JP2019127470A - リウマチ性疾患の治療用または予防用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】安全性が高く長期期間にわたって実施可能な、リウマチ性疾患の症状を治療または予防するための新規手段の提供。【解決手段】リウマチ性疾患の治療用または予防用組成物であって、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する組成物。有効成分は、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせを含む。【選択図】なし
Description
本発明は、リウマチ性疾患において生じる関節炎、骨破壊等の症状に対する治療または予防効果を有する組成物に関する。
リウマチ性疾患とは、関節、筋肉、骨などの運動器官の痛みを伴う病気の総称であり、代表的な疾患として関節リウマチ、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、痛風、血清病、外傷性関節炎、先天性股関節形成不全症、多発性骨髄腫、アミロイドーシスなどが含まれる。特に関節リウマチ(RA)は、好発年齢が40−50歳で、全体の約半数を占める疾患であり、男女比が1:4〜5と女性に多いのが特徴である。RAは、全人口の0.5%−1%程度に発症し、国内では70−100万人の患者が推定されており、手指の関節を中心として関節炎が生じ、進行すると全身の関節の慢性炎症による関節破壊が進行し、関節のみならず皮膚や目、肺、腎臓などの全身の臓器障害を起こす、全身性の慢性炎症性疾患である。関節炎による不快な痛みやこわばり、関節破壊に伴う変形で日常生活動作が障害されると、意欲の低下、不眠、抑うつといった精神的な障害も出現し、QOLが低下する。RAは、遺伝的要因(HLA-DR4、PTPN22、PADI4等)と環境的要因(喫煙、歯周病感染、腸内細菌叢の変化による腸管免疫の異常等)が誘因となり、自己抗体が産生され、その自己抗体が免疫複合体を構成し、TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生されて疾患が誘導されることが推測されているが、その病因は不明な部分も多い(非特許文献1)。
RA治療については、短期的なQOL改善から長期的予後の改善を目指す医療に大きく変換されてきている。即ち、病態に関与するTNF-αなどのサイトカインが明らかとなり、いくつかの生物学的製剤が用いられており、疾患の制御がかなりできるようになってきている。しかしながら、RA治療の第一選択薬であるMTX(メトトレキサート)製剤は、肝障害、消化管障害、粘膜障害などの副作用が強く、用量設定にも注意が必要であり、またTNF阻害薬やIL-6阻害薬などの生物学的製剤は、価格が高価なため、安易に治療に用いることは出来ず、感染症などの副作用の問題もかかえている。そのため、安価で、長期に安全に使用できる薬剤の登場が期待されている(非特許文献2および3)。
RAの動物モデルとして、SKGマウスが知られている。SKGマウスは、T細胞のシグナル伝達分子であるZAP-70遺伝子の点突然変異をもち、その結果、胸腺でのT細胞選択に異常が生じ、関節炎惹起性T細胞が産生され、自然免疫系の活性化により自己免疫性関節炎を発症する(非特許文献4および5)。関節炎を発症したSKGマウスではパンヌス形成、滑膜増殖、および炎症細胞の浸潤が認められ、症状の進行により骨破壊に至るというヒトの関節リウマチと酷似した症状を呈する。
本願出願人は、これまでに、サンマ油やスケトウダラ油に多く含まれる長鎖モノエン脂肪酸であるC20:1やC22:1をLC-MUFAと称し、動脈硬化モデル、糖尿病モデル、肥満モデル、NASHモデル動物を用いてその効果効能を検討し、血液中総コレステロール低下作用、インスリン抵抗性改善、血糖値改善、動脈硬化巣抑制等の脂質代謝異常改善、メタボリックシンドローム改善作用、肝機能改善作用等を見出している(特許文献1および非特許文献6〜10)。
「分子標的/Bio時代のリウマチ・膠原病治療ストラテジー」, 文光堂, 2015年10月21日, p. 2-7
「関節リウマチ診療ガイドライン2014」, メディカルレビュー社, 2014年10月10日, p. 44-57
Pharmacological Reports, 58, p. 473-492, 2006
実験医学, 24, 10, p. 160-166, 2006
Nature, 426, p. 454-460, 2003
Lipids, 46, 5, p. 425-434, 2011
J Agric Food Chem., 59, 13, p. 7482-7489, 2011
Lipids Health Dis., 10, 189, 2011
Nutr Metab., 10, 16, 2013
Mol Nutr Food Res., 60, 10, p. 2208-2218, 2016
本発明は、安全性が高く長期期間にわたって実施可能な、リウマチ性疾患の症状を治療または予防するための新規手段を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、関節リウマチの動物モデルであるSKGマウスにおいて、LC-MUFA投与群では対照群と比較して関節部位のリウマチ症状の悪化が軽減されることを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]リウマチ性疾患の治療用または予防用組成物であって、
炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する、前記組成物。
[2]有効成分が、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせである、[1]に記載の組成物。
[3]有効成分が、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含むグリセリドである、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]グリセリドがトリグリセリドである、[3]に記載の組成物。
