JP2019135715A - プロトン伝導膜及び燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】無水環境下でも高いプロトン伝導性を示す、プロトン伝導膜を提供すること。【解決手段】架橋ポリマー及び可塑剤を含み、架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、かつ50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体である、プロトン伝導膜を提供する。【選択図】図1

Description

本開示は、プロトン伝導膜及び燃料電池に関する。
燃料電池用の電解質材料として、プロトン伝導膜が知られている。
例えば特許文献1には、
アルカリ加水分解及び酸処理によりプロトン伝導性を発揮する高分子電解質前駆体を含有するポリマー分散液にパーフルオロスルホン酸の金属塩及び/又はパーフルオロカルボン酸の金属塩を溶解させる第1工程と、
第1工程で得られた分散液から高分子電解質前駆体膜を製膜する第2工程と、
第2工程で得られた高分子電解質前駆体膜をアルカリ加水分解及び酸処理し高分子電解質膜とする第3工程と、
第3工程で得られた高分子電解質膜を加熱・乾燥し高分子電解質膜中に金属酸化物を析出する第4工程と
を含む方法によって製造された、パーフルオロスルホン酸及び/又はパーフルオロカルボン酸系樹脂から成るプロトン伝導膜が開示されている。
特開2010−114020号公報
特許文献1の技術によって得られたプロトン伝導膜がプロトン伝導性を発揮するためには、水の存在が不可欠である。そのため、このプロトン伝導膜を備えた燃料電池は、稼働温度を水の沸点未満に制限する必要があった。
本開示は上記の事情を改善しようとするものであり、その目的は、無水環境下でも高いプロトン伝導性を示す、プロトン伝導膜を提供することである。
上記の目的を達成する本開示は、以下のとおりである。
〈態様1〉
架橋ポリマー及び可塑剤を含み、
前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、前記架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
前記可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、かつ
50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体である、
プロトン伝導膜。
〈態様2〉
前記架橋ポリマー及び前記可塑剤の合計を100質量部としたときの前記可塑剤の含有量が、60質量部以上90質量部以下である、態様1に記載のプロトン伝導膜。
〈態様3〉
前記プロトン供与性化合物が、硫酸及びリン酸から選択される1種以上である、態様1又は2に記載のプロトン伝導膜。
〈態様4〉
前記プロトン受容性基が、含窒素複素環基である、態様1〜3のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
〈態様5〉
前記プロトン伝導膜のガラス転移点が30℃以下である、態様1〜4のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
〈態様6〉
前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマー、及び架橋性ビニルモノマーである第2モノマーの共重合体である、態様1〜5のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
〈態様7〉
前記プロトン伝導膜のプロトン伝導率が、50℃において7.4mS/cm以上である、態様1〜6のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
〈態様8〉
前記プロトン受容性基に対する前記プロトン供与性化合物のモル比が、1.0以上10.0以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
〈態様9〉
態様1〜8のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜を有する、燃料電池。
〈態様10〉
架橋ポリマー及び可塑剤を含むプロトン伝導膜の製造方法であって、
前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、前記架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
前記可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、
前記プロトン伝導膜は、50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体であり、かつ
前記方法は、前記プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマーを重合させて、前駆体ポリマーを得て、そして前記前駆体ポリマーに架橋剤を添加して、前記前駆体ポリマーを架橋させることによって、前記架橋ポリマーを得ることを含む、
プロトン伝導膜の製造方法。
〈態様11〉
架橋ポリマー及び可塑剤を含むプロトン伝導膜の製造方法であって、
前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、前記架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
前記可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、
前記プロトン伝導膜は、50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体であり、かつ
前記方法は、前記プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマーと、架橋性ビニルモノマーである第2モノマーとを重合及び架橋させることによって、前記架橋ポリマーを得ることを含む、
プロトン伝導膜の製造方法。
本開示のプロトン伝導膜は、無水環境下でも高いプロトン伝導性を示すことができる。したがって、本開示のプロトン伝導膜は、特に、燃料電池におけるプロトン伝導膜としての使用に好適である。
図1は、本開示のプロトン伝導膜が機能を発現する機構を説明するための概略図である。 図2は、実施例9の引張試験から得られた応力−歪み曲線を示す図である。 図3は、参考例1のポリマーについて、プロトン受容性基に対するプロトン供与性化合物のモル比が変化したときのガラス転移点の変化傾向を示す図である。 図4は、参考例2のポリマーにおいて、プロトン受容性基に対するプロトン供与性化合物のモル比が変化したときのプロトン伝導率の変化傾向を示す図である。
本開示のプロトン伝導膜は、
架橋ポリマー及び可塑剤を含み、
前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
前記可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、かつ
50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体である。
本開示に関して、「粘弾性固体」は、粘性及び弾性を有する固体であって、流動性を示さず、かつ形状を維持する固体を意味している。具体的には、この「粘弾性固体」である物質は、応力を加えて小さな変形を生じさせたときに、変形に対する応力が、変形直後に最大になり、かつ時間の経過とともに低下するものの、最終的に0ではない一定値となり、またその状態で変形させていた応力を取り除くと、変形が小さくなり、場合によっては元の形に戻る性質を有している。
本開示のプロトン伝導膜は、無水環境下でも高いプロトン伝導性を示すことができる。本開示のプロトン伝導膜の高いプロトン伝導性は、可塑剤としてのプロトン供与性化合物によって提供されるプロトンが、架橋ポリマーのプロトン受容性基上を移動することによって得られていると考えられる。
また、本開示のプロトン伝導膜では、可塑剤としてのプロトン供与性化合物がプロトンを供与してアニオン化し、かつ架橋ポリマーのプロトン受容性基がプロトンを受容してカチオン化することによって、それらの間の静電気的相互作用によって可塑剤としてのプロトン供与性化合物が架橋ポリマー内にとどまり、それによって全体として粘弾性固体の状態を維持できていると考えられる。このような粘弾性固体は、プロトン伝導膜内での分子運動を促進し、それによってプロトン伝導性を促進していると考えられる。
一方で、本開示のプロトン伝導膜が膜形状を維持するのは、ポリマーの架橋構造が寄与しているためであると考えられる。すなわち、架橋ポリマーは、その架橋構造によって、膜形状を維持していると考えられる。
プロトン伝導膜の膜形状の維持は、例えば、プロトン伝導膜を、電池の使用温度範囲(例えば、50℃以上120℃以下の範囲、特に40℃以上200℃以下の範囲、又は0℃以上150℃以下の範囲)において、無荷重状態で1時間にわたって静置したときに、プロトン伝導膜が実質的に変形及び収縮をしないこと、例えばプロトン伝導膜の面方向及び厚さ方向の長さ変化率が、例えば5%以下、3%以下、又は1%以下であることを意味する。
図1に、本開示のプロトン伝導膜が機能を発現する機構を説明するための概略図を示した。
図1のプロトン伝導膜は、「プロトン受容性基」を有する「架橋ポリマー」及びプロトン供与性化合物である「可塑剤」から構成されている。「架橋ポリマー」は「架橋点」において架橋して、架橋構造を形成している。これにより、本開示のプロトン伝導膜は膜形状を維持することができる。図1における「可塑剤」は、プロトン供与性の2塩基酸として描かれている。
