JP2019117698A - 電池用組成物、電池用分散組成物、電極、電池 - Google Patents

電池用組成物、電池用分散組成物、電極、電池 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の分散組成物と比較して、良好な分散性で電子抵抗を低減するだけでなく、常温及び低温のイオン抵抗や反応抵抗を低減し、さらに優れた特性の電池を提供すること。また、分散液の高pH化により生じる不具合や、分散剤が電解液へ溶出することによって生じる周辺部材への不具合の懸念をなくすこと、電極密着性(剥離強度)の良化。【解決手段】前記課題は一般式(1)で表されるトリアジン誘導体と、ポリマー分散剤とを含んでなる電池用組成物と、さらに、アミンまたは無機塩基とを含む前記電池用組成物と、炭素材料と、溶剤とを含んでなる電池用分散組成物、さらに、バインダーを含んでなる前記電池用分散組成物、また、前記電池用分散組成物に、さらに、活物質を含んでなる電池用分散組成物によって解決される。【選択図】なし

Description

本発明は、電池用組成物、電池用分散組成物、電極、電池に関する。
電池分野において炭素材料は導電助剤として広く用いられており、電池の抵抗を下げて高いパフォーマンスを得るためには、炭素材料分布の高精度なコントロールによって、電極中で効率よく導電パスを形成する必要がある。
そのためには、炭素材料を溶液中に均一かつ高濃度で分散する必要があるが、表面積が大きいナノ粒子である炭素材料は、炭素材料同士の凝集力が強く、初期はもちろん、経時後でも安定な分散液を製造するのは難しい。
こうした問題を解決するために、各種分散剤が盛んに研究されている。例えば、特許文献1や特許文献2には、ポリビニルピロリドンやポリビニルブチラール等のポリマー分散剤を用いて炭素材料分散液を作製し電池用組成物として用いている。
しかしながら、こうしたポリマー分散剤はそれ自体が粘性を有するため、特に高導電性で知られるカーボンナノチューブなどの高比表面積な炭素材料に用いた場合、必要な分散剤量が多くなって分散液の粘度が高くなり、塗工性が低下して良好な電極が得られなくなることがあった。
また、電池中で電解液を吸収して膨潤し、炭素材料同士や炭素材料と活物質または集電体との接触状態が壊れ、適切に形成されていた導電パスが切れてしまい、電池の抵抗を悪化させたり、サイクル寿命を低下させるという問題もあった。
さらには、電解液中に溶け出した分散剤が電解液の粘度を増加させ、電解質イオンの拡散性を低下させることで電池の抵抗が悪化してしまう問題もある。電解液は低温で特に粘度上昇の影響を受けるため、低温のイオン抵抗悪化が顕著となってしまう。
一方、特許文献3には、トリアジンの酸性誘導体にアミンを添加した分散剤を用いた電池用分散組成物が開示されている。これらは高分子のような粘性はなく、非プロトン性極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤中で適切に電荷反発を起こして良好な分散液の製造を可能としている。
しかし、これらの分散剤もそれ自体は絶縁性成分であるため、効率的な導電パス形成による電池特性向上には役立っているものの、炭素材料固有の導電性を最大限に引き出すのが限界であり、さらなる低抵抗化の要求には応えられない。また、電子抵抗以外のイオン抵抗や反応抵抗といった抵抗成分の低減は実現できない。
特許文献4には、芳香族系の水酸基または芳香族系のチオール基を有するトリアジン誘導体を用いた電池用組成物が開示されている。これらは炭素材料の分散安定性に優れるとともに、電解液の濡れ性を改善できるとされているが、やはり、同様に電子抵抗以外のイオン抵抗や反応抵抗といった抵抗成分の低減は実現できない。
また、分散剤をあらかじめ処理した炭素材料を得る方法として、アミンや無機塩基等を添加した塩基性水溶液に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に炭素材料を添加して混合・分散することで、これら分散剤を炭素材料に作用(例えば吸着)させ、凝集させて凝集粒子を得る方法が記載されている。しかしながら、分散剤の溶解性を上げるためにアミンや無機塩基等を添加してpHを塩基性に調整すると、活物質の成分を溶出させて電池の特性や寿命を悪化させたり、集電体の金属箔を腐食して抵抗を増大させたりする問題があった。
さらに、特許文献3や特許文献4の分散剤は、分散液溶剤に対する溶解性が高いだけでなく、電解液にも溶出しやすく、溶出した分散剤が電池内で拡散して対極やセパレーター、外装材等の周辺部材に悪影響を及ぼす懸念もあった。
特許文献5では、分散剤としてトリアジン誘導体とポリビニルアルコールを併用して炭素材料分散液を製造し、電極や二次電池を製造している。これにより高濃度で貯蔵安定性に優れ、かつ塗工した電極(塗膜)の密着性が良好な分散液を提供できるとしているが、トリアジン誘導体とポリビニルアルコールのそれぞれの長所を単純に足し合わせたに過ぎないため、それぞれの性能を超えた効果までは期待できなかった。
また、特許文献5に記載のトリアジン誘導体は、特許文献3や特許文献4に記載のトリアジン誘導体と同様に電解液への溶解性の課題も有していた。
ところで、電池に求められる性能は近年益々高まっている。例えばモバイル用途では、スマートフォンはより複雑なアプリケーションに大画面で対応することが求められ、消費電力が高くなっているにも関わらず、さらなる高速充電や長時間稼働、薄型化、小型化、軽量化も同時に求められる。また、時計などのウェアラブル端末の普及により、さらに小さく高エネルギー密度な電池が必要となってきた。車載用途としては、高出力が求められる反面、低容量が許容されてきたハイブリッド自動車向けから、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車向けにバランス良く全ての特性に優れた電池が求められるようになってきた。
特開2003−157846号公報 特開2011−184664号公報 国際公開第2008/108360号 特開2010−61932号公報 特開2015−101615号公報
