JP2019127639A - 係留チェーン用鋼および係留チェーン - Google Patents

係留チェーン用鋼および係留チェーン Download PDF

Info

Publication number
JP2019127639A
JP2019127639A JP2018011104A JP2018011104A JP2019127639A JP 2019127639 A JP2019127639 A JP 2019127639A JP 2018011104 A JP2018011104 A JP 2018011104A JP 2018011104 A JP2018011104 A JP 2018011104A JP 2019127639 A JP2019127639 A JP 2019127639A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
content
steel
mooring chain
mooring
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2018011104A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6973118B2 (ja
Inventor
鹿島 和幸
Kazuyuki Kashima
和幸 鹿島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2018011104A priority Critical patent/JP6973118B2/ja
Publication of JP2019127639A publication Critical patent/JP2019127639A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6973118B2 publication Critical patent/JP6973118B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

【課題】耐食性に優れた係留チェーン用鋼および係留チェーンを提供する。【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.15〜0.45%、Si:0.6%以下、Mn:1.0〜2.5%、P:0.1%以下、S:0.05%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、W:0.01〜1.0%、Cr:0.1%以下、Ni:0〜5.0%、Sb:0〜0.5%、Mo:0〜1.0%、V:0〜1.0%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、REM:0〜0.01%、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、B:0〜0.01%、残部:Feおよび不純物であり、[1−4.32W+0.25Cr≦0.80]を満足する、係留チェーン用鋼および該係留チェーン用鋼を用いた係留チェーン。【選択図】なし

