JP2002266943A - ダンパー機構 - Google Patents

ダンパー機構

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JP2002266943A
JP2002266943A JP2001067421A JP2001067421A JP2002266943A JP 2002266943 A JP2002266943 A JP 2002266943A JP 2001067421 A JP2001067421 A JP 2001067421A JP 2001067421 A JP2001067421 A JP 2001067421A JP 2002266943 A JP2002266943 A JP 2002266943A
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16FSPRINGS; SHOCK-ABSORBERS; MEANS FOR DAMPING VIBRATION
    • F16F15/00Suppression of vibrations in systems; Means or arrangements for avoiding or reducing out-of-balance forces, e.g. due to motion
    • F16F15/10Suppression of vibrations in rotating systems by making use of members moving with the system
    • F16F15/12Suppression of vibrations in rotating systems by making use of members moving with the system using elastic members or friction-damping members, e.g. between a rotating shaft and a gyratory mass mounted thereon
    • F16F15/129Suppression of vibrations in rotating systems by making use of members moving with the system using elastic members or friction-damping members, e.g. between a rotating shaft and a gyratory mass mounted thereon characterised by friction-damping means

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 微小捩じり振動に対する低ヒステリシストル
ク発生隙間を有するダンパー機構の音・振動性能を向上
させる。 【解決手段】 クラッチディスク組立体は、入力回転体
2と、スプラインハブ3と、ダンパー部4と、大摩擦機
構13と、摩擦抑制機構とを備えている。ダンパー部4
は、入力回転体2とスプラインハブ3とを回転方向に連
結する第2バネ8を有し、入力回転体2がスプラインハ
ブ3に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と、回転方
向駆動側と反対側に捩じれた負側とを含む捩じり特性を
有する。大摩擦機構13は、入力回転体2とスプライン
ハブ3が相対回転し第2バネ8の弾性力が作用すると、
摩擦を発生可能である。摩擦抑制機構は、第2バネ8の
弾性力を所定角度範囲内では摩擦機構に作用させないた
めの回転方向隙間θACnを、捩じり特性の正側と負側
の一方でのみ確保している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ダンパー機構、特
に、動力伝達系における捩じり振動を減衰するためのダ
ンパー機構に関する。
【0002】
【従来の技術】車輌に用いられるクラッチディスク組立
体は、フライホイールに連結・切断されるクラッチ機能
と、フライホイールからの捩じり振動を吸収・減衰する
ためのダンパー機能とを有している。一般に車両の振動
には、アイドル時異音(ガラ音)、走行時異音(加速・
減速ラトル,こもり音)及びティップイン・ティップア
ウト(低周波振動)がある。これらの異音や振動を取り
除くことがクラッチディスク組立体のダンパーとしての
機能である。
【0003】アイドル時異音とは、信号待ち等でシフト
をニュートラルに入れ、クラッチペダルを放したときに
トランスミッションから発生する「ガラガラ」と聞こえ
る音である。この異音が生じる原因は、エンジンアイド
リング回転付近ではエンジントルクが低く、エンジン爆
発時のトルク変動が大きいことにある。このときにトラ
ンスミッションのインプットギアとカウンターギアとが
歯打ち現象を起こしている。
【0004】ティップイン・ティップアウト(低周波振
動)とは、アクセルペダルを急に踏んだり放したりした
ときに生じる車体の前後の大きな振れである。駆動伝達
系の剛性が低いと、タイヤに伝達されたトルクが逆にタ
イヤに伝達されたトルクが逆にタイヤ側からトルクに伝
わり、その揺り返しとしてタイヤに過大トルクが発生
し、その結果車体を過渡的に前後に大きく振らす前後振
動となる。
【0005】アイドリング時異音に対しては、クラッチ
ディスク組立体の捩じり特性においてゼロトルク付近が
問題となり、そこでの捩じり剛性は低い方が良い。一
方、ティップイン・ティップアウトの前後振動に対して
は、クラッチディスク組立体の捩じり特性をできるだけ
ソリッドにすることが必要である。
【0006】以上の問題を解決するために、2種類のば
ね部材を用いることにより2段特性を実現したクラッチ
ディスク組立体が提供されている。そこでは、捩じり特
性における1段目(低捩じり角度領域)における捩じり
剛性及びヒステリシストルクを低く抑えているために、
アイドリング時の異音防止効果がある。また、捩じり特
性における2段目(高捩じり角度領域)では捩じり剛性
及びヒステリシストルクを高く設定しているため、ティ
ップイン・ティップアウトの前後振動を十分に減衰でき
る。
【0007】さらに、捩じり特性2段目においてたとえ
ばエンジンの燃焼変動に起因する微小捩じり振動が入力
されたときに、2段目の大摩擦機構を作動させないこと
で、微小捩じり振動を効果的に吸収するダンパー機構も
知られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】捩じり特性2段目にお
いてたとえばエンジンの燃焼変動に起因する微小振動が
入力されたときに、2段目の大摩擦機構を作動させない
ためには、高剛性ばね部材が圧縮された状態で、高剛性
