JP2019123000A - フェライト系ステンレス鋼板の溶接構造体および溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】母材となるフェライト系ステンレス鋼板の熱影響部における、腐食孔の発生・成長を効果的に抑制する。【解決手段】第1フェライト系ステンレス鋼板(2)と第2フェライト系ステンレス鋼板(2)とを少なくとも含む溶接構造体(1)であって、第1フェライト系ステンレス鋼板(2)と第2フェライト系ステンレス鋼板(2)との間に、オーステナイト単相組織のステンレス鋼の溶接金属部(3)が形成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、フェライト系ステンレス鋼板の溶接構造体、および当該溶接構造体の溶接方法に関する。
複数のフェライト系ステンレス鋼板を含む溶接構造体を溶接する方法としては、2枚のフェライト系ステンレス鋼板同士を突き合せて溶接する方法や、フェライト系ステンレス鋼の溶加材を用いて溶接する方法などが従来から知られている。あるいは、フェライト系ステンレス鋼板よりも強度・耐食性に優れたステンレス鋼の溶加材を用いて溶接する方法も、一般に採用されている。
なお、ステンレス鋼板同士を溶接するとき、またはステンレス鋼板と、ステンレス鋼の鋼材とを溶接するときに溶融する部分を溶接金属部と称する。溶接時の熱履歴によって鋼板表面に酸化スケールが形成された母材の部分を熱影響部と称する。熱影響部は、母材と溶接金属部との境界付近に生じ、特にステンレス鋼材の熱影響部においては、一般に耐食性が劣化する。これら溶接金属部と熱影響部とをまとめて溶接部と称する。
例えば、特許文献1には、TiおよびAlを複合添加することで溶接時のCrの酸化ロスを抑制し、溶接部の耐食性低下を改善したフェライト系ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献2には、Arバックガスシールを行わずにTIG溶接を施す場合において、溶接部の耐食性低下を抑制する方法が開示されている。具体的には、21質量%を超えるCrを含有するフェライト系ステンレス鋼であって、NiおよびCuを添加することで、フェライト系ステンレス鋼同士をTIG溶接した時、当該ステンレス鋼の裏面における熱影響部の耐食性を改善したフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
さらに、特許文献3には、Si、Al、およびTi等の元素を添加することで、Arバックガスシールを実施しない場合においても溶接部の耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼が得られるとの記載がある。
特開平5−70899号公報 特開2007−302995号公報 特開2013−204128号公報
しかしながら、2枚のフェライト系ステンレス鋼板同士を突き合せて溶接する方法、およびフェライト系ステンレス鋼の溶加材を用いて溶接する方法については、溶接金属部に鋭敏化が生じて耐食性が低下してしまう。また、熱影響部に深い腐食孔が発生してしまう。一方、フェライト系ステンレス鋼板よりも強度・耐食性に優れたステンレス鋼の溶加材を用いて溶接する方法を採用した場合、溶接金属部の優れた耐食性は担保できるものの、依然として熱影響部に深い腐食孔が発生していた。
さらに、特許文献1のフェライト系ステンレス鋼は、Arバックガスシールを行わずにTIG溶接を施した場合、Crの酸化ロスを十分に抑制できず、溶接部の耐食性が大幅に低下してしまう。特許文献2のフェライト系ステンレス鋼は、溶接部に隙間が形成されていたり、Cuの含有量が適正範囲(0.1質量%〜1.0質量%)から外れていたりすると、十分な耐食性改善効果が得られず、深い腐食孔が発生する場合がある。また、特許文献1〜3に開示された技術では、腐食が問題となるのは溶接部付近のみであるにも関わらず、溶接構造体全体をより高価な材料に替える必要があり、必要以上にコストがかかってしまう。
