JP6917506B1 - フラックス、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置 - Google Patents

フラックス、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】はんだ接合部におけるウィスカ発生の抑制、良好なはんだ付性及び保存安定性を発揮し得るフラックス、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置の提供。【解決手段】ベース樹脂、有機酸、複素環式化合物、溶剤を含み、前記有機酸としてシクロヘキサンジカルボン酸をフラックス全量に対して0.05質量%以上15質量%未満含み、前記複素環式化合物をフラックス全量に対して0.05質量%以上15質量%未満含むフラックス。【選択図】なし

Description

本発明は、フラックス、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置に関する。
電子回路基板(プリント配線板やシリコンウエハ等)上に形成されている電子回路に電子部品を接合する方法として、はんだ合金といったはんだ接合用材料を用いたはんだ接合方法が一般的に用いられている。このはんだ接合方法としては、例えばフローソルダリング(電子回路基板と電子部品とを溶融したはんだに接触させてはんだ付を行う方法)、リフローソルダリング(はんだ合金からなる合金粉末とフラックスとを混合したソルダペーストや、ソルダプリフォーム等をリフロー炉で再溶融させてはんだ付を行う方法)等が挙げられる。
そしてこのはんだ接合により、電子回路実装基板上にはんだ接合部が形成され、電子回路実装基板上の電極と電子部品の電極とが電気的に接合される。
従来、このはんだ合金には鉛が使用されていた。しかし環境負荷の観点からRoHS指令等によって鉛の使用が制限されたため、近年では鉛を含有しない、所謂鉛フリーはんだ合金によるはんだ接合方法が一般的になりつつある。
この鉛フリーはんだ合金としては、例えばSn−Cu系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Bi系及びSn−Zn系はんだ合金等がよく知られている。その中でも、はんだ合金の強度、融点及びコスト等の観点で比較的バランスのとれているSn−Ag−Cu系はんだ合金が、民生用電子機器や車載用電子機器の電子回路実装基板に広く使用されている。
しかし、鉛フリーはんだ合金を使用してはんだ接合を行う場合、鉛を含有したはんだ合金ではほとんど発生し得なかったウィスカの発生が問題となっている。
ここでウィスカとは、金属の結晶表面から外側に向けて主にひげ状に成長した結晶である。鉛フリーはんだ合金を用いたはんだ接合を行う場合、特に電子回路実装基板上の電極や電子部品の電極においてSnを主成分とするウィスカが多く確認されている。
このウィスカは、電子回路実装基板上の電極や電子部品の電極に施されためっき内部に発生する残留応力によって当該めっきに含まれるSnが再結晶することがその発生原因と考えられている。そのため、前記めっきをリフローしてこれを再凝固させて内部応力を除去することで、このようなウィスカの成長は防止し得る。
しかし近年では、電子回路実装基板上に形成されたはんだ接合部にもウィスカが発生することが報告されている。はんだ接合部に発生するウィスカは導通性を有するため電気回路の短絡を引き起こし、電気的信頼性を著しく低下させる虞がある。
特に車載用電子機器の使用される環境は、民生用電子機器以上に腐食を促進しやすい高温高湿環境下であり、且つ長期間使用されることもあるため、ウィスカが発生し易く、また成長もし易い。
また今後、自動車の更なる電動化や自動運転化は進み、これに伴い、センサー及び通信機器の自動車内への搭載数が更に増加することが予想される。しかし自動車内における電子機器の搭載スペースには限界があるため、電子機器には更なるダウンサイジングが求められる。
電子機器の省スペース化は当然ながら電子回路実装基板及びこれに搭載される電子部品の省スペース化にも繋がる。そのため、電子回路実装基板に搭載される電子部品は、更なる微小化及び高密度化が求められる。
そして電子部品の微小化及び高密度化により、電子部品間や導体パターン間のピッチはより一層狭くなるため、はんだ接合部に発生するウィスカを原因とする電気回路の短絡はより発生し易くなる。このように、特に車載用電子機器においては、はんだ接合部におけるウィスカの発生抑制は重要な課題の1つとなりつつある。
ここで、鉛フリーはんだ合金は、鉛を含有したはんだ合金と比較してはんだ付性が劣る。そのため、はんだ接合時に補助材料として使用するフラックスにはんだ付性を補填する目的で、臭素やヨウ素といったハロゲン元素を含むハロゲン化合物を添加する方法が広く用いられている。
しかし、フラックスに含まれるハロゲン化合物(ハロゲン元素)は、上述したはんだ接合部に発生するウィスカの発生要因の1つに当たると考えられる。
即ち、前記はんだ接合部を形成する鉛フリーはんだ合金に含まれているSnは、周囲環境の湿気及び酸素、並びに当該はんだ接合部周辺に残留するフラックス残さに含まれるハロゲン成分によって酸化及び腐食し、SnOに変化する。前記はんだ接合部のうちSnがSnOになった部分の体積は膨張するため、腐食(SnOへの変化)が進行すると当該はんだ接合部の未腐食部に圧縮応力が生じ、この圧縮応力がウィスカの発生に繋がると考えられる。