[5]組成物中の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合が、10重量%以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]組成物中の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸の合計の割合が、1重量%以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]有効成分が魚油由来である、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]魚油がサンマ油である、[7]に記載の組成物。
[9]炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して10〜300mg/kg体重/日の有効成分が4週間以上経口投与されるように用いられることを特徴とする、[1]〜[8]
のいずれかに記載の組成物。
[10]リウマチ性疾患が関節リウマチである、[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]食品組成物である、[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]医薬組成物である、[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する、前記組成物。
[2]有効成分が、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせである、[1]に記載の組成物。
[3]有効成分が、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含むグリセリドである、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]グリセリドがトリグリセリドである、[3]に記載の組成物。
[5]組成物中の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合が、10重量%以上である、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]組成物中の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸の合計の割合が、1重量%以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]有効成分が魚油由来である、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]魚油がサンマ油である、[7]に記載の組成物。
[9]炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して10〜300mg/kg体重/日の有効成分が4週間以上経口投与されるように用いられることを特徴とする、[1]〜[8]
のいずれかに記載の組成物。
[10]リウマチ性疾患が関節リウマチである、[1]〜[9]のいずれかに記載の組成物。
[11]食品組成物である、[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]医薬組成物である、[1]〜[10]のいずれかに記載の組成物。
本発明の組成物を経口摂取することにより、関節リウマチなどのリウマチ性疾患の症状、特に関節部位の症状を軽減させることができる。またLC-MUFAは安全性が高いため、本発明の組成物の投与を必要とする対象に、長期間にわたって投与することができる。
以下、本発明をより具体的に説明する。
なお本明細書中、以下の略号を使用する場合がある。
MUFA:モノ不飽和脂肪酸
LC-MUFA:長鎖モノ不飽和脂肪酸、特にC20:1およびC22:1の異性体の総称
PUFA:多価不飽和脂肪酸
EPA:エイコサペンタエン酸
DPA:ドコサペンタエン酸
DHA:ドコサヘキサエン酸
MTX:メトトレキサート
なお本明細書中、以下の略号を使用する場合がある。
MUFA:モノ不飽和脂肪酸
LC-MUFA:長鎖モノ不飽和脂肪酸、特にC20:1およびC22:1の異性体の総称
PUFA:多価不飽和脂肪酸
EPA:エイコサペンタエン酸
DPA:ドコサペンタエン酸
DHA:ドコサヘキサエン酸
MTX:メトトレキサート
本発明は、リウマチ性疾患の治療用または予防用組成物であって、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する、前記組成物(本明細書中、本発明の組成物という場合がある)を提供する。
本発明で使用される炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩、またはそのエステルは、特に限定されず、医薬品用または食品用として許容されるものであればよい。炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含有するグリセリドは、公知の方法により製造することができ、例えばWO1996/26647などに記載された煮取法により、天然物由来の油脂として製造することもできる。天然物由来の油脂としては、海産物油(例えば、サンマ油などの魚油、アザラシ、クジラなどの哺乳動物の油脂など)、微生物油などが挙げられる。後述の通り、魚油は炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の含有量が高い。したがって本発明の組成物中の有効成分は、魚油(例えばサンマ油)由来であることが好ましい。また、遊離の炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびグリセリド以外のエステルは、例えば上記グリセリドを原料として公知の方法により調製することができる。
例えばサンマ原油は、通常、その他の魚油と同様に以下のような方法で採取される。サンマ全体または水産加工から発生する魚の頭、皮、中骨、内臓等の加工残滓を粉砕して蒸煮した後、圧搾して煮汁(スティックウォーター、SW)と圧搾ミールに分離する。煮汁とともに得られる油脂を煮汁から遠心分離により分離する。
日本食品標準成分表2015年版(七訂)には、サンマ(皮つき、生)の脂肪酸中に含まれるドコセン酸(C22:1)は26.0重量%、イコセン酸(C20:1)は17.6重量%、モノ不飽和脂肪酸の総量は54.2重量%であることが記載されている。サンマ油は魚油の中でもモノ不飽和脂肪酸の含有量が多いのが特徴である。
