JP2019132698A - 磁性線材の製造方法、磁性線材および磁気センサ - Google Patents

磁性線材の製造方法、磁性線材および磁気センサ Download PDF

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Abstract

【課題】磁気センサのコイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくする。【解決手段】大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材の製造方法であって、磁性材料を、熱処理を介在させながら複数回線引きすることにより線状体を形成する線状体形成工程と、線状体を捻る捻り工程とを備え、捻り工程においては、線状体を一方向に捻る第1の処理P、Rと、線状体を他方向に捻る第2の処理Qとを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行った後に、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に近づく方向に線状体を捻る第3の処理Sを開始し、その後、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に達する前に第3の処理Sを終了する。【選択図】図5

Description

本発明は、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材の製造方法、磁性線材および磁気センサに関する。
例えば鉄、コバルトおよびバナジウムを含む合金を、熱処理を介在させながら複数回線引きすることにより、例えば直径0.1mm〜1mm程度の線状体を形成し、その線状体を捻ることにより、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材を形成することができる。
このような方法で形成された磁性線材は、その長さ方向に磁化が容易な一軸異方性を有する。また、この磁性線材においては、その中心側部分が外周側部分よりも保磁力が大きい。当該磁性線材に、その長さ方向と同じ方向の第1の磁界を付与し、当該磁性線材の中心側部分および外周側部分の磁化方向をいずれも一方向にセットした後、当該磁性線材に、第1の磁界よりも弱く、かつ第1の磁界と反対方向の第2の磁界を付与すると、当該磁性線材の外周側部分の磁化方向が急反転し、中心側部分の磁化方向と反対の方向になる。その後、第2の磁界の方向を反転させると、当該磁性線材の外周側部分の磁化方向が再び急反転し、中心側部分の磁化方向と同じ方向になる。
このような大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材を用いて磁気センサを形成することができる。すなわち、磁性線材の外周側にコイルを設ける。これにより、磁性線材の外周側部分の磁化方向が急反転したとき、コイルにパルス電圧が発生する。このパルス電圧に基づいて外部磁界の有無や外部磁界の方向を検出することができる。
下記の特許文献1には、感磁性ワイヤ(磁性線材)の製造方法が記載されている。
特開2006−114857号公報
磁性線材を磁気センサに用いる場合、外部磁界の方向が一方向から他方向に変化したときにコイルから出力される例えばプラスのパルス電圧の値のばらつきが小さいことが望ましい。同様に、外部磁界の方向が他方向から一方向に変化したときにコイルから出力される例えばマイナスのパルス電圧の値のばらつきが小さいことが望ましい。また、上記プラスのパルス電圧の絶対値と上記マイナスのパルス電圧の絶対値とが互いに等しいことが望ましい。すなわち、磁気センサに交流の外部磁界を付与したときにコイルから出力されるパルス電圧の波形をグラフに表した場合に、上記プラスのパルス電圧の波形と、上記マイナスのパルス電圧の波形とが、電圧が零である直線を基準に互いに対称であることが望ましい。
コイルから出力されるパルス電圧の値のばらつきは、磁性線材の外周側部分の磁化方向(以下、これを簡略化して「磁性線材の磁化方向」と述べる。)が外部磁界の方向の変化に応じて反転する速度のばらつき、すなわち、外部磁界の方向が変化したときに、磁性線材の磁化方向が変化を開始してからそれが終わるまでにかかる時間のばらつきによって生じる。磁性線材の磁化方向の反転速度は、磁性線材の内部の応力の残留の状態によって変化すると考えられる。また、磁性線材の内部の応力の残留状態は、磁性線材を製造する際に線状体を捻る方法(例えば捻り量、捻り方向、または捻り方向を変更する回数等)によって変化すると考えられる。実際、磁性線材を製造する際に線状体を捻る方法を変えると、この磁性線材を用いた磁気センサのコイルから出力されるパルス電圧のばらつきの様子や度合いが変化することが確認されている。そこで、コイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる線状体の捻り方法を考え出し、これを採用して磁性線材を製造することが望まれる。しかしながら、現在に至るまで、コイルから出力されるパルス電圧のばらつきを十分に小さくすることができる線状体の捻り方法は知られておらず、また、これを考え出すことは容易でない。