以上の背景に鑑み、本発明では、従来の分散組成物と比較して、良好な分散性で電子抵抗を低減するだけでなく、常温及び低温のイオン抵抗や反応抵抗を低減し、さらに優れた特性の電池を提供することが課題である。また、分散液の高pH化により生じる不具合や、分散剤が電解液へ溶出することによって生じる周辺部材への不具合の懸念をなくすこと、電極密着性(剥離強度)の良化も課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、一般式(1)で表されるトリアジン誘導体とポリマー分散剤とを併用すると、炭素材料同士、炭素材料と活物質、活物質同士、またはこれらと集電体との密着性が特異的に向上する相乗効果が得られることを見出した。また、それによって長期的に充放電を繰り返した際の電極の剥がれや劣化を抑えることができ、サイクル特性を向上させることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
この効果は、特にポリマー分散剤が水酸基を有する場合に顕著であった。この原理は定かではないが、酸性官能基を有するアリーレン基と、フェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結している構造によって、ポリマー分散剤との間に水素結合などの強い分子間力が作用したことによると考えられた。
また、一般式(1)で表されるトリアジン誘導体とポリマー分散剤を使用した電池用分散組成物は、良好な導電パス形成によって電子抵抗を低減させるだけでなく、イオン抵抗および反応抵抗をも低減できることを見出した。
一般式(1)で表されるトリアジン誘導体は、酸性官能基を有するアリーレン基と、弱酸性のフェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結していることから、酸性度や結晶性が高いと思われる。そのため、溶解性が低く電解液への溶出による不具合の懸念はない。また、活物質の溶出や集電体の腐食といった問題が起こらない。さらに、水素結合などの強い相互作用を起こしやすいことから、炭素材料に対しても作用しやすく、分散液に対する溶解性が低くても十分な分散性を発揮できるものと考えられる。
すなわち、本発明は下記一般式(1)で表される酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、ポリマー分散剤とを含んでなる電池用組成物に関する。
Figure 2019117698
[一般式(1)中、Rは、−X−Yで表される基を表す。Xは置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Yはスルホ基またはカルボキシル基を表す。]
また、本発明は、ポリマー分散剤が水酸基を有する前記電池用組成物に関する。
また、本発明は、ポリマー分散剤がポリビニルアルコール系樹脂および/またはセルロース系樹脂である前記電池用組成物に関する。
また、本発明は、さらに、アミンおよび/または無機塩基を含む前記電池用組成物に関する。
また、本発明は、トリアジン誘導体に対するアミンが0.1〜5モル当量である前記電池用組成物に関する。
また、本発明は、トリアジン誘導体に対するアミンが0.3〜2モル当量である前記電池用組成物に関する。
また、本発明は、トリアジン誘導体に対する無機塩基が0.1〜1モル当量である前記電池用組成物に関する。
また、本発明は、前記電池用組成物に、さらに、炭素材料と、溶剤とを含んでなる電池用分散組成物に関する。
また、本発明は、さらに、バインダーを含んでなる前記電池用分散組成物に関する。
また、本発明は、さらに、活物質を含んでなる前記電池用分散組成物に関する。
また、本発明は、トリアジン誘導体の添加量が、活物質表面積1mに対して0.05〜140mgである、または、トリアジン誘導体とアミンおよび/または無機塩基との合計添加量が、活物質表面積1mに対して0.1〜200mgである前記電池用分散組成物に関する。
また、本発明は、集電体上に、前記電池用分散組成物より形成されてなる合剤層を有する電極に関する。
また、本発明は、前記電極と、非水電解液とを具備してなる電池に関する。
また、本発明は、非水電解液1mlに対するトリアジン誘導体の添加量が6μg〜40mgである、または、非水電解液1mlに対するトリアジン誘導体とアミンおよび/または無機塩基との合計添加量が10μg〜60mgである前記電池に関する。
本発明により、従来公知の電池用組成物を用いた場合よりも、イオン抵抗と反応抵抗が低く、レート特性や低温特性に優れた電池を提供することが可能となる上に、特異的に密着性が向上し、サイクル特性も向上させる効果が得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<電池用組成物>
本発明の一態様は、一般式(1)で表わされるトリアジン誘導体と、ポリマー分散剤とを含んでなる電池用組成物である。
<トリアジン誘導体>
一般式(1)中、Rは、−X−Yで表される基を表す。Xは置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Yはスルホ基またはカルボキシル基を表す。
の置換基を有してもよいアリーレン基の「置換基」は、同一でも異なっても良く、その具体例としては、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、複数あっても良い。
置換基を有してもよいアリーレン基の「アリーレン基」は、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
<トリアジン系分散剤>
本発明の電池用組成物は、さらに、アミンおよび/または無機塩基を含むことが好ましい。
本発明で用いるトリアジン系分散剤は、トリアジン誘導体と、アミンおよび/または無機塩基とを含むものである。
さらに、トリアジン誘導体とともに添加するアミンとしては、炭素数1〜40の1級、2級、3級アルキルアミンが挙げられる。
