従前より、金属板を成形する手段として打ち抜き加工が知られている。打ち抜き加工は、ポンチとダイと拘束パッドを用意し、ダイと拘束パッドによって金属板を拘束した状態で、金属板の厚み方向に沿ってポンチをダイに接近させて、ポンチとダイによって金属板をせん断することで、金属板を所定の形状に成形する。金属板がせん断加工を受けることにより金属板にはせん断面が形成されるが、せん断面には加工硬化が生じている。すなわち、成形後の金属板を区画する端部全体が加工硬化された状態になる。この状態で、成形後の金属板の端部に対して、端部をその延在方向に沿って伸ばす加工を行うと、加工硬化された端部においてき裂が発生するおそれがある。
そこで、本発明者らが鋭意検討したところ、湾曲形状の端部を有する金属板からなるブランクをせん断加工法によって成形する際に、サポートブリッジ部及びテンソルブリッジ部を備えたブランクを用意しておき、次いで、サポートブリッジ部及びテンソルブリッジ部を打ち抜くことで成形を完了させる2段階の工程を基本とし、テンソルブリッジ部を打ち抜く際にテンソルブリッジ部に引張応力を生じさせながら打ち抜くことで、テンソルブリッジ部を除去した後のせん断面の加工硬化を抑制できることを見出した。また、テンソルブリッジ部の幅寸法が大きい場合であっても、テンソルブリッジ部にその長手方向に沿って延在するスリットを設けることで、テンソルブリッジ部を幅方向に沿って分割して有効幅を小さくし、せん断の直前までテンソルブリッジ部と基板部の状態を単軸引張応力状態に維持できるようにすることで、加工硬化量を小さくできることを見出した。このようにして本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、凹状の湾曲形状の端部を有する基板部、湾曲形状の端部を迂回するように両端が基板部に接続されたサポートブリッジ部、及び、一端が湾曲形状の端部に接続されるとともに他端がサポートブリッジ部に接続された1または2以上のテンソルブリッジ部を備え、更にテンソルブリッジ部に基板部に向かう方向に沿って延在する1または2以上のスリットが設けられている、金属板からなるブランクと、底面部及び側面部を有し、底面部と側面部とが接する角部がポンチ刃とされ、更に底面部に突起部が設けられてなるポンチと、ダイとを用意し、基板部を拘束し、ポンチの突起部をテンソルブリッジ部及びサポートブリッジ部の一方または両方に押し当てつつ、ポンチ刃とダイによってテンソルブリッジ部及びサポートブリッジ部を基板部からせん断加工により切り離す、金属板の打ち抜き加工方法である。突起部を当接させる位置は、基板部の端部の形状、テンソルブリッジ部及びサポートブリッジ部の形状、スリットの数および位置、金属板の強度や材質等を勘案して最適な位置に調整すればよい。
テンソルブリッジ部は、ポンチの突起部に押されて弾性変形することで、基板部とテンソルブリッジ部との接続箇所においてせん断直前まで引張応力を生じさせ、せん断箇所の加工硬化を低減させる。一方、サポートブリッジ部は、テンソルブリッジ部の一端を支持して、テンソルブリッジ部と基板部との間で十分な引張応力を生じさせる。
テンソルブリッジ部のせん断箇所における加工硬化を小さくするために、せん断直前のテンソルブリッジ部と基板部との間の引張応力が、サポートブリッジ部と基板部との間の引張応力よりも大きくなるように、テンソルブリッジ部及びサポートブリッジ部の形状を調整することが好ましい。
サポートブリッジ部の形状は、直線状に限らず、屈曲した形状であってもよい。
テンソルブリッジ部に2以上のスリットが設けられる場合、各スリットは、テンソルブリッジ部の幅方向に沿って並列に配置されることが好ましい。
また、テンソルブリッジ部に2以上のスリットが設けられる場合、各スリットは、テンソルブリッジ部の長手方向に沿って直列に配置されることが好ましい。
更に、テンソルブリッジ部に3以上のスリットが設けられる場合、各スリットは、テンソルブリッジ部の幅方向に並列に配置され、かつ、テンソルブリッジ部の長手方向に直列に配置されることが好ましい。
また、テンソルブリッジ部の長手方向に沿って直列に配置されたスリットのうち、サポートブリッジ部側に配置されたスリットが、サポートブリッジ部まで延在していてもよい。
更に、ブランクを挟んでポンチと対向する位置に補助パッドを配置し、補助パッドには、突起部の押し当て箇所よりも基板部側でテンソルブリッジ部に接する補助突起部が備えられ、突起部に押されたブリッジ部を補助突起部で支持しつつ、せん断加工を行うようにしてもよい。
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態である金属板の打ち抜き加工方法は、図1(a)に示すように、基板部11、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13を有する金属板14からなるブランク1を用意し、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続部分に引張応力を付与させながら、テンソルブリッジ部13と基板部11を接続箇所においてせん断することにより、図1(b)に示すような、湾曲形状の端部2を有する金属板15を得る打ち抜き加工方法である。なお、金属板15は、凹状の湾曲形状の端部2のほかに、直線状の端部3も有している。金属板15の外形は、凹状の湾曲形状の端部2と直線状の端部3とによって区画されている。
まず、本実施形態において用いるブランク1について説明する。図1(a)に示すように、ブランク1は、基板部11、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13を有する金属板14からなる。基板部11は金属材料から構成されている。また、金属板14には、基板部11、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13によって囲まれた開口部22が設けられている。図1(a)に示す金属板14には、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13がそれぞれ2つずつ設けられている。
基板部11は、本実施形態の打ち抜き加工方法によって形成される金属板15とほぼ同じ形状とされている。すなわち、凹状の湾曲形状の端部2と、直線状の端部3とによってその外形が区画されている。
サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13は、基板部11を構成する材料と同様に、金属材料からなる。また、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13の厚みは基板部11と同じ厚みになっている。
サポートブリッジ部12は、帯状に形成された直線状の部材であり、湾曲形状の端部2を迂回するようにその両端12aが基板部11に接続されている。直線状のサポートブリッジ部12が湾曲形状の端部2を迂回するように基板部11に接続されることで、サポートブリッジ部12と基板部11の端部2との間に開口部22が設けられる。
図1(a)および図2に示すように、テンソルブリッジ部13は、帯状に形成された部材であり、一端13aが湾曲形状の端部2に接続され、他端13bがサポートブリッジ部12に接続されている。他端13bは、サポートブリッジ部12の延在方向の中央に接続されている。なお、サポートブリッジ部12の一方の端部12aから他方の端部12aに向く方向をサポートブリッジ部12の延在方向とする。
また、テンソルブリッジ部13の一端部13aから他端部13bに向く方向をテンソルブリッジ部13の延在方向としたとき、サポートブリッジ部12の延在方向とテンソルブリッジ部13の延在方向はほぼ直角に交わっている。また、テンソルブリッジ部13の延在方向に直交する幅13wは、サポートブリッジ部12の延在方向に直交する幅12wよりも広くなっている。