この点、上記特許文献1には、感磁性ワイヤを試作し、その出力特性を確認し、確認結果に応じてワイヤに加える捻り回転方向または捻り回転数を補正する感磁性ワイヤの製造方法が記載されている。しかしながら、この文献には、捻り回転方向または捻り回転数を補正する汎用性および具体性のある方法は記載されていない。確かに、この文献の実施例の欄には、ワイヤに加える捻り回転数をやや減少させる旨が記載されているが、捻り回転数をどの程度減少させるかは、実際に試作した感磁性ワイヤの出力特性を確認しながら試行錯誤を重ねて決定するものと考えられる。すなわち、この文献の実施例の欄に記載された補正方法は、汎用性がなく、具体性に欠ける。それゆえ、コイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる汎用性および具体性のあるワイヤ(線状体)の捻り方法を考え出すことが望まれる。
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、磁気センサのコイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる磁性線材の製造方法、磁性線材および磁気センサを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の磁性線材の製造方法は、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材の製造方法であって、磁性材料により線状に形成された線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行った後に、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に近づく方向に線状体を捻る第3の処理を開始し、その後、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に達する前に第3の処理を終了することを特徴とする。本発明の磁性線材の製造方法により製造した磁性線材を用いて磁気センサを形成することにより、磁気センサのコイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる。
また、上記本発明の磁性線材の製造方法において、前記第1の処理と前記第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理と前記第2の処理とをこの順序で交互に繰り返し行い、前記第1の処理における線状体の捻り量を初回の前記第1の処理を除いて前記第1の処理ごとに一定とし、前記第2の処理における線状体の捻り量を前記第2の処理ごとに一定とすることが好ましい。
また、上記本発明の磁性線材の製造方法において、前記第1の処理と前記第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理における線状体の捻り量を前記第1の処理ごとに変化させ、前記第2の処理における線状体の捻り量を前記第2の処理ごとに変化させてもよい。
また、上記本発明の磁性線材の製造方法において、前記第1の処理と前記第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理における線状体の捻り量を前記第1の処理を行うごとに増加させ、前記第2の処理における線状体の捻り量を前記第2の処理を行うごとに増加させてもよい。
また、上記本発明の磁性線材の製造方法において、前記第1の処理と前記第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理と前記第2の処理とをこの順序で交互に繰り返し行い、初回の前記第1の処理を除き、前記第1の処理における線状体の捻り量を前記第1の処理を行うごとに減少させ、前記第2の処理における線状体の捻り量を前記第2の処理を行うごとに減少させてもよい。
また、上記本発明の磁性線材の製造方法において、線状体は、磁性材料を、熱処理を介在させながら複数回線引きすることにより形成されていることが好ましい。
また、上記本発明の磁性線材の製造方法における磁性材料は、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料であることが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明の磁性線材は、大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材であって、外周面に複数形成された筋状の捻り痕の傾斜角度が当該磁性線材の長さ方向の複数の部分においてそれぞれ異なることを特徴とする。このような構成を有する本発明の磁性線材を用いて磁気センサを形成することにより、磁気センサのコイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる。
また、上記本発明の磁性線材において、複数の捻り痕の傾斜角度はいずれも0度よりも大きく90度未満であることが好ましい。
また、上記本発明の磁性線材は、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料により形成されていることが好ましい。