炭素数1〜40の1級アルキルアミンとしては、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、オクチルアミン、2ーエチルヘキシルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、3−エトキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン等が挙げられる。
炭素数1〜40の2級アルキルアミンとしては、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、2−メチルアミノエタノール等が挙げられる。
炭素数1〜40の3級アルキルアミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール等が挙げられる。
この内、炭素数1〜30の1級、2級または3級アルキルアミンが好ましく、炭素数1〜20の1級、2級または3級アルキルアミンがさらに好ましい。
本発明で使用されるアミンの添加量は、特に限定されるものではないが、一般式(1)で表わされるトリアジン誘導体に対して、0.1〜5モル当量が好ましく、0.3〜2モル当量がより好ましい。
アミンは、トリアジン系分散剤製造時および/または電池用組成物製造時に添加することができる。
トリアジン誘導体とともに添加する無機塩基としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属のリン酸塩、アルカリ土類金属のリン酸塩等が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
アルカリ金属のリン酸塩としては、リン酸リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属のリン酸塩としては、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム等が挙げられる。
本発明で使用される無機塩基の添加量は、特に限定されるものではないが、一般式(1)で表わされるトリアジン誘導体に対して、0.1〜1モル当量が好ましい。
無機塩基は、トリアジン系分散剤製造時および/または電池用組成物製造時に添加することができる。
トリアジン誘導体の添加量としては、活物質表面積1mに対して0.05〜140mgが好ましく、0.15〜30mgがさらに好ましい。トリアジン系分散剤の添加量としては、活物質表面積1mに対して0.1〜200mgが好ましく、0.2〜100mgがより好ましく、0.5〜50mgがさらに好ましい。
また、非水電解液1mlに対しては、トリアジン誘導体の添加量が6μg〜40mgが好ましく、30μg〜15mgがさらに好ましい 。トリアジン系分散剤量は10μg〜60mgが好ましく、50μg〜20mgがより好ましく、70μg〜15mgがさらに好ましい。
本発明の電池用組成物および電池用分散組成物は、特に電池やコンデンサー、キャパシター用途でカーボンブラック等の炭素材料を使用する場合に、好適に使用することができるが、各種インキ、塗料、カラーフィルターレジスト等の着色組成物としても使用可能である。
<ポリマー分散剤>
本発明で用いるポリマー分散剤は、ポリビニルアルコール、水酸基以外の官能基、例えば、アセチル基、スルホ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基を有する変性ポリビニルアルコール、各種塩によって変性されたもの、その他アニオンまたはカチオン変性されたもの、アルデヒド類によってアセタール変性(アセトアセタール変性またはブチラール変性等)されたポリビニルアルコール系樹脂や、各種(メタ)アクリル系ポリマー、エチレン性不飽和炭化水素由来のポリマー、各種セルロース系ポリマー等や、これらのコポリマーが使用できるが、これらに限定されるものではない。
ポリマー分散剤の平均重合度は、低すぎると分散質への吸着力が弱く、高すぎると粘性が悪くなるだけでなく分散液中でうまく広がらず分散安定化効果が薄くなるため、50〜3000のものが好ましく、100〜2000のものが特に好ましく、200〜1000のものがさらに好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、分散質や分散溶剤、電解液と適度な親和性を持たせるために、水酸基が60mol%以上のものが好ましく、70mol%以上のものがより好ましく、75mol%以上のものがさらに好ましい。
上記水酸基量の範囲に含まれる市販のポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、クラレポバール(クラレ社製ポリビニルアルコール樹脂)やゴーセノール、ゴーセネックス(日本合成化学工業社製ポリビニルアルコール樹脂)、デンカポバール(デンカ社製ポリビニルアルコール樹脂)、J−ポバール(日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール樹脂)などの商品名で、種々のグレードを入手することが出来る。また、各種官能基を有する変性ポリビニルアルコールも同様に入手できる。
市販品を使用せず合成して用いる場合には、一般に、メタノール溶液中等で酢酸ビニルを所定の重合度まで重合し、得られたポリ酢酸ビニルに水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えてけん化反応させることで、水酸基量をコントロールしたポリビニルアルコールが得られることが知られている。
変性ポリビニルアルコールを合成して用いる場合には、一般に、メタノール溶液中等で酢酸ビニルとともに(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル系モノマーや、ビニルエステル系モノマー、α‐β不飽和結合と官能基を有するモノマーなどを共重合させてから、けん化反応させることで、変性率をコントロールした変性ポリビニルアルコールが得られることが知られている。また、ポリビニルアルコール系樹脂に対して酸無水物を付加反応させたり、エステル化反応させる等して変性ポリビニルアルコール系樹脂を得ることもできる。
