JP6515365B1 - H形鋼の製造方法 - Google Patents

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    • B21B1/00Metal-rolling methods or mills for making semi-finished products of solid or profiled cross-section; Sequence of operations in milling trains; Layout of rolling-mill plant, e.g. grouping of stands; Succession of passes or of sectional pass alternations
    • B21B1/08Metal-rolling methods or mills for making semi-finished products of solid or profiled cross-section; Sequence of operations in milling trains; Layout of rolling-mill plant, e.g. grouping of stands; Succession of passes or of sectional pass alternations for rolling structural sections, i.e. work of special cross-section, e.g. angle steel
    • B21B1/088H- or I-sections

Abstract

粗圧延工程を行う複数の孔型は、被圧延材の幅方向端部に対し鉛直に溝付けを行う溝付け孔型と、溝付けされた被圧延材の幅方向端部に対し鉛直に割り込みを入れて被圧延材端部に分割部位を形成させる突起部が形成された1又は複数の割り込み孔型と、割り込みに当接し、形成された分割部位を順次折り曲げる突起部が形成された複数の折り曲げ孔型と、を含み、1又は複数の割り込み孔型のうち少なくとも最後段の割り込み孔型には、被圧延材の左右側面に当接し、当該被圧延材を左右から拘束する孔型側面が設けられ、当該孔型側面が設けられた割り込み孔型では、孔型拘束率Bが0.7以上1.0未満となる条件で圧延造形を行う。

Description

(関連出願の相互参照)
本願は、2017年11月2日に日本国に出願された特願2017−212914号に基づき、優先権を主張し、その内容をここに援用する。
本発明は、例えば矩形断面であるスラブ等を素材としてH形鋼を製造する製造方法に関する。
H形鋼を製造する場合には、加熱炉から抽出されたスラブやブルーム等の素材を粗圧延機(BD)によって粗形材(所謂ドッグボーン形状の被圧延材)に造形し、中間ユニバーサル圧延機によって上記粗形材のウェブやフランジの厚さを圧下し、併せて前記中間ユニバーサル圧延機に近接したエッジャー圧延機によって被圧延材のフランジに対し幅圧下や端面の鍛錬と整形が施される。そして、仕上ユニバーサル圧延機によってH形鋼製品が造形される。
近年、建築構造物の大型化や海洋構造物への利用に伴い、従来に比べ大型のH形鋼製品の製造が求められており、特に、フランジ幅やフランジ厚を増した製品が望まれている。スラブ等の矩形断面素材を用いた製造工程において、フランジ幅及びフランジ厚を増やす技術としては、被圧延材の上下端面(スラブ端面)に割り込みを形成させた後に、スラブ端面をエッジングしながら割り込み形状を変更する技術(所謂ウェッジ法)が知られている。
このうち、フランジ厚を増厚する技術については、例えば特許文献1に、被圧延材の上下端部(スラブ端面)を拘束せずに割り込みを形成させた後に、孔型側壁に接触しない状態でスラブ端面をエッジングしながら割り込み形状を変更する技術が開示されている。この技術によれば、エッジング圧延の圧下率に応じてフランジの増厚を図ることが可能である。
また、例えば特許文献2には、被圧延材の上下端部(スラブ端面)の両側を拘束した状態でスラブ端面をエッジングしながら割り込み形状を変更する技術が開示されている。この技術によれば、被圧延材の上下端部両側を拘束して圧下を行っているため、フランジ先端部に肉溜まりを生じさせ厚肉化を図ることが可能である。
また、例えば特許文献3には、フランジ幅の大きなH形鋼製品を製造するに際し、フランジ部厚みの不均一性といった形状不良を抑制させ寸法形状の向上を図る技術が開示されている。この技術によれば、フランジ幅の広幅化と、製品寸法精度の向上を両立させるような圧延造形を安定的に実施することが可能である。
特開平11−347601号公報 特開平7−88501号公報 特開2017−121655号公報
しかしながら、例えば上記特許文献1に開示されているように、被圧延材の上下端部(スラブ端面)を拘束せず、自由拡がりとして圧延を行った場合、フランジ幅は大きくなるものの、厚みはフランジ先端部が先細りとなるような形状となり、フランジ先端部の厚みが不足し、後段のプロセスで十分な成形ができず、大きな増厚が図られないことが懸念される。また、本発明者らの検討によれば、従来に比べ被圧延材の上下端部(スラブ端面)の左右の拘束を低くした場合であっても、同様にフランジ先端部が先細りとなり厚みが不足してしまうといった知見が得られている。
また、例えば上記特許文献2に開示されているように、被圧延材の上下端部(スラブ端面)の両側を拘束してエッジング圧延を行った場合、孔型において左右フランジ部の拡がりを完全に拘束した状態でエッジング圧延を行うため、被圧延材の長手方向への延伸が支配的となり、フランジ部の増厚の効率が低く、フランジの増厚に限界がある。例えば、孔型条件を適正にして実施した場合でも、フランジ先端部から付け根までの厚みの平均値が素材スラブ厚の1/2以上となるような圧延は本技術では実施できない。
また、例えば上記特許文献3に開示された技術では、フランジ部に対し積極的な圧下を行う構成とはなっておらず、フランジ部の十分な増厚が実現されるような技術とはなっていない。
上記事情に鑑み、本発明の目的は、H形鋼を製造する際の孔型を用いた粗圧延工程において、スラブ等の素材の端面に鋭角の先端形状をした突起部で深く割り込みを入れ、それによって形成されたフランジ部を順次折り曲げるといった工程を行う際に、従来に比べフランジ厚の大きなH形鋼製品を製造することが可能なH形鋼の製造方法を提供することにある。