また、上記課題を解決するために、本発明の磁気センサは、上記本発明の磁性線材と、コイルと、軸部および当該軸部の両端側に設けられた鍔部を有するボビンとを備え、磁性線材は前記軸部の内部に磁性線材の長さ方向が前記軸部の軸方向を向くように収容され、コイルは前記軸部の外周側に巻回されていることを特徴とする。本発明の磁気センサによれば、コイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる。
本発明によれば、磁気センサのコイルから出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる。
本発明の実施形態の磁気センサを示す外観図である。 図1中の矢示II−II方向から見た磁気センサを示す断面図である。 図1中の磁気センサの磁性線材およびボビンを示す外観図である。 本発明の実施形態の磁性線材の製造方法を示すフローチャートである。 本発明の実施形態の磁性線材の製造方法における捻り方法を示すグラフである。 本発明の実施形態の磁性線材の製造方法における捻り方法の第1の変形例を示すグラフである。 本発明の実施形態の磁性線材の製造方法における捻り方法の第2の変形例を示すグラフである。 本発明の実施形態の磁性線材の製造方法における捻り方法の第3の変形例を示すグラフである。 本発明の実施形態における線状体の外周面を示す説明図である。 本発明の実施形態の磁性線材の外周面を示す説明図である。 本発明の実施形態における線状体の外周面の写真である。 本発明の実施形態の磁性線材の一部分の外周面の写真である。 本発明の実施形態の磁性線材の他の部分の外周面の写真である。 本発明の実施形態の磁気センサのコイルから出力されたパルス電圧を示す波形図である。 線状体の捻り方法の第1の比較例を示すグラフである。 第1の比較例により形成された磁性線材の外周面を示す説明図である。 第1の比較例により形成された磁性線材を用いた磁気センサのコイルから出力されたパルス電圧を示す波形図である。 線状体の捻り方法の第2の比較例を示すグラフである。 第2の比較例により形成された磁性線材の外周面を示す説明図である。 第2の比較例により形成された磁性線材の外周面を示す説明図である。
(磁気センサ・磁性線材)
図1は本発明の実施形態の磁気センサ1を示している。図2は図1中の矢示II−II方向から見た磁気センサ1の横断面を示している。図3は図1中の磁気センサ1からコイル3を取り除いた状態を示している。なお、磁気センサ1の各部の配置や形状等を説明するに当たり、説明の便宜上、磁気センサ1の上(U)、下(D)、左(L)、右(R)、前(F)、後(B)の方向を、図1ないし図3中の右下に描いた矢印が示す方向とする。
図1に示すように、磁気センサ1は磁性線材2、コイル3およびボビン4を備えている。磁性線材2は、磁性材料により形成された線材である。磁性線材2を形成する磁性材料は、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料であることが好ましく、具体的には、鉄、コバルトおよびバナジウムを含む合金(FeCoV合金またはバイカロイ合金)であることが好ましい。また、磁性線材2は、0.1mm〜1mm程度、例えば0.25mmの直径を有している。磁性線材2は、磁化が容易な方向が当該磁性線材2の伸長方向である一軸異方性を有している。また、磁性線材2において、その外周側部分よりも中心側部分の方が保磁力が大きい。また、磁性線材2は大バルクハウゼン効果を生ずる性質を有している。すなわち、上述したように、磁性線材2に付与された磁界の方向の変化に応じて磁性線材2(磁性線材2の外周側部分)の磁化方向が急反転する性質を有している。一方、コイル3は、絶縁被膜が形成された導線であり、例えばエナメル線である。
ボビン4は例えば樹脂材料等により全体的に見て円柱状または角柱状に形成されている。図3に示すように、ボビン4は、軸部5、および軸部5の両端側に設けられた鍔部6を有している。軸部5の外周面には、磁性線材2を収容するための線材収容部7が形成されている。線材収容部7は、軸部5の軸方向に直線状に伸長する溝であり、図2に示すように、軸部5の上部かつ前後方向中間部に配置され、上方に開口している。なお、線材収容部7は、軸部5の内部を軸方向に伸長する穴でもよい。鍔部6は軸部5の外周面よりも径方向外向きに突出している。
また、図1に示すように、ボビン4の軸方向両端部であって鍔部6よりもさらに端側の部分には、磁性線材2の端部を支持するための線材支持部8が形成されている。各線材支持部8は、ボビン4の軸方向端部を軸方向に伸長する溝であり、上方に開口している。また、各線材支持部8は、線材収容部7の伸長方向の延長線上に配置され、鍔部6に形成された挿通溝9を介して線材収容部7に接続している。また、線材支持部8の一部には、磁性線材2の端部を線材支持部8に固定するための接着剤を滞留させる凹部10が形成されている。
また、各鍔部6の前側部分には、コイル3の端部を巻き付けて固定すると共に、コイル3を回路に電気的に接続するための接続部材11が設けられている。各接続部材11は、導電性を有する金属製の棒状の部材をL字状に折り曲げることにより形成されている。
図3に示すように、磁性線材2の長さ方向中間部は線材収容部7内に収容され、これにより、その長さ方向が軸部5の軸方向を向くように配置されている。また、磁性線材2は、その長さ方向中間部の外周面が全周に亘って、線材収容部7の内面および軸部5に巻回されたコイル3に接触しないように配置されている。また、磁性線材2の端部は挿通溝9および線材支持部8内に挿入され、凹部10内に注入された接着剤により線材支持部8に固定されている。コイル3は、軸部5の外周面に巻回され、磁性線材2の長さ方向中間部を包囲している。
