以下、本発明の係合構造の実施形態について説明する。本実施形態では、浄水シャワーヘッド(以下、単にシャワーヘッドという。)におけるヘッド部とグリップ部とを連結する際の係合構造について説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のシャワーヘッド1は、ヘッド部10とグリップ部30が連結された形状とされている。ヘッド部10には、浄水又は原水を切り替える切替部11と、選択された浄水又は原水が吐水される吐水部12と、内部に設けられた図示しない通水室を被覆するヘッドカバー13と、浄水カートリッジ80が着脱可能に取り付けられたジョイント20が設けられている。ヘッドカバー13の基端部は円筒状に形成されており、円筒状のジョイント20は、先端側がヘッドカバー13の基端側に挿入されて、その基端側がヘッドカバー13の基端側から突出する形状で取り付けられている。なお、以下の説明では、シャワーヘッド1におけるヘッド部10側を先端側、グリップ部30側を基端側とする。
ヘッド部10内の通水室には、図示しない浄水用の通水路と原水用の通水路が形成されている。浄水用の通水路には浄水カートリッジ80を介した湯水が供給され、原水用の通水路には浄水カートリッジ80を介さない湯水が供給されるように構成されている。切替部11により浄水又は原水が切り替えられると、いずれかの通水路が選択されて、吐水部12から浄水又は原水が吐水される。
図1及び図2に示すように、グリップ部30は、円筒状に形成されており、その基端部には、図示しないホースを接続するためのネジが螺設された接続部30aが設けられている。グリップ部30の先端側の周面には、浄水カートリッジ80の交換時期を視認するための窓32が形成されている。
本実施形態のシャワーヘッド1は、ヘッド部10のジョイント20を、グリップ部30内に挿入した状態で相対回転させ、ヘッド部10(ジョイント20)をグリップ部30から抜け止め状態に連結させてなるものである。図2及び図3(a)に示すように、ジョイント20の外周面には、雄ネジ部21が形成されている。また、図4(a)及び図4(b)に示すように、グリップ部30の内周面には、雌ネジ部31が形成されている。雄ネジ部21と雌ネジ部31との螺合により、グリップ部30がジョイント20に脱着可能に取り付けられ、ヘッド部10とグリップ部30とが連結される。
図2に示すように、ジョイント20においてヘッドカバー13から突出した部分の先端側の部分には、浄水カートリッジ80の交換時期の月表示を選択可能な表示部22が設けられている。表示部22で選択した月表示は、ジョイント20とグリップ部30とを連結した状態で、グリップ部30に形成された窓32から視認することができる。表示部22の基端側には、ジョイント20とグリップ部30とを連結した状態で、グリップ部30の内周面に当接して水密性を確保する弾性リング23が設けられている。
図2及び図3(a)に示すように、ジョイント20における雄ネジ部21より基端側は、ジョイント20において最も小径の筒状に形成されている。ここでは、この部分を基端側筒部24というものとする。
図2及び図3(a)に示すように、基端側筒部24の周壁には、対向する2箇所に第1弾性係合部40が設けられている。第1弾性係合部40は、ヘッド部10及びグリップ部30を連結する際に、ジョイント20の径方向に弾性変形可能に構成されている。また、ジョイント20の基端部端縁には、第2弾性係合部50が設けられている。第2弾性係合部50は、一方の第1弾性係合部40の基端側であって、基端側筒部24の周方向における同じ位置に設けられている。第2弾性係合部50は、ヘッド部10及びグリップ部30を連結する際に、ジョイント20の軸方向に弾性変形可能に構成されている。
図3(a)及び図3(b)に示すように、第1弾性係合部40は、基端側筒部24の周方向に延びる長板状に形成されており、長手方向両端部で基端側筒部24の周壁に一体的に接続支持されている。第1弾性係合部40の短手方向両端部には、第1弾性係合部40の長辺に沿って延びる一対のスリット41が形成されている。本実施形態では、第1弾性係合部40の長手方向の長さは、基端側筒部24の周長の約1/4程度であり、第1弾性係合部40の幅は、基端側筒部24の軸方向の長さの約1/20〜1/10程度であり、一つのスリット41の幅とほぼ同じか少し広く形成されている。
