JP2021062382A - 自動車用パネルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より先鋭なキャラクタラインを形成できるとともに、製造コストの増加及び製造される自動車用パネルの歩留まりの低下を抑制でき、且つ、製造された自動車用パネルに成形痕が残るのを防ぐことが可能な自動車用パネルの製造方法を提供する。【解決手段】自動車用パネル1の製造方法は、ダイ20とパンチ10との間でブランク材100の成形対象領域101を目標形状に成形する成形工程を備え、成形工程は、パンチ突出部12によってキャラクタライン形成箇所103をダイ20へ向かって押して成形対象領域101を曲げ変形させる押し曲げ工程と、押し曲げ工程の後、成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103に対して一方側に隣接した隣接箇所104をダイ突出部28によってパンチ10の窪み部17内に押し込む押し込み工程と、を含む。【選択図】図4

Description

本発明は、自動車用パネルの製造方法に関する。
従来、自動車用パネルとして、例えば自動車のドアの外面を構成するアウタパネルが知られている。このアウタパネルは、金属製の板材をプレス成形することによって製造される。アウタパネルには稜線をなすキャラクタラインが意匠性のために施され、近年では、意匠性の向上のためにキャラクタラインがより先鋭であることが求められているが、従来の製造方法によって板材をより先鋭なキャラクタラインを有する形状にプレス成形すると成形不良や面性状の不良が生じる虞があった。下記特許文献1では、成形不良及び面性状の不良の発生を抑制しつつ、より先鋭なキャラクタラインを形成することが可能なアウタパネルの製造方法が提案されている。
具体的に、下記特許文献1に提案された製造方法では、二段階のプレス成形でアウタパネルを製造しており、当該製造方法は、まず板材を中間形状にプレス成形する第1プレス工程と、その第1プレス工程で成形された中間形状の板材を先鋭なキャラクタラインを有する最終的なアウタパネルの目標形状に成形する第2プレス工程とを有する。前記中間形状は、キャラクタライン付近のみ目標形状よりも曲率半径が大きく緩やかに湾曲した形状であり、キャラクタライン付近以外は目標形状に等しい形状である。第1プレス工程において、このような中間形状に板材を一旦成形してから、第2プレス工程で先鋭なキャラクタラインを成形することにより、成形不良及び面性状の不良の発生を抑制しつつ、先鋭なキャラクタラインを形成することが可能となっている。
特許第5959702号公報
しかしながら、特許文献1に開示された製造方法では、製造コストが増大するとともに、製造されるアウタパネルの歩留まりが低下する虞があり、また、成形痕がアウタパネルに残る虞がある。
具体的には、特許文献1に開示された製造方法では、第1プレス工程で板材を中間形状に成形するための金型と、第2プレス工程で板材を目標形状に成形するための金型とを個別に用意する必要があるため、金型のためのコストが増加し、その結果、製造コストが増大する。また、板材を目標形状に成形する工程を第1プレス工程と第2プレス工程の2回の工程に分けて行うことから、その各プレス工程毎に歩留まりが生じ、最終的に製造されるアウタパネルの歩留まりが低下する。また、第1プレス工程で板材を中間形状に成形する際についた成形痕は第2プレス工程で解消されず、その成形痕が最終的に製造されたアウタパネルに残る虞がある。
本発明の目的は、より先鋭なキャラクタラインを形成できるとともに、製造コストの増加及び製造される自動車用パネルの歩留まりの低下を抑制でき、且つ、製造された自動車用パネルに成形痕が残るのを防ぐことが可能な自動車用パネルの製造方法を提供することである。
本発明により提供される自動車用パネルの製造方法は、板状のブランク材をプレス成形することにより、キャラクタラインを有する目標形状の自動車用パネルを製造する方法である。この製造方法は、ダイとパンチとの間に前記ブランク材を配置し、そのブランク材のうち前記目標形状に成形される成形対象領域の周りの周辺部をホルダで保持する保持工程と、前記ダイと前記パンチの一方を他方へ接近させることにより前記ダイと前記パンチとの間で前記成形対象領域を前記目標形状に成形する成形工程と、を備える。前記パンチのうち前記成形対象領域に対向する面であるパンチ対向面は、前記成形対象領域へ向かって突出するパンチ突出部と、前記パンチ突出部に対して一方側に隣接した箇所において前記成形対象領域から離れる向きに窪んだ第1窪み部と、を有する。前記ダイのうち前記成形対象領域に対向する面であるダイ対向面は、前記第1窪み部と対向する箇所に設けられた第1突出部を有する。前記成形工程は、前記パンチ突出部によって前記成形対象領域のうち前記キャラクタラインが形成される箇所であるキャラクタライン形成箇所を前記ダイへ向かって押して前記成形対象領域を曲げ変形させる押し曲げ工程と、前記押し曲げ工程の後、前記成形対象領域のうち前記キャラクタライン形成箇所に対して一方側に隣接した第1隣接箇所を前記第1突出部によって前記パンチの前記第1窪み部内に押し込む押し込み工程と、を含む。
この自動車用パネルの製造方法では、パンチ突出部によってブランク材の成形対象領域のうちのキャラクタライン形成箇所を押してその成形対象領域を曲げ変形させた後、ダイの第1突出部によってキャラクタライン形成箇所に隣接する第1隣接箇所をパンチ対向面のうちパンチ突出部に隣接した第1窪み部内に押し込むため、パンチ突出部に対するキャラクタライン形成箇所付近の接触面積を拡大させてパンチ突出部からキャラクタライン形成箇所付近に加えられる荷重を分散させることができ、その結果、キャラクタライン形成箇所における局所的な板厚の減少を抑制して、より先鋭なキャラクタラインをキャラクタライン形成箇所の外面に形成することができる。