このように、フラックスに含まれるハロゲン化合物(ハロゲン元素)は、触媒となって前記はんだ接合部に含まれるSnの腐食反応を促進し、当該はんだ接合部におけるウィスカの発生に深く関与しているものと考えられる。
本出願人らは、臭素やヨウ素を含有したハロゲン化合物を添加したフラックスAと、ハロゲン化合物を添加していないフラックスBとを用意し、フラックスAとフラックスBをそれぞれ鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末と混練したソルダペーストA及びBを用いて、高温高湿環境下でのはんだ接合部におけるウィスカの発生有無を確認した。
その結果、フラックスAを用いたソルダペーストAでは、形成したはんだ接合部にウィスカの発生が確認されたのに対して、フラックスBを用いたソルダペーストBでは、高温高湿環境下に2,000時間放置した後もはんだ接合部におけるウィスカの発生は確認されなかった。
このように、はんだ接合部におけるウィスカ発生の抑制には、ハロゲン化合物を含有しないフラックスを使用することが効果的であることが分かる。しかし上述の通り、鉛フリーはんだ合金は、鉛を含有したはんだ合金と比較してぬれ性やボイドの発生という観点ではんだ付性が劣る。そのため、ハロゲン化合物を含有するフラックスと比べ、鉛フリーはんだ合金を用い且つハロゲン化合物を含有しないフラックスを用いてはんだ接合を行う場合、そのはんだ付性は悪化することが当然に予想される。
そのため、ハロゲン化合物を含有していてもウィスカの発生を抑制できる、またはハロゲン化合物を含有しない、若しくはその配合量を低減したフラックスであって、鉛フリーはんだ合金を用いた場合にもそのはんだ付性を損なわないフラックスの提供が課題となっていた。
特許第4325746号 特許第6370324号 特開2011−143445号公報 国際公開第2012/118074号パンフレット 特許第4461009号 特許第5667101号
特許文献1には、酸性りん酸エステル及びその誘導体から選ばれた少なくとも1種の化合物を0.2〜4質量%含有する鉛フリーはんだ用の無洗浄型樹脂系フラックスが開示されている。当該フラックスは、少量の酸性りん酸エステルをフラックスに含有させることにより、活性剤としてハロゲン化合物を使用する場合においてもはんだ接合部におけるウィスカの発生を抑制し得るものである。
特許文献2には、フラックス組成物中における塩素濃度が900質量ppm以下、臭素濃度が900質量ppm以下であり、且つ、ハロゲン濃度が1,500質量ppm以下であって、ハイドロタルサイト化合物を含有するフラックス組成物を含むはんだ組成物が開示されている。当該フラックス組成物は、その塩素濃度及びハロゲン濃度を所定の数値以下とすることにより、はんだ接合部におけるSnウィスカの発生を抑制し得るものである。
特許文献1に開示される酸性りん酸エステルを含有するフラックス、及び特許文献2に開示されるハイドロタルサイト化合物を含有するフラックス組成物は、はんだ接合時に溶融したはんだ内に取り込まれたフラックスや空気を排出し難くなる虞がある。そのため、これらのフラックスを使用するソルダペーストを用いて形成したはんだ接合部の内部にはボイドが発生し易くなる虞がある。そしてはんだ接合部に発生したボイドは、車載用電子機器のように寒暖の差の激しい環境下に置かれる場合、はんだ接合部における亀裂発生の要因となるため、その信頼性の低下に繋がる虞がある。
また特許文献3には、ハロゲン化合物を含有しないフラックスが開示されている。当該フラックスは、ハロゲン化合物を含有せず、有機酸及びアミン化合物の少なくとも一方を活性剤として使用することで、はんだ接合部におけるウィスカの発生を抑制し、ぬれ性の向上を両立し得るものである。
しかし特許文献3に開示されるフラックスは、微小化及び高密度化された電子部品の実装、即ち、狭ピッチ化された電子部品の実装においても高い信頼性を発揮し得ることは開示されていない。
特許文献4には、ハロゲン化合物を含有しないフラックスが開示されている。当該フラックスは、有機酸と、イミダゾール系誘導体もしくは有機アミンを活性剤として組み合わせることにより、ハロゲン化合物を添加しない場合であってもフラックスのぬれ性を向上し得るものである。
特許文献5には、積極的にハロゲン化合物を含有しないはんだ融剤組成物が開示されている。当該はんだ融剤組成物は、メチルコハク酸からなる活性化成分とイミダゾール化合物またはイミダゾール誘導体を含有させることにより、適度な粘性、流動性、粘着性及び滑り性を発揮し得るものである。
特許文献6には、ハロゲン化合物を含有しないビヒクルを有するはんだ組成物が開示されている。当該はんだ組成物は、炭素数8以上の不飽和脂肪酸と当該不飽和脂肪酸以外の有機酸と、所定のイミダゾール化合物とを含有するビヒクルを含むことにより、優れたはんだ付性及び保存安定性を発揮し得るものである。
しかし、イミダゾール系誘導体やイミダゾール化合物を含有するフラックスは、フラックスやこれを用いたソルダペーストの保存安定性が悪化する虞がある。
ここで、上述のように、微小化及び高密度化された電子部品の実装においては、鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末の平均粒子径を、従来より使用されている30μm程度のものから10μm程度のものに変更することが検討されている。このような平均粒子径の小さい合金粉末は、単位体積あたりの表面積の増加に伴い、その酸化被膜量も増加し得る。
そのため、その酸化被膜を除去するためにより活性力の高いフラックスが必要となり得る。