Description

本発明は、係留チェーン用鋼および係留チェーンに関する。
係留チェーンは、海水環境に曝されるため腐食が激しく、長期間使用の際には腐食が問題となる場合がある。ドックでの点検時に係留チェーンの径が計測されるが、元の径に対して12%以上減少している場合には、新たなチェーンに切り替えをしなければならないという基準が船級規則により定められている。
一般的には、船舶の寿命が20年程度であるのに対して、係留チェーンの寿命は15年程度である。このため、現状、船を廃船にするまでに、係留チェーンの交換を1度は行なう必要がある。このような状況から、係留チェーンに用いられる金属材料には、耐食性向上による寿命延長が望まれている。
特開昭61−210153号公報
船舶の係留チェーンは、従来、JIS G 3105(2004)に規定されているSBC300、SBC490、SBC690といった産業用鋼材が用いられている。また、これら鋼材に加え、例えば、希土類等を任意元素として添加することで、材料特性を向上させた鋼材についても用いられる場合がある(特許文献1参照)。
しかしながら、これら鋼材では、上述のように船舶の寿命に対して係留チェーンの耐久年数が短く、所望する耐食性が十分得られていないという問題がある。
本発明は、上記の問題を解決し、耐食性に優れた係留チェーン用鋼および係留チェーンを提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の係留チェーン用鋼および係留チェーンを要旨とする。
(1)化学組成が、質量%で、
C:0.15〜0.45%、
Si:0.6%以下、
Mn:1.0〜2.5%、
P:0.1%以下、
S:0.05%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下、
W:0.01〜1.0%、
Cr:0.1%以下、
Ni:0〜5.0%、
Sb:0〜0.5%、
Mo:0〜1.0%、
V:0〜1.0%、
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%、
REM:0〜0.01%、
Nb:0〜0.1%、
Ti:0〜0.1%、
B:0〜0.01%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記式(i)を満足する、係留チェーン用鋼。
1−4.32W+0.25Cr≦0.80・・・(i)
但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Ni:0.01〜5.0%、
Sb:0.01〜0.5%、
Mo:0.01〜1.0%、
V:0.01〜1.0%、
Ca:0.0001〜0.01%、
Mg:0.0001〜0.01%、および
REM:0.0001〜0.01%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)に記載の係留チェーン用鋼。
(3)前記化学組成が、質量%で、
Nb:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.1%、および
B:0.0001〜0.01%、
から選択される1種以上を含有する、
上記(1)または(2)に記載の係留チェーン用鋼。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の鋼を用いた係留チェーン。
(5)表面に防食被覆層を備えた上記(4)に記載の係留チェーン。
本発明によれば、優れた耐食性を有する係留チェーン用鋼および係留チェーンを得ることができる。
本発明者は、係留チェーンに用いられる鋼材の耐久年数が船舶寿命に比べて短く、所望する耐食性を得られない要因について検討を行なった。
鋼材の耐食性能は、その鋼材が使用される腐食環境により大きく変化する。すなわち、特定の腐食環境において耐食性に優れていると評価される鋼材であっても、異なる腐食環境においては耐食性を発揮することができない場合がある。このため、本発明者は、まず係留チェーンの使用環境について調査を行なった。
係留チェーンは、港湾沖での係留時には海水に浸かり、船舶の航行時にはチェーンロッカーと呼ばれる格納庫に保管される。このため、係留チェーンは、そのほとんどの時間を、チェーンロッカー内で保管された状態となる。
そこで、本発明者は、航行時におけるチェーンロッカー内の温度および湿度の変動を詳細に測定した。その結果、チェーンロッカー内では、湿度の高い状態と比較的湿度の低い状態とが繰り返されながらも、相対湿度が50%RH程度を下回ることがないことが明らかになった。
ところで、海水の主成分として一般的なものは塩化ナトリウムであるが、これ以外にも塩化マグネシウム等の塩化物が含まれている。特に、塩化マグネシウムは潮解作用が強く、例えば、相対湿度が30%RH程度以上であれば、大気中の水分を容易に取り込む。
すなわち、係留チェーンに付着した塩化マグネシウム等が大気中の水分を取り込むため、わずかに湿った状態が維持され、チェーンの表面には、常時、薄い水膜(以下の説明において、「薄膜水」ともいう。)が形成される。また、表面に形成した薄膜水内では、海水中に含まれる塩化物が濃化する。そして、塩化物が濃化した環境において、鋼材が腐食すると、腐食により鉄が溶出した箇所で、鉄イオンの加水分解反応が生じる。その結果、鋼材表面のpHが低下する。このように、係留チェーンの使用環境は、極めて厳しい特殊な腐食環境であることが明らかになった。
係留チェーンに用いられる鋼材は、上述の特殊な腐食環境において、耐食性を発揮する必要がある。そのため、係留チェーンに用いられる鋼材を設計する上で、上述の腐食環境を再現し、耐食性の評価を行なう必要がある。以上の観点より、本発明者は、係留チェーン用鋼の腐食試験方法(特願2017−240413参照。)を開発した。そして、上記腐食試験方法により、鋼材の耐食性を評価することで、係留チェーン用鋼として好適な本発明鋼を得るに至った。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.15〜0.45%
Cは、強度を確保するために必要な元素である。係留チェーンとしての強度を確保するために、C含有量は0.15%以上とする。しかしながら、C含有量が0.45%を超えると、母材および溶接熱影響部の靭性が著しく低下する。このため、C含有量は、0.45%以下とする。C含有量は0.17%以上であるのが好ましく、0.20%以上であるのがより好ましい。また、C含有量は0.42%以下であるのが好ましく、0.40%以下であるのがより好ましい。
Si:0.6%以下