具体的に、この製造方法では、成形工程の押し曲げ工程においてパンチ突出部によりキャラクタライン形成箇所をダイへ向かって押して成形対象領域を曲げ変形させた後、押し込み工程において成形対象領域のうちキャラクタライン形成箇所に対して一方側に隣接した第1隣接箇所をダイの第1突出部によってパンチの第1窪み部内に押し込むことにより、キャラクタライン形成箇所から第1隣接箇所に亘る部分がパンチ突出部の外面に沿うように曲げ変形され、パンチ突出部に対するキャラクタライン形成箇所付近の接触面積を拡大させることができる。これにより、パンチ突出部からキャラクタライン形成箇所付近に加えられる荷重を分散させることができ、その荷重によって生じるキャラクタライン形成箇所から両外側への引っ張り方向の歪みをより広い範囲に分散させることができる。このため、引っ張り方向の歪みに起因する板厚の減少がキャラクタライン形成箇所とそれに近い限られた範囲に局所的に生じるのを抑制でき、その板厚の減少によって生じるキャラクタライン形成箇所付近の外面の扁平化を抑制できる。その結果、より先鋭なキャラクタラインをキャラクタライン形成箇所の外面に形成することができる。
しかも、この製造方法では、1回の成形工程でダイ及びパンチを交換せずにブランク材の成形対象領域をキャラクタラインを有する目標形状にプレス成形することができるので、従来のように金型を交換して二段階のプレス成形を行う場合に比べて金型のためのコストを削減でき、その結果、自動車用パネルの製造コストの増加を抑制できる。また、プレス成形を、金型を交換して二段階に分けて行う場合には、各段階毎に歩留まりが生じるため、最終的に製造される自動車用パネルの歩留まりは低下するが、この製造方法では、ダイ及びパンチを交換せずに1回の成形工程で成形対象領域を目標形状に成形できるので、製造される自動車用パネルの歩留まりの低下を抑制できる。さらに、二段階のプレス成形を行う場合には、一段階目のプレス成形でブランク材についた成形痕が最終的に製造される自動車用パネルに残る虞があるが、この製造方法では1回の成形工程で成形対象領域を目標形状に成形できるので、自動車用パネルに一段階目のプレス成形による成形痕が残るのを防ぐことができる。
前記パンチ対向面は、前記パンチ突出部に対して前記第1窪み部と反対側に隣接した箇所において前記成形対象領域から離れる向きに窪んだ第2窪み部をさらに有し、前記ダイ対向面は、前記第2窪み部と対向する箇所に設けられた第2突出部をさらに有し、前記押し込み工程では、前記成形対象領域の前記第1隣接箇所を前記第1突出部によって前記第1窪み部内に押し込むとともに、前記成形対象領域のうち前記キャラクタライン形成箇所に対して前記第1隣接箇所と反対側に隣接した第2隣接箇所を前記第2突出部によって前記第2窪み部内に押し込むことが好ましい。
こうすれば、成形対象領域のうちキャラクタライン形成箇所に対して一方側に隣接した第1隣接箇所に加えて、キャラクタライン形成箇所に対して第1隣接箇所と反対側に隣接した第2隣接箇所もパンチ側へ押し込んで、キャラクタライン形成箇所から一方側の第1隣接箇所に亘る部分だけでなくキャラクタライン形成箇所から反対側の第2隣接箇所に亘る部分もパンチ突出部の外面に沿うように曲げ変形させることができる。このため、パンチ突出部の外面に対する成形対象領域のキャラクタライン形成箇所付近の接触面積をより拡大することができ、そのパンチ突出部からキャラクタライン形成箇所付近に加えられる荷重をより分散させることができる。その結果、パンチ突出部から加えられる荷重に起因してキャラクタライン形成箇所付近に生じる引っ張り方向の歪みをキャラクタライン形成箇所から両外側のより広い範囲に分散させることができ、その引っ張り方向の歪みに起因する板厚の減少がキャラクタライン形成箇所付近に局所的に生じるのをより一層抑制できる。そのため、キャラクタライン形成箇所付近の外面の扁平化をより抑制でき、より先鋭なキャラクタラインをキャラクタライン形成箇所の外面に形成することができる。また、ダイの第1突出部によって第1隣接箇所をパンチの第1窪み部内に押し込むとともにダイの第2突出部によって第2隣接箇所をパンチの第2窪み部内に押し込むことにより、キャラクタライン形成箇所付近の外面の曲率半径がより小さくなるようにそのキャラクタライン形成箇所付近を曲げ変形させることができる。このことによっても、キャラクタライン形成箇所の外面に形成されるキャラクタラインをより先鋭化させることができる。
以上のように、本発明の自動車用パネルの製造方法によれば、より先鋭なキャラクタラインを形成できるとともに、製造コストの増加及び製造される自動車用パネルの歩留まりの低下を抑制でき、且つ、製造された自動車用パネルに成形痕が残るのを防ぐことができる。
本発明の第1実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第1実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第1実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第1実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 図4中のキャラクタライン形成箇所付近の拡大図である。 実施例による自動車用パネルの製造方法でブランク材の成形対象領域をプレス成形した場合にキャラクタライン形成箇所付近及びその隣接箇所に生じる相当塑性歪みの分布図である。 実施例による自動車用パネルの製造方法の成形工程においてブランク材の成形対象領域をパンチ突出部で曲げ変形させた後、キャラクタライン形成箇所に隣接する隣接箇所をダイの突出部で押し込む前の状態でキャラクタライン形成箇所付近に生じている相当塑性歪みの分布図である。 図7に示した状態からキャラクタライン形成箇所に隣接する隣接箇所をダイの突出部で押し込んだ後にキャラクタライン形成箇所付近及び隣接箇所付近に生じる相当塑性歪みの分布図である。 比較例による自動車用パネルの製造方法で用いられるパンチのパンチ突出部付近及びそれに対向するダイ対向面の底部付近の縦断面の拡大図である。 比較例による自動車用パネルの製造方法でブランク材の成形対象領域をプレス成形した場合にキャラクタライン形成箇所付近に生じる相当塑性歪みの分布図である。 本発明の第2実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態による自動車用パネルの製造工程を模式的に示す縦断面図である。 前記第2実施形態の第1変形例による自動車用パネルの製造方法で用いられるパンチのパンチ突出部付近及びそれに対向するダイ対向面の底部付近の縦断面の拡大図である。 