しかし特許文献6のフラックスは、優れた保存安定性を発揮し得ることが開示されているものの、このような単位体積あたりの表面積の大きい合金粉末を使用したソルダペーストにおいても良好な保存安定性を発揮し得ることは開示されていない。
本発明は、はんだ接合部におけるウィスカ発生の抑制、良好なはんだ付性及び保存安定性を発揮し得るフラックス、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置の提供をその目的とする。
本発明のフラックスは、ベース樹脂と、有機酸と、複素環式化合物と、溶剤とを含み、前記有機酸として下記一般式(1)で表される化合物をフラックス全量に対して0.05質量%以上15質量%未満含み、前記複素環式化合物をフラックス全量に対して0.05質量%以上15質量%未満含む。
Figure 0006917506
(前記一般式(1)中、Xは1つ以上のカルボキシル基、アルキル基及び水素原子の群から選ばれる少なくともいずれかであって、これらの各置換基及び水素原子の位置並びにその数は限定されず、単一及び複数の組合せのいずれであってもよい。)
本発明のフラックスは、前記一般式(1)で表される化合物としてシクロヘキサンジカルボン酸を含むことが好ましい。
本発明のフラックスは、前記シクロヘキサンジカルボン酸として1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
前記複素環式化合物は、イミダゾール骨格、イミダゾリン骨格及びベンゾイミダゾール骨格の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
前記イミダゾール骨格を含む複素環式化合物はアルキル基を有することが好ましい。
本発明のフラックスは、更にチキソ剤をフラックス全量に対して0質量%超15質量%以下含むことが好ましい。
本発明のソルダペーストは、前記フラックスと、鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末とを含む。
前記鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末の平均粒子径は10μm以上30μm以下であることが好ましい。
本発明の電子回路実装基板は、前記ソルダペーストを用いて形成されるはんだ接合部を有する。
本発明の電子制御装置は、前記電子回路実装基板を有する。
本発明のフラックス、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置は、はんだ接合部におけるウィスカ発生の抑制、良好なはんだ付性及び保存安定性を発揮し得る。
以下、本発明のフラックス、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置の一実施形態を詳述する。なお、本発明が以下の実施形態に限定されるものではないことはもとよりである。
(1)フラックス
本実施形態のフラックスは、ベース樹脂と、有機酸と、複素環式化合物と、溶剤とを含む。
また本実施形態のフラックスは、ハロゲン化合物を含有せず、これにより、はんだ接合部におけるウィスカの発生を抑制することができる。なお、本実施形態においてハロゲン化合物を含有しないとは、意図的にハロゲン化合物を添加しないことを意味する。
<ベース樹脂>
前記ベース樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン、水添ロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン及びマレイン酸変性ロジン等のロジン誘導体を含むロジン系樹脂;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の各種エステル、メタクリル酸の各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のエステル、無水マレイン酸のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニル、酢酸ビニル等の少なくとも1種のモノマーを重合して得られるアクリル樹脂;スチレン−マレイン酸樹脂;エポキシ樹脂;ウレタン樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;テルペン樹脂;ポリアルキレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて用いることができる。
前記ベース樹脂としては、ロジン系樹脂とそれ以外の樹脂とを併用することが好ましく、ロジン系樹脂とアクリル樹脂との併用がより好ましい。
なお、ロジン系樹脂としては、特に酸変性されたロジンに水素添加をした水添酸変性ロジンが好ましく用いられる。
前記ベース樹脂の酸価は10mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。より好ましいその酸価は100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であり、140mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
また前記ベース樹脂の配合量はフラックス全量に対して10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は20質量%以上50質量%以下であり、30質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。