魚油の原油は、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭工程などの精製工程を経て精製魚油とされる。炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分の供給源として、この精製魚油を用いることもできる。
また炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分の供給源として、モノ不飽和脂肪酸の濃度を高めた油を用いてもよい。この場合、リパーゼ反応を用いて濃縮する方法や、エチルエステル化してからモノ不飽和脂肪酸エチルエステルを濃縮し、その後グリセリンとエステル交換してトリグリセリドに再構成する方法などにより、MUFAが濃縮されたトリグリセリドを得ることができる。
炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸としては、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸(C20:1)(例えばC20:1 n-11、C20:1 n-9、C20:1 n-7)、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸(C22:1)(例えばC22:1 n-11、C22:1 n-9、C22:1 n-7、C22:1 n-13)、炭素数24のモノ不飽和脂肪酸(C24:1)(例えばC24:1 n-9)などが挙げられる。好ましい態様において、本発明の組成物の有効成分は、C20:1、その塩およびそのエステルから選択される成分、C22:1、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせである。
C22:1およびC20:1の含有量は、魚種により異なるが、それらの含有量が多い魚種としては、サンマなどサンマ科に属する魚、マダラ、スケトウダラ、タイセイヨウダラ、ギンダラなどのタラ科に属する魚、シロザケ、ギンザケ、ベニザケ、カラフトマス、タイヘイヨウサケ、ニジマスなどのサケ科の魚、カラフトシシャモ、シシャモなどのキュウリウオ科の魚、ニシンなどのニシン科の魚などが例示される。このほか、イカナゴ、マグロ、サバ、キンメダイなどの魚にも比較的多く含まれている。また、アブラツノザメ、ウバザメ、ギンザメなどのサメ類の肝油にも多く含まれる。本発明においては、これらの魚から調製された魚油をそのまま、精製して、または濃縮して使用することができる。
一実施形態において、本発明の組成物中の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合は、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、または55重量%以上である。例えば、本発明の一実施形態における組成物では、組成物中の総脂肪酸に対する炭素数20のモノ不飽和脂肪酸および炭素数22のモノ不飽和脂肪酸の合計の割合が、10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、または55重量%以上である。このように組成物中の総脂肪酸に対するLC-MUFAの割合を高くすることで、LC-MUFAの関節炎を軽減させる機能をより効果的に発揮させることができる。
なお本明細書中、組成物中の総脂肪酸に対する脂肪酸の割合(重量%)は、特に明記しない限り、AOCS official method Ce1b-89に従い、組成物中の成分をエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにより測定した値に基づいて算出される。脂肪酸の含有量という場合も、上記の総脂肪酸に対する当該脂肪酸の割合(重量%)を意味する。ガスクロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
装置:Agilent6890N GC system(Agilent社)
カラム:DB-WAX(Agilent Technologies, 30m x 0.25mm ID, 0.25μm film thickness)
キャリアガス:ヘリウム(1.0mL/min, コンスタントフロー)
注入口温度:250℃
注入量:1μL
注入法:スプリット
スプリット比:20:1
カラムオーブン:180℃ - 3℃/min - 230℃
検出器:FID
検出器温度:250℃
なお本明細書中、組成物中の総脂肪酸に対する脂肪酸の割合(重量%)は、特に明記しない限り、AOCS official method Ce1b-89に従い、組成物中の成分をエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにより測定した値に基づいて算出される。脂肪酸の含有量という場合も、上記の総脂肪酸に対する当該脂肪酸の割合(重量%)を意味する。ガスクロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
装置:Agilent6890N GC system(Agilent社)
カラム:DB-WAX(Agilent Technologies, 30m x 0.25mm ID, 0.25μm film thickness)
キャリアガス:ヘリウム(1.0mL/min, コンスタントフロー)
注入口温度:250℃
注入量:1μL
注入法:スプリット
スプリット比:20:1
カラムオーブン:180℃ - 3℃/min - 230℃
検出器:FID
検出器温度:250℃
