しかしながら、こうした技術では、セグメントコイルをステータコアに組み付けた後に、当該セグメントコイルの屈曲や溶接、溶接部分の絶縁処理などが必要であり、製造工程が煩雑であった。
そこで、一部では、セグメントコイルを予め屈曲成形してからステータコアに組み付けることが提案されている。例えば、特許文献1には、予め所望の形状に形成した第1コイルと、第2コイルと、を用意し、この第1コイルの先端と、第2コイルの先端とを突き合わせて接合することで、分布巻き構造の多相の周方向展開コイルを作製し、この周方向展開コイルをステータコアのスロットに順次挿入してステータコイルを製造する技術が開示されている。
かかる技術によれば、セグメントコイルをスロットに挿入した後に、当該セグメントコイルの屈曲や、接合(溶接)といった処理が不要となるため、製造工程をある程度は、簡易化できる。
しかし、特許文献1では、第1コイルの先端と第2コイルの先端とを、直接、接合するために、圧接や超音波接合といった接合法を採用している。しかし、こうした接合法は、大型の設備が必要であり、製造工程を煩雑化していた。
そこで、本明細書では、製造工程をより簡易化できる回転電機のステータ、および、ステータコイルの製造方法を開示する。
本明細書で開示する回転電機のステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻回されるステータコイルと、を有した回転電機のステータであって、前記ステータコイルは、複数のセグメントコイルと、その両端に嵌合凹部が形成された連結部材であって、前記両端の嵌合凹部それぞれに前記セグメントコイルが嵌合されることで、前記セグメントコイルを連結する連結部材と、を備えることを特徴とする。
かかる構成とした場合、セグメントコイルの端部を嵌合凹部に圧入するだけでセグメントコイルを連結できる。換言すれば、セグメントコイルの連結にあたって、溶接や圧接等の処理が不要となる。その結果、大型の設備が不要であり、製造工程をより簡易化できる。
この場合、前記連結部材は、導電性材料からなるとともに、連結対象の二つのセグメントコイルが嵌合された本体部と、前記本体部の外面を被覆する絶縁皮膜と、を備え、前記本体部が、前記ステータコイルの電流経路の一部を構成してもよい。
かかる構成とした場合、二つのセグメントコイルが離間していてもよいため、セグメントコイルの軸方向寸法の誤差を当該連結部材で吸収できる。結果として、セグメントコイルの製造工程を簡易化できる。
別の形態として、前記連結部材は、絶縁材料からなるとともに、連結対象の二つのセグメントコイルが嵌合された略筒状の本体を備え、前記二つのセグメントコイルは、前記本体部の内部において、互いに接触することで、または、前記本体の内部に収容された導電体を介して、電気的に接続されてもよい。
かかる構成とすることで、連結部材本体の材質の選択の幅が広がる。
この場合、前記二つのセグメントコイルは、前記本体部の内部において、導電体を介して、電気的に接続され、前記導電体は、弾性または流動性を有しており、軸方向寸法が変更可能であってもよい。
かかる構成とすることで、セグメントコイルの軸方向寸法の誤差を当該導電体で吸収できる。結果として、セグメントコイルの製造工程を簡易化できる。
また、前記セグメントコイルの端部には、コイル皮膜が剥離された剥離部があり、前記嵌合凹部には、前記剥離部のほぼ全体が収容されていてもよい。
かかる構成とすることで、連結部材でセグメントコイルを連結した後、剥離部の絶縁処理が不要となり、製造工程をより簡易化できる。
前記セグメントコイルの先端、および、前記嵌合凹部の少なくとも一方には、他方を誘い込むテーパーが設けられていてもよい。
かかる構成とすることで、セグメントコイルと連結部材とをより簡易に嵌合でき、製造工程をより簡易化できる。
また、前記連結部材は、コイル径方向に隣接する他の連結部材と、コイル軸方向位置がずれていてもよい。
