JP2019136741A - H形鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エッジング圧延後に実施される平造形圧延において、ウェブ高さ方向の伸びやフランジ相当部の変形といった問題を生じさせることなくフランジの生成効率を向上させ、大型の粗形材の平造形圧延を行い、大型H形鋼製品を効率的且つ安定的に製造する。【解決手段】粗圧延工程は、被圧延材を所定の略ドッグボーン形状に圧延造形するエッジング圧延工程と、エッジング圧延工程完了後の被圧延材を90°あるいは270°回転させてウェブ部の圧延を行う平圧延工程を有し、平圧延工程を行う孔型には、少なくとも、被圧延材のウェブ部中央に隆起部を形成させる窪み部が設けられた隆起部形成孔型と、隆起部が形成された被圧延材に対し、当該隆起部を圧下する隆起部消去孔型が刻設され、平圧延工程において形成される隆起部の幅は被圧延材のウェブ部内法の25%以上50%以下に設定され、隆起部消去孔型における隆起部に対する圧下率を2.1以下とする。【選択図】図11

Description

本発明は、例えば矩形断面であるスラブ等を素材としてH形鋼を製造する製造方法に関する。
H形鋼を製造する場合には、加熱炉から抽出されたスラブやブルーム等の素材を粗圧延機(BD)によって粗形材(所謂ドッグボーン形状の被圧延材)に造形し、中間ユニバーサル圧延機によって上記粗形材のウェブやフランジの厚さを圧下し、併せて前記中間ユニバーサル圧延機に近接したエッジャー圧延機によって被圧延材のフランジに対し幅圧下や端面の鍛錬と整形が施される。そして、仕上ユニバーサル圧延機によってH形鋼製品が造形される。
このようなH形鋼の製造方法において、矩形断面であるスラブ素材から所謂ドッグボーン形状の粗形材を造形する際には、粗圧延工程の第1の孔型においてスラブ端面に割り込みを入れた後、第2以降の孔型において当該割り込みを割広げる、又は、割り込み深さを深くさせ、それ以降の孔型にてスラブ端面の割り込みを消去する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、H形鋼の製造においては、スラブ等の素材の端面(スラブ端面)をエッジングするいわゆるエッジング圧延の後に、被圧延材を90°又は270°回転させ、ウェブ相当部の圧下を行う平造形圧延を行うことが知られている。この平造形圧延では、ウェブ相当部の圧下と共にフランジ相当部の圧下及び整形が行われるが、近年、大型のH形鋼製品が求められていることに鑑み、大型の素材を被圧延材とした場合に、一般的な平造形圧延では、ウェブ高さ方向の伸びやフランジ相当部の変形等、種々の問題が生じることがあり、形状の修正が求められる場合があった。具体的には、ウェブ相当部の圧下に伴い、ウェブ相当部が長手方向に延伸し、当該延伸に引っ張られてフランジ相当部も長手方向に延伸し、フランジ相当部の厚みが薄くなってしまうといった現象が懸念されていた。
このような平造形圧延に関し、例えば特許文献2には、ウェブ相当部への圧下を選択的に行う技術が開示されており、ウェブ相当部の中央に未圧下部を設け、その後形成された凸部(本発明の隆起部に相当)を消去し、ウェブ相当部の拡幅を行うことで、大型のH形鋼の製造を効率的に行うこととしている。また、例えば特許文献3には、ウェブ相当部の未圧下部(非圧下部分)の範囲を好適に規定する技術が開示され、被圧延材の全断面積に対する非圧下部分の断面積が0.6以上とする旨が記載されている。
特開平7−88501号公報 特開昭57−146405号公報 特開昭57−171501号公報
上述したように、近年、構造物等の大型化に伴い大型のH形鋼製品の製造が望まれている。特にH形鋼の強度・剛性に大きく寄与するフランジを従来に比べて広幅化した製品が望まれている。フランジが広幅化されたH形鋼製品を製造するためには、粗圧延工程における造形から従来に比べフランジ幅の大きな被圧延材を造形する必要がある。
しかしながら、例えば上記特許文献1に開示されている技術では、スラブ等の素材の端面(スラブ端面)に割り込みを入れ、当該端面をエッジングし、その幅拡がりを利用して粗圧延を行う方法において、フランジの広幅化に限界がある。即ち、従来の粗圧延方法においてフランジの広幅化を図るためにはウェッジ設計(割り込み角度の設計)、圧下調整、潤滑調整といった技術により幅拡がりの向上が図られるが、いずれの方法もフランジ幅に大幅に寄与するものではないため、エッジング量に対するフランジ幅の拡がり量の比率を示す幅拡がり率は、エッジングの初期段階の効率が最も高い条件でも0.8程度であり、同一孔型でエッジングを繰り返す条件では、フランジ幅の拡がり量が大きくなるにつれて低下し、最終的には0.5程度になることが知られている。また、スラブ等の素材自体を大型化し、エッジング量を大きくすることも考えられるが、粗圧延機の設備規模や圧下量等には装置限界があるため十分な製品フランジの広幅化が実現されないといった事情がある。
また、大型のH形鋼製品を製造する際に、粗圧延工程において大型の粗形材を圧延造形する場合がある。大型の粗形材を従来とは異なる方法で圧延造形し、粗形材の形状をよりH形鋼に近い形状に造形した場合には、上記特許文献2、3に記載された技術によって平造形圧延を行うと、ウェブ高さ方向の伸びやフランジ相当部の変形等の問題が生じることが分かってきている。
例えば、特許文献3では、ウェブ相当部に未圧下部(非圧下部分)を設けた際の孔型圧延そのものでの圧延効果にのみ着眼しており、当該孔型での変形において、フランジ減肉が生じない条件を開示している。しかしながら、実際の操業では、選択的に圧下した部分以外の未圧下部については、後段のプロセスにて消去(圧下)を行う必要があり、フランジ減肉は、その後段のプロセスを経た後の最終的な断面形状にて評価する必要があると考えられる。
本発明者らは、このような点に鑑み、後段のプロセスでの未圧下部の消去を含む総合的なプロセス全体において評価を行っている。具体的には、後述する本発明の実施の形態で説明するように、例えば300厚スラブを素材とした場合に被圧延材のウェブ部内法の25%以上50%以下の幅に未圧下部の幅を設定し、その後、所定の設計条件を満たすような拡幅孔型(未圧下部の消去孔型)を用いて未圧下部の消去を行うことでフランジの生成効率を高めることを見出し、本発明に至っている。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、エッジング圧延後に実施される平造形圧延において、ウェブ高さ方向の伸びやフランジ相当部の変形といった問題を生じさせることなくフランジの生成効率を向上させ、大型の粗形材の平造形圧延を行い、大型H形鋼製品を効率的且つ安定的に製造する技術を提供することにある。