前記第2実施形態の第2変形例による自動車用パネルの製造方法で用いられるパンチのパンチ突出部付近及びそれに対向するダイ対向面の底部付近の縦断面の拡大図である。 前記第2実施形態の第3変形例による自動車用パネルの製造方法で用いられるパンチのパンチ突出部付近及びそれに対向するダイ対向面の底部付近の縦断面の拡大図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明の第1実施形態による自動車用パネル1の製造工程を模式的に示している。図1〜図4では、自動車用パネル1と、その自動車用パネル1の素材であるブランク材100と、自動車用パネル1をプレス成形するための金型であるパンチ10及びダイ20と、ブランク材100を保持するためのホルダ30とが、自動車用パネル1に形成されるキャラクタライン2と交差し且つブランク材100のプレス方向に沿う方向の縦断面で示されている。また、図5は、図4中のキャラクタライン形成箇所103付近の拡大図である。
当該第1実施形態による製造方法では、ブランク材100をプレス成形することにより、稜線であるキャラクタライン2を有する目標形状の自動車用パネル1(図4参照)を製造する。この自動車用パネル1の形状は、キャラクタライン2を頂点として屈曲した形状である。
当該第1実施形態による製造方法では、まず、パンチ10及びダイ20を用意する。
パンチ10は、後述の成形工程においてブランク材100のうち目標形状に成形される成形対象領域101と対向する面であるパンチ対向面11を有する。パンチ10は、成形対象領域101側へ向かうにつれて幅が小さくなるように山型をなす部分を有しており、その山型の部分の外面であって成形対象領域101と対向する面がパンチ対向面11となっている。
パンチ対向面11は、成形対象領域101へ向かって突出するパンチ突出部12を有する。パンチ突出部12は、パンチ10の幅方向の中央に位置している。なお、幅方向は、自動車用パネル1に形成されるキャラクタライン2に対して交差し且つプレス方向に対して直交する方向に相当し、各図における左右方向に相当する。パンチ突出部12は、後述の成形工程において成形対象領域101に押し当てられる部分であり、パンチ10の山型をなす部分のうち成形対象領域101側へ最も突出した頂部に相当する。パンチ突出部12の外面は凸状の曲面となっており、後述の成形工程において、このパンチ突出部12の外面が成形対象領域101に押し当てられる。
また、パンチ対向面11は、パンチ突出部12に対して一方側に隣接した箇所において成形対象領域101から離れる向きに窪んだ窪み部17を有する。具体的に、パンチ対向面11は、パンチ突出部12を挟んで両側にそれぞれ位置する第1外側面部14と第2外側面部16とを有しており、窪み部17は、その第1外側面部14と第2外側面部16とのうちの一方側の第2外側面部16に設けられている。窪み部17は、本発明における第1窪み部の一例である。
第1外側面部14は、前記幅方向においてパンチ突出部12から離れるにつれてパンチ突出部12の突出方向と反対方向へ向かうように延びる斜面となっている。
第2外側面部16は、前記幅方向において窪み部17よりもパンチ突出部12から離れた位置にある斜面部18を有する。この斜面部18は、前記幅方向においてパンチ突出部12から離れるにつれてパンチ突出部12の突出方向と反対方向へ向かうように傾斜している。窪み部17は、斜面部18をパンチ突出部12側へ延長した延長線上よりも窪んでいる。
ダイ20は、後述の成形工程においてブランク材100の成形対象領域101と対向する面であるダイ対向面22と、そのダイ対向面22の周りに位置する外周部24と、を有する。
ダイ対向面22は、全体的にパンチ対向面11の形状に対応した形状で窪んでいる。ダイ対向面22は、後述のようにプレス成形装置にパンチ10及びダイ20が装着された状態で当該ダイ対向面22のうちパンチ対向面11の窪み部17と対向する箇所に設けられたダイ突出部28を有する。ダイ突出部28は、本発明における第1突出部の一例である。ダイ突出部28は、成形対象領域101へ向かって突出する。
また、ダイ対向面22は、底部25と、第1内側面部26と、第2内側面部27と、を有する。
底部25は、ダイ対向面22のうちで最も窪んだ箇所であり、前記幅方向におけるダイ対向面22の中央に位置する。この底部25は、後述のようにプレス成形装置にパンチ10及びダイ20が装着された状態で、そのパンチ10とダイ20によるプレス方向においてパンチ突出部12と対向する位置に設けられている。また、この底部25は、後述の成形工程においてブランク材100のキャラクタライン形成箇所103とプレス方向において対向する。
第1内側面部26と第2内側面部27は、底部25を挟んで両側にそれぞれ位置している。第1内側面部26は、後述のようにプレス成形装置にパンチ10及びダイ20が装着された状態でプレス方向に沿う方向においてパンチ10の第1外側面部14と対向するように配置される。第1内側面部26は、パンチ10の第1外側面部14と同様の傾斜角度を有する斜面であり、後述のようにプレス成形装置にパンチ10及びダイ20が装着された状態でパンチ10の第1外側面部14と平行に配置される。第1内側面部26は、前記幅方向において底部25から離れるにつれて成形対象領域101側へ向かうように傾斜している。
第2内側面部27は、後述のようにプレス成形装置にパンチ10及びダイ20が装着された状態でプレス方向に沿う方向においてパンチ10の第2外側面部16と対向するように配置される。第2内側面部27は、パンチ10の第2外側面部16の形状と対応した形状を有する。前記ダイ突出部28は、この第2内側面部27のうち前記底部25に隣接した箇所に設けられている。第2内側面部27は、前記幅方向においてダイ突出部28よりも底部25から離れた位置にある斜面部29を有する。この斜面部29は、プレス成形装置にパンチ10及びダイ20が装着された状態でパンチ10の第2外側面部16の斜面部18とプレス方向に沿う方向において対向するように配置され、その第2外側面部16の斜面部18と平行に配置される。この第2内側面部27の斜面部29は、前記幅方向において底部25から離れるにつれて成形対象領域101側へ向かうように傾斜している。
