JP2019138358A - ギヤ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ノイズバイブレーション特性を向上させつつ、耐久性を確保し得るギヤ装置を提供する。【解決手段】ギヤ装置40は、クランクシャフト10に設けられるドライブギヤ20と、クランクシャフト10と平行なバランスシャフト30に設けられ、クランクシャフト10の軸方向に並んで配置される樹脂ギヤ60及び金属ギヤ70を有するドリブンギヤ50と、を備えている。さらに、ギヤ装置40は、ドリブンギヤ50をドライブギヤ20に対してバランスシャフト30の軸方向に変位させ、ドライブギヤ20と樹脂ギヤ60が噛み合う第1噛合状態と、ドライブギヤ20と金属ギヤ70が噛み合う第2噛合状態とに、切り替える移動制御部80と、を備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、ギヤ装置に関する。
エンジンが要求する性能として静穏性が挙げられる。そこで、このような静穏性を確保するために、バランサ装置において、ドライブギヤに噛み合って従動回転するドリブンギヤとして樹脂製のギヤが用いられている。例えば、特許文献1では、エンジンのバランサーシャフトギヤ等に用いられる樹脂歯車は、外周に等間隔に設けられる歯部が樹脂によって形成されている。
特開2012−52650号公報
特許文献1の発明では、ドライブギヤの回転数が低回転域(例えばアイドリング時)では、ドリブンギヤへの入力トルクが小さく低負荷となるため、損傷を受け難く、樹脂製のギヤを問題なく用いることができる。しかしながら、ドライブギヤの回転数が高回転域では、ドリブンギヤへの入力トルクが大きく高負荷になるため、樹脂製のギヤでは損傷を受け易くなってしまう。したがって、ノイズバイブレーション特性を向上させつつ、耐久性も確保可能なギヤが求められている。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ノイズバイブレーション特性を向上させつつ、耐久性を確保し得るギヤ装置を提供することを目的とする。
本発明のギヤ装置は、ドライブシャフトに設けられるドライブギヤと、前記ドライブシャフトと平行なドリブンシャフトに設けられ、前記ドリブンシャフトの軸方向に並んで配置される樹脂ギヤ及び金属ギヤを有するドリブンギヤと、前記ドライブギヤと前記ドリブンギヤの一方を、他方に対して対応するシャフトの軸方向に変位させ、前記ドライブギヤと前記樹脂ギヤが噛み合う第1噛合状態と、前記ドライブギヤと前記金属ギヤが噛み合う第2噛合状態とに、切り替える移動制御部と、を備える。
本発明のギヤ装置は、移動制御部によって、ドライブギヤとドリブンギヤの一方を、他方に対して対応するシャフトの軸方向に変位させ、ドライブギヤと樹脂ギヤが噛み合う第1噛合状態と、ドライブギヤと金属ギヤが噛み合う第2噛合状態とに、切り替える構成である。そのため、このギヤ装置は、移動制御部によって第1噛合状態に切り替えることで、樹脂ギヤをドライブギヤに噛合させてドリブンギヤをドライブギヤに従動回転させることができる。このように、樹脂ギヤをドライブギヤに噛合させることで、噛合時の音および振動を抑制し、ノイズバイブレーション特性を向上させることができる。一方で、ギヤ装置は、移動制御部によって第2噛合状態に切り替えることで、金属ギヤをドライブギヤに噛合させてドリブンギヤをドライブギヤに従動回転させることができる。このように、金属ギヤをドライブギヤに噛合させることで、樹脂ギヤの損傷を回避することができる。以上のように、ギヤ装置は、ドライブギヤに噛合するギヤを切り替えることで、ノイズバイブレーション特性を向上させつつ、耐久性を確保することができる。
