以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本開示の実施の形態に従う電池システムが搭載された車両1の構成を概略的に示した図である。なお、以下の説明においては、車両1がハイブリッド車両である場合を一例として説明する。
図1を参照して、車両1は、電池システム2と、PCU(Power Control Unit)30と、MG(Motor Generator)41,42と、エンジン50と、動力分割装置60と、駆動軸70と、駆動輪80とを備える。
電池システム2は、組電池10と、監視ユニット20と、冷却装置24と、ECU(Electronic Control Unit)100とを含む。冷却装置24は、組電池10へ冷却媒体(本実施の形態においては、冷却風)を供給するための装置であり、ダクト25と、ファン26と、温度センサ27とを含む。なお、冷却媒体としては、冷却液であってもよい。
エンジン50は、空気と燃料との混合気を燃焼させたときに生じる燃焼エネルギをピストンやロータなどの運動子の運動エネルギに変換することによって動力を出力する、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。動力分割装置60は、たとえば、サンギヤ、キャリア、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を含む。動力分割装置60は、エンジン50から出力される動力を、MG41に伝達したり、駆動輪80に伝達したりする。
MG41,42は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG41は、主として、動力分割装置60を経由してエンジン50により駆動される発電機として用いられる。MG41が発電した電力は、PCU300を経由してMG42および組電池10のうちの少なくともいずれかに供給される。
MG42は、主として、電動機として動作し、組電池10からの電力およびMG41の発電電力のうちの少なくとも一方を受けて駆動輪80を駆動する。MG42の駆動力は駆動軸70に伝達され、駆動輪80に伝達される。一方、車両1の制動時や下り斜面での加速度低減時には、MG42は、発電機として動作して回生発電を行なう。MG42が発電した電力は、PCU30を経由して組電池10に供給される。
組電池10は、並列接続された複数のセルを含んで構成される(詳細な構成は後述する)。セルは、たとえばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池等の二次電池である。組電池10は、MG41,42を駆動するための電力を蓄える。すなわち、組電池10は、PCU50を経由してMG41またはMG42に対して電力を供給することができる。また、組電池10は、MG41,42の発電時にPCU30を経由して発電電力を受けて充電され得る。
監視ユニット20は、電圧検出部21と、電流検出部22と、温度検出部23とを含む。電圧検出部21は、組電池10において並列接続される複数のセルの電圧(以下「セル電圧」とも称する。)VBiを検出する。電流検出部22は、組電池10の充放電電流IBを検出する。温度検出部23は、組電池10内の複数箇所に設けられたサーミスタ(1)〜(j)等を用いて組電池10の温度TB1〜TBjを検出する。
ダクト25は、組電池10へ冷却風を供給するための通路である。ダクト25には、ファン26が設けられている。この実施の形態では、ファン26は、吸気側のダクト25に設けられているが、ファン26は、排気側のダクト25に設けられてもよい。ファン26は、たとえば、ECU100からの制御信号に基づいて動作する。温度センサ27は、ダクト25を通じて組電池10へ供給される冷却風の温度TCを検出する。
PCU30は、ECU100からの制御信号に従って、組電池10とMG41との間での双方向の電力変換、または、組電池10とMG42との間での双方向の電力変換を実行する。PCU30は、MG41,42の状態を個別に制御可能に構成されており、たとえば、MG41を回生(発電)状態にしつつ、MG42を力行状態にすることができる。PCU30は、たとえば、MG41,42にそれぞれ対応して設けられる2つのインバータと、各インバータに供給される直流電圧を組電池10の出力電圧以上に昇圧可能なコンバータとを含んで構成される。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)102と、メモリ(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))105と、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)とを含んで構成される。ECU100は、各センサあるいは各検出部から受ける信号並びにメモリ105に記憶されたプログラムおよびマップに基づいてエンジン50およびPCU30を制御することにより、組電池10の充放電を制御する。
