JP2019119664A - ケイ酸マグネシウム粉末及びその製造方法並びに電子写真用トナー外添剤 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は以下の態様を含む。
[1]化学式Mg(2−x)SiO(4−x)で表され、xが0.05以上0.50以下であるフォルステライトの結晶構造を有するケイ酸マグネシウム粉末。
[2]一次粒子の平均粒径が20nm以上150nm以下である、前記[1]に記載のケイ酸マグネシウム粉末。
[3]アルキル基の炭素数が3以上10以下であるアルキルシランを含有する前記[1]または[2]に記載のケイ酸マグネシウム粉末。
[4]前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のケイ酸マグネシウム粉末を含む電子写真用トナーの外添剤。
[5]前記[4]の電子写真用トナーの外添剤を含む電子写真用トナー。
[6]化学式Mg2SiO4で表されるフォルステライトの結晶構造を有するケイ酸マグネシウム粉末を含むスラリーに、酸を添加して、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)(式中、xは0.05以上0.50以下である)で表されるケイ酸マグネシウム粉末を得る組成調整工程を含む、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)で表され、xが0.05以上0.50以下であるフォルステライトの結晶構造を有するケイ酸マグネシウム粉末の製造方法。
[7]前記組成調整工程で得られるケイ酸マグネシウム粉末に、アルキルシランを混合して、ケイ酸マグネシウム粉末の表面を処理する表面処理工程を更に含む、前記[6]に記載のケイ酸マグネシウム粉末の製造方法。
マグネシウム原料には、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム及び塩基性炭酸マグネシウムが使用できるが、反応性の良い水酸化マグネシウムが好ましい。ケイ素原料には、非晶質シリカ及び結晶性シリカが使用できるが、本願のケイ酸マグネシウム粉末を得るには微粒子の非晶質シリカがふさわしい。また、MgO・SiO2の化学式で表されるステアタイトをシリカ原料として使用しても良い。
マグネシウム原料及びケイ素原料を、MgO/SiO2モル比が2.0以上2.2以下の割合で混合する。MgO/SiO2モル比が2.0未満であると、未反応の二酸化ケイ素が残存しやすくなるため好ましくない。MgO/SiO2モル比が2.2を超えても過剰の酸化マグネシウムはMgO/SiO2モル比の調整工程で除去できるが、いたずらに諸原料を消費することになるため好ましくない。混合方法は、乾式、湿式あるいはその両方を組み合わせて行うことができる。適切な混合条件は、原料の性状により異なるが、混合物の一部を採取し、これを800℃以上で焼成して得られる産物のX線回折測定により、主構成相がフォルステライトとなる条件とすることが好ましい。原料混合状態が十分でない場合は不純物相として二酸化ケイ素が明確に観察される。したがって、混合条件は二酸化ケイ素相が観察されないように設定する。
上記の原料混合物を、フォルステライト相が主成分として得られる温度並びに保持時間で焼成する。なお、焼成温度及び時間は、炉のサイズ、被焼成物の仕込み量、粉末の厚みにより適宜調整する必要がある。冷却は、炉内で自然冷却するか、炉外に排出し放冷すれば良く、特に限定しない。適切な焼成温度及び時間は、原料の性状により異なるが、焼成物のX線回折測定により、フォルステライト相の単相が観察される条件とすることが好ましい。ただし、混合時のMgO/SiO2モル比を2.0よりも大きくした場合には、2.0を超える分に相当する酸化マグネシウムが不純物相として残るが、Cuを対陰極とした本焼成物のX線回折測定において、2θ=36.5°に現れるフォルステライトの回折線強度(A)と2θ=42.7°に現れる酸化マグネシウムに由来する最も強い回折線強度(B)との比率(B/A)が0.2以下であることが好ましい。