「可塑剤」のプロトン供与性基は、1個又は2個のプロトンを放出して、「1価アニオン」又は「2価アニオン」を形成する。一方、放出されたプロトンは、「架橋ポリマー」の「プロトン受容性基」に受容されて「カチオン」を形成する。この状態で、粘弾性固体である図1のプロトン伝導膜中において、可塑剤は、高い分子運動性を示すことができるので、プロトンは膜中を容易に移動することができ、これによって高いプロトン電動性を示す。
また、「可塑剤」がプロトンを放出した後の「1価アニオン」又は「2価アニオン」と、「架橋ポリマー」の「プロトン受容性基」がプロトンを受容した後の「カチオン」とが、「イオン性相互作用」を形成することにより、「可塑剤」は膜中に保持されて、膜の外部に漏出することが高度に抑制されており、膜は全体として粘弾性固体の状態を維持することができる。
以下、本開示のプロトン伝導膜について、好ましい実施形態を例として説明する。
〈架橋ポリマー〉
本開示のプロトン伝導膜に含まれる架橋ポリマーは、プロトン受容性基を、架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有する。
架橋ポリマーのプロトン受容性基は、含窒素複素環基であってよい。含窒素複素環基は、例えば、ピリジン環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、イミダゾリン環基、オキサゾール環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、トリアゾール環基、テトラゾール環基等であってよい。これらの含窒素複素環基は、含窒素複素芳香環基であることが好ましく、特に好ましくは、ピリジン環基又はイミダゾール環基である。
したがって、例えば、架橋ポリマーは、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(1−ビニルイミダゾール)、ポリ(2−メチル−1−ビニルイミダゾール)、ポリ(2−ビニルイミダゾール)、ポリ(4−ビニルイミダゾール)、ポリ(2−フェニル−1−ビニルイミダゾール)、ポリ(1−ビニルカルバゾール)、又はポリ((メタ)アクリル酸2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチル)等であってよいが、これらに限定されない。
架橋ポリマー中に含まれるプロトン受容性基が、架橋ポリマーの繰り返し単位の10mol%以上存在することは、十分に高いプロトン伝導率を確保し、かつイオン性相互作用によって可塑剤の漏出を抑制する観点から好ましい。
この割合は、15mol%以上、20mol%以上、30mol%以上、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、96mol%以上、又は97mol%以上であってよい。また、この割合は、99.5mol%以下、99mol%以下、98mol%以下、95mol%以下、90mol%以下、80mol%以下、70mol%以下、60mol%以下、50mol%以下、40mol%以下、又は35mol%以下であってよい。
架橋ポリマー1g当たりのプロトン受容性基の量(モル数)は、例えば、0.1mmol/g−ポリマー以上、0.5mmol/g−ポリマー以上、1.0mmol/g−ポリマー以上、2.5mmol/g−ポリマー以上、又は5.0mmol/g−ポリマー以上であってよく、架橋ポリマーの合成を容易にし、かつ、得られるポリマーのハンドリング性を確保する観点から、例えば、50mmol/g−ポリマー以下、40mmol/g−ポリマー以下、30mmol/g−ポリマー以下、又は25mmol/g−ポリマー以下であってよい。
架橋ポリマーは、後述の可塑剤と組み合わさって、粘弾性固体であるプロトン伝導膜を形成し、それによって高い分子運動性を提供している。したがって、架橋ポリマー単独のガラス転移点Tgは、比較的高くてもよい。しかしながら、架橋ポリマーのガラス転移点が過度に高いと、可塑剤と混合された後にも分子運動性が十分に向上しない可能性がある。
したがって、架橋ポリマーのガラス転移点は、400℃以下、350℃以下、300℃以下、又は250℃以下であってよい。架橋ポリマーは、ガラス転移点を2つ以上有していてもよい。架橋ポリマーが2つ以上のガラス転移点を有する場合、最も低いガラス転移点は、プロトン伝導膜の稼働温度(例えば50℃以上であって、150℃以下、好ましくは120℃以下の範囲)以下であることが好ましく、例えば、30℃以下、20℃以下、10℃以下、又は0℃以下であってもよい。架橋ポリマーがこのような低いガラス転移点を有することにより、得られるプロトン伝導膜の稼働時に、架橋ポリマーが可塑剤とともに高い分子運動性を維持することができ、したがって、高いプロトン伝導性を得ることができる。
架橋ポリマーの繰り返し単位の構造は任意であってよい。例えば、架橋ポリマーの繰り返し単位は、ビニル系モノマー、エーテル系モノマー、エステル系モノマー、アミド系モノマー、シリコーン系モノマー等に由来するものであってもよい。各ポリマーの製造方法及び架橋構造の形成方法は公知である。架橋ポリマーの繰り返し単位は、上記のうち、モノマーの入手性に優れ、分子修飾が容易なことから、ビニル系モノマーに由来するものであることが好ましい。
本開示における架橋ポリマーは好ましくは、プロトン受容性基を有するモノマーである第1モノマー、及び架橋性である第2モノマーの共重合体である。本開示における架橋ポリマーは、所望により、第1モノマー及び第2モノマーと合わせて、第3モノマーを更に有する共重合体であってもよい。以下では、これら第1、第2、及び第3ポリマーの例について挙げる。
(第1モノマー)
第1モノマーは、プロトン受容性基を有するモノマーであり、例えば1つ以上のプロトン受容性基と1つ以上の重合性基を有するモノマーであってよく、特に1つのプロトン受容性基と1つの重合性基を有するモノマーであってよい。また、モノマー分子中の少なくとも一部の水素がフッ素に置換されたものでもよい。本開示における好ましい第1モノマーはビニル系モノマーであり、それらを、プロトン受容性基の種類ごとに例示すると、例えば、以下のとおりである。
ピリジン環を有するビニルモノマー:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等。
イミダゾール環を有するビニルモノマー:1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール、2−フェニル−1−ビニルイミダゾール、1−ビニルカルバゾール、(メタ)アクリル酸2−(1H−イミダゾール−1−イル)エチル等。
ピラゾール環を有するビニルモノマー:1−ビニルピラゾール、3−ビニルピラゾール等。
イミダゾリン環を有するビニルモノマー:1−ビニル−2−イミダゾリン、1−ビニル−2−メチルイミダゾリン、2−ビニル−2−イミダゾリン、(メタ)アクリル酸2−(1H−イミダゾリン−1−イル)エチル等。
オキサゾール環を有するビニルモノマー:2−フェニル−5−ビニルオキサゾール等。
ピリミジン環を有するビニルモノマー:5−ビニルピリミジン、2,4−ジクロロ−6−ビニルピリミジン等。
ピラジン環を有するビニルモノマー:2−ビニルピラジン、2,5−ジメチル−3−ビニルピラジン、2−メチル−5−ビニルピラジン等。
トリアゾール環を有するビニルモノマー:2,4−ジアミノ−6−ビニルトリアジン等。
テトラゾール環を有するビニルモノマー:1−ビニル−1H−テトラゾール、2−ビニル−2H−テトラゾール、5−ビニル−1H−テトラゾール、1−メチル−5−ビニル−1H−テトラゾール等。
第1モノマーは特に好ましくは、4−ビニルピリジン又は1−ビニルイミダゾールである。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の双方を包含する概念である。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」等についてもこれに準じて理解されるべきである。
(第2モノマー)
第2モノマーは、架橋性モノマーであり、例えば2つ以上の重合性基を有するモノマーであってよく、特に2つの重合性基を有するモノマーであってよい。また、モノマー分子中の少なくとも一部の水素がフッ素に置換されたものでもよい。本開示における好ましい第2モノマーは、ビニル系モノマーであり、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、1,6−ヘキサジエン等であってよい。
(第3モノマー)
第3モノマーは、第1モノマー及び第2モノマー以外のモノマーであり、例えば、1つの重合性基を有し、かつプロトン受容性基を有さない非架橋性モノマーであってよい。また、モノマー分子中の少なくとも一部の水素がフッ素に置換されたものでもよい。本開示における好ましい第3モノマーは、ビニル系モノマーであり、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン及びその誘導体、共役ジエン等であってよく、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等であってよい。
(各モノマーの共重合割合)
本開示の架橋ポリマーにおける各モノマーの共重合割合は、任意である。
架橋ポリマーを構成するモノマーの合計を100質量部としたときの第1モノマーの割合は、例えば、5.0質量部以上、7.5質量部以上、10質量部以上、15質量部以上、20質量部以上、25質量部以上、30質量部以上、35質量部以上、40質量部以上、45質量部以上、50質量部以上、55質量部以上、60質量部以上、65質量部以上、70質量部以上、75質量部以上、80質量部以上、85質量部以上、90質量部以上、95質量部以上、97質量部以上、99質量部以上、又は100質量部であってよい。