また、テンソルブリッジ部13には、その幅方向中央にスリット13cが設けられている。スリット13cは、その長手方向がテンソルブリッジ部13の延在方向に沿うように伸びている。スリット13cは、テンソルブリッジ部13の幅方向中央においてテンソルブリッジ部13を2つの分割ブリッジ部13m、13mに分割している。なお、スリット13cの長手方向一端13c1は基板部11まで達していない。同様に、スリット13cの長手方向他端13c2は、サポートブリッジ部12まで達していない。基板部11およびテンソルブリッジ部12の接続箇所と、スリット13cの長手方向一端13c1との間の直線距離L1は、金属板14の板厚以上の寸法とされている。同様に、サポートブリッジ部12およびテンソルブリッジ部13の接続箇所と、スリット13cの長手方向他端13c2との間の直線距離L2は、金属板14の板厚以上の寸法とされている。以上説明したスリット13cが分割ブリッジ部13m、13m同士の間に存在することで、一方の分割ブリッジ部13mと他方の分割ブリッジ部13mとの間では、相互に応力が作用しないようになっている。なお、直線距離L1、L2は、テンソルブリッジ部13の延在方向に沿う距離である。
図1(a)に示すブランク1は、金属板14に開口部22およびスリット13cを設けることにより製造される。開口部22およびスリット13cの形成方法としては、せん断加工、切削加工、レーザー加工などの加工方法を用いればよい。せん断加工方法によって開口部22を形成すると、開口部22を区画する端部2に加工硬化が生じるが、後述するようにテンソルブリッジ部13のせん断箇所では加工硬化が小さくなり、端部2をその延在方向に伸ばす加工等においてき裂発生を抑制できるようになる。
ブランク1を準備したら、基板部11を拘束した状態で、ブランク1からサポートブリッジ部12とテンソルブリッジ部13をせん断加工により取り除くことにより、湾曲状の端部2を有する金属板15を形成する。このとき、テンソルブリッジ部12に引張応力を印加しながらせん断を行う。以下、本実施形態の加工方法の詳細を図3および図4を参照して説明する。
図3および図4は、本実施形態の打ち抜き加工方法を説明する工程図である。図3(a)は、ブランクの平面模式図であり、図3(b)〜(d)は、図3(a)のAA’線の位置での断面図である。また、図4(a)は、図3(a)と同様にブランクの平面模式図であり、図4(b)〜(d)は、図4(a)のBB’線の位置での断面図である。
まず、図3(b)および図4(b)に示すように、ポンチ3、ダイ4及び拘束パッド5を用意する。
ポンチ3は、図3(b)および図4(b)に示すように、ポンチ本体3aと、ポンチ本体3aの一端側に設けられた突起部3bとを有している。ポンチ本体3aは、底面部3c及び側面部3dを有しており、底面部3cに突起部3bが設けられている。底面部3cと側面部3dとが接する角部3eが、ポンチ刃3fとされている。ポンチ刃3fは、少なくとも、サポートブリッジ部12と基板部11との接続箇所、およびテンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所に対応する位置に設けられる。突起部3bの外周縁とポンチ刃3fとの間の領域が平坦面となっており、この平坦面が底面部3cとなっている。
突起部3bの外観は、ポンチ本体3aの軸方向に向かって突出する球面形状となっている。突起部3bの外観は球面状に限らず、断面視三角形状や、断面視台形状でもよい。ただし、サポートブリッジ部12やテンソルブリッジ部13を拘束するような形状を採用すると、ポンチ3によってテンソルブリッジ部13に引張応力を付与する際にテンソルブリッジ部13を塑性変形させてしまい、その結果、引張応力が小さくなってしまうので、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13を拘束しにくい形状がよく、その例としては図3(b)および図4(b)に示すような球面状がよい。
底面部3cと突起部3bの先端との高低差である突起部高さhは、本発明において重要なパラメータであり、突起部高さhを調整することで、テンソルブリッジ部13に付与する引張応力の大きさを調整できる。突起部高さhが高いほど、テンソルブリッジ部13に付与する引張応力を大きくできるが、突起部高さhが高過ぎるとテンソルブリッジ部13をせん断する前にテンソルブリッジ部13を塑性変形させてしまい、テンソルブリッジ部13に十分な引張応力を付与できなくなる。従って突起部高さhは、テンソルブリッジ部13やサポートブリッジ部12の寸法、金属板14の板厚、強度、ヤング率などを勘案して最適な値に設定するとよい。
サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13をせん断する際には、図3(b)および図4(b)に示すように、例えば下側から順に、ダイ4、拘束パッド5及びポンチ3の順に配置する。ブランク1は、ダイ4と拘束パッド5との間に配置するようにする。
そして、図3(b)および図4(b)に示すように、ダイ4と拘束パッド5との間にブランク1を挟んでブランク1を拘束する。ダイ4と拘束パッド5によるブランク1の拘束領域は、図3(a)および図4(a)の斜線部に示すように、基板部11の全面である。これにより、基板部11がブランク1の厚み方向及び厚み方向と直交する方向に拘束される。一方、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13は、ブランク1の厚み方向には拘束されない状態となる。ただし、サポートブリッジ部12の両端12aが基板部11に接続されているため、基板部11の拘束によってサポートブリッジ部12の厚み方向への変位が制限される。これにより、サポートブリッジ部12に接続されたテンソルブリッジ部13の他端13bの変位が制限される。また、テンソルブリッジ部13の一端13aが基板部11に接続されているため、テンソルブリッジ部13の一端13aの変位も制限される。
次に、ポンチ3をブランク1まで下降させて、突起部3bの先端をテンソルブリッジ部13に当接させる。なお、突起部3bを当接させる位置は、テンソルブリッジ部13に限らず、サポートブリッジ部12に当接させてもよく、テンソルブリッジ部13とサポートブリッジ部12との接続箇所に当接させてもよい。また、突起部3bを当接させる位置は、テンソルブリッジ部13の幅方向中央が好ましく、また、スリット13cの位置に対してスリット13cの長手方向の延長線上にするとよい。突起部3bを当接させる位置によってテンソルブリッジ部13に印加する引張応力の大きさが調整可能である。従って、突起部3bを当接させる位置は、端部2の形状、テンソルブリッジ部13及びサポートブリッジ部12の形状、スリット13cの数および位置、金属板14の強度や材質等を勘案して最適な位置に調整すればよい。
次に、図3(c)および図4(c)に示すように、ポンチ3を更に下降させて突起部3bをテンソルブリッジ部13に押し込み、テンソルブリッジ部13を弾性変形させる。より詳細には、テンソルブリッジ部13の一端13a及び他端13bは、基板部11及びサポートブリッジ部12によって厚み方向への変位が制限されているため、ポンチ3の突起部3bに押されて下方向に突出するように弾性変形する。テンソルブリッジ部13の弾性変形量は、ポンチ3のポンチ刃3fがブランク1に接触する位置に来るまでの間、増加し続ける。すなわち、突起部高さhが高いほど、弾性変形量は大きくなる。ただし、上述したように、テンソルブリッジ部13が塑性変形しない程度に突起部高さhを調整する必要がある。
