JP2020152706A - 長鎖モノエン脂肪酸(lc−mufa)を有効成分とする腸内細菌叢改善剤 - Google Patents

長鎖モノエン脂肪酸(lc−mufa)を有効成分とする腸内細菌叢改善剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、長鎖モノエン脂肪酸(LC−MUFA)の新たな用途を提供することである。【解決手段】本発明のLC−MUFAを摂取することにより、腸内細菌叢が改善されることを見出した。特に炭素数20のLC−MUFAを摂取することにより、顕著に善玉菌のAkkermansia muciniphilaを増加させ、悪玉菌のFirmicutes門細菌を減少させることができている。この結果、本発明のLC−MUFAを用いて、メタボリックシンドロームなどに対する良好な医薬組成物又は食品組成物が提供できることが示された。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素数20及び/又は22の長鎖モノエン脂肪酸を有効成分とする腸内細菌叢の改善剤に関するものである。特にサンマ等の魚油には、イコセン酸(炭素数20)、ドコセン酸(炭素数22)を中心とするモノ不飽和脂肪酸が豊富であり、これらの魚油を有効成分とする腸内細菌叢改善剤又は医薬組成物に関するものである。
近年、肥満に伴う脂質代謝異常症やメタボリックシンドロームの増加に伴い、脂質の分解・吸収の主な場となる腸管内の脂質代謝や、腸内細菌のヒトの健康に与える影響が大きく注目されている。また、近年のメタゲノム、メタトランスクリプトーム、メタプロテオーム、メタボロームなどの多層にわたるオミックス解析技術の進歩により、炎症性腸疾患などの消化器疾患や糖尿病、動脈硬化などの代謝・循環器疾患、アレルギーや自己免疫疾患などの免疫疾患、自閉症などの脳神経疾患に腸内細菌叢の変動が係っていることが明らかになってきた(非特許文献1)。
ヒトの腸内細菌叢は、主にBacteroidetes、Firmicutes、Actinobacteria、Proteobacteriaの4つの門に属する菌から構成されており、特にFirmicutes門、Bacteroidetes門が最優占め種である。腸内細菌の多様性の減少や偏った菌種の異常な増加による腸内細菌叢の乱れは、腸管免疫を起点とするヒトの恒常性維持システムに異常を起こし、疾患の原因になる。
偏った食事や栄養は、腸内細菌叢の乱れの一つの要因となり、腸内細菌叢の変化を介して、宿主であるヒトの健康状態に影響を及ぼしている。これまで、プレバイオティクスとして食物繊維や難消化性デンプン、難消化性オリゴ糖などが知られており、腸内細菌に対する影響が研究されてきた。しかし、脂質も腸内細菌叢の構成を変動させることが分かってきた。例えば、高脂肪食を与えられたマウスではFirmicutes門が増加するが、Bacteroidetes門が減少し、それと共に腸内細菌叢の多様性が減少することが報告されている。ヒトにおいてもマウスと同様の傾向が報告されており、肥満型の被験者と痩せ型の被験者の腸内細菌叢を比較すると、肥満型ではFirmicutes門の占める割合が高く、その一方で、Bacteroidetes門の占める割合が低く、腸内細菌叢全体の構成菌種が減少し、多様性が失われていた(非特許文献2)。
更に食用油の脂肪酸組成によっても腸内細菌層が変動することが報告されている。例えば、ω3脂肪酸を多く含む魚油、あるいは飽和脂肪酸を多く含むラードを11週間マウスに与えると、魚油を与えたマウスの腸内ではBifidobacterium属細菌や乳酸菌などと共に、Akkermansia muciniphilaが増加した。一方、ラードを与えたマウスではBilophila属、Bacteroides属、Turicibacter属細菌などが増加した。この時、ラードは魚油に比べてインスリン感受性を低下させ、白色脂肪組織の炎症を悪化させ、更に肥満を促進させた。
魚油を与えた場合に増加したAkkermansia muciniphilaは、白色脂肪組織へのマクロファージの浸潤を減少させることや、腸管バリア機能や糖代謝を改善させる機能を有している。また、魚油を与えた場合に増加したBifidobacterium属細菌や乳酸菌は、プロバイオティクスとしてよく使用される有用菌である。
一方、ラードを与えた場合に増加したBilophila属のwadsworthiaは腸炎を悪化させることが報告されている。このように食事等で摂取される脂質は腸内細菌叢に大きな影響を与え、ヒトの健康に影響を与える主要な因子であることが明らかにされている(非特許文献1)。
非特許文献1に記載された魚油はニシン油が使用されており、DHAやEPAのω3脂肪酸が20〜34%含有されており、それ以外にも炭素数14〜18の飽和脂肪酸が24〜33%含有されている。それ故、魚油のEPA・DHAや炭素数14〜18の飽和脂肪酸が腸内細菌叢に大きな影響を与えると考えられている。更に、魚油のEPA・DHAは、高脂血症治療薬の医薬品としてエパデール(持田製薬(株))やロトリガ(武田薬品工業(株))として用いられており、LDLコレステロールや中性脂肪を減少させると共に、HDLコレステロールを増やす作用があり、脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化や高血圧といった生活習慣病を予防できると考えられている。また、最新の研究でも、高脂血症のみならず体脂肪の燃焼作用や腸内細菌叢を介した抗炎症作用、アレルギー抑制作用の有効性が明らかにされて来ている。しかし、いずれも、EPAやDHAなどのω3長鎖脂肪酸に関する報告であり、同じ魚の油ではあるが、EPAやDHAと薬理効果の異なる長鎖モノエン脂肪酸(LC−MUFA)に関しては、ほとんど検討がなされていない。