(磁性線材の製造方法)
図4は本発明の実施形態の磁性線材の製造方法を示している。図5は当該製造方法における磁性線材2の捻り方法を示している。本発明の実施形態の磁性線材2の製造方法は次の通りである。
図4に示すように、まず、磁性材料を、熱処理を介在させながら複数回線引きすることにより例えば直径0.25mmの線状体を形成する(線状体形成工程21)。具体的には、上述した半硬質磁性材料の初期材料を熱間加工し、例えば直径5mm程度の線状体(線状の半硬質磁性材料)を形成し、その後、ダイスを用いてこの線状体を線引きし、例えば直径1mm程度の線状体を形成し、その後、焼鈍する。その後、この線状体を再び線引きし、例えば直径0.25mmの線状体を形成する。なお、線状体形成工程21の中途における直径1mm程度の線状体から、直径0.25mmの最終的な線状体を形成するまでの過程において、焼鈍と線引きとをそれぞれ1回行うのみでもよいし、焼鈍と線引きとを交互にそれぞれ2回以上繰り返し行ってもよい。
次に、線状体を例えば300mm程度の所定の長さに切断し、当該切断した線状体をダイスを用いて捻る(捻り工程22)。捻り工程22においては、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行った後に、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に近づく方向に線状体を捻る第3の処理を開始し、その後、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に達する前に第3の処理を終了する。また、捻り工程22においては、第1の処理と第2の処理とをこの順序で交互に繰り返し行い、第1の処理における線状体の捻り量を初回の第1の処理を除いて第1の処理ごとに一定とし、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理ごとに一定とする。
捻り工程22の具体例をあげると、図5に示すように、まず、線状体を右方向(時計回り方向)にk回捻る処理Pを行う。次に、線状体を左方向(反時計回り方向)に(k×2)回捻る処理Qと線状体を右方向に(k×2)回捻る処理Rとを、処理Qの回数と処理Rの回数とがそれぞれn回となるまで交互に繰り返して行う。次に、線状体を左方向に(k−m)回捻る処理Sを行う。当該捻り工程22を終了した時点で、線状体を右方向に捻った量と線状体を左方向に捻った量との差はmとなる。ここで、kは例えば数十ないし数千である。mはkよりも小さい値であり、例えばkの半分の値である。nは2以上であり、例えば5〜10である。なお、図5において、処理Pが初回の上記第1の処理に当たり、処理Qが上記第2の処理に当たり、処理Rが初回よりも後の上記第1の処理に当たり、処理Sが上記第3の処理に当たる。
以上のように捻った線状体を、磁気センサ1のボビン4に収容するのに適した長さに切断することにより、磁性線材2が完成する。
(捻り方法のバリエーション)
上述した捻り工程22では、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、第1の処理と第2の処理とをこの順序で交互に繰り返し行い、第1の処理における線状体の捻り量を初回の第1の処理を除いて第1の処理ごとに一定とし、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理ごとに一定とした。しかしながら、図6に示すように、第1の処理における線状体の捻り量を第1の処理ごとに変化させ、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理ごとに変化させてもよい。なお、図6において処理PおよびRがそれぞれ第1の処理に当たり、処理Qが第2の処理に当たり、処理Sが上記第3の処理に当たる。
また、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、図7に示すように、第1の処理における線状体の捻り量を第1の処理を行うごとに増加させ、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理を行うごとに増加させてもよい。なお、図7においても、処理PおよびRがそれぞれ第1の処理に当たり、処理Qが第2の処理に当たり、処理Sが上記第3の処理に当たる。
また、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、図8に示すように、第1の処理と第2の処理とをこの順序で交互に繰り返し行い、初回の第1の処理を除き、第1の処理における線状体の捻り量を第1の処理を行うごとに減少させ、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理を行うごとに減少させてもよい。なお、図8において、処理Pが初回の第1の処理に当たり、処理Qが第2の処理に当たり、処理Rが初回よりも後の第1の処理に当たり、処理Sが上記第3の処理に当たる。