市販のポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、モビタール(クラレ社製ポリビニルブチラール樹脂)、エスレック(積水化学工業社製ポリビニルアセタール、またはポリビニルブチラール)などの商品名で、種々のグレードを入手することができるが、上記の好ましい水酸基量を得るために合成して用いてもよい。一般的な合成方法としては、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させることで、所定のアセタール化度にコントロールしたポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。また、アルデヒドの炭素数を変更すればアセタール基の炭素数を任意に選択することができる。
セルロース系樹脂としては、セルロースまたは、セルロースの水酸基の一部がアルキル基やヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基に変性されたものやその塩を用いることができ、例えば、メトローズ(信越化学工業社製メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メセロース(巴工業社製水溶性セルロースエーテル、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、サンローズ(日本製紙社製カルボシメチルセルロースナトリウム)、エトセル(ダウケミカル社製エチルセルロース)、ダイセルCMC(ダイセルファインケム社製カルボシメチルセルロースナトリウム)などの商品名で、種々のグレードを入手することができる。特に、電解液への溶解性や膨潤性の観点から、メチルセルロースやエチルセルロースなどのアルキルセルロースが好ましい。
<炭素材料>
本発明で使用される炭素材料は、特に限定されるものではないが、電池用の炭素材料として使用する場合、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、グラフェン、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することが好ましい。炭素材料として用いる場合、導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックとしては、市販のファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなど各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。また、カーボンブラクの粒径は、0.01〜1μmが好ましく、0.01〜0.2μmがより好ましい。ここでいう粒径とは、電子顕微鏡で測定された平均一次粒子径を示し、この物性値は一般にカーボンブラックの物理的特性を表すのに用いられている。
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、グラフェンを筒状に巻いた形状を有する炭素材料であり、電子顕微鏡で観察して求めた直径は数nmから100nm程度で、長さは数nmから1mm程度である。半導体特性、塗膜の透明性等を発揮するには、直径50nm以下、特に20nm以下が好ましい。長さは100nmから1mmが好ましく、特に500nmから1mmが好ましい。カーボンナノチューブには単層のものや多層構造になったものがあるが、いずれの構造であってもよい。また、カーボンナノファイバーとして分類される、電子顕微鏡で観察して求めた繊維径が100nmから1μm程度のものについても使用可能である。
本発明に用いられるグラフェンは、グラファイトを構成する単原子薄膜で、炭素原子が平面上で蜂の巣格子(六角形)状に並んだ炭素材料であり、これが積層化した多層グラフェンを含む。多層グラフェンとしては、グラフェン層数2から50層のものが使用可能である。
<溶剤>
本発明に使用する溶剤としては、非プロトン性の極性溶剤、水溶性の極性溶剤、水の内1種類を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。非プロトン性の極性溶剤としては、アミド系溶剤が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系非プロトン性溶剤の使用が好ましい。水溶性の極性溶剤としては、アルコール系、エステル系、エーテル系、グリコール系、グリコールエステル系、グリコールエーテル系が好ましい。水は単独で用いてもよいし、炭素材料の濡れ性や塗工性向上のために、表面張力が低い水溶性の極性溶剤を少量併用してもよく、特に、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、N−メチル−2−ピロリドンとの併用が好ましい。
<バインダー>
使用するバインダーとしては特に限定されないが、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類、ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体および共重合体でも良い。特に、電池用途で使用する場合には、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。これらバインダーは、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。また、溶剤に水を用いる場合には、これらフッ素原子を含む高分子化合物やスチレン−ブタジエンゴムなどのエマルションと、増粘剤としても機能するカルボキシメチルセルロースとの併用が好ましい。
<活物質>