ばね部材と大摩擦機構との間に所定角度の回転方向隙間
が確保されている必要があるこの回転方向隙間の角度
は、例えば0.2°〜1.0°程度の微小角度であり、
入力プレート(入力回転体)がスプラインハブ(出力回
転体)出力側回転体に対して回転方向駆動側(正側)に
捩じれた正側2段目と、その反対側(負側)に捩じれた
負側2段目の両方において存在する。
【0009】特に、従来は回転方向隙間を構成する構造
が正側2段目と負側2段目で同一の機構によって実現さ
れているため、この回転方向隙間が捩じり特性正側と負
側の両方において必ず発生し、しかもその角度の大きさ
が同一である。
【0010】しかし、車両の特性に応じて、回転方向隙
間の大きさを捩じり特性の正負両側で異ならせることが
好ましい場合もあり、さらには正負の片側では前記回転
方向隙間を設けないことが望ましい場合も考えられる。
【0011】具体的には、捩じり特性の負側には、減速
時共振回転数において振動のピークを低減させるために
前記回転方向隙間は必要である。しかし、FF車などで
は、実用回転域に共振ピークが残ることが多く、捩じり
特性の正側に前記回転方向隙間を確保していると、共振
回転数付近で音・振動性能が悪化する。
【0012】本発明の課題は、微小捩じり振動に対する
低ヒステリシストルク発生隙間を有するダンパー機構の
音・振動性能を向上させることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のダンパ
ー機構は、入力回転体と、出力回転体と、ダンパー部
と、摩擦機構と、摩擦抑制機構とを備えている。出力回
転体は、入力回転体と相対回転可能に配置されている。
ダンパー部は、入力回転体と出力回転体とを回転方向に
連結するばね部材を有し、入力回転体が出力回転体に対
して回転方向駆動側に捩じれた正側と入力回転体が出力
回転体に対して回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側
とを含む捩じり特性を有する。摩擦機構は、入力回転体
と出力回転体が相対回転しばね部材の弾性力が作用する
と、摩擦を発生可能である。摩擦抑制機構は、ばね部材
の弾性力を所定角度範囲内では摩擦機構に作用させない
ための回転方向隙間を、捩じり特性の正側と負側の一方
でのみ確保している。
【0014】このダンパー機構の摩擦抑制機構は、捩じ
り特性の正負の一方にのみ摩擦機構を作動させないため
の回転方向隙間を確保しているため、車両の特性に応じ
て、回転方向隙間を捩じり特性の正側又は負側のいずれ
か一方に設けることで、加速・減速の両方で音・振動性
能を向上させることができる。
【0015】請求項2に記載のダンパー機構では、請求
項1において、摩擦抑制機構は、捩じり特性の負側にの
み、回転方向隙間を確保している。このダンパー機構で
は、摩擦機構を作動させないための回転方向隙間は捩じ
り特性の負側にのみ設けられている。したがって、例え
ば実用回転域に共振ピークが残るFF車などに本ダンパ
ー機構を採用すると、正側の共振回転数付近での音・振
動性能が悪化しにくい。この結果、車両の加減速ともに
音・振動性能が向上する。
【0016】請求項3に記載の摩擦抑制機構は、入力回
転体と、出力回転体と、ダンパー部と、摩擦機構と、摩
擦抑制機構とを備えている。出力回転体は、入力回転体
と相対回転可能に配置されている。ダンパー部は、入力
回転体と出力回転体とを回転方向に連結するためのばね
部材を有し、捩じり特性において、1段目と、ばね部材
が圧縮され1段目より剛性の高い2段目とを有してい
る。2段目は入力回転体が出力回転体に対して回転方向
駆動側に捩じれた正側と、入力回転体が出力回転体に対
して回転方向駆動側と反対側に捩じれた負側とにそれぞ
れ存在する。摩擦機構は、2段目において入力回転体と
出力回転体が相対回転しばね部材の弾性力が作用すると
摩擦を発生可能である。摩擦抑制機構は、ばね部材の弾
性力を所定角度範囲内では摩擦機構に作用させないため
の回転方向隙間を、捩じり特性の正側2段目と負側2段
目の一方でのみ確保している。
【0017】このダンパー機構の摩擦抑制機構は、捩じ
り特性の正負2段目の一方にのみ摩擦機構を作動させな
いための回転方向隙間を確保しているため、車両の特性
に応じて、回転方向隙間を捩じり特性の正側2段目又は
負側2段目のいずれか一方に設けることで、加速・減速
の両方で音・振動性能を向上させることができる。
【0018】請求項4に記載のダンパー機構では、請求
項3において、摩擦抑制機構は、捩じり特性の負側2段
目にのみ、回転方向隙間を確保している。このダンパー
機構では、摩擦機構を作動させないための回転方向隙間
は捩じり特性の負側2段目にのみ設けられている。した
がって、例えば実用回転域に共振ピークが残るFF車な
どに本ダンパー機構を採用すると、正側の共振回転数付
近での音・振動性能が悪化しにくい。この結果、車両の
加減速ともに音・振動性能が向上する。
【0019】
【発明の実施の形態】図1に本発明の一実施形態のクラ
ッチディスク組立体1の断面図を示し、図2にその平面
図を示す。クラッチディスク組立体1は、車輌のクラッ
チ装置に用いられる動力伝達装置であり、クラッチ機能
とダンパー機能とを有している。クラッチ機能とはフラ
イホイール(図示せず)に連結及び離反することによっ
てトルクの伝達及び遮断をする機能である。ダンパー機
能とは、バネ等によりフライホイール側から入力される
トルク変動等を吸収・減衰する機能である。
【0020】図1においてO−Oがクラッチディスク組
立体1の回転軸すなわち回転中心線である。また、図1
の左側にエンジン及びフライホイール(図示せず)が配
置され、図1の右側にトランスミッション(図示せず)
が配置されている。さらに、図2のR1側がクラッチデ
ィスク組立体1の回転方向駆動側(正側)であり、R2
側からその反対側(負側)である。なお、以下に示す具
体的な角度の数値は各角度の相対的関係の理解を容易に
するために用いられており、本発明はこれら数値には限
定されない。
【0021】クラッチディスク組立体1は、主に、入力
回転体2(クラッチプレート21,リティーニングプレ
ート22, クラッチディスク23)と、出力回転体とし
てのスプラインハブ3と、入力回転体2とスプラインハ
ブ3との間に配置されたダンパー部4とから構成されて
いる。ダンパー部4は、第1バネ7, 第2バネ8及び大
摩擦機構13などを含んでいる。
【0022】入力回転体2はフライホイール(図示せ
ず)からのトルクが入力される部材である。入力回転体
2は、主に、クラッチプレート21と、リティーニング
プレート22と、クラッチディスク23とから構成され
ている。クラッチプレート21とリティーニングプレー
ト22は共に板金製の円板状かつ環状の部材であり、軸
方向に所定の間隔を空けて配置されている。クラッチプ
レート21はエンジン側に配置され、リティーニングプ