図2は、図1に示した組電池10の詳細な構成の一例を示した図である。図2を参照して、この組電池10においては、複数のセルが並列接続されてブロック(或いはモジュール)を構成し、複数のブロックが直列接続されて組電池10を構成する。具体的には、組電池10は、直列に接続されるブロック10−1〜10−Mを含み、ブロック10−1〜10−Mの各々は、並列接続されたN個のセルを含む。
電圧検出部21は、電圧センサ21−1〜21−Mを含む。電圧センサ21−1〜21−Mは、ブロック10−1〜10−Mの電圧をそれぞれ検出する。すなわち、電圧センサ21−1は、ブロック10−1を構成するN個のセルの電圧VB1を検出する。同様に、電圧センサ21−2〜21−Mは、ブロック10−2〜10−Mを構成するN個のセルの電圧VB2〜VBMをそれぞれ検出する。電流検出部22は、各ブロック10−1〜10−Mに流れる電流IBを検出する。すなわち、電流検出部22は、各ブロックのN個のセルに流れる総電流を検出する。
このように並列接続された複数のセルを含んで構成される組電池10においては、並列接続された複数のセル間(以下、単に「セル間」と称する。)に温度ばらつきが発生する。たとえば、セル間には初期抵抗のばらつき(製品ばらつき)が存在するところ、相対的に抵抗が低いセルには相対的に大きい電流が流れるので、初期抵抗が低いセルの温度は相対的に高くなり得る。また、セルの配置(ケース内の中央近傍か端部近傍か等)やケース内の冷却構造(冷却風通路の構成等)によっても、温度ばらつきは発生する。
図3は、並列接続された複数のセルのうちの最高温度セルと最低温度セルとの温度変化の一例を示した図である。最高温度セルは、並列接続される複数のセルのうちの温度が最も高いセルを示す。最低温度セルは、並列接続される複数のセルのうちの温度が最も低いセルを示す。図3を参照して、線L1,L2は、それぞれ最低温度セルの温度変化及び最高温度セルの温度変化を示し、線L3は、最高温度セルと最低温度セルとの温度差ΔTの変化を示す。時刻t0において組電池10に電流IBが流れ始めると、両セルとも温度が上昇し始める。上述した要因によってセル毎に温度の上がり方は異なり、両セルには温度差ΔT(温度ばらつき)が生じる。
温度が高いセルの抵抗は、温度が低いセルの抵抗よりも低くなるので、セル間の温度ばらつきが拡大すると、セル間の抵抗ばらつきが拡大する。相対的に抵抗が低いセルには、相対的に大きい電流が流れるので、セル間の抵抗ばらつきが拡大すると、セル間の電流ばらつきが拡大する。
図4は、セルの温度と抵抗との関係の一例を示した図である。図4を参照して、横軸はセルの温度Tceを示し、縦軸はセルの抵抗Rceを示す。セルの温度Tceと抵抗Rceとには、温度Tceが上昇すると抵抗Rceは低下し、かつ、温度変化に対する抵抗変化の大きさは低温ほど大きい(曲線の傾き大)関係がある。
点P1は、並列接続される複数のセルのうちの最低温度セルの温度および抵抗の関係を示し、点P2は、並列接続される複数のセルのうちの最高温度セルの温度および抵抗の関係を示す。最高温度セルと最低温度セルとの温度差ΔT(温度ばらつき)は、両セル間の抵抗差ΔR(抵抗ばらつき)を生じさせる。そして、この抵抗差ΔR(抵抗ばらつき)によって、最高温度セルと最低温度セルとの間に電流差(電流ばらつき)が生じる。
このように、セル間の温度ばらつきは、セル間の電流ばらつきを拡大させる。そうすると、たとえば、並列接続された複数のセル(ブロック)に流れる総電流(IB)や平均電流(IB/N)をそのまま用いて電池保護制御を行なっても、相対的に大きな電流が流れるセルについては保護できていない可能性がある。
この実施の形態に従う電池システム2では、セル間の温度ばらつきに起因するセル間の電流ばらつきが推定される。
なお、温度ばらつきについては、実際にセル毎に温度を検出して温度ばらつきを測定するのは現実的に難しいため、この実施の形態では、最高温度セルの温度と最低温度セルの温度とを以下に説明するように特定するものとする。
具体的には、ECU100は、組電池10内に複数個設けられるサーミスタを用いて複数個の検出結果を取得する。ECU100は、取得された複数個の検出結果から最も低い温度を示す検出結果を用いて最低温度セルの温度(TBmin)を特定する。ECU100は、特定した最低温度セルの温度に温度加算値を加えて算出される温度を最高温度セルの温度として特定する。この実施の形態において、温度加算値は、組電池10内におけるセル間の温度ばらつきの最大値を示す。