本発明における炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の塩としては、カリウム塩およびナトリウム塩などが例示される。また、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルとしては、炭素数5以下の低級アルコールとのエステル(例えばメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、i−プロピルエステル、n−ブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、n−ペンチルエステルなど)、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどのグリセリンとのエステル(すなわちグリセリド)、並びにリン脂質などが例示される。好ましい態様において、本発明の組成物の有効成分は、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含むグリセリドであり、より好ましくはトリグリセリドである。別の好ましい態様において、本発明の組成物の有効成分は、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の炭素数5以下の低級アルコールとのエステルであり、より好ましくはエチルエステルである。
本発明における炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸として、遊離の炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を含有する天然物由来の油脂をそのまま、精製して、または濃縮して使用してもよい。また炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルとして、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリドを含有する天然物由来の油脂をそのまま、精製して、または濃縮して使用してもよい。さらに炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルとして、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を低級アルコールでエステル化した後にグリセリンとエステル交換してトリグリセリドに再構成したものを使用してもよい。
また炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルとして、天然物由来の油脂をエステル化した後、高速液体クロマトグラフィーなどにより分画して得られる分画油を使用することもできる。分画油としては、C20:1が濃縮された分画油、C22:1が濃縮された分画油、C24:1が濃縮された分画油などが挙げられる。
一実施形態において、本発明の組成物中の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸の合計の割合は、1重量%以下である。これらのn−3系多価不飽和脂肪酸は、機能性成分として知られているため、その含有量がより低い組成物では、組成物に付加される追加的な機能の影響がより少なくなる。このため、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の効果に基づく機能性組成物として本発明の組成物を用いる際に、他の機能を考慮する必要性が低くなり、組成物の取り扱いが容易となる。
本発明の一実施形態には、有効成分が魚油、特にサンマ油由来であり、組成物中の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合が10重量%以上、20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、または55重量%以上であり、かつ組成物中の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸の合計の割合が、1重量%以下である、組成物が含まれる。このような、組成物中の総脂肪酸に対するLC-MUFAの割合が高く、他の機能性成分の割合が低い組成物では、LC-MUFAの関節炎を軽減させる機能がより効果的に発揮される。
本発明において、リウマチ性疾患とは、関節、筋肉、骨などの運動器官の痛みを伴う病気の総称であり、関節リウマチ、変形性関節症、全身性エリテマトーデス、痛風、血清病、外傷性関節炎、先天性股関節形成不全症、多発性骨髄腫、およびアミロイドーシスを含む。本発明の組成物は、リウマチ性疾患の治療または予防のために用いられる。本明細書において、治療とは、対象疾患の症状が見出されている場合に、症状を軽減させるか、または症状の進行を抑制もしくは症状を緩和することをいい、予防とは、対象疾患の発症が予期される場合に、予め投与してその発症を抑制するか、または症状の進行を抑制もしくは症状を緩和することをいう。本発明の組成物は、リウマチ性疾患の症状、特に関節部位における炎症を軽減させるために用いることができる。好ましい態様において、本発明の組成物は、関節リウマチの治療用または予防用組成物であり、関節リウマチの関節部位における炎症を軽減させることができる。
本発明の組成物の投与対象は、哺乳動物であり、好ましくはヒトである。一実施形態において、本発明の組成物は、リウマチ性疾患に罹患しているかまたは罹患する危険性のある対象に投与される。投与対象がヒトである場合、リウマチ性疾患に罹患する危険性のある対象としては、例えば、関節リウマチの好発年齢である40歳以上である者、関節リウマチの遺伝的要因(HLA-DR4、PTPN22、PADI4等の変異)を有する者、環境的要因(喫煙、歯周病感染、腸内細菌叢の変化による腸管免疫の異常等)を有する者などが挙げられる。
本発明の組成物は、医薬組成物、食品組成物(例えば機能性食品、健康食品、サプリメントなど)などに適した形態、例えば顆粒剤(ドライシロップを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤などを含む)、散剤(粉末剤)、丸剤などの各種の固形製剤、又は内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの形態で調製してもよい。例えば本発明の組成物は、精製した魚油などをゼラチン皮膜に充填したソフトカプセルとして製剤化することができる。
製剤化のための添加物としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤などが挙げられる。液剤の形態にする場合は、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの増粘剤を配合することができる。また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にしたり、ペースト状の膠剤とすることもできる。さらに、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