レート22はトランスミッション側に配置されている。
クラッチプレート21とリティーニングプレート22は
後述する板状連結部31により互いに固定され、その結
果軸方向の間隔が定めされるとともに一体回転するよう
になっている。
【0023】クラッチディスク23は、図示しないフラ
イホイールに押し付けられる部分である。クラッチディ
スク23は、クッショニングプレート24と、第1及び
第2摩擦フェーシング25とから主に構成されている。
クッショニングプレート24は、環状部24aと、環状
部24aの外周側に設けられ回転方向に並ぶ複数のクッ
ショニング部24bと、環状部24aから半径方向内側
に延びる複数の連結部24cとから構成されている。連
結部24cは4カ所に形成され、各々がリベット27
(後述)によりクラッチプレート21に固定されてい
る。クッショニングプレート24の各クッショニング部
24bの両面には、摩擦フェーシング25がリベット2
6により固定されている。
【0024】クラッチプレート21及びリティーニング
プレート22の外周部には、回転方向に等間隔で4つの
窓孔35がそれぞれ形成されている。各窓孔35には、
内周側と外周側にそれぞれ切り起こし部35a,35b
が形成されている。この切り起こし部35a, 35bは
後述の第2バネ8の軸方向及び半径方向への移動を規制
するためのものである。また、窓孔35には、第2バネ
8の端部に当接又は近接する当接面36が円周方向両端
に形成されている。
【0025】クラッチプレート21及びリティーニング
プレート22には、それぞれ中心孔37(内周縁)が形
成されている。この中心孔37内には出力回転体として
のスプラインハブ3が配置されている。スプラインハブ
3は、軸方向に延びる筒状のボス52と、ボス52から
半径方向に延びるフランジ54とから構成されている。
ボス52の内周部には、トランスミッション側から延び
る図示しないシャフトに係合するスプライン孔53が形
成されている。フランジ54には回転方向に並んだ複数
の外周歯55及び後述の第1バネ7を収容するための切
欠き56等が形成されている。切欠き56は半径方向に
対向する2カ所に形成されている。
【0026】ハブフランジ6は、スプラインハブ3の外
周側で、かつ、クラッチプレート21とリティーニング
プレート22との間に配置された円板状の部材である。
ハブフランジ6は、第1バネ7を介してスプラインハブ
3と回転方向に弾性的に連結され、さらには第2バネ8
を介して入力回転体2に弾性的に連結されている。図7
〜9に詳細に示すように、ハブフランジ6の内周縁には
複数の内周歯59が形成されている。
【0027】内周歯59は前述の外周歯55の間に配置
され、回転方向に所定の隙間をあけて配置されている。
外周歯55と内周歯59とは回転方向に互いに当接可能
である。すなわち外周歯55と内周歯59とによりスプ
ラインハブ3とハブフランジ6との捩じり角度を規制す
るための第1ストッパー9が形成されている。ここでい
うストッパーとは、所定角度までは両部材の相対回転を
許容するが、所定角度になると互いに当接しそれ以上の
相対回転を禁止する構造をいう。外周歯55とその円周
方向両側の内周歯59との間にはそれぞれ第1隙間角度
θ1が確保されている。具体的には、外周歯55から見
てR2側の内周歯59との間の第1隙間角度θ1pは8
°であり、外周歯55から見てR1側の内周歯59との
間の第1隙間角度θ1nは2°である。このように第1
隙間角度θ1pとθ1nは角度の大きさが異なり、θ1
pはθ1nより大きい。
【0028】さらに、ハブフランジ6の内周縁には、フ
ランジ54の切欠き56に対応して切欠き67が形成さ
れている。切欠き56, 67内には、それぞれ1つずつ
合計2つの第1バネ7が配置されている。第1バネ7は
低剛性のコイルスプリングであり、2つの第1バネ7は
並列に作用する。第1バネ7は円周方向両端においてス
プリングシート7aを介して切欠き56, 67の円周方
向両端に係合している。以上の構造によって、スプライ
ンハブ3とハブフランジ6とが相対回転する際には第1
隙間角度θ1の範囲内で第1バネ7が回転方向に圧縮さ
れる。
【0029】ハブフランジ6には回転方向に等間隔で4
つの窓孔41が形成されている。窓孔41は回転方向に
長く延びる形状である。図5及び図6に示すように、窓
孔41の縁は、円周方向両側の当接部44と、外周側の
外周部45と、内周側の内周部46とから構成されてい
る。外周部45は連続して形成されており窓孔41の外
周側を閉じている。なお、窓孔41の外周側は一部が半
径方向外方に開いた形状であってもよい。ハブフランジ
6において各窓孔41の円周方向間には切欠き42が形
成されている。切欠き42は半径方向内側から外側に向
かって円周方向長さが長くなる扇形状であり、円周方向
両側に縁面43が形成されている。
【0030】各窓孔41が形成された部分の半径方向外
側には、突起49が形成されている。すなわち突起49
はハブフランジ6の外周縁48からさらに半径方向外側
に延びる突起形状である。突起49は、回転方向に長く
延びており、ストッパー面50が形成されている。
【0031】第2バネ8はクラッチディスク組立体1の
ダンパー機構に用いられる弾性部材すなわちバネであ
る。各第2バネ8は、同心に配置された1対のコイルス
プリングから構成されている。各第2バネ8は各第1バ
ネ7に比べて大型であり、バネ定数が大きい。第2バネ
8は各窓孔41, 35内に収容されている。第2バネ8
は、回転方向に長く延びており、窓孔41全体にわたっ
て配置されている。第2バネ8の円周方向両端は、窓孔
41の当接部44と当接面36とに当接又は近接してい
る。プレート21, 22のトルクは第2バネ8を介して
ハブフランジ6に伝達され得る。プレート21, 22と
ハブフランジ6とが相対回転すると、第2バネ8は両者
の間で圧縮される。具体的には、第2バネ8は当接面3
6とその円周方向反対側の当接部44との間で回転方向
に圧縮される。このとき4つの第2バネ8は並列に作用
している。
【0032】リティーニングプレート22の外周縁に
は、回転方向に等間隔で4カ所に板状連結部31が形成
されている。板状連結部31は、クラッチプレート21
とリティーニングプレート22とを互いに連結するもの
であり、さらに後述するようにクラッチディスク組立体
1のストッパーの一部を構成している。板状連結部31
は、リティーニングプレート22から一体に形成された
板状部材であり、回転方向に所定の幅を有している。板
状連結部31は、各窓孔41の円周方向間すなわち切欠
き42に対応して配置されている。板状連結部31は、
リティーニングプレート22の外周縁から軸方向に延び
るストッパー部32と、ストッパー部32の端部から半
径方向内側に延びる固定部33とから構成されている。
ストッパー部32はリティーニングプレート22の外周