一方、腸内細菌叢の変化が動脈硬化のバイオマーカーとなるとの報告も行われ、図1の示されるように、動脈硬化等のメタボリックシンドロームに対する影響が明らかにされている(非特許文献3)
しかし、腸内細菌叢に対する魚油の効果として、魚油のどのような成分が有効に働きかけるのかについては、これまでに報告がなく、具体的なことはほとんど明らかになっていない。
再表2012−121080号公報
雑賀あずさ等、腸内細菌学雑誌32巻4号167−174(2018年) Peter J.Turnbaugh等、Nature、2006年、444、p.1027−1031 山下智也、日医大医会誌 2017;13(4),205−209
本発明の課題は、長鎖モノエン脂肪酸(LC−MUFA)の腸内細菌叢に対する効果を見出すと共に、特に炭素数20及び/又は22のLC−MUFAを有効成分とする腸内細菌叢の改善剤又はその医薬組成物を提供することである。
本発明者らは、LC−MUFAが持つ栄養生理学的機能について鋭意検討を行ってきた。LC−MUFAは、サンマやサバなどの小・中型魚およびサケ、スケソウタラなどの脂の多い魚に含まれており、植物油にはほとんど含まれていないことが特徴である。しかも、LC−MUFAには、EPAやDHAと異なり、コレステロール低下作用があると報告されている(非特許文献1)。
このように、作用効果がEPAやDHAとは異なっているLC−MUFAに関して、その特徴を明確にするために、本発明者らは、腸内細菌叢に対するLC−MUFAの効果を検討した。まず、マウスに対してLC−MUFAを豊富に含有する魚油(サケ等の魚油)を投与すると、腸内細菌叢は図2〜3に示されるように、LC−MUFAを豊富に含有する魚油を用いれば、Akkermansia muciniphila等のいわゆる善玉菌が増加し、Firmicutes門細菌などのいわゆる悪玉菌が減少することを見出した。
本発明者らは、LC−MUFAの主要な成分である炭素数20及び炭素数22のLC−MUFAを単離精製しており(特開2018−127452号)、これを用いて、どちらのLC−MUFAの効果が支配的であるのかを検討した。その結果、図4〜6に示されるように炭素数20のLC−MUFA(イコセン酸)が、炭素数22のLC−MUFA(ドコセン酸)よりも有効であることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成した。本件発明の要旨は以下の通りである。
[1]炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸(LC−MUFA)、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する、腸内細菌叢の改善剤。
[2]有効成分が魚油由来である、[1]に記載の改善剤。
[3]魚油がサンマ油である、[1]又は[2]に記載の改善剤。
[4]魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合が、59重量%以上である、[1]〜[3]のいずれかに記載の改善剤。
[5]魚油由来の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸の合計の割合が、1重量%以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の改善剤。
[6]有効成分が、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸(イコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸(ドコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせである、[1]〜[5]のいずれかに記載の改善剤。
[7]魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数20のモノ不飽和脂肪酸(イコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分の含量が、68重量%以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の改善剤。
[8]魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数22のモノ不飽和脂肪酸(ドコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分の含量が、93重量%以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の改善剤。