本発明の実施例1の内燃機関の一部の分解斜視図である。 (A)は、ドライブギヤの回転数が低回転域のときのドリブンギヤの動作を説明する説明図である。(B)は、ドライブギヤの回転数が高回転域のときのドリブンギヤの動作を説明する説明図である。 (A)は、図2(A)のA−A断面を示す断面図である。(B)は、図2(A)のB−B断面を示す断面図である。 (A)は、実施例2において、ドライブギヤの回転数が低回転域のときのドリブンギヤの動作を説明する説明図である。(B)は、ドライブギヤの回転数が高回転域のときのドリブンギヤの動作を説明する説明図である。
本発明の好ましい形態を以下に示す。
前記移動制御部は、前記ドライブギヤの回転数が低回転域の場合に、前記第1噛合状態とし、前記ドライブギヤの回転数が高回転域の場合に、前記第2噛合状態とするとよい。これにより、このギヤ装置は、ドライブギヤの回転数が低回転域であり、ドリブンギヤへの入力トルクが小さい低負荷時には、第1噛合状態に切り替わり、ノイズバイブレーション特性を向上させることができる。一方で、ギヤ装置は、ドライブギヤの回転数が高回転域であり、ドリブンギヤへの入力トルクが大きくなる高負荷時には、第2噛合状態に切り替わり、樹脂ギヤの損傷を回避して耐久性を確保することができる。
前記移動制御部は、油圧又は電磁力によって前記ドライブギヤと前記ドリブンギヤの一方を変位させるとよい。これにより、ギヤ装置は、油圧の大きさや電磁力の有無を変えることで、第1噛合状態と第2噛合状態との間で容易に切り替えることができる。
前記ドリブンギヤは、前記ドリブンシャフトに対してその軸方向に移動可能とされ、前記移動制御部は、前記ドリブンギヤを変位させるとよい。これにより、ドリブンギヤはドライブギヤに比べて構造的な制約が少ないため、簡易な構造でドリブンギヤをドライブギヤに対して移動させることができる。
前記ドリブンギヤと前記ドリブンシャフトは、前記ドリブンシャフトの軸周り方向で互いに噛み合うセレーションを有しているとよい。これにより、ドリブンギヤは、軸周り方向でドリブンシャフトと噛み合うように、ドリブンシャフトの外周に組み付けることで、ドリブンギヤをドリブンシャフトに対して軸方向に変位可能な状態で、ドリブンシャフトに対する回転を規制することができる。そのため、ドリブンギヤのドリブンシャフトに対する回転を規制する構成を別途設けることなく、簡易な構成で、ドリブンギヤのドリブンシャフトに対する回転を規制することができる。
前記移動制御部は、前記ドリブンギヤの一端面を押圧する押圧部材と、前記ドリブンギヤの他端面を前記押圧部材の押圧方向と反対方向に押圧付勢する付勢部材と、を有しているとよい。これにより、押圧部材によるドリブンギヤの一端面を押圧する押圧力と、付勢部材によるドリブンギヤの他端面を押圧付勢する付勢力と、のバランスによって第1噛合状態と第2噛合状態とに切り替えることができる。
<実施例1>
実施例1の内燃機関は、例えば、直列4気筒のレシプロエンジンであって、図1に示すように、クランクシャフト(ドライブシャフト)10、駆動側のドライブギヤ20、バランスシャフト(ドリブンシャフト)30、及びギヤ装置40を備えている。ドライブギヤ20は、クランクシャフト10に固定して設けられている。バランスシャフト30は、クランクシャフト10にその軸方向に平行に配置されている。ギヤ装置40は、ドリブンギヤ50、および移動制御部80を備えている。ドリブンギヤ50は、バランスシャフト30の外周に設けられ、ドライブギヤ20に噛合して従動回転する。移動制御部80は、ドリブンギヤ50をドライブギヤ20に対して移動させるように機能する。
バランスシャフト30は、クランクケースの壁(図示略)に回動可能に支持されている。ドリブンギヤ50は、バランスシャフト30において、ドライブギヤ20と対応する端部に配置されている。ドリブンギヤ50の歯数(後述する樹脂ギヤ60、及び金属ギヤ70それぞれの歯数)は、ドライブギヤ20の歯数と同数に設定されている。ドライブギヤ20は、金属製であり、ヘリカルギヤからなる。ドライブギヤ20は、外周面全体において等間隔に形成される複数のドライブ歯部22を備えている。
クランクシャフト10が回転すると、ドライブギヤ20及びドリブンギヤ50を介して、クランクシャフト10の回転力がバランスシャフト30に伝達される。バランスシャフト30は、クランクシャフト10と互いに反対方向に同一速度で回転する。このため、クランクシャフト10に設けられたピストン(図示略)の慣性力が打ち消されるようになっている。