活物質は、電池内において、酸化還元反応を伴って蓄電または放電を行う物質である。正極に用いられる正極活物質と、負極に用いられる負極活物質が挙げられる。
<正極活物質>
使用する正極活物質は、電池用活物質として機能するものであれば、特に限定はされない。例えば、リチウムイオン二次電池に使用する場合には、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
具体的には、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMnまたはLiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−y)、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiNiCoMn1−y−z)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLiMn2−yNi)等のリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物粉末(例えばLiFePO、LiFe1−yMnPO、LiCoPOなど)、酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、バナジウム酸化物(例えばV、V13)、酸化チタン等の遷移金属酸化物粉末、硫酸鉄(Fe(SO)、TiS、およびFeS等の遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。ただし、x、y、zは数であり、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<y+z<1である。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーを使用することもできる。これら正極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
<負極活物質>
使用する負極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属Li、またはその合金、スズ合金、シリコン合金負極、LiTiO、LiFe、LiFe、LiWO等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子、ソフトカーボンやハードカーボンといったアモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が用いられる。ただし、xは数であり、0<x<1である。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
<電池用分散組成物>
以上述べた通り、本発明の電池用分散組成物は、上記電池用組成物、および炭素材料、溶剤を含む炭素材料分散液、または、さらにバインダーを含む炭素材料分散ワニスであり、均質で良好な塗膜物性が求められる印刷インキ、塗料、プラスチック、トナー、カラーフィルタレジストインキ、電池等の分野に使用することができる。特に、均質で良好な塗膜物性と、表面抵抗の低い電極層に適した塗膜を提供することができるため、電池の電極を形成する用途で好適に使用することができる。集電体と合剤層との間に設ける下地層に用いても良い。
<電池用分散組成物の製造方法>
本発明の電池用分散組成物である炭素材料分散液は、上記分散剤と、炭素材料と、溶剤とを混合することにより製造することができる。また、炭素材料分散ワニスは、上記分散剤と、炭素材料と、溶剤と、バインダーとを混合することにより製造することができる。各成分の添加順序などについては限定されるものではなく、例えば、炭素材料分散液は、(1)全成分を一括に混合・分散する方法、(2)予め分散剤を分散・溶解した溶剤に炭素材料を分散させる方法等が挙げられる。また、炭素材料分散ワニスは、(1)全成分を一括に混合・分散・溶解する方法、(2)予め炭素材料分散液を作製した後に、バインダー粉を混合・溶解する方法、(3)予め炭素材料分散液を作製した後に、バインダー溶液を混合する方法等が挙げられる。また、必要に応じて上記に記載の溶剤を更に追加しても良い。
混合・分散・溶解装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。金属混入防止処理としては、例えばメディア型分散機を使用する場合は、アジテーターおよびベッセルがセラミック製または樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーターおよびベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。メディアとしては、ガラスビーズまたはジルコニアビーズもしくはアルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散機は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
本発明の電池用分散組成物は、上記分散剤、炭素材料、溶剤、バインダーを含む電池用分散組成物に、活物質を含有させた電池用分散組成物(以下、「合剤ペースト」と云う)として使用することが好ましい。
この合剤ペーストは、上記分散剤と、炭素材料と、溶剤と、バインダーと、活物質とを混合することにより製造することができる。各成分の添加順序などについては限定されるものではなく、例えば、全成分を一括に混合する方法、上述の方法で予め作製した炭素材料分散液に残りの成分を投入して混合する方法、上述の方法で予め作製した炭素材料分散ワニスに活物質を投入して混合する方法等が挙げられる。また、必要に応じて上記に記載の溶剤を更に追加しても良い。
合剤ペーストを製造するための装置としては、上述した本発明の分散組成物を作製する際に用いられるものと同様のものを使用することができる。
<電池>