前記の目的を達成するため、本発明によれば、粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程を備えたH形鋼の製造方法であって、前記粗圧延工程を行う圧延機には、被圧延材を圧延造形する複数の孔型が刻設され、当該複数の孔型は、被圧延材の幅方向端部に対し鉛直に溝付けを行う溝付け孔型と、溝付けされた被圧延材の幅方向端部に対し鉛直に割り込みを入れて被圧延材端部に分割部位を形成させる突起部が形成された1又は複数の割り込み孔型と、前記割り込みに当接し、前記割り込み孔型において形成された分割部位を順次折り曲げる突起部が形成された複数の折り曲げ孔型と、を含み、前記1又は複数の割り込み孔型のうち少なくとも最後段の割り込み孔型には、被圧延材の左右側面に当接し、当該被圧延材を左右から拘束する孔型側面が設けられ、当該孔型側面が設けられた割り込み孔型では、以下の式(1)で示す孔型拘束率Bが0.7以上1.0未満となる条件で圧延造形を行うことを特徴とする、H形鋼の製造方法が提供される。
B=t/t0 ・・・(1)
但し、t:孔型拘束をして割り込み圧延造形及び折り曲げ圧延造形を実施した場合のフランジ先端厚、t0:溝付け孔型にて形成されるフランジ先端厚に相当するスラブ端面の厚み、である。
前記孔型側面が設けられた割り込み孔型における圧延造形完了までの累積圧下率が0.20以上0.25以下である条件で圧延造形を行っても良い。
前記1又は複数の割り込み孔型に形成される突起部の先端角度は25°以上40°以下であっても良い。
前記1又は複数の割り込み孔型及び前記複数の折り曲げ孔型では、少なくとも1パス以上の造形において被圧延材の端面と当該端面に対向する孔型面とが接触した状態で軽圧下が行われても良い。
前記複数の孔型は、前記複数の割り込み孔型及び前記複数の折り曲げ孔型を経た被圧延材に対し平造形圧延を行う平造形孔型を含み、当該平造形孔型での圧延造形は、前記分割部位に相当する被圧延材のフランジ部において、フランジ片幅とフランジ厚との比Iが1.30以上となる条件で実施されても良い。
厚みが280mm以上320mm以下の矩形断面素材を用い、前記平造形孔型における圧延造形前の被圧延材のフランジ部のフランジ片幅を200mm以上としても良い。
本発明によれば、H形鋼を製造する際の孔型を用いた粗圧延工程において、スラブ等の素材の端面に鋭角の先端形状をした突起部で深く割り込みを入れ、それによって形成されたフランジ部を順次折り曲げるといった工程を行う際に、従来に比べフランジ厚の大きなH形鋼製品を製造することが可能となる。
H形鋼の製造ラインについての概略説明図である。 第1孔型の概略説明図である。 第2−1孔型の概略説明図である。 第2−2孔型の概略説明図である。 第3孔型の概略説明図である。 第4孔型の概略説明図である。 第5孔型(平造形孔型)の概略説明図である。 本発明の実施の形態に係る割り込み孔型の構成を示す概略説明図である。 割り込み圧延造形後のフランジ相当部の形状を比較するFEM解析図である。 拘束状況の異なる孔型によって最終割り込み圧延造形を行った場合の折り曲げ圧延造形後のフランジ部形状を示すFEM解析図である。 孔型拘束率を複数の各種値にしたときのスラブ先端部の圧下率とフランジ増厚率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本実施の形態にかかる圧延設備1を含むH形鋼の製造ラインTについての説明図である。図1に示すように、製造ラインTには上流側から順に、加熱炉2、サイジングミル3、粗圧延機4、中間ユニバーサル圧延機5、仕上ユニバーサル圧延機8が配置されている。また、中間ユニバーサル圧延機5に近接してエッジャー圧延機9が設けられている。なお、以下では、説明のために製造ラインTにおける鋼材を、総称して「被圧延材A」と記載し、各図において適宜その形状を破線・斜線等を用いて図示する場合がある。
図1に示すように、製造ラインTでは、加熱炉2から抽出された例えばスラブ11等の被圧延材Aがサイジングミル3ならびに粗圧延機4において粗圧延される。次いで、中間ユニバーサル圧延機5において中間圧延される。この中間圧延時には、必要に応じてエッジャー圧延機9によって被圧延材の端部等(後述するフランジ部80)に対して圧下が施される。通常の場合、サイジングミル3及び粗圧延機4のロールには、合わせて4〜6個程度の孔型が刻設されており、これらを経由して複数パス程度のリバース圧延でH形粗形材13が造形され、該H形粗形材13を前記中間ユニバーサル圧延機5−エッジャー圧延機9の2つの圧延機からなる圧延機列を用いて、複数パスの圧下が加えられ、中間材14が造形される。そして中間材14は、仕上ユニバーサル圧延機8において製品形状に仕上圧延され、H形鋼製品16が製造される。
(基本的な孔型の構成)
次に、以下では図1に示したサイジングミル3及び粗圧延機4に刻設される孔型構成や孔型形状について、その基本的な構成を図面を参照して説明する。図2〜図7は粗圧延工程を行うサイジングミル3及び粗圧延機4に刻設される孔型についての概略説明図である。ここで、説明する第1孔型〜第4孔型は、例えばサイジングミル3に全て刻設されても良く、サイジングミル3及び粗圧延機4に第1孔型〜第5孔型の5つの孔型が分けて刻設されても良い。即ち、第1孔型〜第4孔型はサイジングミル3及び粗圧延機4の両方に亘って刻設されても良く、どちらか一方の圧延機に刻設されても良い。通常のH形鋼の製造における粗圧延工程では、これら各孔型において1又は複数パスでの造形が行われる。
また、本実施の形態では刻設される孔型の基本的な構成が6孔型である場合を例示して説明するが、その孔型数についても、必ずしも6孔型である必要はなく、6以上の複数の孔型数であっても良い。即ち、H形粗形材13を造形するために好適な孔型構成であれば良い。なお、図2〜図7では、各孔型における造形時の被圧延材Aの概略最終パス形状を破線にて図示している。