バランスシャフト30は、図1に示すように、本体部31、及びフランジ32を備えている。本体部31は、長尺の円柱状であり、端部にセレーション33が形成されている。セレーション33は、本体部31の軸周りに山と谷が交互に等間隔で形成された凹凸形状を有する部分である。セレーション33は、山と谷の形状が軸方向から見て等脚台形になっている。フランジ32は、本体部31におけるセレーション33よりも内側において、セレーション33に隣り合う位置で本体部31の外周に設けられている。フランジ32は、本体部31の軸方向に凹む凹部34が4つ形成されている。4つの凹部34は、周方向に沿って等間隔で設けられている。凹部34には、後述する付勢部材84が位置決めされて組み付けられている。
次に、ギヤ装置40の各構成部品について説明する。
ドリブンギヤ50は、図1〜図3に示すように、樹脂ギヤ60、金属ギヤ70、及び移動制御部80を備えている。樹脂ギヤ60は、ヘリカルギヤとして構成されている。樹脂ギヤ60は、図3(A)に示すように、本体部61、複数の樹脂歯部62を備えている。本体部61は、中心に貫通穴64を有する円板状である。貫通穴64は、内周に沿って山と谷が交互に等間隔で形成された凹凸形状のセレーション65が形成されている。セレーション65は、山と谷の形状が穴の貫通方向から見て等脚台形になっている。本体部61は、図2に示すように、板厚方向に凹む凹部66が形成されている。凹部66は、周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。凹部66は、後述する付勢部材84が組み付けられる。複数の樹脂歯部62は、本体部61の外周面全体において等間隔に形成されている。樹脂歯部62は、歯すじがつるまき線状のハス歯形状である。
金属ギヤ70は、金属製(例えば鉄製)であり、ヘリカルギヤとして構成されている。金属ギヤ70は、本体部71、複数の金属歯部72、およびウェイト77を備えている。本体部71は、中心に貫通穴74を有する略円板状である。本体部71は、円筒部73、貫通穴74、及び一対の切欠部76,76が形成されている。円筒部73は、本体部71の一方面(図2では左側の面)の中心において、本体部71の板厚方向に突出した円筒状部分である。貫通穴74は、内周に沿って山と谷が交互に等間隔で形成された凹凸形状のセレーション75が形成されている。セレーション75は、山と谷の形状が穴の貫通方向から見て等脚台形になっている。切欠部76は、円筒部73よりも外側において、本体部71を板厚方向に貫通するように略円弧状に切り欠かれている。ウェイト77は、本体部71の一方面から板厚方向に略円弧状に突出するように、円筒部73と一体的に形成されている。複数の金属歯部72は、本体部71の外周面全体において等間隔に形成されている。金属歯部72は、歯すじがつるまき線状のハス歯形状である。金属歯部72の回転方向(金属歯部72の配列方向)における歯厚は、樹脂歯部62の回転方向(樹脂歯部62の配列方向)における歯厚と同じである。
樹脂ギヤ60と金属ギヤ70は、インサート成形によって一体的に形成することができる。例えば、金型内に金属ギヤ70の基となる金属部品を挿入した状態で樹脂を注入して、樹脂ギヤ60と金属ギヤ70の基となる部材を成形する。その後、成形した部材の外周に等間隔の歯すじを付けるように加工して、樹脂歯部62と金属歯部72を同時に形成する。また、成形した部材の内周に等間隔の歯すじを付けるように加工して、セレーション33,65,75を同時に形成する。このようにして、樹脂ギヤ60と金属ギヤ70を形成することができる。