かかる構成とすることで、コイル間の絶縁を確実に確保できる。すなわち、連結部材の端部とコイル皮膜の端部との間に隙間があると、当該隙間において導線が露出することになるが、上記構成とすることで、当該露出部分と、隣接するコイルの露出部分との距離が長くなり、絶縁が確保される。
また、前記連結部材の一端の嵌合凹部に第一セグメントコイルが、他端の嵌合凹部に第二セグメントコイルが嵌合されており、前記第一セグメントコイルと、前記第二セグメントコイルは、断面形状が互いに異なっていてもよい。
かかる構成とすることで、各セグメントコイルの求められる特性(例えば、線積率向上、あるいは、曲げ性向上等)に応じた断面形状を採用できるため、ステータの性能や品質をより向上できる。
また、前記連結部材の一端の嵌合凹部には、前記ステータコアのスロット内に収容される縦線部を有した第一セグメントコイルが嵌合され、前記連結部材の他端の嵌合凹部には、前記ステータコアの軸方向外側において周方向に延びてコイルエンドを構成する第二セグメントコイルが嵌合され、前記第一セグメントコイルおよび前記第二セグメントコイルは、前記スロットの軸方向端部近傍において前記連結部材を介して連結されていてもよい。
第一、第二セグメントコイルをスロットの軸方向端部近傍において連結する構成とすれば、第一セグメントコイルをコアに組み付けた後も、第一セグメントコイルの端部に容易にアクセスできる。結果として、セグメントコイルの連結作業を容易にできる。
また、本明細書で開示するステータコイルの製造方法は、複数のセグメントコイルを、その両端に嵌合凹部が形成された連結部材を介して連結して前記ステータコイルを形成する連結ステップを備え、前記連結ステップでは、前記連結部材の両端の嵌合凹部それぞれに前記セグメントコイルの端部を嵌合することで、複数の前記セグメントコイルを連結する、ことを特徴とする。
かかる構成とした場合、セグメントコイルの端部を嵌合凹部に圧入するだけでセグメントコイルを連結できる。換言すれば、セグメントコイルの連結にあたって、溶接や圧接等の処理が不要となる。その結果、大型の設備が不要であり、製造工程をより簡易化できる。
前記連結部材は、前記連結ステップの前に、その外周面が絶縁処理されていてもよい。
かかる構成とすれば、セグメントコイルを連結した後、セグメントコイルの剥離部の絶縁処理が不要となり、ステータコイルの製造工程をより簡易化できる。
さらに、前記連結ステップでは、予め最終形状に成形された第一セグメントコイルを、前記ステータコアに組みつけた後に、前記連結部材を介して、予め最終形状に成形された第二セグメントコイルを前記第一セグメントコイルに連結してもよい。
ステータコアに組み付ける前に、第一セグメントコイルを最終形状に成形しておくことで、コア組み付け後の曲げ工程を無くすことができ、ステータコイルの製造工程をより簡易化できる。
この場合、前記第一セグメントコイルは、前記ステータコアのスロットに収容される縦線部を有しており、前記第二セグメントコイルは、前記ステータコアの軸方向外側で周方向に延びてコイルエンドを構成し、前記連結ステップでは、複数の第一セグメントコイルを前記ステータコアに組み付けた後に、樹脂で一体化された複数の第二セグメントコイルを、一括で、対応する前記第一セグメントコイルに前記連結部材を介して連結してもよい。
かかる構成とすることで、複数の第二セグメントコイルを一括で連結できるため、製造工程をより簡易化できる。
また、前記第一セグメントコイルと前記連結部材との嵌合は、前記第一セグメントコイルを前記ステータコアに組み付けた後に行ってもよい。
コア組み付け前に、第一セグメントコイルと連結部材とを嵌合させると、嵌合時に受ける軸方向圧縮力で第一セグメントコイルが局所的に太り、線積率が低下するが、コア組み付け後に両者を嵌合することで、こうした問題を避けることができる。
本明細書で開示のステータ、および、ステータコイルの製造方法によれば、セグメントコイルの端部を嵌合凹部に圧入するだけでセグメントコイルを連結できる。換言すれば、セグメントコイルの連結にあたって、溶接や圧接等の処理が不要となる。その結果、大型の設備が不要であり、製造工程をより簡易化できる。