そして、当該第1実施形態による製造方法では、以上のような構成のパンチ10とダイ20を図略のプレス成形装置に装着する。この際、ダイ20とパンチ10とを上下に分かれて配置するとともに、ダイ20をそのダイ対向面22が下向きになる姿勢で配置し、パンチ10を、そのパンチ対向面11が上向きになる姿勢で且つそのパンチ対向面11がダイ対向面22の真下に位置するように配置する(図1参照)。より具体的には、パンチ突出部12がダイ対向面22の底部25の真下に位置するとともに、第1内側面部26がプレス方向に沿う方向(上下方向)において第1外側面部14と対向し、且つ、第2内側面部27がプレス方向に沿う方向(上下方向)において第2外側面部16と対向するように、パンチ10をダイ20に対して配置する。また、パンチ10は、その中心軸がプレス成形装置によるプレス方向に沿う姿勢で配置される。
次に、図1に示すように、ブランク材100をホルダ30によって保持する保持工程を行う。この保持工程では、ブランク材100のうち成形対象領域101の周りの周辺部102をホルダ30で保持する。そして、この保持工程では、ダイ対向面22に対して成形対象領域101が対向するようにブランク材100が配置された状態で当該ブランク材100の周辺部102をダイ20に対してホルダ30で固定することによって保持する。
具体的に、ブランク材100は、アルミニウムや鋼等の金属製の平板である。当該保持工程では、ブランク材100の成形対象領域101がダイ対向面22の真下に位置するとともにパンチ対向面11の上方でそのパンチ対向面11に対向するように配置され、その状態でブランク材100のうち成形対象領域101の周りに位置する部分である周辺部102をダイ20の外周部24に対してホルダ30で挟み込むことによって保持する。これにより、周辺部102は、ダイ20に対して固定される。このダイ20とホルダ30との間での周辺部102の保持力は、後述の成形工程においてブランク材100の成形対象領域101がパンチ10によって押されて曲げ変形されるときに、当該周辺部102が幅方向内側へ移動するのを阻止可能な大きさの力である。
次に、ブランク材100の成形対象領域101を前記目標形状にプレス成形する成形工程を行う。この成形工程は、パンチ突出部12によって成形対象領域101のうちキャラクタライン2が形成される箇所であるキャラクタライン形成箇所103をダイ対向面22へ向かって押して成形対象領域101を曲げ変形させる押し曲げ工程と、その押し曲げ工程の後、成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103に対して一方側に隣接する隣接箇所104をダイ突出部28によってパンチ10の窪み部17内に押し込む押し込み工程とを、含む。
具体的に、この成形工程では、プレス成形装置により、ダイ20をパンチ10へ向かって降下させる(接近させる)。それによって、図2に示すように、ダイ20に固定されたブランク材100の成形対象領域101のキャラクタライン形成箇所103をパンチ突出部12に押し当てて、当該成形対象領域101を、キャラクタライン形成箇所103を頂点として曲げ変形させる。これにより、前記押し曲げ工程が行われる。この押し曲げ工程において、成形対象領域101及びパンチ対向面11がダイ対向面22によって囲まれた空間内に入り込む。
そして、図3に示すように、ダイ20がさらに降下してパンチ10にさらに接近し、曲げ変形された成形対象領域101がダイ対向面22に接触する。具体的には、成形対象領域101のうち幅方向においてキャラクタライン形成箇所103に対して隣接した隣接箇所104が、ダイ突出部28に接触する。
その後、図4に示すように、ダイ20が、さらに降下してパンチ10にさらに接近し、下死点に達する。この成形工程の終期において、前記押し込み工程が行われる。すなわち、ダイ突出部28が成形対象領域101の隣接箇所104をパンチ10の窪み部17内に押し込む。その結果、成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103から隣接箇所104に亘る部分がパンチ突出部12の外面に沿うように曲げられる。以上のようにして、成形対象領域101が前記目標形状に成形されてキャラクタライン形成箇所103の外面にキャラクタライン2が形成される。
以上の成形工程、すなわち前記押し曲げ工程から前記押し込み工程に亘る工程は連続的に行われる。具体的には、ダイ20は、下死点に達するまで連続的に降下し、成形対象領域101はキャラクタライン2を有する前記目標形状になるまで連続的にプレス成形される。
当該第1実施形態による自動車用パネル1の製造方法は、以上のように行われる。
当該第1実施形態による製造方法では、成形工程において、パンチ突出部12によってキャラクタライン形成箇所103を押してブランク材100の成形対象領域101を曲げ変形させた後、ダイ突出部28によってキャラクタライン形成箇所103に隣接する隣接箇所104をパンチ突出部12に隣接した窪み部17内に押し込むため、パンチ突出部12に対するキャラクタライン形成箇所103付近の接触面積を拡大させることができ、その結果、キャラクタライン形成箇所103における局所的な板厚の減少を抑制して、より先鋭なキャラクタライン2をキャラクタライン形成箇所103の外面に形成することができる。
具体的に、成形工程において、ブランク材100の周辺部102がダイ20とホルダ30とによって固定された状態でパンチ突出部12によりキャラクタライン形成箇所103を押して成形対象領域101を曲げ変形させる過程では、パンチ突出部12からキャラクタライン形成箇所103に加えられる荷重により、キャラクタライン形成箇所103から両外側への引っ張り方向の歪みが生じる。この引っ張り方向の歪みは、パンチ突出部12と接触するキャラクタライン形成箇所103とそれに近い限られた範囲に局所的に生じる。この引っ張り方向の歪みにより、キャラクタライン形成箇所103から両外側へ材料が流れてキャラクタライン形成箇所103付近の板厚が減少するが、この板厚の減少は、キャラクタライン形成箇所103付近に局所的に生じる。そして、この板厚の減少により、キャラクタライン形成箇所103付近の外面が局所的に扁平化してその外面に形成されるキャラクタライン2の先鋭度が低下する。