移動制御部80は、ドリブンギヤ50をドライブギヤ20に対してバランスシャフト30の軸方向に移動させる。これにより、移動制御部80は、ドリブンギヤ50を、樹脂ギヤ60がドライブギヤ20に噛合する第1噛合状態と、金属ギヤ70がドライブギヤ20に噛合する第2噛合状態と、に切り替えるように機能する。移動制御部80は、図1、図2に示すように、押圧部材82、及び付勢部材84を備えている。押圧部材82は、長尺の円筒状のピンである。押圧部材82は、図2に示すように、クランクケース90の壁部91に支持され、壁部91に対して相対的に摺動変位する。
クランクケース90の壁部91は、摺動孔92、及び油路93が形成されている。摺動孔92は、円柱状に切り欠かれている。摺動孔92は、図2(A)に示すように、押圧部材82の略全体を収容可能な大きさである。油路93は、一端側がオイルコントロールバルブ(図示略)を介して作動油Lの供給源(図示略)につながり、他端が摺動孔92につながっている。オイルコントロールバルブは、図示しない制御回路(CPUを備えたマイコン等)によって開閉状態の切り替えが制御される。壁部91は、摺動孔92と油路93の間において、中心が貫通して底壁部92Aが形成されている。底壁部92Aは、押圧部材82を油路93側に移動しないように規制する。
付勢部材84は、弾性変形可能なコイルばねとして構成されている。付勢部材84は、一端がバランスシャフト30の凹部34に固定され、他端が樹脂ギヤ60の凹部66に固定されている。
次に、ギヤ装置40の全体の組み立て構成について説明する。
ドリブンギヤ50は、図2、図3に示すように、樹脂ギヤ60及び金属ギヤ70がバランスシャフト30の軸方向に並ぶように、バランスシャフト30の外周に設けられている。具体的には、樹脂ギヤ60は、貫通穴64にバランスシャフト30が挿入され、セレーション65とセレーション33が噛み合っている。同様に、金属ギヤ70は、貫通穴74にバランスシャフト30が挿入され、セレーション75とセレーション33が噛み合っている。これにより、ドリブンギヤ50は、バランスシャフト30に対してその軸方向に移動可能になっている。
ドリブンギヤ50は、軸方向周りの周方向(バランスシャフト30の回転方向)でバランスシャフト30と噛み合っている。具体的には、セレーション65及びセレーション75は、セレーション33と軸周り方向で互いに噛み合っている。そのため、ドリブンギヤ50は、バランスシャフト30に対する周方向への回転が規制されている。また、樹脂ギヤ60に対する金属ギヤ70の回転位相が固定された状態になっている。これにより、ドリブンギヤ50は、バランスシャフト30に対する周方向への回転が規制された状態で、バランスシャフト30に対してその軸方向に移動可能になっている。
樹脂ギヤ60と金属ギヤ70は、図1に示すように、樹脂歯部62の歯すじと金属歯部72の歯すじが連なるようにバランスシャフト30に組み付けられている。これにより、ドリブンギヤ50は、樹脂ギヤ60と金属ギヤ70によって一体的なハス歯ギヤとして構成される。
樹脂ギヤ60は、バランスシャフト30のフランジ32との間に4つの付勢部材84が設けられている。具体的には、付勢部材84は、一端が樹脂ギヤ60の凹部66に固定され、他端がバランスシャフト30の凹部34に固定されている。
バランスシャフト30は、ドリブンギヤ50が組み付けられた状態で、図2に示すように、クランクケースの壁(図示略)に回動可能に支持されている。金属ギヤ70は、摺動孔92に嵌め込まれた状態の押圧部材82に対向している。具体的には、押圧部材82の平坦な端面82Aが、金属ギヤ70の円筒部73の平坦な端面(ドリブンギヤ50の一端面)73Aに接触している。なお、このとき、金属ギヤ70は、クランクケースの壁のみ、又はクランクケースの壁と押圧部材82の両方に接触する構成であってもよい。図2(A)は、オイルコントロールバルブが閉じられた状態であり、油路93内の作動油Lによって押圧部材82に比較的低い油圧がかかっている。付勢部材84は、わずかに圧縮変形した状態で、その反発力でドリブンギヤ50を押圧部材82に押し付けている。このような状態で、樹脂ギヤ60は、ドライブギヤ20に噛み合っている。
