JP2019123832A - 潜熱蓄熱材組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】潜熱蓄熱材に添加剤を加えることにより、潜熱蓄熱材の融点を大幅に調整できると共に、この添加剤が配合されても、より大きな蓄熱量を得ることができる潜熱蓄熱材組成物を提供する。【解決手段】潜熱蓄熱材10に、潜熱蓄熱材10の物性を調整する添加剤11を配合した潜熱蓄熱材組成物1では、潜熱蓄熱材10は、nw(2≦nw)個の水和水を含む無機塩水和物からなる。添加剤は、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含む潜熱蓄熱材10の融点調整剤13であり、潜熱蓄熱材10に含まれる水分との溶解で、負の溶解熱を発生する物性を有する物質である。潜熱蓄熱材組成物1全体のうち、糖アルコール類に属する物質は、潜熱蓄熱材13の水和水1molあたり、次の式(1),(2)を満たす濃度である。【数10】、0.01≦xs≦1・・・式(2)【選択図】図1

Description

本発明は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材に、この潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合した潜熱蓄熱材組成物に関する。
潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)は、相変化に伴う潜熱の出入りを利用して蓄熱することができる物性を有しており、本来廃棄される排熱をこの潜熱蓄熱材に蓄熱し、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことで、エネルギが無駄なく有効に活用できる。このような潜熱蓄熱材の一種に、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)(以下、「アンモニウムミョウバン」と称す。)が、広く知られている。アンモニウムミョウバンの物性は、融点93.5℃で、常温では固体である。そのため、潜熱蓄熱材がアンモニウムミョウバン単体の場合、排熱温度が、融点93.5℃より低い温度であると、アンモニウムミョウバンが、排熱で加熱されたとしても、アンモニウムミョウバンは融解せず、排熱を回収して蓄熱することはできない。そこで一般的には、特許文献1のように、融点調整剤が、潜熱蓄熱材の融点を、排熱に対応する温度に調整する目的で、潜熱蓄熱材に添加される。
特許文献1は、アンモニウムミョウバン(AlNH(SO・12HO)と塩化アンモニウム(NHCl)とを含有した共晶塩からなる潜熱蓄熱材である。特許文献1によれば、塩化アンモニウムが、5〜15重量%の添加量でアンモニウムミョウバンに配合されると、アンモニウムミョウバンの融点が、約90〜75℃に調整できるとされている。また、特許文献1の潜熱蓄熱材の物性では、共晶点が、75〜78℃の温度であり、例えば、共晶点からの利用温度差が、ΔT=30℃(45〜75℃)である場合、この潜熱蓄熱材の蓄熱量は、約320〜350kJ/Lであるとされている。
特許第4830572号公報
しかしながら、特許文献1の潜熱蓄熱材は、アンモニウムミョウバンと塩化アンモニウムとの共晶塩であるため、特許文献1の図1に示されているように、塩化アンモニウムが、添加量15重量%を超えてアンモニウムミョウバンに配合されても、特許文献1の潜熱蓄熱材の融点は、共晶点(75〜78℃)より下がらない。そのため、排熱温度が、共晶点より低い温度である場合、潜熱蓄熱材は融解せず、特許文献1の潜熱蓄熱材は、排熱を回収して蓄熱することはできない。
特に産業界では近年、例えば、燃料電池システム、自動車のエンジン等による熱供給源において、その作動時に生じる排熱を回収し、蓄熱材に蓄熱した熱エネルギを積極的に活用する技術開発に、多くの関心が寄せられている。熱供給源で生む排熱の対象は、概ね60℃前後〜80℃前後の範囲内を対象とした温度帯域の熱であり、例えば、コジェネレーションに用いたガスエンジンシステムのエンジンのほか、ボイラー等の高温域熱源の排熱より低い、いわゆる低温域熱源から生じる熱である。このような低温域熱源の排熱を蓄熱材に蓄熱しようする場合、特許文献1では、潜熱蓄熱材の融点が、低温域熱源の排熱の温度帯域より高く、潜熱蓄熱材は融解しないため、排熱に基づく蓄熱を行うことができない。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、潜熱蓄熱材に添加剤を加えることにより、潜熱蓄熱材の融点を大幅に調整できると共に、この添加剤が配合されても、より大きな蓄熱量を得ることができる潜熱蓄熱材組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物は、以下の構成を有する。
(1)蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、前記潜熱蓄熱材は、n(2≦n)個の水和水を含む少なくとも一種の無機塩水和物からなること、前記添加剤は、前記潜熱蓄熱材の融点を調整する融点調整剤であり、前記潜熱蓄熱材との溶解で、負の溶解熱を発生する物性を有する物質であること、前記融点調整剤は、第1の添加剤として、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、当該潜熱蓄熱材組成物の融液は、前記潜熱蓄熱材に含む水和水と、前記融点調整剤に含む糖アルコールとの溶解により、前記潜熱蓄熱材と前記融点調整剤とを混合してなること、当該潜熱蓄熱材組成物全体のうち、前記糖アルコール類に属する物質は、前記潜熱蓄熱材の前記水和水1molあたり、式(1),(2)を満たす濃度であること、
Figure 2019123832
0.01≦x≦1 ・・・式(2)
但し、
:水和水1molに対する「糖アルコール類に属する物質」のモル数[mol/mol]
:潜熱蓄熱材組成物に含有する「糖アルコール類に属する物質」の質量[g]
:「糖アルコール類に属する物質」の分子量[g/mol]
N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
を特徴とする。
なお、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物において、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」とは、例えば、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、マンニトール(C14)、ソルビトール(C14)、ラクチトール(C122411)等の「糖アルコール類に属する物質」に該当する。また、塩化カルシウム六水和物(CaCl・6HO)、塩化マグネシウム六水和物(MgCl・6HO)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)等の「塩化物に属する物質」が該当する。加えて、硫酸アンモニウム((NHSO)等の「硫酸塩に属する物質」が該当する。また、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上を含む場合のほか、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上含む場合や、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上含む場合もある。
加えて、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物もある。また、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物もある。さらに、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物(塩化物と硫酸塩とが混晶をなす場合も含む)もある。
すなわち、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物に構成された潜熱蓄熱材は、無機塩水和物からなり、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」が無機塩水和物に溶解するとき、この「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」において、外部から熱を吸収して吸熱反応(例えば、無機塩水和物の水和水との溶解のほか、無機塩水和物が水和水以外に溶媒となり得る分子をその構造の中に有する場合で、水和水以外の構成物質との溶解等も含む)が生じるものを、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物では、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」と定義している。
(2)(1)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記糖アルコール類に属する物質は、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含むものであること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記第1の添加剤とは別の前記添加剤で、第2の添加剤として、硫酸塩が配合されていること、当該潜熱蓄熱材組成物全体のうち、前記硫酸塩は、前記潜熱蓄熱材の前記水和水1molあたり、式(3),(4)を満たす濃度であること、
但し、
Figure 2019123832
0≦x≦0.1 ・・・式(4)
:水和水1molに対する硫酸塩のモル数[mol/mol]
:潜熱蓄熱材組成物に、第2の添加剤として含有する硫酸塩の質量[g]
:第2の添加剤である硫酸塩の分子量[g/mol]
N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
を特徴とする。
(4)(3)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記硫酸塩は、硫酸アンモニウム((NHSO)であること、を特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記無機塩水和物は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩であること、を特徴とする。
(6)(5)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記ヒドロキシメタンスルフィン酸塩は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(CHNaOS・2HO)であること、を特徴とする。
(7)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記無機塩水和物は、酢酸塩であること、を特徴とする。
(8)(7)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)であること、を特徴とする。
(9)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記無機塩水和物は、二リン酸塩(ピロリン酸塩)またはリン酸塩であること、を特徴とする。
(10)(9)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記二リン酸塩は、二リン酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)であること、を特徴とする。
(11)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記無機塩水和物は、ミョウバン水和物であること、を特徴とする。
なお、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物において、「ミョウバン水和物」とは、例えば、アンモニウムミョウバン12水和物(別名:硫酸アルミニウムアンモニウム12水和物)(AlNH(SO・12HO)、カリウムミョウバン12水和物(別名:硫酸カリウムアルミニウム12水和物)(AlK(SO・12HO)、クロムミョウバン(別名:ビス硫酸クロムカリウム12水和物)(CrK(SO・12HO)、鉄ミョウバン(別名:硫酸第二鉄アンモニウム12水和物)(FeNH(SO・12HO)等、1価の陽イオンの硫酸塩M (SO)と、3価の陽イオンの硫酸塩MIII (SOとの複硫酸塩である「ミョウバン」が該当する。また、このような「ミョウバン」に属する物質を、少なくとも二種以上含む混合物、または混晶を主成分とした蓄熱材を対象としている。「ミョウバン」に含まれる金属イオンは、アルミニウムイオン、クロムイオン、鉄イオン以外に、例えば、コバルトイオン、マンガンイオン等、3価の金属イオンでも良い。
(12)(11)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO・12HO)であること、を特徴とする。