図2は第1孔型K1の概略説明図である。第1孔型K1は、一対の水平ロールである上孔型ロール20と下孔型ロール21に刻設され、これら上孔型ロール20と下孔型ロール21のロール隙において被圧延材Aが圧下・造形される。また、上孔型ロール20の周面(即ち、第1孔型K1の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部25が形成されている。更に、下孔型ロール21の周面(即ち、第1孔型K1の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部26が形成されている。これら突起部25、26はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部25と突起部26とでそれぞれ等しく構成されている。突起部25、26の高さ(突出長さ)をh1とし、先端部角度をθ1aとする。
この第1孔型K1においては、突起部25、26が被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に押し当てられ、割り込み28、29が形成される(溝付け造形)。第1孔型K1は、スラブ端面に溝(割り込み28、29)を付与する孔型であることから「溝付け孔型」とも呼称される。ここで、突起部25、26の先端部角度(ウェッジ角度とも呼称される)θ1aは例えば25°以上40°以下であることが望ましい。
ここで、第1孔型K1の孔型幅は、被圧延材Aの厚み(即ち、スラブ厚)とほぼ等しいことが好ましい。具体的には、第1孔型K1に形成された突起部25、26の先端部における孔型の幅と、スラブ厚を同一にすることで、被圧延材Aの左右センタリング性が好適に確保される。また、このような孔型寸法の構成とすることで、図2に示すように、第1孔型K1での造形時において、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)においては、上記突起部25、26及び孔型側面(側壁)の一部が被圧延材Aと接していて、割り込み28、29により4つの要素(部位)に分割されたスラブ上下端部に対して、第1孔型K1の上面及び底面にて積極的な圧下が行われない方が好ましい。孔型の上面及び底面による圧下は、被圧延材Aの長手方向への伸びを生じさせてしまい、フランジ(後述するフランジ部80)の生成効率を低下させてしまうからである。即ち、第1孔型K1においては、突起部25、26が被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に押し当てられ、割り込み28、29が形成される際の突起部25、26における圧下量(ウェッジ先端圧下量)は、スラブ上下端部における圧下量(スラブ端面圧下量)よりも十分に大きなものとされ、これにより割り込み28、29が形成され、フランジ先端部の厚みt0が決定される。
図3は第2−1孔型K2−1の概略説明図である。第2−1孔型K2−1は、一対の水平ロールである上孔型ロール30と下孔型ロール31に刻設される。上孔型ロール30の周面(即ち、第2−1孔型K2−1の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部35が形成されている。更に、下孔型ロール31の周面(即ち、第2−1孔型K2−1の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部36が形成されている。これら突起部35、36はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部35と突起部36とでそれぞれ等しく構成されている。これら突起部35、36の先端部角度は25°以上40°以下のウェッジ角度θ1bであることが望ましい。
ここで、上記第1孔型K1のウェッジ角度θ1aは、フランジ相当部の先端部厚みを確保し、誘導性を高め、圧延の安定性を担保するために、後段の第2−1孔型K2−1のウェッジ角度θ1bと同じ角度であることが好ましい。
突起部35、36の高さ(突出長さ)h2aは、上記第1孔型K1の突起部25、26の高さh1より高く構成されており、h2a>h1となっている。また、突起部35、36の先端部角度は上記第1孔型K1の突起部25、26の先端部角度と同じであることが圧延寸法精度上、好ましい。これら上孔型ロール30と下孔型ロール31のロール隙において、上記第1孔型K1通材後の被圧延材Aが更に造形される。
ここで、第1孔型K1に形成される突起部25、26の高さh1より、第2−1孔型K2−1に形成される突起部35、36の高さh2aの方が高く、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)への侵入長さも同様に第2−1孔型K2−1の方が長くなる。第2−1孔型K2−1での突起部35、36の被圧延材Aへの侵入深さは、突起部35、36の高さh2aと同じである。即ち、第1孔型K1での突起部25、26の被圧延材Aへの侵入深さh1’と、第2−1孔型K2−1での突起部35、36の被圧延材Aへの侵入深さh2aはh1’<h2aとの関係になっている。
また、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に対向する孔型上面30a、30b及び孔型底面31a、31bと、突起部35、36の傾斜面とのなす角度θfは、図3に示す4箇所ともに約90°(略直角)に構成されている。
図3に示すように、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)へ押し当てられた時の突起部の侵入長さが長いことから、第2−1孔型K2−1においては、第1孔型K1において形成された割り込み28、29が更に深くなるように造形が行われ、割り込み38、39が形成される(割り込み圧延造形)。この第2−1孔型K2−1は、「割り込み孔型」とも呼称される。
また、第2−1孔型K2−1での造形は多パスにより行われるが、当該多パス造形においては、最終パスにて被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)と、それに対向する孔型上面30a、30b及び孔型底面31a、31bとが接触するような造形が行われる。これは、第2−1孔型K2−1での全てのパスにおいて被圧延材Aの上下端部と孔型内部とを非接触とすると、フランジ相当部(後述するフランジ部80に対応する部位)が左右非対称に造形されるといった形状不良が生じる恐れがあり、通材性の面で問題があるからである。