次に、本発明の組成物を用いた電池について説明する。本発明の組成物は、特にリチウムイオン二次電池に好適に使用することができる。以下ではリチウムイオン二次電池について説明するが、本発明の組成物を用いた電池はリチウムイオン二次電池に限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池は、集電体上に正極合剤層を有する正極電極と、集電体上に負極合剤層を有する負極電極と、リチウムを含む電解質からなる非水電解液とを具備する。
電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅の使用が好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、およびメッシュ状のものも使用できる。また、集電体には、集電体と合剤層との接触抵抗や密着性を向上させる目的で、導電性の下地層を設けても良い。
合剤層は、集電体上に上記の合剤ペーストを直接塗布し、乾燥することで形成できる。合剤層の厚みとしては、一般的には1μm以上、1mm以下であり、好ましくは100μm以上、500μm以下である。塗布方法については特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、静電塗装法等が挙げられる。また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
リチウムイオン二次電池を構成する電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶媒に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、Li(CFSOC、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF、LiSCN、LiBPh(ただし、Phはフェニル基である。)等が挙げられるがこれらに限定されない。
非水系の溶媒としては特に限定はされないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のグライム類、メチルフォルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、アセトニトリル等のニトリル類、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。またこれらの溶媒は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。特に、高誘電率で電解質の溶解力が高いエチレンカーボネートとその他溶媒との混合が好ましく、さらに、その他溶媒としてはプロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートジエチルカーボネート等の直線状のカーボネート系溶媒がより好ましい。
更に上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の組成物を用いた電池の構造については特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、角型、ボタン型、積層型、巻回型など、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、個々の組成物の違いを明確にするために、分散剤、炭素材料、溶剤からなる分散組成物を「炭素材料分散液」、分散剤、炭素材料、溶剤、バインダーからなる分散組成物を「炭素材料分散ワニス」、分散剤、炭素材料、溶剤、バインダー、活物質からなる電池用分散組成物を「合剤ペースト」と呼称することとする。また、特に断わりの無い限り、溶剤として使用したN−メチル−2−ピロリドンを「NMP」、質量%を「%」と略記する。
<トリアジン誘導体>
以下に本発明の一般式(1)で表わされるトリアジン誘導体A〜Tの構造を示す。本発明に用いる一般式(1)で表わされるトリアジン誘導体A〜Tの製造方法としては、特に限定されるものではなく、周知の方法を適用することができる。例えば、特開2004−217842号公報等に記載されている方法を適用することができる。上記公報による開示を参照することにより、本明細書の一部に組み込むものとする。
Figure 2019117698
Figure 2019117698
<トリアジン誘導体とアミンからなるトリアジン系分散剤の製造例>
以下の実施例に記載した方法で表1記載のトリアジン系分散剤a〜ajを製造した。
Figure 2019117698
(トリアジン系分散剤aの製造)
水200gにトリアジン誘導体Aを0.040モル加えた。これにオクチルアミンを0.040モル加え、60℃で2時間撹拌した。室温まで冷却後、ろ過精製を行った。得られた残渣を90℃で48時間乾燥することにより、トリアジン系分散剤aを得た。
(トリアジン系分散剤b〜tの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表1に記載のトリアジン誘導体B〜Tをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤b〜tを得た。
(トリアジン系分散剤u〜aeの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表1に記載のトリアジン誘導体をそれぞれ添加し、オクチルアミンの代わりに表1に記載のアミンをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤u〜aeを得た。
(トリアジン系分散剤af〜ajの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてオクチルアミンの添加量を表1に記載の添加量にそれぞれ変更した以外はトリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤af〜ajを得た。