本発明の一態様は、上記の各問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶接金属部の耐食性を一定程度維持しつつ、母材となるフェライト系ステンレス鋼板の熱影響部における腐食孔の発生・成長を効果的に抑制することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る溶接構造体は、第1フェライト系ステンレス鋼板と第2フェライト系ステンレス鋼板とを少なくとも含む溶接構造体であって、前記第1フェライト系ステンレス鋼板と前記第2フェライト系ステンレス鋼板との間には、オーステナイト単相組織のステンレス鋼の溶接金属部が形成されている。
上記の構成によれば、溶接金属部がオーステナイト単相組織のステンレス鋼で形成されている。したがって、本発明の一態様に係る溶接構造体が腐食環境にて使用されたとき、溶接金属部において第1・第2フェライト系ステンレス鋼板(母材)よりも早く腐食が発生し始め、発生後は腐食孔が緩やかに成長する。また、溶接金属部において腐食孔が成長している間は、第1・第2フェライト系ステンレス鋼板の熱影響部において腐食孔がほとんど発生・成長せず、溶接金属部には浅い腐食孔しか形成されない。
以上より、溶接金属部の耐食性を一定程度維持しつつ、第1・第2フェライト系ステンレス鋼板の熱影響部における腐食孔の発生・成長を効果的に抑制することができる。
また、本発明の一態様に係る溶接方法は、オーステナイト系ステンレス鋼の溶加材を用いた、第1フェライト系ステンレス鋼板と第2フェライト系ステンレス鋼板とを少なくとも含む溶接構造体の溶接方法であって、(i)前記第1フェライト系ステンレス鋼板および前記第2フェライト系ステンレス鋼板に対する前記溶加材の溶け込み率、および(ii)前記溶加材の成分組成の少なくとも一方が、前記第1フェライト系ステンレス鋼板と前記第2フェライト系ステンレス鋼板との間にオーステナイト単相組織のステンレス鋼の溶接金属部を形成するように調整されている。
上記の構成によれば、溶接金属部の耐食性を一定程度維持しつつ、第1・第2フェライト系ステンレス鋼板の熱影響部における腐食孔の発生・成長を効果的に抑制できる溶接構造体の溶接方法を実現することができる。
また、本発明の一態様に係る溶接方法は、(i)前記溶加材の前記溶け込み率、および(ii)前記溶加材の前記成分組成の少なくとも一方が、前記溶接金属部において、Cr当量αが16以上かつNi当量βが12以上になるとともに、前記Cr当量αと前記Ni当量βとの関係がα≧1.1×β−8.2になるように調整されていることが好ましい。
上記の構成によれば、溶接構造体が腐食環境にて使用されたときに、溶接金属部にて優先的に腐食孔が発生・成長することから、第1・第2フェライト系ステンレス鋼の熱影響部における腐食孔の発生・成長を、より効果的に抑制することができる。
本発明の一態様によれば、溶接金属部の耐食性を一定程度維持しつつ、第1・第2フェライト系ステンレス鋼板の熱影響部における腐食孔の発生・成長を効果的に抑制することができる。
(a)は、従来の溶接構造体の断面図である。(b)は、本発明の一実施形態に係る溶接構造体の断面図である。 本発明の一実施形態に係る溶接構造体の成形材料の成分組成を示す表である。 腐食孔内模擬環境下に各種試験片を配置した場合アノード分極曲線であって、(a)は単独試験片単体を配置した場合のアノード分極曲線、(b)は接続試験片を配置した場合のアノード分極曲線を示すグラフである。 本発明の一実施形態、および比較例に係る溶加材の成形材料の成分組成を示す表である。 本発明の一実施形態、および比較例に係る母材の成形材料の成分組成を示す表である。 本発明の一実施形態、および比較例に係る溶接構造体の耐食性評価等を示す表である。
〔溶接構造体の概要〕
母材と溶接部とが同一のステンレス鋼材の場合、一般的に、溶接金属部における耐食性低下の程度に比べて熱影響部における耐食性低下の程度の方が大きい。したがって、耐食性が最も低下する母材の熱影響部に大きく深い腐食孔が発生する。ここで、溶接金属部とは、溶加材などが溶融した溶接金属によって形成される部分で、隣り合う2つの母材の接合箇所に形成される。また、熱影響部とは、溶接時の熱履歴によって鋼板表面に酸化スケールが形成された母材の部分であり、当該母材と溶接金属部との境界付近の箇所に生じる。特にステンレス鋼材の熱影響部においては、一般に耐食性が劣化する。これら溶接金属部と熱影響部とをまとめて溶接部と称する。
例えば、図1の(a)に示すように2つのフェライト系ステンレス鋼板(第1フェライト系ステンレス鋼板、第2フェライト系ステンレス鋼板)2を突合せて溶接した場合、接合箇所にフェライト単相組織の溶接金属部300が形成された溶接構造体100となる。この溶接構造体100において、2つのフェライト系ステンレス鋼板2の熱影響部2b−1には、大きく深い腐食孔2a−1が発生する。