また、図5ないし図8に示すいずれの捻り方法においても、各第2の処理では、線状体を一方向に捻った量が線状体を他方向に捻った量よりも多い状態から、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零になるまで線状体を他方向に捻り、引き続き、線状体を他方向に捻った量が線状体を一方向に捻った量よりも多い状態となるまで線状体を他方向に捻った後、当該第2の処理を終了して続く第1の処理または第3の処理に移行している。しかしながら、いずれかの第2の処理において、線状体を一方向に捻った量が線状体を他方向に捻った量よりも多い状態から線状体を他方向に捻り、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に達する前に、当該第2の処理を終了して続く第1の処理または第3の処理に移行してもよい。同様に、初回の第1の処理を除く各第1の処理では、線状体を他方向に捻った量が線状体を一方向に捻った量よりも多い状態から、線状体を他方向に捻った量と線状体を一方向に捻った量との差が零になるまで線状体を一方向に捻り、引き続き、線状体を一方向に捻った量が線状体を他方向に捻った量よりも多い状態となるまで線状体を一方向に捻った後、当該第1の処理を終了して続く第2の処理に移行している。しかしながら、初回の第1の処理を除くいずれかの第1の処理において、線状体を他方向に捻った量が線状体を一方向に捻った量よりも多い状態から線状体を一方向に捻り、線状体を他方向に捻った量と線状体を一方向に捻った量との差が零に達する前に、当該第1の処理を終了して続く第2の処理に移行してもよい。
また、図5ないし図8にそれぞれ示した捻り方法では、捻り方向を変更しながら線状体を捻るに当たり、初回に右方向に捻る場合を例にあげたが、初回に左方向に捻ってもよい。
(磁性線材の捻り痕)
図9は上記線状体形成工程21において形成された線状体31の外周面を模式的に示した図である。図9に示すように、上記線状体形成工程21において形成された線状体31の外周面には線引き痕32が形成されている。すなわち、磁性材料を、熱処理を介在させながら線引きして例えば直径0.25mmの最終的な線状体31を形成し、この線状体31を捻る前に、この線状体31の外周面の、長さ方向において互いに異なる部分31Aおよび部分31Bを光学顕微鏡または走査電子顕微鏡等で観察する。これにより、線状体31の外周面に形成された線引き痕32を確認することができる。線引き痕32は磁性材料の線引きにより形成されたものである。線引き痕32は、線状体31の軸線と略平行に直線状に伸長した複数の細い筋である。線引き痕32は、線状体31の全長に亘ってほぼ一様に形成されている。図9を見るとわかる通り、線状体31の外周面の部分31Aと部分31Bには、それぞれ同様の線引き痕32が形成されている。図11は上記線状体形成工程21において形成された線状体31の外周面の写真である。この写真には線引き痕32が写っている。
図10は磁性線材2の外周面を模式的に示した図である。図10に示すように、上記線状体形成工程21および捻り工程22を経て形成された磁性線材2の外周面には捻り痕33が形成されている。すなわち、磁性線材2の外周面の、長さ方向において互いに異なる部分2Aおよび部分2Bを光学顕微鏡または走査電子顕微鏡等で観察する。これにより、磁性線材2の外周面に形成された捻り痕33を確認することができる。捻り痕33には、線状体31を捻ることにより線引き痕32が変形して形成されたものもあれば、線状体31を捻ることにより新たに形成されたものもある。磁性線材2の外周面に形成された捻り痕33は、複数の細い筋であり、磁性線材2の軸線に対する捻り痕33の傾斜角度が磁性線材2の長さ方向における部分ごとに異なっている。図10を見るとわかる通り、磁性線材2の外周面の部分2Bに形成された捻り痕33の傾斜角度は、磁性線材2の外周面の部分2Aに形成された捻り痕33の傾斜角度よりも大きい。また、磁性線材2の外周面のいずれの部分においても、捻り痕33の傾斜角度は0度よりも大きく90度未満である。図12および図13は同一の磁性線材2の長さ方向における2つの部分の外周面の写真である。これらの写真には捻り痕33が写っている。図13の写真に写っている捻り痕33の傾斜角度の方が、図12の写真に写っている捻り痕33の傾斜角度よりも大きい。
(捻り方法と捻り痕との関係)
本発明の実施形態の磁性線材の製造方法を用いて磁性線材2を形成すると、磁性線材2の外周面に、図10に示すような部分ごとに傾斜角度の異なる捻り痕33が形成される。この点について、磁性線材2と、他の捻り方法により形成された磁性線材とを比較しながら説明する。
図15は線状体の捻り方法の第1の比較例を示している。図16は第1の比較例により形成された磁性線材41の外周面を模式的に示している。図15に示すように、第1の比較例では、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零となるように交互に繰り返し行う。すなわち、第1の比較例においては、線状体を捻る工程が終了した時点で、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零になる。なお、図15において、処理P、RおよびTがそれぞれ第1の処理に当たり、処理Qが第2の処理に当たる。第1の比較例により形成された磁性線材41の外周面に形成された捻り痕42は、図16に示すように、磁性線材41の軸線と略平行に直線状に伸長した複数の細い筋となる。また、このような捻り痕42が磁性線材41の全長に亘ってほぼ一様に形成される。