以下、回転電機のステータ10について、図面を参照して説明する。図1は、回転電機のステータ10の分解斜視図である。なお、実際のステータ10は、多数のセグメントコイル22を有しているが、図1では、見易さのために、ごく一部のセグメントコイル22のみを図示している。
このステータ10は、ロータと組み合わされて回転電機を構成する。ステータ10が適用される回転電機は、電動機として用いられるものでもよいし、発電機として用いられるものでもよい。したがって、本例のステータ10は、例えば、電動車両に搭載される回転電機であって、走行用動力を生成する電動機として機能するとともに、回生トルク等で発電を行う発電機としても機能する回転電機に適用されてもよい。
ステータ10は、ステータコア12と、当該ステータコア12に巻回されるステータコイル20と、を有している。ステータコア12は、略円環状のコアバック14と、当該コアバック14の内周面から径方向内側に突出する複数のティース16と、に大別される。周方向に隣接するティース16間には、ステータコア12の一部が収容される空間であるスロット18が形成されている。かかるステータコア12は、例えば、複数の電磁鋼板(例えばケイ素鋼板)を厚み方向に積層して作成される積層鋼板であってもよい。また、ステータコア12は、絶縁被覆された磁性粒子をプレス成形してなる圧粉磁芯であってもよい。
ステータコイル20は、ステータコア12のティース16に巻回される。かかるステータコイル20の結線態様および巻回態様は、回転電機の仕様に応じて、適宜、選択されればよい。したがって、ステータコイル20は、U相、V相、W相のコイルをスター結線またはデルタ結線した構成でもよい。また、ステータコイル20は、分布巻で巻回されてもよいし、集中巻で巻回されてもよい。いずれにしても、本例において、ステータコイル20は、複数のセグメントコイル22を連結して構成される。
セグメントコイル22は、ステータコイル20を、取り扱いやすい長さで切断したものである。本例では、セグメントコイル22として、略U字状の第一セグメントコイル22aと、略山形状の第二セグメントコイル22bと、を設けている。なお、以下では、第一、第二を区別しない場合は、添え字アルファベットを省略して「セグメントコイル22」と呼ぶ。
図2は、第一セグメントコイル22aの正面図である。第一セグメントコイル22aは、導電性材料(例えば銅等)からなる導線32を、絶縁材料からなるコイル皮膜34(墨ハッチングで図示)で被覆したものである。導線32は、断面形状略矩形の角線である。このように導線32を角線とするのは、スロット18内における線積率を向上するためである。
また、第一セグメントコイル22aは、ステータ完成時と同じ形状、すなわち、最終形状に屈曲、成形されている。具体的には、第一セグメントコイル22aは、スロット18内に収容される一対の縦線部28と、この一対の縦線部28を接続する接続部27と、を有した略U字状となっている。縦線部28の長さは、ステータコア12の軸方向寸法とほぼ同じである。そのため、当該縦線部28をスロット18内に挿入した際、当該縦線部28の末端がスロット18の軸方向端部近傍に位置するようになっている。接続部27は、ステータコア12の軸方向外側において、周方向に延びて、コイルエンドの一部を構成する。この第一セグメントコイル22aの両端、すなわち、縦線部28の末端には、コイル皮膜34が剥離され、導線32が外部に露出した剥離部30が形成されている。剥離部30(導線32)の先端は、先細り状のテーパー形状となっている。
図3は、第二セグメントコイル22bの正面図である。第二セグメントコイル22bも、導電性材料(例えば銅等)からなる導線32を、コイル皮膜で被覆したものである。この第二セグメントコイル22bも、最終形状に形成されている。そして、第二セグメントコイル22bは、接続部27とは逆側のステータコア12の軸方向外側において、周方向に延びて、コイルエンドの一部を構成する。この第二セグメントコイル22bの両端にも、コイル皮膜34が剥離され、導線32が外部に露出した剥離部30が形成されている。また、剥離部30(導線32)の先端も、先細り状のテーパー形状となっている。