本実施形態のフラックスに前記ベース樹脂としてロジン系樹脂を含有させる場合、その配合量はフラックス全量に対して5質量%以上70質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は10質量%以上60質量%以下であり、20質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。
また前記ベース樹脂としてロジン系樹脂とアクリル樹脂とを併用する場合、アクリル樹脂の配合量はフラックス全量に対して5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は10質量%以上60質量%以下であり、20質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。
<有機酸>
本実施形態のフラックスは、前記有機酸として下記一般式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。本実施形態のフラックスは、後述する複素環式化合物を含有しても、前記有機酸として下記一般式(1)で表される化合物を併用することにより、良好な保存安定性を発揮し得る。
Figure 0006917506
(前記一般式(1)中、Xは1つ以上のカルボキシル基、アルキル基及び水素原子の群から選ばれる少なくともいずれかであって、これらの各置換基及び水素原子の位置並びにその数は限定されず、単一及び複数の組合せのいずれであってもよい。)
本実施形態のフラックスは、前記一般式(1)で表される化合物としてシクロヘキサンジカルボン酸を含むことが好ましい。
本実施形態のフラックスが前記一般式(1)で表される化合物としてシクロヘキサンジカルボン酸を含む場合、濡れ性及びはんだ付け性を確保した上で、フラックスの保存安定性をより向上し得る。
また本実施形態のフラックスは、前記シクロヘキサンジカルボン酸として、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の少なくともいずれかを含むことが特に好ましい。更に前記シクロヘキサンジカルボン酸の異性体として、シス型、トランス型のいずれも使用することができるが、シス型の方がより好ましい。
これらは単独でまたは複数を組合せて用いることができる。
前記一般式(1)で表される化合物の配合量は、フラックス全量に対して0.05質量%以上15質量%未満であることが好ましい。より好ましいその配合量は2質量%以上10質量%以下であり、4質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物の配合量をこの範囲とすることにより、フラックスの保存安定性を更に向上し得る。
本実施形態のフラックスには、前記一般式(1)で表される化合物と共に、これ以外の有機酸(以下、「その他の有機酸」という。)を含有させることができる。
前記その他の有機酸としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸、その他の有機酸等が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等が挙げられる。
また前記ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等が挙げられる。
更にその他の有機酸等としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等が挙げられる。
これらは単独でまたは複数を組合せて用いることができる。
前記有機酸として前記一般式(1)で表される化合物と前記その他の有機酸とを併用する場合、その合計配合量は0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は0.5質量%以上10質量%以下であり、0.5質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
<複素環式化合物>
本実施形態のフラックスは、複素環式化合物を含有することが好ましい。本実施形態のフラックスは、複素環式化合物を含有することにより、ハロゲン化合物を含有せずとも良好なはんだ付性を発揮し得る。また上述のように、本実施形態のフラックスは、前記一般式(1)で表される化合物を併用することにより、良好な保存安定性を発揮し得る。
本実施形態のフラックスは、前記複素環式化合物として、イミダゾール骨格、イミダゾリン骨格及びベンゾイミダゾール骨格の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
このような前記複素環式化合物としては、アルキルイミダゾールが好ましく用いられる。
前記アルキルイミダゾールとしては、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、ウンデシルイミダゾール等が挙げられる。
これらは単独でまたは複数を組合せて用いることができる。
前記複素環式化合物の配合量は、フラックス全量に対して0.05質量%以上15質量%未満であることが好ましい。より好ましいその配合量は1質量%以上10質量%以下であり、2質量%以上8質量%以下であることが特に好ましい。
前記複素環式化合物の配合量をこの範囲とすることにより、フラックスのはんだ付性を更に向上し得る。
<溶剤>