[9]有効成分が、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエチルエステルである、[1]〜[8]のいずれかに記載の改善剤。
[10]有効成分が、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含むグリセリドである、[1]〜[8]のいずれかに記載の改善剤。
[11]腸内細菌叢の改善が、Akkermansia muciniphilaの増加とFirmicutes門細菌の減少を行うものである、[1]〜[10]のいずれかに記載の改善剤。
[12]腸内細菌叢の改善が、Firmicutes門細菌の存在比/Bacteroidetes門細菌の存在比が減少することである、[1]〜[10]のいずれかに記載の改善剤。
[13]上記[1]〜[12]の改善剤を含有する、メタボリックシンドロームの治療または予防のためのサプリメント又は食品組成物。
[14]メタボリックシンドロームが、糖尿病、動脈硬化、炎症性疾患とアレルギー疾患である、[13]に記載のサプリメント又は食品組成物。
本発明のLC−MUFAを有効成分とする腸内細菌叢の改善剤は、Akkermansia muciniphila等のいわゆる善玉菌を増加させ、Firmicutes門細菌などのいわゆる悪玉菌を減少させ、腸内細菌叢を効果的に改善できた。特に、本発明の炭素数20のモノ不飽和脂肪酸は、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸よりも腸内細菌叢の改善効果が優れていた。このように、本発明のLC−MUFAを有効成分とする腸内細菌叢の改善剤は、メタボリックシンドロームの治療または予防のための医薬組成物および食品組成物として有効である。
生活習慣病とヒト腸内細菌との関連性を表した図である。 腸内細菌RNAseq解析結果(門)として、各個体の細菌叢(門)の割合(%)を示した図である。 腸内細菌RNAseq解析結果(属)として、各個体の細菌叢(属)のうちAkkermansia muciniphilaの割合(%)を示した図である。 腸内細菌RNAseq解析結果(属)として、各個体の細菌叢(属)のうちFirmicutes門とBacteroides門の細菌の存在%の比であるFB比率(%)を示した図である。
本発明の「炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩、またはそのエステル」とは、特に限定されず、医薬品用または食品用として許容されるものであればよい。炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含有するグリセリドは、公知の方法により製造することができ、例えばWO1996/26647などに記載された煮取法により、天然物由来の油脂として製造することもできる。天然物由来の油脂としては、海産物油(例えば、サンマ油などの魚油、アザラシ、クジラなどの哺乳動物の油脂など)、微生物油などが挙げられる。後述の通り、魚油は炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の含有量が高い。従って、本発明の治療または予防剤の有効成分は、魚油(例えばサンマ油)由来であることが好ましい。また、遊離の炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびグリセリド以外のエステルは、例えば上記グリセリドを原料として公知の方法により調製することができる。例えばサンマ原油は、通常、その他の魚油と同様に以下のような方法で採取される。サンマ全体または水産加工から発生する魚の頭、皮、中骨、内臓等の加工残滓を粉砕して蒸煮した後、圧搾して煮汁(スティックウォーター、SW)と圧搾ミールに分離する。煮汁とともに得られる油脂を煮汁から遠心分離により分離する。
なお、五訂日本食品標準成分表には、サンマ(生)の脂肪酸中に含まれるドコセン酸(C22:1)は19.3重量%、イコセン酸(C20:1)は17.2重量%、モノ不飽和脂肪酸の総量は50.1重量%であると記載されている。サンマ油は魚油の中でもモノ不飽和脂肪酸の含有量が多いのが特徴である。
魚油の原油は、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭工程などの精製工程を経て精製魚油とされる。LC−MUFA供給源として、この精製魚油を用いることもできる。
また、さらにモノ不飽和脂肪酸の濃度を高めた油を使用する場合には、リパーゼ反応を用いて濃縮する方法や、エチルエステル化してからモノ不飽和脂肪酸エチルエステルを濃縮し、その後グリセリンとエステル交換してトリグリセリドに再構成する方法などにより、LC−MUFAが濃縮されたトリグリセリドを得ることができる。
本発明の治療または予防剤においては、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸以外の脂肪酸(例えば、n−3系多価不飽和脂肪酸)の含有量は低くてもよい。一態様において、本発明の治療または予防剤中の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)の合計の割合は、1重量%以下であってもよい。
炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸としては、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸(C20:1)(例えばC20:1 n−11,C20:1 n−9,C20:1 n−7)、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸(C22:1)(例えばC22:1 n−11、C22:1 n−9、C22:1 n−7)、炭素数24のモノ不飽和脂肪酸(C24:1)(例えばC24:1 n−9)などが挙げられる。好ましい態様において、本発明の治療または予防剤の有効成分は、C20:1、その塩およびそのエステルから選択される成分、C22:1、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせである。
C22:1およびC20:1は、魚種により含有量が異なるが、含有量が多い魚種としては、サンマなどサンマ科に属する魚、マダラ、スケトウダラ、タイセイヨウダラ、ギンダラなどのタラ科に属する魚、シロザケ、ギンザケ、ベニザケ、カラフトマス、タイヘイヨウサケ、ニジマスなどのサケ科の魚、カラフトシシャモ、シシャモなどのキュウリウオ科の魚、ニシンなどのニシン科の魚などが例示される。このほか、イカナゴ、マグロ、サバ、キンメダイなどの魚にも比較的多く含まれている。また、アブラツノザメ、ウバザメ、ギンザメなどのサメ類の肝油にも多く含まれる。本発明においては、これらの魚から調製された魚油をそのまま、精製して、または濃縮して使用することができる(特開2018−127452号参照)。
なお本明細書中、剤(または組成物)中の総脂肪酸に対する当該脂肪酸の割合(重量%)は、特に明記しない限り、「五訂増補日本食品標準成分表分析マニュアル」(文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会食品成分委員会資料(平成16年))に従い、剤(または組成物)中の成分をエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにより測定した値に基づいて算出される。脂肪酸の含有量という場合も、上記の総脂肪酸に対する当該脂肪酸の割合(重量%)を意味する。
本発明における炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の塩としては、カリウム塩およびナトリウム塩などが例示される。また、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルとしては、炭素数5以下の低級アルコールのエステル(例えばメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、i−プロピルエステル、n−ブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、n−ペンチルエステルなど)、モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドなどのグリセリンとのエステル(すなわちグリセリド)、並びにリン脂質などが例示され、好ましくは、グリセリドまたはエチルエステルである。
本発明における炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸として、遊離の炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を含有する天然物由来の油脂をそのまま、精製して、または濃縮して使用してもよい。また炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルとして、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸とするグリセリドを含有する天然物由来の油脂をそのまま、精製して、または濃縮して使用してもよい。
また炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエステルとして、天然物由来の油脂をエステル化した後、高速液体クロマトグラフィーなどにより分画して得られる分画油を使用することもできる。分画油としては、C20:1が濃縮された分画油、C22:1が濃縮された分画油、C24:1が濃縮された分画油などが挙げられる。
本発明の「腸内細菌叢の改善」とは、腸内細菌叢でBacteroidetes(バクテロイデテス門)に属する細菌の構成比率を高め、Firmicutes(ファーミキューテス門)に属する細菌の構成比率を低下させることを言う。例えば、非特許文献2に記載のように、ヒトの肥満時には、腸内細菌叢でBacteroidetesに属する細菌の構成比率が低く、Firmicutesに属する細菌の構成比率が高いことが知られている。体重の減少に伴って、Bacteroidetesに属する細菌の構成比率が高まり、Firmicutesに属する細菌の構成比率が低下する。そこで、腸内細菌叢に関連する疾患を予防又は治療するために、腸内細菌叢を構成する細菌の構成比率を調整することが試みられている。その際、腸内細菌叢の改善効果を示す指標として「Firmicutes/Bacteroidetes」の比(FB比率(%))が使用されている(特開2018−052896)。