押圧部材82は、ドリブンギヤ50における軸方向の端面(具体的には、金属ギヤ70における円筒部73の端面73A)を押圧することで、ドリブンギヤ50をドライブギヤ20に対して移動させるように機能する。付勢部材84は、ドリブンギヤ50の他端面(具体的には、凹部66の底面66A)に対して押圧部材82の押圧方向と反対方向に押圧付勢するように機能する。押圧部材82は、オイルコントロールバルブが閉状態で作動油Lの油圧が比較的低い場合には、図2(A)に示すように、付勢部材84の付勢力に応じて没入位置に位置する。そのため、ドリブンギヤ50は、軸方向に移動することなく、フランジ32から離間した状態を維持する。一方で、押圧部材82は、オイルコントロールバルブが開状態で作動油Lの油圧が比較的高い場合には、図2(B)に示すように、付勢部材84の付勢力に抗して、突出位置に移動する。そのため、ドリブンギヤ50は、押圧部材82に押圧されて、軸方向でフランジ32側に移動する。ここで、押圧部材82は、作動油Lとの接触面積が、没入位置に位置するときよりも突出位置に向けて移動したときの方が大きいため、作動油Lの油圧によって円滑に移動させることができる。
次に、ギヤ装置40の動作について説明する。
エンジン駆動前の状態では、オイルコントロールバルブを閉状態とすることで、押圧部材82によってドリブンギヤ50が軸方向に移動させられることがない。そのため、ドリブンギヤ50は、図2(A)に示すように、樹脂ギヤ60がドライブギヤ20に噛合する第1噛合状態となっている。
エンジン駆動後、アイドリング時などで、ドライブギヤ20の回転数が低回転域(例えば、2000rpm以下)である場合(ドライブギヤ20からの入力トルクが小さい場合)には、オイルコントロールバルブの閉状態が維持される。そのため、押圧部材82によってドリブンギヤ50が軸方向に移動させられることがない。そのため、ドリブンギヤ50は、図2(A)に示すように、樹脂ギヤ60がドライブギヤ20に噛合する第1噛合状態を維持している。ドライブギヤ20は、樹脂ギヤ60を介してバランスシャフト30に駆動力を伝達する。なお、ドライブギヤ20は、図1の左側から見て時計回りに回り、ドリブンギヤ50は、図1の左側から見て反時計回りに回る。このように、ドリブンギヤ50の低負荷時には、樹脂ギヤ60のみがドライブギヤ20に噛み合う。そのため、金属ギヤ70がドライブギヤ20に噛み合う構成に比べて、噛み合いによって生じる音(歯打ち音など)および振動の抑制が可能であり、ノイズバイブレーション特性を向上させることができる。
ドライブギヤ20の回転数が高回転域(例えば、2000rpmより大きい回転数)である場合(ドライブギヤ20からの入力トルクが大きい場合)には、オイルコントロールバルブを開状態にして、押圧部材82によってドリブンギヤ50を軸方向でフランジ32側に移動させる。そのため、ドリブンギヤ50は、図2(B)に示すように、金属ギヤ70がドライブギヤ20に噛合する第2噛合状態となっている。ドライブギヤ20は、金属ギヤ70を介してバランスシャフト30に駆動力を伝達する。このように、ドリブンギヤ50の低負荷時には、金属ギヤ70のみがドライブギヤ20に噛み合う。そのため、樹脂ギヤ60が高回転数のドライブギヤ20から大きな損傷を受けることがなく、樹脂ギヤ60の耐久性を向上させることができる。ドライブギヤ20の高回転時では、ドリブンギヤ50との噛み合いによって生じる音が、エンジンで生じる他の大きな音の影響で聞こえ難くなる。そのため、ノイズバイブレーション特性の観点では、ドライブギヤ20の高回転時に、噛み合うギヤが樹脂ギヤ60から金属ギヤ70に移行するデメリットが小さくなる。したがって、ギヤ装置40は、樹脂ギヤ60の耐久性を確保しつつノイズバイブレーション特性を向上させることができる。