一実施形態において、本発明の組成物は、さらに乳化剤を含む。本発明の組成物中の有効成分は、乳化することにより生体により吸収されやすくなり、LC-MUFAの関節炎を軽減させる機能がより効果的に発揮される。乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。乳化剤として市販品を用いてもよく、例えば、リョートー(登録商標)ポリグリエステルなどを用いることができる。
本発明の組成物は、食品組成物の形態をとることができる。本発明において、食品組成物は、飲料を含む食品全般を意味し、サプリメントなどの健康食品を含む一般食品の他、消費者庁の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品や栄養機能食品をも含む。例えば、関節炎の軽減効果を有する旨の表示を付した機能性食品が提供される。例えば、魚油を含有する食品をそのまま提供することができる。また、本発明の食品組成物は、他の食品に添加し、混合し、または塗布することなどにより関節炎の軽減効果を付与するための、食品素材も含む。食品の他に、動物用の餌料などとして提供することもできる。
本発明の組成物が食品の形態をとる場合、当該食品は特に限定されず、飲料、菓子類、パン類、スープ類などであってよく、例えば、一般的なレトルト食品、冷凍食品、インスタント食品(ヌードルなど)、缶詰、ソーセージ、クッキー、ビスケット、シリアルバー、クラッカー、スナック(ポテトチップなど)、ペストリー、ケーキ、パイ、キャンデー、チューインガム(ペレットおよびスティックを含む)、ゼリー、スープ、アイス、ドレッシング、ヨーグルトなど、錠剤、カプセル剤、エマルションなどの形態のサプリメント、清涼飲料などが含まれる。これらの食品の製造方法は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されず、各食品について当業者によって使用されている方法に従えばよい。
本発明の組成物の奏する効果を、包装容器、製品の説明書、パンフレットに表示して本発明の係る製品を販売することは本発明の範囲に含まれる。またテレビ、インターネットのウェブサイト、パンフレット、新聞、雑誌などに本発明の効果を表示して、本発明に係る製品を宣伝・販売することも本発明の範囲に含まれる。
本発明において対象に経口投与される炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分の量は特に限定されず、所望の効果を得るための有効量以上の量で経口投与される。ここで所望の効果を得るための有効量とは、リウマチ性疾患の症状、例えば関節部位における炎症を軽減させるために必要な量をいう。例えば、成人の場合、対象の年齢、体重および健康状態などの条件に応じて、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して2 mg/kg体重/日以上、3 mg/kg体重/日以上、4 mg/kg体重/日以上、5 mg/kg体重/日以上、6 mg/kg体重/日以上、7 mg/kg体重/日以上、8 mg/kg体重/日以上、9 mg/kg体重/日以上、10 mg/kg体重/日以上、11 mg/kg体重/日以上、12 mg/kg体重/日以上、13 mg/kg体重/日以上、14 mg/kg体重/日以上、15 mg/kg体重/日以上、16 mg/kg体重/日以上、17 mg/kg体重/日以上、18 mg/kg体重/日以上、19 mg/kg体重/日以上、20 mg/kg体重/日以上、21 mg/kg体重/日以上、22 mg/kg体重/日以上、23 mg/kg体重/日以上、24 mg/kg体重/日以上、25 mg/kg体重/日以上、30 mg/kg体重/日以上、40 mg/kg体重/日以上、50 mg/kg体重/日以上、100 mg/kg体重/日以上、または200 mg/kg体重/日以上の有効成分を4週間以上、5週間以上、6週間以上、7週間以上、8週間以上、9週間以上、10週間以上、11週間以上、または12週間以上、経口投与することができる。
また、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分は、強い副作用を有するものではないので、1日の摂取量に制限はない。しかしながら、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分の機能を効果的に発揮させる観点から、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して600 mg/kg体重/日未満、500 mg/kg体重/日未満、400 mg/kg体重/日未満、または300 mg/kg体重/日未満の有効成分が経口投与されるよう、本発明の組成物を成人に投与することもできる。したがって、一実施形態において、本発明の組成物は、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して10〜300 mg/kg体重/日、例えば10〜30 mg/kg体重/日、30〜100 mg/kg体重/日、または100〜300 mg/kg体重/日の有効成分が、4週間以上、5週間以上、6週間以上、7週間以上、8週間以上、9週間以上、10週間以上、11週間以上、または12週間以上、経口投与されるように用いられてもよい。
また、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分は、強い副作用を有するものではないので、1日の摂取量に制限はない。しかしながら、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分の機能を効果的に発揮させる観点から、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して600 mg/kg体重/日未満、500 mg/kg体重/日未満、400 mg/kg体重/日未満、または300 mg/kg体重/日未満の有効成分が経口投与されるよう、本発明の組成物を成人に投与することもできる。したがって、一実施形態において、本発明の組成物は、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して10〜300 mg/kg体重/日、例えば10〜30 mg/kg体重/日、30〜100 mg/kg体重/日、または100〜300 mg/kg体重/日の有効成分が、4週間以上、5週間以上、6週間以上、7週間以上、8週間以上、9週間以上、10週間以上、11週間以上、または12週間以上、経口投与されるように用いられてもよい。