ここで、たとえば、温度加算値を固定値とする場合を想定すると、組電池10内におけるセル間の温度ばらつきが組電池10内における発熱量が多いほど拡大して、温度加算値が適切な値からずれることによって、最高温度セルの温度の推定精度が悪化する場合がある。
そこで、この実施の形態では、ECU100は、組電池10の発熱状態に関連する情報を用いて温度加算値を設定するものとする。この実施の形態では、組電池10の発熱状態に関連する情報は、電流である。ECU100は、たとえば、電流の二乗平均値が高い場合には、二乗平均値が低い場合よりも高い値を温度加算値として設定する。このようにすると、温度加算値を適切に設定することができる。
ECU100は、最高温度セルおよび最低温度セルの各々について、セルの発熱および冷却を考慮してセル温度と相関を有する温度指標(Ftmax,Ftmin)を算出する。ECU100は、最高温度セルの温度指標(Ftmax)から最低温度セルの温度指標(Ftmin)を差引くことによって、セル間の温度ばらつきの度合いを示す評価関数(ΔF)を設定する。
そして、温度変化に対する抵抗変化の大きさは低温ほど大きいので、低温ほどセル間の抵抗差ΔR(抵抗ばらつき)及びそれに起因する電流差(電流ばらつき)は大きくなり得る。そのため、この実施の形態に従う電池システム2では、評価関数(ΔF)とともに組電池10の温度(後述のように、この実施の形態では、温度検出部23により検出される温度TB1〜TBjのうち最低の温度(TBmin)が用いられる。)もさらに用いて、セル間の電流ばらつきの度合い(最大電流補正ゲイン)が推定される。
以下、図5を参照して、セル間の電流ばらつきの推定に関する処理について説明する。図5は、セル間の電流ばらつきの推定に関する処理の手順を説明するフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、図1に示したECU100により、組電池10を構成するブロック毎に所定の演算周期dtで繰り返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU100は、組電池10内の最低温度TBminおよび冷却風の温度TCを取得する。ECU100は、温度検出部23を用いて検出される複数の温度TB1〜TBjから最低温度TBminを取得する。ECU100は、温度センサ27を用いて冷却風の温度TCを取得する。
S102にて、ECU100は、ファン26の風量を取得する。ECU100は、たとえば、ファン26に対する制御指令値に基づいてファン26の風量を取得してもよいし、ファン26に供給される電力や電圧に基づいてファン26の風量を取得してもよいし、ファン26に設けられる回転数センサを用いてファン26の風量を取得してもよい。
S104にて、ECU100は、冷却係数hを算出する。ECU100は、ファン26の風量と、風量と冷却係数hとの関係を示すマップ(あるいは数式等)とを用いて冷却係数hを設定する。風量と冷却係数hとの関係を示すマップは、実験等によって適合される。風量と冷却係数hとの関係は、たとえば、風量が多くなるほど冷却係数hの値が大きくなる関係を有する。
S106にて、ECU100は、並列接続された複数のセルのうちの最低温度セルの抵抗値Rtminを算出する。ECU100は、たとえば、以下の式(1)によってRtminを算出する。
式(1)におけるRivmaxは、セル間に存在する初期抵抗のばらつき(製品ばらつき)の最高値を示す。Rivmaxについては、実験等により予め求められる。fは、初期抵抗値(Rivmaxや後述するRivmin)からの抵抗の低下を示す係数であり、セルの温度と残存容量(RAHR)とを因数とする関数(マップ)である。
また、式(1)において、「t」は今回の演算周期における演算値を示す。TBminは、温度検出部23により検出される温度TB1〜TBjのうちの最低の温度である。RAHRminは、各ブロックのRAHRのうちの最も低いRAHRを示す。
S108にて、ECU100は、電流の二乗平均値IBaを算出する。ECU100は、たとえば、以下の式(2)に示すように、電流検出部22によって検出された電流の今回値と、直前の予め定められた期間において検出された予め定められた個数の検出結果を用いて電流の二乗平均値を算出する。なお、ECU100は、たとえば、以下の式(3)に示すように、式(2)に代えて、前回値と今回の二乗平均値との差分に所定の定数(なまし定数)kを乗算した値を前回値に加算して今回値を算出してもよい。