これに対し、当該第1実施形態による製造方法では、成形工程の押し曲げ工程においてパンチ突出部12によりキャラクタライン形成箇所103をダイ20へ向かって押して成形対象領域101を曲げ変形させた後、押し込み工程において成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103に対して一方側に隣接した隣接箇所104をダイ突出部28によってパンチ10の窪み部17内に押し込むことにより、キャラクタライン形成箇所103から隣接箇所104に亘る部分がパンチ突出部12の外面に沿うように曲げ変形され、パンチ突出部12に対するキャラクタライン形成箇所103付近の接触面積を拡大させることができる。これにより、パンチ突出部12からキャラクタライン形成箇所103付近に加えられる荷重を分散させることができ、その荷重によって生じるキャラクタライン形成箇所103から両外側への引っ張り方向の歪みもより広い範囲に分散させることができる。このため、引っ張り方向の歪みに起因する板厚の減少がキャラクタライン形成箇所103とそれに近い限られた範囲に局所的に生じるのを抑制でき、その板厚の減少によって生じるキャラクタライン形成箇所103付近の外面の扁平化を抑制できる。その結果、より先鋭なキャラクタライン2をキャラクタライン形成箇所103の外面に形成することができる。
しかも、当該第1実施形態による製造方法では、1回の連続的なプレス成形(成形工程)で、ブランク材100の成形対象領域101を、キャラクタライン2を有する目標形状に成形できる。このため、従来のように金型を交換して二段階のプレス成形を行う場合に比べて金型のためのコストを削減でき、その結果、自動車用パネル1の製造コストの増加を抑制できる。
また、プレス成形を、金型を交換して二段階に分けて行う場合には、各段階毎に歩留まりが生じるため、最終的に製造される自動車用パネル1の歩留まりは低下するが、当該第1実施形態による製造方法では、1回のプレス成形で成形対象領域101を目標形状に成形できるので、製造される自動車用パネル1の歩留まりの低下を抑制できる。
さらに、二段階のプレス成形を行う場合には、一段階目のプレス成形でブランク材についた成形痕が最終的に製造される自動車用パネル1に残る虞があるが、当該第1実施形態による製造方法では、1回の連続的なプレス成形で成形対象領域101を目標形状に成形できるので、自動車用パネル1に成形痕が残るのを防ぐことができる。
次に、当該第1実施形態の製造方法による効果を調べたシミュレーションについて説明する。
具体的には、このシミュレーションでは、当該第1実施形態の製造方法によって自動車用パネル1を製造した場合に、前記成形工程においてブランク材100の成形対象領域101に生じる歪みがどのようになるかについて調べた。
このシミュレーションでは、実施例として、当該第1実施形態による上述の製造方法で用いられるパンチ10及びダイ20と同様のものを用いて上述の製造方法の成形工程と同様のプロセスでブランク材100の成形対象領域101をプレス成形した場合を設定した。
また、比較例として、従来から一般的に用いられる形状のパンチ210とダイ220を用い、そのこと以外は第1実施形態の上述の製造方法と同様にしてブランク材の成形対象領域をプレス成形した場合を設定した。図9には、この比較例で用いるパンチ210のパンチ対向面211のパンチ突出部212付近及びそれに対向するダイ220のダイ対向面222の底部225付近の構造が示されている。
そして、以上のように設定した実施例と比較例のそれぞれによってプレス成形した場合のブランク材の成形対象領域のキャラクタライン形成箇所付近に生じる引っ張り方向の歪み、具体的には相当塑性歪みをシミュレーションにて調べた。
図6には、前記シミュレーションによって得られた実施例による成形工程の押し込み工程途中での成形対象領域101のキャラクタライン形成箇所103付近及びその隣接箇所の相当塑性歪み分布が示されている。また、図10には、前記シミュレーションによって得られた比較例によるプレス成形後の成形対象領域201のキャラクタライン形成箇所203付近の相当塑性歪み分布が示されている。
比較例(図10参照)では、キャラクタライン形成箇所203の両側に亘る範囲β1において10%以上の相当塑性歪みが生じている。この歪みは、前記第1実施形態と同様に成形対象領域201の周りの周辺部が保持された状態で成形工程においてキャラクタライン形成箇所203がパンチ突出部212(図9参照)に押し当てられて成形対象領域201が曲げ変形されるときにパンチ突出部212から加えられる荷重によって生じるものであり、キャラクタライン形成箇所203から幅方向の両外側への引っ張り方向の歪みであると考えられる。成形対象領域201において同じ大きさの歪みが生じる範囲は当該成形対象領域101の外面側よりも内面側の方が狭くなるが、その歪みの生じる範囲が狭くなる内面側においても10%以上の相当塑性歪みが生じているのは、前記範囲β1のうち図10に示されている範囲β2である。この範囲β2において板厚が局所的に減少し、それに伴ってキャラクタライン形成箇所203付近の外面が局所的に扁平化している。このため、キャラクタライン形成箇所203の外面に形成されるキャラクタライン202の先鋭度が低下している。
これに対し、実施例(図6参照)では、成形対象領域101のキャラクタライン形成箇所103付近において内面側でも10%以上の相当塑性歪みが生じているのは、図6に示された成形対象領域101のキャラクタライン形成箇所103の両側に亘る範囲αであり、この範囲αは前記比較例における範囲β2よりも広くなることが判った。すなわち、実施例の製造方法によれば、比較例による製造方法よりもパンチ突出部12から加えられる荷重によって引っ張り方向の歪みが生じる範囲を広げることができ、その結果、引っ張り方向の歪みに起因するキャラクタライン形成箇所103付近の局所的な板厚の減少を抑制してその付近の外面の局所的な扁平化を抑制でき、より先鋭なキャラクタライン2をキャラクタライン形成箇所103の外面に形成できることが判る。