また、図18は線状体の捻り方法の第2の比較例を示している。図19および図20は第2の比較例により形成された磁性線材51の外周面をそれぞれ模式的に示している。図18に示すように、第2の比較例では、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを交互に繰り返し行い、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最大となった状態で、線状体を捻る工程を終了する。なお、図18において、処理PおよびRがそれぞれ第1の処理に当たり、処理Qが第2の処理に当たる。第2の比較例により形成された磁性線材51の外周面に形成された捻り痕52は、図19に示すように、捻り痕52が磁性線材51の軸線に対して傾斜する。また、捻り痕52の傾斜角度は磁性線材51の全長に亘ってほぼ等しい。また、線状体を捻る工程が終了した時点で、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が大きいと、図19に示すように、捻り痕52の傾斜角度が大きくなり、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が小さいと、図20に示すように、捻り痕52の傾斜角度が小さくなる。
このように、線状体の捻り方法によって、磁性線材の捻り痕の傾斜角度、および磁性線材の捻り痕が磁性線材の全長に亘って一様か否かが異なる。したがって、磁性線材の外周面に形成された捻り痕に基づいて、その磁性線材を製造する際に用いた線状体の捻り方法を推定することができる。
以上説明した通り、本発明の実施形態の磁性線材の製造方法では、捻り工程22において、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行った後に、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に近づく方向に線状体を捻る第3の処理を開始し、その後、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が零に達する前に第3の処理を終了する。このような捻り工程22を含む製造方法によって製造された磁性線材2を用いて磁気センサ1を形成することにより、磁気センサ1のコイル3から出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる。
ここで、図14は、本発明の実施形態の磁性線材の製造方法により製造された磁性線材2を用いた磁気センサ1に、磁性線材2の長さ方向と同じ方向の交流磁界を付与し、そのときにコイル3から出力されたパルス電圧の波形を示している。図14を見るとわかる通り、本発明の実施形態の磁性線材の製造方法により製造された磁性線材2を用いた磁気センサ1のコイル3から出力されたパルス電圧においては、プラスのパルス電圧の値のばらつきが小さく、かつマイナスのパルス電圧の値のばらつきが小さい。また、プラスのパルス電圧の絶対値とマイナスのパルス電圧の絶対値とが互いに等しい。すなわち、プラスのパルス電圧の波形とマイナスのパルス電圧の波形とが電圧が零である直線を基準に互いに対称である。
一方、図17は、上記第1の比較例により形成された磁性線材41を用いた磁気センサに、磁性線材41の長さ方向と同じ方向の交流磁界を付与し、そのときにコイルから出力されたパルス電圧の波形を示している。図17を見るとわかる通り、上記第1の比較例により形成された磁性線材41を用いた磁気センサのコイルから出力されたパルス電圧においては、プラスのパルス電圧の値のばらつきが大きく、マイナスのパルス電圧の値のばらつきも大きい。また、マイナスのパルス電圧の絶対値がプラスのパルス電圧の絶対値に比べて小さく、電圧が零である直線を基準にプラスのパルス電圧の波形とマイナスのパルス電圧の波形とを比較した場合、両者は非対称である。
図14と図17とを比較するとわかる通り、本発明の実施形態の磁性線材の製造方法によれば、磁気センサ1のコイル3から出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる磁性線材2を製造することができる。また、本発明の実施形態の磁性線材2によれば、磁気センサ1のコイル3から出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることができる。また、本発明の実施形態の磁気センサ1によれば、コイル3から出力されるパルス電圧のばらつきを小さくすることで、外部磁界の検出精度を高めることができる。