焼成物を、1種類か2種類以上の粉砕機を組み合わせて粉砕し、一次粒子の平均粒径(個数平均粒径)を20nm以上150nm以下、好ましくは40nm以上120nm以下とする。粉砕は、乾式粉砕でも湿式粉砕でもよい。
本発明の化学式Mg(2−x)SiO(4−x)で表され、xが0.05以上0.50以下であるフォルステライトの結晶構造を有するケイ酸マグネシウム粉末を得るには、乾式粉砕の場合は上記粉砕物を水戻ししてスラリーとし、湿式粉砕の場合はそのままのスラリーに対して、塩酸あるいは希硫酸を添加して、フォルステライト表面層及び表面近傍層のMgO及び未反応のMgOを溶解除去する。塩酸あるいは希硫酸の添加量は、MgOがMgCl2あるいはMgSO4として溶解、除去され、目的の組成を得るのに必要な量あるいはそれよりもやや不足する量が好ましい。目標組成をMg(2−x)SiO(4−x)とし、酸として塩酸を使用する場合に想定される化学変化を式1に示す。使用する酸が塩酸であれば、式1より塩酸使用量を計算することが可能である。なお、yMgOは未反応のMgO分を表す。
本発明のケイ酸マグネシウム粉末は、更に、アルキルシランにより表面処理がなされていてもよい。アルキルシランによる表面処理は、乾式あるいは湿式あるいはその両方で行うことができる。表面処理に用いることができるアルキルシランとしては、i−ブチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシランなどを好適に挙げることができる。
ケイ酸マグネシウムMg(2−x)SiO(4−x)のxは、リガク製多元素同時蛍光X線分析装置Simultix10を用いて分析測定した。あらかじめ重量分析あるいは高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法で分析したMgO/SiO2モル比が既知の標準試料を同時に測定し、測定試料と標準試料の各元素の蛍光X線強度を比較してxを求めた。
ケイ酸マグネシウムの結晶構造の同定は、リガク製X線回折装置RINT−TTRIIIを用いて行った。対陰極にCuを使用し、管電圧及び管電流を50kV及び300mA、発散スリット1/2°、発散縦スリット10mm、散乱スリット1/2°、受光スリット0.15mmの設定で、2θ=10°〜65°の範囲を、5°/minの速度で走査して、X線回折プロファイルを得た。このX線回折プロファイルをX線回折装置付属の電子計算機を用いてJCPDSカードと照合し、結晶構造を同定した。
一次粒子の平均粒径の測定は、透過型電子顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡を用いて5万倍の写真を撮影し、写真視野中の100個以上の粒子についてCarl Zeiss社製Particle Size Analyzerを用いて一次粒子像の面積と等価な面積の円の直径を計測し、それらの個数平均値を一次粒子の平均粒径とした。
測定試料のカーボン含有量をLECO製CS−230炭素・硫黄分析装置を用いて分析し、当該測定値をアルキルシランのカーボン含有率で除した値を質量百分率で表した数値である。更に、アルキルシラン含有量にアルキルシランのケイ素含有率を乗ずることによって、アルキルシランに由来するケイ素含有量を求めることができる。
ケイ酸マグネシウムの粉体帯電量は、東芝ケミカル(株)製粉体帯電量測定装置TB−200を用いて以下の手順で測定した。鉄粉キャリア9.9gとケイ酸マグネシウム粉末試料0.1gを混合し、振とう機で1分間以上混合して測定試料を調製する。目開き400μmのステンレスメッシュを敷いた測定ケージに、キャリアと測定試料の混合物100mg以上500mg以下を投入し、上方からの圧縮空気の吹きつけによりキャリアと測定試料を分離し、ケージに残ったキャリアの電荷量を測定した。このキャリアの電荷量を測定試料の粉末重量で除して、更に−1を乗じた値を測定試料の粉体帯電量とした。