また、架橋の程度を適度に設定し、プロトン伝導膜として使用する際に、優れたプロトン伝導率及び膜形状維持性と良好なハンドリング性とを両立する観点から、第1モノマー及び第2モノマーの合計を100質量部としたときの第2モノマーの量は、例えば、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、又は2.5質量部以上であってよく、例えば、5.0質量部以下、4.5質量部以下、4.0質量部以下、3.5質量部以下、3.0質量部以下、2.5質量部以下であってよい。なお、第2のモノマーの代わりに又は第2のモノマーに加えて、架橋剤等を適宜添加して、架橋を形成することができる。第2のモノマーの代わりに架橋剤を用いる場合の架橋剤の割合、及び第2のモノマーと架橋剤とを併用する場合のその合計の割合は、特に限定されず、上記で列挙した第2モノマーの量と同じであってよい。
また、優れたプロトン伝導率及び膜形状維持性を確保する観点からは、第1モノマー、第2モノマー、及び第3モノマーの合計を100質量部としたときの第3モノマーの量は、例えば、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、20質量部以下、15質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、又は1質量部以下であってよい。なお、第3モノマーを使用しなくてもよい。
なお、本開示において、「質量部」と「質量%」とは、単なる表現上の違いであり、特記しない限り、同義と取り扱われる。例えば「合計を100質量部としたとき、成分Xの量がx質量部である」記載と、「合計を100質量%としたとき、成分Xの量がx質量%である」との記載とは、同義である。
(共重合方法)
第1〜第3モノマーの共重合体は、公知の重合方法、例えばラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等によって得ることができ、ラジカル重合法によることが好ましい。
ラジカル重合は、所定のモノマー混合物をラジカル重合開始剤と接触させることによって行われてよい。ラジカル重合は、後述の可塑剤の存在下に行われてもよい。
ラジカル重合開始剤は、例えば、アゾ化合物、過酸化水素、有機過酸化物等から選択されてよい。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等から選択されてよい。有機過酸化物は、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジイソブチルパーオキシド等から選択されてよい。
ラジカル重合開始剤の使用割合は、モノマーの合計100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、0.003質量部以上、0.005質量部以上、0.01質量部以上、又は0.05質量部以上であってよく、例えば、3.0質量部以下、2.0質量部以下、1.0質量部以下、0.5質量部以下、又は0.1質量部以下であってもよい。
ラジカル重合は、無溶媒下で行われてよいし、任意的に適当な溶媒中で行われてよい。
ラジカル重合は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、又は70℃以上、例えば、200℃以下、150℃以下、120℃以下、又は100℃以下の温度において、例えば、30分以上、1時間以上、2時間以上、又は3時間以上、例えば、10時間以下、8時間以下、5時間以下、又は3時間以下の時間にわたって行うことができる。
重合後、未反応モノマー、低分子オリゴマー、ラジカル開始剤残滓等を除去するため、得られた重合体の精製を、適宜の方法によって行ってよい。精製方法は、例えば、溶媒置換、再沈殿等の方法であってもよい。
〈可塑剤〉
本開示のプロトン伝導膜に含まれる可塑剤は、pKa2.5以下、pKa2.3以下、pKa2.1以下、pKa2.0以下、pKa1.0以下、pKa0.0以下、pKa−1.0以下、又はpKa−2.0以下のプロトン供与性化合物を含む。したがって、この可塑剤は、酸性度が大きいプロトン供与性化合物、すなわちプロトンを放出する傾向が大きい化合物を含む。なお、プロトン供与性化合物が多塩基酸であるとき、このpKaはpKaを意味する。
プロトン供与性化合物は、スルホン酸基及びリン酸基から選択される1種以上の基を有する化合物であってよい。なお、スルホン酸基のpKaは約−3.0であり、リン酸基のPKa(pKa)は約2.1である。
プロトン供与性化合物は、プロトン伝導膜の稼働温度において揮発蒸散又は分解しない程度の高い沸点又は分解温度を有することが好ましい。この観点から、プロトン供与性化合物の沸点又は分解温度は、例えば、120℃超、150℃以上、又は200℃以上であってよい。
プロトン供与性化合物は、硫酸及びリン酸から選択される1種以上であってよく、硫酸又はリン酸であってよい。なお、硫酸の沸点は約290℃(分解)であり、リン酸の沸点は約213℃(分解)である。
可塑剤は、プロトン供与性化合物のみから構成されていてよく、プロトン供与性化合物とその他の可塑剤とから構成されていてもよい。その他の可塑剤は、プロトン供与性を有さない可塑剤であってよく、具体的には例えば、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリオールエステル等であってよい。その他の可塑剤の使用割合は、可塑剤の全質量を100質量部としたときに、例えば、50質量部以下、30質量部以下、10質量部以下、5質量部以下、又は1質量部以下であってよく、その他の可塑剤を全く使用しなくてもよい。
なお、本明細書において、「アルキレン基」とは、メチレン基、アルキルメチレン基、及びジアルキルメチレン基を包含する概念である。
(プロトン受容性基に対するプロトン供与性化合物のモル比)
プロトン受容性基に対するプロトン供与性化合物のモル比(プロトン供与性化合物/プロトン受容性基)は、特に限定されず、プロトン供与性化合物が可塑剤としての機能を確保する観点から、例えば1.0以上、1.1以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、2.1以上、2.2以上、2.3以上、2.4以上、2.5以上、2.6以上、2.7以上、2.8以上、2.9以上、3.0以上、3.1以上、3.4以上、3.5以上、3.6以上、3.7以上、3.8以上、3.9以上、4.0以上、4.1以上、4.2以上、又は4.3以上であってよい。また、このモル比の上限は、特に限定されず、膜強度を維持し、膜としての安定性を確保する観点から、例えば10.0以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、5.0以下、4.5以下、4.4以下、又は4.3以下であってよい。
〈架橋ポリマーと可塑剤との割合〉
架橋ポリマーと可塑剤との使用割合は、得られるプロトン伝導膜の分子運動性を高め、十分に高いプロトン伝導性を得る観点から、架橋ポリマー及び可塑剤の合計100質量部に対する可塑剤の使用割合として、60質量部以上、65質量部以上、70質量部以上、75質量部以上、又は80質量部以上であってもよい。一方で、膜強度を維持し、膜としての安定性を確保する観点から、架橋ポリマー及び可塑剤の合計100質量部に対する可塑剤の使用割合は、90質量部以下、85質量部以下、82質量部以下、80質量部以下、75質量部以下、70質量部以下、又は65質量部以下であってもよい。
〈プロトン伝導膜のガラス転移点、プロトン伝導率、及び水含有率〉
(ガラス転移点)
本開示のプロトン伝導膜は、架橋ポリマーと可塑剤とを含むことにより、膜の全体として高い分子運動性を示す。プロトン伝導膜の高い分子運動性は、ガラス転移点Tgが低いことによって評価することができる。
本開示のプロトン伝導膜は、導入されている可塑剤自身の分子運動性が高いことと並んで、膜としてのガラス転移点Tgが低いことにより、低温においても分子運動性を維持することができ、したがって高いプロトン伝導性を得ることができる。プロトン伝導膜のガラス転移点Tgは、プロトン伝導膜の稼働温度の下限値以下であることが好ましく、例えば、0℃以下、−20℃以下、−40℃以下、−60℃以下、又は−65℃以下であってもよい。
なお、本明細書におけるガラス転移点Tgは、10℃/分の昇温速度で測定して得られたDSC曲線に基づいて、JIS K 7121に準拠して得られた値である。
(プロトン伝導率)
本開示のプロトン伝導膜は、高いプロトン伝導率を示す。本開示のプロトン伝導膜のプロトン伝導率は、50℃において7.4mS/cm以上であってよい。この値は、例えば、10mS/cm以上、15mS/cm以上、30mS/cm以上、50mS/cm以上、75mS/cm以上、100mS/cm以上、又は120mS/cm以上であってよい。また、本開示のプロトン伝導膜のプロトン伝導率は、120℃において、例えば、19mS/cm以上、20mS/cm以上、30mS/cm以上、50mS/cm以上、75mS/cm以上、100mS/cm以上、125mS/cm以上、150mS/cm以上、175mS/cm以上、200mS/cm以上、又は210mS/cm以上であってよい。
(水含有率)
本開示のプロトン伝導膜は、膜中に水を含有しない場合でも、高いプロトン伝導率を示す。したがって、プロトン伝導膜の水含有率は、膜の全質量を100質量部としたときに、例えば、1質量部以下、0.1質量部以下、0.01質量部以下、又は0.001質量部以下であってよい。
〈プロトン伝導膜の製造方法〉
本開示はまた、上述した架橋ポリマー及び可塑剤を含むプロトン伝導膜を製造するための方法として、第1の製造方法、及び第2の製造方法を提供する。いずれの方法を用いても、本開示のプロトン伝導膜を製造することができる。以下では、それぞれの製造方法について説明する。なお、各製造方法において、上述した「プロトン伝導膜」と共通できる部分については、重複の説明を省略する。
(第1の製造方法)
本開示の第1の製造方法は、
架橋ポリマー及び可塑剤を含むプロトン伝導膜の製造方法であって、