Siは、脱酸のために必要な元素であるが、0.6%を超えて含有させると溶接熱影響部の靭性が低下する。このため、Si含有量は0.6%以下とする。なお、靭性の観点からSi含有量はより低いほうが望ましい。この場合、Si含有量は0.55%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。一方、Si含有量を過度に低減すると、脱酸の効果が十分に得られなくなるため、Si含有量は0.01%以上であるのが好ましい。
Mn:1.0〜2.5%
Mnは、強度を確保するために必要な元素である。強度を確保するために、Mn含有量は1.0%以上とする。しかしながら、Mnを、2.5%を超えて含有させると、靭性が著しく低下する。このため、Mn含有量は2.5%以下とする。Mn含有量は1.2%以上であるのが好ましく、1.3%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は2.4%以下であるのが好ましく、2.3%以下であるのがより好ましい。
P:0.1%以下
Pは不純物として粒界に偏析し、靭性を低下させる元素である。そして、P含有量が0.1%を超えると靭性が著しく低下する。このため、P含有量は0.1%以下とする。P含有量は少なければ少ないほど好ましい。P含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましい。
S:0.05%以下
Sは不純物として鋼中に存在し、MnSを形成する。このMnSは腐食の起点となり、耐食性を低下させる。このため、S含有量は0.05%以下とする。S含有量は少なければ少ないほど好ましい。S含有量は0.045%以下であるのが好ましく、0.04%以下であるのがより好ましい。
Al:0.1%以下
Alは脱酸剤として必要な元素であり、含有させることで脱酸効果が得られる。また、AlはNと結合し、AlNを形成することで、結晶粒を微細化させる。しかしながら、Alを、0.1%を超えて含有させると靭性の低下を招く。このため、Al含有量は0.1%以下とする。なお、Al含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.06%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を安定して得るために、Al含有量は0.005%以上であるのが好ましい。
N:0.01%以下
Nは、Alと結合しAlNを形成することにより、結晶粒を微細化させる効果がある。しかしながら、N含有量が0.01%を超えると靭性が低下する。このため、N含有量は0.01%以下とする。N含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、N含有量は0.001%以上であるのが好ましい。
W:0.01〜1.0%
Wは、腐食環境において溶出したWがタングステン酸イオンを形成することにより鋼の溶出を著しく抑制する効果を有する。このため、W含有量は0.01%以上とする。しかしながら、W含有量が1.0%を超えると、効果が飽和するだけでなく靭性が低下する。このため、W含有量は1.0%以下とする。W含有量は0.03%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましい。また、W含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.6%以下であるのがより好ましい。
Cr:0.1%以下
Crは、鋼材のコスト上昇を抑えつつ強度を高める作用を有するが、塩化物が濃化する薄膜水形成環境において耐食性を著しく低下させる。このため、Cr含有量は0.1%以下とする。Cr含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.06%以下であるのがより好ましい。
本発明に係る係留チェーン用鋼は、上記成分に加え、Ni、Sb、Mo、V、Ca、Mg、REMから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Ni:0〜5.0%
Niは薄膜水形成環境での鋼の溶出を著しく抑制し耐食性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が5.0%を超えると効果が飽和するばかりでなく、鋼材のコストが上昇する。このため、Ni含有量は5.0%以下とする。Ni含有量は4.5%以下であるのが好ましく、4.0%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ni含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.05%以上であるのがより好ましく、0.1%以上であるのがさらに好ましい。
Sb:0〜0.5%
Sbは、薄膜水形成環境において鋼の溶出を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Sbを、0.5%を超えて含有させると靭性が著しく低下する。このため、Sb含有量は0.5%以下とする。Sb含有量は0.4%以下であるのが好ましく、0.3%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Sb含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Mo:0〜1.0%
Moは、強度を高める作用を有する。また、Moは腐食環境において溶出したMoがモリブデン酸イオンを形成し、インヒビター作用により鋼の溶出を抑制する作用を有する。この結果、Moは耐食性を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。
しかしながら、Mo含有量が1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性が著しく低下する。このため、Mo含有量は1.0%以下とする。Mo含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mo含有量は0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
V:0〜1.0%
VもMoと同様の作用を有する。腐食環境において溶出したVがバナジン酸イオンを形成することにより鋼の溶出を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。
