JP2018149559A - フラックス組成物及びソルダペースト - Google Patents
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Description
ここで、無機フィラーを配合したフラックスをクリーム半田やソルダペースト等に使用すると、はんだ合金のぬれ性を低下させたり、形成されるはんだ接合部にボイドが発生し易いという背反特性がある。そのため、特許文献1及び2に開示されるフラックス及びクリーム半田(クリームはんだ)は、フラックス残さの絶縁特性は改善されるものの、はんだ合金のぬれ性が劣る、形成されるはんだ接合部にボイドが発生し易い等の問題が起こり得る。
本実施形態に係るフラックス組成物は、(A)ベース樹脂と、(B)活性剤と、(C)チキソ剤と、(D)溶剤と、(E)インジウム錯体とを含む。
前記ベース樹脂(A)としては、例えば(A−1)ロジン系樹脂を用いることが好ましい。
当該合成樹脂(A−2)としては、例えばアクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂、ポリアルキレンカーボネート及びカルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物が挙げられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。これらの中でも特にアクリル樹脂が好ましく用いられる。
次に前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物としては、例えばダイマージオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルダイマージオールのようなダイマー酸から誘導される化合物であって、その末端にアルコール基を有するもの等が挙げられ、例えばPRIPOL2033、PRIPLAST3197、PRIPLAST1838(以上、クローダジャパン(株)製)等を用いることができる。
前記ロジン誘導体化合物は、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合することにより得られる。この脱水縮合の方法としては一般的に用いられる方法を使用することができる。また、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合する際の好ましい重量比率は、それぞれ25:75から75:25である。
前記活性剤(B)としては、例えばカルボン酸類、ハロゲンを含む化合物等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記モノカルボン酸としては、例えばプロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
また前記その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸、アントラニル酸等が挙げられる。
なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
また前記活性剤(B)として好ましいカルボン酸類は、1種単独で用いる場合にはピコリン酸が好ましく、複数種を混合して用いる場合にはピコリン酸、コハク酸及びスベリン酸の混合が好ましく用いられる(但し、他のカルボン酸類を更に混合してもよい)。またこの場合であっても前記ハロゲンを含む化合物等と混合して用いてよい。
前記非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられ、例えば塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物、フッ化物のように塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよく、またこの4つの元素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。当該化合物は水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールのように水酸基等の極性基を有することが好ましい。当該ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコール等の臭素化アルコール;2−ブロモヘキサン酸等の臭化有機酸;1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノール等の塩素化アルコール;3−フルオロカテコール等のフッ素化アルコール;その他のこれらに類する化合物が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
なお前記活性剤(B)として好ましいハロゲンを含む化合物は、1種単独で用いる場合には2−ブロモヘキサン酸が好ましく用いられる。但しこの場合であっても前記カルボン酸類等と混合して用いてよい。
前記チキソ剤(C)としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、飽和脂肪酸ビスアミド類、オキシ脂肪酸、ジベンジリデンソルビトール類が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記チキソ剤(C)の配合量は、フラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
なお前記チキソ剤(C)としては、1種単独で用いる場合には、脂肪酸アマイド類が好ましく用いられる。
前記溶剤(D)としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルジグリコール、(2−エチルヘキシル)ジグリコール、フェニルグリコール、ブチルカルビトール、オクタンジオール、αテルピネオール、βテルピネオール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビスイソプロピル等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記溶剤(D)の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
なお前記溶剤(D)としては、1種単独で用いる場合は、ヘキシルジグリコールが好ましく用いられる。
前記インジウム錯体(E)としては、インジウムイオンに配位子となる有機化合物を結合させたものが挙げられ、アセチルアセトンインジウムやトリスステアリン酸インジウム等の市販されているものも使用できるが、配位子となる有機化合物を使用して、塩類として前記インジウム錯体(E)を生成してもよい。
有機化合物を使用して塩類として前記インジウム錯体(E)を生成する場合の生成方法としては公知の方法を使用することができる。例えばアセチルアセトンを配位子としてインジウムイオンに結合させてアセチルアセトンインジウムを生成する場合、インジウム金属を塩素化した塩化インジウムをアセチルアセトン中で加熱してインジウム錯体を合成する。そして副生する塩酸を除去するために、上記インジウム錯体を含む溶液を酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼンまたはトルエン等の有機相と水相に分液した後、有機相に溶解したアセチルアセトンインジウムを濃縮及び凍結乾燥する方法を採り得る。
またこのようなフラックス組成物は、活性剤の配合量を増量等せずともはんだ合金のぬれ性を確保し得るため、ステンシルライフ、印刷性及びはんだ接合部のボイド抑制といったソルダペーストにおける良好なリフロー特性を発揮することができる。
更には、前記インジウム錯体(E)は、金属元素としてのインジウムよりもはんだ付け時における電子部品脇に発生するはんだボールの発生を抑制し得る。
但し、前記インジウム錯体(E)の配合量がフラックス組成物全量に対して1質量%を超えると、形成するはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため、好ましくない。
前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
前記添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態のソルダペーストは、例えば前記フラックス組成物と、鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末とを混合することにより得られる。