また、H形鋼を製造する際の孔型を用いた粗圧延工程において、スラブ等の矩形断面素材の端面に鋭角の先端形状をした突起部で深く割り込みを入れ、それによって形成されたフランジ部を順次折り曲げることによって、被圧延材における形状不良の発生を抑制させ、従来に比べフランジ幅の大きなH形鋼製品を効率的且つ安定的に製造することが可能なH形鋼の製造技術を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するため、本発明によれば、粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程を備えたH形鋼の製造方法であって、前記粗圧延工程は、被圧延材を所定の略ドッグボーン形状に圧延造形するエッジング圧延工程と、エッジング圧延工程完了後の被圧延材を90°あるいは270°回転させてウェブ部の圧延を行う平圧延工程を有し、前記平圧延工程を行う孔型には、少なくとも、被圧延材のウェブ部中央に隆起部を形成させる窪み部が設けられた隆起部形成孔型と、前記隆起部が形成された被圧延材に対し、当該隆起部を圧下する隆起部消去孔型が刻設され、前記平圧延工程において形成される隆起部の幅は被圧延材のウェブ部内法の25%以上50%以下に設定され、前記隆起部消去孔型における前記隆起部に対する圧下率を2.1以下とすることを特徴とする、H形鋼の製造方法が提供される。
前記隆起部消去孔型の内法寸法は、前記隆起部形成孔型の内法寸法未満に設計され、且つ、前記隆起部消去孔型には、被圧延材の外法寸法を所定値以下に抑える孔型側壁が設けられても良い。
前記孔型側壁間の間隔は、前記隆起部消去孔型における被圧延材非定常部の幅拡がり量に基づき設計されても良い。
前記平圧延工程を行う孔型には、前記隆起部消去孔型で圧延造形された後の被圧延材に対し、ウェブ部を略平坦に圧延造形し、且つ、拡幅圧延を行う1又は複数の拡幅用孔型が更に含まれても良い。
前記拡幅用孔型で圧延造形された被圧延材のウェブ部厚みは、前記隆起部形成孔型で圧延造形された被圧延材のウェブ部厚みに比べ薄く設定され、前記隆起部消去孔型では、前記隆起部の圧下と併せて被圧延材のウェブ部の圧下が行われても良い。
前記粗圧延工程を行う圧延機には、被圧延材を圧延造形する6以上の複数の孔型が刻設され、当該複数の孔型では被圧延材の1又は複数パス造形が行われ、前記複数の孔型のうち、第1孔型及び第2孔型には、被圧延材の幅方向に対し鉛直に割り込みを入れて被圧延材端部に分割部位を形成させる突起部が形成され、前記複数の孔型のうち、後段に位置する前記平圧延工程を行う孔型を除く第3孔型以降の孔型には、前記割り込みに当接し、形成された分割部位を順次折り曲げる突起部が形成されても良い。
厚み290mm以上310mm以下の矩形断面スラブを素材として用い、ウェブ高さ1000mm以上、且つ、フランジ幅400mm以上のH形鋼製品を製造しても良い。
本発明によれば、エッジング圧延後に実施される平造形圧延において、ウェブ高さ方向の伸びやフランジ相当部の変形といった問題を生じさせることなくフランジの生成効率を向上させ、大型の粗形材の平造形圧延を行い、大型H形鋼製品を効率的且つ安定的に製造することが可能となる。
H形鋼の製造ラインについての概略説明図である。 第1孔型の概略説明図である。 第2孔型の概略説明図である。 第3孔型の概略説明図である。 第4孔型の概略説明図である。 第5孔型の概略説明図である。 第6孔型の概略説明図である。 逃がし率とH形粗形材造形後のフランジ幅増減率との関係を示すグラフである。 被圧延材の反りに関する説明図である。 反りとウェブ厚みとの関係を示したグラフである。 圧下部分の圧下後厚みと、隆起部の高さとの関係において、反りが発生して通材不良となる場合と、反りが発生せずに通材良好となる場合と、を比較検討した結果を示すグラフである。 第6孔型での圧延前と圧延後の被圧延材ウェブ高さの変化を示すグラフである。 第5孔型の内法と第6孔型の内法を等しくした場合と、第6孔型の内法を第5孔型の内法未満とした場合の、圧延造形後のフランジ部形状を示す解析図である。 従来孔型と本発明孔型との両方において圧延造形を行い、その後、拡幅圧延を行った場合のフランジ部形状を示す解析図である。 フランジ肉量の増量化に関する概略説明図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本実施の形態にかかる圧延設備1を含むH形鋼の製造ラインTについての説明図である。図1に示すように、製造ラインTには上流側から順に、加熱炉2、サイジングミル3、粗圧延機4、中間ユニバーサル圧延機5、仕上ユニバーサル圧延機8が配置されている。また、中間ユニバーサル圧延機5に近接してエッジャー圧延機9が設けられている。なお、以下では、説明のために製造ラインTにおける鋼材を、総称して「被圧延材A」と記載し、各図において適宜その形状を破線・斜線等を用いて図示する場合がある。
図1に示すように、製造ラインTでは、加熱炉2から抽出された例えばスラブ11である矩形断面素材(後の被圧延材A)がサイジングミル3ならびに粗圧延機4において粗圧延される。次いで、中間ユニバーサル圧延機5において中間圧延される。この中間圧延時には、必要に応じてエッジャー圧延機9によって被圧延材のフランジ先端部(フランジ対応部12)に対して圧下が施される。通常の場合、サイジングミル3及び粗圧延機4のロールには、エッジング孔型及びウェブ部分を減厚し、フランジ部分の形状を成形するいわゆる平造形孔型が刻設されており、これらを経由して複数パスのリバース圧延でH形粗形材13が造形され、該H形粗形材13を前記中間ユニバーサル圧延機5−エッジャー圧延機9の2つの圧延機からなる圧延機列を用いて、複数パスの圧下が加えられ、中間材14が造形される。そして中間材14は、仕上ユニバーサル圧延機8において製品形状に仕上圧延され、H形鋼製品16が製造される。
ここで、加熱炉2から抽出されるスラブ11のスラブ厚は、例えば、290mm以上310mm以下の範囲内である。これは、大型のH形鋼製品を製造する際に用いられるいわゆる300厚スラブと呼ばれるスラブ素材の寸法である。
次に、以下では図1に示したサイジングミル3及び粗圧延機4に刻設される孔型構成や孔型形状について図面を参照して説明する。図2〜図7は粗圧延工程を行うサイジングミル3及び粗圧延機4に刻設される孔型についての概略説明図である。ここで、説明する第1孔型〜第6孔型は、例えばサイジングミル3に全て刻設されても良く、サイジングミル3及び粗圧延機4に第1孔型〜第6孔型の6つの孔型が分けて刻設されても良い。即ち、第1孔型〜第6孔型はサイジングミル3及び粗圧延機4の両方に亘って刻設されても良く、どちらか一方の圧延機に刻設されても良い。通常のH形鋼の製造における粗圧延工程では、これら各孔型において1又は複数パスでの造形が行われる。