本発明の組成物は、少なくとも一つの他のリウマチ性疾患の治療剤と併用してもよい。例えば、「関節リウマチ診療ガイドライン2014」(メディカルレビュー社, 2014年10月10日, p. 44-57)に記載されているような、MTXなどのDMARDs、TNF阻害薬、トシリズマブ、アバタセプトなどの生物学的製剤と同時にまたは順次投与することができる。
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお実施例中、%表示されているものは、特記なければ、重量%である。
なお実施例中、%表示されているものは、特記なければ、重量%である。
(実施例1)LC-MUFA含有サンマ濃縮油の調製
サンマ原油をアルカリにより脱酸を行った後、活性白土により脱色し、精製サンマ油を調製した。さらに、精製サンマ油をエチルエステル化してODSカラムに付し、モノ不飽和脂肪酸エチルエステルの画分を分取して濃縮した。
濃縮油の脂肪酸組成は、AOCS official method Ce1b-89に従い、組成物中の成分をエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにて測定した。AOCS official method Ce1b-89に従うガスクロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
装置:Agilent6890N GC system(Agilent社)
カラム:DB-WAX(Agilent Technologies, 30m x 0.25mm ID, 0.25μm film thickness)
キャリアガス:ヘリウム(1.0mL/min, コンスタントフロー)
注入口温度:250℃
注入量:1μL
注入法:スプリット
スプリット比:20:1
カラムオーブン:180℃ - 3℃/min - 230℃
検出器:FID
検出器温度:250℃
サンマ原油をアルカリにより脱酸を行った後、活性白土により脱色し、精製サンマ油を調製した。さらに、精製サンマ油をエチルエステル化してODSカラムに付し、モノ不飽和脂肪酸エチルエステルの画分を分取して濃縮した。
濃縮油の脂肪酸組成は、AOCS official method Ce1b-89に従い、組成物中の成分をエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにて測定した。AOCS official method Ce1b-89に従うガスクロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
装置:Agilent6890N GC system(Agilent社)
カラム:DB-WAX(Agilent Technologies, 30m x 0.25mm ID, 0.25μm film thickness)
キャリアガス:ヘリウム(1.0mL/min, コンスタントフロー)
注入口温度:250℃
注入量:1μL
注入法:スプリット
スプリット比:20:1
カラムオーブン:180℃ - 3℃/min - 230℃
検出器:FID
検出器温度:250℃
LC-MUFA濃縮油の脂肪酸組成を以下に示す。表1の値は、総脂肪酸量を100%とした時の各脂肪酸の割合(%)を示す。LC-MUFA濃縮油では、LC-MUFAは約59%まで濃縮された。またLC-MUFA濃縮油の調製の過程で、n-3系PUFAであるEPA、DPA、およびDHAの濃度は、1%以下にまで低下した。
(実施例2)リウマチモデルマウスに対するサンマ濃縮油の効果
SKGマウスを用いて、LC-MUFA含有サンマ濃縮油の抗炎症作用を調べた。
SKGマウスを用いて、LC-MUFA含有サンマ濃縮油の抗炎症作用を調べた。
<試験方法>
日本クレア株式会社より購入したSKG/Jcl マウス雌にMF固形飼料(オリエンタル酵母工業(株))を与え、7週齢からControl群、MUFA (0.25 g/kg)群、MUFA (0.5 g/kg)群、MUFA (1 g/kg)群、およびMTX(メトトレキサート、139-13571、Wako)群に群分けした。
Control群およびMUFA群では、7週齢から毎日1回強制経口投与によりそれぞれ大豆油およびMUFAを6週間投与した。Control群では、大豆油(190-03766、和光純薬)を1.5%ポリグリエステル溶液(M-10D、リョートー(登録商標)ポリグリエステル(三菱化学フーズ株式会社)を蒸留水に溶解させて1.5%としたもの)と混合して調製した乳化液を、体重あたり10 mL/kgの投与容量で、大豆油の投与量が1 g/kgとなるように経口投与した。経口投与には、1 mLテルモシリンジ(登録商標)および経口ゾンデ(5202K、フチガミ器械有限会社)を用いた。MUFA群では、実施例1で調製したLC-MUFA含有サンマ濃縮油をControl群と同様に1.5%ポリグリエステル溶液と混合して調製した乳化液を、体重あたり10 mL/kgの投与容量で、LC-MUFA含有サンマ濃縮油の投与量が0.25 g/kg、0.5 g/kg、または1 g/kgとなるように経口投与した。
MTX群では、8週齢から週3回腹腔内投与によりメトトレキサートを5週間投与した。メトトレキサートをPBS(Phosphate buffered saline)に溶解させ、0.2μm孔シリンジフィルターでろ過した溶液を、SKGマウスの体重あたり10 mL/kgの投与容量で、メトトレキサートの投与量が5 mg/kgとなるように腹腔内投与した。腹腔内投与には、1 mLテルモシリンジ(登録商標)および26G針を用いた。
8週齢で、マンナン(M7504-5G、SIGMA)を生理食塩水(大塚製薬株式会社)に溶解させた後、0.2μmシリンジフィルターでろ過した溶液を、マンナンの投与量が20 mg/マウスとなるように腹腔内投与し、炎症を惹起させた。週1回病態を観察し、関節炎スコアを記録した。12週齢で剖検した。剖検では、ペントバルビタールナトリウム(ソムノペンチル)10 mg/mlで麻酔(50 mg/kg BW)後、心臓から全採血し、血清及び足関節部位を採取した。