ポンチ3を下方に下降させてテンソルブリッジ部13を弾性変形させることで、テンソルブリッジ部13にはその延在方向に沿って引張応力が付与される。引張応力は、テンソルブリッジ部13の一端13aと基板部11との接続部分に集中する。また、突起部3bの当接位置がスリット13cの長手方向の延長線上であり、かつ、当接位置がテンソルブリッジ部13の幅方向中央であるため、スリット13cにより分割された分割ブリッジ部13m、13mには引張応力がほぼ均等に加わる。そして、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所の近傍においては、スリット13cが途切れているため、各分割ブリッジ部13m、13mに印加されていた引張応力が合成されて、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所に印加されるようになる。
そして、図3(d)に示すように、更にポンチ3を下降させると、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所にポンチ刃3fが当たり、ポンチ3によって与えられたせん断応力によって当該接続箇所が塑性変形し、ついにはテンソルブリッジ部13が基板部11からせん断されて切り離される。せん断直前までテンソルブリッジ部13は突起部3bに押されて弾性変形しているため、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所に引張応力が付与された状態でせん断される。これにより、基板部11側のせん断箇所では加工硬化しにくくなる。
また、同時に、図4(d)に示すように、サポートブリッジ部12の両端12aと基板部11との接続箇所にもポンチ刃3fが当たり、サポートブリッジ部12が基板部11からせん断されて切り離される。テンソルブリッジ部13とサポートブリッジ部12は一体のまません断される。サポートブリッジ部12と基板部11との間では引張応力がほとんど生じないため、従来のせん断加工と同様に、基板部11側のせん断箇所では加工硬化が生じる。
図1(b)には、打ち抜き加工後の金属板15の平面模式図を示す。サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13が除去されることにより、基板部11には凹状の湾曲状の端部2が設けられる。端部2は、金属板15を平面視した場合に金属板15の一辺が凹状に成形された部分である。
図5(a)には、せん断加工前の金属板の要部の斜視図を示し、図5(b)には、せん断加工後の金属板の要部の斜視図を示す。図5(a)および図5(b)を対比してわかるように、せん断加工後の端部2には、開口部22の形成時に設けられた領域(以下、第1領域2aという)と、サポートブリッジ部12のせん断箇所に対応する領域(以下、第2領域2b)と、テンソルブリッジ部13のせん断箇所に対応する領域(以下、第3領域2c)とが含まれる。
第2領域2bは、従来と同様のせん断加工を受けた部分であるため、加工硬化が生じている。一方、第3領域2cは、引張応力を受けながらせん断された領域であるため、加工硬化が生じているものの、第2領域2bに比べて加工硬化量が小さくなっている。また、第1領域2aについては、開口部22の形成が例えばせん断加工によってなされた場合は、第2領域2bと同程度の加工硬化が生じている。一方、開口部22の形成が例えばレーザー加工によってなされた場合は、第1領域2aには加工硬化がほとんど生じない。
このように、端部2の第3領域2cの加工硬化が小さいため、例えば、端部2をその延在方向に沿って伸ばす加工が加わる場合に、第3領域2cを起点とするき裂や破断が生じにくくなる。これにより例えば、端部2を伸ばす加工において割れの位置が予測できる場合に、当該加工のブランクとして本実施形態の打ち抜き加工方法によって得られた金属板15を適用し、かつ、割れの予測位置に第3領域2cを位置させることで、加工時の成形不良を防止できるようになる。
以上説明したように、本実施形態の金属板14の打ち抜き加工方法では、サポートブリッジ部12の両端12aが基板部11に接続されているため、基板部11の拘束によってサポートブリッジ部12の変位が制限され、これにより、サポートブリッジ部12に接続されたテンソルブリッジ部13の他端13bの変位が制限される。また、テンソルブリッジ部13の一端13aが基板部11に接続されているため、基板部11の拘束によってテンソルブリッジ部13の一端13aの変位も制限される。この状態で、テンソルブリッジ部13にポンチ3の突起部3bが押し当てられると、突起部3bの押し当て箇所が基板部11よりも沈んでテンソルブリッジ部13が弾性変形し、テンソルブリッジ部13と基板部11の端部2との接続部分に、引張応力が集中する。ポンチ3とダイ4が更に相互に接近するに従ってテンソルブリッジ部13と基板部11との間の引張応力が更に増大する。そして、引張応力が印加された状態で、ポンチ刃3fとダイ4によってテンソルブリッジ部13と基板部11の端部2との接続箇所がせん断され、ブランク1からテンソルブリッジ部13が除去される。同時にサポートブリッジ部12もブランク1から除去される。せん断時のテンソルブリッジ部13と基板部11の端部2との接続部分に引張応力が集中していたため、基板部11側のせん断箇所では加工硬化が著しく小さくなる。このように、基板部11の端部2におけるせん断に伴う加工硬化を部分的に小さくできるので、湾曲形状の端部2をその延長方向に伸ばす加工を施した場合に、端部2の割れを抑制することができる。
これにより例えば、湾曲形状の端部2をその延長方向に伸ばす加工を行う際に、当該加工のブランク材として本実施形態の金属板の打ち抜き加工方法によって得られた金属板15を適用することで、当該加工時の端部の割れを防止できるようになる。
また、テンソルブリッジ部13と基板部11とが単軸引張応力状態となるべきところ、湾曲形状の大面積化に伴い、単軸引張応力状態が維持できなくなるほどテンソルブリッジ部13の幅が広がった場合であっても、テンソルブリッジ部13にスリット13cを設けることで、テンソルブリッジ部13を分割して有効幅を小さくすることができる。有効幅の狭幅化により、基板部11とテンソルブリッジ部13の接続箇所に対して引張応力が効率よく印加されるようになる。このため、せん断の直前まで、テンソルブリッジ部13と基板部11の状態を単軸引張応力状態に維持でき、加工硬化を小さくすることができる。
これにより例えば、湾曲形状の端部2をその延長方向に伸ばす加工を行う際に、当該加工のブランクとして本実施形態の金属板の打ち抜き加工方法によって得られた金属板15を適用することで、当該加工時の端部の割れを防止できるようになる。
また、突起部3bの当接位置がスリット13cの長手方向の延長線上であり、かつ、当接位置がテンソルブリッジ部13の幅方向中央であるため、スリット13cにより分割された分割ブリッジ部13m、13mには引張応力がほぼ均等に加わる。また、スリット13cの端部13c1が基板部11まで達していないため、分割ブリッジ部13m、13mにそれぞれ印加されていた引張応力が、基板部11とテンソルブリッジ部13との接続箇所において合成され、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所に印加されるようになる。これにより、比較的大きな引張応力をテンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所に印加することができ、加工硬化を小さくすることができる。
また、サポートブリッジ部12が直線状に形成されているため、テンソルブリッジ部13に対する拘束力を強めることができ、テンソルブリッジ部13と基板部11との間の引張応力を高めることができる。
(第2の実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。図6は、本実施形態で用いるブランクの平面模式図である。本実施形態と、先に説明した第1の実施形態とを対比すると、基板部とテンソルブリッジ部との接続箇所をせん断してブランクからテンソルブリッジ部を除去する方法は共通するが、テンソルブリッジ部に設けるスリットの位置および数が異なっている。以下の説明では、本実施形態のブランクの形状について主に説明する。