図4は第2−2孔型K2−2の概略説明図である。第2−2孔型K2−2は、一対の水平ロールである上孔型ロール40と下孔型ロール41に刻設される。上孔型ロール40の周面(即ち、第2−2孔型K2−2の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部45が形成されている。更に、下孔型ロール41の周面(即ち、第2−2孔型K2−2の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部46が形成されている。これら突起部45、46はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部45と突起部46とでそれぞれ等しく構成されている。これら突起部45、46の先端部角度は25°以上40°以下のウェッジ角度θ1bであり、上記第2−1孔型K2−1のウェッジ角度と同じ角度に設計されることが望ましい。
突起部45、46の高さ(突出長さ)h2bは、上記第2−1孔型K2−1の突起部35、36の高さh2aより高く構成されており、h2b>h2aとなっている。これら上孔型ロール40と下孔型ロール41のロール隙において、上記第2−1孔型K2−1通材後の被圧延材Aが更に造形される。
ここで、第2−1孔型K2−1に形成される突起部35、36の高さh2aより、第2−2孔型K2−2に形成される突起部45、46の高さh2bの方が高く、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)への侵入長さも同様に第2−2孔型K2−2の方が長くなる。第2−2孔型K2−2での突起部45、46の被圧延材Aへの侵入深さは、突起部45、46の高さh2bと同じである。即ち、第2−1孔型K2−1での突起部35、36の被圧延材Aへの侵入深さh2aと、第2−2孔型K2−2での突起部45、46の被圧延材Aへの侵入深さh2bはh2a<h2bとの関係になっている。
また、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に対向する孔型上面40a、40b及び孔型底面41a、41bと、突起部45、46の傾斜面とのなす角度θfは、図4に示す4箇所ともに約90°(略直角)に構成されている。
図4に示すように、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)へ押し当てられた時の突起部の侵入長さが長いことから、第2−2孔型K2−2においては、第2−1孔型K2−1において形成された割り込み38、39が更に深くなるように造形が行われ、割り込み48、49が形成される(割り込み圧延造形)。この第2−2孔型K2−2も、第2−1孔型K2−1と同様に「割り込み孔型」とも呼称される。
なお、ここで形成される割り込み48、49の寸法に基づき粗圧延工程でのフランジ造形工程終了時のフランジ片幅が決定される。
また、第2−2孔型K2−2での造形は、通常、多パスにより行われるが、当該多パス造形においては、最終パスにて被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)と、それに対向する孔型上面40a、40b及び孔型底面41a、41bとが接触するような造形が行われる。これは、第2−2孔型K2−2での全てのパスにおいて被圧延材Aの上下端部と孔型内部とを非接触とすると、フランジ相当部(後述するフランジ部80に対応する部位)が左右非対称に造形されるといった形状不良が生じる恐れがあり、通材性の面で問題があるからである。
図5は第3孔型K3の概略説明図である。第3孔型K3は、一対の水平ロールである上孔型ロール50と下孔型ロール51に刻設される。上孔型ロール50の周面(即ち、第3孔型K3の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部55が形成されている。更に、下孔型ロール51の周面(即ち、第3孔型K3の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部56が形成されている。これら突起部55、56はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部55と突起部56とでそれぞれ等しく構成されている。
上記突起部55、56の先端部角度θ2は、上記角度θ1bに比べ広角に構成され、突起部55、56の被圧延材Aへの侵入深さh3は、上記突起部45、46の侵入深さh2bよりも短くなっている(即ち、h3<h2b)。この角度θ2は例えば70°以上110°以下が好ましい。
また、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に対向する孔型上面50a、50b及び孔型底面51a、51bと、突起部55、56の傾斜面とのなす角度θfは、図5に示す4箇所ともに約90°(略直角)に構成されている。
図5に示すように、第3孔型K3では、第2−2孔型K2−2通材後の被圧延材Aに対し、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)において第2−2孔型K2−2において形成された割り込み48、49が、突起部55、56が押し当てられることにより、割り込み58、59となる。即ち、第3孔型K3での造形における最終パスでは、割り込み58、59の最深部角度(以下、割り込み角度とも呼称する)がθ2となる。換言すると、第2−2孔型K2−2において割り込み48、49の形成と共に造形された分割部位(後述するフランジ部80に対応する部位)が外側に折り曲げられるような造形が行われる(折り曲げ圧延造形)。この第3孔型K3は「折り曲げ孔型」とも呼称される。
また、図5に示す第3孔型K3での造形は少なくとも1パス以上によって行われ、このうちの少なくとも1パス以上は、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)と孔型内部(第3孔型K3の上面及び底面)が接触した状態で行われる。この被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)と孔型内部が接触した状態においては、当該端部の軽圧下が行われることが好ましい。
図6は第4孔型K4の概略説明図である。第4孔型K4は、一対の水平ロールである上孔型ロール60と下孔型ロール61に刻設される。上孔型ロール60の周面(即ち、第4孔型K4の上面)には、孔型内部に向かって突出する突起部65が形成されている。更に、下孔型ロール61の周面(即ち、第4孔型K4の底面)には、孔型内部に向かって突出する突起部66が形成されている。これら突起部65、66はテーパー形状を有しており、その突出長さ等の寸法は、突起部65と突起部66とでそれぞれ等しく構成されている。
