領域(b))に占めるボイドの面積率の平均値を求め、以下のように評価した。その結果を表5から表8までにそれぞれ表す。
◎:ボイドの面積率の平均値が3%以下であって、ボイド発生の抑制効果が極めて良好
○:ボイドの面積率の平均値が3%超5%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイドの面積率の平均値が5%超8%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイドの面積率の平均値が8%を超え、ボイド発生の抑制効果が不十分
リフロー条件のピーク温度を260℃、200℃以上の時間を70秒間、220℃以上の時間を60秒間とする以外は上記(1)ボイド試験と同じ条件にて各試験基板を作製し、これらを各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、チップ部品の周辺及び下面に発生したはんだボール数をカウントし、以下のように評価した。その結果を表5から表8までにそれぞれ表す。
◎:2.0mm×1.2mmチップ抵抗10個辺りに発生したボール数が0個
○:2.0mm×1.2mmチップ抵抗10個辺りに発生したボール数が0個を超え5個以下
△:2.0mm×1.2mmチップ抵抗10個辺りに発生したボール数が5個を超え10個以下
×:2.0mm×1.2mmチップ抵抗10個辺りに発生したボール数が10個を超える
JIS規格Z 3284(1994)に規定の条件に従い試験を行い、以下のように評価した。その結果を表5から表8までにそれぞれ表す。
○:Cu板の変色なし
×:Cu板の変色あり
(4)印刷性試験
100ピン0.5mmピッチのBGAを実装できるパターンを有するソルダレジストと電極(直径0.25mm)を備えたガラスエポキシ基板と、同パターンを有する厚さ120μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストをそれぞれ6枚連続で印刷し、直径0.25mmにおける転写体積率を画像検査機(製品名:aspire2、(株)コーヨンテクノロジー製)を用いて以下の基準で評価した。その結果を表5から表8までにそれぞれ表す。
◎:転写体積率35%以下の個数が0個
○:転写体積率35%以下の個数が0個を超え10個以下
△:転写体積率35%以下の個数が10個を超え50個以下
×:転写体積率35%以下の個数が50個を超える
なお、例えば比較例5から10のように前記炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)を配合したフラックス組成物を用いた場合であっても、その配合量が少ない場合ははんだ接合部のボイド発生及びはんだボールの発生の抑制効果は不十分であることが分かる。
Claims (9)
- (A)ベース樹脂と、(B)活性剤と、(C)チキソ剤と、(D)溶剤とを含むフラックス組成物であって、
前記活性剤(B)の配合量はフラックス組成物全量に対して4.5質量%以上35質量%以下であり、
前記活性剤(B)として(B−1)炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上2質量%以下、(B−2)炭素数が5から13のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下、及び(B−3)炭素数が20から22のジカルボン酸をフラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下含み、前記炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)と前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)の配合量が合計で4質量%以上18質量%以下であることを特徴とするフラックス組成物。 - 前記炭素数が3から4の直鎖の飽和ジカルボン酸(B−1)はマロン酸及びコハク酸の少なくとも一方であり、
前記炭素数が5から13のジカルボン酸(B−2)はグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、2−メチルアゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びトリデカン二酸から選ばれる少なくとも1種であり、
前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)はエイコサ二酸、8−エチルオクタデカン二酸、8,13−ジメチル−8,12−エイコサジエン二酸及び11−ビニル−8−オクタデセン二酸から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のフラックス組成物。 - 前記炭素数が20から22のジカルボン酸(B−3)は常温で液状または半固体状であることを特徴とする請求項1または2に記載のフラックス組成物。
- 酸化防止剤を更に含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフラックス組成物。
- 前記ベース樹脂(A)は(A−1)ロジン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のフラックス組成物。
- 前記ベース樹脂(A)は更に(A−2)合成樹脂を含むことを特徴とする請求項5に記載のフラックス組成物。
- 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフラックス組成物と、はんだ合金粉末とを含むことを特徴とするソルダペースト。
- 前記はんだ合金粉末はSn並びにAg、Bi、In、Sb、Cu、Ni及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む合金からなることを特徴とする請求項7に記載のソルダペースト。
- 請求項7または請求項8に記載のソルダペーストを用いて形成されるはんだ接合体を有することを特徴とする電子回路基板。
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