日本クレア株式会社より購入したSKG/Jcl マウス雌にMF固形飼料(オリエンタル酵母工業(株))を与え、7週齢からControl群、MUFA (0.25 g/kg)群、MUFA (0.5 g/kg)群、MUFA (1 g/kg)群、およびMTX(メトトレキサート、139-13571、Wako)群に群分けした。
Control群およびMUFA群では、7週齢から毎日1回強制経口投与によりそれぞれ大豆油およびMUFAを6週間投与した。Control群では、大豆油(190-03766、和光純薬)を1.5%ポリグリエステル溶液(M-10D、リョートー(登録商標)ポリグリエステル(三菱化学フーズ株式会社)を蒸留水に溶解させて1.5%としたもの)と混合して調製した乳化液を、体重あたり10 mL/kgの投与容量で、大豆油の投与量が1 g/kgとなるように経口投与した。経口投与には、1 mLテルモシリンジ(登録商標)および経口ゾンデ(5202K、フチガミ器械有限会社)を用いた。MUFA群では、実施例1で調製したLC-MUFA含有サンマ濃縮油をControl群と同様に1.5%ポリグリエステル溶液と混合して調製した乳化液を、体重あたり10 mL/kgの投与容量で、LC-MUFA含有サンマ濃縮油の投与量が0.25 g/kg、0.5 g/kg、または1 g/kgとなるように経口投与した。
MTX群では、8週齢から週3回腹腔内投与によりメトトレキサートを5週間投与した。メトトレキサートをPBS(Phosphate buffered saline)に溶解させ、0.2μm孔シリンジフィルターでろ過した溶液を、SKGマウスの体重あたり10 mL/kgの投与容量で、メトトレキサートの投与量が5 mg/kgとなるように腹腔内投与した。腹腔内投与には、1 mLテルモシリンジ(登録商標)および26G針を用いた。
8週齢で、マンナン(M7504-5G、SIGMA)を生理食塩水(大塚製薬株式会社)に溶解させた後、0.2μmシリンジフィルターでろ過した溶液を、マンナンの投与量が20 mg/マウスとなるように腹腔内投与し、炎症を惹起させた。週1回病態を観察し、関節炎スコアを記録した。12週齢で剖検した。剖検では、ペントバルビタールナトリウム(ソムノペンチル)10 mg/mlで麻酔(50 mg/kg BW)後、心臓から全採血し、血清及び足関節部位を採取した。
<群分け>
試験群(N=6〜8)
1. Control群
2. MUFA (0.25 g/kg)群
3. MUFA (0.5 g/kg)群
4. MUFA (1 g/kg)群
5. MTX群
試験群(N=6〜8)
1. Control群
2. MUFA (0.25 g/kg)群
3. MUFA (0.5 g/kg)群
4. MUFA (1 g/kg)群
5. MTX群
<関節炎スコア>
関節炎スコアは、前足および後足の関節および指を、日本クレア株式会社の資料(SKG/Jclマウス関節炎の評価)に基づき、表2に記載の評価基準に従ってスコアリングし、それらを合計することにより算出した。7週齢時から12週齢時まで週1回、スコアリングを行った。
関節炎スコアは、前足および後足の関節および指を、日本クレア株式会社の資料(SKG/Jclマウス関節炎の評価)に基づき、表2に記載の評価基準に従ってスコアリングし、それらを合計することにより算出した。7週齢時から12週齢時まで週1回、スコアリングを行った。
<サイトカイン定量>
血清中のTNF-α及びIL-6は、R&D Systems社のELISA kitを用いて測定した。
血清中のTNF-α及びIL-6は、R&D Systems社のELISA kitを用いて測定した。
<統計学的解析>
データは、平均値±標準誤差で示し、各群間の有意差検定には統計ソフト(GraphPad Prism 6)を用いてTukey法で行った。有意水準は5%以下とした。
データは、平均値±標準誤差で示し、各群間の有意差検定には統計ソフト(GraphPad Prism 6)を用いてTukey法で行った。有意水準は5%以下とした。
<結果>
図1に示すように、炎症性スコアは経時的に上昇したが、MUFA群における関節炎スコアは、Control群と比較して上昇が抑制された。特にMUFA (0.25 g/kg)群において、抑制効果が高かった。即ち、低用量の方が高い効果が得られた。また、マンナン投与から2週目(10週齢)から4週目(12週齢)にかけて抑制効果が顕著であった。一方、現在関節リウマチの第一選択薬として使用されているメトトレキサートを投与した、陽性対照であるMTX群では、マンナン投与から2週目(10週齢)から、関節炎スコアの上昇を抑制する効果が認められた。ただし、以前の検討において、本動物モデルを用いた試験で、10 mg/kgの高用量では抑制効果が強くなるものの、試験途中で死亡する個体がいくつか認められ、副作用が極めて強いことが判明している(データは示さない)。LC-MUFA濃縮油は、極めて安全性が高いことから長期投与が可能であり、慢性的な疾患であるリウマチ性疾患に対して特に有効性が高いと考えられる。
図1に示すように、炎症性スコアは経時的に上昇したが、MUFA群における関節炎スコアは、Control群と比較して上昇が抑制された。特にMUFA (0.25 g/kg)群において、抑制効果が高かった。即ち、低用量の方が高い効果が得られた。また、マンナン投与から2週目(10週齢)から4週目(12週齢)にかけて抑制効果が顕著であった。一方、現在関節リウマチの第一選択薬として使用されているメトトレキサートを投与した、陽性対照であるMTX群では、マンナン投与から2週目(10週齢)から、関節炎スコアの上昇を抑制する効果が認められた。ただし、以前の検討において、本動物モデルを用いた試験で、10 mg/kgの高用量では抑制効果が強くなるものの、試験途中で死亡する個体がいくつか認められ、副作用が極めて強いことが判明している(データは示さない)。LC-MUFA濃縮油は、極めて安全性が高いことから長期投与が可能であり、慢性的な疾患であるリウマチ性疾患に対して特に有効性が高いと考えられる。
また、血清中の炎症性サイトカインであるTNF-α及びIL-6は、図2に示すようにControl群と比較してMUFA(0.25 g/kg)群、MUFA(1 g/kg)群、およびMTX群のいずれも低値を示した。TNF-α及びIL-6は、本モデルマウスにおいて、関節炎の発症に関わる重要なサイトカインであることが報告されている。このことから、LC-MUFAが関節炎を抑制する作用機序として、リウマチ発症及び進行に重要な因子であるTNF-α及びIL-6の血中濃度の上昇を抑制することにより関節炎の進行を抑制している可能性が示唆される。