図3(b)及び図3(c)に示すように、第1弾性係合部40の長手方向中間部には、基端側筒部24の径方向外方に突出する第1凸部42が、第1弾性係合部40の幅全体に亘って形成されている。ここでは、第1弾性係合部40の長手方向中間部とは、両端部以外の部分を言うものとする。
図3(c)に示すように、第1弾性係合部40は、基端側筒部24の周壁より肉厚が薄く形成されている。具体的には、第1弾性係合部40の内面は、基端側筒部24における第1弾性係合部40以外の部分の内周面と面一とされる一方、第1弾性係合部40の外面は、基端側筒部24における第1弾性係合部40以外の部分の外周面より径方向内方へ凹んだ形状とされている。そのため、第1弾性係合部40が弾性変形していない通常の状態では、第1凸部42は、その径方向外方の一部が、基端側筒部24における第1弾性係合部40以外の部分の外周面より突出した状態とされている。図3(a)に示すように、第1凸部42が形成された部分では、第1凸部42の最も高い部分を通る仮想円の外径L2は、基端側筒部24の外径L1より大きい。図3(c)に示すように、外径L2と外径L1の差は、第1凸部42の基端側筒部24の外周面からの突出長H1の2倍に相当する。
図3(c)に示すように、第1凸部42は、基端側筒部24の軸方向に直交する横断面が三角形状に形成された三角柱形状をなしており、周方向に対向する2つの傾斜面42a、42bの勾配が異なっている。具体的には、ジョイント20とグリップ部30を相対回転させて連結する際に、締め付け方向の前側に形成された第1傾斜面42aは、締め付け方向の後側に形成された第2傾斜面42bより緩い勾配とされている。本実施形態では、第1傾斜面42aは、約20〜45゜の勾配とされ、第2傾斜面42bは、約80〜90゜の勾配とされている。また、第1凸部42の最も高い部分(第1凸部42の基端側筒部24の外周面からの突出長H1の部分)は、第1弾性係合部40の長手方向の中央にほぼ一致している。
図3(a)及び図3(b)に示すように、第2弾性係合部50は、基端側筒部24の周方向に延びる長板状に形成されており、長手方向両端部で基端側筒部24の周壁に一体的に接続支持されている。第2弾性係合部50の先端側には、第2弾性係合部50の長辺に沿って延びるスリット51が形成されており、第2弾性係合部50は、基端側筒部24に形成されたスリット51によって長板状とされている。そのため、第2弾性係合部50の厚みは、基端側筒部24の周壁の厚みと同一である。
本実施形態では、第2弾性係合部50の長手方向の長さは、基端側筒部24の周長の約1/4程度であり、第1弾性係合部40の長手方向の長さとほぼ同一となっている。また、第2弾性係合部50の幅は、第1弾性係合部40の幅とほぼ同一となっている。第2弾性係合部50の長手方向中央には、基端側筒部24の軸方向基端側に突出する第2凸部52が、第2弾性係合部50の厚み方向全体に亘って形成されている。
図3(a)及び図3(d)に示すように、第2凸部52は、ジョイント20の厚さ方向に直交し軸方向に沿った横断面が半円形状に形成された半円柱形状をなしている。第2凸部52の突出長H2は、スリット51の幅とほぼ同一に形成されている。また、第2凸部52の厚みは、後に説明するグリップ部30における第2筒部34の周壁の厚みと第3筒部35の周壁の厚みとの差とほぼ同一に形成されている。
図4(a)及び図4(b)に示すように、円筒状に形成されたグリップ部30は、先端側から基端側に向かうにつれて、内径が異なる複数の筒部が一体的に連設された形状とされている。グリップ部30の外周面は平滑面とされており、先端側から基端側に向かうにつれて、その内径が段階的に減少する形状とされている。ここでは、雌ネジ部31が形成された部分を第1筒部33、第1筒部33の基端側に隣接する部分を第2筒部34、第2筒部34の基端側に隣接する部分を第3筒部35というものとする。