次に、前記実施例の成形工程においてダイ突出部28による隣接箇所104の押し込みの前後で成形対象領域101に生じる歪みがどのように変化するのかを調べたシミュレーションの結果について説明する。図7には、実施例においてパンチ突出部12によりキャラクタライン形成箇所103をダイ20へ向かって押して成形対象領域101を曲げ変形させた後、隣接箇所104をダイ突出部28によって押し込む前の状態でのキャラクタライン形成箇所103付近の相当塑性歪み分布が示されている。また、図8には、図7に示した状態から隣接箇所104をダイ突出部28によって押し込んだ後の状態でのキャラクタライン形成箇所103付近及び隣接箇所104付近の相当塑性歪み分布が示されている。
図7に示されているように、パンチ突出部12により成形対象領域101がキャラクタライン形成箇所103を頂点として曲げ変形された後、ダイ突出部28によって隣接箇所104が押し込まれる前の状態(隣接箇所104にダイ突出部28が接触したが、まだ隣接箇所104が押し込まれていない状態)では、キャラクタライン形成箇所103付近の限られた範囲α1にしか歪みが生じない。
その後、図8に示されているように、ダイ突出部28によって隣接箇所104がパンチ10の窪み部17内に押し込まれた状態では、キャラクタライン形成箇所103付近の歪みが生じる範囲α2が、隣接箇所104が押し込まれる前に歪みが生じていた前記範囲α1よりも広くなっている。この結果から、成形工程の終期の押し込み工程においてダイ突出部28により成形対象領域101の隣接箇所104をパンチ10の窪み部17内に押し込むことによって、キャラクタライン形成箇所103付近の引っ張り方向の歪みの発生範囲を拡大できることが判る。すなわち、パンチ突出部12にキャラクタライン形成箇所103付近が押し付けられてそのキャラクタライン形成箇所103付近に加えられる荷重によって生じる引っ張り方向の歪みを分散させることができ、キャラクタライン形成箇所103付近の局所的な板厚の減少を抑制してそのキャラクタライン形成箇所103付近の外面の扁平化を抑制できることが判る。
このような結果が得られたのは、ダイ突出部28によって隣接箇所104がパンチ10の窪み部17内に押し込まれることにより、キャラクタライン形成箇所103から隣接箇所104に亘る部分がパンチ突出部12の外面に沿うように曲げ変形されてパンチ突出部12に対するキャラクタライン形成箇所103付近の接触面積が拡大したことによると考えられる。すなわち、パンチ突出部12に対するキャラクタライン形成箇所103付近の接触面積が拡大することによって、パンチ突出部12からキャラクタライン形成箇所103付近に加えられる荷重が分散し、その荷重によって生じる引っ張り方向の歪みもキャラクタライン形成箇所103付近からより広い範囲に分散したことによると考えられる。
(第2実施形態)
次に、図11〜図14を参照して、本発明の第2実施形態による自動車用パネル1の製造方法について説明する。
当該第2実施形態による製造方法では、成形工程の終期の押し込み工程において、ブランク材100の成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103の両側の第1及び第2隣接箇所108,109を、ダイ20の第1及び第2突出部36,38によってパンチ10の第1及び第2窪み部32,34内にそれぞれ押し込む。
具体的に、当該第2実施形態による製造方法で用いるパンチ10のパンチ対向面11は、図11に示すように、当該パンチ対向面11のうちパンチ突出部12に対して幅方向の一方側に隣接した箇所に設けられた第1窪み部32と、当該パンチ対向面11のうちパンチ突出部12に対して第1窪み部32と反対側に隣接した箇所に設けられた第2窪み部34と、を有する。この第1及び第2窪み部32,34は、ブランク材100の成形対象領域101から離れる向きに窪んでいる。具体的には、パンチ突出部12がパンチ対向面11の第1外側面部14の延長線上よりも突出しているとともにパンチ対向面11の第2外側面部16の延長線上よりも突出していることにより、第1及び第2窪み部32,34が相対的に窪んでいる。
また、当該第2実施形態による製造方法で用いるダイ20のダイ対向面22は、パンチ10及び当該ダイ20がプレス成形装置に装着された状態でパンチ対向面11の第1窪み部32と対向する箇所に設けられた第1突出部36と、同状態でパンチ対向面11の第2窪み部34と対向する箇所に設けられた第2突出部38と、を有する。
具体的には、第1突出部36は、ダイ対向面22の第1内側面部26のうちプレス方向(上下方向)においてパンチ対向面11の第1窪み部32と対向する箇所に設けられて成形対象領域101側へ突出している。この第1突出部36は、成形工程の押し曲げ工程において曲げ変形された成形対象領域101のうちの第1隣接箇所108と接触する箇所に設けられている。また、第2突出部38は、ダイ対向面22の第2内側面部27のうちプレス方向(上下方向)においてパンチ対向面11の第2窪み部34と対向する箇所に設けられて成形対象領域101側へ突出している。この第2突出部38は、成形工程の押し曲げ工程において曲げ変形された成形対象領域101のうちの第2隣接箇所109と接触する箇所に設けられている。
当該第2実施形態では、幅方向におけるダイ対向面22の中央に中央窪み部40が設けられ、この中央窪み部40が第1内側面部26の延長線上よりも窪んでいるとともに第2内側面部27の延長線上よりも窪んでいることにより、その中央窪み部40の両側にそれぞれ隣接する第1及び第2突出部36,38が相対的に突出している。
そして、当該第2実施形態による製造方法では、以上のような構成のパンチ10とダイ20を図略のプレス成形装置に装着する。この際、前記第1実施形態と同様、ダイ20とパンチ10とを上下に分かれて配置するとともに、ダイ20をダイ対向面22が下向きになる姿勢で配置し、パンチ10をパンチ対向面11が上向きになる姿勢で且つそのパンチ対向面11がダイ対向面22の真下に位置するように配置する(図11参照)。このとき、パンチ突出部12がダイ対向面22の底部25(中央窪み部40)の真下に位置し、ダイ20の第1内側面部26がパンチ10の第1外側面部14とプレス方向に沿う方向において対向するとともにその第1外側面部14と平行に配置され、且つ、ダイ20の第2内側面部27がパンチ10の第2外側面部16とプレス方向に沿う方向において対向するとともにその第2外側面部16と平行に配置される。
次に、前記第1実施形態と同様にブランク材100をホルダ30によって保持する保持工程を行う。