なお、腸内細菌叢は、腸内フローラとも言われ、腸内の細菌が構成する体内の生態系である。腸内細菌叢は、腸管上皮を介して宿主と相互作用している。腸内細菌叢が便秘、下痢、感染症、アレルギー疾患、炎症性疾患、肥満及び糖尿病等のメタボリックシンドローム等の種々の疾患に関係することが明らかになっている。
本発明の「メタボリックシンドローム」としては、内臓脂肪が多くて糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすく、心臓病や脳などの血管の病気につながりやすい状態を言う。具体的には糖尿病の境界型や、高血圧、脂質異常症、肥満などは、糖尿病の発症や心臓や血管の病気につながりやすく、こうした生活習慣病の前段階を包括して、メタボリックシンドロームと言う。
本発明の「炎症性疾患」としては、非アルコール性脂肪肝炎、2型糖尿病、動脈硬化等の心臓血管疾患、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患などの肥満関連代謝異常・慢性炎症性疾患を挙げることができる。
本発明の「アレルギー疾患」としては、湿疹や花粉症などのアレルギー疾患を挙げることができる。
本発明の腸内細菌叢の改善剤は、患者の状況に応じて疾患の状態を治療又は悪化を予防するためにも使用することができ、状況に応じて、適宜使用量の増減を行うことができる。
本発明の治療または予防剤は、医薬組成物、食品組成物(例えば機能性食品、健康食品、サプリメントなど)などに適した形態、例えば顆粒剤(ドライシロップを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤などを含む)、散剤(粉末剤)、丸剤などの各種の固形製剤、又は内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの形態で調製してもよい。例えば本発明の治療または予防剤は、精製した魚油をゼラチン皮膜に充填したソフトカプセルとして製剤化することができる。
製剤化のための添加物としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤が挙げられる。また、液剤の形態にする場合は、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの増粘剤を配合することができる。また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にしたり、ペースト状の膠剤とすることもできる。さらに、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
本発明の治療または予防剤は、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する食品組成物の形態をとることができる。本発明において、食品組成物は、飲料を含む食品全般を意味し、サプリメントなどの健康食品を含む一般食品の他、消費者庁の保健機能食品制度に規定される特定保健用食品や栄養機能食品をも含む。たとえば、炎症を伴う肝疾患の治療または予防効果を有する旨の表示を付した機能性食品が提供される。たとえば、魚油を含有する食品をそのまま提供することができる。また、本発明の食品組成物は、他の食品に添加し、混合し、または塗布することなどにより炎症を伴う肝疾患の治療または予防効果を付与するための、食品素材も含む。食品の他に、動物用の餌料などとして提供することもできる。
本発明の治療効果または予防効果を、包装容器、製品の説明書、パンフレットに表示して本発明の係る製品を販売することは本発明の範囲に含まれる。またテレビ、インターネットのウェブサイト、パンフレット、新聞、雑誌などに本発明の効果を表示して、本発明に係る製品を宣伝・販売することも本発明の範囲に含まれる。
本発明の治療または予防剤は、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を、メタボリックシンドローム、炎症性疾患、アレルギー疾患などの治療または予防のために、効果を奏するのに必要な量を含有させることができる。好ましい態様として、本発明の治療または予防剤中の魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合は、25重量%以上であり、好ましくは59重量%以上を挙げることができる。より好ましくは、68重量%以上を挙げることができる。
一態様として、本発明の治療または予防剤の有効成分が炭素数20のモノ不飽和脂肪酸(例えばC20:1 n−11,C20:1 n−9,C20:1 n−7)、その塩およびそのエステルから選択される成分である場合、本発明の治療または予防剤中の魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数20のモノ不飽和脂肪酸の割合は、21重量%以上を挙げることができ、好ましくは68重量%以上を挙げることができる。