図3(a)及び図4(a)に示すように、第1筒部33の内径R1は、基端側筒部24における第1凸部42の最も高い部分を通る仮想円の外径L2とほぼ同一とされている。第2筒部34の内径R2は、基端側筒部24の外径L1とほぼ同一とされている。
図4(a)及び図4(b)に示すように、第2筒部34の先端側端縁の内周面には、径方向外方へ凹む第1凹部60が、対向する2箇所に形成されている。第1凹部60は、ヘッド部10及びグリップ部30を連結する際に、第1弾性係合部40に形成された第1凸部42と凹凸の関係で係合する被係合部として機能する。また、第3筒部35の先端側端縁には、先端側端縁から軸方向先端側に突出する第3凸部71及び第4凸部72が周方向に並設されており、第3凸部71及び第4凸部72の間に、第2凹部70が形成されている。第2凹部70は、ヘッド部10及びグリップ部30を連結する際に、第2弾性係合部50に形成された第2凸部52と凹凸の関係で係合する被係合部として機能する。
図4(a)及び図4(c)に示すように、第2筒部34の先端側端縁の内周面に形成された第1凹部60は、グリップ部30の軸方向に直交する横断面が三角形状とされている。第1凹部60は、第1弾性係合部40の第1凸部42と相似形に形成されており、第1凹部60の周方向に対向する2つの傾斜面61、62は、その勾配が異なっている。第1凹部60の傾斜面61、62の勾配は、具体的には、ジョイント20とグリップ部30を相対回転させて連結する際に、締め付け方向の後側に形成された第1傾斜面61が、締め付け方向の前側に形成された第2傾斜面62より緩い勾配とされている。また、第1凹部60の深さD1は、第1凸部42の基端側筒部24の外周面からの突出長H1よりわずかに深く形成されている。
図4(b)及び図6(a)に示すように、第3凸部71及び第4凸部72は、グリップ部30の厚さ方向に直交し軸方向に沿った横断面形状は互いに異なっている。ジョイント20とグリップ部30を相対回転させて連結する際に、締め付け方向の前側に形成された第3凸部71は断面半円形状であり、締め付け方向の後側に形成された第4凸部72は断面略台形状である。これにより、第2凹部70は、グリップ部30の厚さ方向に直交し軸方向に沿った横断面が略半円形状の部分として形成されている。
また、第3凸部71は、第4凸部72よりやや低く形成されている。そのため、第2凹部70の軸方向の深さは、第3凸部71側と第4凸部72側では異なっている。第2凹部70における第4凸部72側の深さD2は、第2凸部52の突出長H2よりわずかに深く形成されている。さらに、第2凹部70は、グリップ部30における第3筒部35の端縁の厚み全体に形成されており、その径方向の厚みは、第2筒部34の周壁の厚みと第3筒部35の周壁の厚みとの差分に相当する。
次に、本実施形態のシャワーヘッド1に設けられた係合構造の作用について、図5及び図6に従って、浄水カートリッジ80の交換作業とともに説明する。図5は、第1弾性係合部40の第1凸部42と第1凹部60との係合に至る状態を模式的に示したものであり、図6は、第2弾性係合部50の第2凸部52と第2凹部70との係合に至る状態を模式的に示したものである。
シャワーヘッド1内に取り付けられた浄水カートリッジ80を交換する際には、ヘッド部10にグリップ部30が連結された状態(図1に示す状態)から、ヘッド部10及びグリップ部30を相対回転させて、雄ネジ部21と雌ネジ部31との螺合を解除し、ヘッド部10のジョイント20からグリップ部30を取り外す(図2に示す状態)。続いて、古くなった浄水カートリッジ80をジョイント20の基端側から取り外し、新しい浄水カートリッジ80をジョイント20の基端側に挿入して取り付ける。このとき、表示部22の月表示を所定位置に回動させる。