しかしながら、V含有量が1.0%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性が低下する。このため、V含有量は1.0%以下とする。V含有量は0.8%以下であるのが好ましく、0.5%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、V含有量は、0.01%以上であるのが好ましく、0.03%以上であるのがより好ましく、0.05%以上であるのがさらに好ましい。
Ca:0〜0.01%
Caは、イオンとして溶出し、pHの低下が生じた腐食界面においてpHを上昇させる。この結果、腐食が抑制されるため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ca含有量が0.01%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性が低下する。このため、Ca含有量は0.01%以下とする。Ca含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ca含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
Mg:0〜0.01%
Mgは、Caと同様、腐食界面のpHを上昇させることで腐食を抑制する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mg含有量が0.01%を超えると効果が飽和するだけでなく靭性も低下する。このため、Mg含有量は0.01%以下とする。Mg含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Mg含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
REM:0〜0.01%
REMは、CaおよびMgと同様、腐食界面のpHを上昇させることで腐食を抑制する効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、REM含有量が0.01%を超えると、効果が飽和するだけでなく靭性も低下する。このため、REM含有量は0.01%以下とする。REM含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.006%以下であるのがより好ましい。
一方、上記効果を得るためには、REM含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
ここで、本発明において、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、前記REM含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。REMは、工業的には、ミッシュメタルの形で添加される。
また、本発明に係る係留チェーン用鋼には、上記成分のほかに、さらにNb、Ti、Bから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Nb:0〜0.1%
Nbは、強度を高める作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nb含有量が0.1%を超えると靭性が低下する。このため、Nb含有量は0.1%以下とする。Nb含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Nb含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.003%以上であるのがより好ましく、0.005%以上であるのがさらに好ましい。
Ti:0〜0.1%
Tiは、Nと結合してTiNを形成することにより溶接熱影響部の靭性を向上させる。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が0.1%を超えると効果が飽和する。このため、Ti含有量は0.1%以下とする。Ti含有量は0.08%以下であるのが好ましく、0.05%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、Ti含有量は0.001%以上であるのが好ましく、0.005%以上であるのがより好ましく、0.01%以上であるのがさらに好ましい。
B:0〜0.01%
Bは、強度を高める作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.01%を超えると靭性が低下する。このため、B含有量は0.01%以下とする。B含有量は0.008%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましい。一方、上記効果を得るためには、B含有量は0.0001%以上であるのが好ましく、0.0003%以上であるのがより好ましく、0.0005%以上であるのがさらに好ましい。
本発明の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
上述のように、本発明では耐食性を担保する上で、Wの含有量を適切に制御する必要がある。また、本発明においては、薄膜水が形成した状態において耐食性を低下させるCrについても、その含有量を適切に制御する必要がある。本発明の成分系においては、これら元素の相互作用も鑑み、下記式(i)を満足する必要がある。
1−4.32W+0.25Cr≦0.80・・・(i)
上記の式(i)は本発明の鋼の耐食性能を表すものであり、式(i)満足する場合、係留チェーン用鋼として十分な耐食性を確保できる。一方、式(i)を満足しない場合は耐食性が十分でなく、係留チェーンとして長期の使用が困難である。
但し、上記式(i)中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
なお、本発明では、鋼を係留チェーンの形状に成形した後、表面に防食被覆(皮膜)を施してもよい。すなわち、係留チェーンの表面に防食被覆層が形成することになる。防食被覆層としては、その種類は限定されず、一般的なものを用いればよい。具体的には、Znめっき、Alめっき、Zn−Alめっき等に例示される防食めっき皮膜、Zn溶射、Al溶射等に例示される金属溶射皮膜、ビニルブチラール系、エポキシ系、ウレタン系、フタル酸系、ふっ素系、油性塗料、瀝青質系等に例示される一般の防食塗装皮膜等が挙げられる。
2.製造方法