S110にて、ECU100は、オフセット温度TBoffset1を設定する。オフセット温度TBoffset1は、最低温度セルの温度を用いて最高温度セルの温度を算出するためのオフセット温度であって、並列接続される複数のセルの温度ばらつきを示す。ECU100は、たとえば、二乗平均値の今回値と、二乗平均値とオフセット温度TBoffset1との関係を示すマップ(あるいは数式等)とを用いてオフセット温度TBofset1を設定する。二乗平均値とオフセット温度TBoffset1との関係を示すマップは、実験等によって適合される。二乗平均値とオフセット温度TBoffset1との関係は、たとえば、二乗平均値が大きくなるほど組電池内での発熱量が増加し、温度ばらつきが拡大するためオフセット温度TBoffset1の値が大きくなる関係を有する。
S112にて、ECU100は、並列接続された複数のセルのうちの最高温度セルの抵抗値Rtmaxを算出する。ECU100は、たとえば、以下の式(4)によってRtmaxを算出する。
式(4)におけるRivminは、セル間に存在する初期抵抗のばらつき(製品ばらつき)の最低値を示す。なお、最高温度セルの方が最低温度セルよりもセル温度が高く抵抗は低いことから、最高温度セルの抵抗Rtmaxの算出にはRivminが用いられ、最低温度セルの抵抗Rtminの算出にはRivmaxが用いられている。Rivminについては、実験等により予め求められる。
fは、上述したとおり、初期抵抗値(RivminやRivmax)からの抵抗の低下を示す係数であり、セルの温度と残存容量(RAHR)とを因数とする関数(マップ)である。式(4)においては、最高温度セルの温度、すなわち、最低温度セルの温度(TBminにオフセット温度TBoffset1を加算した値がセルの温度の因数とされている。オフセット量RAHRoffsetは、RAHRminを用いて各ブロックのRAHRのうちの最も高いRAHRを示すRAHRmaxを算出するための所定値である。
ここで、図6は、式(1)および式(4)で用いられる係数fを決定するためのマップである。図6を参照して、係数fは、セルの温度と残存容量(RAHR)とに基づいて決定される。基本的には、低温・低RAHRであるほど係数fは大きい値となり、高温・高RAHRであるほど係数fは小さい値となる。なお、マップの具体的な値は、実験等を通じて予め決定される。
図7は、セルの抵抗の温度依存性を示した図である。図7を参照して、横軸は、セルの温度Tceを示し、縦軸はセルの抵抗Rceを示す。温度Tceと抵抗Rceとの関係は、温度Tceが低下すると抵抗Rceは上昇し、温度Tceが上昇するにつれて抵抗Rceは低下する関係を有する。
点P3は、並列接続される複数のセルのうちの最低温度セルの温度Tceと抵抗Rceとの関係を示す。この実施の形態では、式(1)で示されるように、組電池10内の最低温度を示すTBminを用いて、最低温度セルの抵抗Rtminが推定される。
点P4は、並列接続される複数のセルのうち最高温度セルの温度Tceと抵抗Rceとの関係を示す。この実施の形態では、式(4)で示されるように、組電池10内の最低温度を示すTBminに温度オフセット量TBoffset1を加えた値を最高温度セルの温度として、最高温度セルのRtmaxが推定される。
図8は、セルの抵抗の残存容量依存性を示した図である。図8を参照して、横軸はブロック単位の残存容量(RAHR(%))を示し、縦軸はセルの抵抗Rceを示す。RAHRと抵抗Rceとの関係は、RAHRが低下すると、抵抗Rceは上昇する関係を有する。
点P5は、並列接続される複数のセルのうち最低温度セルの抵抗RceとRAHRとの関係を示す。図から理解されるように、RAHRが低い領域では、抵抗の変化に対するRAHRの変化の感度が高くなることから、この実施の形態では、式(1)で示されるように、各ブロックのRAHRのうち最も低いRAHRを示すRAHRminを用いて、最低温度セルの抵抗Rtminが推定される。
点P6は、並列接続される複数のセルのうち最高温度セルの抵抗RceとRAHRとの関係を示す。この実施の形態では、式(4)で示されるように、RAHRminに所定のオフセット量RAHRoffsetを加えた値を最高温度セルのRAHRとして、最高温度セルの抵抗Rtmaxが推定される。
S114にて、ECU100は、並列接続された複数のセルのうち最高温度セルの温度指標Ftmax(第2の温度指標)を次式によって算出する。
各式において、Qtmaxは、最高温度セルの発熱量(通電に伴なう発熱項)を示し、Ctmaxは、最高温度セルの冷却量(冷却装置24による冷却項)を示す。Fkは、所定の補正係数である。式(6)において、Itmaxは、最高温度セルの電流を示し、Qktmaxは、所定の定数(なまし定数)である。Itmaxは、後述の式(11)によって算出される。