一態様として、本発明の治療または予防剤の有効成分が炭素数22のモノ不飽和脂肪酸(例えばC22:1 n−11,C22:1 n−9,C22:1 n−7)、その塩およびそのエステルから選択される成分である場合、本発明の治療または予防剤中の総脂肪酸に対する炭素数22のモノ不飽和脂肪酸の割合は、37重量%以上を挙げることができ、好ましくは50重量%以上、または93重量%以上を挙げることができる。
本発明において対象が摂取する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分の量は特に限定されず、例えば、所望の効果を得るための有効量以上の量で摂取される。ここで所望の効果を得るための有効量とは、炎症を伴う肝疾患の治療または予防のために必要な量をいう。例えば、症状の程度、対象の年齢、体重および健康状態などの条件に応じて、成人であれば100mg〜10g/kg/日、好ましくは300mg〜3000mg/kg/日の炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分を、1日1回または2〜4回以上に分割して、適宜間隔をあけて摂取させることができる。また、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸、その塩およびそのエステルから選択される成分は、強い副作用を有するものではないので、1日の摂取量に制限はない。
本発明の「医薬組成物」とは、血管内皮機能の改善のために、その目的に応じてサプリメント又は医薬品として用いる組成物のことを言う。サプリメント又は医薬組成物として経口投与する場合は、液体成分に含有させることも固形の形態をとることも可能であり、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、トローチ剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等が挙げられる。
これらの各種製剤は、製剤上通常用いられる賦形剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等を適宜選択し、常法により製造することができる。
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
精製サンマ油の製造
精製サンマ油は、原料であるサンマから粉砕、加熱、固液分離、および油水分離によりサンマ原油を調製した後、脱ガム・脱酸・脱色工程を経て分子蒸留を行い精製することにより製造した。精製サンマ油の脂肪酸組成を表1に示す。表1の値は、総脂肪酸量を100%とした時の各脂肪酸の割合(%)を示す。
LC−MUFA含有サンマ濃縮油の調製
C22:1およびC20:1を含むサンマ油としては、サンマ原油をシリカゲルおよび活性白土によって脱色し、さらに水蒸気蒸留によって脱臭した精製サンマ油を使用した。LC−MUFA濃縮サンマ油の調製は、以下のとおりに行った。サンマ油をエチルエステル化してオクタデシル化シリカゲル(ODS)カラムに付し、モノ不飽和脂肪酸エチルエステルの画分を分取して濃縮した。
ガスクロマトグラフィーにて測定したLC−MUFA濃縮油の脂肪酸組成を表2に示す。表2の値は、総脂肪酸量を100%とした時の各脂肪酸の割合(%)を示す。
このサンマLC−MUFA濃縮油は、トリグリセリド100%の脂質組成を有し、C20:1およびC22:1の合計の含有量が約59%まで濃縮されていた。またこの操作の過程でn−3系PUFAであるEPA、DPA、およびDHAを1%以下に除去した。
なお、上記表2のガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成は、AOCS official method Celb−89に従い、組成物中の成分をエステル化した後、ガスクロマトグラフィーにて測定した。AOCS official method Ce1b−89に従うガスクロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
装置:Agilent6890N GC system(Agilent社)
カラム:DB−WAX(Agilent Technologies,30m×0.25mm ID、0.25μm film thickness)
キャリアガス:ヘリウム(1.0mL/min, コンスタントフロー)
注入口温度:250℃
注入量:1μL
注入法:スプリット
スプリット比:20:1
カラムオーブン:180℃−3℃/min−230℃
検出器:FID
検出器温度:250℃
C20:1又はC22:1のLC−MUFAの単離精製
実施例2に記載したエチルエステル化したサンマ油を、ODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにて分画し、C20:1分画油、C22:1分画油を得た。分画油の脂肪酸組成は、上記と同様にガスクロマトグラフィーにて測定した。
C20:1 C22:1分画油の脂肪酸組成を表3に示す。表3の値は、総脂肪酸量を100%とした時の各脂肪酸の割合(%)を示す。
C20:1のLC−MUFA、C22:1のLC−MUFA又はLC−MUFA含有サンマ濃縮油の腸内細菌叢に対する作用評価
(1)材料