図6に示すブランクの構成要素のうち、図1(a)及び図2に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。図6に示す本実施形態のブランク201は、基板部11、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部213を有する金属板214からなる。金属板214には、基板部11、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部213によって囲まれた開口部222が設けられている。
サポートブリッジ部12は、帯状に形成された直線状の部材であり、湾曲形状の端部2を迂回するようにその両端12aが基板部11に接続されている。直線状のサポートブリッジ部12が湾曲形状の端部2を迂回するように基板部11に接続されることで、サポートブリッジ部12と基板部11の端部2との間に開口部222が設けられる。
テンソルブリッジ部213は、帯状に形成された部材であり、一端213aが湾曲形状の端部2に接続され、他端213bがサポートブリッジ部12に接続されている。他端213bは、サポートブリッジ部12の延在方向の中央に接続されている。
また、テンソルブリッジ部213の一端部213aから他端部213bに向く方向をテンソルブリッジ部213の延在方向としたとき、サポートブリッジ部12の延在方向とテンソルブリッジ部213の延在方向はほぼ直角に交わっている。また、本実施形態のテンソルブリッジ部213の延在方向に直交する幅213wは、図1に示した第1実施形態のテンソルブリッジ部13の幅13wより広くなっている。また、テンソルブリッジ部213の延在方向に直交する幅213wは、本実施形態のサポートブリッジ部12の幅12wよりも広くなっている。
更に、本実施形態に係るテンソルブリッジ部213には、2つのスリット213c、213cが設けられている。各スリット213cは、その長手方向がテンソルブリッジ部213の延在方向に沿うように伸びている。各スリット213cは、テンソルブリッジ部213を3つの分割ブリッジ部213mに分割している。
各スリット213cの位置およびスリット213c同士の間隔は特に制限はない。すなわち、各分割ブリッジ部213mの幅が同じ幅になるようにスリット213cの位置および間隔を調整してもよく、中央の分割ブリッジ部213mの幅を、他の2つの分割ブリッジ部213mの幅より広くなるようにスリット213cの位置および間隔を調整してもよく、中央の分割ブリッジ部213mの幅を、他の2つの分割ブリッジ部213mの幅より狭くなるようにスリット213cの位置および間隔を調整してもよく、各分割ブリッジ部213mの幅が相互に異なる幅になるようにスリット213cの位置および間隔を調整してもよい。
なお、各スリット213cの長手方向一端は基板部11まで達していない。同様に、各スリット213cの長手方向他端は、サポートブリッジ部12まで達していない。基板部11およびテンソルブリッジ部213の接続箇所と、スリット213mの長手方向一端との間の直線距離L1は、金属板の板厚以上の寸法とされている。同様に、サポートブリッジ部12およびテンソルブリッジ部213の接続箇所と、スリットの長手方向他端との間の直線距離L2は、金属板の板厚以上の寸法とされている。なお、直線距離L1、L2は、テンソルブリッジ部213の延在方向に沿う距離である。
以上説明したスリット213cが分割ブリッジ部213m同士の間に存在することで、各分割ブリッジ部213mの間では、相互に応力が作用しないようになっている。
図6に示すブランク201は、金属板214に開口部222およびスリット213cを設けることにより製造される。開口部222およびスリット213cの形成方法は、第1の実施形態に例示した方法と同様である。
ブランク201を準備したら、基板部11を拘束した状態で、ブランク201からサポートブリッジ部12とテンソルブリッジ部213をせん断加工により取り除くことにより、湾曲状の端部2を有する金属板を形成する。このとき、第1の実施形態と同様にして、テンソルブリッジ部213に引っ張り応力を印加しながらせん断を行う。
本実施形態では、第1の実施形態と同様にして、基板部11を拘束したまま、ポンチの突起部をテンソルブリッジ部213に押し当てることにより、テンソルブリッジ部213を弾性変形させる。ポンチの突起部は、図6の符号pで示すように、3つの分割ブリッジ部213cのそれぞれに押し当てるとよい。これにより、各分割ブリッジ部213cが弾性変形する際の変形量がほぼ同じになり、各分割ブリッジ部213cには引張応力がそれぞれ均等に加わる。そして、テンソルブリッジ部213と基板部11との接続箇所の近傍においては、スリット213cが途切れているため、各分割ブリッジ部213cに印加されていた引張応力が合成されて、テンソルブリッジ部213cと基板部11との接続箇所に印加されるようになる。
その後、第1の実施形態と同様にして、ポンチを更に下降させることにより、テンソルブリッジ部213及びサポートブリッジ部12を一体のまま基板部11からせん断する。テンソルブリッジ部213と基板部11との接続箇所に引張応力が付与された状態でせん断されるため、基板部11側のテンソルブリッジ部213のせん断箇所では加工硬化が小さくなる。また、サポートブリッジ部12と基板部11との間には引張応力がほとんど作用しないため、基板部11側のサポートブリッジ部12のせん断箇所では加工硬化が生じる。
加工後の端部2の加工硬化の状況は、図5において説明した第1の実施形態の場合と同様になる。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果の他に、以下に述べる効果も得られる。すなわち、本実施形態によれば、テンソルブリッジ部213の幅が広がった場合であっても、スリット213cを2つ設けることで、テンソルブリッジ部213よりも狭幅の分割ブリッジ部213mを設けることができ、これによりテンソルブリッジ部213の有効幅を実質的に狭くすることができる。これにより、せん断の直前まで、テンソルブリッジ部213と基板部11の状態を単軸引張応力状態に維持でき、加工硬化を小さくすることができる。
また、スリット213cの端部が基板部11まで達していないため、分割ブリッジ部213cにそれぞれ印加されていた引張応力が、基板部11とテンソルブリッジ部213cとの接続箇所において合成され、より高い引張応力を当該接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化を小さくすることができる。
(第3の実施形態)
以下、図7を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。図7は、本実施形態で用いるブランクの平面模式図である。本実施形態と、先に説明した第1の実施形態とを対比すると、基板部とテンソルブリッジ部との接続箇所をせん断してブランクからテンソルブリッジ部を除去する方法は共通するが、テンソルブリッジ部に設けるスリットの位置および数が異なっている。以下の説明では、本実施形態のブランクの形状について主に説明する。
図7(a)及び図7(b)に示すブランクの構成要素のうち、図1(a)及び図2に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。図7(a)及び図7(b)に示す本実施形態のブランク401は、基板部11、サポートブリッジ部412及びテンソルブリッジ部413を有する金属板414からなる。金属板414には、基板部11、サポートブリッジ部412及びテンソルブリッジ部413によって囲まれた開口部422が設けられている。