また、本実施の形態では刻設される孔型が6つの場合を例示して説明するが、その孔型数についても、必ずしも6孔型である必要はなく、6以上の複数の孔型数であっても良い。例えば、後述する第6孔型K6の後段に一般的な拡幅圧延孔型を設けるような構成としても良い。即ち、H形粗形材13を造形するために好適な孔型構成であれば良い。なお、図2〜図7では、各孔型における造形時の被圧延材Aの概略最終パス形状を破線にて図示している。
図2は第1孔型K1の概略説明図である。第1孔型K1は、一対の水平ロールである上孔型ロール20と下孔型ロール21に刻設され、これら上孔型ロール20と下孔型ロール21のロール隙において被圧延材Aが圧下・造形される。また、上孔型ロール20の周面(即ち、第1孔型K1の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部25が形成されている。更に、下孔型ロール21の周面(即ち、第1孔型K1の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部26が形成されている。これら突起部25、26はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部25と突起部26とでそれぞれ等しく構成されている。突起部25、26の高さ(突出長さ)をh1とし、先端部角度をθ1aとする。
この第1孔型K1においては、突起部25、26が被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に押し当てられ、割り込み28、29が形成される。ここで、突起部25、26の先端部角度(ウェッジ角度とも呼称される)θ1aは例えば25°以上40°以下であることが望ましい。
ここで、第1孔型K1の孔型幅は、被圧延材Aの厚み(即ち、スラブ厚)とほぼ等しいことが好ましい。具体的には、第1孔型K1に形成された突起部25、26の先端部における孔型の幅と、スラブ厚を同一にすることで、被圧延材Aの左右センタリング性が好適に確保される。また、このような孔型寸法の構成とすることで、図2に示すように、第1孔型K1での造形時において、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)においては、上記突起部25、26及び孔型側面(側壁)の一部が被圧延材Aと接していて、割り込み28、29により4つの要素(部位)に分割されたスラブ上下端部に対して、第1孔型K1の上面及び底面にて積極的な圧下が行われない方が好ましい。孔型の上面及び底面による圧下は、被圧延材Aの長手方向への伸びを生じさせてしまい、フランジ(後述するフランジ部80)の生成効率を低下させてしまうからである。即ち、第1孔型K1においては、突起部25、26が被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に押し当てられ、割り込み28、29が形成される際の突起部25、26における圧下量(ウェッジ先端圧下量)は、スラブ上下端部における圧下量(スラブ端面圧下量)よりも十分に大きなものとされ、これにより割り込み28、29が形成される。
図3は第2孔型K2の概略説明図である。第2孔型K2は、一対の水平ロールである上孔型ロール30と下孔型ロール31に刻設される。上孔型ロール30の周面(即ち、第2孔型K2の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部35が形成されている。更に、下孔型ロール31の周面(即ち、第2孔型K2の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部36が形成されている。これら突起部35、36はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部35と突起部36とでそれぞれ等しく構成されている。これら突起部35、36の先端部角度は25°以上40°以下のウェッジ角度θ1bであることが望ましい。
なお、上記第1孔型K1のウェッジ角度θ1aは、フランジ相当部の先端部厚みを確保し、誘導性を高め、圧延の安定性を担保するために、後段の第2孔型K2のウェッジ角度θ1bと同じ角度であることが好ましい。
突起部35、36の高さ(突出長さ)h2は、上記第1孔型K1の突起部25、26の高さh1より高く構成されており、h2>h1となっている。また、突起部35、36の先端部角度は上記第1孔型K1の突起部25、26の先端部角度と同じであることが圧延寸法精度上、好ましい。これら上孔型ロール30と下孔型ロール31のロール隙において、上記第1孔型K1通材後の被圧延材Aが更に造形される。
ここで、第1孔型K1に形成される突起部25、26の高さh1より、第2孔型K2に形成される突起部35、36の高さh2の方が高く、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)への侵入長さも同様に第2孔型K2の方が長くなる。第2孔型K2での突起部35、36の被圧延材Aへの侵入深さは、突起部35、36の高さh2と同じである。即ち、第1孔型K1での突起部25、26の被圧延材Aへの侵入深さh1’と、第2孔型K2での突起部35、36の被圧延材Aへの侵入深さh2はh1’<h2との関係になっている。
また、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に対向する孔型上面30a、30b及び孔型底面31a、31bと、突起部35、36の傾斜面とのなす角度θfは、図3に示す4箇所ともに約90°(略直角)に構成されている。
図3に示すように、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)へ押し当てられた時の突起部の侵入長さが長いことから、第2孔型K2においては、第1孔型K1において形成された割り込み28、29が更に深くなるように造形が行われ、割り込み38、39が形成される。なお、ここで形成される割り込み38、39の寸法に基づき粗圧延工程でのフランジ造形工程終了時のフランジ片幅が決定される。
図4は第3孔型K3の概略説明図である。第3孔型K3は、一対の水平ロールである上孔型ロール40と下孔型ロール41に刻設される。上孔型ロール40の周面(即ち、第3孔型K3の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部45が形成されている。更に、下孔型ロール41の周面(即ち、第3孔型K3の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部46が形成されている。これら突起部45、46はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部45と突起部46とでそれぞれ等しく構成されている。
