JP7000272B2 - 工業用二層織物 - Google Patents
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Description
例えば、網厚を薄くすることにより、保水量の軽減化を図ることができる。そのため単に経糸の線径を小さくして網厚を薄くすることが行われているが、かかる場合、網目が粗くなり、網強度による剛性が低下し、過度に網目空間が発生するため、織物上に原料が留まらず抜け落ちてしまい、歩留りを低下させる原因となっていた。
また、原料が織物上に吐出された際の脱水(以下、「初期脱水」と記載する。)によって、織物上に繊維の層(以下、「初期マット」と記載する。)が形成される。
織物の脱水速度が速いと、織物の網目に繊維が詰まる等して強固な初期マットが形成されることとなる。強固な初期マットは、原料の脱水が完了する前に、織物の網目を詰まらせてしまう為、その後の脱水が不完全なものとなり、脱水不良を起こし、紙の地合いを悪化させる原因となる等し、脱水性能が不安定となっていた。
織物の脱水速度は、織物の表面や内部の空間等の影響によって速度の緩急が決まることとなる。
特に、上面側織物と下面側織物を接結糸で接結した三重織構造の工業用織物は、脱水速度が速いことから、初期脱水を抑制するために緯糸密度を高く設定することで脱水速度を抑えているが、強固な初期マットが形成された場合は、より著しい脱水性の低下が発生することとなる。
特許文献1には、経糸接結糸を用いた二層織物が示されている。このような従来技術は、経糸の一部を上面側層と下面側層を織り合わせる接結糸として機能させる二層織物であり、組になった経糸接結糸が上面側経糸組織と下面側経糸組織を補完し合い、各々の表面組織を形成するため、表面性、接結強度に優れた織物となる。しかし、組織の一部のナックルを崩して接結することが必要であり、かかる箇所を他の経糸にナックルを補完させることが必須となる。この際、隣接する経糸間に交差部が連続して出現することになるため、脱水抵抗が生じ、紙へのマークの発生原因となり易いことが知られていた。
更に、従来の工業用二層織物においては、脱水性を向上させるためにオンスタック構造を採用する場合があるが、かかる構造において、上下異線径にて経糸を形成すると、表面空間が過剰に大きくなり、上面側の経糸間の空間が開く一方下面側の経糸間の間は狭くなるため、脱水速度の制御が不十分であった。
また本発明は、高速抄紙機に対応する新規な工業用二層織物を提供する。すなわち、工業用二層織物の高速化には、脱水性と保水性との相関関係が重要な要因となり、更に原料の抜けを抑えて高い歩留まりも求められる。そのため本発明は、上面側と下面側の目開きと内部空間とを改良し、初期脱水を抑えつつ脱水量を上げる等によって、脱水性を向上させ、低保水性を実現する工業用二層織物を提供することを目的とする。
更に、上面側織物と下面側織物の経糸空間の比率を同程度とし、上面側緯糸と下面側緯糸の線径に差を持たせることによって空間密度の差を任意に設計できるため、上面側緯糸と下面側緯糸の比率を変えることで脱水性や保水性の調整が可能となる工業用二層織物を提供することを目的とする。
(1)上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる工業用二層織物において、当該工業用二層織物が完全組織中に少なくとも第一の組織と第二の組織を有し、当該第一の組織が上面側経糸2本組と下面側経糸1本によって形成され、前記第二の組織が上面側経糸1本と下面側経糸1本によって形成され、前記第一の組織と前記第二の組織は隣接して配置されており、前記第一の組織における上面側経糸は上面側織物と下面側織物とを接結する機能を有する経糸接結糸によって形成されており、前記第一の組織を形成する2本組の上面側経糸は隣接配置され上面側織物の表面で一部畝織を構成し、前記下面側経糸の線径が前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径よりも大きく、かつ前記第二の組織における上面側経糸が扁平経糸によって形成されていることを特徴とする工業用二層織物である。
また本発明における扁平糸とは、断面形状が円形ではなく、上下面が略平面である形状の糸のことをいう。本発明の扁平糸としては、断面形状は長方形のみならず楕円系のものも含まれるが、上下径より巾径の方が大きい糸を使用する。好ましいアスペクト比は、1.1~2.0である。このような扁平糸を使用することによって、工業用二層織物における網厚を抑制することができる。