架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、
プロトン伝導膜は、50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体であり、かつ
第1の製造方法は、プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマーを重合させて、前駆体ポリマーを得て、そして前駆体ポリマーに架橋剤を添加して、前駆体ポリマーを架橋させることによって、架橋ポリマーを得ることを含む。
ここで、第1モノマーを重合させる方法は、特に限定されず、例えば、RAFT剤(可逆的不可開裂連鎖移動剤)を用いたラジカル重合であってよい。なお、ラジカル重合の条件、ラジカル重合開始剤、及び第1モノマーの詳細は、上述したとおりであり、ここでは説明を省略する。
RAFT剤としては、例えばジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカルボナート、及びキサンタート等のチオカルボニルチオ化合物が挙げられる。また、RAFT剤具体例としては、ビス(n−オクチルメルカプト−チオカルボニル)ジスルフィド、4−シアノ−4−[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2−(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)−2−メチルプロピオン酸、S,S’−ビス(α,α’−ジメチル−α’’−酢酸)トリチオカーボネート、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカーボネート、4−シアノ−4−(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタン酸、シアノメチルドデシルトリチオカーボネート、又は2−シアノ−2−プロピルベンゾジチオネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
RAFT剤の使用量は、第1モノマー100モルに対して、例えば0.001モル以上、0.005モル以上、0.010モル以上、0.015モル以上、0.020モル以上、0.025モル以上、0.030モル以上、0.035モル以上、0.040モル以上、0.045モル以上、0.050モル以上、0.055モル以上、0.060モル以上、0.065モル以上、0.070モル以上、0.075モル以上、0.080モル以上、0.085モル以上、0.090モル以上、又は0.095モル以上であってよく、また0.50モル以下、0.40モル以下、0.30モル以下、0.20モル以下、0.10モル以下、又は0.095モル以下であってよい。
そして、第1モノマーを重合させて得られる前駆体ポリマーに架橋剤を添加して、前駆体ポリマーを架橋させることによって、架橋ポリマーを得ることができる。
ここで、架橋剤としては、特に限定されず、例えば1,2−ジクロロエタン、1,2−ジブロモエタン、1,3−ジクロロプロパン、1,3−ジブロモプロパン、1,4−ジクロロブタン、1,4−ジブロモブタン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、3,4−ジクロロ−1−ブテン等のジハロゲン化炭化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
前駆体ポリマーを架橋させる際に、適宜に溶媒を添加してよい。後処理を簡便にする観点から例えばメタノール又はエタノール等蒸発性の溶媒を添加することが好ましい。
架橋の際の温度は、特に限定されず、室温でもよく、適宜加熱してもよい。また、架橋の時間は、特に限定されず、数分から数日間であってよい。また、蒸発性の溶媒を用いる場合、溶媒を蒸発させながら、架橋反応を進行させることもできる。
(第2の製造方法)
本開示の第2の製造方法は、
架橋ポリマー及び可塑剤を含むプロトン伝導膜の製造方法であって、
架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、
プロトン伝導膜は、50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体であり、かつ
第2の製造方法は、プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマーと、架橋性ビニルモノマーである第2モノマーとを重合及び架橋させることによって、架橋ポリマーを得ることを含む。
ここで、第1モノマーと、第2モノマーとを重合及び架橋させる方法は、上述した「共重合方法」を適宜採用することができる。また、必要に応じて、上述した第3モノマーを用いてもよい。
本開示のプロトン伝導膜は、例えば、上述した第1の製造方法又は第2の製造方法で得られる架橋ポリマーに、可塑剤を導入することによって製造できる。架橋ポリマーへの可塑剤の導入は、揮発性の溶媒中で行うことができる。
ここで使用される溶媒は、架橋ポリマー及び可塑剤との親和性が高く、かつ強酸に安定な極性溶媒から選択されてよく、具体的には例えば、アルコール、エーテル等であってよい。アルコールは例えば、メタノール、エタノール等であってよい。エーテルは例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等であってよい。溶媒の使用量は、架橋ポリマー及び可塑剤の合計100質量部に対して、例えば、500質量部以上、750質量部以上、1,000質量部以上、1,250質量部以上、又は1,500質量部以上であってよく、例えば、5,000質量部以下、4,500質量部以下、4,000質量部以下、3,500質量部以下、又は3,000質量部以下であってよい。
架橋ポリマーを、可塑剤を溶媒で溶かした溶液に浸漬させた後、溶媒を除去することにより、本開示のプロトン伝導膜が得られる。
プロトン伝導膜を膜状に成形することは、架橋ポリマーに可塑剤を導入した後で溶媒を除去する前に、例えば、キャスト法、プレス法等の方法によって適宜行うことができる。
〈燃料電池〉
本開示の燃料電池は、本開示のプロトン伝導膜を有する。特に本開示の燃料電池は、燃料流路を有する燃料極側セパレータ、燃料極側触媒層、本開示のプロトン伝導膜、空気極側触媒層、及び空気流路を有する空気極側セパレータがこの順で積層された積層体を有する。また特に本開示の燃料電池は、燃料流路を有する燃料極側セパレータ、燃料極側ガス拡散層、燃料極側触媒層、本開示のプロトン伝導膜、空気極側触媒層、空気極側ガス拡散層、及び空気流路を有する空気極側セパレータがこの順で積層された積層体を有する。
以下、本開示について実施例の形式で詳細に説明する。以下の実施例は、本開示の用途を何ら限定するものではない。
《ポリマーの合成》
〈合成例1:架橋P4VPの合成〉
本合成例では、下記のようにして、プロトン受容性基としてのピリジル基を繰り返し単位に有する架橋ポリマーを合成した。
塩基性アルミナを充填したカラムに、未精製の4−ビニルピリジンを通して精製した。
プロトン受容性基を有する第1モノマーとしての精製後の4−ビニルピリジン(4VP)2.00g(19.0mmol)、架橋性の第2モノマーとしてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)50.3mg(0.326mmol)、及びラジカル重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.0mg(0.012mmol)を、サンプル瓶内で混合して、原料液を得た。この原料液中の第1モノマー:第2モノマー:ラジカル重合開始剤の質量比はおよそ、1000:25:1であった。また、この原料液中の第1モノマー:第2モノマー:ラジカル重合開始剤のモル比はおよそ、1583:27:1であった。モノマーの仕込み比どおりで重合が進行すれば、得られる架橋ポリマーの繰り返し単位のうちの、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する第1モノマーの割合は、約97.6質量%(≒1000/(1000+25))となるはずである。これらの値については、下記の表1にまとめている。
原料液に対して窒素ガスによるバブリングを45分間行った後、オイルバスにより、常圧下、70℃に昇温し、500rpmの撹拌下に3.5時間にわたって重合反応させた。反応終了後、サンプル瓶をオイルバスから取り出し、50℃のホットプレート上に2日間にわたって静置した。2日間経過後、サンプル瓶内の試料はガラス状になっていることが確認された。
サンプル瓶内の試料にメタノール40mLを加え、1時間浸漬した。1時間後、メタノールを除去し、同量の新しいメタノールを加え、再度1時間の浸漬を行った。このメタノール浸漬操作を3回繰り返し、未反応モノマー、低分子オリゴマー等を除去して精製した。次いで、50℃のホットプレート上に1日間にわたって静置した後、真空乾燥器中、50℃において12時間乾燥してメタノールを完全に除去することにより、架橋ポリ(4−ビニルピリジン)(架橋P4VP)を得た。
得られた架橋P4VPの構造を下記に示す。
〈合成例2(比較合成例):非架橋P4VPの合成〉
本合成例では、下記のようにして、プロトン受容性基としてのピリジル基を繰り返し単位に有する非架橋ポリマーを合成した。
塩基性アルミナを充填したカラムに、未精製の4−ビニルピリジンを通して精製した。
プロトン受容性基を有する第1モノマーとしての4−ビニルピリジン(4VP)40mL(376mmol)、可逆的付加開裂連鎖移動剤(RAFT剤)としてのS,S’−ビス(α,α’−ジメチル−α’’−酢酸)トリチオカーボネート101mg(0.358mmol)、及びラジカル重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)29.4mg(0.179mmol)を、ナスフラスコ内で混合して原料液を得た。この原料液中の第1モノマー:RAFT剤:ラジカル重合開始剤のモル比はおよそ、2100:2:1であった。モノマーの仕込み比どおりで重合が進行すれば、得られる非架橋ポリマーの繰り返し単位のうちの、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する第1モノマーの割合は、約100質量%となるはずである。