ここで、図3から明らかなとおり、この第二セグメントコイル22bに用いられる導線32は、断面円形の丸線となっている。このように第二セグメントコイル22bの導線32を丸線とするのは、第二セグメントコイル22bの曲げ加工を容易にするためである。すなわち、第二セグメントコイル22bは、第一セグメントコイル22aに比べて、ステータ10の周方向だけではなく、ステータ10の径方向にも屈曲または湾曲させる必要がある。そのため、第二セグメントコイルは、第一セグメントコイル22aよりも柔軟に曲げられることが望まれる。そして、丸線は、角線に比べて、いずれの方向にも曲げやすいため、本例では、第二セグメントコイル22bを丸線としている。
なお、第一、第二セグメントコイル22a,22bの導線32だけでなく、コイル皮膜34も、互いに異なっていてもよい。例えば、第二セグメントコイル22bの導線32を、曲げやすい丸線とした場合、曲げ加工時におけるコイル皮膜34のダメージを軽減できる。そのため、第二セグメントコイル22bのコイル皮膜34を、第一セグメントコイル22aのコイル皮膜34に比べて、薄くしてもよい。
この第一セグメントコイル22aと第二セグメントコイル22bは、連結部材24を介して互いに連結される。図4は、連結部材24の斜視図である。また、図5は、連結部材24周辺の概略断面図である。連結部材24は、二つのセグメントコイル22を連結する。この連結部材24は、その軸方向に貫通する貫通孔が形成された筒状となっている。そのため、連結部材24の両端には、凹部が存在することとなる。この凹部は、セグメントコイル22の端部(剥離部30)が嵌合される嵌合凹部36なる。以下では、第一セグメントコイル22aが嵌合される凹部を第一嵌合凹部36a、第二セグメントコイル22bが嵌合される凹部を第二嵌合凹部36bと呼ぶ。また、第一と第二を区別しない場合は、添え字アルファベットを省略して「嵌合凹部36」と呼ぶ。
嵌合凹部36の内周距離は、嵌合されるセグメントコイル22の外周距離と同じか、僅かに小さくなっている。したがって、本例において、嵌合凹部36は、断面円形であるが、この嵌合凹部36の半径は、第二セグメントコイル22bの導線32の半径と同じか、僅かに小さい。また、第一セグメントコイル22aの導線32の外周距離をDとした場合、嵌合凹部36の半径は、D/2π、あるいは、D/2πより僅かに小さい。かかる構成とすることで、各嵌合凹部36とセグメントコイル22とを確実に、また、強固に嵌合できる。なお、第一嵌合凹部36aは、第一セグメントコイル22aの導線32(角線)が嵌合されると、当該導線32の形状に合わせて断面矩形に変形し、当該導線32の外面に密着する。
本例の連結部材24は、導電材料からなるとともに筒状の本体38と、当該本体38の外周面を被覆する絶縁皮膜40と、を備えている。筒状の本体38の内周面は、嵌合されたセグメントコイル22と密着する。換言すれば、本体38は、セグメントコイル22と嵌合されることで、電気的に接続され、ステータコイル20の電流経路の一部、すなわち、ステータコイルの一部として機能する。また、本体38の外周面は、予め、絶縁皮膜40で被覆されているため、コイル間の絶縁を容易に確保できる。
なお、本体38は、電流経路の一部として機能するため、ステータコイル20に電流が流れる際、当該ステータコイル20とともに発熱する。この発熱を受けて本体38は熱膨張するが、このとき、当該本体38と、セグメントコイル22の導線32との嵌合が緩まないように、本体38は、膨張係数が、セグメントコイル22の導線32と同じか小さい材質で構成されることが望ましい。したがって、本体38は、例えば、導線32と同じ材質(例えば銅)から構成されてもよい。