(13)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記無機塩水和物は、硫酸塩であること、を特徴とする。
(14)(13)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、前記硫酸塩は、硫酸アルミニウム水和物(Al(SO・nHO)(2≦n)であること、を特徴とする。
上記構成を有する本発明の潜熱蓄熱材組成物の作用・効果について説明する。
(1)蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、前記潜熱蓄熱材は、n(2≦n)個の水和水を含む少なくとも一種の無機塩水和物からなること、添加剤は、潜熱蓄熱材の融点を調整する融点調整剤であり、潜熱蓄熱材との溶解で、負の溶解熱を発生する物性を有する物質であること、融点調整剤は、第1の添加剤として、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、当該潜熱蓄熱材組成物の融液は、潜熱蓄熱材に含む水和水と、融点調整剤に含む糖アルコールとの溶解により、潜熱蓄熱材と融点調整剤とを混合してなること、当該潜熱蓄熱材組成物全体のうち、糖アルコール類に属する物質は、潜熱蓄熱材の水和水1molあたり、式(1),(2)を満たす濃度であること、
Figure 2019123832
0.01≦x≦1 ・・・式(2)
但し、
:水和水1molに対する「糖アルコール類に属する物質」のモル数[mol/mol]
:潜熱蓄熱材組成物に含有する「糖アルコール類に属する物質」の質量[g]
:「糖アルコール類に属する物質」の分子量[g/mol]
N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
を特徴とする。この特徴により、糖アルコール類に属する物質である第1の添加剤(融点調整剤)に対し、潜熱蓄熱材の水和水が不足なく十分に存在するため、潜熱蓄熱材の水和水と融点調整剤との溶解時に生じた負の溶解熱は、本発明の潜熱蓄熱材組成物の蓄熱量の増大に寄与する。またこのとき、含有する融点調整剤の一部に、たとえ溶け残りが生じた場合でも、溶け残った分の融点調整剤の融解により、この融点調整剤の潜熱が、本発明の潜熱蓄熱材組成物の蓄熱量の増大に寄与する。そのため、潜熱蓄熱材自体の潜熱と、水和水と融点調整剤との溶解時に生じる負の溶解熱と、融点調整剤の融解潜熱とを足し合わせた総熱量が、本発明の潜熱蓄熱材組成物への吸熱として蓄えられる。しかも、本発明の潜熱蓄熱材組成物は、例えば、250kJ/kgを超える大きな蓄熱量を得ることができる上に、潜熱蓄熱材単体に比べ、例えば、最大30℃近くまで融点を低く調整した物性となる。
従って、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物によれば、潜熱蓄熱材に添加剤を加えることにより、潜熱蓄熱材の融点を大幅に調整できると共に、この添加剤が配合されても、より大きな蓄熱量を得ることができる、という優れた効果を奏する。
(2)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、糖アルコール類に属する物質は、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含むものであること、を特徴とする。この特徴により、本発明の潜熱蓄熱材組成物の融点が、潜熱蓄熱材単体に比べ、効果的に低く調整できる。また、糖アルコール類に属する物質自体が、熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備しているため、蓄熱材の物性として優れており、融点調整剤の添加により、本発明の潜熱蓄熱材組成物全体の重量に占める潜熱蓄熱材の配合比率が低くなっても、本発明の潜熱蓄熱材組成物の蓄熱量の低下が、効果的に抑制できる。
(3)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、第1の添加剤とは別の添加剤で、第2の添加剤として、硫酸塩が配合されていること、当該潜熱蓄熱材組成物全体のうち、硫酸塩は、潜熱蓄熱材の水和水1molあたり、式(3),(4)を満たす濃度であること、
但し、
Figure 2019123832
0≦x≦0.1 ・・・式(4)
:水和水1molに対する硫酸塩のモル数[mol/mol]
:潜熱蓄熱材組成物に、第2の添加剤として含有する硫酸塩の質量[g]
:第2の添加剤である硫酸塩の分子量[g/mol]
N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
を特徴とする。また、(4)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、硫酸塩は、硫酸アンモニウム((NHSO)であること、を特徴とする。この特徴により、第2の添加剤である融点調整剤として、例えば、硫酸アンモニウム((NHSO)等の硫酸塩が、式(4)に示すような少ない添加量で配合されているだけで、第2の添加剤を含有した本発明の潜熱蓄熱材組成物は、潜熱蓄熱材に、融点調整剤である第1の添加剤だけを加えた場合に比べ、蓄熱量を、例えば、約20%増大することができる一方で、融点を、15℃前後等も低く調整できた物性となる。
(5)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、無機塩水和物は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩であること、を特徴とする。また、(6)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(CHNaOS・2HO)であること、を特徴とする。この特徴により、例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物等のヒドロキシメタンスルフィン酸塩を主成分とした本発明の潜熱蓄熱材組成物は、使用上、蓄熱し放熱するときの温度帯域を、例えば、50℃前後とし、150kJ/kg程度の蓄熱量等で十分な場合に利用することができる。
(7)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、無機塩水和物は、酢酸塩であること、を特徴とする。また、(8)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、酢酸塩は、酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)であること、を特徴とする。この特徴により、例えば、酢酸ナトリウム3水和物等の酢酸塩は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材となる上、添加した融点調整剤が、酢酸ナトリウム3水和物等の酢酸塩の水和水に溶解することで、負の溶解熱(吸熱)が発生する。同時に、第1の添加剤等の添加剤で、融解に伴う潜熱(吸熱)が発生する場合もある。そのため、先に例示した酢酸ナトリウム3水和物等の潜熱蓄熱材を主成分とした本発明の潜熱蓄熱材組成物では、融点が、潜熱蓄熱材単体の融点に比べ、一例として20℃程度低くなると共に、これらの吸熱により、潜熱蓄熱材単体の蓄熱量を超えることも可能な程、非常に高い熱量の熱を蓄えることができる。また、酢酸ナトリウム3水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
(9)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、無機塩水和物は、二リン酸塩(ピロリン酸塩)またはリン酸塩であること、を特徴とする。また、(10)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、二リン酸塩は、二リン酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)であること、を特徴とする。この特徴により、例えば、二リン酸ナトリウム10水和物等の二リン酸塩またはリン酸塩は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材となる上、添加した融点調整剤が、二リン酸ナトリウム10水和物等の二リン酸塩またはリン酸塩の水和水に溶解することで、負の溶解熱(吸熱)が発生する。同時に、第1の添加剤等の添加剤で、融解に伴う潜熱(吸熱)が発生する場合もある。そのため、先に例示した二リン酸ナトリウム10水和物等の潜熱蓄熱材を主成分とした本発明の潜熱蓄熱材組成物では、融点が、潜熱蓄熱材単体の融点に比べ、一例として15℃程度低くなると共に、これらの吸熱により、潜熱蓄熱材単体の蓄熱量を超えることも可能な程、非常に高い熱を蓄えることができる。また、二リン酸ナトリウム10水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
(11)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、無機塩水和物は、ミョウバン水和物であること、を特徴とする。この特徴により、ミョウバン水和物で構成した潜熱蓄熱材では、相変化に伴う潜熱が比較的大きく、かつ「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」を溶解させる水分が、ミョウバン水和物をなす構造の中に含まれている。そのため、このような潜熱蓄熱材を主成分とする本発明の潜熱蓄熱材組成物では、ミョウバン自体に生じる比較的大きな融解潜熱と、第1の添加剤等の添加剤に伴う融解潜熱と、負の溶解熱との足し合わせにより、潜熱蓄熱材に蓄熱できる蓄熱量も大きくできる。よって、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材を含む本発明の潜熱蓄熱材組成物は、大容量の熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備できている点で、優れている。
(12)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO・12HO)であること、を特徴とする。この特徴により、アンモニウムミョウバン12水和物やカリウムミョウバン12水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
(13)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、無機塩水和物は、硫酸塩であること、を特徴とする。また、(14)に記載する潜熱蓄熱材組成物において、硫酸塩は、硫酸アルミニウム水和物(Al(SO・nHO)(2≦n)であること、を特徴とする。この特徴により、例えば、硫酸アルミニウム水和物等の硫酸塩は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材となる上、添加した融点調整剤が、硫酸アルミニウム水和物等の硫酸塩の水和水に溶解することで、負の溶解熱(吸熱)が発生する。同時に、第1の添加剤等の添加剤で、融解に伴う潜熱(吸熱)が発生する場合もある。そのため、例えば、硫酸アルミニウム水和物等の潜熱蓄熱材を主成分とした本発明の潜熱蓄熱材組成物では、融点が、潜熱蓄熱材単体の融点に比べ、一例として15℃程度低くなると共に、これらの吸熱により、200kJ/kgを上回る高い熱量の熱を蓄えることができる。