原料液に対して窒素ガスによるバブリングを45分間にわたって行った後、オイルバスにより、常圧下、80℃に昇温し、500rpmの撹拌下に1.5時間にわたって重合反応させた。反応終了後、ナスフラスコを液体窒素に漬けて、重合を停止した。
重合停止後のナスフラスコ中の試料を用いて、非架橋4VPの平均重合度を調べた。具体的には、ナスフラスコ内試料の一部をとり、重クロロホルムに溶解してH−NMRを測定して非架橋4VPの転化率を見積もり、平均重合度を決定した。その結果、非架橋4VPの転化率は38%であり、平均重合度は399であった。
重合停止後のナスフラスコ中の試料について再沈精製を行った。具体的には、下記のようにして再沈精製を行った。
試料にクロロホルムを加えて、濃度8質量%のポリマー溶液を調製した。このポリマー溶液を大過剰のn−ヘキサン中に滴下して、固体状の非架橋ポリ(4−ビニルピリジン)(非架橋P4VP)を析出させた。得られた固体状ポリマーを吸引ろ過して分離後、真空乾燥によって十分に乾燥させた。乾燥後の非架橋P4VPを、再びクロロホルムに溶解させ、n−ヘキサン中に滴下して固体状の非架橋P4VPを析出させた。非架橋P4VPの析出操作を合計3回行い、未反応モノマー、低分子オリゴマー等を除去した。その後、真空乾燥によって十分に乾燥させることにより、精製された非架橋P4VPを得た。
得られた精製非架橋P4VPについて、以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn)は、1.3であった。
溶媒、溶出液:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
ポリマー濃度:0.5質量%
溶出液流速:1mL/分
カラム:東ソー(株)製、「TSK−GELカラム4000HHR」を3本連結
得られた非架橋P4VPの構造を下記に示す。
〈合成例3:架橋PVImの合成〉
本合成例では、下記のようにして、プロトン受容性基としてイミダゾリル基を繰り返し単位に有する架橋ポリマーを合成した。
塩基性アルミナを充填したカラムに、未精製の1−ビニルイミダゾールを通して精製した。
プロトン受容性基を有する第1モノマーとしての精製後の1−ビニルイミダゾール(VIm)2.01g(21.4mmol)、架橋性の第2モノマーとしてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)50.1mg(0.325mmol)、及びラジカル重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2.3mg(0.014mmol)を、サンプル瓶内で混合して、原料液を得た。この原料液中の第1モノマー:第2モノマー:ラジカル重合開始剤の質量比はおよそ、1000:25:1であった。また、この原料液中の第1モノマー:第2モノマー:ラジカル重合開始剤のモル比はおよそ、1528:23:1であった。モノマーの仕込み比どおりで重合が進行すれば、得られる架橋ポリマーの繰り返し単位のうちの、プロトン受容性基としてのイミダゾリル基を有する第1モノマーの割合は、約97.6質量%(≒1000/(1000+25))となるはずである。これらの値については、下記の表1にまとめている。
原料液に対して窒素ガスによるバブリングを40分間行った後、オイルバスにより、常圧下、80℃に昇温し、500rpmの撹拌下に4時間にわたって重合反応させた。反応終了後、サンプル瓶をオイルバスから取り出し、50℃のホットプレート上に2日間にわたって静置した。2日間経過後、サンプル瓶内の試料はガラス状になっていることが確認された。
サンプル瓶内の試料にメタノール40mLを加え、1時間浸漬した。1時間後、メタノールを除去し、同量の新しいメタノールを加え、再度1時間の浸漬を行った。このメタノール浸漬操作を3回繰り返し、未反応モノマー、低分子オリゴマー等を除去して精製した。次いで、50℃のホットプレート上に1日間にわたって静置した後、真空乾燥器中、50℃において2日間にわたって乾燥してメタノールを完全に除去することにより、架橋ポリ(1−ビニルイミダゾール)(架橋PVIm)を得た。
得られた架橋PVImの構造を下記に示す。
〈合成例4:架橋P(4VP−co−S)の合成〉
本合成例では、下記のようにして、プロトン受容性基としてのピリジル基を繰り返し単位に有する架橋ポリマーを合成した。
塩基性アルミナを充填したカラムに、未精製の4−ビニルピリジンを通して精製した。同様にしてスチレンも精製した。
プロトン受容性基を有する第1モノマーとしての精製後の4−ビニルピリジン(4VP)0.663g(6.31mmol)、架橋性の第2モノマーとしてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)25.3mg(0.164mmol)、プロトン受容性基を有さない非架橋性の第3モノマーとしてのスチレン(S)0.332g(3.19mmol)、ラジカル重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.1mg(0.0067mmol)を、サンプル瓶内で混合して原料溶液を得た。この原料溶液中の第1モノマー:第2モノマー:第3モノマー:ラジカル重合開始剤の質量比はおよそ、600:23:300:1であった。また、この原料溶液中の第1モノマー:第2モノマー:第3モノマー:ラジカル重合開始剤のモル比はおよそ、942:24:476:1であった。モノマーの仕込み比どおりで重合が進行すれば、得られる架橋ポリマーの繰り返し単位のうちの、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する第1モノマーの割合は、約65.0質量%(≒600/(600+23+300))となるはずである。これらの値については、下記の表1にまとめている。
原料溶液に対して窒素ガスによるバブリングを30分間行った後、オイルバスにより、常圧下、80℃に昇温し、500rpmの撹拌下で7時間半にわたって重合反応させた。その後、サンプル瓶をオイルバスから取り出したところ、サンプル瓶内の試料はガラス状になっていることが確認された。
上記試料の入ったサンプル瓶にクロロホルム40mLを加えて、2時間半にわたって浸漬した。2時間半後にクロロホルムを除去し、同量の新しいクロロホルムを加え、再度2時間半にわたって浸漬を行った。このクロロホルム浸漬操作を3回繰り返し、未反応モノマー、低分子オリゴマー等を除去して精製した。得られた試料はクロロホルムで膨潤していたので、このクロロホルムを除去するために50℃のホットプレート上で約12時間にわたって放置し、その後、真空乾燥器中、50℃において1週間にわたって乾燥させることで揮発性溶媒であるクロロホルムを完全に除去することにより、架橋ポリ(4−ビニルピリジン−co−スチレン)(架橋P(4VP−co−S))を得た。
得られた架橋P(4VP−co−S)の構造を下記に示す。
〈合成例5:架橋P(4VP−co−S)の合成〉
本合成例では、下記のようにして、プロトン受容性基としてのピリジル基を繰り返し単位に有する架橋ポリマーを合成した。
この合成例では、原料溶液中の第1モノマー:第2モノマー:第3モノマー:ラジカル重合開始剤の質量比をおよそ、420:21:410:1にしたことを除いて合成例4と同様にして、架橋ポリ(4−ビニルピリジン−co−スチレン)(架橋P(4VP−co−S))を得た。モノマーの仕込み比どおりで重合が進行すれば、得られる架橋ポリマーの繰り返し単位のうちの、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する第1モノマーの割合は、約49.4質量%(≒420/(420+21+410))となるはずである。これらの値については、下記の表1にまとめている。
〈合成例6:架橋P(4VP−co−S)の合成〉
本合成例では、下記のようにして、プロトン受容性基としてのピリジル基を繰り返し単位に有する架橋ポリマーを合成した。
この合成例では、原料溶液中の第1モノマー:第2モノマー:第3モノマー:ラジカル重合開始剤の質量比をおよそ、340:25:680:1にしたことを除いて合成例4と同様にして、架橋ポリ(4−ビニルピリジン−co−スチレン)(架橋P(4VP−co−S))を得た。モノマーの仕込み比どおりで重合が進行すれば、得られる架橋ポリマーの繰り返し単位のうちの、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する第1モノマーの割合は、約32.5質量%(≒340/(340+25+680))となるはずである。これらの値については、下記の表1にまとめている。
〈合成例7(比較合成例):架橋PSの合成〉
本合成例では、プロトン受容性基を繰り返し単位に実質的に有さない架橋ポリマーを合成した。
塩基性アルミナを充填したカラムに、未精製のスチレンを通して精製した。
架橋性の第2モノマーとしてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)24.8mg(0.161mmol)、プロトン受容性基を有さない非架橋性の第3モノマーとしてのスチレン(S)1.01g(9.71mmol)、ラジカル重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.1mg(0.0067mmol)、溶媒としてのメタノール0.100gを、サンプル瓶内で混合して原料溶液を得た。この原料溶液中の第2モノマー:第3モノマー:ラジカル重合開始剤の質量比はおよそ、23:920:1であった。また、この原料溶液中の第2モノマー:第3モノマー:ラジカル重合開始剤のモル比はおよそ、24:1449:1であった。モノマーの仕込み比どおりで重合が進行すれば、得られる架橋ポリマーの繰り返し単位のうちの、プロトン受容性基としての第1モノマーの割合は、0質量%(=0/(23+920))となるはずである。これらの値については、下記の表1にまとめている。