上記突起部45、46の先端部角度θ2は、上記角度θ1bに比べ広角に構成され、突起部45、46の被圧延材Aへの侵入深さh3は、上記突起部35、36の侵入深さh2よりも短くなっている(即ち、h3<h2)。この角度θ2は例えば70°以上110°以下が好ましい。
また、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に対向する孔型上面40a、40b及び孔型底面41a、41bと、突起部45、46の傾斜面とのなす角度θfは、図4に示す4箇所ともに約90°(略直角)に構成されている。
図4に示すように、第3孔型K3では、第2孔型K2通材後の被圧延材Aに対し、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)において第2孔型K2において形成された割り込み38、39が、突起部45、46が押し当てられることにより、割り込み48、49となる。即ち、第3孔型K3での造形における最終パスでは、割り込み48、49の最深部角度(以下、割り込み角度とも呼称する)がθ2となる。換言すると、第2孔型K2において割り込み38、39の形成と共に造形された分割部位(後述するフランジ部80に対応する部位)が外側に折り曲げられるような造形が行われる。
図5は第4孔型K4の概略説明図である。第4孔型K4は、一対の水平ロールである上孔型ロール50と下孔型ロール51に刻設される。上孔型ロール50の周面(即ち、第4孔型K4の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部55が形成されている。更に、下孔型ロール51の周面(即ち、第4孔型K4の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部56が形成されている。これら突起部55、56はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部55と突起部56とでそれぞれ等しく構成されている。
上記突起部55、56の先端部角度θ3は、上記角度θ2に比べ広角に構成され、突起部55、56の被圧延材Aへの侵入深さh4は、上記突起部45、46の侵入深さh3よりも短くなっている(即ち、h4<h3)。この角度θ3は例えば130°以上170°以下が好ましい。
また、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に対向する孔型上面50a、50b及び孔型底面51a、51bと、突起部55、56の傾斜面とのなす角度θfは、上記第3孔型K3と同様に、図5に示す4箇所ともに約90°(略直角)に構成されている。
第4孔型K4では、第3孔型K3通材後の被圧延材Aに対し、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)において第3孔型K3において形成された割り込み48、49が、突起部55、56が押し当てられることにより押し広げられ、割り込み58、59となる。即ち、第4孔型K4での造形における最終パスでは、割り込み58、59の最深部角度(以下、割り込み角度とも呼称する)がθ3となる。換言すると、第3孔型K3において割り込み48、49の形成と共に造形された分割部位(後述するフランジ部80に対応する部位)が更に外側に折り曲げられるような造形が行われる。このようにして造形された被圧延材Aの上下端部の部位は、後のH形鋼製品のフランジに相当する部位であり、ここではフランジ部80と呼称する。
以上の第1孔型K1〜第4孔型K4を用いた圧延造形は、被圧延材Aを所定の略ドッグボーン形状となるように造形するエッジング圧延工程とも呼称され、矩形断面の素材スラブを立てた状態で実施される。
図6は第5孔型K5の概略説明図である。第5孔型K5は、一対の水平ロールである上孔型ロール85と下孔型ロール86から構成される。図6に示すように、第5孔型K5では、第4孔型K4までに造形された被圧延材Aが90°あるいは270°回転させられ、第4孔型K4までは被圧延材Aの上下端に位置していたフランジ部80が、圧延ピッチライン上に来るような配置となる。そして、第5孔型K5では、2か所のフランジ部80を繋ぐ接続部であるウェブ部82の圧下が行われる。
ここで、第5孔型K5の上下孔型ロール85、86は、そのロール胴長中央部において所定長さL1の窪み部85a、86aが形成された形状となっている。このような図6に示す孔型構成により、ウェブ部82の圧下は部分的に行われることになり、圧下後のウェブ部82には、ウェブ高さ方向両端の圧下部分82aと、その中央部に未圧下部分としての隆起部82bが形成されることになる。このようにして、いわゆるドッグボーン形状の被圧延材においてウェブ部82に隆起部82bを形成する圧延造形が行われる。
なお、この第5孔型K5では、ウェブ部82を部分的に圧下し、隆起部82bを形成されるような圧延造形が実施されることから、当該孔型は「ウェブ部分圧延孔型」あるいは「隆起部形成孔型」とも呼称される。また、形成後の隆起部82bの幅長さと同じ長さは上記窪み部85a、86aの幅長さL1と同じ長さ(後述する逃がし量L1)となる。ここで、図6の拡大図に示すように、本明細書における窪み部85a、86aの幅長さL1は、当該窪み部85a、86aの深さhmの1/2の深さでの幅長さとして規定する。
なお、第5孔型K5における圧延造形に関し、その圧延造形条件、即ち、逃がし量L1の具体的な範囲や、窪み部85a、86aの深さhmに関する好適な数値範囲、第5孔型K5において圧下部分82aをどの程度の厚みまで圧下することが好適であるか、といった種々の条件については、本発明者らが得られた知見等に基づき、本実施の形態での説明においてより詳しく後述する。
図7は第6孔型K6の概略説明図である。第6孔型K6は、一対の水平ロールである上孔型ロール95と下孔型ロール96から構成される。第6孔型K6では、第5孔型K5において圧延造形された被圧延材Aに対し、ウェブ部82に形成された隆起部82bを消去するように圧下が行われ、また、圧下部分82aに対する更なる圧下も行われ、且つ、ウェブ部82の内法を拡幅するような圧延造形が複数パス圧延により行われる。
この第6孔型K6においては、ウェブ部82に形成された隆起部82bに上下孔型ロール95、96を当接させて当該隆起部82bを圧下(消去)する圧延が行われる。また、併せて圧下部分82aに対する更なる圧下も行われる。この第6孔型K6による圧延造形により、隆起部82bの圧下に伴うウェブ高さ方向への拡がり及びフランジ部80へのメタルフローを促進させ、フランジ減面をなるべく生じさせずに圧延造形を実施することが可能となる。また、フランジ減面をなるべく生じさせないといった観点から、この第6孔型K6の孔型構成は、圧延ピッチライン上に位置するフランジ部80の外側面を拘束するような形状であることが好ましい。即ち、上下孔型ロール95、96には、フランジ部80の外側面に当接するような側壁が設けられていることが好ましい。