また、式(7)において、TBoffset2は、この最高温度セルの冷却項を後述の最低温度セルの冷却項よりも大きく算出させるためのオフセット値である。TCは、上述したとおり温度センサ27(図1)により検出される冷却風の温度である。h(t)は、上述の冷却係数である。
ECU100は、RtmaxおよびItmaxを算出し、算出したRtmaxおよびItmaxを用いて、式(6)により最高温度セルの発熱量Qtmaxを算出する。そして、ECU100は、算出した発熱量Qtmaxと、式(7)により算出される冷却量Ctmaxとを用いて、式(5)により最高温度セルの温度指標Ftmax(第2の温度指標)を算出する。
S116にて、ECU100は、並列接続された複数のセルのうち最低温度セルの温度指標Ftmin(第1の温度指標)を次式によって算出する。
Qtminは、最低温度セルの発熱量(通電に伴なう発熱項)を示し、Ctminは、最低温度セルの冷却量(冷却装置による冷却項)を示す。式(9)において、Itminは、最低温度セルの電流を示し、Qktminは、所定の定数(なまし定数)である。Itminは、後述の式(12)によって算出される。
ECU100は、RtminおよびItminを算出し、算出したRtminおよびItminを用いて、式(9)により最低温度セルの発熱量Qtminを算出する。そして、ECU100は、算出した発熱量Qtminと、式(10)により算出される冷却量Ctminとを用いて、式(8)により最低温度セルの温度指標Ftmin(第1の温度指標)を算出する。
なお、上述の式(6)のRtmax(最高温度セルの抵抗)は、式(4)によって算出される。上述の式(9)のRtmin(最低温度セルの抵抗)は、式(1)によって算出される。
また、上述の式(6)におけるItmax(最高温度セルの電流)および式(9)におけるItmin(最低温度セルの電流)については、図9に示されるように、並列接続される複数のセルは最高温度セルか最低温度セルのいずれかであるとし、また、あるセルの断線も考慮して(断線すると他のセルの電流が増加し、電流ばらつきが増大し得る。)、次式によって推定される。
Nは、各ブロックにおけるセルの並列数である(図2)。N1は、並列接続されたN個のセルのうち最高温度セルの数であり、N2は、断線しているセルの数である。この式(11)および(12)は、上記の式(4),(1)で算出されるRtmax(最高温度セルの抵抗)およびRtmin(最低温度セルの抵抗)、並びに図9に示されるモデルを用いて容易に導出することができる。
なお、この実施の形態では、組電池10を使用可能な状況において最も電流ばらつきが大きくなる状態として、N1=1とされ(最高温度セルの電流集中度が最も高くなる。)、N2には、組電池10が使用可能な状態の最悪値(たとえば、N=15に対してN2=2が設定される。
図5に戻って、S118にて、ECU100は、以下の式(13)に示すように、最高温度セルの温度指標Ftmaxから最低温度セルの温度指標Ftminを差引くことによって、セル間の温度ばらつきの度合いを示す評価関数ΔFを算出する。
S120にて、ECU100は、算出した評価関数ΔFと、組電池10内の最低温度を示す温度TBminとを用いて、セル間の電流ばらつきの度合いを示す最大電流補正ゲインGを算出する。
図10は、最大電流補正ゲインGのマップを示した図である。図10を参照して、最大電流補正ゲインGは、セル間の温度ばらつきの度合いを示す評価関数ΔFと、温度TBminとにより決定される。この最大電流補正ゲインGは、値が大きいほど電流のばらつきが大きいことを示し、大略的には、評価関数ΔFの値が大きいほど(温度ばらつきが大きいほど)、また、温度TBminが低いほど、最大電流補正ゲインGは大きい値となる。
なお、組電池10内の最低温度を示す温度TBminを用いているのは、低温ほどセル間の電流ばらつきが大きくなり得るからである。
図11は、セルの温度と抵抗との関係を示した図である。図11を参照して、横軸はセルの温度Tceを示し、縦軸はセルの抵抗Rceを示す。図11に示されるように、セル間の温度差ΔT(評価関数ΔF)が同じであっても、セルの温度が低いほど、セル間の抵抗差ΔR(抵抗ばらつき)は大きくなり、その結果、セル間の電流ばらつきも大きくなる。そこで、この実施の形態では、図10で示されるマップのように、セル間の温度ばらつきの度合いを示す評価関数ΔFだけでなく、組電池10の温度も考慮して最大電流補正ゲインGが算出される。さらに、この実施の形態では、最も厳しい温度条件として、組電池10内の最低温度を示す温度TBminが用いられている。