上記の化学組成を有する鋼塊を連続鋳造法により製造する。鋼塊は、造塊法によりインゴットにしてもよい(JIS G 0203(2009)参照。)。続いて、得られた鋼塊を800〜1250℃の範囲で均熱、熱間圧延(熱間棒鋼圧延)を施し、棒鋼とする。本発明では棒鋼の径は特に限定されないが、例えば、50〜120mmの範囲とする。また、熱間圧延のうちの仕上げ圧延は、800℃以上で行なう。続いて、得られた棒鋼を室温まで、空冷または放冷により冷却する。
なお、本発明では、上記の冷却後、熱処理を行なってもよい。さらに、熱処理後、ショットブラスト等の表面処理を施してもよい。そして、上記のようにして製造した棒鋼を素材として、600〜1100℃で加熱後に曲げ加工し、フラッシュバット溶接にて接合し接合部のバリ取りを行い、リンクを製造する。この工程を繰り返し、所定の長さのチェーンとする。なお、必要に応じスタッドを溶接により取り付けることができる。その後、焼入れ、焼戻しを行なう。焼入れ処理の温度は800〜1100℃、時間は10分以上とし、その後水冷により冷却する。焼戻し処理の温度は450〜750℃、時間は10分以上とし、その後水冷により冷却する。これらの工程によって所望の形状を有する係留用チェーンを製造する。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製後、連続鋳造して得た鋼塊を分塊圧延して鋼片とした。次いで、その鋼片を熱間圧延(熱間棒鋼圧延)に供した。熱間圧延においては、鋼片の均熱温度を1250℃とし、素材を直径25mmまで1050℃以上で圧延し、室温まで空冷した。
続いて、得られた棒鋼に熱処理を実施した。熱処理では、900℃、15分の焼入れ処理、および水冷を行ない、その後638℃、20分の焼戻し処理、および水冷を行なった。前述の熱処理後、直径20mm×100mmの試験片を採取し、試験片の表面にショットブラストを施した。
その後、試験片を下記に記載の腐食試験に供した。腐食試験においては、係留チェーンの実際の腐食環境を模擬できるよう、特願2017−240413に記載された方法に準拠し、試験を行なった。具体的には、腐食試験では、海水浸漬工程と乾燥湿潤工程とからなる処理を1サイクルとして、8サイクル(約8週間)実施した。
海水浸漬工程では、試験片を1週間(7日)に1度、35℃の人工海水に15分浸漬させた。試験に用いた人工海水の組成は、NaCl:2.45%、MgCl:1.11%、NaSO:0.41%、CaCl:0.15%、KCl:0.07%、NaHCO:0.02%、KBr:0.01%であった。なお、上記の人工海水の組成の%は、質量%を示している。
また、乾燥湿潤工程では、チェーンロッカー内において、比較的湿度の低い状態を模擬した乾燥工程と比較的湿度の高い状態を模擬した湿潤工程との二つの工程を実施した。乾燥工程では、温度が60℃、相対湿度が65%RHの環境で4時間保持し、湿潤工程では、温度が60℃、相対湿度が90%RHの環境で4時間保持した。
海水浸漬工程の後、次の海水浸漬工程に至るまでの間、乾燥工程と湿潤工程とを交互に繰り返す処理を行なった。この場合、乾燥工程と湿潤工程とを行なう工程を1回とすると、1日の間で上記処理が3回行なわれることとなる。
上記の腐食試験の後、ノギスで試験片の径の減少量を測定した。試験片の測定は、上端および下端から30mmの位置と、中央部すなわち上端から50mmの位置で測定を行なった。加えて、上述の位置それぞれにおいて、その位置から直交する位置の径の大きさについても同様に測定を行なった。つまり、一つの試料において6箇所の位置で径の大きさを測定し、その平均値から腐食試験後に径の大きさを算出した。続いて、元の径の大きさと腐食試験後の径の大きさとの差を径の減少量(mm)とした。なお、本発明においては、径の減少量が0.9mm以下である場合に、係留チェーンとして十分な耐食性を有すると判断した。
上記の試験結果を表1に示す。
Figure 2019127639
表1に示すように、試験No.1〜17は、本発明で規定する組成を満足し、かつ式(i)を満足するため、耐食性が良好であった。一方、試験No.18および19は、式(i)を満足しないため、耐食性が劣る結果となった。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、
    C:0.15〜0.45%、
    Si:0.6%以下、
    Mn:1.0〜2.5%、
    P:0.1%以下、
    S:0.05%以下、
    Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下、
    W:0.01〜1.0%、
    Cr:0.1%以下、
    Ni:0〜5.0%、
    Sb:0〜0.5%、
    Mo:0〜1.0%、
    V:0〜1.0%、
    Ca:0〜0.01%、
    Mg:0〜0.01%、
    REM:0〜0.01%、
    Nb:0〜0.1%、
    Ti:0〜0.1%、
    B:0〜0.01%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記式(i)を満足する、係留チェーン用鋼。
    1−4.32W+0.25Cr≦0.80・・・(i)
    但し、上記式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Ni:0.01〜5.0%、
    Sb:0.01〜0.5%、
    Mo:0.01〜1.0%、
    V:0.01〜1.0%、
    Ca:0.0001〜0.01%、
    Mg:0.0001〜0.01%、および
    REM:0.0001〜0.01%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1に記載の係留チェーン用鋼。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    Nb:0.001〜0.1%、
    Ti:0.001〜0.1%、および
    B:0.0001〜0.01%、
    から選択される1種以上を含有する、
    請求項1または2に記載の係留チェーン用鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の鋼を用いた係留チェーン。
  5. 表面に防食被覆層を備えた請求項4に記載の係留チェーン。
JP2018011104A 2018-01-26 2018-01-26 係留チェーン用鋼および係留チェーン Active JP6973118B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018011104A JP6973118B2 (ja) 2018-01-26 2018-01-26 係留チェーン用鋼および係留チェーン