原料溶液に対して窒素ガスによるバブリングを30分間にわたって行った後、オイルバスにより、常圧下、80℃に昇温し、500rpmの撹拌下で7時間半にわたって反応させた。その後、サンプル瓶をオイルバスから取り出したところ、サンプル瓶内の試料はガラス状になっていることが確認された。
上記試料の入ったサンプル瓶にテトラヒドロフラン(THF)40mLを加えて2時間半にわたって浸漬した。2時間半後にTHFを除去し、同量の新しいTHFを加え、再度2時間半にわたって浸漬を行った。このTHF浸漬操作を3回繰り返し、未反応モノマー、低分子オリゴマー等を除去して精製した。得られた試料はTHFで膨潤していたので、このTHFを除去するために50℃のホットプレート上で約12時間にわたって放置し、その後、真空乾燥器中、50℃において1週間にわたって乾燥させることで揮発性溶媒であるTHFを完全に除去することにより、架橋ポリスチレン(架橋PS)を得た。
得られた架橋PSの構造を下記に示す。
〈合成例8:後架橋P4VPの合成〉
本合成例では、下記のようにして、合成例2で得られたピリジル基を有する非架橋ポリマー(非架橋P4VP)に架橋剤を反応させることで、プロトン受容性基としてのピリジル基を繰り返し単位に有する後架橋ポリマーを合成した。
より具体的には、上述した合成例2で得られた非架橋P4VP1.01gをメタノール溶媒9.94gに溶解させた。この溶液中に架橋剤として1,4−ジブロモブタンを0.0101g加え、よく混合した後にポリメチルペンテン製シャーレ(内径8.5cm)に注ぎ、50℃で約2日間静置させることで揮発性溶媒(メタノール)を蒸発させ、架橋反応を進行させた。その後、真空乾燥器を用いて50℃で約1日間乾燥させることで揮発性溶媒を完全に除去し、後架橋されたポリ(4−ビニルピリジン)(後架橋P4VP)の膜を得た。
なお、得られた後架橋P4VPの膜は、メタノール等の良溶媒中で溶解せず、膨潤したことから、この膜は架橋されていることがわかった。
後架橋P4VPの構造を下記に示す。
〈実施例1〉
本実施例では、架橋ポリマーとして合成例1で得られた架橋P4VPを用い、かつ可塑剤として濃硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、そのプロトン伝導率を調べた。
(1)プロトン伝導膜の調製
容量10mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに、濃硫酸(98%)269mg及びメタノール5.01gを入れて混合し、硫酸のメタノール溶液を得た。この溶液に架橋P4VP57.9mgを浸漬させて50℃にて2日間にわたって静置して、架橋P4VP中に硫酸を導入するとともに、メタノールを除去した。このようにして得られた膜を、真空乾燥器中で50℃にて2日間にわたって乾燥してメタノールを完全に除去することにより、プロトン伝導膜を調製した。
得られたプロトン伝導膜の質量が313.0mgであったことから、この膜が、18質量%(57.9mg)の架橋P4VP、及び82質量%(255.1mg)の硫酸を含むことが確認された。また、得られたプロトン伝導膜は、粘弾性固体であった。
得られたプロトン伝導膜では、架橋ポリマーは、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する架橋P4VPであり、可塑剤は、プロトン供与性化合物である硫酸(pKa:−3.0)である。硫酸のほとんどは、プロトンが遊離して硫酸イオン(アニオン)になっており、また架橋P4VP中のピリジル基のほとんどは、硫酸からのプロトンを受容してピリジニウムイオン(カチオン)を生成していると考えられる。
(2)プロトン伝導膜の評価
(i)ガラス転移点測定
得られたプロトン伝導膜について、JIS K 7121に準拠し、昇温速度10℃/分の条件にて、−90℃〜40℃の温度範囲で示差走査熱量測定(DSC)を行った。その結果、プロトン伝導膜として単一のガラス転移点Tg−79℃を示した。
(ii)無荷重静置試験
上記で得られたプロトン伝導膜を、温度を変えながら無荷重状態で1時間にわたって静置し、以下の基準で評価した。
−40℃以上150℃以下の温度範囲で漏出物及び揮発物の双方が見られなかった場合:A
100℃以上の温度で漏出物又は揮発物が確認された場合:B
−40℃以上の領域で漏出物又は揮発物が確認された場合:C
実施例1のプロトン伝導膜についての無荷重漏出試験では、−40℃以上150℃以下の温度範囲で漏出物は見られずに評価結果は「A」であり、電池の使用温度範囲において可塑剤が漏出しないことが確認された。これは、架橋ポリマー中のピリジル基が、硫酸から遊離したプロトンを受容してピリジニウムイオンとなり、このピリジニウムイオン(カチオン)と、プロトンを放出した硫酸イオン(アニオン)との間で、イオン性相互作用を生じていることによると考えられる。
(iii)交流インピーダンス測定
厚さ0.1mmの白金網を電極として用い、得られたプロトン伝導膜の交流インピーダンス測定を行った。
電極間距離を0.70cmとして対向配置した一対の電極間に、プロトン伝導膜(厚さ0.13cm、幅0.42cm)を挟み込んだ。電極間に挟み込んだプロトン伝導膜を自然対流式の定温恒温乾燥器中に入れて、温度50℃、相対湿度12%RHの条件下で1時間にわたって乾燥させた。なお、相対湿度の測定にはプロフェッショナル温湿度計testo635−2(テストー製)を用いた。
乾燥器内温度が安定するまで待った後、FRA(周波数特性分析)オプション付きのポテンショ/ガルバノスタットVERSASTAT 4−400(Prinston Applied Research製)を用いて、電圧80mV、周波数を10Hzから1Hzまで変化させて、無加湿条件下で交流インピーダンス測定を行った。抵抗値の絶対値がほぼ一定となる周波数領域における抵抗値を読み取ったところ、1.4×10Ωであった。
更に、下記数式(1)によってこのプロトン伝導膜のプロトン伝導率を求めたところ、87mS/cmであり、このプロトン伝導膜が高いプロトン伝導率を示すことを確認した。
プロトン伝導率=電極間距離/(膜の厚さ×膜の幅×抵抗値) (1)
次いで、測定条件を温度80℃、相対湿度3.5%RHに変更して、交流インピーダンス測定を行ったところ、抵抗値の絶対値がほぼ一定となる周波数領域における抵抗値は1.0×10Ωであり、プロトン伝導率は120mS/cmであり、プロトン伝送率は高い値を示した。
更に、測定時の温度及び相対湿度を変更して交流インピーダンス測定を行い、抵抗値の絶対値がほぼ一定となる周波数領域における抵抗値、及びプロトン伝導率を求めた。その結果、温度95℃、相対湿度2.5%RHでは、抵抗値は8.7×10Ω、プロトン伝導率は140mS/cmであり;温度110℃、相対湿度2.0%RHでは、抵抗値は8.3×10Ω、プロトン伝導率は150mS/cmであり;温度120℃、相対湿度1.8%RHでは、抵抗値は7.8×10Ω、プロトン伝導率は160mS/cmであり、いずれの測定条件においても、プロトン伝導率は高い値を示した。
本実施例のプロトン伝導膜は、交流インピーダンスの測定中、漏出物は見られず、流動せずに膜形状を維持しており、また粘弾性固体であった。
〈実施例2及び3、並びに比較例1〉
架橋ポリマー及び可塑剤の使用量を下記の表2に示すように変更した他は実施例1と同様にして、プロトン伝導膜を調製し、評価した。評価結果は下記の表2に示す。
〈実施例4〉
本実施例では、架橋ポリマーとして合成例1で得られた架橋P4VPを用い、かつ可塑剤としてリン酸(pKa:2.1)(85%)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、評価した。
(1)プロトン伝導膜の調製
容量10mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに、リン酸(85%)112mg及びメタノール5.01gを入れて混合し、リン酸のメタノール溶液を得た。この溶液に架橋P4VP23.6mgを浸漬させて50℃にて2日間にわたって静置して、架橋P4VP中にリン酸を導入するとともに、メタノールを除去した。このようにして得た膜を、真空乾燥器中で50℃にて2日間にわたって乾燥してメタノールを完全に除去することにより、プロトン伝導膜を調製した。
得られたプロトン伝導膜の質量が119.0mgであったことから、この膜が、20質量%(23.6mg)の架橋P4VP、及び80質量%(95.4mg)のリン酸を含むことが確認された。また、得られたプロトン伝導膜は、粘弾性固体であった。
得られたプロトン伝導膜では、架橋ポリマーは、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する架橋P4VPであり、可塑剤は、プロトン供与性化合物であるリン酸(pKa:2.1)であった。リン酸の一部は、プロトンが遊離してリン酸イオン(アニオン)になっており、また架橋P4VP中のピリジル基は、リン酸からのプロトンを受容してピリジニウムイオン(カチオン)を生成していると考えられる。
(2)プロトン伝導膜の評価
得られたプロトン伝導膜について、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記の表2に示す。
〈比較例2〉
比較例2では、架橋ポリマーとして合成例1で得られた架橋P4VPを用い、かつ可塑剤としてイソプロピルマロン酸(IPMA)(pKa:2.9)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、評価した。