更に、本発明は2本の経糸で織組織を構成し、かつ接結させる構造をとるため、接結糸は2本のうちの少なくとも1本が織組織構造と接結組織構造の両方を備えており、その部分で上面を構成する対になる他の1本により、接結箇所の織組織の崩れを最小限に抑える効果を奏することができる。
ここで下面側経糸の線径が上面側経糸の線径の130%未満である場合は、上面側経糸と下面側経糸の線径差が少なくなり、織物に伸びが生じる等し、剛性、脱水性に影響する危険が生じる。一方、下面側経糸の線径が上面側経糸の線径の300%を超えると、織物自体の空間が少なくなり、脱水速度の観点から問題が発生する危険が生じる。
(3)前記第二の組織において、扁平経糸のアスペクト比が1.1~2.0であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された工業用二層織物である。
扁平経糸のアスペクト比が1.1未満の場合は、十分に薄い網厚を得ることができない。一方、扁平経糸のアスペクト比が2.0を超えると、扁平糸自体が薄いものとなり、織物自体の空間が少なくなり、織物の強度が低下し、脱水性に影響する危険が生じる。
本発明に係る工業用二層織物を構成する糸としては、上面側緯糸と織り合わせる上面側経糸、上面側緯糸と下面側緯糸の両方と織り合わせる経糸接結糸が存在し、上面側経糸と経糸接結糸が上下に配置する経糸接結糸の組を構成している。ここで、上下に配置するとあるが、上面側経糸は上面側緯糸のみと織り合わされており、経糸接結糸は上面側緯糸と下面側緯糸の両方と織り合わされているため、完全に重なって配置されているわけではなく、実際にはずれて配置されている。また、経糸接結糸の組の他に、上面側緯糸と織り合わせる上面側経糸、下面側緯糸と織り合わせる下面側経糸からなる上下経糸の組を配置しても構わない。
また本発明に係る工業用二層織物の構成を採用することによって、高速抄紙機に対応する新規な工業用二層織物を提供することができる。本発明は、経畝織に扁平経糸を組み合わせることによって、扁平糸構造の織物を有する経糸接結構造による緩慢脱水及び低保水を実現することができるため、従来の織物に比較して脱水性を大幅に向上させ、低保水性を有するという優れた効果を奏する。
更に本発明に係る工業用二層織物の構成を採用することによって、上面側織物と下面側織物の経糸空間の比率を同程度とすることができるため、上面側緯糸と下面側緯糸の線径に差を持たせることによって空間密度の差を任意に設計でき、上面側緯糸と下面側緯糸の比率を変えることで脱水性や保水性の調整を可能とする効果を得ることができる。
本発明に係る工業用二層織物は、上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる工業用二層織物において、当該工業用二層織物が完全組織中に少なくとも第一の組織と第二の組織を有し、当該第一の組織が上面側経糸2本組と下面側経糸1本によって形成され、前記第二の組織が上面側経糸1本と下面側経糸1本によって形成され、前記第一の組織と前記第二の組織は隣接して配置されており、前記第一の組織における上面側経糸は上面側織物と下面側織物とを接結する機能を有する経糸接結糸によって形成されており、前記第一の組織を形成する2本組の上面側経糸は隣接配置され上面側織物の表面で一部畝織を構成し、前記下面側経糸の線径が前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径よりも大きく、かつ前記第二の組織における上面側経糸が扁平経糸によって形成されていることを特徴とする。
そのため、本発明に係る工業用二層織物は、従来の工業用二層織物に比較して、上面組織側におけるナックル形状を平たく形成することができるため、網厚を抑えた織物を得ることができる。又、2本の経糸や扁平経糸に織り込まれる緯糸は、ナックル形状が平たくなるため、表面平滑性や繊維支持性を向上させることができる。更に、厚みを増やすことなく、網目を小さく調整することができるため、従来にない脱水特性を付与することができる。
そして本発明は、2本の経糸で織組織を構成し、かつ接結する構造を有するため、接結糸は、一組の2本のうちの1本が組織構造と接結組織構造の両方を備えることになり、上面側を構成する他の1本の糸により、接結箇所の織組織の崩れを最小に抑えることができる。