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018011104A JP6973118B2 (ja) 2018-01-26 2018-01-26 係留チェーン用鋼および係留チェーン

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019127639A true JP2019127639A (ja) 2019-08-01
JP6973118B2 JP6973118B2 (ja) 2021-11-24

Family

ID=67471944

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018011104A Active JP6973118B2 (ja) 2018-01-26 2018-01-26 係留チェーン用鋼および係留チェーン

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6973118B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111172473A (zh) * 2020-02-24 2020-05-19 江苏利淮钢铁有限公司 一种d型锚链末端卸扣用钢

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007254881A (ja) * 2006-02-27 2007-10-04 Jfe Steel Kk 船舶用耐食鋼材
JP2007302974A (ja) * 2006-05-15 2007-11-22 Jfe Steel Kk 耐遅れ破壊特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2011058038A (ja) * 2009-09-09 2011-03-24 Jfe Steel Corp 耐食性に優れる船舶用熱間圧延形鋼およびその製造方法
WO2017141424A1 (ja) * 2016-02-19 2017-08-24 新日鐵住金株式会社

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007254881A (ja) * 2006-02-27 2007-10-04 Jfe Steel Kk 船舶用耐食鋼材
JP2007302974A (ja) * 2006-05-15 2007-11-22 Jfe Steel Kk 耐遅れ破壊特性に優れた高強度厚鋼板およびその製造方法
JP2011058038A (ja) * 2009-09-09 2011-03-24 Jfe Steel Corp 耐食性に優れる船舶用熱間圧延形鋼およびその製造方法
WO2017141424A1 (ja) * 2016-02-19 2017-08-24 新日鐵住金株式会社

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111172473A (zh) * 2020-02-24 2020-05-19 江苏利淮钢铁有限公司 一种d型锚链末端卸扣用钢

Also Published As

Publication number Publication date
JP6973118B2 (ja) 2021-11-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7062973B2 (ja) 係留チェーン用鋼および係留チェーン
JP6394839B1 (ja) 鋼材
JP4811277B2 (ja) 石炭・鉱石運搬船ホールド用耐食性鋼材
JP4577158B2 (ja) 原油タンク用耐食鋼材
CN102618786A (zh) 耐蚀性优越的船舶用钢材
JP6919728B2 (ja) 係留チェーン用鋼および係留チェーン
JP6919727B2 (ja) 係留チェーン用鋼および係留チェーン
JP6601258B2 (ja) バラストタンク用耐食鋼材
KR20210005235A (ko) 석탄 전용선 또는 광탄 겸용선의 선창용 내식강, 및 선창
JP6493019B2 (ja) バラストタンク用耐食鋼材
JP6891830B2 (ja) 係留チェーン用鋼および係留チェーン
JP6973118B2 (ja) 係留チェーン用鋼および係留チェーン
JP6973117B2 (ja) 係留チェーン用鋼および係留チェーン
JP5309862B2 (ja) 部材加工後の化成処理性に優れた鋼材およびその製造方法
JP7248897B2 (ja) 係留チェーンおよび船舶
JP7196537B2 (ja) 石炭専用船又は鉱炭兼用船の船倉用耐食鋼
JP7339508B2 (ja) チェーンロッカーおよびチェーンロッカー用鋼板
JP7352071B2 (ja) チェーンロッカーおよびチェーンロッカー用鋼板
JP7196538B2 (ja) 石炭専用船又は鉱炭兼用船の船倉用耐食鋼
JP6736255B2 (ja) バラストタンク用耐食鋼材
JP7196539B2 (ja) 石炭専用船又は鉱炭兼用船の船倉用耐食鋼
CN108368578B (zh) 耐腐蚀性优异的原油罐用钢材和原油罐
JP2023119905A (ja) 鋼材
JP2023119906A (ja) 鋼材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200903

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210517

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210601

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210728

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20211005

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20211018

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6973118

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151