実施例1〜3、及び5に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。 実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。 実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物で、相変化により固相状態にあるときの様子と液相状態にあるときの様子とを、それぞれ模式的に示す図である。 実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例1及びその比較例1の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 実施例1の実験1に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 比較例1の実験2に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例2及びその比較例2の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 実施例2の実験3に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例2の実験4に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例2の実験5に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 比較例2の実験6に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例3及びその比較例3の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 実施例3の実験7に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例3の実験8に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例3の実験9に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 比較例3の実験10に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例4及びその比較例4の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 実施例4の実験11に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 比較例4の実験12に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例5に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例5及びその比較例5に係る実験13〜17の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。 実施例5の実験13に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例5の実験14に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例5の実験15に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施例5の実験16に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 比較例5の実験17に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。 実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物の有意性をグラフで示した説明図である。
(実施形態)
以下、本発明に係る潜熱蓄熱材組成物について、実施形態(実施例1〜5)を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施例1〜3、及び5に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図であり、図2は、実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物の構成成分を模式的に示す図である。
本実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物1は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材10に、この潜熱蓄熱材10の物性を調整する添加剤を配合してなり、蓄熱材充填容器(図示省略)に漏れのない態様で、液密かつ気密に充填される。潜熱蓄熱材組成物1を充填した蓄熱材充填容器は、熱エネルギの活用を図る所定の収容手段の空間内に収容され、潜熱蓄熱材組成物1は、充填された蓄熱材充填容器の内外で、液相と固相との相変化に伴った潜熱の出入りを利用して、蓄熱とその放熱のサイクルを複数回繰り返して使用される。
すなわち、潜熱蓄熱材組成物1は、本来廃棄される排熱をこの潜熱蓄熱材10に蓄熱し、蓄えた熱を必要に応じて取り出すことができる。具体的には、潜熱蓄熱材組成物1は、例えば、太陽光発電システムや燃料電池システム、自動車のエンジンの熱や排ガスの熱等による熱供給源において、その作動時に生じる排熱を回収し、潜熱蓄熱材10に蓄熱した熱エネルギを積極的に活用する目的で用いられる。さらに近年では、潜熱蓄熱材組成物1は、潜熱蓄熱材10において相変化を行う融点の温度帯域を幅広く制御することで、例えば、日常の食生活上の用途として、蓄えた潜熱を放熱することにより、配膳するまでの間、給食や料理を保温する場合や、食事するまでの間、弁当や食材を保温する場合等、様々な業界で活用し得ると期待されている。
潜熱蓄熱材組成物1では、潜熱蓄熱材10は、n(2≦n)個の水和水を含む少なくとも一種の無機塩水和物からなる。添加剤は、潜熱蓄熱材10の融点を調整する融点調整剤13(13A,13B)であり、潜熱蓄熱材10の水和水への溶解で、負の溶解熱を発生する物性を有する物質である。融点調整剤13は、第1の添加剤として、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでおり、潜熱蓄熱材組成物1の融液は、潜熱蓄熱材10に含む水和水(図3中、水和水12)と、融点調整剤13に含む糖アルコールとの溶解により、潜熱蓄熱材10と融点調整剤13とを混合してなる。
潜熱蓄熱材組成物1全体のうち、糖アルコール類に属する物質(融点調整剤13)は、潜熱蓄熱材10の水和水1molあたり、式(1),(2)を満たす濃度である。
Figure 2019123832
0.01≦x≦1 ・・・式(2)
但し、
:水和水1molに対する「糖アルコール類に属する物質」のモル数[mol/mol]
:潜熱蓄熱材組成物に含有する「糖アルコール類に属する物質」の質量[g]
:「糖アルコール類に属する物質」の分子量[g/mol]
N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
(実施例1)
はじめに、実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物1A(1)の概要について、説明する。図1に示すように、実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物1Aは、相変化に伴う潜熱の出入により、蓄熱または放熱を可能とする潜熱蓄熱材10A(潜熱蓄熱材10)に、第1の添加剤である融点調整剤13A(融点調整剤13)を配合してなる。実施例1は、潜熱蓄熱材組成物1Aによる蓄熱とその放熱の温度帯域を、50℃前後に調整する場合であり、潜熱蓄熱材組成物1Aでは、主成分である潜熱蓄熱材10Aを、(n=2)個の水和水を含むヒドロキシメタンスルフィン酸塩の無機塩水和物10としている。
具体的には、潜熱蓄熱材10Aは、本実施例1では、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(CHNaOS・2HO)であり、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物の物性は、水和数2、分子量[g/mol]154.12、融点約65℃、融点より低い温度帯域では、水に易溶な固体の物質である。
融点調整剤13については、ここでは具体的に例示して簡単に説明するが、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」の定義については、実施例2で詳述する。前述したように、融点調整剤13は、潜熱蓄熱材10(無機塩水和物10)の融点を、必要に応じて任意の温度に調整する添加剤である。融点調整剤13は、無機塩水和物10との溶解で、負の溶解熱を発生する物性を有する物質である。具体的には、融点調整剤13は、例えば、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、マンニトール(C14)等、主として食品添加物に用いられている糖アルコール類に属した物質からなる。糖アルコールは、アルドースやケトースのカルボニル基を還元して生成する糖の一種であり、水に溶解する。融点調整剤13は、実施例1〜3、及び5では、エリスリトール(融点調整剤13A)であり、エリスリトールの物性は、分子量[g/mol]122.12、融点約119℃である。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Aにおいて、添加された融点調整剤13Aにより、蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、実験1,2の調査実験を行った。実験1は、潜熱蓄熱材10Aに融点調整剤13A(エリスリトール)を添加した潜熱蓄熱材組成物1Aを、試料とした実施例1に係る実験である。実験2は、実施例1の比較例1として行った実験で、融点調整剤13Aを含有しない潜熱蓄熱材10Aだけの試料で行った実験である。
<実験方法>
調査実験では、恒温槽での加熱試験等により、試料が融解する温度帯を事前に確認した上で、周知の示差走査熱量測定装置(DSC:Differential scanning calorimetry)を用いて、試料10mgを、アルミニウム製容器内に密閉した状態で試料台に載せて、試料の蓄熱量を測定。蓄熱量は、常温から試料が十分に融解する温度まで、試料を2℃/min.の加熱速度で加熱し、設定温度に到達後5分間以上保持する温度条件の下で測定。
<実験1,2の共通条件>
・潜熱蓄熱材10A;ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(CHNaOS・2HO)
<実験1の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1Aの構成成分;潜熱蓄熱材10Aと融点調整剤13A
・融点調整剤13A;エリスリトール(C10
・潜熱蓄熱材組成物1A全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;50wt%
(潜熱蓄熱材10A:融点調整剤13A=1:1)
・式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.631[mol/mol]
<実験2の条件>
・融点調整剤13A;無添加
・潜熱蓄熱材10Aの配合比率;100wt%
(潜熱蓄熱材10A:融点調整剤13A=100:0)
図4は、実施例1に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例1及びその比較例1の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図5は、実施例1の実験1に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図6は、比較例1の実験2に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。
図5及び図6に示すグラフでは、縦軸左側の目盛りが、試料で単位時間に蓄熱または放熱した熱量を示しており、この目盛りの「負」の領域は、試料に吸熱される熱量を示し、「正」の領域は、試料から放熱される熱量を示す。また、試料は、時間経過と共に推移する熱量の線図の中で、熱量の絶対値が一時的に大きくなり、最大値(ピークトップ)に達した時刻tに対応する試料の温度T(融点と定義)となったとき、最大の蓄熱量を呈する条件となる。試料の融解潜熱は、熱量の線図の中で、蓄熱量のピークの開始時間と終了時間との間で、熱量を積算して得られるピーク面積S(図5及び図6中、斜線の部分)の大きさで示されている。また、試料の熱量の単位は〔mW〕で、試料の質量の単位は〔mg〕であるが、単位換算を行った上で、蓄熱量の単位は、〔kJ/kg〕としている。実施例2以降の各グラフについても同様である。
<実験結果>
実施例1の実験1に係る潜熱蓄熱材組成物1Aでは、図5に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Taは51.7℃で、蓄熱量Saは147kJ/kgであった。比較例1の実験2に係る潜熱蓄熱材10A単体では、図6に示すように、第1の蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tb1は66.3℃、第2の蓄熱ピークの時刻t2に対応する温度Tb2は65.4℃で、蓄熱量Sbは175kJ/kgであった。
<考察>
図26は、実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物の有意性をグラフで示した説明図であり、図26では、潜熱蓄熱材10(潜熱蓄熱材10A〜E)単体を「PCM」と表示している。比較例1に係る実験2の結果は、一般的に知られているヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(潜熱蓄熱材10A)の融点(約65℃)と概ね一致している。また、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物について、図26に示す蓄熱量Pは、175(kJ/kg)である。