図5に示す通り、第一セグメントコイル22aは、この連結部材24の一端(第一嵌合凹部36a)に嵌合され、第二セグメントコイル22bは、連結部材24の他端(第二嵌合凹部36b)に嵌合される。このとき、第一、第二セグメントコイル22a,22bは、連結部材24の内部において、互いに当接してもよいし、図5に示すように、離間していてもよい。すなわち、第一、第二セグメントコイル22a,22bが離間していても、導電性材料からなる本体38により、二つのセグメントコイル22の電気的接続は確保される。なお、連結部材24の内部であって、第一、第二セグメントコイル22a,22bの間に、導電性ペースト(例えば金属ペースト)が充填されてもよい。かかる導電性ペーストを設けることで、当該連結部における電気抵抗を低減でき、また、熱伝導率を向上できる。
ここで、このように複数のセグメントコイル22を、連結部材24を利用して連結することで、従来技術に比べて、ステータ10の製造工程をより簡易化できる。これについて、従来技術と比較して説明する。
従来でも、複数のセグメントコイル22を連結して、ステータコイル20を形成する技術が知られている。ただし、従来は、セグメントコイル22を、ステータコア12に組み付けた後、屈曲し、他のセグメントコイル22と溶接していた。図14は、従来のステータコイル20の製造の様子を示す図である。図14(a)に示す通り、従来は、まず、略U字状で両端に剥離部30が形成されたセグメントコイル22を、スロット18に挿入する。続いて、図14(b)に示すように、ステータコア12の軸方向端面から突出したセグメントコイル22を、周方向に屈曲させた後、対応する他のセグメントコイル22(図示例では径方向に隣接する他のセグメントコイル22)の端部と接触させ、溶接する。そして、最後に、剥離部30に絶縁処理、例えば、絶縁塗料の塗布などを行う。
かかる従来技術の場合、セグメントコイル22をステータコア12に組み付けた後に、当該セグメントコイル22の曲げ加工や溶接加工、絶縁処理を行っている。しかし、ステータコア12に組み付けた後、セグメントコイル22の周辺には、十分なスペースがないため、こうした加工・処理を行うのは、手間であった。
また、狭いスペースでセグメントコイル22を曲げるため、セグメントコイル22のコイル皮膜34にダメージが加わりやすく、絶縁性が低下することがあった。また、セグメントコイル22を連結するために、溶接加工を行っているが、この溶接時の熱で、コイル皮膜34にダメージが加わるおそれがあった。かかるコイル皮膜34のダメージを防止するためには、コイルエンドを高くする必要があるが、これは、ステータ10の小型化を阻害する。
そこで、一部では、セグメントコイル22を、予め、最終形状に成形しておき、このセグメントコイル22の端部を互いに突き当てて、接合する技術が開示されている(例えば特許文献1など)。この技術の場合、ステータコア12にセグメントコイル22を組み付けた後、当該セグメントコイル22を曲げる必要がないため、曲げ加工に伴うコイル皮膜34の劣化を防止できる。また、コア組み付け後の曲げ加工が不要となるため、製造工程をある程度は、簡易化できる。しかし、この技術の場合、セグメントコイル22のコイル軸方向の端面同士を当接させるため、セグメントコイル22のコイル軸方向の寸法精度を高く管理する必要があり、製造工程の煩雑化や、コスト増加を招いていた。また、この技術でも、接合後に、剥離部30の絶縁処理が必要であった。さらに、この技術では、セグメントコイル22を、圧接や超音波接合、カシメにより接合しているが、かかる接合を行うためには、専用の設備が必要であり、設備コストの増加を招いていた。
一方、本明細書で開示するステータコイル20は、上述したとおり、連結部材24の両端(嵌合凹部36)に、セグメントコイル22を嵌合することで、複数のセグメントコイル22を連結している。嵌合処理の場合、熱が発生しないため、本例によれば、溶接や接合を用いた従来技術と異なり、熱に起因するコイル皮膜34の劣化をほぼ確実に防止できる。また、本例の場合、セグメントコイル22の導線32を連結部材24の嵌合凹部36に圧入するだけでよいため、溶接や圧接、超音波接合等を用いた従来技術に比べて、製造設備を簡易化できる。