以下にトリアジン系分散剤ba、bbで使用するトリアジン誘導体AA、ABの構造を示す。比較例に用いるトリアジン誘導体AA、ABの製造方法としては、特に限定されるものではなく、周知の方法を適用することができる。例えば、特開2004−217842号公報等に記載されている方法を適用することができる。上記公報による開示を参照することにより、本明細書の一部に組み込むものとする。
Figure 2019117698
以下に記載した方法で表2記載のトリアジン系分散剤ba、bbを製造した。
Figure 2019117698
(トリアジン系分散剤ba、bbの製造例)
トリアジン系分散剤aの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表2に記載のトリアジン誘導体AA、ABをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤aと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤ba、bbを得た。
<トリアジン誘導体と無機塩基とからなるトリアジン系分散剤の製造例>
以下に記載した方法で表3記載のトリアジン系分散剤ca〜deを製造した。
Figure 2019117698
(トリアジン系分散剤caの製造例)
水200gにトリアジン誘導体Aを0.040モル加えた。これに水酸化ナトリウムを0.020モル加え、60℃で2時間撹拌した。室温まで冷却後、ろ過精製を行った。得られた残渣を90℃で48時間乾燥することにより、分散剤caを得た。
(トリアジン系分散剤cb〜ctの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表3に記載のトリアジン誘導体B〜Tをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤cb〜ctを得た。
(トリアジン系分散剤cu〜daの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表3に記載のトリアジン誘導体をそれぞれ添加し、水酸化ナトリウムの代わりに表3に記載の無機塩基をそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤cu〜daを得た。
(トリアジン系分散剤db〜deの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造において水酸化ナトリウムの添加量を表3に記載の添加量にそれぞれ変更した以外はトリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤db〜deを得た。
以下に記載した方法で表4記載のトリアジン系分散剤ea、ebを製造した。
Figure 2019117698
(トリアジン系分散剤ea、ebの製造例)
トリアジン系分散剤caの製造においてトリアジン誘導体Aの代わりに表4に記載のトリアジン誘導体AA、ABをそれぞれ添加した以外は、トリアジン系分散剤caと同様な方法で製造し、トリアジン系分散剤ea、ebを得た。
実施例、比較例に示す炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、合剤ペーストは、以下に示す材料を用いて作製した。
<炭素材料>
デンカブラックHS100(デンカ社製):アセチレンブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が48nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が39m/g、以下「HS100」と略記する。
super−P(TIMCAL社製):ファーネスブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が40nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が62m/g。
モナーク800(キャボット社製):ファーネスブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が17nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が210m/g、以下「M800」と略記する。
EC−300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製):ケッチェンブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が40nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が800m/g。
カーボンナノチューブ:多層カーボンナノチューブ、電子顕微鏡で観察して求めた繊維径10nm、繊維長2〜5μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が600m/g、以下CNTと略記する。
VGCF(昭和電工社製):カーボンナノファイバー、電子顕微鏡で観察して求めた繊維径150nm、繊維長10〜20μm。
<バインダー>
KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、以下PVDFと略記する。
ポリテトラフッ化エチレンエマルション:(三井・デュポンフロロケミカル社製)、以下PTFEと略記する。
カルボキシメチルセルロース(日本製紙社製):以下CMCと略記する。
<正極活物質>
LiNi1/3Mn1/3Co1/3(戸田工業社製):正極活物質、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が5.0μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.62m/g、以下、NMCと略記する。