この第6孔型K6は、ウェブ部82に形成された隆起部82bを消去することから、「隆起部消去孔型」とも呼称される。
また、上述してきた第1孔型K1〜第6孔型K6を経た被圧延材Aに対しては、必要に応じて更なるウェブ部82の厚み圧下や拡幅圧延を行っても良い。この場合には、第6孔型K6での圧延造形の後段において、1又は複数の拡幅用孔型を用いた拡幅圧延を行えば良い。なお、その場合の厚み圧下や拡幅圧延のための孔型は、従来より既知の孔型であるため、本明細書での拡幅圧延用の孔型の説明は省略する。
以上の第5孔型K5、第6孔型K6(及び必要に応じた拡幅用孔型)を用いた圧延造形は、エッジング圧延工程で造形された被圧延材Aを90°あるいは270°回転させた略H形姿勢で実施されることから、平圧延造形あるいは平圧延工程とも呼称される。
上述してきた第1孔型K1〜第6孔型K6や必要に応じた拡幅圧延用孔型を用いて、図1に示すH形粗形材13が造形される。このように造形されたH形粗形材13に対し、既知の圧延機である中間ユニバーサル圧延機5−エッジャー圧延機9の2つの圧延機からなる圧延機列を用いて、複数パスのリバース圧延が加えられ、中間材14が造形される。そして中間材14は、仕上ユニバーサル圧延機8において製品形状に仕上圧延され、H形鋼製品16が製造される(図1参照)。
上述したように、本実施の形態にかかるH形鋼の製造方法では、第1孔型K1〜第4孔型K4を用いて被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に割り込みを入れ、それら割り込みによって左右に分かれた各部分を左右に折り曲げる加工を行い、フランジ部80を形成するといった造形をすることで、被圧延材A(スラブ)の上下端面をほぼ上下方向に圧下することなくH形粗形材13の造形を行うことができる。即ち、従来行われていたスラブ端面を常に圧下する粗圧延方法に比べ、フランジ幅を広幅化させてH形粗形材13を造形することが可能となり、その結果、フランジ幅の大きな最終製品(H形鋼)を製造することができる。
ここで本発明者らは、本実施の形態に係る第5孔型K5及び第6孔型K6による圧延造形に関し、更なる検討を行ったところ、第5孔型K5での圧延造形によって形成された隆起部82bを消去する第6孔型K6による圧延造形時には、通材不良が発生する場合があり、その通材不良により被圧延材Aの形状が崩れてしまう場合があることが知見された。また、隆起部82bを消去する場合には部分的な圧延となることから、第6孔型K6による圧延造形時には被圧延材Aの非定常部において長手方向への延伸が生じやすく、クロップの成長に繋がり、フランジ断面積の減少が懸念されて長手方向での寸法変動が生じることも知見された。
上記のような知見に鑑み、本発明者らは、第6孔型K6による隆起部82bを消去する圧延造形において、通材不良が発生せず、また、被圧延材Aの長手方向における寸法変動を抑制させ、定常部のみならず非定常部においてもフランジ断面積の減少を抑制させてフランジ幅及びフランジ厚みの大きなH形粗形材を安定的に圧延造形することが可能となるような条件についてより詳細な検討を行った。以下、本検討について図面やグラフ等を参照して説明する。
(ウェブ内法における逃がし量(隆起部形成幅)の比率)
上述した通り、本実施の形態に係る第5孔型K5(図6参照)では、被圧延材Aのウェブ部82の中央に隆起部82bが形成され、形成された隆起部82bは、後段の第6孔型K6において消去される。そして、隆起部消去後に必要に応じてウェブ内法の拡幅圧延が行われ、H形粗形材が造形されるが、従来に比べフランジ幅の大きな大型H形鋼製品を製造するためには、H形粗形材のフランジ幅もできるだけ大きくすることが望まれる。
本発明者らは、第5孔型K5において形成する隆起部82bの幅長さL1(即ち、第5孔型K5での圧延造形におけるウェブ内法の逃がし量)を変えることで、最終的に得られるH形粗形材のフランジ幅に違いが出ることを見出した。これは、隆起部82bの幅長さを大きくする程フランジ肉量が確保しやすい反面、後の隆起部消去時(第6孔型K6での圧延造形)において被圧延材Aの長手方向延伸作用によってフランジ幅が減少することに起因する。
そこで、本発明者らは、第5孔型K5での圧延造形におけるウェブ内法の逃がし量(以下、単に「逃がし量L1」とも記載)の好適な範囲を定めるべく、逃がし率とH形粗形材造形後のフランジ幅の増減との関係に着目し、逃がし率の好適な数値範囲を導き出した。なお、逃がし率とは以下の式(1)で定義される値である。
逃がし率[%]=(逃がし量L1/ウェブ内法L2)×100 ・・・(1)
図8は、逃がし率とH形粗形材造形後のフランジ幅増減率との関係を示すグラフである。なお、図8におけるフランジ幅増減率とは、逃がし率が0%である場合のフランジ幅を基準(1.000)として、逃がし率が各値(12%〜56%)である場合のフランジ幅を示した値である。
図8に示すように、逃がし率が大きくなるとH形粗形材のフランジ幅を増大する傾向にあるが、逃がし率が約25%以上となった領域ではフランジ幅増減はほぼ一定値(グラフ中の破線部参照)となっている。
図8に示す結果から、従来に比べフランジ幅の大きな大型H形鋼製品を製造する場合には、H形粗形材のフランジ幅も大きくなるような圧延造形が所望されることに鑑み、逃がし率の数値範囲は25%〜50%とすることが望ましいことが分かる。
(隆起部消去時の通材性)
上述したように、隆起部82bを形成する際の逃がし率の数値範囲は25%〜50%とすることが望ましいことが図8の結果から分かっているが、一方で、このような数値範囲の逃がし率で隆起部82bを形成する際のウェブの圧下部分82aの厚みの値については更なる検討を行う必要がある。これは、隆起部82bを形成した後に、当該隆起部82bを消去するための圧延造形を第6孔型K6で実施する際に、圧下部分82aが薄すぎ、隆起部82bのメタル移動が断面内で行われず、被圧延材Aの長手方向へのメタル移動が生じてしまった結果であると推定される。
そこで本発明者らは、素材として2000×300mmの矩形断面スラブを用いて、製品フランジ幅400mm以上のH形鋼を製造する場合に、本実施の形態に係る第1孔型K1〜第6孔型K6により圧延造形を行うに際し、第5孔型K5での圧延造形時のウェブ圧下量を変えた条件で造形性(圧延安定性)の評価を行った。具体的な条件としては、圧下部分82aの圧下後厚みを200mm、160mm、140mm、120mm、100mmとした場合をそれぞれ水準1〜5とした。なお、比較水準として隆起部82bを形成せずにウェブ厚み圧下を実施する場合を水準6とした。