サポートブリッジ部412は、帯状に形成された直線状の部材であり、湾曲形状の端部2を迂回するようにその両端412aが基板部11に接続されている。直線状のサポートブリッジ部412が湾曲形状の端部2を迂回するように基板部11に接続されることで、サポートブリッジ部412と基板部11の端部2との間に開口部422が設けられる。
テンソルブリッジ部413は、帯状に形成された部材であり、一端413aが湾曲形状の端部2に接続され、他端413bがサポートブリッジ部412に接続されている。他端413bは、サポートブリッジ部412の延在方向の中央に接続されている。
テンソルブリッジ部413の一端部413aから他端部413bに向く方向をテンソルブリッジ部413の延在方向としたとき、サポートブリッジ部412の延在方向とテンソルブリッジ部413の延在方向はほぼ直角に交わっている。また、本実施形態のテンソルブリッジ部413の延在方向に直交する幅413wは、図1に示した第1実施形態のテンソルブリッジ部13の幅13wより広くなっている。また、テンソルブリッジ部413の延在方向に直交する幅413wは、本実施形態のサポートブリッジ部412の幅412wよりも広くなっている。
更に、本実施形態に係るテンソルブリッジ部413には、2つのスリット413cが設けられている。これらのスリット413cは、その長手方向がテンソルブリッジ部413の延在方向に沿うように伸びている。また、各スリット413cは、テンソルブリッジ部413の幅方向中央に設けられている。2つのスリット413cは、基板部11側とサポートブリッジ部412側とにそれぞれ配置されており、基板部11側のスリット413cの長手方向の先に、サポートブリッジ部412側のスリット413cがある。このように、各スリット413cは、テンソルブリッジ部413の延在方向に沿って一列に並べられている。そして、テンソルブリッジ部413は、これらのスリット413cによって2つの分割ブリッジ部413mに分割されている。
図7(a)には、ポンチの突起部の押し当て箇所を符号pで示している。本実施形態では、各スリット413cの間にポンチの突起部が押し当てられる。このため、各スリット413c同士の間隔は、ポンチの突起部との接触面面積を十分確保できる程度の寸法に調整するとよい。ただし、スリット413c同士の間隔が開きすぎると、ポンチの突起部によってテンソルブリッジ部413を変形させた際に、テンソルブリッジ部413の延在方向以外の方向に働く応力成分が増加するおそれがある。これにより、テンソルブリッジ部413と基板部11との間の引張応力が小さくなる場合がある。スリット413cの間隔は、シミュレーション等によって設定するとよい。
なお、基板部11側のスリット413cの長手方向一端は基板部11まで達していない。基板部11およびテンソルブリッジ部413の接続箇所と、スリット413cの長手方向一端との間の直線距離L1は、金属板414の板厚以上の寸法とされている。一方、サポートブリッジ部412側のスリット413cの長手方向他端は、サポートブリッジ部412に達している。これにより、分割ブリッジ部413mがサポートブリッジ部412に直接接続された形になる。これにより、これまでの実施形態の分割ブリッジ部に比べて、本実施形態の分割ブリッジ部413mは有効な長さが延長されることになる。
以上説明したスリット413cが分割ブリッジ部413m同士の間に存在することで、一方の分割ブリッジ部413mと他方の分割ブリッジ部413mとの間では、相互に応力が作用しないようになっている。
図7(a)に示すブランク401は、金属板414に開口部422およびスリット413cを設けることにより製造される。開口部422およびスリット413cの形成方法は、第1の実施形態に例示した方法と同様である。
ブランク401を準備したら、基板部11を拘束した状態で、ブランク401からサポートブリッジ部412とテンソルブリッジ部413をせん断加工により取り除くことにより、湾曲状の端部2を有する金属板を形成する。このとき、第1の実施形態と同様にして、テンソルブリッジ部413に引っ張り応力を印加しながらせん断を行う。
本実施形態では、第1の実施形態と同様にして、基板部11を拘束したまま、ポンチの突起部をテンソルブリッジ部413に押し当てることにより、テンソルブリッジ部413を弾性変形させる。ポンチの突起部は、図7(a)の符号pで示すように、2つのスリット413cの間に押し当てるとよい。これにより、各分割ブリッジ部413mが弾性変形する際の変形量がほぼ同じになり、各分割ブリッジ部413mには引張応力がそれぞれ均等に加わる。そして、テンソルブリッジ部413と基板部11との接続箇所の近傍においては、スリット413cが途切れているため、各分割ブリッジ部413mに印加されていた引張応力が合成されて、テンソルブリッジ部413と基板部11との接続箇所に印加されるようになる。
その後、第1の実施形態と同様にして、ポンチを更に下降させることにより、テンソルブリッジ部413及びサポートブリッジ部412を一体のまま基板部11からせん断する。テンソルブリッジ部413と基板部11との接続箇所に引張応力が付与された状態でせん断されるため、基板部11側のテンソルブリッジ部413のせん断箇所では加工硬化が小さくなる。
加工後の端部2の加工硬化の状況は、図5において説明した第1の実施形態の場合と同様になる。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果の他に、以下に述べる効果も得られる。すなわち、本実施形態によれば、テンソルブリッジ部413の幅が広がった場合であっても、スリット413cを2つ設けることで、テンソルブリッジ部413よりも狭幅の分割ブリッジ部413mを設けることができ、これによりテンソルブリッジ部413の有効幅を実質的に狭くすることができる。これにより、せん断の直前まで、テンソルブリッジ部413と基板部11の状態を単軸引張応力状態に維持でき、加工硬化を小さくすることができる。
また、スリット413cの端部が基板部11まで達していないため、分割ブリッジ部413mにそれぞれ印加されていた引張応力が、基板部11とテンソルブリッジ部413との接続箇所において合成され、より高い引張応力を当該接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化を小さくすることができる。
更に、本実施形態のブランク401は、テンソルブリッジ部413の長手方向に沿って2つのスリット413cを一列に配置するため、分割ブリッジ部413mの有効長さを延長することができる。更に、サポートブリッジ部412側のスリット413cをサポートブリッジ部412まで伸ばすことで、分割ブリッジ部413mの有効長さをより一層延長することができる。これにより、より高い引張応力を基板部11とテンソルブリッジ部413との接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化を小さくすることができる。
一方、分割ブリッジ部413mの有効長さの延長化は、テンソルブリッジ部413の剛性低下を引き起こすおそれがある。本実施形態ではスリット413c同士の間において分割ブリッジ部413mが実質的に接続されるため、テンソルブリッジ部413自体の剛性を高めることができる。これにより、ポンチによってテンソルブリッジ部413を押し下げた際にテンソルブリッジ部413の弾性変形が維持され、十分な引張応力を基板部11とテンソルブリッジ部413との接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化を小さくすることができる。