図2に示すように、浄水カートリッジ80の基端側からヘッド部10のジョイント20に対してグリップ部30を嵌め込み、雄ネジ部21と雌ネジ部31とを螺合させて締め付け方向に相対回転させる。図4(a)に示すように、グリップ部30には、内径の異なる第1筒部33、第2筒部34、第3筒部35が設けられており、締め付けの初期には、ジョイント20の基端側筒部24に形成された第1弾性係合部40は、第1筒部33の内部に位置している。第1筒部33の内径R1は、基端側筒部24の外径L1より大きく、第1凸部42の最も高い部分を通る仮想円の外径L2とほぼ同一とされている。そのため、図5(a)に示すように、締め付けの初期には、第1凸部42は、第1筒部33の内周面に押されることなく締め付け方向に移動する。第1弾性係合部40は弾性変形することなく通常の状態に維持される。
ジョイント20に対するグリップ部30の締め付けが進むと、ジョイント20の基端側筒部24に形成された第1弾性係合部40は、第2筒部34の内部に移動する。第2筒部34の内径R2は、基端側筒部24における第1弾性係合部40が形成されていない部分の外径L1とほぼ同一とされている。また、第1弾性係合部40の第1凸部42は、基端側筒部24の外周面からの突出長H1で突出している。そのため、図5(b)に示すように、第1凸部42は第2筒部34の内周面に押されて径方向内方へ弾性変形する。このとき、第1弾性係合部40はその両端部でジョイント20に接続支持されているため、弾性変形による負荷が両端部に分散する。また、第1凸部42の最も高い部分(第1凸部42の基端側筒部24の外周面からの突出長H1の部分)は、第1弾性係合部40の長手方向の中央にほぼ一致しているため、長手方向端部寄りに形成されている場合に比べて、弾性変形による負荷が両端部に掛かりにくい。
第1弾性係合部40が第2筒部34内を移動することにより、弾性変形された第1弾性係合部40からの復元力が、第2筒部34の内周面に作用し、作業者は締め付け方向への回動抵抗として認知する。
さらに、締め付けが進むと、図5(c)に示すように、グリップ部30の第2筒部34に形成された第1凹部60内に、第1凸部42が係合する。第1凹部60の深さD1は、第1凸部42の基端側筒部24の外周面からの突出長H1よりわずかに深く形成されているため、第1凹部60と第1凸部42との係合により、第1弾性係合部40の弾性変形が解除される。作業者は、第1凹部60と第1凸部42との係合時のクリック感を認知し、また、締め付け方向への回動抵抗が低減したことを認知する。こうしたクリック感と回動抵抗の変化により、作業者はヘッド部10とグリップ部30が所定位置にあることを認知することができ、相対回転量が不足したり、過剰となったりすることが抑制される。なお、作業者が回動抵抗を認知する領域、すなわち、第1凸部42がグリップ部30の第2筒部34の内周面に当接して第1弾性係合部40が弾性変形する領域は、グリップ部30を10゜程度以上回動する範囲であることが好ましい。回動抵抗を認知する領域がこの程度であると、回動抵抗が低減したことを作業者が認知し易く、また、回動抵抗が長く続くこともないため作業がし易い。
図5(a)に示すように、第1凸部42は、基端側筒部24の軸方向に直交する横断面が三角形状に形成された三角柱形状をなしており、締め付け方向の前側に形成された第1傾斜面42aは、締め付け方向の後側に形成された第2傾斜面42bより緩い勾配とされている。そのため、締め付け方向への回動がスムーズであり、第1凸部42と第1凹部60の係合時には、締め付け方向の後側への回動が抑制される。
図6(a)に示すように、ジョイント20に対するグリップ部30の締め付けが進むと、基端側筒部24の基端側端縁は、グリップ部30の第3筒部35の先端側端縁に徐々に接近する。さらに締め付けが進むと、基端側筒部24の基端側端縁とグリップ部30の第3筒部35の先端側端縁との間に、第2凸部52の突出長H2よりやや大きい隙間が形成されつつ、第2凸部52が第2凹部70に向かって移動する。
図6(b)に示すように、第2凸部52が、グリップ部30の締め付け方向前側に位置する第3凸部71に接触すると、第2凸部52は第3凸部71から軸方向先端側への押圧力を受ける。第2弾性係合部50の軸方向先端側にはスリット51が形成されているため、第2弾性係合部50はジョイント20の軸方向に弾性変形する。このとき、スリット51の幅は、第2凸部52の突出長H2とほぼ同一に形成されているため、第2弾性係合部50の弾性変形は、スリット51で吸収される。また、第2弾性係合部50はその両端部でジョイント20に接続支持されているため、弾性変形による負荷が両端部に分散する。そして、第2凸部52は、第2弾性係合部50の長手方向中央に形成されているため、第2凸部52が第2弾性係合部50の長手方向端部寄りに形成されている場合に比べて、弾性変形による負荷が両端部に掛かりにくい。弾性変形された第2弾性係合部50からの復元力は、第3凸部71に作用し、作業者は締め付け方向への回動抵抗として認知する。