以下に示す表1は、上記水準1〜水準6のパススケジュールを示すものであり、表中の各孔型G1、G2−2、G3−1、G3−2、G4−1、G4−2は、本実施の形態で説明した第1孔型K1〜第6孔型K6に相当する。また、造形性の評価については、表1の最下段に記載し、通材不良・形状不良が発生した場合を「不良」、通材不良・形状不良が発生しなかった場合を「良好」としている。
表1に示すように、圧下部分82aの圧下後厚みを200mm、160mm、140mmとした場合(水準1〜3)には、隆起部82bの消去時において通材不良・形状不良は発生していない。一方で、圧下部分82aの圧下後厚みを120mm、100mmとした場合(水準4、5)には、隆起部82bの消去時において通材不良・形状不良が発生している。また、隆起部82bを形成させずにウェブ厚み圧下を100mmまで実施した場合(水準6)も、同様の通材不良・形状不良が発生している。
ここで、造形性(圧延安定性)の評価基準について説明する。造形性の評価は、隆起部82bを消去する圧延造形を実施した際に、被圧延材Aの長手方向に生じる反りに基づき行われる。
図9は、被圧延材Aの反りに関する説明図であり、被圧延材Aの長手方向端部において反りが生じた際の概略側面図である。図9に示すように、被圧延材Aの長手方向端部において反りが生じた際の端部と定常部との差異が「反り量」として規定される。そして、被圧延材Aにおいて反りが発生した長手方向長さに対し発生した反り量の比率が以下の式(2)で定義される「反り(%)」とされる。
反り[%]=反り量/反りの発生した被圧延材長さ ・・・(2)
上述した式(2)で定義される「反り(%)」と、圧下部分82aの圧下後厚みとの関係について検証した。図10は、反りとウェブ厚み(圧下部分82aの圧下後厚み)との関係を示したグラフである。なお、図10に示すグラフは、逃がし率を約33%とした条件でのデータである。
図10に示すように、圧下部分82aの圧下後厚みが薄くなる程、反りが大きくなる傾向が有る。特に、圧下部分82aの圧下後厚みが140mm以下である場合には反りが約3%以下と小さく、圧下部分82aの圧下後厚みが140mm超となると反りが約10%以上と大きくなり形状の悪化が著しいことが分かっている。
操業上、被圧延材Aで生じた反りが10%以上となると、次パス以降での寸法形状悪化が著しく圧延続行が困難である。即ち、図10に示す結果から、ウェブ厚み(圧下部分82aの圧下後厚み)を140mm以上となるように第5孔型K5での圧延造形を行うことで、良好な造形性が担保されることが分かる。これは、表1に示す水準1〜3の条件で造形性が良好であることと一致する。
ここで、反りに係る閾値を10%としているのは、被圧延材の端部数mに対し、10%の割合で数百mm程度の最大反り量が発生した場合に、上下肉量差異が発生することが当業者には容易に確認されることであり、操業上、圧延続行が困難となることが明らかな値が10%であるからである。
なお、同条件下において反りが数%(10%未満)である場合には、数十mm程度の反りが通常操業にて観察されるが、操業上問題無い程度であることは当業者であれば容易に推察することが可能である。
図10から分かる通り、第6孔型K6での圧延造形において、圧下部分82aに反りが発生しないような最小の圧下後厚みは140mmであるため、この時の隆起部82bの延伸λは2.14(=300/140)である。
なお、第5孔型K5においてウェブ厚み(圧下部分82aの圧下後厚み)を所定の値(例えば140mm)以上となるようにした場合、後段の第6孔型K6においてウェブ厚みが更に薄くなるようなウェブの減厚圧下を行っても良い。
また、図11は、第5孔型K5における圧下部分82aの圧下後厚み(圧下後の仕上りウェブ厚)と、隆起部82bの圧下を行う前の高さとの関係を示すグラフである。図8を参照して上述した「逃がし率」を好適な条件に設定(例えば25%〜50%)した場合、隆起部82bの長手方向への延伸作用は小さく、孔型によって隆起部高さに制約を加えない限り、隆起部高さは素材のスラブ厚のままである。
例えば、スラブ厚が300mm、隆起部82bの高さを十分な高さに孔型を取った場合、隆起部高さは300mmのままである。その状態から、隆起部消去孔型(図7の第6孔型K6)において隆起部82bの消去をしたところ、第5孔型K5での圧下後仕上りウェブ厚が140mmのケースでは通材性に問題はなかったが、130mmのケースでは通材不良が発生した。これらのケースでは隆起部82bの厚みはいずれも300mmとなっており、隆起部82bの延伸は140mmの場合、300mmから140mmまで圧下されるので2.14であり、130mmの場合、300mmから130mmまで圧下されるので2.31である。同様に種々のケースについてプロットすると、図11に示すように、通材不良の閾値を示す限界延伸はいずれも2.1程度となっている。
即ち、図11に示すように、第6孔型K6での隆起部消去の際の圧下率(延伸)が2.1超となる場合、通材不良(図11中の×)が生じることが実験的に明らかとなっている。第6孔型K6での隆起部消去の際の圧下率が2.1以下となるような条件で孔型設計を行うことで、通材不良を生じさせることなく、第5孔型K5及び第6孔型K6による圧延造形を実施することが可能であることが分かる。なお、第6孔型K6での隆起部消去圧延を行った後、更にウェブの厚み圧下が必要な場合には、第6孔型K6での圧延造形の後段において、1又は複数の拡幅用孔型を用いた拡幅圧延を行えば良い。
(隆起部消去時の長手方向寸法変動への対策)
また、本発明者らは、上述した第5孔型K5及び第6孔型K6を用いた圧延造形技術では、被圧延材Aの定常部と非定常部とで長手方向への拘束力が異なっていることから、断面内のメタルフローが定常部と非定常部で変化し、長手方向で圧延造形後のウェブ高さが大きく変化することを見出した。即ち、第6孔型K6における圧延造形では、被圧延材Aの非定常部では端部の拘束がないために、隆起部82bの圧下が長手方向へのメタルフローを生じさせやすく、ウェブ内法(ウェブ高さ)が定常部とは異なってしまう。このような被圧延材Aの非定常部と定常部の断面形状の差異(長手方向での寸法変動)は、次工程以降の孔型との孔型形状マッチングが不十分となることから好ましくない。図12は、上述した第5孔型K5及び第6孔型K6を用いた圧延造形技術の一例として、2000×300mmの矩形断面スラブ素材を用いて、以下の表2に示すロール諸元でもって製品フランジ幅400mm以上のH形鋼を製造する場合において、第6孔型K6での圧延前と圧延後の被圧延材ウェブ高さの変化を示すグラフである。