また、本例では、連結部材24の本体38が、ステータコイル20の電流経路の一部を構成するため、セグメントコイル22同士が直接、接触しなくてもよい。その結果、本例は、従来技術に比べて、セグメントコイル22のコイル軸方向寸法の許容誤差を大きくできる。すなわち、本例によれば、セグメントコイル22のコイル軸方向寸法の誤差は、連結部材24の内部におけるコイル端面間距離で吸収できる。
さらに、本例において、連結部材24の外周面は、予め、絶縁されており、この連結部材24で、剥離部30のほぼ全体を覆うため、セグメントコイル22を連結した後、別途、絶縁処理を行う必要がない。ただし、図5に示す通り、連結部材24の端部と、コイル皮膜34の端部との間に、若干の隙間が生じるおそれはある。かかる隙間においては、セグメントコイル22の導線32が外部に露出する。こうした導線32の露出部分41が、他の導線32の露出部分41と近接することを防止するために、本例では、コイル径方向に隣接する連結部材24のコイル軸方向位置をずらしている。
これについて図6を参照して説明する。図6は、スロット18内のイメージ図であり、図6において、紙面左右方向がステータ径方向(コイル径方向)、紙面上下方向がステータ軸方向である。図6に示す通り、本例では、連結部材24(セグメントコイル22同士の連結箇所)のコイル軸方向位置を、コイル径方向に隣接する他の連結部材24と、ずらしている。かかる構成とすることで、導線32の露出部分41同士の距離Kが長くなり、コイル間の絶縁がより確実に確保できる。
次に、こうしたステータコイル20の製造の流れについて図7を参照して説明する。図7は、ステータコイル20の製造の流れを示すフローチャートである。ステータコイル20を製造する際には、まず、セグメントコイル22を製造する。具体的には、長尺なコイル材料を、所望の長さに切断する(S10)。コイル材料は、セグメントコイル22の材料となるもので、長尺な導線32をコイル皮膜34で被覆したものである。本例では、2種類のコイル材料、すなわち、断面矩形の角線を使用したコイル材料と、断面円形の丸線を使用したコイル材料とを準備する。各コイル材料は、専用の刃物を用いて、所望の切断形状が得られるように切断される。本例では、端部が、先細りのテーパー形状となるように、コイル材料を切断する。
続いて、各セグメントコイル22の端部においてコイル皮膜34を剥離して、剥離部30を形成する(S12)。この剥離部30は、例えば、レーザ等を用いて、コイル皮膜34を切断することで形成される。
続いて、セグメントコイル22を、屈曲または湾曲させて、所望の形状に成形する(S14)。この成形は、例えば、セグメントコイル22を専用の金型に押しつけたり、専用のローラで曲げたりして行われる。また、この成形において、各セグメントコイル22は、最終形状に成形される。換言すれば、コア組み付け後に、各セグメントコイル22に曲げ加工は、施されない。したがって、本例において、第一セグメントコイル22aは、略U字状に、第二セグメントコイル22bは、略山形に成形される。
セグメントコイル22を所望形状に成形できれば、略U字状の第一セグメントコイル22aをステータコア12に組み付ける(S16)。すなわち、第一セグメントコイル22aの縦線部28を、スロット18内に挿入する。ステータコア12に組みつけられた第一セグメントコイル22aは、その組み付け状態を維持するように、専用の治具で保持される。
複数の第一セグメントコイル22aを、コアに組み付けできれば、続いて、この第一セグメントコイル22aの剥離部30に連結部材24を嵌合する(S18)。すなわち、第一嵌合凹部36aに、第一セグメントコイル22aの剥離部30を圧入する。このとき、剥離部30の先端は、先細りのテーパー形状となっているため、剥離部30が、第一嵌合凹部36aに容易に誘いこまれやすく、両者を容易に連結できる。そして、これにより、連結部材24もステータコア12に組みつけられることになる。