水酸化マグネシウム粉末及び非晶質微粒子シリカ粉末(比表面積:約200m2/g、ニホンアエロジル製親水性ヒュームドシリカ AEROSIL(登録商標)200)をMgO/SiO2モル比で2.05になるようにひょう量し、固形分濃度が100g/Lになるようにイオン交換水中に水戻しして、30分間撹拌して分散させた後、直径0.3mmのイットリア安定化ジルコニアビーズを粉砕媒体としたビーズミルで湿式粉砕混合を行って、スラリーを調製した。このスラリーをブフナーロートを用いて固液分離した後、箱型乾燥機を用いて固形分を110℃で24時間乾燥した。乾燥物をアルミナルツボに投入し、箱形電気炉を用いて850℃で3時間焼成を行った。焼成物を、ハンマーミルを用いて粉砕した後、水戻しして、直径0.3mmのイットリア安定化ジルコニアビーズを粉砕媒体としたビーズミルを用いて粉砕して、フォルステライトスラリーAを得た。フォルステライトスラリーA中のMgO/SiO2モル比は2.05であった。
水酸化マグネシウム粉末及び非晶質微粒子シリカ粉末(比表面積:約200m2/g、ニホンアエロジル製親水性ヒュームドシリカ AEROSIL(登録商標)200)をMgO/SiO2モル比で2.05になるようにひょう量し、固形分濃度が100g/Lになるようにイオン交換水中に水戻しして、30分間撹拌し分散させた後、ビーズミルで湿式粉砕混合を行ってスラリーを調製した。このスラリーをブフナーロートを用いて固液分離した後、箱型乾燥機を用いて固形分を110℃で24時間乾燥した。乾燥物をアルミナルツボに投入し、箱形電気炉を用いて1100℃で3時間焼成を行った。焼成物をハンマーミルを用いて粉砕した後、水戻しして、ビーズミルを用いて粉砕して、フォルステライトスラリーBを得た。フォルステライトスラリーB中のMgO/SiO2物質量比は2.05であった。
合成例1で得たフォルステライトスラリーAの固形分濃度を求めた後、MgO/SiO2モル比を2.05から1.75にするのに必要な、固形分100g当たり0.420molの塩酸を添加した。30分間撹拌した後、ブフナーロートを用いて固液分離し、更にイオン交換水でよく洗浄した。オーブンを用いて固形分を110℃で12時間乾燥した後、ハンマーミル及びジェットミルを用いて粉砕して試料1を得た。
実施例1の方法で、MgO/SiO2モル比を1.75に調整したケイ酸マグネシウムのスラリーを調製し、これを撹拌しながら液温25℃に調整した。別途、酢酸を加えてpH3.3に調整したエタノール水溶液中でi−ブチルトリメトキシシランを加水分解させた。この加水分解溶液を前記のケイ酸マグネシウムのスラリーに対して25wt%添加して15時間撹拌を続けた。この混合スラリーをブフナーロートでろ過した後、固形分をイオン交換水で洗浄し、その洗浄水の電気伝導度が100μS/cm以下になるまで洗浄を継続し、洗浄後、ブフナーロートを用いて固液分離した。箱型乾燥機を用いて固形分を110℃で乾燥して、150℃で2時間熱処理を行った。得られた塊状物を、ハンマーミル及びジェットミルを用いて粉砕して試料2を得た。試料2を蛍光X線回折分析に供して求めた全Si量から、上述のアルキルシラン含有量で求めたアルキルシラン由来のSi量を減じて算出した試料2のアルキルシランに由来するSiを加味しないMgO/SiO2モル比は1.75であり、化学式はMg1.75SiO3.75であり、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)におけるxは0.25である。平均一次粒子径は52nm、粉体帯電量は−41μC/gであった。
合成例1で得たフォルステライトスラリーAの固形分濃度を求めた後、MgO/SiO2モル比を2.05から1.85にするのに必要な、固形分100g当たり0.276molの塩酸を添加した。30分間撹拌した後、ブフナーロートを用いて固液分離し、更にイオン交換水で洗浄した。箱型乾燥機を用いて固形分を110℃で24時間乾燥した後、ハンマーミル及びジェットミルを用いて粉砕し、試料3を得た。試料3のMgO/SiO2モル比は1.85であり、化学式はMg1.85SiO3.85であり、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)におけるxは0.15である。一次粒子の平均粒径は52nm、粉体帯電量は−10μC/gであった。