なお、表中の各孔型G1、G2−2、G3−1、G3−2、G4−1、G4−2は、本実施の形態で説明した第1孔型K1〜第6孔型K6に相当する。
図12に示すように、被圧延材Aの長手方向において、圧延後のウェブ高さは定常部と非定常部(トップ端及びボトム端)で大きく異なっている。即ち、外法寸法の違いは内法寸法の違いに繋がり、後段の拡幅圧延の安定性等に悪影響を及ぼす恐れがある。また、寸法精度の悪化によりクロップの増大が懸念され生産性が低下する恐れがある。
このような知見に基づき、本発明者らは第6孔型K6の孔型設計において、圧延造形時にフランジ部80の外側面同士の間隔(外法寸法)を所定の値以下の一定寸法に抑えるための孔型側壁100(100a、100b)を設けることとしている(図7参照)。ここで、左右の孔型側壁100a、100b間の間隔は、当該孔型側壁を設けない場合の圧延後のウェブ高さ(幅拡がり量)の最小値よりも小さい間隔に設計することが好ましい。これにより、ウェブ外法の大きい定常部の断面に対して孔型を積極的に接触させることで被圧延材の長手方向の寸法変動を抑えることができる。具体的には、第6孔型K6における左右の側壁100a、100b間の距離L3(図7参照)を、被圧延材Aの非定常部のウェブ外法以下に設定することで、被圧延材Aの外法が全長に亘って孔型に接触することになる。これにより、第6孔型K6での圧延造形後のウェブ高さを、長手方向において所定の一定の値に揃えることが可能となり、寸法精度の向上やクロップ抑制を図ることができる。なお、左右の側壁100a、100b間の距離L3は、被圧延材Aの外法の最大箇所に対向する左右の孔型側壁部間の距離で規定される。
(隆起部形成孔型の内法と隆起部消去孔型の内法との関係)
上述したように、第6孔型K6での圧延造形では、当該孔型に側壁を設けて圧延造形後の被圧延材Aのウェブ高さ(即ち、被圧延材外法)を所定の値に揃えることが好ましいが、その場合、フランジ肉量(平均フランジ幅×平均フランジ厚)をできるだけ多く確保するとの観点からは、第5孔型K5の内法と第6孔型K6の内法との関係を好適なものとすることが望ましい。
本発明者らは、以下に説明する検証結果に基き、第6孔型K6(隆起部消去孔型)の内法を第5孔型K5(隆起部形成孔型)の内法未満とすることで、最終的に残存するフランジ肉量の増量化が図られるとの知見を見出した。以下、本知見について説明する。
図13は、第5孔型K5の内法と第6孔型K6の内法を等しくした場合(従来孔型)と、第6孔型K6の内法を第5孔型K5の内法未満とした場合(本発明孔型)の、圧延造形後のフランジ部形状を示す解析図である。図13には、第6孔型K6での圧延造形前形状(即ち、第5孔型K5での圧延造形後形状)を元形状として図示し、従来孔型による圧延造形後形状を実線、本発明孔型による圧延造形後形状をメッシュで図示している。なお、本発明孔型では第6孔型K6の内法を第5孔型K5の内法に比べ50mm減じた設計を採っている。
図13に示すように、従来孔型では、第5孔型K5での圧延造形後の被圧延材形状に対してウェブ圧下面積が大きいために、ウェブ高さ方向への拡がり量が大きく、フランジ幅及びフランジ厚が大きく減じていることが分かる。それに比べ、本発明孔型では、フランジ幅及びフランジ厚が大きく残っている。
また、図14は、従来孔型と本発明孔型との両方において圧延造形を行い、その後、拡幅圧延を行った場合(拡幅済形状)のフランジ部形状を示す解析図である。図14に示すように、第6孔型K6の内法を第5孔型K5の内法未満とした場合(本発明孔型)には、第6孔型K6を経て、更に拡幅圧延を行った後においてもフランジ肉量の増量化が実現されていることが分かり、また、フランジ部形状についても後段の中間圧延工程のロール形状に合致し、大きな形状変化等を引き起こすことなく安定的な圧延造形が実施できることが分かる。また、フランジ部内面の平坦化も実現されている。
図15は、フランジ肉量の増量化に関する概略説明図である。第5孔型K5で圧延造形された隆起部82bを有する形状の被圧延材Aにおいて、フランジ部80への直接的なメタルフローを決定する部分は、主に、フランジ部80とウェブ部82との接続部であるコーナー部110(図15中の破線部)である。例えば、当該コーナー部110をフラットな円筒ロールで上下方向から狭圧した場合に最も長手方向への延伸が生じやすく、その結果、フランジ部80の減肉を誘発する。このような観点から、コーナー部110に対する圧下は、当該コーナー部110に接触する箇所にR(曲率)を設けた形状の孔型でもってフランジ部80へのメタルフローを引き起こすような形状とし、且つ、できるだけ後段の孔型においてコーナー部110の圧下を行うことでフランジ部80の減肉を抑制させることができると考えられる。
以上、図13〜図15を参照して説明したように、第5孔型K5の内法と第6孔型K6の内法を等しくした場合(従来孔型)と、第6孔型K6の内法を第5孔型K5の内法未満とした場合(本発明孔型)と、を比較すると、第6孔型K6(隆起部消去孔型)の内法を第5孔型K5(隆起部形成孔型)の内法未満とすることでフランジ肉量の増量化が図られ、フランジの生成効率を向上させ、大型の粗形材、大型H形鋼製品を効率的且つ安定的に製造することが可能となる。
以上説明した、本実施の形態に係るH形鋼の製造方法によれば、いわゆるエッジング圧延工程後に実施される平造形圧延を、隆起部82bを形成させる第5孔型K5と、隆起部82bを消去し、且つ、ウェブ部82の内法を拡幅する第6孔型K6と、を備えた孔型構成で実施することとしている。そして、このような工程で実施される平造形圧延において、「ウェブ部分圧延孔型」あるいは「隆起部形成孔型」と呼ばれる第5孔型K5での逃がし率を25%〜50%とし、第6孔型K6での隆起部消去の際の圧下率が2.1以下となるような条件で第5孔型K5の孔型設計が行われる。これにより、「隆起部消去孔型」と呼ばれる第6孔型K6での通材不良や形状不良の発生を抑制させ、且つ、フランジ生成効率の向上を実現させることが可能となる。
また、第6孔型K6の孔型設計において、圧延造形時にフランジ部80の外側面同士の間隔(外法寸法)を所定の値以下の一定寸法に抑えるための孔型側壁100を設けることで、第6孔型K6での圧延造形後のウェブ高さを、長手方向において所定の一定の値に揃えることが可能となり、寸法精度の向上やクロップ抑制を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施の形態において、第1孔型K1〜第4孔型K4の4つの孔型を用いて被圧延材Aの造形を行い、その後、第5孔型K5、第6孔型K6(及び必要に応じた拡幅圧延孔型)を用いてH形粗形材の圧延造形を行う技術を説明したが、粗圧延工程を実施する孔型数はこれに限られるものではなく、第1孔型K1〜第4孔型K4に示す圧延造形工程を更に多くの孔型を用いて実施しても良い。即ち、上記実施の形態に示した孔型構成は一例であり、サイジングミル3や粗圧延機4に刻設される孔型の数は任意に変更可能であり、好適に粗圧延工程を実施することができる程度に適宜変更される。