図6(c)に示すように、さらに締め付けが進むと、第2凸部52が、第3凸部71を乗り越えて第2凹部70に係合する。第2凹部70における第4凸部72側の深さD2は、第2凸部52の突出長H2よりわずかに深く形成されているため、第2凹部70と第2凸部52との係合により、第2弾性係合部50の弾性変形が解除され、作業者は、第2凹部70と第2凸部52との係合時のクリック感を認知する。また、締め付け方向への回動抵抗が低減したことを認知する。
第2凹部70の締め付け方向の前側に形成された第3凸部71は、グリップ部30の厚さ方向に直交し軸方向に沿った横断面が半円形状に形成されている。一方、締め付け方向の後側に形成された第4凸部72は、グリップ部30の厚さ方向に直交し軸方向に沿った横断面が略台形状に形成されている。また、第3凸部71は、第4凸部72よりやや低く形成されている。そのため、締め付け方向への回動がスムーズであり、第2凸部52と第2凹部70の係合時には、締め付け方向の後側への回動が抑制される。
このように、第1凸部42と第1凹部60との係合によるクリック感、第2凸部52と第2凹部70との係合によるクリック感が得られるとともに、第1凸部42及び第2凸部52による締め付け方向への回動抵抗が低減したことを認知する。作業者はヘッド部10とグリップ部30とが所定回転位置にあることを容易に認識することになる。また、第1弾性係合部40が周方向の2箇所に設けられているため、クリック感が増す。さらに、2箇所に設けられた第1弾性係合部40(第1凸部42)の一方と、第2弾性係合部50(第2凸部52)の形成位置が周方向に同じ位置であるため、第1弾性係合部40と第2弾性係合部50の何れかが設けられている場合に比べて、クリック感が増して、より明確に所定回転位置にあることを認識することになる。
上記実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記実施形態のシャワーヘッド1は、ヘッド部10のジョイント20に第1弾性係合部40が設けられ、グリップ部30に第1凹部60が設けられている。ジョイント20をグリップ部30の内部に挿入した状態で相対回転させると、第1弾性係合部40が弾性変形して、第1弾性係合部40に形成された第1凸部42と第1凹部60とが係合することにより、ヘッド部10をグリップ部30から抜け止め状態に連結することができる。弾性変形可能な第1弾性係合部40は長板状に形成されており、その長手方向中間部に第1凸部42が形成されて、両端部でジョイント20に接続支持されている。そのため、ジョイント20及びグリップ部30の連結操作時に第1弾性係合部40が弾性変形する際の負荷を、第1弾性係合部40の両端部で受けることができる。一方の端部のみで支持されている場合に比べて、一つの端部に掛かる負荷が軽減されて、第1弾性係合部40の強度が向上する。
ジョイント20に設けられた第2弾性係合部50とグリップ部30に設けられた第2凹部70との係合についても同様の効果が得られる。
(2)第1凸部42は、長板状の第1弾性係合部40の中央に形成されている。両端部で支持された第1弾性係合部40が弾性変形する際、第1凸部42が形成された位置での変位量が大きくなる。そのため、第1凸部42が第1弾性係合部40の端部寄りに形成されている場合に比べて、その両端部に掛かる負荷が軽減される。一つの端部に掛かる負荷が軽減されて、第1弾性係合部40の強度が向上する。第2弾性係合部50についても同様の効果が得られる。