(実施例3)リウマチモデルマウスに対するサンマ濃縮油とオリーブ油との比較試験
実施例2において、サンマ濃縮油に関節リウマチにおける関節炎スコアの上昇を抑制する効果が認められた。サンマ油には、極長鎖のモノエン脂肪酸である20:1及び22:1が豊富に含まれる。そこで、別の長鎖のモノエン脂肪酸であるオレイン酸を豊富に含むオリーブ油との効果比較試験を行った。
実施例2において、サンマ濃縮油に関節リウマチにおける関節炎スコアの上昇を抑制する効果が認められた。サンマ油には、極長鎖のモノエン脂肪酸である20:1及び22:1が豊富に含まれる。そこで、別の長鎖のモノエン脂肪酸であるオレイン酸を豊富に含むオリーブ油との効果比較試験を行った。
<試験方法>
実施例2と同様に試験を行った。試験群は、下記<群分け>に示した通りである。実施例1で調製したLC-MUFA含有サンマ濃縮油(MUFA群)およびオリーブ油(150-00276、和光純薬)(オリーブ油群)を、1.5%ポリグリエステル溶液と混合して乳化液を調製し、それらを、体重あたり10 mL/kgの投与容量で、各油の投与量が0.25 g/kgとなるように、7週齢の時点から毎日1回6週間経口投与した。8週齢でマンナン溶液を腹腔内投与し、炎症を惹起させた。週1回病態を観察し、関節炎スコアを記録した。12週齢で剖検した。
実施例2と同様に試験を行った。試験群は、下記<群分け>に示した通りである。実施例1で調製したLC-MUFA含有サンマ濃縮油(MUFA群)およびオリーブ油(150-00276、和光純薬)(オリーブ油群)を、1.5%ポリグリエステル溶液と混合して乳化液を調製し、それらを、体重あたり10 mL/kgの投与容量で、各油の投与量が0.25 g/kgとなるように、7週齢の時点から毎日1回6週間経口投与した。8週齢でマンナン溶液を腹腔内投与し、炎症を惹起させた。週1回病態を観察し、関節炎スコアを記録した。12週齢で剖検した。
<群分け>
試験群(N=4〜5)
1. MUFA群
2. オリーブ油群
試験群(N=4〜5)
1. MUFA群
2. オリーブ油群
<統計学的解析>
データは、平均値±標準誤差で示し、各群間の有意差検定には統計ソフト(GraphPad Prism 6)を用いてMann-Whitney testで行った。有意水準は5%以下とした。
データは、平均値±標準誤差で示し、各群間の有意差検定には統計ソフト(GraphPad Prism 6)を用いてMann-Whitney testで行った。有意水準は5%以下とした。
<結果>
図3に示すとおり、オリーブ油群では、MUFA群のような関節炎スコアの上昇の抑制は認められなかった。両群の関節炎スコアの差は、マンナン投与後、2週目(10週齢)で最大となった。したがって、オリーブ油中の主要な脂肪酸であるオレイン酸(炭素数18のモノエン酸)は、関節炎を抑制する作用が弱いことが示唆された。それに対して、LC-MUFA濃縮油中に豊富に含まれる、サンマ油などの魚油に特徴的なC20:1n-11、C22:1n-11などの炭素数20及び22の極長鎖モノエン酸は、関節炎を抑制する強い作用を有することが示された。
図3に示すとおり、オリーブ油群では、MUFA群のような関節炎スコアの上昇の抑制は認められなかった。両群の関節炎スコアの差は、マンナン投与後、2週目(10週齢)で最大となった。したがって、オリーブ油中の主要な脂肪酸であるオレイン酸(炭素数18のモノエン酸)は、関節炎を抑制する作用が弱いことが示唆された。それに対して、LC-MUFA濃縮油中に豊富に含まれる、サンマ油などの魚油に特徴的なC20:1n-11、C22:1n-11などの炭素数20及び22の極長鎖モノエン酸は、関節炎を抑制する強い作用を有することが示された。
本発明により、関節リウマチなどのリウマチ性疾患の症状、特に関節部位の症状を軽減させる食品組成物および医薬組成物が提供される。
Claims (12)
- リウマチ性疾患の治療用または予防用組成物であって、
炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する、前記組成物。 - 有効成分が、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
- 有効成分が、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含むグリセリドである、請求項1または2に記載の組成物。
- グリセリドがトリグリセリドである、請求項3に記載の組成物。
- 組成物中の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合が、10重量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
- 組成物中の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸の合計の割合が、1重量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
- 有効成分が魚油由来である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
- 魚油がサンマ油である、請求項7に記載の組成物。
- 炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸に換算して10〜300mg/kg体重/日の有効成分が4週間以上経口投与されるように用いられることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
- リウマチ性疾患が関節リウマチである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
- 食品組成物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
- 医薬組成物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
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