その点、図1の(b)に示すように、本実施形態に係る溶接構造体1は、母材であるフェライト系ステンレス鋼板2と異なる組織のステンレス鋼の溶加材(不図示)を用いて溶接金属部3が形成されている。具体的には、オーステナイト系ステンレス鋼の溶加材を用いて溶接金属部3が形成されており、当該溶接金属部3はオーステナイト単相組織となっている。本実施形態に係る溶接構造体1は溶接部を含む構造体全般に採用される。
一般的に、フェライト系ステンレス鋼よりもオーステナイト系ステンレス鋼の方が腐食孔の発生時期が早い傾向がある。そのため、溶接構造体1が腐食環境に晒される過程で、溶接金属部3の方が2つのフェライト系ステンレス鋼板2よりも早く腐食孔が発生し始める。また、溶接金属部3で腐食孔3aが発生した後は、当該腐食孔3aが緩やかに成長する。
さらに、腐食孔3aが成長している間は、以下の2点に起因して腐食孔2aがほとんど発生・成長しない。すなわち、(A)溶接構造体1全体としてのカソード電流の総量が変わらないところ、アノード電流が腐食孔3aの発生・成長によって余分に消費されることから、結果として腐食孔2aの発生・成長が抑制される。(B)腐食孔3aの発生によって溶接金属部3の電極電位が卑となることにより、溶接金属部3と熱影響部2bとの間に電位差が生じ、ガルバニック的に熱影響部2bにおける腐食孔2aの発生・成長が抑制される。
以上の過程を経て、溶接構造体1が腐食環境に置かれた後には、図1の(b)に示すように熱影響部2bに腐食孔2aが、溶接金属部3に腐食孔3aがそれぞれ形成される。腐食孔2a・3aともに同程度の大きさ・深さであり、図1の(a)に示す腐食孔2a−1と比べて大きさが大幅に小さくなっている。またその深さも大幅に浅くなっている。
〔溶接構造体の成形材料の成分組成〕
本実施形態に係る溶接構造体1には、母材(フェライト系ステンレス鋼板2)として図2の表におけるA鋼の鋼板が用いられており、溶接金属部3の組成としてC鋼の組成が想定されている。なお、母材としてB鋼の鋼板を用いた場合では、溶接金属部3の組成としてD鋼の組成が想定される。
ここで、A鋼はおよびB鋼はCrの量が異なるフェライト系ステンレス鋼である。また、C鋼はSUS304L相当鋼であり、D鋼はSUS316L相当鋼であり、溶接金属部の組成を予測したものである。溶接構造体1を構成する上述の母材および溶接金属部は、それぞれ以下の成分を有する。
Crは、耐食性を確保する上で重要なステンレス鋼の主要成分である。また、酸化皮膜中のCr酸化物の割合を増大させることは、還元されにくいSi酸化物、Ti酸化物、Al酸化物などの存在割合を減少させるためにも有効である。本実施形態における母材のCr含有量は17.96質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のCr含有量は18.48質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のCr含有量は22.09質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のCr含有量は17.48質量%である。十分な耐食性を確保するためにはCr含有量は15質量%以上が好ましく、より好ましくは18質量%以上である。
Niは、オーステナイト単相組織を得るために有効な元素である。また、腐食が進行している腐食孔内でのメタルの活性溶解速度を遅くし、腐食孔の成長を抑制する作用がある。本実施形態における母材のNi含有量は0.16質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のNi含有量は10.48質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のNi含有量は0.16質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のNi含有量は12.85質量%である。