(1)プロトン伝導膜の調製
容量10mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに、IPMA49mg及びメタノール5.01gを入れて混合し、IPMAのメタノール溶液を得た。この溶液に架橋P4VP37.4mgを浸漬させて50℃にて2日間にわたって静置して、架橋P4VP中にIPMAを導入するとともに、メタノールを除去した。このようにして得た膜を、真空乾燥器中で50℃にて2日間乾燥してメタノールを完全に除去することにより、プロトン伝導膜を調製した。
得られたプロトン伝導膜の質量が186.0mgであったことから、この膜が、20質量%(37.4mg)の架橋P4VP、及び80質量%(148.6mg)のIPMAを含むことが確認された。また、得られたプロトン伝導膜は、粘弾性固体であった。
得られたプロトン伝導膜では、架橋ポリマーは、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する架橋P4VPであり、可塑剤は、プロトン供与性化合物であるIPMA(pKa:2.9)である。IPMA中のカルボキシル基の一部は、プロトンが遊離してカルボキシラートイオン(アニオン)になっており、また架橋P4VP中のピリジル基は、IPMAからのプロトンを受容してピリジニウムイオン(カチオン)を生成していると考えられる。
(2)プロトン伝導膜の評価
得られたプロトン伝導膜について、実施例1と同様に評価した。
比較例2では、無荷重静置試験において、温度が100℃以上となると、プロトン伝導膜の周囲にIPMAの臭気が漂い始めた。このことから、少なくとも100℃以上の温度領域では、可塑剤が蒸発することが分かった。そのため、交流インピーダンスの測定は、50℃、80℃、及び95℃にて行い、110℃及び120℃における測定は行わなかった。評価結果を下記の表2に示す。
〈比較例3〉
比較例3では、合成例1で得られた架橋P4VPの代わりに合成例2で得られた非架橋P4VPを用い、かつ可塑剤として硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜の調製を試みた。
容量10mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに、P4VPP4VP32.8mg、硫酸(98%)133mg、及びメタノール4.16gを入れて混合し、混合溶液を調製した。この溶液を、50℃のホットプレート上に2日間にわたって静置して、メタノールを除去した。その後、メタノール除去後の残存物を、真空乾燥器中で50℃にて2日間にわたって乾燥してメタノールを完全に除去することにより、比較例3の試料を得た。
得られた試料は、流動性があり、膜形状を有していなかった。これは、ポリマーが非架橋のため、膜形状を維持することができなかったことによると考えられる。
そのため、この比較例で得られた試料については、評価を行うことができなかった。
〈実施例5〉
本実施例では、架橋ポリマーとして合成例3で得られた架橋PVImを用い、かつ可塑剤として硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、評価した。
(1)プロトン伝導膜の調製
容量10mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに、硫酸(98%)166mg及びメタノール5.10gを入れて混合し、硫酸のメタノール溶液を得た。この溶液に固体状の架橋PVIm39.8mgを浸漬させて50℃にて2日間にわたって静置して、架橋PVIm中に硫酸を導入するとともに、メタノールを除去した。このようにして得た膜を、真空乾燥器中で50℃にて2日間にわたって乾燥してメタノールを完全に除去することにより、プロトン伝導膜を調製した。
得られたプロトン伝導膜の質量が203.0mgであったことから、この膜が、20質量%(39.8mg)の架橋PVIm、及び80質量%(163.2mg)の硫酸を含むことが確認された。また、得られたプロトン伝導膜は、粘弾性固体であった。
得られたプロトン伝導膜では、架橋ポリマーは、プロトン受容性基としてのイミダゾール基を有する架橋PVImであり、可塑剤は、プロトン供与性化合物である硫酸(pKa:−3.0)である。硫酸は、プロトンが遊離して硫酸イオン(アニオン)になっており、また架橋P4VP中のピリジル基は、硫酸からのプロトンを受容してイミダゾリウムイオン(カチオン)を生成していると考えられる。
(2)プロトン伝導膜の評価
得られたプロトン伝導膜について、実施例1と同様に評価した。評価結果は下記の表2に示す。
〈実施例6〉
実施例6では、架橋ポリマーとして合成例4で得られた架橋P(4VP−co−S)を用い、かつ可塑剤として濃硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、評価した。
(1)プロトン伝導膜の調製
容量10mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに濃硫酸(98%)194mgとメタノール4.27gを添加し、その溶液に上記の架橋P(4VP−co−S)の48.6mgを浸漬させた。その後、50℃のホットプレート上に約2日間にわたって静置して、架橋P(4VP−co−S)に硫酸を導入するとともに、メタノールを除去した。その後、真空乾燥器中、50℃において約2日間にわたって乾燥させることでメタノールを完全に除去して、プロトン伝導膜を得た。
得られたプロトン伝導膜の質量は237mgであったことから、この膜が、20質量%の架橋P(4VP−co−S)、及び80質量%の硫酸を含むことが分かった。また、得られたプロトン伝導膜は粘弾性固体であった。
得られたプロトン伝導膜では、架橋ポリマーは、プロトン受容性基としてのピリジル基を有する架橋P(4VP−co−S)であり、可塑剤は、プロトン供与性化合物である硫酸(pKa:−3.0)である。硫酸は、プロトンが遊離して硫酸イオン(アニオン)になっており、また架橋P(4VP−co−S)中のピリジル基は、硫酸からのプロトンを受容してイミダゾリウムイオン(カチオン)を生成していると考えられる。
(2)プロトン伝導膜の評価
得られたプロトン伝導膜について、実施例1と同様に評価した。なお、プロトン伝導率は、110℃及び120℃で評価した。評価結果は下記の表2に示す。
〈実施例7〉
本実施例では、架橋ポリマーとして合成例5で得られた架橋P(4VP−co−S)を用い、かつ可塑剤として硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、評価した。
(1)プロトン伝導膜の調製
濃硫酸(98%)195mgとメタノール4.21gと合成例5で得られた架橋P(4VP−co−S)の固体48.7mgを使用した以外は実施例6と同様にして、プロトン伝導膜を調製した。
得られたプロトン伝導膜の質量は241mgであったことから、この膜が、20質量%の架橋P(4VP−co−S)、及び80質量%の硫酸を含むことが分かった。また、得られたプロトン伝導膜は粘弾性固体であった。
(2)プロトン伝導膜の評価
得られたプロトン伝導膜について、実施例1と同様に評価した。なお、プロトン伝導率は、110℃及び120℃で評価した。評価結果は下記の表2に示す。
〈実施例8〉
本実施例では、架橋ポリマーとして合成例6で得られた架橋P(4VP−co−S)を用い、かつ可塑剤として硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、評価した。
(1)プロトン伝導膜の調製
濃硫酸(98%)121mgとメタノール4.07gと合成例6で得られた架橋P(4VP−co−S)の固体30.0mgを使用した以外は実施例6と同様にして、プロトン伝導膜を調製した。
得られたプロトン伝導膜の質量は147mgであったことから、この膜が、20質量%の架橋P(4VP−co−S)、及び80質量%の硫酸を含むことが分かった。また、得られたプロトン伝導膜は粘弾性固体であった。
(2)プロトン伝導膜の評価
得られたプロトン伝導膜について、実施例1と同様に評価した。なお、プロトン伝導率は、110℃及び120℃で評価した。評価結果は下記の表2に示す。
〈比較例4〉
比較例4では、架橋ポリマーとして合成例7(比較合成例)で得られた含窒素複素環を繰り返し単位に実質的に有さない架橋PSを用い、かつ可塑剤として濃硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜の調製を試みた。
(2)プロトン伝導膜の調製
容量10mLのテフロン(登録商標)製ビーカーに濃硫酸(98%)164mgとTHF4.77gを添加し、その溶液に合成例7(比較合成例)で得られた架橋PSの固体41.3mgを浸漬させた。その後、50℃のホットプレート上に約2日間にわたって静置して、架橋PSに硫酸を導入することを試みるとともに、THFを除去した。THFは蒸発したが硫酸は架橋PSにほとんど吸収されておらず、硫酸と架橋PSとは分離しており、プロトン伝導膜を得られなかった。
架橋PSに硫酸が吸収されなかったのは、架橋PSが繰り返し単位にプロトン受容性基を実質的に持たず、硫酸に対する親和性を有さないためであると考えられる。
〈実施例9〉
実施例9では架橋ポリマーとして合成例8で得られた後架橋P4VPを用い、かつ可塑剤として濃硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、プロトン伝導膜を調製し、評価した。
(1)プロトン伝導膜の調製
濃硫酸(98%)554mgをメタノール5.78gに溶解した溶液をテフロン(登録商標)製容器(内径4cm)に注ぎ、その溶液中に上記の後架橋P4VP136mgを浸漬させ、50℃で約2日間静置させることで揮発性溶媒(メタノール)を蒸発させた。その後、真空乾燥器を用いて50℃で約1日間乾燥させることで揮発性溶媒を完全に除去し、後架橋P4VPをHSOで膨潤させた試料670mgを得た。HSOの重量濃度は80質量%であった。