前記溶剤としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコールエーテル等を使用することができる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
前記溶剤の配合量は、フラックス全量に対して5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は10質量%以上40質量%以下であり、20質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。
<チキソ剤>
本実施形態のフラックスには、更にチキソ剤を含有させることができる。前記チキソ剤としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、オキシ脂肪酸類が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
前記チキソ剤の配合量は、フラックス全量に対して0質量%超15質量%以下であることが好ましい。より好ましいその配合量は1質量%以上10質量%以下であり、3質量%以上8質量%以下であることが特に好ましい。
<酸化防止剤>
本実施形態のフラックスには、鉛フリーはんだ合金の酸化を抑える目的で更に酸化防止剤を含有させることができる。この酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。その中でも特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。これらは単独でまたは複数を組合せて使用することができる。
前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
<添加剤>
本実施形態のフラックスには、更につや消し剤、消泡剤及び無機フィラー等の添加剤を含有させることができる。
前記添加剤の配合量は、フラックス全量に対して10質量%以下であることが好ましい。またこれらの更に好ましい配合量はフラックス全量に対して5質量%以下である。
(2)ソルダペースト
本実施形態のフラックスは、例えばこれを鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末と混合してソルダペーストとすることができる。
但し、本実施形態のフラックスは、ソルダペーストを用いる以外のはんだ接合方法、例えばはんだボールによる実装(はんだ接合)、鉛フリーはんだ合金と本実施形態のフラックスを含むはんだ接合用材料によるはんだ接合等にも使用することができる。
なお、本実施形態のフラックスは、特にソルダペーストに好ましく用いられる。
<鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末>
前記鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末としては、例えばSn、Ag、Cu、Bi、Sb、Ni、Co、P、Ga、Ge、Fe、Mn、Cr、Mo、In、Cd、Tl、Se、Au、Ti、Si、Al、Mg及びZn等を含む合金を使用することができる。
なお、上述した元素以外であってもその組合せに使用することは可能であり、当然ながら不可避不純物も含まれるものである。
前記ソルダペーストを作製する場合、前記鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末とフラックスとの配合比率は、鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末:フラックスの比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましい配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
なお前記鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末の平均粒子径は1μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上15μm以下であることが特に好ましい。
ここで、上述の通り、特に車載用電子機器においては、電子回路実装基板に実装する電子部品の微小化及び高密度化が進んでおり、これに伴い、微細な(平均粒子径の小さい)鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末を使用したはんだ接合が行われるようになっている。
しかし鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末は、平均粒子径が小さければ小さいほど、その単位体積あたりの表面積が大きくなる。そして当該表面積が大きくなればなるほど、合金粉末表面の酸化被膜の量(面積)が増加し、フラックスと合金粉末との反応がより進行し易いため、フラックスのはんだ付性及び保存安定性が阻害される虞がある。
しかし本実施形態のソルダペーストは、前記フラックスを含有することにより、例えば平均粒子径が10μm程度の鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末を使用した場合であっても、良好なはんだ付性及び保存安定性を発揮し得る。
このように、本実施形態のソルダペーストは、電子部品の微小化及び高密度化、並びに高い信頼性の求められる車載用電子機器(車載用電子回路実装基板)においても好適に使用することができる。