Siは、例えばArガスシールを行ってTIG溶接する場合に溶接部の耐食性改善に有効に作用する。また、Siは、脱酸剤やその他の目的でオーステナイト系ステンレス鋼に添加されるとともに、フェライト系ステンレス鋼の硬質化にも寄与する。本実施形態における母材のSi含有量は0.09質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のSi含有量は0.53質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のSi含有量は0.25質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のSi含有量は0.69質量%である。
MoはCrと同じく、安定した耐食性を確保するための基本成分であり、主として海水や各種媒質に対する耐食性を向上させるための成分である。本実施形態における母材のMo含有量は0.95質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のMo含有量は0.44質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のMo含有量は1.17質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のMo含有量は2.74質量%である。
Cは、鋼中に不可避に含まれる元素である。Cの含有量を低減すると鋼は軟質化し、加工性が向上する。また、炭化物の生成が抑制され、溶接性および溶接金属部3の耐食性が向上する。そのため、Cの含有量は低いほうがよい。本実施形態における母材のC含有量は0.006質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のC含有量は0.015質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のC含有量は0.011質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のC含有量は0.018質量%である。
NもCと同様、鋼中に不可避に含まれる元素である。Nの含有量を低減すると鋼は軟質化し、加工性が向上する。また、窒化物の生成が抑制され、溶接性および溶接金属部3の耐食性が向上する。そのため、Nの含有量は低いほうがよい。本実施形態における母材のN含有量は0.013質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のN含有量は0.016質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のN含有量は0.012質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のN含有量は0.009質量%である。
Mnは、ステンレス鋼の脱酸剤として用いられる。しかし、Mnは不動態皮膜中のCr濃度を低下させ、耐食性低下を招く要因となる。したがって、Mnの含有量は低い方がよい。本実施形態における母材のMn含有量は0.26質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のMn含有量は1.52質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のMn含有量は0.16質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のMn含有量は1.02質量%である。
Pは、母材および溶接金属部3の靱性を損なうので、その含有量は低い方がよい。本実施形態における母材のP含有量は0.034質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のP含有量は0.031質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のP含有量は0.030質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のP含有量は0.029質量%である。