ドライブギヤ20の回転数が高回転域から低回転域に変化する場合には、オイルコントロールバルブが閉状態になる。ギヤ装置40は、図2(A)に示すように、樹脂ギヤ60がドライブギヤ20に噛合する第1噛合状態に切り替わる。ドライブギヤ20の回転数が高回転域で互いに噛み合うドライブギヤ20と金属ギヤ70は、上述したようにハス歯形状である。また、ドライブギヤ20は、図1の左側から見て時計回りに回り、ドリブンギヤ50は、図1の左側から見て反時計回りに回る。そのため、ドライブギヤ20の回転数が高回転域から低回転域に変化する場合には、ドライブギヤ20と金属ギヤ70の噛み合い部分において、金属ギヤ70がドライブギヤ20から軸方向でフランジ32から離れる方向に力を受けることになる。これにより、ギヤ装置40は、軸方向でフランジ32と反対側に円滑に移動して、第1噛合状態に切り替わる。
以上説明したように、実施例1によれば、ギヤ装置40は、ドリブンギヤ50を、ドライブギヤ20に対してバランスシャフト30の軸方向に変位させ、ドライブギヤ20と樹脂ギヤ60が噛み合う第1噛合状態と、ドライブギヤ20と金属ギヤ70が噛み合う第2噛合状態とに、切り替える構成である。そのため、このギヤ装置40は、移動制御部80によって第1噛合状態に切り替えることで、樹脂ギヤ60をドライブギヤ20に噛合させてドリブンギヤ50をドライブギヤ20に従動回転させることができる。このように、樹脂ギヤ60をドライブギヤ20に噛合させることで、噛合時の音および振動を抑制し、ノイズバイブレーション特性を向上させることができる。一方で、ギヤ装置40は、移動制御部80によって第2噛合状態に切り替えることで、金属ギヤ70をドライブギヤ20に噛合させてドリブンギヤ50をドライブギヤ20に従動回転させることができる。このように、金属ギヤ70をドライブギヤ20に噛合させることで、樹脂ギヤ60の損傷を回避することができる。以上のように、ギヤ装置40は、ドライブギヤ20に噛合するギヤを切り替えることで、ノイズバイブレーション特性を向上させつつ、耐久性を確保することができる。
また、移動制御部80は、ドライブギヤ20の回転数が低回転域の場合に、第1噛合状態とし、ドライブギヤ20の回転数が高回転域の場合に、第2噛合状態とする。これにより、このギヤ装置40は、ドライブギヤ20の回転数が低回転域であり、ドリブンギヤ50への入力トルクが小さい低負荷時には、第1噛合状態に切り替わり、ノイズバイブレーション特性を向上させることができる。一方で、ギヤ装置40は、ドライブギヤ20の回転数が高回転域であり、ドリブンギヤ50への入力トルクが大きくなる高負荷時には、第2噛合状態に切り替わり、樹脂ギヤ60の損傷を回避して耐久性を確保することができる。
また、移動制御部80は、油圧によってドライブギヤ20に対してドリブンギヤ50を変位させる。これにより、ギヤ装置40は、油圧の大きさを変えることで、第1噛合状態と第2噛合状態との間で容易に切り替えることができる。
また、ドリブンギヤ50は、バランスシャフト30に対してその軸方向に移動可能とされ、移動制御部80は、ドリブンギヤ50を変位させる。これにより、ドリブンギヤ50はドライブギヤ20に比べて構造的な制約が少ないため、簡易な構造でドリブンギヤ50をドライブギヤ20に対して移動させることができる。
また、ドリブンギヤ50とバランスシャフト30は、バランスシャフト30の軸周り方向で互いに噛み合うセレーション33と、セレーション65,75を有している。これにより、ドリブンギヤ50は、軸周り方向でバランスシャフト30と噛み合うように、バランスシャフト30の外周に組み付けることで、ドリブンギヤ50をバランスシャフト30に対して軸方向に変位可能な状態で、バランスシャフト30に対する回転を規制することができる。そのため、ドリブンギヤ50のバランスシャフト30に対する回転を規制する構成を別途設けることなく、簡易な構成で、ドリブンギヤ50のバランスシャフト30に対する回転を規制することができる。
また、移動制御部80は、ドリブンギヤ50の端面73Aを押圧する押圧部材82と、ドリブンギヤ50の端面60Aを押圧部材82の押圧方向と反対方向に押圧付勢する付勢部材84と、を有している。これにより、押圧部材82によるドリブンギヤ50の端面73Aを押圧する押圧力と、付勢部材84によるドリブンギヤ50の端面60Aを押圧付勢する付勢力と、のバランスによって第1噛合状態と第2噛合状態とに切り替えることができる。