(3)電子回路実装基板
本実施形態の電子回路実装基板は、例えば以下の方法により形成される。なお、本実施形態のはんだ接合部が形成される基板としては、プリント配線板、シリコンウエハ及びセラミックパッケージ基板等、電子部品の搭載、実装に用いられるものであればこれらに限らず使用できる。
即ち、例えば予め定められた位置に所定のパターンの電極及び絶縁層を有する電子回路基板上に、このパターンに合わせて前記ソルダペーストを印刷する。そして当該電子回路基板上の所定の位置に電子部品を搭載し、これを例えば220℃から245℃の温度でリフローすることにより、前記ソルダペーストを使用して形成されたはんだ接合部を有する電子回路実装基板が作製される。
前記ソルダペーストは、前記フラックスを含有することにより、良好な保存安定性及びはんだ付性を発揮し得るため、信頼性の高いはんだ接合部を形成することができる。また当該フラックスにはハロゲン化合物が含有されていないため、はんだ接合部におけるウィスカの発生を抑制でき、その信頼性を向上させることができる。
このように、本実施形態のはんだ接合部を有する電子回路実装基板は、高い信頼性が要求される車載用電子回路実装基板として特に好適に使用することができる。
(4)電子制御装置
またこのような電子回路実装基板を組み込むことにより、信頼性の高い電子制御装置が作製される。そしてこのような電子制御装置は、特に高い信頼性の求められる車載用電子制御装置として好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1及び表2に記載の各成分を混練し、実施例1から実施例8、比較例1から比較例7に係るフラックスを作製した。なお、表中の数値の単位は全て質量%である。
そして、これらの各フラックス11質量%と、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金粉末(平均粒子径:10μm)89質量%とを混合し、各ソルダペーストを作製した。
Figure 0006917506
※1 水添酸変性ロジン 荒川化学工業(株)製
※2 脂肪酸アマイド 三菱ケミカル(株)
Figure 0006917506
※1 水添酸変性ロジン 荒川化学工業(株)製
※2 脂肪酸アマイド 三菱ケミカル(株)
1.ウィスカ発生確認試験
以下の用具を用意した。
・QFP部品(ピッチ幅:0.5mm、縦20mm×横20mm×厚さ1.7mm、端子数:144ピン、Snメッキ)
・上記QFP部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記QFP部品を接続する電極とを備えたプリント配線板
・上記パターンを有する厚さ150μmのメタルマスク
前記プリント配線板に前記メタルマスクを用いて各実施例及び各比較例に係る各ソルダペーストを印刷し、前記QFP部品を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNV30−508EM2−X、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各プリント配線板を加熱して、各プリント配線板と各QFP部品とを電気的に接続するはんだ接合部を有する各電子回路実装基板を作製した。この際のリフロー条件はプリヒートを170℃から190℃、ピーク温度を245℃とし、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を1℃から8℃/秒とした。また酸素濃度は1,500±500ppmに設定した。
そして、上記各電子回路実装基板について、恒温恒湿器内に85℃85%の条件下で200時間放置後、25℃50%の条件下で24時間放置する工程を1サイクルとし、この工程を5サイクル行い、各試験基板を作製した。
その後、前記各試験基板のはんだ接合部の状態について、走査電子顕微鏡(製品名:TM−1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察し、以下の基準に従い評価した。その結果を表3及び表4に表わす。
〇:はんだ接合部にウィスカが発生していない
×:はんだ接合部にウィスカが発生している
2.保存安定性試験
各実施例及び各比較例に係る各ソルダペースト(以下、これらを纏めて「保存安定性試験用ソルダペースト」という。)をそれぞれ容器に収容し、これらを室温(25℃)下で2時間から3時間放置した。その後、前記各容器の蓋を開け、収容された前記各ソルダペーストをスパチュラを用いて空気の混入を避けるようにして1分間から2分間かき混ぜた。
次いで、保存安定性試験用ソルダペーストをスパイラル型粘度計(製品名:PCU−II型、(株)マルコム製)にセットし、回転数10rpm、温度25℃の条件にて6分間、ローターを回転させた。その後、一旦ローターの回転を停止させ、温度調整をした後に、回転数を10rpmに調整し、更に3分間ローターを回転させた後の、保存安定性試験用ソルダペーストのそれぞれの粘度値(粘度a)を計測した。
また保存安定性試験用ソルダペーストをそれぞれを容器に収容し、30℃の温度環境下に設定した恒温槽にこれを入れ、7日放置した。その後、上記と同じ条件にて保存安定性試験用ソルダペーストのそれぞれの粘度値(粘度b)を計測した。
そして、粘度aと粘度bに基づく保存安定性試験用ソルダペーストそれぞれの粘度上昇率を算出し、以下の基準に従い評価した。その結果を表3及び表4に表わす。
◎:粘度上昇率5%未満
〇:粘度上昇率5%以上10%未満