上記突起部65、66の先端部角度θ3は、上記角度θ2に比べ広角に構成され、突起部65、66の被圧延材Aへの侵入深さh4は、上記突起部55、56の侵入深さh3よりも短くなっている(即ち、h4<h3)。この角度θ3は例えば130°以上170°以下が好ましい。
また、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に対向する孔型上面60a、60b及び孔型底面61a、61bと、突起部65、66の傾斜面とのなす角度θfは、上記第3孔型K3と同様に、図6に示す4箇所ともに約90°(略直角)に構成されている。
第4孔型K4では、第3孔型K3通材後の被圧延材Aに対し、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)において第3孔型K3において形成された割り込み58、59が、突起部65、66が押し当てられることにより押し広げられ、割り込み68、69となる。即ち、第4孔型K4での造形における最終パスでは、割り込み68、69の最深部角度(以下、割り込み角度とも呼称する)がθ3となる。換言すると、第3孔型K3において割り込み58、59の形成と共に造形された分割部位(後述するフランジ部80に対応する部位)が更に外側に折り曲げられるような造形が行われる(折り曲げ圧延造形)。この第4孔型K4は「折り曲げ孔型」とも呼称される。
このようにして造形された被圧延材Aの上下端部の部位は、後のH形鋼製品のフランジに相当する部位であり、ここではフランジ部80と呼称する。
図6に示す第4孔型K4での造形は少なくとも1パス以上によって行われ、このうちの少なくとも1パス以上は、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)と孔型内部(第4孔型K4の上面及び底面)が接触した状態で行われる。この被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)と孔型内部が接触した状態においては、当該端部の軽圧下が行われることが好ましい。
図7は第5孔型K5の概略説明図である。第5孔型K5は、一対の水平ロールである上孔型ロール85と下孔型ロール86から構成される。図7に示すように、第5孔型K5では、第4孔型K4までに造形された被圧延材Aが90°あるいは270°回転させられ、第4孔型K4までは被圧延材Aの上下端に位置していたフランジ部80が、圧延ピッチライン上に来るような配置となる。そして、第5孔型K5では、2か所のフランジ部80を繋ぐ接続部であるウェブ部82の圧下及びフランジ部80のフランジ先端部を圧下することでフランジ幅の寸法調整が行われる。このようにしていわゆるドッグボーン形状のH形粗形材(図1に示すH形粗形材13)が造形される。なお、この第5孔型K5はウェブ部82を圧下して減厚させることから、「ウェブ減厚孔型」あるいは「平造形孔型」とも呼称される。なお、この平造形孔型(第5孔型K5)における圧延造形は、1又は任意の複数パスで行われる。
このように造形されたH形粗形材13に対し、既知の圧延機である中間ユニバーサル圧延機5−エッジャー圧延機9の2つの圧延機からなる圧延機列を用いて、複数パスのリバース圧延が加えられ、中間材14が造形される。そして中間材14は、仕上ユニバーサル圧延機8において製品形状に仕上圧延され、H形鋼製品16が製造される(図1参照)。
上述したように、本実施の形態にかかる第1孔型K1〜第4孔型K4を用いて被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)に割り込みを入れ、それら割り込みによって左右に分かれた各部分を左右に折り曲げる加工を行い、フランジ部80を形成するといった造形をすることで、従来行われていたスラブ端面を常に圧下する粗圧延方法に比べ、フランジ幅を広幅化させてH形粗形材13を造形することが可能となり、その結果、フランジ幅の大きな最終製品(H形鋼)を製造することができる。
ここで、本実施の形態に係るH形鋼の製造方法においては、上述した第1孔型K1〜第4孔型K4によって造形された被圧延材Aのフランジ部80の形状が、従来の製造方法における平孔型造形前のフランジ部の形状に比べ、製品フランジの形状に近い形状であるといった特徴がある。これは、素材として用いる矩形断面の素材(スラブ)の端部形状を変えることなく、割り込みを入れて造形した分割部位(フランジ部80)を折り曲げる加工を行うといった造形技術を採用していることに起因する。
このような特徴を有する圧延造形技術では、例えば1800mm幅、280mm〜320mm厚の矩形断面素材スラブから400mm幅以上のフランジ幅を有するH形鋼製品を製造するといったように、大型H形鋼を効率的に製造するために、更にフランジ部80の増厚を図る場合がある。フランジ部80の増厚を図る際には、例えば割り込み圧延造形時にエッジング圧延を施すことが有効であると考えられるが、フランジ幅が広く、フランジ厚が薄い形状の被圧延材Aに対しエッジング圧延を行った場合、フランジ先端部のみが増厚してしまうといった非効率的なフランジ造形となってしまう恐れがある。また、エッジング圧延の圧下量が大きい場合、上下左右のフランジ部80の肉量バランスが不均一となり、寸法精度が悪化してしまう恐れがある。
即ち、本発明者らは、上記のような割り込み孔型での圧延造形において、被圧延材Aの側面を孔型によって拘束するといった構成を採っていないために、フランジ先端部のみに変形が集中し、先端部のみが増厚すると同時に、被圧延材Aの左右方向に関する溝ずれ等のセンタリング不良が懸念され、これにより、造形されるフランジ相当部の厚みが上下左右方向において不均一になり、特にフランジ左右厚みに差異が生じ易いといった知見を見出した。なお、溝ずれとは、割り込み孔型での圧延造形において、突起部によって割り込みを形成させる際に、形成された割り込みの中心部が、被圧延材Aの厚み方向中心部に対してずれてしまう現象である。