これに対し、実施例1に係る実験1では、潜熱蓄熱材組成物1Aにおいて、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(潜熱蓄熱材10A)とエリスリトール(融点調整剤13A)とが、1対1の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10A単体の蓄熱量P=175(kJ/kg)の50%に相当するP0=87.5(kJ/kg)であると考えられる。しかしながら、実際に測定された潜熱蓄熱材組成物1Aの蓄熱量Saは、147(kJ/kg)であった。このような結果となった理由として、図26に示すように、エリスリトールに由来する蓄熱量P2≒60(kJ/kg)が、PCM蓄熱に由来する蓄熱量P0=87.5(kJ/kg)に上乗せされたためと考えられる。
すなわち、このエリスリトールに由来する蓄熱量は、図26に示すように、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(潜熱蓄熱材10A)の水和水12とエリスリトール(融点調整剤13A)との溶解時に生じた負の溶解熱P2Aaと、融点調整剤13Aの融解潜熱P2Abとに基づいて、吸熱された熱量P2であると推察される。また、潜熱蓄熱材組成物1Aの融点が、潜熱蓄熱材10A単体に比べ、15℃近く低くなっていることについては、エリスリトールが、融点調整剤として機能しているためと考えられる。
潜熱蓄熱材組成物1Aは、潜熱蓄熱材10Aの蓄熱量を損なうことなく、当該潜熱蓄熱材組成物1Aに蓄熱する温度帯域と、蓄熱した熱を放熱する温度帯域を、50℃前後で調整したい場合に利用される。
(実施例2)
次に、実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物の概要について、説明する。図1に示すように、実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物1Bは、相変化に伴う潜熱の出入りにより、蓄熱または放熱を可能とする潜熱蓄熱材10B(潜熱蓄熱材10)に、第1の添加剤である融点調整剤13A(融点調整剤13)を配合してなる。実施例2は、潜熱蓄熱材組成物1Bによる蓄熱とその放熱の温度帯域を、40℃前後に調整する場合であり、潜熱蓄熱材組成物1Bでは、主成分である潜熱蓄熱材10Bを、(n=3)個の水和水を含む酢酸塩の無機塩水和物10としている。
具体的には、潜熱蓄熱材10Bは、本実施例2では、酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)であり、酢酸ナトリウム3水和物の物性は、水和数3、分子量[g/mol]136.08、融点58℃、水に易溶な物質である。
ここで、前述の「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」の定義について、説明する。前述したように、潜熱蓄熱材組成物1は、n(2≦n)個の水和水を含む無機塩水和物からなる潜熱蓄熱材10を主成分に、融点調整剤13を配合してなる。融点調整剤13と潜熱蓄熱材10との溶解時に、この融点調整剤13において、外部から熱を吸収して吸熱反応が生じるものを、本実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物1では、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」と定義している。
なお、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」には、先に例示したエリスリトールやキシリトール、マンニトールのほかに、例えば、ソルビトール(C14)、ラクチトール(C122411)等の「糖アルコール類に属する物質」がある。また、塩化カルシウム六水和物(CaCl・6HO)、塩化マグネシウム六水和物(MgCl・6HO)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)等の「塩化物に属する物質」がある。加えて、後述する硫酸アンモニウム((NHSO)等の「硫酸塩に属する物質」がある。また、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上を含む場合のほか、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上含む場合や、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のうち、少なくとも一種以上含む場合も該当する。
加えて、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物もある。また、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物もある。さらに、上述の「糖アルコール類に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「塩化物に属する物質」に該当する物質のいずれかと、上述の「硫酸塩に属する物質」に該当する物質のいずれかとの混合物(塩化物と硫酸塩との混晶をなす場合も含む)もある。
その他、取扱いに注意が必要となり、本実施形態において、潜熱蓄熱材組成物としての使用は好ましくないが、例えば、硝酸アンモニウムや塩素酸カリウム等についても、水に溶解した際に吸熱反応を呈するため、「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」には該当する。
図3は、実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物で、相変化により固相状態にあるときの様子と液相状態にあるときの様子とを、それぞれ模式的に示す図である。なお、図3には、アンモニウムミョウバン12水和物を一例とした潜熱蓄熱材10(無機塩水和物10)が示されているが、図3は、アンモニウムミョウバン12水和物(潜熱蓄熱材10D)以外にも、ヒドロキシメタンフィン酸ナトリウム2水和物(潜熱蓄熱材10A)、酢酸ナトリウム3水和物(潜熱蓄熱材10B)、二リン酸ナトリウム10水和物(潜熱蓄熱材10C)、硫酸アルミニウム水和物(潜熱蓄熱材10E)等、n(2≦n)個の水和水を含む無機塩水和物10を対象とした模式図である。
潜熱蓄熱材組成物1の温度が、融点調整剤13(融点調整剤13と共に融点調整剤14を含む場合もある)により調整された潜熱蓄熱材10の融点より低いと、図3(a)に示すように、潜熱蓄熱材組成物1は固相状態にあり、無機塩無水物11と水和水12とからなる無機塩水和物10(潜熱蓄熱材10)は、融点調整剤13と溶解しない。なお、本実施例2では、潜熱蓄熱材10Bが酢酸ナトリウム3水和物であるため、無機塩無水物11は、酢酸ナトリウム無水物に対応し、水和水12は、3水和物をなす水和水に対応する。
潜熱蓄熱材組成物1の温度が、融点調整剤13による調整後の潜熱蓄熱材10の融点より高くなると、図3(b)に示すように、潜熱蓄熱材10中の無機塩無水物11が融解して水和水12と分離すると共に、融点調整剤13が、この水和水12に溶解し、潜熱蓄熱材組成物1全体は液相状態になる。無機塩無水物11の融解時には、固相状態から液相状態への相変化に伴う融解潜熱が、無機塩無水物11に蓄えられる。同時に、融点調整剤13の水和水12への溶解により、融点調整剤13に負の溶解熱(吸熱)が発生する。また、融点調整剤13で、融解に伴う潜熱(吸熱)が発生する場合もある。そのため、潜熱蓄熱材組成物1が、それ自体の融点を超えた高い温度で加熱されると、潜熱蓄熱材組成物1は、固相状態から液相状態に相変化することにより、潜熱蓄熱材組成物1は、上述した潜熱蓄熱材10の融解潜熱(吸熱)の熱量と、負の溶解熱(吸熱)の熱量と、融点調整剤13の融解潜熱(吸熱)の熱量との和となる総熱量の熱を、蓄熱量として蓄えることができる。
その反対に、潜熱蓄熱材組成物1が、それ自体の凝固点を下回る低い温度まで冷却されると、図3(a)に示すように、液相状態の潜熱蓄熱材組成物1中の融点調整剤13と均一に混合されていた水和水12が、無機塩無水物11と水和反応して、無機塩水和物10(潜熱蓄熱材10)が生成されると共に、無機塩無水物11と水和水12は、液相状態から固相状態への相変化に伴う凝固潜熱を放出する。同時に、融点調整剤13も固相状態に形成されて、溶解前後及び融解前後で異なる熱エネルギ差分に相当する熱が放出される。これにより、潜熱蓄熱材組成物1が、それ自体の凝固点を下回る低い温度に冷却されると、潜熱蓄熱材組成物1は、液相状態から固相状態に相変化することにより、上述した融解潜熱(放熱)の熱量と、上述したエネルギ差相当分の熱による熱量との和となる総熱量の熱を、放熱量として放出することができる。
潜熱蓄熱材組成物1の使用時に、無機塩無水物11から分離した水和水12が、前述した蓄熱材充填容器(図示省略)から外部に放散しないよう、潜熱蓄熱材組成物1が、液密な状態で蓄熱材充填容器に充填されていることが重要である。その理由として、潜熱蓄熱材組成物1は、その使用にあたり、熱供給側からの排熱に基づいて蓄熱を行い、この蓄熱に基づく放熱を熱提供側に行うまでの1サイクルを、複数回にわたって繰り返す特性を要する。このような特性を呈するには、潜熱蓄熱材組成物1では、図3に示すように、固相と液相との間における相変化が、当該潜熱蓄熱材組成物1の潜熱蓄熱材10の融点を境に、可逆的に行われなければならない。分離した水和水12が、外部に放散してしまうと、液相から固相に相変化するにあたり、無機塩水和物10(潜熱蓄熱材10)を生成するのに必要な水和水を、無機塩無水物11に伴うことができず、固相状態の潜熱蓄熱材組成物1が生成できなくなるからである。但し、水和水12が万一、蓄熱材充填容器から放散しても、水蒸気が蓄熱材充填容器の内部に流入できる状態にあり、この水蒸気が、放散した分の水和水12に代えて補完できる場合には、固相状態の潜熱蓄熱材組成物1の生成が可能になることもある。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Bにおいて、添加された融点調整剤13Aにより、蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、実験3〜6の調査実験を行った。実験3〜5は、潜熱蓄熱材10Bに融点調整剤13Aを添加した潜熱蓄熱材組成物1Bを、試料とした実施例2に係る実験である。実験6は、実施例2に対する比較例2として行った実験で、融点調整剤13Aを含有しない潜熱蓄熱材10Bだけの試料で行った実験である。調査実験は、実施例1と同じ実験方法で行った。
<実験3〜6の共通条件>
・潜熱蓄熱材10B;酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)
<実験3〜5の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1Bの構成成分;潜熱蓄熱材10Bと融点調整剤13A
・融点調整剤13A;エリスリトール(C10
<実験3の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1B全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;70wt%
(潜熱蓄熱材10B:融点調整剤13A=3:7)
・式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.867[mol/mol]
<実験4の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1B全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;50wt%
(潜熱蓄熱材10B:融点調整剤13A=1:1)
・式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.371[mol/mol]
<実験5の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1B全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;30wt%
(潜熱蓄熱材10B:融点調整剤13A=7:3)
・式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.159[mol/mol]
<実験6の条件>
・融点調整剤13A;無添加
・潜熱蓄熱材10Bの配合比率;100wt%
(潜熱蓄熱材10B:融点調整剤13A=100:0)
図7は、実施例2に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例2及びその比較例2の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図8は、実施例2の実験3に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図9は、実施例2の実験4に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図10は、実施例2の実験5に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図11は、比較例2の実験6に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。