(3)第1弾性係合部40に形成された第1凸部42は、ジョイント20における締め付け方向の前側に形成された第1傾斜面42aの勾配が相対的に緩い。そのため、締め付け方向への回転がスムーズであり締め付け作業がし易い。また、第1凸部42における締め付け方向の後側に形成された第2傾斜面42bは相対的に勾配が急である。そのため、締め付け方向と反対側へ相対回転しにくく、連結されたジョイント20とグリップ部30の連結が良好に保持される。シャワーヘッド1の使用中等に、不用意にヘッド部10とグリップ部30との係合が解除されることが抑制される。
(4)第2弾性係合部50に形成された第2凸部52が係合する第2凹部70では、締め付け方向前後に断面形状と高さ(軸方向の突出長)の異なる第3凸部71及び第4凸部72が形成されている。締め付け方向前側の第3凸部71は断面半円形状であって高さが低い一方、締め付け方向後側の第4凸部72は断面略台形状であって高さが高い。そのため、締め付け方向への回転がスムーズであり締め付け作業がし易い一方で、過剰な締め付けを抑制することができる。
(5)第1弾性係合部40は、ジョイント20の周壁より肉厚が薄く形成されている。そのため、弾性変形し易い。
(6)第1弾性係合部40の短手方向両端部には、一対のスリット41が形成されている。つまり、第1弾性係合部40は、ジョイント20の周壁に一対のスリット41を形成することにより、長板状の部材として形成されている。そのため、射出成形等によって容易に第1弾性係合部40を成形することができる。
同様に、第2弾性係合部50の先端側には、スリット51が形成されている。つまり、第2弾性係合部50は、ジョイント20の周壁に一本のスリット51を形成することにより、長板状の部材として形成されている。そのため、射出成形等によって容易に第2弾性係合部50を成形することができる。
(7)グリップ部30は内径の異なる複数の筒部が連設された形状に形成されており、締め付け初期に第1弾性係合部40が移動する第1筒部33の内径R1は、第1凸部42の最も高い部分を通る仮想円の外径L2とほぼ同一とされている。そのため、締め付け初期には、第1弾性係合部40が弾性変形することなく、スムーズに締め付け操作をすることができる。
(8)グリップ部30において、第1弾性係合部40の第1凸部42が係合する第1凹部60は、第2筒部34の先端側端縁に形成されている。第2筒部34の内径R2は、基端側筒部24において第1弾性係合部40が形成されていない部分の外径L1とほぼ同一とされている。そのため、第1弾性係合部40が第2筒部34内に移動すると、第1凸部42に対する第2筒部34からの押圧力が作用して第1弾性係合部40が弾性変形する。弾性変形した第1弾性係合部40からの復元力が第2筒部34の内周面に作用し、作業者は回動抵抗を感じる。相対回転させる際に、ジョイント20とグリップ部30が所定回転位置となることを予期することができる。
第2弾性係合部50が第3凸部71の位置に移動した場合にも同様の効果が得られる。
(9)グリップ部30に形成された第1凹部60の深さD1は、第1凸部42の基端側筒部24の外周面からの突出長H1よりわずかに深く形成されている。そのため、第1凹部60と第1凸部42との係合により、第1弾性係合部40の弾性変形が解除されて、締め付け方向への回動抵抗が低減する。また、係合時のクリック感が得られる。作業者は、ジョイント20とグリップ部30が所定回転位置にあることを容易に認知することができる。
(10)グリップ部30に形成された第2凹部70における第4凸部72側の深さD2は、第2凸部52の基端側筒部24の端縁からの突出長H2よりわずかに深く形成されている。そのため、第2凹部70と第2凸部52との係合により、第2弾性係合部50の弾性変形が解除されて、締め付け方向への回動抵抗が低減し、係合時のクリック感が得られる。作業者は、第2弾性係合部50によっても、ジョイント20とグリップ部30が所定回転位置にあることを容易に認知することができる。
(11)第1弾性係合部40は、ジョイント20の基端側筒部24の周壁の周方向に2箇所形成されており、グリップ部30の内周面の周方向の2箇所に形成された第1凹部60とそれぞれ係合する。そのため、第1弾性係合部40が1箇所の場合に比べて、係合時のクリック感が強くなり、ジョイント20とグリップ部30が所定回転位置にあることをより強く認知することができる。