又、本発明において、オンスタック構造を採用しても良い。オンスタック構造とすることによって、高い脱水性を得ることができ、一方、表面組織が畝織であるため、2本の糸で縦目を適度に塞ぎ、上面側と下面側の目開きに過剰な差を抑えることができるため、脱水速度を制御することができる。
図2は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の意匠図である。図3は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の一部側面配置図である。本実施形態1に係る第一の組織は、上面側経糸2本組と下面側経糸1本によって構成されている。第一の組織における上面側経糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する機能を有する経糸接結糸によって形成されている。又、第一の組織を形成する2本組の上面側経糸は隣接配置され上面側織物の表面で一部畝織を構成している。又、第二の組織は、上面側経糸1本と下面側経糸1本によって構成されている。第二の組織における上面側経糸は、扁平経糸によって形成されている。又、図2に示す如く、第一の組織1,3,5と第二の組織2,4,6は隣接し交互に配置されて構成されている。更に、前記下面側経糸の線径は、前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径よりも大きく形成されている。
また本実施形態1に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸の線径を選択することによって脱水性及び保水性を調節することができる。
更に2本の畝織組織によって、緯糸のナックル形状を平たくすることができるため、表面平滑性及び繊維支持性を向上させることができる。
図4は本発明の工業用二層織物に係る実施形態1の意匠図である。図5は本発明の工業用二層織物に係る実施形態2の一部側面配置図である。本実施形態2に係る第一の組織は、上面側経糸2本組と下面側経糸1本によって構成されている。第一の組織における上面側経糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する機能を有する経糸接結糸によって形成されている。又、第一の組織を形成する2本組の上面側経糸は隣接配置され上面側織物の表面で一部畝織を構成している。又、第二の組織は、上面側経糸1本と下面側経糸1本によって構成されている。第二の組織における上面側経糸は、扁平経糸によって形成されている。又、図4に示す如く、第一の組織1,3,5と第二の組織2,4,6は隣接し交互に配置されて構成されている。更に、前記下面側経糸の線径は、前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径よりも大きく形成されている。
次に第二の組織における扁平経糸である上面側経糸2は、上面側緯糸2’,4’,6’,8’,10’,12’,14’,16’,18’の上側を通り平織を形成している。第二の組織における下面側経糸2は、下面側緯糸2’,11’の下側を通っている。
また本実施形態2に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸の線径を選択することによって脱水特性を調節することができる。
更に2本の畝織組織によって、緯糸のナックル形状を平たくすることができるため、表面平滑性及び繊維支持性を向上させることができる。
図6は本発明の工業用二層織物に係る実施形態3の意匠図である。図7は本発明の工業用二層織物に係る実施形態3の一部側面配置図である。本実施形態3に係る第一の組織は、上面側経糸2本組と下面側経糸1本によって構成されている。第一の組織における上面側経糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する機能を有する経糸接結糸によって形成されている。又、第一の組織を形成する2本組の上面側経糸は隣接配置され上面側織物の表面で一部畝織を構成している。又、第二の組織は、上面側経糸1本と下面側経糸1本によって構成されている。第二の組織における上面側経糸は、扁平経糸によって形成されている。又、図6に示す如く、第一の組織1,3,5と第二の組織2,4,6は隣接して配置されて構成されている。更に、前記下面側経糸の線径は、前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径よりも大きく形成されている。