このような事情に鑑み、本発明者らは、割り込み孔型の形状について更なる検討を行い、上述した溝ずれ等に起因し、造形されるフランジ相当部の厚みが上下左右方向において不均一になり、特にフランジ左右厚みに差異が生じるといった問題点を解消することが可能な割り込み孔型を創案し、加えて、創案された改良形状の割り込み孔型においてフランジ増厚を図る場合に増厚効率を最大化させるための指標を定量的に検証し、効率的な増厚条件を創案するに至った。以下では、新たに創案された構成を有する割り込み孔型の形状について図面を参照して説明し、当該割り込み孔型で効率的にフランジ増厚を図ることが可能な条件について説明する。
(本発明の実施の形態に係る割り込み孔型の構成)
図8は本発明の実施の形態に係る割り込み孔型の構成を示す概略説明図であり、上記第2−2孔型K2−2に相当する改良後の孔型K2−2aを示している。なお、図8に示す孔型の構成に関し、図4を参照して上述した第2−2孔型K2−2と同じ構成要素については同じ符号を用いて図示し、その説明は省略する。
図8に示すように、改良後の第2−2孔型K2−2aの基本的な孔型構成は改良前の第2−2孔型K2−2とほぼ同様であり、相違点として、孔型の左右に形成されている孔型側面40c及び41cが被圧延材Aを拘束するように、当該被圧延材Aに当接して構成されることが挙げられる。即ち、改良前の第2−2孔型K2−2(図4参照)では側壁を設けていない構成だったのに対し、改良後の第2−2孔型K2−2aは側壁幅が設けられた構成(孔型設計)となる。
ここで、第2−2孔型K2−2aでの造形は例えば多パスにより行われるが、この多パス造形のうちの少なくとも1パス以上は、図8に示すように、被圧延材Aの上下端部(スラブ端面)と孔型内部(第2−2孔型K2−2aの孔型上面40a、40b及び孔型底面41a、41b)が接触していることが好ましい。これは、第2−2孔型K2−2aでの圧延造形において4箇所のフランジ相当部(後のフランジ部80)の長さを揃えることで、後に造形されるフランジ部80の寸法精度の向上を図るためである。
図8に示す孔型構成において、孔型側面40c、41cの形状は、被圧延材Aを左右から効率的に拘束するという観点からは、孔型ロール軸に対して垂直となる鉛直形状が好ましいが、被圧延材Aの形状が完全な左右対称形状ではない場合等に関し、疵の発生を抑えつつ被圧延材誘導を実施するために、孔型ロール軸と垂直の方向に対し所定の傾斜角度θsを有するテーパー形状としておくことが望ましい。また、ロール摩耗に伴うロールの修復を容易にするためにもテーパー形状が望ましい。具体的な傾斜角度θsの値としては、ロール修復を行う面で必要な最小角度である3°以上、被圧延材誘導を好適に行うための角度として6°以下、とすることが好ましい。
本発明者らは、図8に示すような被圧延材Aのフランジ相当部(フランジ部80)を拘束する形状の孔型(改良後の第2−2孔型K2−2a)において割り込み圧延造形を実施する際に、当該孔型K2−2aの設計・寸法等を変えることで造形後のフランジ厚に差が出ると推定し、FEMによる解析を実施し、好適な孔型設計・寸法について検証を行った。
図9は、同一寸法の被圧延材Aに対する最終割り込み圧延造形(第2−2孔型での圧延造形)において、圧延造形を行う孔型の設計を拘束無しとした場合(即ち、上記基本的な孔型構成の孔型K2−2、図4参照)と、拘束有りとした場合(即ち、改良後の孔型K2−2a、図8参照)の割り込み圧延造形後のフランジ相当部(フランジ部80)の形状を比較するFEM解析図である。なお、図9には、参考図として割り込み圧延造形時に全くエッジング圧延の圧下量をとらない場合も図示している。
図9に示すように、最終割り込み圧延造形において、孔型に側壁を設け被圧延材Aを拘束した場合には、孔型に側壁を設けず被圧延材Aを拘束しない場合に比べ、フランジ相当部(フランジ部80)の先端部が拘束されているために、拘束されている部位以外の箇所(即ち、フランジ付根部等)の増厚が図られていることが分かる。なお、フランジ付根部等の増厚の状況は、被圧延材Aの孔型拘束時のロールとの接触状況等に依存すると考えられ、図9に図示した解析図は一例であり、フランジ片幅の先端約1/2の範囲をロールに接触させて最終割り込み圧延造形を行った場合の解析図である。
また、図9ではフランジ片幅の先端約1/2の範囲をロールに接触させて最終割り込み圧延造形を行った場合を図示したが、本発明者らは、当該ロール接触範囲を変更した場合についても解析を行った。図10は、同一寸法の被圧延材Aに対する最終割り込み圧延造形を拘束状況(ロール接触状況)の異なる孔型によって行った場合の折り曲げ圧延造形後のフランジ部形状を示すFEM解析図である。なお、図10には、参考図として割り込み圧延造形時に孔型拘束を行わない場合と、割り込み圧延造形時にエッジング圧延の圧下量をとらない場合のフランジ部形状も図示している。
図10に示すように、孔型拘束率が低い場合に比べ、孔型拘束率が高い場合には、拘束されている部位以外の箇所(即ち、フランジ付根部等)の増厚が図られていることが分かる。これは、被圧延材とロールの接触範囲が拡大するようにフランジ先端部の拘束範囲を増やし、拘束度を高くすることで、エッジング圧延による圧下浸透が進み、フランジ片幅中央部や付根部等の厚みが増厚されたためであると考えられる。即ち、孔型の拘束の程度が増すにつれて最終割り込み圧延造形時のエッジング圧延が及ぼす影響範囲がフランジ相当部の中央部方向に拡大、影響し、増厚が促進されたと考えられる。なお、フランジ相当部の増厚に関しては、例えばフランジ相当部の片幅中央部にフランジ厚の代表点として定め、当該代表点での厚みにより判断される。また、上記「圧下浸透」とは、被圧延材に対する圧延の影響が、圧下方向において被圧延材のより内部まで変形が及ぶ状態、を指す。
このような図9、図10に示した解析結果から、本発明者らは最終割り込み圧延造形における孔型拘束度を定量化するために、「孔型拘束率B」とのパラメータを導入することを創案し、当該孔型拘束率Bとフランジ増厚率との関係に基づき、好適な孔型拘束率Bの範囲を特定すべく更なる検証を行った。以下、図11を参照して本検証について説明する。
ここで、「孔型拘束率B」とは、溝付け孔型でのフランジ相当部の先端厚みに相当する孔型底幅で規定される被圧延材のフランジ先端相当部の厚みt0(図2参照)に対する、孔型拘束をして割り込み圧延造形及び折り曲げ圧延造形を実施した場合のフランジ先端厚tの比率(=t/t0)である(図10参照)。以下の式(1)は孔型拘束率Bの定義である。
B=t/t0 ・・・(1)