<実施例2>
図4は、本発明の実施例2を示す。実施例2は、主に移動制御部80が電磁力を用いる構成である点が実施例1とは異なるが、その他は実施例1と同様である。なお、実施例2において、実施例1と同一の構造には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
移動制御部80は、図4に示すように、押圧部材82、付勢部材84、及びソレノイド100を備えている。ソレノイド100は、プッシュソレノイドであり、ケース101、プランジャ102、コイル103、及び付勢部材104を備えている。ケース101は、プランジャ102の一部及びコイル103を収容している。ケース101は、例えば、クランクケースの壁(図示略)に支持されている。コイル103は、図示しない制御回路による制御に基づいて、励磁状態と非励磁状態で切り替わる。プランジャ102は、コイル103の状態に応じて、ケース101に対して移動する。プランジャ102は、先端が押圧部材82に固定され、他端がケース101の外側に位置する。なお、プランジャ102は、先端が押圧部材82に固定されず、接触する構成でもよい。付勢部材104は、プランジャ102に巻き回され、プランジャの端部と、ケース101との間に配置されている。
ソレノイド100は、図4(A)に示すように、コイル103が非励磁状態のとき、プランジャ102がコイル103によって引き込まれることなく、ケース101の外側に突出する突出位置にある。プランジャ102が突出位置にあるとき、押圧部材82は、付勢部材84の付勢力に抗してドリブンギヤ50を軸方向に移動させることがない。一方で、ソレノイド100は、図4(B)に示すように、コイル103が励磁状態のとき、電磁力によってプランジャ102がコイル103によって引き込まれ、ケース101の内側に没入する没入位置にある。プランジャ102が没入位置にあるとき、押圧部材82は、付勢部材84の付勢力に抗してドリブンギヤ50を軸方向でフランジ32側に移動させる。
次に、ギヤ装置40の動作について説明する。
エンジン駆動前の状態では、コイル103が非励磁状態であり、押圧部材82によってドリブンギヤ50が軸方向に移動させられることがない。そのため、ドリブンギヤ50は、図4(A)に示すように、樹脂ギヤ60がドライブギヤ20に噛合する第1噛合状態となっている。
エンジン駆動後、アイドリング時などで、ドライブギヤ20の回転数が低回転域(例えば、2000rpm以下)である場合(ドライブギヤ20からの入力トルクが小さい場合)には、コイル103の非励磁状態が維持される。そのため、押圧部材82によってドリブンギヤ50が軸方向に移動させられることがない。そのため、ドリブンギヤ50は、図4(A)に示すように、樹脂ギヤ60がドライブギヤ20に噛合する第1噛合状態を維持している。これにより、ドライブギヤ20は、樹脂ギヤ60を介してバランスシャフト30に駆動力を伝達するため、ノイズバイブレーション特性を向上させることができる。
ドライブギヤ20の回転数が高回転域(例えば、2000rpmより大きい回転数)である場合(ドライブギヤ20からの入力トルクが大きい場合)には、コイル103が励磁状態となる。そのため、押圧部材82によってドリブンギヤ50を軸方向でフランジ32側に移動させる。そのため、ドリブンギヤ50は、図4(B)に示すように、金属ギヤ70がドライブギヤ20に噛合する第2噛合状態となっている。これにより、ドライブギヤ20は、金属ギヤ70を介してバランスシャフト30に駆動力を伝達するため、樹脂ギヤ60の耐久性を向上させることができる。したがって、ギヤ装置40は、樹脂ギヤ60の耐久性を確保しつつノイズバイブレーション特性を向上させることができる。
ドライブギヤ20の回転数が高回転域から低回転域に変化する場合には、再びコイル103が非励磁状態となる。ギヤ装置40は、図4(A)に示すように、樹脂ギヤ60がドライブギヤ20に噛合する第1噛合状態に切り替わる。実施例1と同様に、ドライブギヤ20の回転数が高回転域で互いに噛み合うドライブギヤ20と金属ギヤ70は、上述したようにハス歯形状であるため、ドリブンギヤ50が軸方向でフランジ32と反対側に円滑に移動して、第1噛合状態に切り替わる。