そして、最後に、コアに組み付けされた連結部材24の第二嵌合凹部36bに、第二セグメントコイル22bの剥離部30を圧入して嵌合する(S20)。第二セグメントコイル22bの剥離部30先端も、先細りのテーパー形状となっているため、当該剥離部30が、第二嵌合凹部36bに容易に誘いこまれやすく、両者を容易に連結できる。これにより、第一セグメントコイル22aと第二セグメントコイル22bが、連結部材24を介して、機械的かつ電気的に連結される。そして、こうした連結を全ての第一、第二セグメントコイル22a,22bにおいて行うことで、ステータコイル20が完成される。
以上の説明から明らかなとおり、本例によれば、嵌合という簡易な処理で、セグメントコイル22同士を連結しているため、溶接や圧接を用いる従来技術に比べて、設備コストを低減できる。また、嵌合の場合、熱が生じないため、コイル皮膜34の劣化をより確実に防止できる。さらに、予め、絶縁皮膜40で被覆された連結部材24を用いるため、セグメントコイル22同士を連結した後の絶縁処理が不要であり、製造工程をより簡易化できる。さらに、コア組み付け後のセグメントコイル22の曲げ加工が不要であるため、製造工程を簡易化でき、また、コイル皮膜34の劣化を防止できる。
なお、上述した製造手順は、一例であり、少なくとも、第一、第二セグメントコイル22a,22bを、連結部材24の嵌合凹部36に嵌合することで、両コイルを連結するのであれば、適宜、変更されてもよい。したがって、例えば、ステップS18とステップS20は、逆になってもよい。すなわち、第二セグメントコイル22bに連結部材24を嵌合した後、この連結部材24に、第一セグメントコイル22aを嵌合するようにしてもよい。また、第一セグメントコイル22aをコアに組み付ける前に、当該第一セグメントコイル22aに連結部材24を嵌合してもよい。すなわち、ステップS16とステップS18とを逆にしてもよい。ただし、コア組み付け前に、第一セグメントコイル22aに連結部材24を嵌合した場合、嵌合時に生じる軸方向圧縮力により、第一セグメントコイル22aが局所的に太るおそれがある。第一セグメントコイル22aが局所的に太ると、スロット18内における線積率が低下する。したがって、第一セグメントコイル22aと連結部材24との嵌合は、第一セグメントコイル22aのコア組み付けの後に行うのが望ましい。
また、複数の第二セグメントコイル22bを一括で、対応する第一セグメントコイル22aに連結するようにしてもよい。これについて、図8を参照して説明する。図8は、ステータコアを径方向内側から見た模式図である。図8において、紙面左右は、ステータ周方向であり、紙面上下は、ステータ軸方向である。図8に示すように、複数の第二セグメントコイル22bを、樹脂モールド50で、連結し、一体化しておいてもよい。そして、この一体化された部品(複数の第二セグメントコイル22b)を、複数の連結部材に、一括で、嵌合してもよい。かかる構成とすることで、セグメントコイル22の連結作業をより簡易化できる。この場合、ステータコイル20の軸方向一端には、複数の第二セグメントコイル22bを連結する樹脂モールド50が残る。
また、これまでの説明では、連結部材24の本体38を、導電性材料で構成するとしていたが、連結部材24の本体38は、絶縁材料で構成されてもよい。したがって、例えば、連結部材24の本体38は、絶縁性材料からなる筒体としてもよい。図9は、本体38を絶縁材料で構成した例を示す図である。この場合、連結部材24の内部で、第一セグメントコイル22aと第二セグメントコイル22bとを当接させ、これにより電流経路を確保してもよい。なお、この場合、連結部材24は、熱膨張率が、セグメントコイル22の導線32と同じ、または、より小さい絶縁材料(例えばガラスやセラミックス)で構成されることが望ましい。