得られたこのプロトン伝導膜の膜厚は、0.35mmであった。また、このプロトン伝導膜は粘弾性固体であった。
(2)プロトン伝導膜の評価
得られたプロトン伝導膜について、実施例1と同様にしてプロトン伝導率を評価した。プロトン伝導率の評価結果は下記の表2に示す。
(3)引張試験
得られた膜状の試料を打抜き刃型で打ち抜き、4mm幅のドッグボーン型試験片を調製した。測定装置は島津製作所製のAGS−X、50Nロードセル、50Nクリップ式つかみ具を用い、つかみ具間距離5.9mm、初期歪み速度0.33/s(引張速度1.9mm/s)にて引張試験を行った。引張試験の結果である応力−歪み曲線を図2に示す。
実施例9において、得られたヤング率、最大応力、破断伸び、応力−歪み曲線の内面積値(材料の丈夫さの指標)の結果はそれぞれ、0.10MPa、0.054MPa、60%、0.021MJ/mであった。
なお、ヤング率は応力−歪み曲線の初期勾配(歪み10%以内)、最大応力は応力の最大値、破断伸びは破断が生じたときの伸びより求めた。
上記で得られた実施例9のプロトン伝導膜の引張試験の結果から、実施例9のプロトン伝導膜は、柔軟な固体膜であることが分かった。
表1及び2で示されているように、実施例1〜9のプロトン伝導膜、すなわちプロトン受容性基を実質的な割合で有する架橋ポリマー及びプロトン供与性の適切な可塑剤を有し、かつ粘弾性固体であるプロトン伝導膜は、−40℃〜150℃の温度範囲で漏出物及び揮発物がなく、また良好なプロトン伝導性を有していた。
これに対して、比較例1のプロトン伝導膜、すなわちプロトン受容性基を実質的な割合で有する架橋ポリマー及びプロトン供与性の適切な可塑剤を有し、可塑剤含有率が低いことによって粘弾性固体ではなくガラス状固体であるプロトン伝導膜は、プロトン伝導性が低かった。
また、比較例2のプロトン伝導膜、すなわちプロトン受容性基を実質的な割合で有する架橋ポリマー及びプロトン供与性の可塑剤を有し、可塑剤のpKaが大きすぎるプロトン伝導膜は、プロトン伝導性が低かった。
また、比較例3では、プロトン受容性基を実質的な割合で有するポリマー及びプロトン供与性の可塑剤を用いてプロトン伝導膜を形成することを試みたが、このポリマーが非架橋ポリマーであることによって、材料が流動性を示し、膜形状とすることができなかった。
また、比較例4では、架橋ポリマー及びプロトン供与性の可塑剤を用いてプロトン伝導膜を形成することを試みたが、この架橋ポリマーがプロトン受容性基を実質的に有さないことによって、プロトン供与性の可塑剤がポリマーに吸収されず、したがってプロトン伝導膜を得られなかった。
なお、プロトン受容性基を有する第1モノマーの割合を変えた実施例6〜8(合成例4〜6)では、第1モノマーの割合が65.0mol%から32.5mol%へと低下したことで、膜中の遊離プロトン濃度が上昇したと思われ、それによりプロトン伝導性が200mS/cm程度まで上昇したと考えられる。
〈参考例1〉
参考例1では、プロトン受容性基(ピリジル基)に対するプロトン供与性化合物(硫酸)のモル比が変化したときのガラス転移点(Tg)の変化傾向を調べた。
参考例1のプロトン受容性基(ピリジル基)を有するポリマーとして、上述した合成例2の非架橋ポリマー(非架橋P4VP)を用いた。
上記の非架橋P4VPと、濃硫酸(pKa:−3.0)(98%)とを、異なるモル比で混合させて、それぞれのガラス転移点を測定した。結果は、表3及び図3に示す。
表3及び図3に示されているように、ピリジル基に対する硫酸のモル比が0.12〜0.71であるとき、非架橋P4VPと硫酸との混合物のTgは、非架橋P4VPそのもののTgよりも上がっていく傾向が得られた。これは、硫酸のほとんどが非架橋P4VPのピリジル基とセグメント運動の生じにくい酸−塩基複合体を形成していたためと考えられる。
これに対して、ピリジル基に対する硫酸のモル比が1を超え始めるとき、例えばピリジル基に対する硫酸のモル比が1.1であるときから、非架橋P4VPと硫酸との混合物のTgが大きく低下する傾向が得られた。これは、ピリジル基に対する硫酸のモル比が1を超えたところで、硫酸が可塑剤として機能し、ポリマー鎖のセグメント運動を活発に生じやすくしたためと考えられる。
なお、上記で得られた結果は、硫酸に含まれるプロトンのモル数によるものではなく、硫酸そのもののモル数によるものである。上記結果は、全てのプロトン供与性化合物について、適用可能と考えられる。
〈参考例2〉
参考例2では、120℃において、プロトン受容性基(ピリジル基)に対するプロトン供与性化合物(硫酸)のモル比が変化したときのプロトン伝導膜のプロトン伝導率の変化傾向を調べた。
参考例2では、上述した合成例1で得られた架橋P4VPを用い、かつ可塑剤としての濃硫酸(pKa:−3.0)(98%)を用いて、硫酸の含有量を変化させたこと以外は、実施例9と同じようにして、プロトン伝導膜を調製して、120℃におけるプロトン伝導率を調べた。結果は図4に示す。
図4に示されているように、ピリジル基に対する硫酸のモル比が1.1(硫酸含有量50質量%)未満では、高い抵抗があったため、インピーダンス測定によりプロトン伝導率を見積もることができなかった(点線で示す)。
一方で、ピリジル基に対する硫酸のモル比が1.3(硫酸含有量55質量%)から1.6(硫酸含有量60質量%)まで、モル比の値が大きくなるにつれ、プロトン伝導率は、2〜3桁も上昇したことが分かった。これは、酸−塩基複合体形成に利用されない過剰量の硫酸に由来する遊離プロトンの濃度が増加するために急激なプロトン伝導率の増加が見られたと考えられる。
上述した参考例1及び2の結果から、側鎖にプロトン受容性基を有する架橋されたポリマーにプロトン供与性化合物を浸み込ませた場合、プロトン受容性基のモル数よりも多量のプロトン供与性化合物が含有すると、ガラス転移点は急激に低くなり、無加湿下におけるプロトン伝導率は急激に大きくなることがわかった。

Claims (11)

  1. 架橋ポリマー及び可塑剤を含み、
    前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、前記架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
    前記可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、かつ
    50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体である、
    プロトン伝導膜。
  2. 前記架橋ポリマー及び前記可塑剤の合計を100質量部としたときの前記可塑剤の含有量が、60質量部以上90質量部以下である、請求項1に記載のプロトン伝導膜。
  3. 前記プロトン供与性化合物が、硫酸及びリン酸から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載のプロトン伝導膜。
  4. 前記プロトン受容性基が、含窒素複素環基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
  5. 前記プロトン伝導膜のガラス転移点が30℃以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
  6. 前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマー、及び架橋性ビニルモノマーである第2モノマーの共重合体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
  7. 前記プロトン伝導膜のプロトン伝導率が、50℃において7.4mS/cm以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
  8. 前記プロトン受容性基に対する前記プロトン供与性化合物のモル比が、1.0以上10.0以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のプロトン伝導膜を有する、燃料電池。
  10. 架橋ポリマー及び可塑剤を含むプロトン伝導膜の製造方法であって、
    前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、前記架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
    前記可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、
    前記プロトン伝導膜は、50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体であり、かつ
    前記方法は、前記プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマーを重合させて、前駆体ポリマーを得て、そして前記前駆体ポリマーに架橋剤を添加して、前記前駆体ポリマーを架橋させることによって、前記架橋ポリマーを得ることを含む、
    プロトン伝導膜の製造方法。
  11. 架橋ポリマー及び可塑剤を含むプロトン伝導膜の製造方法であって、
    前記架橋ポリマーが、プロトン受容性基を、前記架橋ポリマーを構成する繰り返し単位の10mol%以上有し、
    前記可塑剤が、pKa2.5以下のプロトン供与性化合物を含み、
    前記プロトン伝導膜は、50℃以上120℃以下の温度範囲で粘弾性固体であり、かつ
    前記方法は、前記プロトン受容性基を有するビニル系モノマーである第1モノマーと、架橋性ビニルモノマーである第2モノマーとを重合及び架橋させることによって、前記架橋ポリマーを得ることを含む、
    プロトン伝導膜の製造方法。
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