なお、図7(a)では、ポンチの突起部の押し当て箇所を、スリット413cの間の位置に設定していたが、突起部の押し当て箇所はこれに限らず、図7(c)に示すように、スリット413c同士の間を通り、テンソルブリッジ部413の幅方向に沿って線状に伸びる領域を突起部の押し当て箇所p’としてもよい。この押し当て箇所p’は、分割ブリッジ部413mの幅方向全部に伸びているため、各分割ブリッジ部413を幅方向に渡って均等に押し込むことが出来、より大きな引張応力を基板部11とテンソルブリッジ部413との接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化をより小さくすることができる。
(第4の実施形態)
以下、図8を参照して、本発明の第4の実施形態を説明する。図8は、本実施形態で用いるブランクの平面模式図である。本実施形態と、先に説明した第1の実施形態とを対比すると、基板部とテンソルブリッジ部との接続箇所をせん断してブランクからテンソルブリッジ部を除去する方法は共通するが、テンソルブリッジ部に設けるスリットの位置および数が異なっている。以下の説明では、本実施形態のブランクの形状について主に説明する。
図8(a)及び図8(b)に示すブランクの構成要素のうち、図1(a)及び図2に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。図8(a)及び図8(b)に示す本実施形態のブランク501は、基板部11、サポートブリッジ部512及びテンソルブリッジ部513を有する金属板514からなる。金属板514には、基板部11、サポートブリッジ部512及びテンソルブリッジ部513によって囲まれた開口部522が設けられている。
サポートブリッジ部512は、帯状に形成された直線状の部材であり、湾曲形状の端部2を迂回するようにその両端512aが基板部11に接続されている。直線状のサポートブリッジ部512が湾曲形状の端部2を迂回するように基板部11に接続されることで、サポートブリッジ部512と基板部11の端部2との間に開口部522が設けられる。
テンソルブリッジ部513は、帯状に形成された部材であり、一端513aが湾曲形状の端部2に接続され、他端513bがサポートブリッジ部512に接続されている。他端513bは、サポートブリッジ部512の延在方向の中央に接続されている。
テンソルブリッジ部513の一端部513aから他端部513bに向く方向をテンソルブリッジ部513の延在方向としたとき、サポートブリッジ部512の延在方向とテンソルブリッジ部513の延在方向はほぼ直角に交わっている。また、本実施形態のテンソルブリッジ部513の延在方向に直交する幅513wは、図1に示した第1実施形態のテンソルブリッジ部13の幅13wより広くなっている。また、テンソルブリッジ部513の延在方向に直交する幅513wは、本実施形態のサポートブリッジ部512の幅512wよりも広くなっている。
更に、本実施形態に係るテンソルブリッジ部513には、合計で6つのスリット513cが設けられている。これらのスリット513cは、その長手方向がテンソルブリッジ部513の延在方向に沿うように伸びている。6つのスリット513cは、テンソルブリッジ部513の幅方向に並列に配置され、かつ、テンソルブリッジ部513の長手方向に直列に配置されている。本実施形態では、6つのスリット513cが、3列×2列のマトリックス状に配置されている。より詳細には、スリット513cは、テンソルブリッジ部513の幅方向に沿って所定の間隔をあけて3列に並べられている。また、スリット513cは、テンソルブリッジ部513の延在方向に沿って2列に並べられている。テンソルブリッジ部513はこれらのスリット513cの配置によって4つの分割ブリッジ部に分割されている。
6つのスリット513cは、基板部11側のスリット513cと、サポートブリッジ部512側のスリット513cとに分けられる。基板部11側のスリット513cの長手方向の先にそれぞれ、サポートブリッジ部512側のスリット513cがある。すなわち、基板部11側のスリット513cとサポートブリッジ部512側のスリット513cは、テンソルブリッジ部513の延在方向に沿って一列に並んでいる。
本実施形態では、テンソルブリッジ部513の幅方向中央にある2つのスリット513cの間に、ポンチの突起部が押し当てられる。このため、各スリット513c同士の間隔は、ポンチの突起部との接触面面積を十分確保できる程度の寸法に調整するとよい。ただし、スリット513cの間隔が開きすぎると、ポンチの突起部によってテンソルブリッジ部513を変形させた際に、テンソルブリッジ部513の延在方向以外の方向に働く応力成分が増加するおそれがある。これにより、テンソルブリッジ部513と基板部11との間の引張応力が小さくなる場合がある。スリット513cの間隔は、シミュレーション等によって設定するとよい。
なお、基板部11側のスリット513cの長手方向一端は基板部11まで達していない。基板部11およびテンソルブリッジ部513の接続箇所と、スリット513cの長手方向一端との間の直線距離L1は、金属板514の板厚以上の寸法とされている。一方、サポートブリッジ部512側のスリット513cの長手方向他端は、サポートブリッジ部512に達している。これにより、分割ブリッジ部513mがサポートブリッジ部512に直接接続された形になる。これにより、第1または第2実施形態の分割ブリッジ部に比べて、本実施形態の分割ブリッジ部513mは有効長さが延長されることになる。
以上説明したスリット513cが分割ブリッジ部513m同士の間に存在することで、各分割ブリッジ部513mの間では、相互に応力が作用しないようになっている。
図8(a)に示すブランク501は、金属板514に開口部522およびスリット513cを設けることにより製造される。開口部522およびスリット513cの形成方法は、第1の実施形態に例示した方法と同様である。
ブランク501を準備したら、基板部11を拘束した状態で、ブランク501からサポートブリッジ部512とテンソルブリッジ部513をせん断加工により取り除くことにより、湾曲状の端部2を有する金属板を形成する。このとき、第1の実施形態と同様にして、テンソルブリッジ部513に引っ張り応力を印加しながらせん断を行う。
本実施形態では、第1の実施形態と同様にして、基板部11を拘束したまま、ポンチの突起部をテンソルブリッジ部513に押し当てることにより、テンソルブリッジ部513を弾性変形させる。ポンチの突起部は、図8の符号pで示すように、テンソルブリッジ部513の幅方向中央の2つのスリット513cの間に押し当てるとよい。これにより、各分割ブリッジ部513mが弾性変形する際の変形量がほぼ同じになり、各分割ブリッジ部513mには引張応力がそれぞれ均等に加わる。そして、テンソルブリッジ部513と基板部11との接続箇所の近傍においては、スリット513cが途切れているため、各分割ブリッジ部513mに印加されていた引張応力が合成されて、テンソルブリッジ部513と基板部11との接続箇所に印加されるようになる。
その後、第1の実施形態と同様にして、ポンチを更に下降させることにより、テンソルブリッジ部513及びサポートブリッジ部512を一体のまま基板部11からせん断する。テンソルブリッジ部513と基板部11との接続箇所に引張応力が付与された状態でせん断されるため、基板部11側のテンソルブリッジ部513のせん断箇所では加工硬化が小さくなる。
加工後の端部2の加工硬化の状況は、図5において説明した第1の実施形態の場合と同様になる。
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様な効果の他に、以下に述べる効果も得られる。すなわち、本実施形態によれば、テンソルブリッジ部513の幅が広がった場合であっても、スリット513cを6つ設けることで、テンソルブリッジ部513よりも狭幅の分割ブリッジ部513mを設けることができ、これによりテンソルブリッジ部513の有効幅を実質的に狭くすることができる。これにより、せん断の直前まで、テンソルブリッジ部513と基板部11の状態を単軸引張応力状態に維持でき、加工硬化を小さくすることができる。
