JP2019137954A - 工業用二層織物 - Google Patents
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Abstract
Description
近年では抄紙マシンの高速化に伴い、織物の脱水性と保水性の相関関係の重要性が高まり、加えて原料の抜けや高い歩留りも要求されている。そのため従来の抄紙用織物には存在しない、上下層の目開きと内部空間を持たせる必要がある。脱水性と保水性を調節するために、経糸接結を使用した織物としては、特許文献1に開示されている技術が知られていた。かかる技術は、経糸の一部を上面側層と下面側層を織り合せる接結糸として機能する地糸とした二層織物であり、組になった縦糸接結糸が上面側経糸組織と下面側経糸組織を補完し合い、各々の表面組織を形成するため、表面平滑性や接結強度にも優れた織物となっていた。
又かかる織物は、上面側層から下面側層まで完全に貫通する脱水孔が全面に配置されるため、脱水性は良好であるが、強力なバキューム等によって、ワイヤー上のシート原料が織物に刺さり込んだり、繊維や填料等の抜けが発生し、脱水マークの発生が顕著になることが知られていた。
他方、縦糸オンスタックを構造を採用した場合、脱水スピードが速くなるのであるが、初期脱水を抑制するため横糸密度を高く設定すると、脱水性を抑制する結果となる。
更に、上面側の織物を構成する経糸を下面側の織物を構成する経糸より、糸径を細くして網厚を抑制することが検討できるが、このような場合、上下異線径の二層織物については、表面側の経糸の空間を裏面側に対して大きくなるため、脱水抑制と網厚抑制の両立が困難となっていた。
しかしながら、かかる技術は網の剛性を確保等するために、上側側経糸と下面側経糸が上下に配置された組織を複数箇所に設ける必要がある為、下網を構成する経糸に比較して上網を構成する経糸の構成比率が上がりすぎる。
すなわち、特許文献3に開示された技術は、上面側経糸に比較し、下面側経糸の経糸本数が少ない事に起因する織物の剛性不足と織物が伸びやすいという問題点を解決するものである。そして、上面側経糸2本一組の下側に下面側経糸が存在する箇所と、下面側経糸が存在しない箇所が存在するため、脱水経路にムラが生じ、それに起因する脱水マークの発生という問題点が危惧される。
本発明者は、従来技術における上記問題点を解決するため、上下の縦糸空間率をより近接させることによって、横糸線径による密度差を設定することも可能とし、組織的な特徴(横糸上下比率等)も付加し得る織物を開発すべく、鋭意検討を行った。
また本発明は、糸径の選択によって脱水特性を調節するということができる工業用二層織物を提供することを目的とする。
又、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和し、横糸密度を大きく向上させることが可能となる織物を提供することを目的とする。
また本発明は、織物内部を上下する接結糸の糸径を細くし、一般的な経糸接結によって形成された織物内部における脱水ムラの発生を最小限に抑えることができる優れた織物を提供することを目的とする。
また本発明は、網厚を厚くすることなく脱水速度の調節を可能とする織物を提供することを目的とする。
更に本発明は、ペアとなる2本の経糸のうち少なくとも一本を接結糸とすることによって、組織構造と接結組織構造の両方を備えることとなり、上面側織物を構成するもう一本の上面側経糸によって、接結部の織組織の崩れを最小限に抑えることができる織物を提供することを目的とする。
(1)上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる下面側織物とが経糸接結された工業用二層織物において、前記上面側経糸の少なくとも1本以上が経糸接結糸として機能しており、前記上面側織物において前記上面側経糸は2本一組となって畝織されており、前記上面側経糸と下面側経糸の比率が2:1であることを特徴とする工業用二層織物である。
本発明は上記の構成を採用することによって、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、好適な脱水特性等を得ることができる。特に本発明は、上下経糸比率が2:1であることから、上面側経糸2本一組の下側に下面側経糸が必ず存在することになるため、脱水経路のムラと、脱水マークの発生等を予防することができる。
(3)前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組は、一部の糸が並列して畝織されていることを特徴とする上記(1)に記載された工業用二層織物である。
(4)前記2本一組となっている上面側経糸のうち2本とも経糸接結糸である組は、並列することによって協働して畝織されていることを特徴とする上記(1)に記載された工業用二層織物である。
ここで並列することによって協働とは、隣接する経糸接結糸における表面側に現れるナックルの一部が並列して畝織されており、他のナックルは一本の経糸接結糸によって形成されている状態を示している。また、一本の経糸接結糸によって形成されるナックルは、並列して畝織されている部分で入れ替わる点に特徴を有する。
(5)前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組が、50%以上の糸が並列して畝織されていることを特徴とする上記(3)に記載された工業用二層織物である。
かかる発明における割合は、上面側織物の表面に現れるナックルの数によって求められる数値である。例えば、2本一組を構成する一本の上面側経糸が6つのナックルを有しており、他の上面側経糸が3つのナックルを有している場合は、50%の糸が並列して畝織されていることになる。
ここで縦密度とは、織物を構成する経糸の空間に対する占有率のことである。40%未満では、脱水や被抄物の脱落等の問題が生じる危険性がある。一方、上面側織物を構成する経糸における縦密度が60%を超えると、又は下面側織物を構成する経糸における縦密度が55%を超えると、脱水性の劣化、目詰まり等の問題が生じる危険性がある。本発明は上記構成を採用することによって、より優れた脱水特性を得ることができる。