次に第二の組織における扁平経糸である上面側経糸2は、上面側緯糸2’,4’,6’,8’,10’,12’,14’,16’,18’の上側を通り平織を形成している。第二の組織における下面側経糸2は、下面側緯糸2’,11’の下側を通っている。
また本実施形態3に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸の線径を選択することによって脱水特性を調節することができる。
更に2本の畝織組織によって、緯糸のナックル形状を平たくすることができるため、表面平滑性及び繊維支持性を向上させることができる。
図8は本発明の工業用二層織物に係る実施形態4の意匠図である。図9は本発明の工業用二層織物に係る実施形態4の一部側面配置図である。本実施形態4に係る第一の組織は、上面側経糸2本組と下面側経糸1本によって構成されている。第一の組織における上面側経糸は、上面側織物と下面側織物とを接結する機能を有する経糸接結糸によって形成されている。又、第一の組織を形成する2本組の上面側経糸は隣接配置され上面側織物の表面で一部畝織を構成している。又、第二の組織は、上面側経糸1本と下面側経糸1本によって構成されている。第二の組織における上面側経糸は、扁平経糸によって形成されている。又、図8に示す如く、第一の組織1と第二の組織2,8は隣接して配置されて構成されており、第一の組織5と第二の組織4,6は隣接して配置されて構成されている。更に、前記下面側経糸の線径は、前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径よりも大きく形成されている。
次に第二の組織における扁平経糸である上面側経糸2は、上面側緯糸2’,4’,6’,8’,10’,12’,14’,16’,18’の上側を通り平織を形成している。第二の組織における下面側経糸2は、下面側緯糸2’,8’,14’の下側を通っている。
次に第二の組織における扁平経糸である上面側経糸3は、上面側緯糸1’,3’,5’,7’,9’,11’,13’,15’,17’の上側を通り平織を形成している。第二の組織における下面側経糸3は、下面側緯糸4’,10’,16’の下側を通っている。
次に第二の組織における扁平経糸である上面側経糸4は、上面側緯糸2’,4’,6’,8’,10’,12’,14’,16’,18’の上側を通り平織を形成している。第二の組織における下面側経糸4は、下面側緯糸5’,11’,17’の下側を通っている。
また本実施形態4に係る織物構造を採用することによって、織物の厚みを抑えつつ網目を小さくすることが可能であるため、糸の線径を選択することによって脱水特性を調節することができる。
更に2本の畝織組織によって、緯糸のナックル形状を平たくすることができるため、表面平滑性及び繊維支持性を向上させることができる。
1’~24’ 緯糸
Claims (4)
- 上面側経糸と上面側緯糸とからなる上面側織物と、下面側経糸と下面側緯糸とからなる工業用二層織物において、当該工業用二層織物が完全組織中に少なくとも第一の組織と第二の組織を有し、当該第一の組織が上面側経糸2本組と下面側経糸1本によって形成され、前記第二の組織が上面側経糸1本と下面側経糸1本によって形成され、前記第一の組織と前記第二の組織は隣接して配置されており、前記第一の組織における上面側経糸は上面側織物と下面側織物とを接結する機能を有する経糸接結糸によって形成されており、前記第一の組織を形成する2本組の上面側経糸は隣接配置され上面側織物の表面で一部畝織を構成し、前記下面側経糸の線径が前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径よりも大きく、かつ前記第二の組織における上面側経糸が扁平経糸によって形成されていることを特徴とする工業用二層織物。
- 前記第一の組織を形成する下面側経糸の線径が前記第一の組織を形成する上面側経糸の線径の130~300%であることを特徴とする請求項1に記載された工業用二層織物。
- 前記第二の組織において、扁平経糸のアスペクト比が1.1~2.0であることを特徴とする請求項1又は2に記載された工業用二層織物。
- 前記工業用二層織物が、前記第一の組織と前記第二の組織とが交互に配置されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載された工業用二層織物。
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