縁からクラッチプレート21側に延びている。固定部3
3は、ストッパー部32の端部から半径方向内側に折り
曲げられている。ストッパー部32は円周方向両側にス
トッパー面51を有している。固定部33の半径方向位
置は窓孔41の外周側部分に対応しており、円周方向位
置は回転方向に隣接する窓孔41の間である。この結
果、固定部33はハブフランジ6の切欠き42に対応し
て配置されている。切欠き42は固定部33より大きく
形成されており、このため組立時にリティーニングプレ
ート22をクラッチプレート21に対して軸方向に移動
させたときには固定部33は切欠き42を通って移動可
能である。固定部33はクッショニングプレート24の
連結部24cに平行にかつトランスミッション側から当
接している。固定部33には孔33aが形成されてお
り、孔33a内には前述のリベット27が挿入されてい
る。リベット27は、固定部33とクラッチプレート2
1とクッショニングプレート24とを一体に連結してい
る。さらに、リティーニングプレート22において固定
部33に対応する位置にはかしめ用孔34が形成されて
いる。
【0033】次に、板状連結部31のストッパー部32
と突起49とからなる第2ストッパー10について説明
する。第2ストッパー10はハブフランジ6と入力回転
体2との間で隙間角度θ4までの領域で両部材の相対回
転を許容し、捩り角度がθ4になると両部材の相対回転
を規制するための機構である。なお、この隙間角度θ4
の間で第2バネ8はハブフランジ6と入力回転体2との
間で圧縮される。具体的には、突起49から見てR2側
のストッパー部32との間にある第4隙間角度θ4pは
26゜であり、突起49から見てR1側ストッパー部3
2との間にある第4隙間角度θ4nは23.5゜であ
る。このようにθ4pはθ4nと大きさが異なり、θ4
pはθ4nより大きい。以上に述べたθ4pとθ4nの
関係を実現するために、突起49はストッパー部32の
円周方向間に中心位置から円周方向にずれて配置されて
いる。
【0034】フリクションプレート11は、スプライン
ハブ3の外周側において、クラッチプレート21とハブ
フランジ6との間、及びハブフランジ6とリティーニン
グプレート22との間に配置された1対のプレート部材
である。フリクションプレート11は円板状かつ環状の
プレート部材であり、入力回転体2とスプラインハブ3
との間でダンパー部4の一部を構成している。フリクシ
ョンプレート11の内周縁には複数の内周歯66が形成
されている。内周歯66はハブフランジ6の内周歯59
と軸方向に重なるように配置されている。図5〜7に詳
細に示すように、内周歯66は内周歯59に比べて円周
方向幅が広く、その円周方向両側に両端がはみでてい
る。内周歯66は、スプラインハブ3の外周歯55と回
転方向に所定の隙間をあけて配置されている。すなわち
この隙間の範囲内でスプラインハブ3とフリクションプ
レート11とは相対回転可能となっている。外周歯55
と内周歯59とにより、スプラインハブ3とフリクショ
ンプレート11との相対回転角度を規制する第3ストッ
パー12が形成されている。第3ストッパー12は、図
7に示すように、外周歯55と内周歯66との間に第2
隙間角度θ2の隙間を確保している。具体的には、外周
歯55から見てR2側の内周歯66との間にある第2隙
間角度θ2pは7.5°であり、外周歯55から見てR
1側の内周歯66との間にある第2隙間角度θ2nは
1.5°である。このようにθ2pはθ2nと大きさが
異なり、大きい。第2隙間角度θ2pは第1隙間角度θ
1pより小さく、第2隙間角度θ2nは第1隙間角度θ
1nより小さい。
【0035】1対のフリクションプレート11のうちリ
ティーニングプレート22側に配置されたフリクション
プレート11には、半径方向外側に延びる複数の突出部
61が形成されている。各突出部61はハブフランジ6
の窓孔41の間に配置されている。窓孔41の先端に
は、半円形状の位置合わせ切欠き61aが形成されてい
る。この切欠き61aは、ハブフランジ6に形成された
位置合わせ用の切欠き98やプレート21,22に形成
された位置合わせ用の孔に対応している。
【0036】1対のフリクションプレート11同士は、
複数のピン62により相対回転不能かつ軸方向の位置決
めがされている。ピン62は、胴部と、胴部から軸方向
両側に延びる頭部とから構成されている。1対のフリク
ションプレート11同士はピン62の胴部端面に軸方向
から当接することによって互いに対して軸方向に接近す
ることが制限されている。フリクションプレート11の
頭部はフリクションプレート11に形成された孔内に挿
入され自らと胴部との間にフリクションプレート11を
挟んでいる。各フリクションプレート11とハブフラン
ジ6との間には、それぞれスペーサ63が配置されてい
る。スペーサ63は各フリクションプレート11の内周
部とハブフランジ6の内周側環状部分との間にそれぞれ
配置された環状のプレート部材である。スペーサ63に
はピン62の胴部が挿入される孔が形成されており、ピ
ン62と孔の係合によってスペーサ63はフリクション
プレート11と一体回転する。スペーサ63においてハ
ブフランジ6に対向し当接する側の面には摩擦係数を減
らすためのコーティングが施されている。ハブフランジ
6にはピン62が貫通する複数の孔69が形成されてい
る。ピン62は孔69に対して円周方向両側に所定角度
だけ相対移動可能である。すなわちピン62の胴部と孔
69の円周方向両側端面との円周方向間に第3隙間角度
θ3の隙間が確保されている。これにより第4ストッパ
ー14が形成されている。ピン62から見てR2側の孔
69端面との間には第3隙間角度θ3pが確保されてい
る、ピン62から見てR1側の孔69端面との間には第
3隙間角度θ3nが確保されている。第3隙間角度θ3
pとθ3nは大きさが異なり、θ3pは0.50°であ
り、θ3nは0.70°である。なお、第3隙間角度θ
3pの大きさは、第1隙間角度θ1pと第2隙間角度θ
2pの差に等しい(θ3p=θ1p−θ2p)。また、
第3隙間角度θ3nの大きさは、第1隙間角度θ1nと
第2隙間角度θ2nの差より大きい(θ3n>θ1n−
θ2n)。
【0037】以上に述べたピン62と孔69との相対的
位置関係は、ピン62が図7に示す中立状態において孔
69に対してR2側にずれていることを意味している。
より具体的にはピン62の円周方向中心位置は孔69の
円周方向中心位置よりR2側に位置している。この位置
関係は、ピン62の位置を移動させること、又はハブフ
ランジ6の孔69の大きさを円周方向両側で変えること
で実現される。
【0038】次に、摩擦発生機構を構成する各部材につ
いて説明する。第2摩擦ワッシャー72は、トランスミ
ッション側のフリクションプレート11の内周部とリテ
ィーニングプレート22の内周部との間に配置されてい
る。第2摩擦ワッシャー72は主に樹脂製の本体74か