また、連結部材24の本体38を絶縁材料で構成する場合、当該本体38の内部に、第一、第二セグメントコイル22a,22bに当接する導電体を設けてもよい。かかる導電体は、導電性を有するのであれば特に限定されないが、望ましくは、弾性または流動性を有し、コイル軸方向の寸法が変更可能である。したがって、例えば、導電体42は、図10に示す通り、第一、第二セグメントコイル22a,22bの間に充填された後、焼結される導電性ペースト(例えば金属ペースト)であってもよい。この場合、導電性ペースト(導電体42)が、第一、第二セグメントコイル22a,22bの先端面(テーパー面含む)全体に接触する。そして、この場合、導電体42とセグメントコイル22a,22bとの接触面積は十分に大きくなり、電気抵抗が低減するとともに、熱伝導率が向上する。また、別の形態として、導電体42は、図11に示すように、コイル軸方向に伸縮可能なバネを含んでもよい。いずれにしても、絶縁性の本体38の内部に、コイル軸方向に変形可能な導電体42を設けることで、セグメントコイル22のコイル軸方向の寸法誤差を吸収できる。
また、これまでの説明では、連結部材24を、貫通孔が形成された筒体としているが、連結部材24は、その両端に嵌合凹部36が形成されるのであれば、筒体でなくてもよい。例えば、図12に示すように、軸方向端面に、穴(凹部)が形成された非筒体でもよい。換言すれば、第一嵌合凹部36aと第二嵌合凹部36bは、連通していなくてもよい。そして、この場合、第一嵌合凹部36aと第二嵌合凹部36bは、互いに異なる形状としてもよい。したがって、例えば、第一嵌合凹部36aは、第一セグメントコイル22aの導線32に合わせた略矩形とし、第二嵌合凹部36bは第二セグメントコイル22bの導線32に合わせた略円形としてもよい。
また、これまでの説明では、第一セグメントコイル22aを略U字状、第二セグメントコイル22bを略山形としているが、これらセグメントコイル22の形状は、適宜、変更されてもよい。図13は、セグメントコイル22の形状のバリエーションを示す図である。図13(a)に示す通り、第一セグメントコイル22aを、スロット18に収容される部分だけを有する一直線状とし、この第一セグメントコイル22aの両側に、略山形の第二セグメントコイル22bを連結する構成としてもよい。かかる構成とした場合、ステータコイル20のうちスロット内に収容される部分は、角線で形成でき、コイルエンドとなる部分は、丸線で形成できる。その結果、スロット18内における線積率を向上しつつ、コイルエンド部を容易に成形(曲げ加工)できる。
また、別の形態として図13(b)に示すように、全てのセグメントコイル22を略U字状としてもよい。かかる構成とした場合、各セグメントコイル22は、スロット18内で、連結部材24に嵌合されることになる。この場合、当該嵌合作業を容易にするために、ステータコア12は、軸方向に2分割された分割コアとすることが望ましい。また、別の形態として、図13(c)に示すように、セグメントコイル22を、コイルエンドとなる略山形の横線部26の一端に、スロット18内に収容される縦線部28が繋がった略J字状としてもよい。
さらに、これまで説明したセグメントコイル22は、いずれも、スロット18の内部またはスロット18の軸方向端部近傍において、連結されている。換言すれば、セグメントコイル22のうちコイルエンドに対応する部分は、ステータコア12の軸方向外側において、一つのスロット18から他のスロット18まで途中で途切れることなく延びている。かかる構成とすることで、コイルエンド高さを低減でき、ステータ10を小型化できる。
しかし、場合によっては、図13(d)に示すように、セグメントコイル22同士の連結を、コイルエンドの途中で行ってもよい。かかる構成とした場合、コイルエンドの途中に、中空の連結部材24が存在することになり、コイルエンドの放熱性が向上する。
また、これまでの説明では、第一セグメントコイル22aと第二セグメントコイル22bとで、導線32の形状を変えているが、両コイル22a,22bの導線形状は同じでもよい。導線形状を揃えることで、コイル材料を共通化でき、材料費を低減できる。また、本例では、セグメントコイル22(剥離部30)の先端に、嵌合凹部36を誘い込むテーパーを設けているが、セグメントコイル22に替えて、または、加えて、嵌合凹部36に、セグメントコイル22を誘い込むテーパーを設けてよい。