前記合金粉末とフラックス組成物との配合比率は、合金粉末:フラックス組成物の比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましいその配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
そして本実施形態のフラックス組成物及びソルダペーストを用いて形成されたフラックス残さは良好な絶縁特性を有するため、基板におけるイオンマイグレーションや配線間の絶縁不良を抑制すると共に、はんだ付け時においてもはんだ合金の良好なぬれ性を確保でき、更にステンシルライフ、印刷性及びはんだ接合部のボイド抑制といったソルダペーストにおける良好なリフロー特性も確保することができる。
よってこのようなフラックス残さを有する電子回路基板は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。
メタクリル酸10質量%、2−エチルヘキシルメタクリレート51質量%、ラウリルアクリレート39質量%を混合した溶液を作製した。
その後、撹拌機、還流管及び窒素導入管とを備えた500mlの4つ口フラスコにジエチルヘキシルグリコール200gを仕込み、これを110℃に加熱した。次いで前記溶液300gにアゾ系ラジカル開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(製品名:V−601、和光純薬(株)製)を0.2質量%から5質量%を加えてこれを溶解させた。
この溶液を前記4つ口フラスコに1.5時間かけて滴下し、当該4つ口フラスコ内にある成分を110℃で1時間撹拌した後に反応を終了させ、合成樹脂を得た。なお、合成樹脂の重量平均分子量は7,800Mw、酸価は40mgKOH/g、ガラス転移温度は−47℃であった。
表1に記載の各成分を混練し、フラックス組成物を得た。なお、特に記載のない限り、表1に記載の配合量の単位は質量%である。
※2 BASFジャパン(株)製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤
※3 東亜合成(株)製 Zr・Mg・Al系無機フィラー
前記各フラックス組成物を11質量%と、以下の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから38μm)89質量%とを混合し、実施例1から実施例4及び比較例1から6に係る各ソルダペーストを作製した
実施例1から実施例4及び比較例1から比較例4及び比較例6:Sn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだ合金
比較例5:Sn−3Ag−0.5Cu−0.2In鉛フリーはんだ合金
JIS規格Z3284に準拠し、JIS2型くし型電極基板(導体幅:0.318mm、導体間隔:0.318mm、大きさ:30mm×30mm)上にメタルマスク(くし型電極パターンに合わせて、スリット状に加工したもの。厚み100μm)を用いて各ソルダペーストを印刷した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP40−577PH、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各基板を加熱して各試験基板を得た。この際のリフロー条件は、プリヒートが170℃から180℃で75秒間、ピーク温度を230℃、220℃以上の時間が30秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板を温度85℃、相対湿度95%に設定した恒温恒湿試験機(製品名:小型環境試験機SH−641、エスペック(株)製)に投入し、当該恒温恒湿試験機内の温湿度が設定値に到達した時点から2時間後の絶縁抵抗値を初期絶縁抵抗値として測定した。
そして、初期絶縁抵抗値計測から所定時間経過後(100時間後、200時間後、300時間後、400時間後及び500時間後)に絶縁抵抗値の測定を行い、初期絶縁抵抗値、及び所定時間経過後の絶縁抵抗値のうちの最小値(最低絶縁抵抗値)について、以下の基準に従って評価した。その結果を表2に表す。
なお所定時間経過後の絶縁抵抗値は、上記恒温恒湿試験機内測定電圧を100Vとし、測定秒数60秒後の絶縁抵抗値を測定した。
○:絶縁抵抗値が1.0×109Ω以上
△:絶縁抵抗値が1.0×108Ω以上1.0×109Ω未満
×:絶縁抵抗値が1.0×108Ω未満
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極とを備えたガラスエポキシ基板(t=1.6mm)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷し、それぞれに前記チップ部品20個を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP40−577PH、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した各試験基板を作製した。この際のリフロー条件は、プリヒートが170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、各はんだ接合部におけるチップ部品の電極下の領域(図1の(a)で示す領域)及びフィレットが形成されている領域(図1の(b)で占めす領域)におけるボイドの面積率(総ボイド面積/ランド面積×100)を算出し、以下のように評価した。その結果を表2に表す。
○:ボイド面積率が10%以下
△:ボイド面積率が10%超15%未満
×:ボイド面積率が15%以上
2.0mm×1.2mmのサイズのチップ部品を20個使用する以外は上記(2)ボイド試験と同様の条件にて各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、その周辺にはんだボールが発生しているチップ部品数を算出し、以下のように評価した。その結果を表2に表す。
○:5未満
△:5以上10以下
×:11以上
なお表2に示す通り、Inを添加した鉛フリーはんだ合金を使用した比較例5においては、はんだボール抑制効果は十分ではなく、インジウム錯体(E)をフラックス組成物に配合することにより、このような効果をも発揮し得ることが分かる。
Claims (4)
- (A)ベース樹脂と、(B)活性剤と、(C)チキソ剤と、(D)溶剤と、(E)インジウム錯体とを含むことを特徴とするフラックス組成物。
- 前記インジウム錯体(E)の配合量はフラックス組成物全量に対して0.1質量%以上1質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のフラックス組成物。
- 前記インジウム錯体(E)は、インジウムイオンに配位子となる有機化合物を使用して塩類として生成される錯体化合物であり、
前記有機化合物はアセチルアセトン等のβ―ジカルボニル化合物類;エチレンジアミン、ピリジン、ポルフィリン等のアミン類;イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、エチレンジアミン二酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸等のアミノカルボン酸類;ニトリロトリスメチレンホスホン酸等のホスホン酸類;ステアリン酸、パルミチン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、マルガリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸類;オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪族カルボン酸類;安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸類の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラックス組成物。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフラックス組成物と鉛フリーはんだ合金とを含むことを特徴とするソルダペースト。
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