ら構成されている。本体74の摩擦面は、トランスミッ
ション側のフリクションプレート11のトランスミッシ
ョン側面に当接している。本体74の内周部からはトラ
ンスミッション側に係合部76が延びている。係合部7
6は、リティーニングプレート22に対して相対回転不
能に係合されるとともに軸方向に係止されている。本体
74の内周部トランスミッション側には複数の凹部77
が形成されている。本体74とリティーニングプレート
22との間には第2コーンスプリング73が配置されて
いる。第2コーンスプリング73は、第2摩擦ワッシャ
ー72の本体74とリティーニングプレート22との間
で圧縮された状態で配置されている。これにより、第2
摩擦ワッシャー72の摩擦面は第1フリクションプレー
ト11に強く圧接されている。第1摩擦ワッシャー79
はフランジ54とリティーニングプレート22の内周部
との間に配置されている。すなわち、第1摩擦ワッシャ
ー79は第2摩擦ワッシャー72の内周側でかつボス5
2の外周側に配置されている。第1摩擦ワッシャー79
は樹脂製である。第1摩擦ワッシャー79は、主に環状
の本体81から構成されており、環状の本体81からは
複数の突起82が半径方向外側に延びている。本体81
はフランジ54に当接しており、複数の突起82は第2
摩擦ワッシャー72の凹部77に相対回転不能に係合し
ている。これにより、第1摩擦ワッシャー79は第2摩
擦ワッシャー72を介してリティーニングプレート22
と一体回転可能である。第1摩擦ワッシャー79とリテ
ィーニングプレート22の内周部との間には第1コーン
スプリング80が配置されている。第1コーンスプリン
グ80は第1摩擦ワッシャー79とリティーニングプレ
ート22の内周部との間で軸方向に圧縮された状態で配
置されている。なお、第1コーンスプリング80の付勢
力は第2コーンスプリング73の付勢力より小さくなる
ように設計されている。また、第1摩擦ワッシャー79
は第2摩擦ワッシャー72に比べて摩擦係数が低い材料
から構成されている。このため、第1摩擦ワッシャー7
9によって発生する摩擦(ヒステリシストルク)は第2
摩擦ワッシャー72で発生する摩擦より大幅に小さくな
っている。
【0039】クラッチプレート21の内周部とフランジ
54及びフリクションプレート11の内周部との間には
第3摩擦ワッシャー85と第4摩擦ワッシャー86が配
置されている。第3摩擦ワッシャー85及び第4摩擦ワ
ッシャー86は樹脂製の環状部材である。第3摩擦ワッ
シャー85はクラッチプレート21の内周縁に相対回転
不能に係合し、その内周面はボス52の外周面に摺動可
能に当接している。すなわち、クラッチプレート21は
第3摩擦ワッシャー85を介してボス52に半径方向の
位置決めをされている。第3摩擦ワッシャー85はフラ
ンジ54に対して軸方向エンジン側から当接している。
第4摩擦ワッシャー86は第3摩擦ワッシャー85の外
周側に配置されている。第4摩擦ワッシャー86は環状
の本体87と、環状の本体87から軸方向エンジン側に
延びる複数の係合部88を有している。本体87は軸方
向エンジン側のフリクションプレート11に当接する摩
擦面を有している。係合部88はクラッチプレート21
に形成された孔内に相対回転不能に係合している。ま
た、係合部88はクラッチプレート21の軸方向エンジ
ン側面に当接する爪部を有している。第3摩擦ワッシャ
ー85と第4摩擦ワッシャー86は互いに相対回転不能
に係合している。なお、第3摩擦ワッシャー85と第4
摩擦ワッシャー86は別体の部材であり、第4摩擦ワッ
シャー86は第3摩擦ワッシャー85に対して摩擦係数
が高い材料から構成されている。
【0040】以上に述べた摩擦機構において、第2摩擦
ワッシャー72及び第4摩擦ワッシャー86とフリクシ
ョンプレート11との間に比較的高いヒステリシストル
クを発生させる大摩擦機構13(摩擦機構)が形成され
ていることになる。さらに、第1摩擦ワッシャー79及
び第3摩擦ワッシャー85と、フランジ54との間に低
ヒステリシストルクを発生する小摩擦機構15を形成し
ている。
【0041】次に、図10を用いてクラッチディスク組
立体1の構成についてさらに説明する。図10はクラッ
チディスク組立体1のダンパー機構としての機械回路図
である。この機械回路図は、ダンパー機構における各部
材の回転方向の関係を模式的に描いたものである。した
がって一体回転する部材は同一の部材として取り扱って
いる。
【0042】図10から明らかなように、入力回転体2
とスプラインハブ3との間にはダンパー部4を構成する
ための複数の部材が配置されている。ハブフランジ6は
入力回転体2とスプラインハブ3との回転方向間に配置
されている。ハブフランジ6はスプラインハブ3に第1
バネ7を介して回転方向に弾性的に連結されている。ま
た、ハブフランジ6とスプラインハブ3との間には第1
ストッパー9が形成されている。第1ストッパー9にお
ける第1隙間角度θ1pの間で第1バネ7は圧縮可能で
ある。ハブフランジ6は入力回転体2に対して第2バネ
8を介して回転方向に弾性的に連結されている。また、
ハブフランジ6と入力回転体2との間には第2ストッパ
ー10が形成されている。第2ストッパー10における
第4隙間角度θ4pの間で第2バネ8は圧縮可能となっ
ている。以上に述べたように、入力回転体2とスプライ
ンハブ3と直列に配置された第1バネ7と第2バネ8と
により回転方向に弾性的に連結されている。ここでは、
ハブフランジ6は2種類のバネの間に配置された中間部
材として機能している。また、以上に述べた構造は、並
列に配置された第1バネ7及び第1ストッパー9からな
る第1ダンパーと、並列に配置された第2バネ8と第2
ストッパー10からなる第2ダンパーとが、直列に配置
された構造として見ることもできる。また、以上に述べ
た構造を入力回転体2とスプラインハブ3とを回転方向
に弾性的に連結するダンパー部4として考えることがで
きる。第1バネ7全体の剛性は第2バネ8全体の剛性よ
りはるかに小さく設定されている。そのため、第1隙間
角度θ1までの捩り角度の範囲で第2バネ8はほとんど
回転方向に圧縮されない。
【0043】フリクションプレート11は、入力回転体
2とスプラインハブ3との回転方向間に配置されてい
る。フリクションプレート11は、スプラインハブ3と
ハブフランジ6との間で相対回転するように配置されて
いる。フリクションプレート11は、スプラインハブ3
との間に第3ストッパー12を構成し、ハブフランジ6
との間に第4ストッパー14を構成している。さらに、
フリクションプレート11は、大摩擦機構13を介して
入力回転体2に回転方向に摩擦係合している。以上に述
べたフリクションプレート11は、入力回転体2, スプ
ラインハブ3及びハブフランジ6の間に配置されること
で摩擦連結機構5を構成している。