また本発明は、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節するという効果を奏することができる。
又、2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることが可能となる。
また本発明は、下面側経糸に比較して上面側経糸の糸径を細くし、畝織を構成する片方の経糸で接結することによって、織物内部を上下する接結糸の糸径を細くできるため、一般的な経糸接結によって形成された織物内部における脱水ムラの発生を最小限に抑えることができるという優れた効果を奏する。又、上面側経糸の糸径を細くすることによって、網厚を維持したまま脱水速度の調節が可能となる。
更に本発明は、ペアとなる2本の経糸のうち少なくとも一本を接結糸とすることによって、組織構造と接結組織構造の両方を備えることとなり、上面側織物を構成するもう一本の上面側経糸によって、接結部の織組織の崩れを最小限に抑えることもできるという効果を奏する。
すなわち本発明は、縦糸を2本の畝織とすることによって、扁平糸の特徴と、表面組織構造及び接結構造の3つの機能を発揮する工業用二層織物を提供することができる。
本発明に係る工業用二層織物は、上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる下面側織物とが経糸接結された織物に関する。本発明に係る工業用二層織物は、前記上面側経糸の少なくとも1本以上が経糸接結糸として機能しており、前記上面側織物において前記上面側経糸は2本一組となって畝織されている。そして、前記上面側経糸と下面側経糸の比率が2:1であることを特徴とする。
又、本発明に係る工業用二層織物は、前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組が、50%以上の糸を並列して畝織しても良い。このように構成することによって、表面組織を扁平糸の如く形成することができるため、厚みを抑えた二層織物を得ることができる。又、厚みを増やすことなく、網目を小さく調整することができるため、従来にない脱水特性を付与することができる。又、2本の経糸に織り込まれる緯糸は、ナックルによる張力が緩和されるため、横糸密度を上げることが可能となる。
そして本発明は、2本の経糸で織組織を構成し、かつ接結する構造を有するため、接結糸は、一組の2本のうちの1本が組織構造と接結組織構造の両方を備えることになり、表面側を構成する他の1本の糸により、接結部の織組織に御崩れを最小に抑えることができる。
更に本発明に係る工業用二層織物は、前記上面側織物を構成する経糸における縦密度を40〜60%、かつ、前記下面側織物を構成する経糸における縦密度を40〜55%になるように構成しても良い。
又、本発明において、オンスタック構造を採用しても良い。オンスタック構造とすることによって、高い脱水性を得ることができ、一方、表面組織が畝織であるため、2本の糸で縦目を適度に塞ぎ、表裏の目開きに過剰な差を抑えることができるため、脱水スピードを制御することができる。
図1は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の意匠図である。本実施形態1に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。 又、前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組は、表面に並行して50%のナックルを形成している。
また本実施形態1に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。
更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
図3は本発明の工業用二層織物に係る実施形態2の意匠図である。本実施形態2に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
又、本実施形態2に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
図5は本発明の工業用二層織物に係る実施形態3の意匠図である。本実施形態3に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
又、本実施形態3に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
図7は本発明の工業用二層織物に係る実施形態4の意匠図である。本実施形態4に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は4:3である。 具体的には図8に示す如く、上面側経糸1Uと2Ub、3Uと4Ub,5Uと6Ub,7Uと8Ub,9Uと10Ub,11Uと12Ubは2本組となって上面側織物の組織を形成している。
又、本実施形態4に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
図9は本発明の工業用二層織物に係る実施形態5の意匠図である。本実施形態5に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
具体的には図10に示す如く、上面側経糸1Uと2Ub、3Uと4Ub,5Uと6Ub,7Uと8Ub,9Uと10Ub,11Uと12Ubは2本組となって上面側織物の組織を形成している。
又、本実施形態5に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
図11は、本発明の工業用二層織物に係る実施形態6の意匠図である。本実施形態6に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、そのうちの1本が経糸接結糸である。又、2本一組となっている上面側経糸の組は、一部の糸が並列して畝織されている。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