<実験結果>
実施例2の実験3に係る潜熱蓄熱材組成物1Bでは、図8に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tcは41.8℃で、蓄熱量Scは155kJ/kgであった。実施例2の実験4に係る潜熱蓄熱材組成物1Bでは、図9に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tdは40.5℃で、蓄熱量Sdは235kJ/kgであった。実施例2の実験5に係る潜熱蓄熱材組成物1Bでは、図10に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Teは40.4℃で、蓄熱量Seは265kJ/kgであった。比較例2の実験6に係る潜熱蓄熱材10C単体では、図11に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tfは60.3℃で、蓄熱量Sfは276kJ/kgであった。
<考察>
比較例2に係る実験6の結果は、一般的に知られている酢酸ナトリウム3水和物(潜熱蓄熱材10B)の蓄熱量264(kJ/kg)と概ね一致し、融点約58℃(実験6の測定値は60.3℃)についても概ね一致している。また、酢酸ナトリウム3水和物について、図26に示す蓄熱量Pは、276(kJ/kg)である。
これに対し、潜熱蓄熱材組成物1Bにおいて、酢酸ナトリウム3水和物(潜熱蓄熱材10B)とエリスリトール(融点調整剤13A)とが、実施例2に係る実験3では、3対7の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10B単体の蓄熱量P=276(kJ/kg)の30%に相当するP0=82.8(kJ/kg)であると考えられる。同様に、実施例2に係る実験4では、1対1の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10B単体の蓄熱量Pの50%に相当するP0=138(kJ/kg)であると考えられる。同様に、実施例2に係る実験5では、7対3の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10B単体の蓄熱量Pの70%に相当するP0=193.2(kJ/kg)であると考えられる。
しかしながら、実際に測定された潜熱蓄熱材組成物1Bの蓄熱量では、実験3の蓄熱量Scは155(kJ/kg)、実験4の蓄熱量Sdは235(kJ/kg)、実験5の蓄熱量Seは265(kJ/kg)であった。このような結果となった理由として、図26に示すように、エリスリトールに由来する蓄熱量が、実験3と実験5の場合でP2≒70(kJ/kg)の上乗せとなり、実験4の場合ではP2≒100(kJ/kg)もの上乗せとなったためと考えられる。
すなわち、このエリスリトールに由来する蓄熱量は、図26に示すように、エリスリトール(融点調整剤13A)が酢酸ナトリウム3水和物(潜熱蓄熱材10B)の水和水12に溶解する際に生じた負の溶解熱P2Aaと、融点調整剤13Aの融解時に生じた潜熱P2Abとに基づいて、吸熱された熱量P2であると推察される。また、潜熱蓄熱材組成物1Bの融点が、潜熱蓄熱材10B単体に比べ、20℃近く低くなっていることについては、エリスリトールが、融点調整剤として機能しているためと考えられる。
(実施例3)
次に、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物の概要について、説明する。図1に示すように、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物1Cは、相変化に伴う潜熱の出入りにより、蓄熱または放熱を可能とする潜熱蓄熱材10C(潜熱蓄熱材10)に、第1の添加剤である融点調整剤13A(融点調整剤13)を配合してなる。実施例3は、潜熱蓄熱材組成物1による蓄熱とその放熱の温度帯域を、約65〜75℃に調整する場合であり、潜熱蓄熱材組成物1Cでは、主成分である潜熱蓄熱材10Cを、(n=10)個の水和水を含む二リン酸塩(ピロリン酸塩)、またはリン酸塩の無機塩水和物10としている。
具体的には、潜熱蓄熱材10Cは、本実施例3では、二リン酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)であり、二リン酸ナトリウム10水和物の物性は、水和数10、分子量[g/mol]177.98、融点79℃、水やアルコールに易溶な物質である。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Cにおいて、添加された融点調整剤13Aにより、蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、実験7〜10の調査実験を行った。実験7〜9は、潜熱蓄熱材10Cに融点調整剤13Aを添加した潜熱蓄熱材組成物1Cを、試料とした実施例3に係る実験である。実験10は、実施例3に対する比較例3として行った実験で、融点調整剤13Aを含有しない潜熱蓄熱材10Cだけの試料で行った実験である。調査実験は、実施例1と同じ実験方法で行った。
<実験7〜10の共通条件>
・潜熱蓄熱材10C;二リン酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)
<実験7〜9の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1Cの構成成分;潜熱蓄熱材10Cと融点調整剤13A
・融点調整剤13A;エリスリトール(C10
<実験7の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1C全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;50wt%
(潜熱蓄熱材10C:融点調整剤13A=1:1)
・式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.365[mol/mol]
<実験8の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1C全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;30wt%
(潜熱蓄熱材10C:融点調整剤13A=7:3)
・式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.157[mol/mol]
<実験9の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1C全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;10wt%
(潜熱蓄熱材10B:融点調整剤13A=9:1)
・式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.041[mol/mol]
<実験10の条件>
・融点調整剤13A;無添加
・潜熱蓄熱材10Cの配合比率;100wt%
(潜熱蓄熱材10C:融点調整剤13A=100:0)
図12は、実施例3に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例3及びその比較例3の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図13は、実施例3の実験7に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図14は、実施例3の実験8に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図15は、実施例3の実験9に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図16は、比較例3の実験10に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。
<実験結果>
実施例3の実験7に係る潜熱蓄熱材組成物1Cでは、図13に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tgは69.6℃で、蓄熱量Sgは267kJ/kgであった。実施例3の実験8に係る潜熱蓄熱材組成物1Cでは、図14に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Thは68.5℃で、蓄熱量Shは241kJ/kgであった。実施例3の実験9に係る潜熱蓄熱材組成物1Cでは、図15に示すように、第1の蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Ti1は67.5℃、第2の蓄熱ピークの時刻t2に対応する温度Ti2は75.9℃で、蓄熱量Siは240kJ/kgであった。比較例3の実験10に係る潜熱蓄熱材10C単体では、図16に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tjは82.7℃で、蓄熱量Sjは241kJ/kgであった。
<考察>
比較例3に係る実験10の結果は、一般的に知られている二リン酸ナトリウム10水和物(潜熱蓄熱材10C)の融点約79℃(実験10の測定値は82.7℃)と概ね一致している。また、二リン酸ナトリウム10水和物について、図26に示す蓄熱量Pは、241(kJ/kg)である。
これに対し、潜熱蓄熱材組成物1Cにおいて、二リン酸ナトリウム10水和物(潜熱蓄熱材10C)とエリスリトール(融点調整剤13A)とが、実施例3に係る実験7では、1対1の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10C単体の蓄熱量P=241(kJ/kg)の50%に相当するP0=120.5(kJ/kg)であると考えられる。同様に、実施例3に係る実験8では、7対3の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10C単体の蓄熱量Pの70%に相当するP0=168.7(kJ/kg)であると考えられる。同様に、実施例3に係る実験9では、9対1の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10C単体の蓄熱量Pの90%に相当するP0=216.9(kJ/kg)であると考えられる。
しかしながら、実際に測定された潜熱蓄熱材組成物1Cの蓄熱量では、実験7の蓄熱量Sgは267(kJ/kg)、実験8の蓄熱量Shは241(kJ/kg)、実験9の蓄熱量Siは240(kJ/kg)であった。このような結果となった理由として、図26に示すように、エリスリトール蓄熱分の蓄熱量が、エリスリトールの含有比率の多い順に、実験7の場合でP2≒146(kJ/kg)の上乗せとなり、実験8の場合でP2≒73(kJ/kg)の上乗せとなり、実験9の場合でP2≒23(kJ/kg)の上乗せになったためと考えられる。
すなわち、このエリスリトールに由来する蓄熱量は、エリスリトール(融点調整剤13A)が二リン酸ナトリウム10水和物(潜熱蓄熱材10C)の水和水12に溶解する際に生じた負の溶解熱P2Aaと、融点調整剤13Aの融解時に生じた潜熱P2Abとに基づいて、吸熱された熱量P2であると推察される。特にエリスリトールの含有比率が多くなると、エリスリトールに由来する蓄熱量も増大していることから、潜熱蓄熱材組成物1Cの蓄熱量の増大に、エリスリトールが大きく寄与していることが判る。また、潜熱蓄熱材組成物1Cの融点が、潜熱蓄熱材10C単体に比べ、最大15℃近くまで低くなっていることについては、エリスリトールが、融点調整剤として機能していることも判る。
なお、実験9では、図15に示すように、時刻t1で第1の蓄熱ピークが生じ、時刻t2で第2の蓄熱ピークが生じている。その理由については、現段階で明確に解明できていないが、本出願人は、次述する考察を持っている。すなわち、エリスリトール(融点調整剤13A)の添加量が少なくなったことで、二リン酸ナトリウム10水和物(潜熱蓄熱材10C)の融点が潜熱蓄熱材10C単体の融点に近づくという第1の効果がある。併せて、二リン酸ナトリウム10水和物の一部が加熱過程で遊離することで、二リン酸ナトリウム10水和物の融解前に、エリスリトールの負の溶解熱(吸熱)が生じるという第2の効果もある。この第1の効果と第2の効果により、エリスリトールに由来する蓄熱ピークが発生する時刻と、二リン酸ナトリウム10水和物に由来する蓄熱ピークが発生する時刻に、ずれが生じたものと推察している。
(実施例4)
次に、実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物の概要について、説明する。図2に示すように、実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物1Dは、相変化に伴う潜熱の出入りにより、蓄熱または放熱を可能とする潜熱蓄熱材10D(潜熱蓄熱材10)に、第1の添加剤である融点調整剤13B(融点調整剤13)と、第2の添加剤である融点調整剤14を配合してなる。実施例4は、潜熱蓄熱材組成物1による蓄熱とその放熱の温度帯域を、約82℃前後に調整する場合であり、潜熱蓄熱材組成物1Dでは、主成分である潜熱蓄熱材10Dは、(n=12)個の水和水を含むミョウバン水和物(無機塩水和物10)である。