【0044】次に、図10におけるダンパー機構の各隙
間角度θ1p〜θ4pの関係について説明する。ここで
説明する隙間角度は、スプラインハブ3から入力回転体
2をR2側に見た各角度である。第1ストッパー9にお
ける第1隙間角度θ1pは第1バネ7が円周方向に圧縮
される角度範囲となっており、第2ストッパー10にお
ける第4隙間角度θ4pは第2バネ8が回転方向に圧縮
される角度範囲となっている。第1隙間角度θ1pと第
4隙間角度θ4pとの合計がクラッチディスク組立体1
全体としてのダンパー機構の正側最大捩り角度である。
【0045】第3隙間角度θ3pは、第1隙間角度θ1
pと第2隙間角度θ2pの差に等しくなっているため、
正側2段目においては、微小捩り振動が入力された時に
大摩擦機構13を作動させないための正側2段目隙間角
度は確保されないようになっている。
【0046】次に、図15におけるダンパー機構の各隙
間角度θ1n〜θ4nの関係について説明する。ここで
説明する隙間角度は、スプラインハブ3から入力回転体
2をR1側に見た各角度である。第1ストッパー9にお
ける第1隙間角度θ1nは第1バネ7が円周方向に圧縮
される角度範囲を示しており、第2ストッパー10にお
ける第4隙間角度θ4nは第2バネ8が回転方向に圧縮
される角度範囲を示している。第1隙間角度θ1nと第
4隙間角度θ4nとの合計がクラッチディスク組立体1
全体としてのダンパー機構の負側最大捩り角度である。
第1隙間角度θ1nから第2隙間角度θ2nを引いた差
をさらに第3隙間角度θ3nから引いたものが、捩り特
性の負側2段目において微小捩り振動が入力された時に
大摩擦機構13を作動させないための負側2段目隙間角
度θACnの大きさとなっている。負側2段目隙間角度
θACnの大きさはこの実施形態では0.2゜と従来に
比べて大幅に小さくなっており、0.15〜0.25゜
の範囲にあることが好ましい。
【0047】また、負側2段目隙間角度θACnは軸方
向に伸びる連結部材としてのピン62とハブフランジ6
の孔69との間に形成されるため、精度を高く保つこと
ができる。この結果、1°未満の微小角度を実現でき
る。なお、孔69は一部が開いた切り欠き形状であって
もよい。
【0048】また、負側2段目隙間角度θACnがフリ
クションプレート11と第2バネ8との間に設けられて
いる構造にも、本発明を採用できる。また、図15に示
すように、入力回転体2とスプラインハブ3との間には
小摩擦機構15が設けられている。小摩擦機構15は入
力回転体2とスプラインハブ3が相対回転する際には常
に滑りが生じるようになっている。この実施形態では、
小摩擦機構15は主に第2摩擦ワッシャー79及び第3
摩擦ワッシャー85によって構成されているが、他の部
材によって構成されていても良い。また、小摩擦機構1
5で発生するヒステリシストルクは場合によっては最大
限低いことが望ましい。
【0049】次に、複数の機械回路図を用いてクラッチ
ディスク組立体1におけるダンパー機構の動作を詳細に
説明する。図10〜14は、スプラインハブ3が入力回
転体2に対してR2側に捩じれている捩じり特性正側の
状態(図20の右側)での各部材の動作や関係を説明す
るための図である。図15〜19は出力回転体が入力回
転体2に対してR1側に捩じれている捩じり特性負側の
状態(図20の左側)での各部材の動作や関係を説明す
るための図である。
【0050】図10の中立状態からスプラインハブ3を
入力回転体2に対してR2側に捩っていく。このとき入
力回転体2はスプラインハブ3に対してR1側すなわち
回転方向駆動側に捩れていくことになる。図10の状態
からスプラインハブ3がR2側に3゜捩れると図11の
状態に移行する。この動作時に、第1バネ7がスプライ
ンハブ3とハブフランジ6との間で回転方向に圧縮さ
れ、小摩擦機構15で滑りが生じる。この結果、低剛性
・低ヒステリシストルクの特性が得られる。そして、第
1ストッパー9と第3ストッパー12とでそれぞれ隙間
角度が3゜小さくなる。図11の状態からさらにスプラ
インハブ3が4.5゜捩れると図12の状態に移行す
る。この動作時にも第1バネ7がスプラインハブ3とハ
ブフランジ6との間で回転方向に圧縮され、小摩擦機構
15で滑りが生じる。図12では、図10の中立状態か
らR2側にθ2p捩じれたため、第3ストッパー12に
おいてスプラインハブ3とフリクションプレート11と
が当接し、第1ストッパー9において第1ストッパー9
の第1隙間角度θ1pから第3ストッパー12の第2隙
間角度θ2pを引いた隙間角度が確保されている。さら
に図12の状態からスプラインハブ3がR2側に0.5
゜(θ1p−θ2p)捩れると、図13の状態に移行す
る。この動作中に、大摩擦機構13において滑りが生
じ、高ヒステリシストルクが発生している。そのため、
低剛性・高ヒステリシストルクの領域が低剛性・低ヒス
テリシストルクの端に形成されている。また、フリクシ
ョンプレート11は、スプラインハブ3と一体回転し、
ハブフランジ6に対してR2側に変位する。つまり、ピ
ン62は孔69内でR2側に移動し、孔69のR2側縁
に当接する(図8)。図13では、第1ストッパー9に
おいてスプラインハブ3の外周歯55とハブフランジ6
の内周歯59とが互いに当接し、第4ストッパー14に
おいてピン62が孔69のR2側縁に当接している。こ
のように、フリクションプレート11とハブフランジ6
との間に回転方向隙間は形成されていない。図13では
第1ストッパー9が当接しているため、これ以上は第1
バネ7が圧縮されない。図13の状態からさらにスプラ
インハブ3がR2側に捩れると、図14の状態に移行す
る。この動作中にハブフランジ6が第2バネ8を入力回
転体2との間で圧縮していく。この時、フリクションプ
レート11と入力回転体2との間で滑りが生じること
で、大摩擦機構13において摩擦が発生する。この結
果、高剛性・高ヒステリシストルクの特性が得られる。
【0051】なお、この捩り角度2段目においてフリク
ションプレート11とハブフランジ6との間には回転方
向隙間が確保されていないため、捩り振動が入力された
場合には、第2バネ8が圧縮された状態から伸びる際に
はすぐに第2バネ8の弾性力がフリクションプレート1
1に作用し、その結果大摩擦機構13において滑りが生
じる。
【0052】次に、図15に示す中立状態からスプライ
ンハブ3が入力回転体2に対してR1側に捩れていくと
きの動作を説明する。このときに入力回転体2はスプラ
インハブ3に対してR2側にすなわち回転方向駆動側と
反対側に捩れていくことになる。図15に示す状態から
スプラインハブ3が入力回転体2に対してR1側に1°
捩れると、図16の状態に移行する。この動作時にスプ
ラインハブ3とハブフランジ6との間で第1バネ7が圧
縮され、小摩擦機構15において滑りが発生する。この
結果、低剛性・低ヒステリシストルクの特性が得られ