図11は、本実施の形態に係るH形鋼の製造方法で、孔型拘束をした状態で最終割り込み圧延造形を実施した場合において、孔型拘束率Bを複数の各種値にしたときのスラブ先端部の圧下率とフランジ増厚率との関係を示すグラフである。ここで、スラブ先端部の圧下率とは、割り込み圧延造形におけるスラブ先端部の累積での圧下率を示す。即ち、スラブ先端部の圧下率とは、割り込み圧延造形開始前と、最終割り込み圧延造形完了後での上下ウェッジ間距離での累積エッジング量の比率(即ち、累積での割り込み圧延造形の圧下率)である。また、フランジ増厚率とは、孔型拘束をせずに割り込み圧延造形及び折り曲げ圧延造形を実施した場合のフランジ最大厚みに対する、孔型拘束をして割り込み圧延造形及び折り曲げ圧延造形を実施した場合のフランジ最大厚みの増厚の比率である。これらのフランジ厚は、図10中の参考図に示すフランジ片幅中央部のフランジ厚を指す(図10中の破線囲い部参照)。なお、フランジ厚みはフランジ外面に対して垂直方向で測定した値を用いる。
図11に示すように、基本的にはスラブ先端部の圧下率が増加するに伴いフランジ増厚率は高くなる傾向がある。また、孔型拘束率Bが大きい程、フランジ増厚率が低い値となる傾向があり、例えば孔型拘束率Bが0.90の場合、スラブ先端部の圧下率が大きくなってもフランジ増厚率は1.00に近い値のままである。孔型拘束率Bの値が大きすぎると、最終割り込み圧延造形時に被圧延材Aが拘束され過ぎた状態で圧延造形が進むため、長手方向への伸びが顕著となりフランジ増厚が十分実現されない。即ち、フランジ増厚をある程度実現させるためには、例えば孔型拘束率Bは0.90以下であることが好ましい。
なお、上記特許文献1(特開2017−121655号公報)に係る技術では、被圧延材Aの左右に孔型側面が当接し拘束する構成が開示されており、例えば孔型拘束率Bが1.0であるような条件が開示されていると解される。但し、特許文献1には、孔型拘束をした状態でスラブ先端部の圧下を行う旨の記載は無く、スラブ先端部の圧下率とフランジ増厚率の関係についても何ら言及していない。
図11で得られたデータから、先ず、スラブ先端部の圧下率に関わらず、フランジ増厚率が高い値となる(フランジ増厚効果が十分得られる)ような孔型拘束率Bは0.70以上であると規定することができる。孔型拘束率Bは0.70以上が好ましいのは、孔型拘束率Bが0.65の場合には、スラブ先端部の圧下率が大きすぎるとフランジ厚が減厚する傾向がみられるためである。
なお、孔型拘束率B=1.0との条件は、スラブ先端部の積極的な圧下を行わず、フランジ増厚が図られない条件であるため、孔型拘束率Bは1.0未満とすることが好ましく、更に、図11のデータに基づけば、0.9以下とすることが好ましい。
また、図11で得られたデータから、スラブ先端部の圧下率(累積圧下率)が0.20以上0.25以下の範囲において圧延造形を実施する場合には、特に孔型拘束率Bが0.65の場合にフランジ厚の減厚現象が顕著に見られることから、上記範囲において圧延造形を実施する場合には、孔型拘束率Bを0.70以上に規定することで十分なフランジ増厚率を担保することができることが分かる。
ここで、例えば非特許文献「昭和53年塑性加工春季講演会(1978.5.17〜19広島)、209〜210頁」に記載されているように、矩形断面の被圧延材に係る圧延による変形形態(変形モード)は主にシングルバルジングと呼ばれる形態と、ダブルバルジングと呼ばれる形態に大別される。これらの知見に基づいて、フランジ部80の圧延造形に着目し、上記非特許文献に記載のロール径、圧下率、板幅、板厚をそれぞれH形鋼の通常の製造条件に適用した場合、これらシングルバルジングとダブルバルジングとの境界は、矩形断面材のフランジ片幅とフランジ厚との比I(以下、単にIとも記載)の値が約1.30である場合となることが知られており、Iが1.30を超えると圧延による変形が被圧延材の端部に集中してダブルバルジング形状となり、Iが1.30以下であると圧延による変形が被圧延材の中央に集中してシングルバルジング形状となることが分かっている。
上述した基本的な孔型構成によって圧延造形を行う場合、第5孔型K5での圧延造形によって上述したダブルバルジング形状が発現する条件は、Iが1.30を超える場合であり、そのような場合には1/2フランジ片幅部付近が先端に比べ薄く造形されてしまう。表1は、素材の厚み(一般的に知られるスラブ厚)が250mm、300mmであり、製造されるH形鋼のフランジ幅が300mm、400mm、500mm、600mmである場合のIの値を示すものである。なお、本実施の形態に係る圧延造形では、スラブエッジング造形後にフランジ部80の形状として製品フランジ形状に近い形状が得られることから、フランジ幅方向への大きな圧下は行われない。このため、粗圧延後のフランジ片幅とH形鋼製品のフランジ片幅はほぼ等しく、粗圧延後のフランジ部80の片幅は、製造されるH形鋼のフランジ幅の約半分の値150mm、200mm、250mm、300mmと考えればよい。
Figure 0006515365
表1に示すように、スラブ厚に割り込みを入れて、分割部位を折り曲げる造形法を採用すると、スラブ厚のおよそ1/2がそのままエッジング圧延仕上がり後の仕上がりフランジ厚となるため、250mm厚の素材から製品フランジ幅400mm、500mm、600mmのH形鋼製品を製造する場合には、Iが1.30を超えた値となっている。また、300mm厚の素材から製品フランジ幅400mm、500mm、600mmのH形鋼製品を製造する場合にも、Iが1.30を超えた値となっている。
表1を参照して説明したように、特にフランジ幅が400mm以上のH形鋼製品を製造する場合に、上述した基本的な孔型構成によって圧延造形を行うと、第5孔型K5における平造形圧延において、1/2フランジ片幅部付近が先端に比べ薄く造形され、いわゆるダブルバルジング形状となってしまう。そこで、これを回避するようなフランジ増厚方法が求められ、特に1/2フランジ片幅部付近の増厚を図ることが求められる。
このような事情に関し、従前は第5孔型K5における平造形圧延においていわゆるダブルバルジング形状となってしまうような条件下であっても、本実施の形態に係る側壁を設けた孔型設計(被圧延材拘束孔型)を最終割り込み圧延造形時に用いるとの孔型設計を適用し、更には、当該孔型設計において孔型拘束率を所定の好適な数値範囲内の値とすることで十分なフランジ増厚を効率的に実現させることが可能である。