具体的には、潜熱蓄熱材10Dは、本実施例4では、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)であり、アンモニウムミョウバン12水和物の物性は、水和数12、分子量[g/mol]453.34、融点93.5℃、水に可溶な物質である。
なお、ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン以外にも、例えば、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO・12HO)、クロムミョウバン(CrK(SO・12HO)、鉄ミョウバン(FeNH(SO・12HO)等、1価の陽イオンの硫酸塩M (SO)と、3価の陽イオンの硫酸塩MIII (SOとの複硫酸塩である「ミョウバン」であっても良い。また、この「ミョウバン」に含まれる3価の金属イオンは、アルミニウムイオン、クロムイオン、鉄イオン以外に、例えば、コバルトイオン、マンガンイオン等の金属イオンでも良い。さらに、潜熱蓄熱材10は、このような「ミョウバン」に属する物質を、少なくとも二種以上含む混合物、または混晶を主成分とした蓄熱材であっても良い。
融点調整剤13は、本実施例4では、マンニトール(融点調整剤13B)である。マンニトールの物性は、分子量[g/mol]181.17、融点約166〜168℃である。また、融点調整剤14は、前述した「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」に属する硫酸塩で、本実施例4では、硫酸アンモニウム((NHSO)である。硫酸アンモニウムの物性は、分子量[g/mol]132.14、230℃超の融点で、水に易溶な物質である。また、融点調整剤14として添加している硫酸アンモニウムは、潜熱蓄熱材10の水和水(水和水12)1molあたり、下記式(3),(4)を満たす濃度になっている。
但し、
Figure 2019123832
0≦x≦0.1 ・・・式(4)
:水和水1molに対する硫酸塩のモル数[mol/mol]
:潜熱蓄熱材組成物に、第2の添加剤として含有する硫酸塩の質量[g]
:第2の添加剤である硫酸塩の分子量[g/mol]
N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
次に、潜熱蓄熱材組成物1Dにおいて、添加された融点調整剤13Bと融点調整剤14とにより、蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、実験11,12の調査実験を行った。実験11は、第1の添加剤である融点調整剤13B(マンニトール)と、第2の添加剤である融点調整剤14(硫酸アンモニウム)とを、潜熱蓄熱材10Dに添加した潜熱蓄熱材組成物1Dを、試料とした実施例4に係る実験である。実験12は、実施例4に対する比較例4として行った実験で、融点調整剤13Bと融点調整剤14とを含まず、潜熱蓄熱材10Dだけの試料で行った実験である。調査実験は、実施例1と同じ実験方法で行った。
<実験11,12の共通条件>
・潜熱蓄熱材10D;アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)
<実験11の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1Dの構成成分;潜熱蓄熱材10Bと融点調整剤13B
・融点調整剤13B;マンニトール(C14
・潜熱蓄熱材組成物1D全体の重量に対するマンニトールの配合比率;8wt%
・式(1)について、水和水1molに対するマンニトールのモル数x=0.018[mol/mol]
・潜熱蓄熱材組成物1D全体の重量に対する硫酸アンモニウムの配合比率;18.4wt%
(潜熱蓄熱材10D:融点調整剤14=4:1)
・融点調整剤14;硫酸アンモニウム((NHSO
・式(3)について、水和水1molに対する硫酸アンモニウムのモル数x=0.071[mol/mol]
<実験12の条件>
・融点調整剤13B;無添加
・融点調整剤14;無添加
(潜熱蓄熱材10C:融点調整剤13B:融点調整剤14=100:0:0)
図17は、実施例4に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例4及びその比較例4の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図18は、実施例4の実験11に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図19は、比較例4の実験12に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。
<実験結果>
実施例4の実験11に係る潜熱蓄熱材組成物1Dでは、図18に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tkは81.7℃で、蓄熱量Skは248kJ/kgであった。比較例4の実験12に係る潜熱蓄熱材組成物1Dでは、図19に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tmは96.2℃で、蓄熱量Smは284kJ/kgであった。
<考察>
比較例4に係る実験12の結果は、一般的に知られているアンモニウムミョウバン12水和物(潜熱蓄熱材10D)の蓄熱量251(kJ/kg)と概ね一致し、融点約93.5℃(実験12の測定値は96.2℃)についても概ね一致している。また、アンモニウムミョウバン12水和物について、図26に示す蓄熱量Pは、284(kJ/kg)である。
これに対し、実施例4に係る実験11では、潜熱蓄熱材組成物1Dにおいて、アンモニウムミョウバン12水和物(潜熱蓄熱材10D)とマンニトール(融点調整剤13B)と硫酸アンモニウム(融点調整剤14)が、9.2:1:2.3の割合で混ざっているため、PCM蓄熱分の蓄熱量は、潜熱蓄熱材10D単体の蓄熱量P=284(kJ/kg)の73.6%に相当するP0=209.0(kJ/kg)であると考えられる。しかしながら、実際に測定された潜熱蓄熱材組成物1Dの蓄熱量Skは、248(kJ/kg)であった。このような結果となった理由として、図26に示すように、マンニトールに由来する蓄熱量P2≒39(kJ/kg)が、PCMに由来する蓄熱量P0=209.0(kJ/kg)に上乗せされたためと考えられる。
すなわち、このマンニトールに由来する蓄熱量は、マンニトール(融点調整剤13B)及び硫酸アンモニウム(融点調整剤14)がアンモニウムミョウバン12水和物(潜熱蓄熱材10D)の水和水12に溶解する際に生じた負の溶解熱P2Aa,P2Baと、融点調整剤13B及び融点調整剤14の融解時に生じた潜熱P2Ab,P2Bbとに基づいて、吸熱された熱量P2であると推察される。また、潜熱蓄熱材組成物1Dの融点が、潜熱蓄熱材10D単体に比べ、15℃近く低くなっていることについて、マンニトールと硫酸アンモニウムが、融点調整剤として機能していることも判る。
(実施例5)
次に、実施例5に係る潜熱蓄熱材組成物の概要について、説明する。実施例5は、潜熱蓄熱材組成物1による蓄熱とその放熱の温度帯域を、約75〜90℃前後に調整する場合である。図1に示すように、実施例5に係る潜熱蓄熱材組成物1Eは、相変化に伴う潜熱の出入りにより、蓄熱または放熱を可能とする潜熱蓄熱材10E(潜熱蓄熱材10)に、第1の添加剤である融点調整剤13A(融点調整剤13)の配合をベースとした潜熱蓄熱材組成物である。実施例5では、このベースとなる潜熱蓄熱材組成物1Eの融点をさらに調整する必要がある場合に、融点調整剤13A以外に、前述した融点調整剤14(硫酸アンモニウム)が添加される。この硫酸アンモニウムの濃度xは、前述したように、潜熱蓄熱材1Eの水和水(水和水12)1molに対し、0≦x≦0.1を満たすモル数になっている。
潜熱蓄熱材組成物1Eでは、主成分である潜熱蓄熱材10Eは、(n=14〜18)個の水和水を含む硫酸塩の(無機塩水和物10)である。具体的には、潜熱蓄熱材10Eは、本実施例5では、硫酸アルミニウム水和物(Al(SO・nHO)(n=14〜18)であり、硫酸アルミニウム水和物の物性は、14〜18個の水和数を含み、水和数14の場合の分子量[g/mol]594.15、水和数18の場合の分子量[g/mol]666.15、融点86.5℃(水和数18の場合)、水に可溶な物質である。
次に、潜熱蓄熱材組成物1Eにおいて、融点調整剤13Aだけを添加した場合と、融点調整剤13Aと融点調整剤14の両方を添加した場合に分け、融点調整剤13Aと融点調整剤14により、蓄熱の性能に与える影響を確認する目的で、実験13〜17の調査実験を行った。実験13,14は、潜熱蓄熱材10Eに融点調整剤13Aだけを添加した潜熱蓄熱材組成物1Eを、試料とした実施例5に係る実験である。実験15,16は、潜熱蓄熱材10Eに、融点調整剤13Aと融点調整剤14とを添加した潜熱蓄熱材組成物1Eを、試料とした実施例5に係る実験である。実験17は、実施例5に対する比較例5として行った実験で、融点調整剤13Aと融点調整剤14を全く含まない潜熱蓄熱材10Eだけの試料で行った実験である。調査実験は、実施例1と同じ実験方法で行った。
<実験13〜17の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1Eの構成成分;潜熱蓄熱材10E
・潜熱蓄熱材10E;硫酸アルミニウム水和物(Al(SO・nHO)(n=14〜18)
<実験13〜16の共通条件>
・潜熱蓄熱材組成物1Eの構成成分;潜熱蓄熱材10Eと融点調整剤13A
・融点調整剤13A;エリスリトール(C10
<実験13,14の条件>
・融点調整剤14;無添加
<実験15,16の条件>
・融点調整剤14;添加
・融点調整剤14;硫酸アンモニウム((NHSO
・潜熱蓄熱材組成物1E全体の重量に対する硫酸アンモニウムの配合比率;10wt%
(潜熱蓄熱材10E:融点調整剤14=10:1)
<実験13の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1E全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;50wt%
(潜熱蓄熱材10E:融点調整剤13A=1:1)
・水和数が14の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.348[mol/mol]
・水和数が18の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.303[mol/mol]
<実験14の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1E全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;30wt%
(潜熱蓄熱材10E:融点調整剤13A=7:3)
・水和数が14の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.149[mol/mol]
・水和数が18の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.130[mol/mol]
<実験15の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1E全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;45wt%
(潜熱蓄熱材10E:融点調整剤13A=1:1)
・水和数が14の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.348[mol/mol]
・水和数が18の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.303[mol/mol]
・水和数が14の場合の式(3)について、水和水1molに対する硫酸アンモニウムのモル数x=0.083[mol/mol]
・水和数が18の場合の式(3)について、水和水1molに対する硫酸アンモニウムのモル数x=0.093[mol/mol]
<実験16の条件>
・潜熱蓄熱材組成物1E全体の重量に対するエリスリトールの配合比率;27wt%
(潜熱蓄熱材10E:融点調整剤13A=7:3)
・水和数が14の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.149[mol/mol]
・水和数が18の場合の式(1)について、水和水1molに対するエリスリトールのモル数x=0.130[mol/mol]
・水和数が14の場合の式(3)について、水和水1molに対する硫酸アンモニウムのモル数x=0.059[mol/mol]
・水和数が18の場合の式(3)について、水和水1molに対する硫酸アンモニウムのモル数x=0.067[mol/mol]
<実験17の条件>
・融点調整剤13Aと融点調整剤14;無添加
・潜熱蓄熱材10Eの配合比率;100wt%