る。図16では、第1ストッパー9と第3ストッパー1
2においてそれぞれ隙間角度が1゜小さくなる。図16
の状態からスプラインハブ3がさらに入力回転体2に対
してR1側に1゜捩れると、図17の状態に移行する。
この動作時にもスプラインハブ3とハブフランジ6との
間で第1バネ7が圧縮され、小摩擦機構15において滑
りが発生する。図17では、図15の中立状態からR1
側にθ2n捩じれたため、第3ストッパー12において
スプラインハブ3とフリクションプレート11とが互い
に当接し、第1ストッパー9において第1ストッパー9
の第1隙間角度θ1nから第3ストッパー12の第2隙
間角度θ2pを引いた隙間角度が確保されている。図1
7の状態からスプラインハブ3が入力回転体2に対して
R1側に0.5゜(θ1n−θ2n)捩れると、図18
の状態に移行する。この動作中には、大摩擦機構13に
おいて滑りが生じ、高ヒステリシストルクが発生してい
る。そのため、低剛性・高ヒステリシストルクの領域が
低剛性・低ヒステリシストルクの端に形成されている。
また、フリクションプレート11は、スプラインハブ3
と一体回転し、ハブフランジ6に対して回転方向に変位
する。つまり、ピン62が孔69内でR1側に移動す
る。図18では、第1ストッパー9においてスプライン
ハブ3とハブフランジ6とが互いに当接している。この
ため、これ以上は第1バネ7が圧縮されない。図18に
示す状態では、第4ストッパー14において第1隙間角
度θ1nからθ2nを引いたものをさらに第3隙間角度
θ3nから引いた負側2段目隙間角度θACn(0.2
°)が形成されている(図9)。図18の状態からさら
にスプラインハブ3が入力回転体2に対してR1側に捩
れると、図19の状態に移行する。この動作時に、第2
バネ8が回転方向に圧縮され、同時に大摩擦機構13で
滑りが生じる。この結果、高剛性・高ヒステリシストル
クの特性が得られる。なお、フリクションプレート11
はハブフランジ6と一体回転するため、図18から図1
9への移行するときにおいても第4ストッパー14にお
いて負側2段目隙間角度θACnが確保されている。図
19の状態から捩り振動が入力されると、第2バネ8は
圧縮された状態から伸縮を繰り返す。第2バネ8が伸び
るときに、θACnの範囲内では第2バネ8の弾性力は
フリクションプレート11に作用せず、その結果大摩擦
機構13で滑りが生じない。すなわち負側2段目隙間角
度θACnは、捩り特性負側2段目において微小捩り振
動に対して大摩擦機構13で滑りを生じさせない摩擦抑
制機構として機能している。
【0053】次に、図20の捩じり特性線図を参照し
て、具体的にクラッチディスク組立体1に各種捩り振動
が入力された時の捩り特性の変化について説明する。車
両の前後振動のように振幅の大きな捩り振動が発生する
と、捩り特性は正負の2段目間で変動を繰り返す。この
時2段目の高ヒステリシストルクによって車両の前後振
動は速やかに減衰される。
【0054】次に、例えばエンジンブレーキをかけた減
速時においてエンジンの燃焼変動に起因する微小捩り振
動がクラッチディスク組立体1に入力されたとする。こ
の時、図21にしめすように、スプラインハブ3と入力
回転体2とは負側2段目隙間角度θACnの範囲内で大
摩擦機構13を作用させず相対回転可能である。すなわ
ち捩り特性線図において隙間角度θACn範囲内では第
2バネ8が作動するが、大摩擦機構13では滑りが生じ
ない。つりま、捩じり角度θACnの範囲では、2段目
のヒステリシストルクH2より小さなヒステリシストル
クHACが得られる。ヒステリシストルクHACはヒステリ
シストルクH2の1/10程度であることが好ましい。
このように、捩じり特性の負側において大摩擦機構13
を所定角度範囲内では作動させない回転方向隙間を設け
たため、エンジンブレーキをかけた減速時にエンジンか
らの燃焼変動に対して共振回転数のピークを低くでき
る。
【0055】捩じり特性の正側において大摩擦機構13
を所定角度範囲内で作動させない回転方向隙間を設けな
かったため、実用回転域に共振ピークが残ることが多い
FF車などの場合、共振回転数付近で音・振動性能が悪
化しない。
【0056】このように、捩じり特性の正負両側のうち
一方にのみ摩擦機構を所定角度範囲内で作動させない回
転方向隙間を確保しているため、加速・減速の両方で音
・振動性能が向上する。
【0057】本発明に係るダンパー機構は、クラッチデ
ィスク組立体以外にも採用可能である。例えば、2つの
フライホイールを回転方向に弾性的に連結するダンパー
機構等である。
【0058】
【実施例】本発明に係るダンパー機構と他のダンパー機
構の構造をFF車に採用した場合の騒音レベルの比較を行
った。 (1)加速時の振動レベル 図22上部分のグラフは、4速全開加速時におけるエン
ジン回転速度(NE)に対するトランスミッションの回転
速度変動(ΔNM)の変化を示している。図22下部分の
グラフは、4速全開加速時におけるエンジン回転速度
(NE)に対する伝達率(ΔNM/ΔNE)の変化を示してい
る。グラフにおける太い破線はエンジン回転変動を表
し、二点鎖線は従来の構造(ねじり特性正側に微小ねじ
り角の回転方向隙間が形成されている構造)を表してい
る。従来の構造では、2000回転の付近で大きな共振
ピークが現れており、これは大きな騒音が生じているこ
とを意味する。
【0059】本発明の構造(捩じり特性正側に微小捩じ
り角の回転方向隙間が形成されていない構造)は、第1
実施例を一点鎖線で、第2実施例を実線で表している。
第1実施例の一点鎖線の構造は、ヒステリシストルクが
比較的小さい構造であり、共振点におけるピークが従来
の構造に対して小さくなっている。このため、図22下
部分のグラフで示すように、伝達率は共振点以外では1
以下であり、共振点付近でも従来より小さくなってい
る。また、第2実施例の実線の構造は、ヒステリシスト
ルクが比較的大きい構造であり、共振点におけるピーク
がほとんど消滅し、エンジン回転変動とほぼ同等になっ
ている。この結果、図22下部分のグラフで示すよう
に、伝達率はほぼ全体にわたって1以下であり、共振点
付近でも概ね1程度又はそれ以下である。
【0060】以上より、FF車においては、加速時には、
本願発明の構造が従来の構造に比べてトランスミッショ
ンの回転変動すなわち騒音レベルを大幅に低減できるこ
とが分かる。 (2)減速時の振動レベル 図23上部分のグラフは、4速全閉減速時におけるエン
ジン回転速度(NE)に対するトランスミッションの回転
速度変動(ΔNM)の変化を示している。図23下部分の
グラフは、4速全閉減速時におけるエンジン回転速度
(NE)に対する伝達率(ΔNM/ΔNE)の変化を示してい
る。グラフにおける太い破線はエンジン回転変動を表
し、捩じり特性正側に微小捩じり角の回転方向隙間が形
成されていない構造は、第1実施例を一点鎖線で、第2
実施例を実線で表している。第1実施例の一点鎖線の構