(12)第2弾性係合部50は、一方の第1弾性係合部40と基端側筒部24の周方向における同じ位置に形成され、基端側筒部24の周方向における第1凸部42と第2凸部52の形成位置が同じとされている。そのため、第1凸部42と第1凹部60との係合に加えて、第2凸部52と第2凹部70との係合によるクリック感が得られる。第1弾性係合部40のみの場合に比べて、係合時のクリック感が強くなり、ジョイント20とグリップ部30が所定回転位置にあることをより強く認知することができる。
(13)第2弾性係合部50の軸方向先端側にはスリット51が形成されており、スリット51の幅は、第2凸部52の突出長H2とほぼ同一に形成されている。そのため、第2凸部52が第3凸部71に押されて第2弾性係合部50が弾性変形すると、第2弾性係合部50の変形量をスリット51で吸収することができる。
(14)ジョイント20及びグリップ部30は、雄ネジ部21と雌ネジ部31の螺合により連結される。そのため、ジョイント20とグリップ部30が強固に連結される。
上記実施形態は、次のように変更できる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・上記実施形態では、第1弾性係合部40に第1凸部42が設けられて、グリップ部30の周壁に設けられた第1凹部60と凹凸の関係で係合するように構成されていたが、凹凸の形成位置はこれに限定されない。第1弾性係合部40の長手方向中間部に凹部が設けられて、グリップ部30の周壁に設けられた凸部と凹凸の関係で係合するようにしてもよい。2箇所ある第1弾性係合部40のうち、一方には凸部が設けられ、他方には凹部が設けられ、これらに対応する凹凸がグリップ部30の周壁に設けられていてもよい。同様に、第2弾性係合部50の長手方向中間部に凹部が設けられ、グリップ部30における第3筒部35の先端側端縁に凸部が設けられていてもよい。
・第1弾性係合部40の大きさを適宜変更することができる。上記実施形態では、第1弾性係合部40の長手方向の長さが、基端側筒部24の周長の約1/4程度とされているが、これより長くてもよく短くてもよい。また、第1弾性係合部40の幅も適宜変更することができる、上記実施形態では、基端側筒部24の軸方向の長さの約1/20〜1/10程度であり、一つのスリット41の幅とほぼ同じか少し広く形成されているが、これより狭くてもよく、広くてもよい。同様に、第2弾性係合部50の大きさも適宜変更することができる。
・第1弾性係合部40の形状を適宜変更することができる。上記実施形態では、第1弾性係合部40の一対の長辺が互いに平行に延びている形状とされているが、これに限定されない。例えば、図7(a)に示すように、一対の長辺が湾曲するように伸び、第1弾性係合部40の両端部に向かうに従って幅広となる形状であってもよい。こうした形状であると、両端部での強度を向上させることができる。また、一方の長辺のみが湾曲するように伸びる形状であってもよい。
・上記実施形態では、第1弾性係合部40の外面が、基端側筒部24における第1弾性係合部40以外の部分の外周面より径方向内方へ凹んだ形状とされていることにより、第1弾性係合部40の厚みが、基端側筒部24の周壁より薄く形成されている。しかし、これに限定されず、第1弾性係合部40の内面が、基端側筒部24における第1弾性係合部40以外の部分の内周面より径方向外方へ凹んだ形状とされていることにより、基端側筒部24の周壁より薄く形成されていてもよい。また、第1弾性係合部40の外面及び内面のいずれもが、径方向に凹んだ形状とされていてもよい。或いは、第1弾性係合部40の外面及び内面が、基端側筒部24の外周面及び内周面と面一とされて、第1弾性係合部40の厚みが、基端側筒部24の周壁の肉厚と同じであってもよい。