(潜熱蓄熱材10E:融点調整剤13A:融点調整剤14=100:0:0)
図20は、実施例5に係る潜熱蓄熱材組成物に関し、実施例5及びその比較例5に係る実験13〜17の実験条件と、DSCによる融点及び蓄熱量の測定結果をまとめて掲載した表である。図21は、実施例5の実験13に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図22は、実施例5の実験14に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図23は、実施例5の実験15に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図24は、実施例5の実験16に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。図25は、比較例5の実験17に係る潜熱蓄熱材組成物の融点及び蓄熱量を示すグラフである。
<実験結果>
実験13に係る潜熱蓄熱材組成物1Eでは、図21に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tnは89.2℃で、蓄熱量Snは200kJ/kgであった。実験14に係る潜熱蓄熱材組成物1Eでは、図22に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tpは89.0℃で、蓄熱量Spは183kJ/kgであった。実験15に係る潜熱蓄熱材組成物1Eでは、図23に示すように、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tqは73.3℃で、蓄熱量Sqは247kJ/kgであった。実験16に係る潜熱蓄熱材組成物1Eでは、図24に示すように、第1の蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tr1は75.2℃、第2の蓄熱ピークの時刻t2に対応する温度Tr2は73.2℃で、蓄熱量Srは222kJ/kgであった。比較例4の実験17に係る潜熱蓄熱材10E単体では、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tpは105.6℃で、蓄熱量Ssは192kJ/kgであった。
<考察>
図25に示すように、比較例5に係る実験17の結果によれば、蓄熱ピークの時刻t1に対応する温度Tp(105.6℃)が、硫酸アルミニウム18水和物の融点86.5℃を上回った。このような結果になったのは、実験13〜17で使用した硫酸アルミニウム水和物の水和数が14〜18であり、このうち14〜17水和物の融点が18水和物の融点よりも高いことに起因すると考えられる。
他方、実施例5に係る実験13では、潜熱蓄熱材組成物1Eにおいて、硫酸アルミニウム水和物(潜熱蓄熱材10E)とエリスリトール(融点調整剤13A)とが、1対1の割合で混ざっているため、硫酸アルミニウム水和物に由来する蓄熱量は、潜熱蓄熱材10E単体の蓄熱量P=192(kJ/kg)の50%に相当するP0=96(kJ/kg)であると考えられる。同様に、実施例5に係る実験14では、7対3の割合で混ざっているため、硫酸アルミニウム水和物に由来する蓄熱量は、潜熱蓄熱材10E単体の蓄熱量Pの70%に相当するP0=134.4(kJ/kg)であると考えられる。
また、潜熱蓄熱材組成物1Eにおいて、硫酸アルミニウム水和物(潜熱蓄熱材10E)とエリスリトール(融点調整剤13A)と硫酸アンモニウム(融点調整剤14)とが、実施例5に係る実験15では、9:9:2の割合で混ざっているため、硫酸アルミニウム水和物に由来する蓄熱量は、潜熱蓄熱材10E単体の蓄熱量P=192(kJ/kg)の45%に相当するP0=86.4(kJ/kg)であると考えられる。同様に、実施例5に係る実験16では、63:27:10の割合で混ざっているため、硫酸アルミニウム水和物に由来する蓄熱量は、潜熱蓄熱材10E単体の蓄熱量P=192(kJ/kg)の63%に相当するP0=120.9(kJ/kg)であると考えられる。
しかしながら、実際に測定された潜熱蓄熱材組成物1Eの蓄熱量では、実験13の蓄熱量Snは200(kJ/kg)、実験14の蓄熱量Spは183(kJ/kg)、実験15の蓄熱量Sqは247(kJ/kg)、実験16の蓄熱量Srは222(kJ/kg)であった。このような結果となった理由として、図26に示すように、エリスリトールに由来する蓄熱量が、実験14の場合でP2≒48.6(kJ/kg)の上乗せとなり、実験13の場合では、100(kJ/kg)超えのP2≒104(kJ/kg)の上乗せとなる。また、エリスリトールと硫酸アンモニウムの双方に由来する蓄熱量が、実験16の場合でP2≒101(kJ/kg)の上乗せとなり、実験15の場合ではP2≒161(kJ/kg)もの上乗せになったためと考えられる。
すなわち、このエリスリトールに由来する蓄熱量は、エリスリトール(融点調整剤13A)が硫酸アルミニウム水和物(潜熱蓄熱材10E)の水和水12に溶解した際に生じた負の溶解熱P2Aaと、融点調整剤13Aの融解時に生じた潜熱P2Abとに基づいて、吸熱された熱量P2であると推察される。同様に、エリスリトールと硫酸アンモニウムとの双方に由来する蓄熱量は、エリスリトール(融点調整剤13A)及び硫酸アンモニウム(融点調整剤14)の双方が硫酸アルミニウム水和物(潜熱蓄熱材10E)の水和水12に溶解した際に生じた負の溶解熱P2Aa,P2Baと、融点調整剤13Aと融点調整剤14との双方の融解時に生じた潜熱P2Ab,P2Bbとに基づいて、吸熱された熱量P2であると推察される。
また、エリスリトールのみを添加した潜熱蓄熱材組成物1Eの融点が、潜熱蓄熱材10E単体に比べ、実験13,14の場合で約17℃近く低くなっていることについては、エリスリトールが、融点調整剤として機能しているためと考えられる。また、エリスリトールと硫酸アンモニウムとを添加した潜熱蓄熱材組成物1Eの融点が、潜熱蓄熱材10E単体に比べ、実験15,16の場合で約32℃近く低くなっていることについては、エリスリトール等の糖アルコールと共に、添加された硫酸アンモニウムが、エリスリトールによって調整できる融点の温度帯域を、さらに下げて微調整できる融点調整剤として機能しているためだと考えられる。
次に、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1の作用・効果について説明する。本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材10に、該潜熱蓄熱材10の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、潜熱蓄熱材10は、n(2≦n)個の水和水を含む少なくとも一種の無機塩水和物からなること、添加剤は、潜熱蓄熱材10の融点を調整する融点調整剤13(13A,13B)であり、潜熱蓄熱材10との溶解で、負の溶解熱を発生する物性を有する物質であること、融点調整剤13は、第1の添加剤として、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、当該潜熱蓄熱材組成物1の融液は、潜熱蓄熱材10に含む水和水12と、融点調整剤13に含む糖アルコールとの溶解により、潜熱蓄熱材10と融点調整剤13とを混合してなること、当該潜熱蓄熱材組成物1全体のうち、糖アルコール類に属する物質は、潜熱蓄熱材10の水和水(水和水12)1molあたり、式(1),(2)を満たす濃度になっていること、
Figure 2019123832
0.01≦x≦1 ・・・式(2)
但し、
:水和水1molに対する「糖アルコール類に属する物質」のモル数[mol/mol]
:潜熱蓄熱材組成物に含有する「糖アルコール類に属する物質」の質量[g]
:「糖アルコール類に属する物質」の分子量[g/mol]
N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
を特徴とする。
この特徴により、糖アルコール類に属する物質である融点調整剤13に対し、潜熱蓄熱材10の水和水(水和水12)が不足なく十分に存在するため、潜熱蓄熱材10の水和水と融点調整剤13との溶解時に生じた負の溶解熱は、潜熱蓄熱材組成物1の蓄熱量の増大に寄与する。またこのとき、含有する融点調整剤13の一部に、たとえ溶け残りが生じた場合でも、溶け残った分の融点調整剤13の融解により、この融点調整剤13の潜熱が、潜熱蓄熱材組成物1の蓄熱量の増大に寄与する。そのため、潜熱蓄熱材10自体の潜熱と、水和水(水和水12)と融点調整剤13との溶解時に生じる負の溶解熱と、融点調整剤13の融解潜熱とを足し合わせた総熱量が、潜熱蓄熱材組成物1の吸熱として蓄えられる。しかも、潜熱蓄熱材組成物1は、250kJ/kgを超える大きな蓄熱量を得ることができる上に、潜熱蓄熱材10単体に比べ、最大30℃近くまで融点を低く調整した物性となる。
従って、本実施形態に係る潜熱蓄熱材組成物1によれば、潜熱蓄熱材10に添加剤(融点調整剤13)を加えることにより、潜熱蓄熱材10の融点を大幅に調整できると共に、この融点調整剤13が配合されても、より大きな蓄熱量を得ることができる、という優れた効果を奏する。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、糖アルコール類に属する物質(融点調整剤13)は、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含むものであること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材組成物1の融点が、潜熱蓄熱材10単体に比べ、融点を効果的に低く調整できる。また、融点調整剤13自体が、熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備しているため、蓄熱材の物性として優れており、融点調整剤13の添加により、潜熱蓄熱材組成物1全体の重量に占める潜熱蓄熱材10の配合比率が低くなっても、潜熱蓄熱材組成物1の蓄熱量の低下が、効果的に抑制できている。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、第1の添加剤とは別の添加剤で、第2の添加剤として、硫酸塩である硫酸アンモニウム((NHSO)(融点調整剤14)が配合されていること、当該潜熱蓄熱材組成物1全体のうち、硫酸アンモニウムは、潜熱蓄熱材10の水和水(水和水12)1molあたり、前述の式(3),(4)を満たす濃度であること、を特徴とする。この特徴により、融点調整剤14が、式(4)に示すような少ない添加量で配合されているだけで、融点調整剤14を含有する潜熱蓄熱材組成物1Eは、潜熱蓄熱材10Eに、第1の添加剤である融点調整剤13だけを加えた場合に比べ、蓄熱量を約20%増大することができると共に、融点を、15℃前後も低く調整できた物性となる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、無機塩水和物10(潜熱蓄熱材10)は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩であり、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(CHNaOS・2HO)(潜熱蓄熱材10A)であること、を特徴とする。この特徴により、潜熱蓄熱材10Aを主成分とした潜熱蓄熱材組成物1Aは、使用上、蓄熱し放熱するときの温度帯域を50℃前後とし、150kJ/kg程度の蓄熱量で十分な場合に利用することができる。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、無機塩水和物10は、酢酸塩であり、酢酸塩は、酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)(潜熱蓄熱材10B)であること、を特徴とする。この特徴により、酢酸ナトリウム3水和物は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材10Bとなる上、添加した融点調整剤13が潜熱蓄熱材10Bの水和水12に溶解することで、負の溶解熱(吸熱)が発生する。同時に、融点調整剤13で、融解に伴う潜熱(吸熱)が発生する場合もある。そのため、潜熱蓄熱材10Bを主成分とした潜熱蓄熱材組成物1Bでは、融点が、潜熱蓄熱材10B単体の融点に比べ、20℃程度低くなると共に、これらの吸熱により、潜熱蓄熱材10B単体の蓄熱量276kJ/kgを超えることも可能な程、非常に高い熱量の熱を蓄えることができる。また、酢酸ナトリウム3水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、無機塩水和物10は、二リン酸塩(ピロリン酸塩)またはリン酸塩であり、二リン酸塩は、二リン酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)(潜熱蓄熱材10C)であること、を特徴とする。この特徴により、二リン酸ナトリウム10水和物は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材10Cとなる上、添加した融点調整剤13が潜熱蓄熱材10Cの水和水12に溶解することで、負の溶解熱(吸熱)が発生する。同時に、融点調整剤13で、融解に伴う潜熱(吸熱)が発生する場合もある。そのため、潜熱蓄熱材10Cを主成分とした潜熱蓄熱材組成物1Cでは、融点が、潜熱蓄熱材10C単体の融点に比べ、15℃程度低くなると共に、これらの吸熱により、潜熱蓄熱材10C単体の蓄熱量241kJ/kgを超えることも可能な程、非常に高い熱量の熱を蓄えることができる。また、二リン酸ナトリウム10水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、無機塩水和物10は、ミョウバン水和物であること、を特徴とする。この特徴により、ミョウバン水和物で構成した潜熱蓄熱材10Dでは、相変化に伴う潜熱が比較的大きく、かつ「負の溶解熱を発生する物性を有する物質」を溶解させる水分が、ミョウバン水和物をなす構造の中に含まれている。そのため、このような潜熱蓄熱材10Dを主成分とする潜熱蓄熱材組成物1Dでは、ミョウバン自体に生じる比較的大きな融解潜熱と、融点調整剤13に伴う融解潜熱と、負の溶解熱との足し合わせにより、潜熱蓄熱材組成物1Dに蓄熱できる蓄熱量も大きくできる。よって、ミョウバン水和物を主成分とする潜熱蓄熱材10Dを含む潜熱蓄熱材組成物1Dは、大容量の熱を蓄熱し、それを放熱する蓄放熱性能を具備できている点で、優れている。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO・12HO)(潜熱蓄熱材10D)であること、を特徴とする。この特徴により、アンモニウムミョウバン12水和物やカリウムミョウバン12水和物は、市場で幅広く流通して入手し易く、安価である。