Sは、孔食の起点となり易いMnSを形成して耐食性を低下させる要因となることから、その含有量は低い方がよい。本実施形態における母材のS含有量は0.000質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のS含有量は0.003質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のS含有量は0.001質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のS含有量は0.002質量%である。
Tiは、例えばArバックガスシールを行う従来のTIG溶接において、溶接部の耐食性に寄与する元素である。本実施形態における母材のTi含有量は0.22質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のTi含有量は0.001質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のTi含有量は、0.19質量%である。
Alは、溶接時の加熱で熱影響部2b等の表面にAl酸化物皮膜を生成することにより、Crの酸化ロスを防止する。一方、Alを必要以上に添加すると表面品質の低下や溶接性の低下を招くことから、Alの含有量はあまり高くない方がよい。本実施形態における母材のAl含有量は、0.043質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のAl含有量は0.089質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のAl含有量は0.006質量%である。
Nbは、C・Nとの親和性が強く、フェライト系ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するのに有効な元素である。一方、Nbを必要以上に添加すると溶接高温割れが生じ、溶接金属部3の靱性も低下することから、その含有量はあまり高くない方がよい。本実施形態における母材のNb含有量は0.256質量%であり、溶接金属部想定のC鋼のNb含有量は0.035質量%である。なお、B鋼の母材を用いた場合のNb含有量は0.203質量%であり、溶接金属部想定のD鋼を用いた場合のNb含有量は0.022質量%である。
その他の成分元素については、熱影響部2bおよび溶接金属部3の耐食性の観点からは特にこだわる必要はなく、用途に応じて種々の成分組成を採用することができる。
また、上述した各元素の含有量等はあくまでも一例である。すなわち、フェライト系ステンレス鋼の母材と、オーステナイト単相組織のステンレス鋼の溶接金属部と、で構成される溶接構造体を形成できるのであれば、A・B鋼以外のフェライト系ステンレス鋼からなる母材を用いてもよい。同様に、C・D鋼以外の溶接金属部の組織となる溶加材を用いてもよい。
本実施形態のような成分組成の母材(A鋼)を用いても、より高価な母材(B鋼)を用いた場合に形成される腐食孔2a・3aと略同一の大きさ・深さの腐食孔2a・3aが形成される(図1の(b)参照)。
したがって、本実施形態に係る溶接構造体1を採用することにより、製造コストを抑制しつつ、溶接金属部3の耐食性を一定程度維持して熱影響部2bにおける腐食孔2aの発生・成長を効果的に抑制することができる。
〔フェライト系ステンレス鋼板の溶接方法〕
本実施形態に係る溶接構造体1は、上述のようにオーステナイト系ステンレス鋼の溶加材を用いて溶接金属部3を形成し、2つのフェライト系ステンレス鋼板2を接合することによって完成する。具体的には、例えばArガスシールを行ったTIG溶接によって溶接金属部3を形成し、2つのフェライト系ステンレス鋼板2を接合する。また、TIG溶接にかぎらず、MIG溶接など、溶接時において溶接金属部3に他成分を溶融させることができるのであればどのような溶接方法を採用してもよい。
上述のTIG溶接の際に用いられる溶加材は、溶接構造体1に形成された溶接金属部3がオーステナイト単相組織となるように工夫する必要がある。本実施形態では、溶接金属部3がオーステナイト単相組織になり易い当該溶接金属部3のCr当量αおよびNi当量βを、シェフラー組織図(不図示)を用いて求めた。そして、求めたCr当量αおよびNi当量βの溶接金属部3になるような溶加材を選定し、TIG溶接を行った。
具体的には、溶接金属部3において、Cr当量αが16以上かつNi当量βが12以上になるとともに、Cr当量αとNi当量βとの関係がα≧1.1×β−8.2になるような溶加材を選定した。選定された溶加材は、(i)2つのフェライト系ステンレス鋼板2に対する溶加材の溶け込み率、および(ii)溶加材の成分組成の双方が、上述のようなCr当量α、Ni当量β、およびCr当量αとNi当量βとの関係になるように調整されている。