また、スリット513cの端部が基板部11まで達していないため、分割ブリッジ部513mにそれぞれ印加されていた引張応力が、基板部11とテンソルブリッジ部513との接続箇所において合成され、より高い引張応力を当該接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化を小さくすることができる。
更に、本実施形態のブランク501は、テンソルブリッジ部513の長手方向に沿ってスリット513cを一列に配置するため、分割ブリッジ部513mの有効長さを延長することができる。更に、サポートブリッジ部512側のスリットをサポートブリッジ部512まで伸ばすことで、分割ブリッジ部513mの有効長さをより一層延長することができる。これにより、より高い引張応力を基板部11とテンソルブリッジ部513との接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化を小さくすることができる。
一方、分割ブリッジ部513mの有効長さの延長化は、テンソルブリッジ部513の剛性低下を引き起こすおそれがあるが、本実施形態ではスリット513c同士の間において分割ブリッジ部513mが実質的に接続されるため、テンソルブリッジ部513自体の剛性を高めることができる。これにより、ポンチによってテンソルブリッジ部513を押し下げた際にテンソルブリッジ部513の弾性変形が維持され、十分な引張応力を基板部11とテンソルブリッジ部513との接続箇所に印加することができ、せん断後の加工硬化を小さくすることができる。
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。図9及び図10に示すように本実施形態では、打ち抜き加工時のブランク1の下側に、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13の塑性変形を防止するための補助パッド6を配置する。補助パッド6を用いること以外は、図1〜図4に示した第1実施形態の打ち抜き加工方法とほぼ同じであるので、図9及び図10に示す構成要素のうち、図1〜図4に示す構成要素と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
図1〜図4に示す例では、パンチ3によってサポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13を押し下げた際に、サポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13の端部がダイ刃4fに強く押し当てられ、ダイ刃4fに当接した箇所において各ブリッジ部12,13が塑性変形する場合がある。特に本発明では、テンソルブリッジ部13にスリット13cが設けられているため、テンソルブリッジ部13が塑性変形しやすい。そこで、本実施形態では、ブランク1を挟んでパンチ3と対向する位置に補助パッド6を配置し、突起部3bに押された各ブリッジ部12、13を補助パッド6の補助突起部6aで支持しつつ、せん断を行う。
図9(b)及び図10(b)に示すように、補助パッド6は、パッド本体6bと、パッド本体6bの上面部6cに設けられた補助突起部6aとを備えている。また、補助パッド6の下部には、図示略のばね等の弾性体が取り付けられている。
パッド本体6bは、上面部6cを有しており、上面部6cに補助突起部6aが設けられている。パッド本体6bの上面部6cの平面視形状は、パンチ本体3aの底面部3cの平面視形状とほぼ同じ形状とされている。
補助突起部6aは、平面視形状は直線状であり、断面視形状は半円状の突起である。図9(a)及び図10(a)に示すように、補助突起部6aの位置は、突起部3bによる各ブリッジ部12、13の押し当て箇所よりも基板部11側であるとよい。本実施形態では、突起部3bの押し当て箇所がサポートブリッジ部12とテンソルブリッジ部13との接続箇所に近い場所であるため、補助突起部6aの位置は、各ブリッジ部12、13と基板部との接続箇所に近い位置にするとよい。
次に、図9及び図10を参照して、テンソルブリッジ部13に張力を与えながらサポートブリッジ部12及びテンソルブリッジ部13を打ち抜く方法について説明する。図9(a)は、ブランク1、突起部3b及び補助突起部6aの位置関係を示す平面図であり、図9(b)〜(d)は、図9(a)のAA’線に対応する断面図である。図10(a)は、図9(a)と同様にブランク1、突起部3b及び補助突起部6aの位置関係を示す平面図であり、図10(b)〜(d)は、図10(a)のBB’線に対応する断面図である。
図9(b)及び図10(b)に示すように、例えば下側から順に、補助パッド6、ダイ4、拘束パッド5及びパンチ3の順に配置する。ブランク1は、ダイ4と拘束パッド5の間に配置する。ダイ4と拘束パッド5によるブランク1の拘束領域は、第1の実施形態と同様に、基板部11の全面である。
次いで、パンチ3を下降させて、突起部3bの先端をブリッジ部12、13の上面に当接させる。更に、補助パッド6を上昇させて、補助突起部6aの先端を各ブリッジ部12、13の下面に当接させる。補助突起部6aは、各ブリッジ部12、13の基板部11寄りの位置に当接されるようになる。
次に、補助パッド6の上下方向の位置を固定したまま、パンチ3を下降させて突起部3bを各ブリッジ部12、13側に押し込み、各ブリッジ部12、13を弾性変形させる。各ブリッジ部12、13は、補助パッド6の補助突起部6aによって下側から支持されているため、パンチ3の下降に伴って各ブリッジ部12、13が弾性変形する範囲は、補助突起部6aを平面視した場合の突起部3b側の領域となる。一方、各ブリッジ部12、13が補助突起部6aに支持されるため、図9(c)及び図10(c)に示す段階では、各ブリッジ部12、13の基板部11寄りの端部12a、13aは弾性変形されない状態にある。各ブリッジ部12、13は、補助突起部6aによって実質的に拘束されるため、補助突起部6aの内側の領域において各ブリッジ部12、13がパンチ3の突起部3bに押されて下方向に弾性変形する。
補助突起部6aによって拘束されている各ブリッジ部12、13に対して、パンチ3が更に下方に下降させることで、各ブリッジ部12、13が弾性変形し、基板部11に対して引張応力が付与される。引張応力は、特にテンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所に集中する。
そして、図9(d)に示すように、更にポンチ3を下降させると、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所にポンチ刃3fが当たり、ポンチ3によって与えられたせん断応力によって当該接続箇所が塑性変形し、ついにはテンソルブリッジ部13が基板部11からせん断されて切り離される。せん断直前までテンソルブリッジ部13は突起部3bに押されて弾性変形しているため、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所に引張応力が付与された状態でせん断される。これにより、基板部11側のせん断箇所では加工硬化しにくくなる。
また、同時に、図10(d)に示すように、サポートブリッジ部12の両端12aと基板部11との接続箇所にもポンチ刃3fが当たり、サポートブリッジ部12が基板部11からせん断されて切り離される。テンソルブリッジ部13とサポートブリッジ部12は一体のまません断される。サポートブリッジ部12と基板部11との間では引張応力がほとんど生じないため、従来のせん断加工と同様に、基板部11側のせん断箇所では加工硬化が生じる。