また、一般的なH形鋼製造過程における平造形圧延工程では、平造形圧延後の被圧延材形状において、フランジ部外面に疵が発生する場合があることが知られており、その際には、エッジング孔型(例えば上記実施の形態の第4孔型K4)に被圧延材Aを戻し入れ、再度エッジング圧延を行うことで疵を消去するいわゆる「耳取り圧延」が実施される場合がある。このような「耳取り圧延」について、上記実施の形態では特に説明していないが、上記実施の形態に係る孔型構成やそれに伴う製造方法では平造形圧延でのウェブ高さ方向へのメタルの拡がり量が小さいため、「耳取り圧延」を行う必要はない。即ち、上記実施の形態で説明した第4孔型K4と、第5孔型K5あるいは第6孔型K6と、を同一スタンド(同一孔型ロール)に刻設する必要が無い。そのため、孔型ロールへの孔型刻設設計の効率化といった生産性の向上が図られる。
また、上記実施の形態では、第5孔型K5において隆起部82bを形成させ、その後、第6孔型K6において隆起部82bを消去するといった平造形圧延工程を説明しているが、これら第5孔型K5による隆起部形成と第6孔型による隆起部消去は繰り返し実施されても良い。即ち、隆起部消去後のウェブ厚みが所望の厚みとなるまで、第5孔型K5及び第6孔型K6による平造形圧延を繰り返し行っても良い。
また、上記実施の形態では、第1孔型K1〜第4孔型K4において、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に割り込みを入れ、それら割り込みによって左右に分かれた各部分を左右に折り曲げる加工を行い、フランジ部80を形成するといった造形方法を説明している。しかしながら、本発明に係る第5孔型K5及び第6孔型K6を用いた圧延造形技術は、このような技術によって造形された被圧延材Aに対してのみ適用されるものではなく、例えば特許文献1に代表されるような従来のH形粗形材(いわゆるドッグボーン材)に対しても適用することが可能である。
本発明は、例えば矩形断面であるスラブ等を素材としてH形鋼を製造する製造方法に適用できる。
1…圧延設備
2…加熱炉
3…サイジングミル
4…粗圧延機
5…中間ユニバーサル圧延機
8…仕上ユニバーサル圧延機
9…エッジャー圧延機
11…スラブ
13…H形粗形材
14…中間材
16…H形鋼製品
20…上孔型ロール(第1孔型)
21…下孔型ロール(第1孔型)
25、26…突起部(第1孔型)
28、29…割り込み(第1孔型)
30…上孔型ロール(第2孔型)
31…下孔型ロール(第2孔型)
35、36…突起部(第2孔型)
38、39…割り込み(第2孔型)
40…上孔型ロール(第3孔型)
41…下孔型ロール(第3孔型)
45、46…突起部(第3孔型)
48、49…割り込み(第3孔型)
50…上孔型ロール(第4孔型)
51…下孔型ロール(第4孔型)
55、56…突起部(第4孔型)
58、59…割り込み(第4孔型)
80…フランジ部
82…ウェブ部
82a…圧下部分
82b…隆起部(未圧下部分)
85…上孔型ロール(第5孔型)
85a…窪み部
86…下孔型ロール(第5孔型)
86a…窪み部
95…上孔型ロール(第6孔型)
96…下孔型ロール(第6孔型)
100…孔型側壁
110…コーナー部
K1…第1孔型
K2…第2孔型
K3…第3孔型
K4…第4孔型
K5…第5孔型(隆起部形成孔型)
K6…第6孔型(隆起部消去孔型)
T…製造ライン
A…被圧延材

Claims (7)

  1. 粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程を備えたH形鋼の製造方法であって、
    前記粗圧延工程は、被圧延材を所定の略ドッグボーン形状に圧延造形するエッジング圧延工程と、エッジング圧延工程完了後の被圧延材を90°あるいは270°回転させてウェブ部の圧延を行う平圧延工程を有し、
    前記平圧延工程を行う孔型には、少なくとも、被圧延材のウェブ部中央に隆起部を形成させる窪み部が設けられた隆起部形成孔型と、前記隆起部が形成された被圧延材に対し、当該隆起部を圧下する隆起部消去孔型が刻設され、
    前記平圧延工程において形成される隆起部の幅は被圧延材のウェブ部内法の25%以上50%以下に設定され、
    前記隆起部消去孔型における前記隆起部に対する圧下率を2.1以下とすることを特徴とする、H形鋼の製造方法。
  2. 前記隆起部消去孔型の内法寸法は、前記隆起部形成孔型の内法寸法未満に設計され、
    且つ、前記隆起部消去孔型には、被圧延材の外法寸法を所定値以下に抑える孔型側壁が設けられることを特徴とする、請求項1に記載のH形鋼の製造方法。
  3. 前記孔型側壁間の間隔は、前記隆起部消去孔型における被圧延材非定常部の幅拡がり量に基づき設計されることを特徴とする、請求項2に記載のH形鋼の製造方法。
  4. 前記平圧延工程を行う孔型には、前記隆起部消去孔型で圧延造形された後の被圧延材に対し、ウェブ部を略平坦に圧延造形し、且つ、拡幅圧延を行う1又は複数の拡幅用孔型が更に含まれることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のH形鋼の製造方法。
  5. 前記拡幅用孔型で圧延造形された被圧延材のウェブ部厚みは、前記隆起部形成孔型で圧延造形された被圧延材のウェブ部厚みに比べ薄く設定され、
    前記隆起部消去孔型では、前記隆起部の圧下と併せて被圧延材のウェブ部の圧下が行われることを特徴とする、請求項4に記載のH形鋼の製造方法。
  6. 前記粗圧延工程を行う圧延機には、被圧延材を圧延造形する6以上の複数の孔型が刻設され、
    当該複数の孔型では被圧延材の1又は複数パス造形が行われ、
    前記複数の孔型のうち、第1孔型及び第2孔型には、被圧延材の幅方向に対し鉛直に割り込みを入れて被圧延材端部に分割部位を形成させる突起部が形成され、
    前記複数の孔型のうち、後段に位置する前記平圧延工程を行う孔型を除く第3孔型以降の孔型には、前記割り込みに当接し、形成された分割部位を順次折り曲げる突起部が形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のH形鋼の製造方法。
  7. 厚み290mm以上310mm以下の矩形断面スラブを素材として用い、ウェブ高さ1000mm以上、且つ、フランジ幅400mm以上のH形鋼製品を製造することを特徴とする、請求項6に記載のH形鋼の製造方法。
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