ここで、シェフラー組織図を用いてCr当量αおよびNi当量βを求める場合の計算式は、下記の式1および2となる。式1および2において、xは溶加材の溶け込み率を表す。
(式1)
α=x×(溶加材のCr当量)+(1-x)×(母材のCr当量)
(式2)
β=x×(溶加材のNi当量)+(1-x)×(母材のNi当量)
また、溶加材および母材のそれぞれについて、Cr当量は下記の式3により算出され、Ni当量は下記の式4により算出される。
(式3)
Cr当量=Cr質量%+Mo質量%+1.5×Si質量%+0.5×Nb質量%
(式4)
Ni当量=Ni質量%+30×C質量%+0.5×Mn質量%
なお、上述のCr当量αおよびNi当量βの計算方法はあくまで一例であり、この場合に限定されない。言い換えれば、(i)2つのフェライト系ステンレス鋼板2に対する溶加材の溶け込み率、および(ii)溶加材の成分組成の少なくとも一方を用いて、Cr当量αおよびNi当量βを算出できる計算式であればどのような計算式を用いてもよい。
また、溶接金属部3において、Cr当量αが16以上かつNi当量βが12以上になるとともに、Cr当量αとNi当量βとの関係がα≧1.1×β−8.2になるような溶加材を選定することも必須ではない。言い換えれば、溶接金属部3がオーステナイト単相組織となるように、(i)上記溶け込み率、および(ii)上記成分組成の少なくとも一方が調整された溶加材であればどのような溶加材を選定してもよい。
〔測定例〕
<測定方法>
従来の同材溶接、および本実施形態に係る異種溶加材溶接のどちらが先に腐食孔が発生するかを確かめるべく、腐食孔内の環境を再現した腐食孔内模擬環境下に各種試験片を配置して電位を印加し、アノード分極曲線測定を行った。具体的には、電解漕(不図示)に温度が30℃の20%NaCl溶液(HClを用いてpH1となるように調整)を入れて、この溶液中に各種試験片を浸し、当該各種試験片に電位を印加した。この溶液にはAr脱気を施し、掃引速度を20mV/minとした。
各種試験片については、(i)フェライト系ステンレス鋼の単独試験片、(ii)オーステナイト系ステンレス鋼の単独試験片、および(iii)フェライト系ステンレス鋼の試験片とオーステナイト系ステンレス鋼の試験片とを接続した接続試験片の3種類を用いた。また、(i)および(ii)の単独試験片は、15mm×20mmに切り出した鋼板を、電極面積1cmを残してシリコンシールにより絶縁被覆したものである。(iii)の接続試験片は、(i)および(ii)の単独試験片を配線によって電気的に接続したものである。
<測定結果>
以下、A鋼の単独試験片単体、C鋼の単独試験片単体、およびA鋼の単独試験片とC鋼の単独試験片とを接続した接続試験片のそれぞれを電解漕の溶液に浸して、電位を印加したケースを例に挙げて説明する。
図3の(a)に示すように、A鋼の単独試験片単体に電位を印加した場合、印加電位が約−0.4Vvs.Ag/AgCl以下のときには電流密度が急激に上昇した。一方、印加電位が約−0.4Vvs.Ag/AgClを超えた辺りから電流密度が急激に落ち込み、印加電位が約0.2Vvs.Ag/AgClのときに電流密度が最低値になることが判った。
また、C鋼の単独試験片単体に電位を印加した場合、印加電位が約−0.3Vvs.Ag/AgCl以下のときには電流密度が急激に上昇した。一方、印加電位が約−0.3Vvs.Ag/AgClを超えた辺りから電流密度が急激に落ち込み、印加電位が約−0.1Vvs.Ag/AgClのときに電流密度が最低値になることが判った。
次に、A鋼の単独試験片とC鋼の単独試験片とを接続した接続試験片に電位を印加した場合、電流密度の変化は、図3の(b)に示すように、C鋼の単独試験片単体に電位を印加した場合と略同一の傾向を示すことが判った。
ここで、図3の(a)および(b)のグラフにおける、電流密度が最低値になるときの印加電位よりも若干高い値の印加電位で、各種試験片に腐食孔が発生し始める。この例では、A鋼の単独試験片単体に電位を印加した場合は、印加電位が約0.29Vvs.Ag/AgClで腐食孔が発生する。また、C鋼の単独試験片単体に電位を印加した場合は、印加電位が約−0.055Vvs.Ag/AgClで腐食孔が発生する。さらに、A鋼の単独試験片とC鋼の単独試験片とを接続した接続試験片に電位を印加した場合、印加電位が約−0.05Vvs.Ag/AgClで腐食孔が発生する。