以上のように、本実施形態においては、ブランク1を挟んでパンチ3と対向する位置に補助パッド6を配置し、補助パッド6には、突起部3bの押し当て箇所よりも基板部11側で各ブリッジ部12、13に接する補助突起部6aが備えられており、突起部3bに押されたテンソルブリッジ部13を補助突起部6aで支持しつつ、せん断加工を行う。これにより、突起部3bを各ブリッジ部12、13に押し込んだ際に、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所が塑性変形して、引張張力が低減するおそれがあるところ、補助パッド6によって突起部3bの押し当て箇所よりも基板部11側でテンソルブリッジ部13を支持することで、テンソルブリッジ部13と基板部11との接続箇所における塑性変形が抑制され、当該接続箇所に十分な引張応力を印加できるようになる。
(第6の実施形態)
以上、本発明を各実施形態によって説明したが、本発明は、自動車部品の製造に適用可能である。以下、図11〜図17を参照して、自動車用のセンターピラーの製造方法について説明する。
図11は、自動車用のセンターピラー701であり、図中左側の長手方向一端701aにルーフパネルが接続されるようになっており、図中右側の他端701bにはサイドシルパネルが接続されるようになっている。このセンターピラー701は、ピラー本体702と、ピラー本体702の図中左側に設けられた第1接続部703と、ピラー本体702の図中右側に設けられた第2接続部704とからなる。第1接続部703にルーフパネルが接合され、第2接続部704にサイドシルパネルが接合される。第2接続部704は、ピラー本体702の長手方向に対して直交する方向に延在している。また、ピラー本体702、第1接続部703及び第2接続部704にはそれぞれ、幅方向両側または片側にフランジ部705がある。
ピラー本体702は、長手方向に直交する方向の断面形状がハット形形状となっている。すなわち、ピラー本体702は、ウエブ部702aと、ウエブ部702aの幅方向両側に接続された縦壁部702bと、縦壁部702bに接続されたフランジ部705とを備えている。ウエブ部702a、縦壁部702b及びフランジ部705は、第1接続部703及び第2接続部704まで延在している。
フランジ部705の形状について説明すると、ピラー本体702と第2接続部704との接続箇所近傍のフランジ部705は、90°に近い角度で曲げられており、この部分におけるフランジ部705の端部706は、凹状に湾曲した形状になっている。図11では、端部706を含む領域を領域Aとして示している。
同様に、ピラー本体702と第1接続部703との接続部分におけるフランジ部705は、90°に近い角度で曲げられており、この部分におけるフランジ部705の端部707は、凹状に湾曲した形状になっている。図11では、端部707を含む領域を領域Bとして示している。
図12には、センターピラー701のブランク800を示す。ブランク800は、高強度鋼板をせん断加工によって打ち抜いて成形されてなるものである。ブランク800は、その端面801の全部がせん断によって形成されており、端面801の全部に加工硬化が生じている。図11に示すセンターピラー701は、図12のブランク800をプレス成形することによって製造される。ここで、ブランク800の領域A及び領域Bにおける端面801は、プレス成形される際に、端面801の延在方向に沿って引張応力を受ける。ブランク800の端面801はせん断加工によって加工硬化が生じており、成形後のフランジ部705の端部706、707は、この加工硬化を受けた部位に対応する。このため、所定形状に形成したブランク800をセンターピラー701に加工するためにプレス成形を行うと、フランジ部705の端部706、707において割れが発生するおそれがある。フランジ部705の割れは、鋼板強度が高くなるほど顕著に発生する。
プレス成形後に割れが発生し得る箇所は、有限要素法などのシミュレーション技術によって予め予測可能である。そこで、割れが発生し得る箇所に対して、本発明の金属板の打ち抜き加工方法を適用するとよい。
図13に、本発明の金属板の打ち抜き加工方法を適用したブランク900の形状を示す。このブランク900の領域A、領域Bの対応する箇所に、サポートブリッジ部及びテンソルブリッジ部が備えられている。
図13及び図15に示すように、領域Aには、ブランク900を構成する基板部911に凹状の湾曲形状の端部902がある。この端部902には、湾曲形状の端部902を迂回するように両端が基板部911に接続されたサポートブリッジ部912と、一端が湾曲形状の端部902に接続されるとともに他端がサポートブリッジ部912に接続された1つのテンソルブリッジ部913が備えられている。テンソルブリッジ部913には、基板部902に向かう方向に沿って延在する3つのスリット913cが設けられている。サポートブリッジ部912は、直線部912aと接続部912bとからなり、平面視で屈曲した形状になっている。直線部912aの一端が基板部911に接続されており、直線部912aの他端は接続部912bに接続されており、接続部912bが基板部911に接続されている。領域Aにおけるテンソルブリッジ部913は、比較的幅が広いため、スリット913cを設ける必要がある。スリットの要否判断は、例えば、有限要素法を利用したシミュレーションによって、テンソルブリッジ部の弾性変形時の引張応力を予測し、引張応力の予測値があらかじめ設定された基準値を満たさない場合に、スリットを設けるようにするとよい。
図13及び図14に示すように、領域Bには、ブランク900を構成する基板部911に凹状の湾曲形状の端部952がある。この端部952には、湾曲形状の端部952を迂回するように両端が基板部911に接続されたサポートブリッジ部962と、一端が湾曲形状の端部952に接続されるとともに他端がサポートブリッジ部962に接続された1つのテンソルブリッジ部963が備えられている。サポートブリッジ部962は、直線部962aと接続部962bとからなり、平面視で屈曲した形状になっている。直線部962aの一端が基板部911に接続されており、直線部962aの他端は接続部962bに接続されており、接続部962bが基板部911に接続されている。領域Bにおけるテンソルブリッジ部963は、比較的幅が狭いため、スリットを設ける必要はない。スリットの要否判断は、領域Aの場合と同様に行い、引張応力の予測値があらかじめ設定された基準値を満たす場合に、スリットを設けないと判断するとよい。
そして、第1〜第5の実施形態と同様に、ダイとしわ押さえによって基板部911を拘束した状態で、サポートブリッジ部912,962及びテンソルブリッジ部913、963と、基板部911との接続箇所を、突起部を有するポンチによってせん断する。このとき、ポンチの突起部の押し当て箇所は、図14及び図15の符号pに示す位置とすることが好ましい。
ポンチをブランクに接近させることによって、ポンチの突起部がテンソルブリッジ部913、963を押し下げ、テンソルブリッジ部913、963と基板部911との間に引張応力が生じる。更に、ポンチを押し下げることで、引張応力を印加させつつ、テンソルブリッジ部913、963と基板部911との接続箇所がせん断されて切り離される。基板部911におけるせん断箇所では、加工硬化が小さくなる。図16に、せん断加工後のブランク900を示す。ブランク900の端面のうち、テンソルブリッジ部913、963がせん断された箇所を符号a及びbで示す。このせん断箇所における加工硬化量は、他の箇所における加工硬化量に対して小さくなっている。
そして、加工硬化量が部分的に低減されたブランク900に対してプレス成形を行うことで、図17に示すセンターピラー901が得られる。センタ−ピラーの領域A及びBでは、割れが生じない。
以上説明したように、センターピラーのような自動車部品をプレス成形法により製造する際に、本発明の金属板の打ち抜き方法を適用して、ブランクのうち凹形状となる端部の加工硬化量を小さくさせることで、割れを生じさせずにプレス成形を行うことが可能になる。