Control群、実施例3のC20:1分画油を用いたC20:1分画油群、実施例3のC22:1分画油を用いたC22:1分画油群、実施例2のLC−MUFA濃縮油を用いたLC−MUFA群の各飼料の組成を表4に示す。表4の値は、各飼料の重量組成である。
(2)方法
7週齢の雄性ApoE欠損マウス(B6.129P2−Apoe tm1Unc/J)(米国The Jackson Laboratory;n=20)を、SPF環境下にて2週間飼育した。8週齢のApoE欠損マウスを無作為に4群(コントロール群(無塩バター20%投与)、C20:1群(無塩バター17%、C20:1分画油3%投与)、C22:1群(無塩バター17%、C22:1分画油3%投与)、サンマ濃縮油群(無塩バター15%サンマ濃縮油5%投与))に分別し(各実験群あたりn=5)、各群のマウスに自由摂食にて、毎日経口投与した。飼料投与8週間後にペントバルビタールを生理食塩水で希釈し、50mg/kgの用量でApoE欠損マウスに腹腔内投与することで麻酔をかけた後、盲腸より盲腸内容物を採取した。取した盲腸内容物からゲノムDNAを抽出し、ゲノムDNA遺伝子発現解析を生物技研株式会社にてイルミナ社の次世代シーケンサにより腸内フローラ解析を行い、腸内細菌叢の解析を行った。
(2)結果
以下の表5と図2に示すように、C20:1群、C22:1群、LC−MUFA群では腸内細菌叢の門の割合が変化した。図3に示すように、腸内細菌叢の門の割合において、controlと比較して、C20:1群、C22:1群、LC−MUFA群のいずれでもAkkermansia属の存在比率が増加した。特に、C20:1群でAkkermansia属の存在比率が有意に顕著に増加した(p<0.05)。
また、上記表5に示すように、controlと比較してC20:1群、C22:1群、LC−MUFA群でいずれもFirmicutes門に属する細菌が減少した。更に、腸内細菌叢の改善を示す指標であるFB比率(Firmicutes門とBacteroides門の比)は、C20:1群、C22:1群で明らかに減少し、特にC20:1群ではFB比率が有意に減少した(p<0.05)。
本発明のLC−MUFAを含有する腸内細菌叢の改善剤は、善玉菌のAkkermansia muciniphilaを増加させ、悪玉菌のFirmicutes門細菌を減少させることができる。この結果から、本発明の腸内細菌叢の改善剤は、メタボリックシンドローム、炎症性疾患、アレルギー疾患などの予防及び治療効果を有しており、魚油由来であることにより長期摂取しても安全な医薬組成物および食品組成物である。

Claims (10)

  1. 炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸(LC−MUFA)、その塩およびそのエステルから選択される成分を有効成分として含有する、腸内細菌叢の改善剤。
  2. 有効成分が魚油由来である、請求項1に記載の改善剤。
  3. 魚油がサンマ油である、請求項1又は2に記載の改善剤。
  4. 魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸の割合が、59重量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の改善剤。
  5. 魚油由来の総脂肪酸に対するエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、およびドコサヘキサエン酸の合計の割合が、1重量%以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の改善剤。
  6. 有効成分が、炭素数20のモノ不飽和脂肪酸(イコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分、炭素数22のモノ不飽和脂肪酸(ドコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜5のいずれかに記載の改善剤。
  7. 魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数20のモノ不飽和脂肪酸(イコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分の含量が、68重量%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の改善剤。
  8. 魚油由来の総脂肪酸に対する炭素数22のモノ不飽和脂肪酸(ドコセン酸)、その塩およびそのエステルから選択される成分の含量が、93重量%以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の改善剤。
  9. 有効成分が、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸のエチルエステルである、請求項1〜8のいずれかに記載の改善剤。
  10. 有効成分が、炭素数20以上のモノ不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含むグリセリドである、請求項1〜8のいずれかに記載の改善剤。
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