△:粘度上昇率10%以上20%以下
×:粘度上昇率21%以上
3.ぬれ性試験
JIS規格Z3284−4:2014(4.1:ぬれ効力及びディウェッティング試験)の規定に準じて行った。
清浄した銅板と、直径6.5mmの穴が空いたメタルマスク(厚さ:0.2mm)とを用意した。
前記銅板上に、前記メタルマスクを用いて各実施例及び各比較例に係るソルダペーストを印刷し、各基板を作製した。
次いで、Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金よりも35℃高い温度(誤差:3℃以内)に設定したはんだバス上で、ソルダペーストの印刷面を上として前記各基板を加熱した。前記各基板上に印刷された前記各ソルダペーストの一部が溶融した時点から5秒間加熱を続けた後、前記各基板を水平状態にして取り出した。そして当該各基板を室温まで冷却して、各試験板を作製した。当該各試験板上のはんだ(ソルダペーストに含まれる鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末が溶融したもの)の広がりを目視で確認し、以下の基準に従い評価した。その結果を表3及び表4に表わす。
◎:溶融したはんだがソルダペーストを塗布した面積以上に広がり、試験板をぬらしている状態である
〇:ソルダペーストを塗布した部分は、全てはんだでぬれた状態である
△:ソルダペーストを塗布した部分の大半は、はんだでぬれた状態(ディウェッティングも含まれる。)である
×:試験板は、はんだがぬれた様子はなく、溶融したはんだは1つまたは複数のソルダボールとなった状態(ノンウェッティング)である
4.ソルダボール発生確認試験
JIS規格Z3284−4:2014(4.2:ソルダボール試験)の規定に準じて行った。
セラミック板と、直径6.5mmの穴が空いたメタルマスク(厚さ:0.2mm)とを用意し、前記セラミック板上に、前記メタルマスクを用いてソルダペーストを印刷する以外は、3.ぬれ性試験と同じ条件にて各試験板を作製した。
そして、各試験板上に発生したソルダボールの粒径及び数を以下の基準に従い評価した。その結果を表3及び表4に表わす。
◎:はんだが1つの大きな球となり、その周囲に発生した直径75μm以下のソルダボールは3つ以下である
〇:はんだが1つの大きな球となり、その周囲に発生した直径75μm以下のソルダボールは4つ以上であり、これらは半連続の環状に並んでいない
△:はんだが1つの大きな球となり、その周囲に多数の細かい球が半連続の環状に並んでいる
×:はんだが1つの大きな球とはならず、多数の細かい球が分散している
Figure 0006917506
Figure 0006917506
表4のうち、「−」は未評価を示す。
以上に示す通り、実施例に係るソルダペーストは、はんだ接合部におけるウィスカの発生を抑制すると共に、良好な保存安定性、ぬれ性(ソルダボールの発生抑制)効果を発揮し得ることが分かる。
また実施例に係るソルダペーストは、平均粒子径が10μm程度の微小な鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末を使用した場合であっても、良好な保存安定性及びぬれ性(ソルダボールの発生抑制)効果を発揮し得る。
このように、実施例に係るソルダペーストは、微小化及び高密度化された電子部品の実装にも好適に用いることができ、また高い信頼性の求められる車載用電子回路実装基板にも好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. ベース樹脂と、有機酸と、複素環式化合物と、溶剤とを含み、
    前記有機酸として下記一般式(1)で表される化合物をフラックス全量に対して0.05質量%以上1質量%以下含み、
    前記複素環式化合物をフラックス全量に対して0.05質量%以上1質量%以下み、
    前記一般式(1)で表される化合物としてシクロヘキサンジカルボン酸を含み、
    前記複素環式化合物はイミダゾール骨格を含み、
    前記イミダゾール骨格を含む複素環式化合物はアルキル基を有するフラックス。
    Figure 0006917506
    (前記一般式(1)中、Xは1つ以上のカルボキシル基、アルキル基及び水素原子の群から選ばれる少なくともいずれかであって、これらの各置換基及び水素原子の位置並びにその数は限定されず、単一及び複数の組合せのいずれであってもよい。)
  2. 前記シクロヘキサンジカルボン酸として1,3−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の少なくともいずれかを含む請求項に記載のフラックス。
  3. 更にチキソ剤をフラックス全量に対して0質量%超15質量%以下含む請求項1または請求項2に記載のフラックス。
  4. 請求項1から請求項に記載のフラックスと、鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末とを含むソルダペースト。
  5. 前記鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末の平均粒子径は10μm以上30μm以下である請求項に記載のソルダペースト。
  6. 請求項または請求項に記載のソルダペーストを用いて形成されるはんだ接合部を有する電子回路実装基板。
  7. 請求項に記載の電子回路実装基板を有する電子制御装置。
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