実施例3で得られたケイ酸マグネシウム粉末に対して、実施例2と同様の方法でi−ブチルトリメトキシシランの加水分解物をケイ酸マグネシウムのスラリーに対して25wt%添加して試料4を調製した。試料4のアルキルシランに由来するSiを加味しないMgO/SiO2モル比は1.85であり、化学式はMg1.85SiO3.85であり、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)におけるxは0.15である。一次粒子の平均粒径は52nm、粉体帯電量は−14μC/gであった。
合成例2で得たフォルステライトスラリーBの固形分濃度を求めた後、MgO/SiO2モル比を2.05から1.95にするのに必要な量、すなわち固形分100g当たり0.144molの塩酸を添加した。この混合スラリーを30分間撹拌した後、ブフナーロートを用いて固液分離し、更にイオン交換水で洗浄した。オーブンを用いて、固形分を110℃で12時間乾燥した後、ハンマーミル及びジェットミルを用いて粉砕して試料5を得た。
水酸化マグネシウム粉末及び微粒子シリカ粉末をMgO/SiO2モル比で2.05になるようにひょう量し、固形分濃度が100g/Lになるようにイオン交換水中に水戻しして、30分間撹拌して分散させた後、ビーズミルを用いて湿式粉砕混合を行って、スラリーを調製した。このスラリーをブフナーロートで固液分離した後、箱型乾燥機を用いて固形分を110℃で24時間乾燥した。乾燥物をアルミナルツボに投入し、箱形電気炉を用いて850℃で3時間焼成を行った。焼成物をハンマーミルを用いて粉砕した後、水戻しして、ビーズミルを用いて粉砕した。このスラリーの固形分濃度を求めた後、MgO/SiO2モル比を2.05から1.99に調製するのに必要な、固形分100g当たり0.084molの塩酸を添加した。この混合スラリーを30分間撹拌した後、ブフナーロートで固液分離し、更にイオン交換水で洗浄した。箱型乾燥機を用いて固形分を110℃で12時間乾燥した後、ハンマーミルを用いて粉砕し、試料6を得た。
比較例1のケイ酸マグネシウムに対して、実施例2と同様の方法でi−ブチルトリメトキシシランの加水分解物をケイ酸マグネシウムのスラリーに対して25wt%添加して、試料7を調製した。試料7のアルキルシランに由来するSiを含まないMgO/SiO2モル比は1.99であり、化学式はMg1.99SiO3.99であり、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)におけるxは0.01である。一次粒子の平均粒径は55nm、粉体帯電量は+3μC/gであった。
Claims (7)
- 化学式Mg(2−x)SiO(4−x)で表され、xが0.05以上0.50以下であるフォルステライトの結晶構造を有するケイ酸マグネシウム粉末。
- 一次粒子の平均粒径が20nm以上150nm以下である、請求項1記載のケイ酸マグネシウム粉末。
- アルキル基の炭素数が3以上10以下であるアルキルシランを含有する請求項1または2のケイ酸マグネシウム粉末。
- 請求項1〜3のいずれか1つに記載のケイ酸マグネシウム粉末を含む電子写真用トナーの外添剤。
- 請求項4の電子写真用トナーの外添剤を含む電子写真用トナー。
- 化学式Mg2SiO4で表されるフォルステライトの結晶構造を有するケイ酸マグネシウム粉末を含むスラリーに、酸を添加して、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)(式中、xは0.05以上0.50以下である)で表されるケイ酸マグネシウム粉末を得る組成調整工程を含む、化学式Mg(2−x)SiO(4−x)で表され、xが0.05以上0.50以下であるフォルステライトの結晶構造を有するケイ酸マグネシウム粉末の製造方法。
- 前記組成調整工程で得られるケイ酸マグネシウム粉末に、アルキルシランを混合して、ケイ酸マグネシウム粉末の表面を処理する表面処理工程を更に含む、請求項6に記載のケイ酸マグネシウム粉末の製造方法。
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