造は、ヒステリシストルクが比較的小さい構造であり、
第2実施例の実線の構造は、ヒステリシストルクが比較
的大きい構造である。いずれの実施例においても、エン
ジン回転変動に対してトランスミッション回転速度変動
やがいくぶん小さくなっている。
【0061】二点鎖線は、本願発明の構造に対応してお
り、捩じり特性負側に微小ねじり角の回転方向隙間が形
成されている構造を表している。この構造では、エンジ
ン回転変動に対してトランスミッション回転速度変動が
大幅に小さくなっている。すなわち、従来の構造に比べ
て伝達率が大幅に小さくなっており、その特徴は200
0〜4000回転領域で顕著である。
【0062】以上より、FF車においては、減速時には、
本願発明の構造が他の構造に比べてトランスミッション
の回転変動すなわち騒音レベルを大幅に低減できること
が分かる。 (3)実験結果のまとめ 以上の実験結果により、本願発明は、捩じり特性負側で
は従来と同様に微小ねじり角の回転方向隙間を残して減
速時の騒音レベルを低く抑えつつ、捩じり特性正側で従
来と異なり微小ねじり角の回転方向隙間をなくして加速
時の共振ピークを低減又は消滅させている。この結果、
加速・減速の両方で音・振動性能が向上し、全体として
優れた振動減衰性能を有している。
【0063】
【発明の効果】本発明に係るダンパー機構では、捩じり
特性の正負の一方にのみ摩擦機構を作動させないための
回転方向隙間を確保している。したがって、車両の特性
に応じて、摩擦機構を作動させないための回転方向隙間
を捩じり特性の正側又は負側のいずれか一方に設けるこ
とで、加速・減速の両方で音・振動性能を向上させるこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クラッチディスク組立体の縦断面概略図。
【図2】クラッチディスク組立体の平面図。
【図3】図1の部分拡大図。
【図4】図1の部分拡大図。
【図5】各部分の捩り角度を説明するための平面図。
【図6】各部分の捩り角度を説明するための平面図。
【図7】各部分の捩り角度を説明するための平面図。
【図8】各部分の捩り角度を説明するための平面図。
【図9】各部分の捩り角度を説明するための平面図。
【図10】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図11】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図12】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図13】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図14】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図15】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図16】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図17】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図18】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図19】クラッチディスク組立体のダンパー機構の機
械回路図。
【図20】ダンパー機構の捩じり特性線図。
【図21】図20の部分拡大図。
【図22】実験例における、4速全閉減速時におけるエ
ンジン回転速度(NE)に対するトランスミッションの回
転速度変動(ΔNM)の変化を示すグラフ。
【図23】4速全閉減速時におけるエンジン回転速度
(NE)に対するトランスミッションの回転速度変動(Δ
NM)の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1 クラッチディスク組立体 2 入力回転体 3 スプラインハブ 4 ダンパー部 5 摩擦連結機構 6 ハブフランジ 7 第1バネ 8 第2バネ(ばね部材) 9 第1ストッパー 10 第2ストッパー 11 中間プレート 12 第3ストッパー 13 大摩擦機構(摩擦機構) 14 第4ストッパー 21 クラッチプレート 22 リティーニングプレート 62 ピン 69 孔 θACn 負側2段目隙間角度(摩擦抑制機構)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】入力回転体と、 前記入力回転体と相対回転可能に配置された出力回転体
    と、 前記入力回転体と前記出力回転体とを回転方向に連結す
    るばね部材を有し、前記入力回転体が前記出力回転体に
    対して回転方向駆動側に捩じれた正側と前記入力回転体
    が前記出力回転体に対して回転方向駆動側と反対側に捩
    じれた負側とを含む捩じり特性を有するダンパー部と、 前記入力回転体と前記出力回転体が相対回転し前記ばね
    部材の弾性力が作用すると摩擦を発生可能な摩擦機構
    と、 前記ばね部材の弾性力を所定角度範囲内では前記摩擦機
    構に作用させないための回転方向隙間を、前記捩じり特
    性の正側と負側の一方でのみ確保している、摩擦抑制機
    構と、を備えたダンパー機構。
  2. 【請求項2】前記摩擦抑制機構は、前記捩じり特性の負
    側でのみ、前記回転方向隙間を確保している、請求項1
    に記載のダンパー機構。
  3. 【請求項3】入力回転体と、 前記入力回転体と相対回転可能に配置された出力回転体
    と、 前記入力回転体と前記出力回転体とを回転方向に連結す
    るためのばね部材を有し、捩じり特性において1段目と
    前記ばね部材が圧縮され前記1段目より剛性の高い2段
    目とを有し、前記2段目は前記入力回転体が前記出力回
    転体に対して回転方向駆動側に捩じれた正側と前記入力
    回転体が前記出力回転体に対して回転方向駆動側と反対
    側に捩じれた負側とにそれぞれ存在する、ダンパー機構
    と、 前記2段目において前記入力回転体と前記出力回転体が
    相対回転し前記ばね部材の弾性力が作用すると摩擦を発
    生可能な摩擦機構と、 前記ばね部材の弾性力を所定角度範囲内では前記摩擦機
    構に作用させないための回転方向隙間を、前記捩じり特
    性の正側2段目と負側2段目の一方でのみ確保してい
    る、摩擦抑制機構と、を備えたダンパー機構。
  4. 【請求項4】前記摩擦抑制機構は、前記捩じり特性の負
    側2段目でのみ、前記回転方向隙間を確保している、請
    求項3に記載のダンパー機構。
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