図11に示す如く、本実施形態6に係る工業用二層織物は、上面側経糸1Uと経糸接結糸2Ub、上面側経糸3Uと経糸接結糸4Ub、上面側経糸5Uと経糸接結糸6Ub、上面側経糸7Uと経糸接結糸8Ub、上面側経糸9Uと経糸接結糸10Ub、上面側経糸11Uと経糸接結糸12Ub、上面側経糸13Uと経糸接結糸14Ub、上面側経糸15Uと経糸接結糸16Ubとを一組ずつとして構成されている。
本実施形態6は、上面側織物の表面の一部に畝織を構成することによって、扁平糸を使用して表面組織を形成する織物と同様に、厚みを抑えつつ好適な剛性と伸び耐性を確保し、耐摩耗性、好適な脱水性及び表面平滑性に優れた織物を提供することができる。
又、本実施形態6に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
図12は本発明の工業用二層織物に係る実施形態7の意匠図である。本実施形態7に係る2本一組となっている上面側経糸の組は、2本とも経糸接結糸で形成されている。また経糸接結糸は、並列することによって協働して畝織されている点に特徴を有する。上面側緯糸と下面側緯糸の配置比率は3:2である。
具体的には図12に示す如く、上面側経糸1Ubと2Ub、3Uと4U,5Ubと6Ub,7Uと8U,9Ubと10Ub,11Uと12Uは2本組となって上面側織物の組織を形成している。上面側経糸1Ubは、上面側緯糸1’U,3’U,5’U,7’Uの上側を通り、下面側緯糸10’Lの下側を通り、上面側緯糸13’U,15’U,17’Uの上を通っている。それと組になる経糸接結糸2Ubは、上面側緯糸5’U,7’U,9’U,11’U,13’U,15’Uの上側を通り、下面側緯糸1’Lの下を通っている。隣接する経糸接結糸1Ub及び2Ubは、表面側に現れるナックルの一部(5’U,7’U及び13’U,15’U)において並列して畝織されている。また、経糸接結糸1Ub及び2Ubは、上記の並列して畝織されている部分で入れ替わっている。
又、上面側経糸3U、4Uの組は、全ての糸が並列して畝織されており、下面側経糸3Lは、下面側緯糸2’L及び11’Lの下側を通っている。
上面側経糸5Ubは、上面側緯糸7’U,9’U,11’U,13’U,15’U,17’U,1’Uの上側を通り、下面側緯糸4’Lの下側を通っている。それと組になる経糸接結糸6Ubは、上面側緯糸17’U,1’U,3’U,5’U,7’U,9’Uの上側を通り、下面側緯糸13’Lの下を通っている。隣接する経糸接結糸5Ub及び6Ubは、表面側に現れるナックルの一部(7’U,9’U及び17’U,1’U)において並列して畝織されている。また、経糸接結糸5Ub及び6Ubは、上記の並列して畝織されている部分で入れ替わっている。
上面側経糸9Ubは、上面側緯糸1’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U,13’Uの上側を通り、下面側緯糸16’Lの下側を通っている。それと組になる経糸接結糸10Ubは、上面側緯糸11’U,13’U,15’U,17’U,1’U,3’Uの上側を通り、下面側緯糸7’Lの下を通っている。隣接する経糸接結糸9Ub及び10Ubは、表面側に現れるナックルの一部(1’U,3’U及び11’U,13’U)において並列して畝織されている。また、経糸接結糸9Ub及び10Ubは、上記の並列して畝織されている部分で入れ替わっている。
又、上面側経糸11U、12Uの組は、全ての糸が並列して畝織されており、下面側経糸11Lは、下面側緯糸8’L及び17’Lの下側を通っている。
又、本実施形態7に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸径の選択によって脱水特性を調節することができる。更に2本の畝織部によって、横糸に生じるナックルの引き込み応力を緩和することができるため、横糸密度を大きく向上させることも可能となる。
1’〜18’ 緯糸
Claims (7)
- 上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる下面側織物とが経糸接結された工業用二層織物において、前記上面側経糸の少なくとも1本以上が経糸接結糸として機能しており、前記上面側織物において前記上面側経糸は2本一組となって畝織されており、前記上面側経糸と下面側経糸の比率が2:1であることを特徴とする工業用二層織物。
- 前記2本一組となっている上面側経糸のうち経糸接結糸を含まない組は、全ての糸が並列して畝織されていることを特徴とする請求項1に記載された工業用二層織物。
- 前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組は、一部の糸が並列して畝織されていることを特徴とする請求項1に記載された工業用二層織物。
- 前記2本一組となっている上面側経糸のうち2本とも経糸接結糸である組は、並列することによって協働して畝織されていることを特徴とする請求項1に記載された工業用二層織物。
- 前記2本一組となっている上面側経糸のうち1本が経糸接結糸である組が、50%以上の糸が並列して畝織されていることを特徴とする請求項3に記載された工業用二層織物。
- 前記上面側経糸の線径は全て同じであり、又、前記下面側経糸の線径は全て同じであり、更に、下面側経糸の線径が上面側経糸の線径の150〜300%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載された工業用二層織物。
- 前記上面側織物を構成する経糸における縦密度が40〜60%であり、かつ、前記下面側織物を構成する経糸における縦密度が40〜55%であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載された工業用二層織物。
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