上述のように、A鋼の単独試験片単体の構造は、従来の「同材溶接」における熱影響部と溶接金属部との接触態様と類似している。また、A鋼の単独試験片とC鋼の単独試験片との接続態様は、「異種溶加材溶接」における熱影響部2bと溶接金属部3との接触態様と類似している。したがって、溶接構造体1の溶接金属部3の腐食孔3aの発生時期は、熱影響部2bの腐食孔2aが発生し得る時期より早いものと推測される。
溶接金属部3にて腐食孔3aが発生して以降は、当該溶接金属部3で腐食孔が成長する一方、熱影響部2bでは腐食性の発生が抑制されることから、熱影響部2bにて腐食孔2aが発生・成長し難くなる。結果として、熱影響部2bには、溶接金属部3の腐食孔3aよりも小さくて浅い腐食孔2aしか形成されないものと推測される。
〔実施例〕
<実施方法>
図4に示すφ1.2mm径の溶加材a〜gを用いて、図5に示すE鋼〜G鋼のそれぞれで形成された2枚の鋼板を冶具に固定し、Arバックガスシールを施して、TIG溶接にて突合せ溶接を行った。TIG溶接の条件は、電流が40A〜50A、溶接速度が100mm/min、トーチArガス流量10L/min、電極径φ1.6mmである。溶加材の溶け込み率xは、供給速度を変化させることにより調整した。
溶接金属部のオーステナイト相率は、フェライトスコープによるフェライト分率の測定値が1%未満の場合をオーステナイト単相と判断した。
また、溶接部の耐食性評価として、塩酸酸性6%塩化第二鉄溶液を用いた浸漬試験を行った。温度は30℃とし、浸漬時間は2時間とした。浸漬試験の結果、熱影響部の腐食孔が溶接金属部の腐食孔よりも浅く、かつ溶接金属部の最大侵食深さが0.1mm以下であったものを耐食性評価において合格(図6中の「○」)と判定した。
<実施結果>
図6に示すNo.8、9、10、11および12の溶接構造体は、溶加材a〜dの溶け込み不足により、溶接金属部がオーステナイト単相組織とならず、溶接金属部において0.1mmを超える腐食孔が発生した。また、No.13の溶接構造体は、溶加材eのNi当量が低いため、溶け込み率xを増加させても溶接金属部がオーステナイト単相組織とならず、溶接金属部において0.1mmを超える腐食孔が発生した。
一方、No.14、および15の溶接構造体は、鋼板と同材の溶加材を用いて溶接を行ったものである。No.14および15の溶接構造体は、従来のように熱影響部において0.1mmを超える腐食孔が発生した。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1 溶接構造体
2 フェライト系ステンレス鋼板(第1フェライト系ステンレス鋼板、第2フェライト系ステンレス鋼板)
3 溶接金属部
α 溶接金属部のCr当量
β 溶接金属部のNi当量

Claims (3)

  1. 第1フェライト系ステンレス鋼板と第2フェライト系ステンレス鋼板とを少なくとも含む溶接構造体であって、
    前記第1フェライト系ステンレス鋼板と前記第2フェライト系ステンレス鋼板との間には、オーステナイト単相組織のステンレス鋼の溶接金属部が形成されていることを特徴とする溶接構造体。
  2. オーステナイト系ステンレス鋼の溶加材を用いた、第1フェライト系ステンレス鋼板と第2フェライト系ステンレス鋼板とを少なくとも含む溶接構造体の溶接方法であって、
    (i)前記第1フェライト系ステンレス鋼板および前記第2フェライト系ステンレス鋼板に対する前記溶加材の溶け込み率、および(ii)前記溶加材の成分組成の少なくとも一方が、前記第1フェライト系ステンレス鋼板と前記第2フェライト系ステンレス鋼板との間にオーステナイト単相組織のステンレス鋼の溶接金属部を形成するように調整されていることを特徴とする溶接方法。
  3. (i)前記溶加材の前記溶け込み率、および(ii)前記溶加材の前記成分組成の少なくとも一方が、前記溶接金属部において、Cr当量αが16以上かつNi当量βが12以上になるとともに、前記Cr当量αと前記Ni当量βとの関係がα≧1.1×β−8.2になるように調整されていることを特徴とする請求項2に記載の溶接方法。
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