また、上述したように、本発明の実施形態の磁性線材の製造方法の捻り工程22において、線状体を一方向に捻る第1の処理と、線状体を他方向に捻る第2の処理とを、線状体を一方向に捻った量と線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、(1)第1の処理における線状体の捻り量を初回の第1の処理を除いて第1の処理ごとに一定とし、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理ごとに一定とする方法、(2)第1の処理における線状体の捻り量を第1の処理ごとに変化させ、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理ごとに変化させる方法、(3)第1の処理における線状体の捻り量を第1の処理を行うごとに増加させ、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理を行うごとに増加させる方法、および(4)初回の第1の処理を除き、第1の処理における線状体の捻り量を第1の処理を行うごとに減少させ、第2の処理における線状体の捻り量を第2の処理を行うごとに減少させる方法がある。これらのうちのいずれの方法でも、パルス電圧のばらつきを小さくすることができる磁性線材2を製造することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う磁性線材の製造方法、磁性線材および磁気センサもまた本発明の技術思想に含まれる。
1 磁気センサ
2 磁性線材
3 コイル
4 ボビン
5 軸部
6 鍔部
7 線材収容部
21 線状体形成工程
22 捻り工程
31 線状体
33 捻り痕

Claims (11)

  1. 大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材の製造方法であって、
    磁性材料により線状に形成された線状体を一方向に捻る第1の処理と、前記線状体を他方向に捻る第2の処理とを、前記線状体を一方向に捻った量と前記線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行った後に、前記線状体を一方向に捻った量と前記線状体を他方向に捻った量との差が零に近づく方向に前記線状体を捻る第3の処理を開始し、その後、前記線状体を一方向に捻った量と前記線状体を他方向に捻った量との差が零に達する前に前記第3の処理を終了することを特徴とする磁性線材の製造方法。
  2. 前記第1の処理と前記第2の処理とを、前記線状体を一方向に捻った量と前記線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理と前記第2の処理とをこの順序で交互に繰り返し行い、前記第1の処理における前記線状体の捻り量を初回の前記第1の処理を除いて前記第1の処理ごとに一定とし、前記第2の処理における前記線状体の捻り量を前記第2の処理ごとに一定とすることを特徴とする請求項1に記載の磁性線材の製造方法。
  3. 前記第1の処理と前記第2の処理とを、前記線状体を一方向に捻った量と前記線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理における前記線状体の捻り量を前記第1の処理ごとに変化させ、前記第2の処理における前記線状体の捻り量を前記第2の処理ごとに変化させることを特徴とする請求項1に記載の磁性線材の製造方法。
  4. 前記第1の処理と前記第2の処理とを、前記線状体を一方向に捻った量と前記線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理における前記線状体の捻り量を前記第1の処理を行うごとに増加させ、前記第2の処理における前記線状体の捻り量を前記第2の処理を行うごとに増加させることを特徴とする請求項1に記載の磁性線材の製造方法。
  5. 前記第1の処理と前記第2の処理とを、前記線状体を一方向に捻った量と前記線状体を他方向に捻った量との差が最終的に零よりも大きくなるように交互に繰り返し行うに当たり、前記第1の処理と前記第2の処理とをこの順序で交互に繰り返し行い、初回の前記第1の処理を除き、前記第1の処理における前記線状体の捻り量を前記第1の処理を行うごとに減少させ、前記第2の処理における前記線状体の捻り量を前記第2の処理を行うごとに減少させることを特徴とする請求項1に記載の磁性線材の製造方法。
  6. 前記線状体は、前記磁性材料を、熱処理を介在させながら複数回線引きすることにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の磁性線材の製造方法。
  7. 前記磁性材料は、鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の磁性線材の製造方法。
  8. 大バルクハウゼン効果を生ずる磁性線材であって、外周面に複数形成された筋状の捻り痕の傾斜角度が当該磁性線材の長さ方向の複数の部分においてそれぞれ異なることを特徴とする磁性線材。
  9. 前記複数の捻り痕の傾斜角度はいずれも0度よりも大きく90度未満であることを特徴とする請求項8に記載の磁性線材。
  10. 鉄およびコバルトを含む半硬質磁性材料により形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の磁性線材。
  11. 請求項8ないし10のいずれかに記載の磁性線材と、コイルと、軸部および当該軸部の両端側に設けられた鍔部を有するボビンとを備え、前記磁性線材は前記軸部の内部に前記磁性線材の長さ方向が前記軸部の軸方向を向くように収容され、前記コイルは前記軸部の外周側に巻回されていることを特徴とする磁気センサ。
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