その後、ブランク材100の成形対象領域101を目標形状にプレス成形する成形工程を行う。この成形工程は、押し曲げ工程と、押し込み工程と、を含む。
押し曲げ工程では、前記第1実施形態と同様、プレス成形装置により、ダイ20をパンチ10へ向かって降下させ、図12に示すようにパンチ突出部12に成形対象領域101のキャラクタライン形成箇所103を押し当ててその成形対象領域101をキャラクタライン形成箇所103を頂点として曲げ変形させる。そして、この押し曲げ工程では、図12の状態からダイ20をさらに降下させてパンチ10に接近させる。これにより、図13に示すように、曲げ変形された成形対象領域101の外面がダイ対向面22の第1内側面部26及び第2内側面部27に接触する。このとき、ダイ20の第1突出部36が成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103に対して一方側に隣接した第1隣接箇所108に接触するとともに、ダイ20の第2突出部38が成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103に対して第1隣接箇所108と反対側に隣接した第2隣接箇所109に接触する。
その後、成形工程の終期の押し込み工程において、ダイ20をさらに降下させてパンチ10にさらに接近させ、ダイ20の第1突出部36によって成形対象領域101の第1隣接箇所108をパンチ10の第1窪み部32内へ押し込むとともに、ダイ20の第2突出部38によって成形対象領域101の第2隣接箇所109をパンチ10の第2窪み部34内に押し込む(図14参照)。この第1及び第2隣接箇所108,109の押し込みにより、成形対象領域101のキャラクタライン形成箇所103から第1隣接箇所108に亘る部分及びキャラクタライン形成箇所103から第2隣接箇所109に亘る部分がそれぞれパンチ突出部12の外面に沿うように曲げ変形される。以上のようにして、成形対象領域101が前記目標形状に成形されてキャラクタライン形成箇所103の外面にキャラクタライン2が形成される。
この第2実施形態による製造方法の上記以外の点は、第1実施形態と同様である。
この第2実施形態の製造方法では、成形工程の押し込み工程において、キャラクタライン形成箇所103に対して一方側に隣接した第1隣接箇所108をダイ20の第1突出部36によってパンチ突出部12に対して一方側に隣接する第1窪み部32内に押し込むとともに、キャラクタライン形成箇所103に対して第1隣接箇所108と反対側に隣接した第2隣接箇所109をダイ20の第2突出部38によってパンチ突出部12に対して第1窪み部32と反対側に隣接する第2窪み部34内に押し込む。このため、キャラクタライン形成箇所103から一方側の第1隣接箇所108に亘る部分と反対側の第2隣接箇所109に亘る部分との両方をパンチ突出部12の外面に沿うように曲げ変形させることができる。このため、パンチ突出部12の外面に対する成形対象領域101のキャラクタライン形成箇所103付近の接触面積をより拡大することができ、そのパンチ突出部12からキャラクタライン形成箇所103付近に加えられる荷重をより分散させることができる。その結果、パンチ突出部12から加えられる荷重に起因してキャラクタライン形成箇所103付近に生じる引っ張り方向の歪みをより広い範囲に分散させることができ、その引っ張り方向の歪みに起因する板厚の減少がキャラクタライン形成箇所103付近に局所的に生じるのをより一層抑制できる。そのため、キャラクタライン形成箇所103付近の外面の扁平化をより抑制でき、キャラクタライン形成箇所103の外面により先鋭なキャラクタライン2を形成することができる。
また、ダイ20の第1突出部36によって第1隣接箇所108をパンチ10の第1窪み部32内に押し込むとともに、ダイ20の第2突出部38によって第2隣接箇所109をパンチ10の第2窪み部34内に押し込むことにより、キャラクタライン形成箇所103付近の外面の曲率半径が小さくなるようにそのキャラクタライン形成箇所103付近を曲げ変形させることができる。このことによっても、キャラクタライン形成箇所103の外面に形成されるキャラクタライン2をより先鋭化させることができる。
この第2実施形態による製造方法の上記以外の効果は、第1実施形態による効果と同様である。
(変形例)
本発明による自動車用パネルの製造方法は、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による自動車用パネルの製造方法に以下のような技術を採用可能である。
具体的には、本発明による製造方法で用いられるパンチのパンチ突出部の形状は、必ずしも前記第1及び第2実施形態におけるパンチ突出部12の形状に限定されるものではない。例えば、図15〜図17には、前記第2実施形態の各変形例による製造方法で用いられるパンチ10のパンチ突出部12付近及びダイ対向面22の底部25付近が部分的に示されている。
図15に示されている第1変形例では、パンチ突出部12が前記第2実施形態におけるパンチ突出部12よりもより鋭く突出した形状をなしている。また、ダイ対向面22の中央窪み部40は、パンチ突出部12の外面の形状に対応した形状で窪んでいる。
図16に示されている第2変形例では、パンチ突出部12のうち幅方向の中央付近に位置する中央領域13aが大きな曲率半径を有する円弧状の断面形状をなす外面を有し、当該パンチ突出部12のうち中央領域13aの両側の第1領域13bと第2領域13cとが中央領域13aの外面の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する円弧状の断面形状をなす外面をそれぞれ有する。また、ダイ対向面22の中央窪み部40は、パンチ突出部12の外面の形状に対応した形状で窪んでいる。