・上記実施形態では、第1弾性係合部40は、基端側筒部24の周方向に沿って延びるように形成されているが、第1弾性係合部40の形成方向はこれに限定されない。例えば、図7(b)に示すように、基端側筒部24の周方向に交差する方向に延びるように形成されていてもよく、或いは、基端側筒部24の軸方向に沿って延びるように形成されていてもよい。これらの場合、第1凸部42における締め付け方向の前後となる位置に傾斜面を形成し、締め付け方向の前側の第1傾斜面42aが、締め付け方向の後側の第2傾斜面42bより緩い勾配とすればよい。第1傾斜面42a及び第2傾斜面42bが基端側筒部24の周方向を向く位置に形成されていれば、締め付け時に第1弾性係合部40は弾性変形し易くなり、また、締め付けを解除する方向への回動が抑制される。
・上記実施形態では、第1弾性係合部40を基端側筒部24の対向する位置に2箇所設けたが、第1弾性係合部40の個数はこれに限定されない。1箇所でもよく、3箇所以上でもよい。第2弾性係合部50も同様に、2箇所以上でもよい。
・上記実施形態では、第2弾性係合部50が、一方の第1弾性係合部40と周方向に同じ位置に形成され、基端側筒部24の周方向における第1凸部42と第2凸部52の形成位置が同じとされている。これに限定されず、第2弾性係合部50の周方向の形成位置を、第1弾性係合部40の周方向の形成位置とずらしてもよい。また、第2凸部52の周方向の形成位置を、第1凸部42の周方向の形成位置とずらしてもよい。
・第1凸部42は、第1弾性係合部40の幅方向全体に亘って形成されているが、図7(c)に示すように、第1弾性係合部40の幅方向の一部に形成されていてもよい。また、同様に、第2凸部52は、第2弾性係合部50の厚み方向全体に亘って形成されているが、厚み方向の一部に形成されていてもよい。
・ジョイント20の雄ネジ部21及びグリップ部30の雌ネジ部31を省略してもよい。例えば、ジョイント20とグリップ部30を相対回転させることにより、ジョイント20及びグリップ部30が、凹凸の関係で抜け止め状態で連結されるような構造を設けてもよい。
・上記実施形態では、第1弾性係合部40はジョイント20の基端側筒部24の周壁にスリット41を形成することによって、周壁に一体的に接続された長板状の弾性係合部とされているが、弾性係合部を基端側筒部24とは別体に設けてもよい。例えば、ジョイント20の周壁に長板状の板バネを設けて、径方向に弾性変形する第1弾性係合部40としてもよい。この場合、板バネの両端部をジョイント20の周壁で支持すればよい。第2弾性係合部50についても同様に、弾性変形可能な別部材を設けてもよい。
・上記実施形態では、第1凸部42が、基端側筒部24の軸方向に直交する横断面が三角形状に形成された三角柱形状をなしており、第2凸部52が、基端側筒部24の厚さ方向に直交し軸方向に沿った横断面が半円形状に形成された半円柱形状をなしているが、第1凸部42及び第2凸部52の形状はこれに限定されない。いずれも三角柱形状であってもよく、いずれも半円柱形状であってもよい。また、第1凸部42が、半円柱形状であってもよく、第2凸部52が三角柱形状であってもよい。さらに、第1凸部42及び第2凸部52の少なくともいずれかが、他の形状であってもよい。
・上記実施形態では、第1凸部42の締め付け方向の前側に形成された第1傾斜面42aは、締め付け方向の後側に形成された第2傾斜面42bより緩い勾配とされている。これに限定されず、第1傾斜面42aと第2傾斜面42bの勾配が同じであってもよく、第1傾斜面42aが第2傾斜面42bより急な勾配であってもよい。また、第1傾斜面42a及び第2傾斜面42bの勾配は適宜設定することができる。
・上記実施形態では、第1凸部42の最も高い部分(第1凸部42の基端側筒部24の外周面からの突出長H1の部分)は、第1弾性係合部40の長手方向の中央にほぼ一致しているがこれに限定されない。第1弾性係合部40の両端部以外の部分であれば、長手方向の中央より端部寄りに形成されていてもよい。第2凸部52についても同様である。
・上記実施形態では、第1凸部42は、その全体が断面三角形状とされているが、例えば、図7(d)に示すように、基端側筒部24の外周面から突出する部分のみが断面三角形状とされていてもよい。
・上記実施形態の係合構造を、シャワーヘッド1のジョイント20とグリップ部30以外の部材に適用してもよい。また、シャワーヘッド以外の部材に適用してもよい。