以上説明したように、本実施の形態に係るH形鋼の製造方法においては、基本的な孔型構成に加え、割り込み圧延造形を行う孔型の最終孔型の孔型設計を、側壁を設けた構成とし、被圧延材Aを拘束するような孔型とすることで、フランジ増厚率を高い値とし、フランジ部80(特にフランジ付根部)の増厚を効率的に実現させることができる。この場合、特に孔型拘束率Bを0.70以上に規定することで十分なフランジ増厚率を担保することができる。
なお、このような高いフランジ増厚率を実現させるような孔型設計は、フランジ部80においてフランジ片幅とフランジ厚との比Iの値が1.30以上となるような条件で圧延造形が行われる場合に特に有効であることが分かっている。
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上記実施の形態において、第1孔型K1〜第4孔型K4として図示・説明した孔型群を用いて被圧延材Aの圧延造形を行い、その後、第5孔型K5を用いて平造形圧延を行う技術を説明したが、粗圧延工程を実施する孔型数はこれに限られるものではなく、更に多くの孔型を用いて実施しても良い。即ち、上記実施の形態に示した孔型構成は一例であり、サイジングミル3や粗圧延機4に刻設される孔型の数は任意に変更可能であり、好適に粗圧延工程を実施することができる程度に適宜変更される。
また、上記実施の形態では、割り込み孔型の構成としてウェッジ高さの異なる2つの孔型である第2−1孔型K2−1及び第2−2孔型K2−2が刻設されている場合を図示し説明し、割り込み孔型の最終孔型である第2−2孔型K2−2に改良を施し、側壁を有する構成(即ちK2−2a)とすることが好ましい旨の説明を行ったが、割り込み孔型は1孔型でも良く、また、3以上の複数の孔型から構成されても良い。但し、割り込み孔型が3以上の複数孔型である場合には、上述した側壁を設け被圧延材Aを拘束するような孔型設計を適用する孔型は、割り込み圧延造形を行う孔型群の最終孔型とすることが望ましい。
また、H形鋼を製造する際の素材としてはスラブを例示して説明したが、類似形状のその他素材についても本発明は当然適用可能である。
本発明は、例えば矩形断面であるスラブ等を素材としてH形鋼を製造する製造方法に適用できる。
1…圧延設備
2…加熱炉
3…サイジングミル
4…粗圧延機
5…中間ユニバーサル圧延機
8…仕上ユニバーサル圧延機
9…エッジャー圧延機
11…スラブ
13…H形粗形材
14…中間材
16…H形鋼製品
20…上孔型ロール(第1孔型)
21…下孔型ロール(第1孔型)
25、26…突起部(第1孔型)
28、29…割り込み(第1孔型)
30…上孔型ロール(第2−1孔型)
31…下孔型ロール(第2−1孔型)
35、36…突起部(第2−1孔型)
38、39…割り込み(第2−1孔型)
40…上孔型ロール(第2−2孔型)
41…下孔型ロール(第2−2孔型)
45、46…突起部(第2−2孔型)
48、49…割り込み(第2−2孔型)
50…上孔型ロール(第3孔型)
51…下孔型ロール(第3孔型)
55、56…突起部(第3孔型)
58、59…割り込み(第3孔型)
60…上孔型ロール(第4孔型)
61…下孔型ロール(第4孔型)
65、66…突起部(第4孔型)
68、69…割り込み(第4孔型)
80…フランジ部
82…ウェブ部
85…上孔型ロール(第5孔型)
86…下孔型ロール(第5孔型)
K1…第1孔型
K2−1…第2−1孔型
K2−2…第2−2孔型
K2−2a…(改良後の)第2−2孔型
K3…第3孔型
K4…第4孔型
K5…第5孔型(平造形孔型)
T…製造ライン
A…被圧延材

Claims (6)

  1. 粗圧延工程、中間圧延工程、仕上圧延工程を備えたH形鋼の製造方法であって、
    前記粗圧延工程を行う圧延機には、被圧延材を圧延造形する複数の孔型が刻設され、
    当該複数の孔型は、
    被圧延材の幅方向端部に対し鉛直に溝付けを行う溝付け孔型と、
    溝付けされた被圧延材の幅方向端部に対し鉛直に割り込みを入れて被圧延材端部に分割部位を形成させる突起部が形成された1又は複数の割り込み孔型と、
    前記割り込みに当接し、前記割り込み孔型において形成された分割部位を順次折り曲げる突起部が形成された複数の折り曲げ孔型と、を含み、
    前記1又は複数の割り込み孔型のうち少なくとも最後段の割り込み孔型には、被圧延材の左右側面に当接し、当該被圧延材を左右から拘束する孔型側面が設けられ、
    当該孔型側面が設けられた割り込み孔型では、以下の式(1)で示す孔型拘束率Bが0.7以上1.0未満となる条件で圧延造形を行うことを特徴とする、H形鋼の製造方法。
    B=t/t0 ・・・(1)
    但し、t:孔型拘束をして割り込み圧延造形及び折り曲げ圧延造形を実施した場合のフランジ先端厚、t0:溝付け孔型にて形成されるフランジ先端厚に相当するスラブ端面の厚み、である。
  2. 前記孔型側面が設けられた割り込み孔型における圧延造形完了までの累積圧下率が0.20以上0.25以下である条件で圧延造形を行うことを特徴とする、請求項1に記載のH形鋼の製造方法。
  3. 前記1又は複数の割り込み孔型に形成される突起部の先端角度は25°以上40°以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のH形鋼の製造方法。
  4. 前記1又は複数の割り込み孔型及び前記複数の折り曲げ孔型では、少なくとも1パス以上の造形において被圧延材の端面と当該端面に対向する孔型面とが接触した状態で軽圧下が行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のH形鋼の製造方法。
  5. 前記複数の孔型は、前記複数の割り込み孔型及び前記複数の折り曲げ孔型を経た被圧延材に対し平造形圧延を行う平造形孔型を含み、
    当該平造形孔型での圧延造形は、前記分割部位に相当する被圧延材のフランジ部において、フランジ片幅とフランジ厚との比Iが1.30以上となる条件で実施されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のH形鋼の製造方法。
  6. 厚みが280mm以上320mm以下の矩形断面素材を用い、前記平造形孔型における圧延造形前の被圧延材のフランジ部のフランジ片幅を200mm以上とすることを特徴とする、請求項5に記載のH形鋼の製造方法。
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