図17に示されている第3変形例では、パンチ突出部12の外面が凹凸を有する。具体的には、当該第3変形例におけるパンチ突出部12は、第1山部42と、第2山部43と、第3山部44とを有する。この第1〜第3山部42,43,44は、この順番で幅方向に沿って並んで配置されているとともに、それぞれダイ20の中央窪み部40へ向かって突出している。第1山部42と第2山部43との間、及び、第2山部43と第3山部44との間は、それぞれ、谷部となっている。このような構成により、パンチ突出部12の外面が凹凸状となっている。そして、第1〜第3山部42,43,44のうち中央の第2山部43が、他の第1及び第3山部42,44よりも突出している。成形工程の押し曲げ工程において、この第2山部43の先端が、最初にブランク材の成形対象領域に接触し、その成形対象領域のうちのキャラクタライン形成箇所に対して接触する。
また、当該第3変形例では、ダイ対向面22の中央窪み部40は、パンチ突出部12の外面に対応した形状をなしていない。すなわち、中央窪み部40の内面にはパンチ突出部12の外面のような凹凸が設けられておらず、当該中央窪み部40の内面は一様に湾曲している。
以上のような第1〜第3変形例によるパンチ10のいずれにおいても、パンチ対向面11のうちパンチ突出部12に対して両側のそれぞれ隣接した箇所に第1窪み部32と第2窪み部34とが設けられている。また、これらの第1〜第3変形例によるダイ20のいずれにおいても、ダイ対向面22のうちパンチ10の第1窪み部32と対向する箇所に第1突出部36が設けられているとともに、ダイ対向面22のうちパンチ10の第2窪み部34と対向する箇所に第2突出部38が設けられている。
そして、これらの第1〜第3変形例によるパンチ10及びダイ20を用いた場合であっても、成形工程の終期の押し込み工程において、ダイ20の第1突出部36がブランク材の成形対象領域の第1隣接箇所をパンチ10の第1窪み部32内に押し込むとともに、ダイ20の第2突出部38がブランク材の成形対象領域の第2隣接箇所をパンチ10の第2窪み部34内に押し込む。そのため、第1〜第3変形例による製造方法でも、前記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、前記第1実施形態による製造方法では、成形工程の終期の押し込み工程でブランク材100の成形対象領域101のうちキャラクタライン形成箇所103に対して一方側に隣接する隣接箇所104をダイ突出部28によってパンチ10の窪み部17内に押し込む結果、隣接箇所104の外面がダイ突出部28に対して強く押し付けられる。その結果、成形された自動車用パネル1の外面のうち隣接箇所104に対応する箇所の外面にダイ突出部28に対する接触痕が残る可能性も考えられる。その対策として、ダイ突出部28の外面上にゴムシート等の緩衝材を設置し、その緩衝材によって自動車用パネル1の外面のうち隣接箇所104に対応する箇所の外面に接触痕がつくのを抑制してもよい。
また、前記第2実施形態による製造方法において、同様に、ダイ20の第1突出部36の外面上及び第2突出部38の外面上にそれぞれゴムシート等の緩衝材を設置し、それらの緩衝材によって自動車用パネル1の外面のうち第1及び第2隣接箇所108,109に対応する箇所の外面にダイ20の第1及び第2突出部36,38に対する接触痕がつくのを抑制してもよい。
また、成形工程では、位置が固定されたパンチへ向かってダイを接近させる代わりに、位置が固定されたダイへ向かってパンチを接近させて、パンチ突出部によってブランク材の成形対象領域を曲げ変形させてもよい。
また、成形工程におけるダイもしくはパンチの移動方向は、必ずしも上下方向に沿う方向に限定されず、任意の方向に設定されてもよい。
また、ダイ20をそのダイ対向面22が上向きになる姿勢で配置し、パンチ10をそのパンチ対向面11が下向きになる姿勢で且つそのパンチ対向面11がダイ対向面22の真上に位置するように配置してもよい。
1 自動車用パネル
2 キャラクタライン
10 パンチ
11 パンチ対向面
12 パンチ突出部
17 窪み部(第1窪み部)
20 ダイ
22 ダイ対向面
28 ダイ突出部(第1突出部)
30 ホルダ
32 第1窪み部
34 第2窪み部
36 第1突出部
38 第2突出部
100 ブランク材
101 成形対象領域
102 周辺部
103 キャラクタライン形成箇所
104 隣接箇所(第1隣接箇所)
108 第1隣接箇所
109 第2隣接箇所

Claims (2)

  1. 板状のブランク材をプレス成形することにより、キャラクタラインを有する目標形状の自動車用パネルを製造する方法であって、
    ダイとパンチとの間に前記ブランク材を配置し、そのブランク材のうち前記目標形状に成形される成形対象領域の周りの周辺部をホルダで保持する保持工程と、
    前記ダイと前記パンチの一方を他方へ接近させることにより前記ダイと前記パンチとの間で前記成形対象領域を前記目標形状に成形する成形工程と、を備え、
    前記パンチのうち前記成形対象領域に対向する面であるパンチ対向面は、前記成形対象領域へ向かって突出するパンチ突出部と、前記パンチ突出部に対して一方側に隣接した箇所において前記成形対象領域から離れる向きに窪んだ第1窪み部と、を有し、
    前記ダイのうち前記成形対象領域に対向する面であるダイ対向面は、前記第1窪み部と対向する箇所に設けられた第1突出部を有し、
    前記成形工程は、
    前記パンチ突出部によって前記成形対象領域のうち前記キャラクタラインが形成される箇所であるキャラクタライン形成箇所を前記ダイへ向かって押して前記成形対象領域を曲げ変形させる押し曲げ工程と、
    前記押し曲げ工程の後、前記成形対象領域のうち前記キャラクタライン形成箇所に対して一方側に隣接した第1隣接箇所を前記第1突出部によって前記パンチの前記第1窪み部内に押し込む押し込み工程と、を含む、自動車用パネルの製造方法。
  2. 前記パンチ対向面は、前記パンチ突出部に対して前記第1窪み部と反対側に隣接した箇所において前記成形対象領域から離れる向きに窪んだ第2窪み部をさらに有し、
    前記ダイ対向面は、前記第2窪み部と対向する箇所に設けられた第2突出部をさらに有し、
    前記押し込み工程では、前記成形対象領域の前記第1隣接箇所を前記第1突出部によって前記第1窪み部内に押し込むとともに、前記成形対象領域のうち前記キャラクタライン形成箇所に対して前記第1隣接箇所と反対側に隣接した第2隣接箇所を前記第2突出部によって前記第2窪み部内に押し込む、請求項1に記載の自動車用パネルの製造方法。
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