また、本実施形態の潜熱蓄熱材組成物1では、無機塩水和物10は、硫酸塩であり、硫酸塩は、硫酸アルミニウム水和物(Al(SO・nHO)(2≦n)(潜熱蓄熱材10E)であること、を特徴とする。この特徴により、硫酸アルミニウム水和物は、蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材10Eとなる上、添加した融点調整剤13(または、融点調整剤13及び融点調整剤14の両方の添加剤)が潜熱蓄熱材10Eの水和水に溶解することで、負の溶解熱(吸熱)が発生する。同時に、融点調整剤13及び融点調整剤14の融解に伴う潜熱(吸熱)が発生する場合もある。そのため、潜熱蓄熱材10Eを主成分とした潜熱蓄熱材組成物1Eでは、融点が、潜熱蓄熱材10E単体の融点に比べ、15〜30℃程度低くなると共に、これらの吸熱により、200kJ/kgを上回る高い熱量の熱を蓄えることができる。特に、潜熱蓄熱材組成物1Eは、主成分である潜熱蓄熱材10Eの水和水(水和水12)以外、全く水を含有させずに構成されているため、硫酸アルミニウムの一部が、添加した水に起因して溶解し、潜熱蓄熱材組成物1Eが変性、変質してしまうこともない。
以上において、本発明を実施形態の実施例1〜5、及び比較例1〜5に即して説明したが、本発明は上記実施形態の実施例1〜5、及び比較例1〜5に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
(1)例えば、実施形態の実施例1〜5、及び比較例1〜5では、潜熱蓄熱材組成物1に融点調整剤13(融点調整剤13A、または融点調整剤13B)を、図4,7,12,17,20に示す配合比率でそれぞれ添加したが、融点調整剤13の配合比率はあくまでも例示に過ぎず、潜熱蓄熱材組成物の使用上、支障が生じなければ、第1の添加剤及び第2の添加剤とも、潜熱蓄熱材組成物に対する融点調整剤の配合比率は、適宜変更可能である。
(2)また、実施形態では、融点調整剤13の配合により、潜熱蓄熱材組成物1の融点を、実施例1の場合で50℃前後、実施例2の場合で40℃前後、実施例3の場合で約65〜75℃の温度帯域、実施例4の場合で82℃前後、実施例5の場合で約75〜90℃の温度帯域と、それぞれ所望の温度帯域に調整したが、融点調整剤により調整される潜熱蓄熱材組成物の融点は、これらの温度帯域に限定されるものではなく、潜熱蓄熱材組成物から放熱される熱を利用する熱供給先で、必要とする熱源の温度に対応した温度に調整されたものであれば良い。
(3)また、実施形態において、潜熱蓄熱材を、実施例1では、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(水和水は2個)とし、実施例2では、酢酸ナトリウム3水和物(水和水は3個)とし、実施例3では、二リン酸ナトリウム10水和物(水和水は10個)とし、実施例4では、アンモニウムミョウバン12水和物(水和水は12個)とし、実施例5では、硫酸アルミニウム水和物(水和水が14〜18個)とした。
しかしながら、本発明の潜熱蓄熱材組成物に構成される潜熱蓄熱材は、実施形態に係る潜熱蓄熱材以外にも、例えば、風解がなく、水和水を10個含む炭酸ナトリウム10水和物(NaCO・10HO)等の炭酸塩、水に易溶な硝酸マグネシウム(Mg(NO・6HO)等の硝酸塩、酒石酸ナトリウム2水和物(Na・2HO)や酒石酸カリウムナトリウム4水和物(KNaC・4HO)等の酒石酸塩、ホウ酸ナトリウム8水和物(Na(OH)・8HO)、四ホウ酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)等のホウ酸塩のように、n(2≦n)個の水和水を含む無機塩水和物であれば良い。
なお、本発明の潜熱蓄熱材組成物に構成される潜熱蓄熱材とは異なり、n(2≦n)個の水和水を含む無機塩水和物ではないが、例えば、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム(CHNaOS)(水和水は1/2個)等のヒドロキシメタンスルホン酸塩を、潜熱蓄熱材として用いることもできる。すなわち、潜熱蓄熱材の水和水1molあたり、糖アルコール類に属する物質の配合比率xが、前述した式(2)において、0<x≦1を満たせば、2個未満の水和水を含む無機塩水和物であっても、潜熱蓄熱材として用いることはできる。
1,1A,1B,1C,1D,1E 潜熱蓄熱材組成物
10,10A,10B,10C,10D,10E 潜熱蓄熱材(無機塩水和物)
13,13A,13B 融点調整剤(糖アルコール類に属する物質、第1の添加剤)
14 融点調整剤(第2の添加剤)

Claims (14)

  1. 蓄熱または放熱を行う潜熱蓄熱材に、該潜熱蓄熱材の物性を調整する添加剤を配合してなる潜熱蓄熱材組成物において、
    前記潜熱蓄熱材は、n(2≦n)個の水和水を含む少なくとも一種の無機塩水和物からなること、
    前記添加剤は、前記潜熱蓄熱材の融点を調整する融点調整剤であり、前記潜熱蓄熱材との溶解で、負の溶解熱を発生する物性を有する物質であること、
    前記融点調整剤は、第1の添加剤として、糖アルコール類に属する物質を少なくとも含んでいること、
    当該潜熱蓄熱材組成物の融液は、前記潜熱蓄熱材に含む水和水と、前記融点調整剤に含む糖アルコールとの溶解により、前記潜熱蓄熱材と前記融点調整剤とを混合してなること、
    当該潜熱蓄熱材組成物全体のうち、前記糖アルコール類に属する物質は、前記潜熱蓄熱材の前記水和水1molあたり、式(1),(2)を満たす濃度であること、
    Figure 2019123832
    0.01≦x≦1 ・・・式(2)
    但し、
    :水和水1molに対する「糖アルコール類に属する物質」のモル数[mol/mol]
    :潜熱蓄熱材組成物に含有する「糖アルコール類に属する物質」の質量[g]
    :「糖アルコール類に属する物質」の分子量[g/mol]
    N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
    wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
    ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
    ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
    を特徴とする。
  2. 請求項1に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記糖アルコール類に属する物質は、エリスリトール(C10)、キシリトール(C12)、またはマンニトール(C14)のうち、少なくともいずれか一つを含むものであること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  3. 請求項1または請求項2に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記第1の添加剤とは別の前記添加剤で、第2の添加剤として、硫酸塩が配合されていること、
    当該潜熱蓄熱材組成物全体のうち、前記硫酸塩は、前記潜熱蓄熱材の前記水和水1molあたり、式(3),(4)を満たす濃度であること、
    但し、
    Figure 2019123832
    0≦x≦0.1 ・・・式(4)
    :水和水1molに対する硫酸塩のモル数[mol/mol]
    :潜熱蓄熱材組成物に、第2の添加剤として含有する硫酸塩の質量[g]
    :第2の添加剤である硫酸塩の分子量[g/mol]
    N:潜熱蓄熱材組成物を構成する潜熱蓄熱材の総数
    wk:潜熱蓄熱材の水和数(k=1,2,・・・,N)
    ak:潜熱蓄熱材組成物に含有する潜熱蓄熱材の質量[g](k=1,2,・・・,N)
    ak:潜熱蓄熱材の分子量[g/mol](k=1,2,・・・,N)
    を特徴とする。
  4. 請求項3に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記硫酸塩は、硫酸アンモニウム((NHSO)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記無機塩水和物は、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  6. 請求項5に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記ヒドロキシメタンスルフィン酸塩は、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム2水和物(CHNaOS・2HO)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  7. 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記無機塩水和物は、酢酸塩であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  8. 請求項7に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記酢酸塩は、酢酸ナトリウム3水和物(CHCOONa・3HO)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  9. 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記無機塩水和物は、二リン酸塩(ピロリン酸塩)またはリン酸塩であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  10. 請求項9に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記二リン酸塩は、二リン酸ナトリウム10水和物(Na・10HO)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  11. 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記無機塩水和物は、ミョウバン水和物であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  12. 請求項11に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記ミョウバン水和物は、アンモニウムミョウバン12水和物(AlNH(SO・12HO)、または、カリウムミョウバン12水和物(AlK(SO・12HO)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  13. 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記無機塩水和物は、硫酸塩であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
  14. 請求項13に記載する潜熱蓄熱材組成物において、
    前記硫酸塩は、硫酸アルミニウム水和物(Al(SO・nHO)(2≦n)であること、
    を特徴とする潜熱蓄熱材組成物。
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