以上説明したように、移動制御部80は、電磁力を用いて、ドライブギヤ20に対してドリブンギヤ50を変位させる。これにより、電磁力の有無を変えることで、ドリブンギヤ50を第1噛合状態と第2噛合状態との間で容易に切り替えることができる。
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例において、ドライブギヤ20が高回転域のときに、ドライブギヤ20に金属ギヤ70が噛み合ったが、金属ギヤ70と樹脂ギヤ60の両方に噛み合ってもよい。
(2)上記実施例において、位置が固定されたドライブギヤ20に対してドリブンギヤ50が相対的に移動した。しかしながら、移動制御部80と同様の構成の移動制御部をドライブギヤ20側に設けて、位置が固定されたドリブンギヤ50に対してドライブギヤ20が相対的に移動してもよい。
(3)上記実施例において、ドリブンギヤ50がバランスシャフト30に対して変位したが、ドリブンギヤ50がバランスシャフト30に固定されて、ドリブンギヤ50がバランスシャフト30ごと変位してもよい。
(4)上記実施例において、押圧部材82が金属ギヤ70の円筒部73に接触していたが、押圧部材82のサイズをより大きくして円筒部73の全体に接触してもよい。すなわち、押圧部材82が金属ギヤ70の中心位置に接触してもよい。
(5)上記実施例では、セレーション33,65,75の山及び谷の形状が等脚台形であったが、それ以外の形状(例えば、三角形状など)であってもよい。
(6)上記実施例において、ドライブギヤ20は、図1の左側から見て時計回りに回る構成を例示したが、反時計回りに回る構成であってよい。
(7)上記実施例では、各ギヤ20、60,70をヘリカルギヤとしたが、平歯車などのギヤであってもよい。
(8)上記実施例では、バランサ装置に限らず、内燃機関のその他の動力伝達装置に広く適用することが可能である。
20…ドライブギヤ
33,65,75…セレーション
40…ギヤ装置
50…ドリブンギヤ
60…樹脂ギヤ
70…金属ギヤ
80…移動制御部
82…押圧部材
84…付勢部材

Claims (6)

  1. ドライブシャフトに設けられるドライブギヤと、
    前記ドライブシャフトと平行なドリブンシャフトに設けられ、前記ドリブンシャフトの軸方向に並んで配置される樹脂ギヤ及び金属ギヤを有するドリブンギヤと、
    前記ドライブギヤと前記ドリブンギヤの一方を、他方に対して対応するシャフトの軸方向に変位させ、前記ドライブギヤと前記樹脂ギヤが噛み合う第1噛合状態と、前記ドライブギヤと前記金属ギヤが噛み合う第2噛合状態とに、切り替える移動制御部と、を備えるギヤ装置。
  2. 前記移動制御部は、前記ドライブギヤの回転数が低回転域の場合に、前記第1噛合状態とし、前記ドライブギヤの回転数が高回転域の場合に、前記第2噛合状態とする請求項1に記載のギヤ装置。
  3. 前記移動制御部は、油圧又は電磁力によって前記ドライブギヤと前記ドリブンギヤの一方を変位させる請求項1又は請求項2に記載のギヤ装置。
  4. 前記ドリブンギヤは、前記ドリブンシャフトに対してその軸方向に移動可能とされ、
    前記移動制御部は、前記ドリブンギヤを変位させる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のギヤ装置。
  5. 前記ドリブンギヤと前記ドリブンシャフトは、前記ドリブンシャフトの軸周り方向で互いに噛み合うセレーションを有している請求項4に記載のギヤ装置。
  6. 前記移動制御部は、前記ドリブンギヤの一端面を押圧する押圧部材と、前記ドリブンギヤの他端面を前記押圧部材の押圧方向と反対方向に押圧付勢する付勢部材と、を有している請求項4または請求項5に記載のギヤ装置。
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