図5に戻って、S122にて、ECU100は、電流検出部22により検出される組電池10の電流IBに最大電流補正ゲインGを乗算して最大電流値Imaxを算出する。そして、特に図示しないが、ECU100は、この最大電流値Imaxに基づいて、たとえば、最大電流値Imaxが上限を超えないように電流IBを制限したり、最大電流値Imaxに基づき算出される電力が上限を超えないように組電池10の入出力を制限したりする各種制限制御を実行する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る電池システム2の動作について説明する。
たとえば、車両1の走行時に組電池10からMG42に電力が供給される場合において、組電池10内の最低温度TBminおよび冷却風温度TCが取得される(S100)。そして、ファン風量が取得されるとともに(S102)、取得されたファン風量に基づいて冷却係数hが設定される(S104)。
冷却係数hが決定されると、最低温度セルの抵抗値Rtminが算出され(S106)、電流の二乗平均値IBaが算出され(S108)、算出された二乗平均値IBaに応じたオフセット温度TBoffset1が算出される(S110)。
そして、最低温度セルの温度にオフセット温度TBoffset1を加算して算出される温度を最高温度セルの温度として設定され、最高温度セルの抵抗値Rtmaxが算出される(S112)。
算出されたRtmaxおよびRtminを用いて温度指標Ftmaxおよび温度指標Ftminが算出され(S114,S116)、評価関数ΔFが算出される(S118)。
算出された評価関数ΔFと温度TBminと図10に示すマップとに基づいて最大電流補正ゲインGが算出され、算出された最大電流補正ゲインGと電流IBとが乗算され、最大電流値Itmaxが算出される(S122)。
以上のようにして、本実施の形態に係る電池システム2によると、セル間の温度ばらつきの度合いを示す評価関数ΔFが算出され、その評価関数ΔFと組電池10の温度TBminとを用いてセル間の電流ばらつきの度合いが推定される(最大電流補正ゲインGの算出)。そのため、この最大電流補正ゲインGを実電流IBに乗算した最大電流値Imaxを用いて、適切な電池保護制御を実現することが可能となる。特に、電流の二乗平均値IBaに基づいて設定されたオフセット温度offset1を用いて第2の温度指標が算出されるため、評価関数(評価値)ΔFを精度高く算出することができる。その結果、並列接続された複数の二次電池間の温度ばらつきに起因する複数の二次電池間の電流ばらつきを精度高く推定することができる。そのため、複数の二次電池に対して適切な電池保護制御を実現することが可能となる。したがって、並列接続された複数の二次電池間の温度ばらつきに起因する電流ばらつきを考慮して適切な電池保護制御を実現可能な電池システムを提供することができる。
さらに、電流の二乗平均値に基づいてオフセット温度offset1を設定することにより、組電池の発熱状態に対応したオフセット温度offset1を適切に設定することができる。
以下、変形例について記載する。
上述の実施の形態では、電池システム2がハイブリッド車両に搭載される場合を一例として説明したが、上述のようなハイブリッド車両以外の各種車両あるいは車両以外の移動体に搭載されるようにしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、最低温度セルと最高温度セルとの間での電流ばらつきを算出するものとして説明したが、たとえば、複数のセルのうちの相対的に温度が低い第1セルと第1セルよりも所定温度だけ温度が高い第2セルとの間での電流ばらつきを算出し、算出された電流ばらつきを考慮して適切な電池保護制御を実行するようにしてもよい。たとえば、複数のセルのうちのn番目に温度が低い第1セルと、複数のセルのうちのn番目に温度が高い第2セルとの間での電流ばらつきを算出し、算出された電流ばらつきを考慮して適切な電池保護制御を実行するようにしてもよい。
さらに上述の実施の形態では、電流の二乗平均値に基づいてオフセット温度offset1を設定するものとして説明したが、組電池の発熱状態に関連する情報を用いてオフセット温度offset1を設定できればよく、たとえば、組電池10の内部抵抗に基づいてオフセット温度offset1が設定されてもよいし、組電池の内部抵抗および電圧に基づいてオフセット温度offset1が設定されてもよい。たとえば、組電池10の内部抵抗や電圧が高いほど発熱量が多くなり、温度ばらつきが拡大するため、オフセット温度offset1の値を大きくしてもよい。
なお、上記した変形例は、その全部または一部を適宜組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。