HLC−22(本荘ケミカル社製):正極活物質、コバルト酸リチウム(LiCoO)、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が6.6μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.62m/g、以下LCOと略記する。
LiNi0.8Co0.15Al0.05(住友金属社製):正極活物質、ニッケルコバルトアルミ酸リチウム、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が5.8μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.38m/g、以下、NCAと略記する。
LiFePO(クラリアント社製):正極活物質、リン酸鉄リチウム、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が0.4μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が15.3m/g、以下、LFPと略記する。
<負極活物質>
球状黒鉛(日本黒鉛社製):負極活物質、電子顕微鏡で観察して求めた一次粒子径が15μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が1.0m/g、以下球状黒鉛と略記する。
<ポリマー分散剤>
PVA−103(クラレ社製):ポリビニルアルコール、けん化度98.0〜99.0mol%
PVA−403(クラレ社製):ポリビニルアルコール、けん化度78.5〜81.5mol%
KL−506(クラレ社製):アニオン変性ポリビニルアルコール、けん化度74.0〜80.0mol%
AP−17(日本酢ビ・ホバール社製):アニオン変性ポリビニルアルコール、けん化度88〜90mol%
ゴーセネックスL−3266(日本合成化学社製):スルホン酸変性ポリビニルアルコール、けん化度86.5〜89.0mol%(以下、L−3266と略記する)
ゴーセネックスK−434(日本合成化学社製):カチオン変性ポリビニルアルコール、けん化度85.5〜88.0mol%(以下、K−434と略記する)
ポリビニルブチラールA: ポリビニルブチラール、ブチラール化度15mol%、水酸基量84mol%、酢酸基1mol%、重合度300(以下、PVB−Aと略記する)
メトローズSM−4(信越化学社製):メチルセルロース、置換度1.8、20℃における2%水溶液の粘度約4mPa・s、(以下、SM−4と略記する)
メトローズSM−15(信越化学社製):メチルセルロース、置換度1.8、20℃における2%水溶液の粘度約15mPa・s、(以下、SM−15と略記する)
エトセル−10(ダウケミカル社製):エチルセルロース、25℃における5%トルエン/エタノール(8/2)溶液の粘度 9.0〜11.0mPa・s
PVB−Aの合成
(合成例)
PVA−103の10%水溶液を調製し、水溶液100質量部に対し、塩酸0.2質量部、ブチルアルデヒド2質量部を撹拌しながら滴下した。続いて80℃に昇温して1時間保持した後放冷した。これを乾燥、粉砕してアセタール化度15mol%のPVB−Aを得た。
[実施例1−1]
<炭素材料分散液の調製>
表5に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンとトリアジン系分散剤aおよびポリマー分散剤PVA−103を仕込み、混合した後、炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、トリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散液を得た。
<炭素材料分散ワニスの調製>
表5に示す組成に従い、調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散液とバインダー、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスを得た。
<正極合剤ペーストの調製>
表5に示す組成に従い、調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散ワニスと活物質、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、正極合剤ペーストを得た。
<電極の作製>
調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む正極合剤ペーストを、厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、ローラープレス機にて圧延処理し、塗布量17mg/cm、密度3.0g/cmの電極を作製した。厚みや密度が均一な電極が得られた。
Figure 2019117698
[実施例1−2〜1−10]
実施例1−1で用いたポリマー分散剤PVA−103を表6に示したポリマー分散剤に置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
Figure 2019117698
[参考例1−1]トリアジン系分散剤aのみ
表7に示す通り、実施例1−1で用いたポリマー分散剤PVA−103をトリアジン系分散剤aに置き換えて分散剤をトリアジン系分散剤aのみとした以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例1−1]分散剤種の比較−1
表7に示す通り、参考例1−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、参考例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例1−2]分散剤種の比較−2
表7に示す通り、実施例1−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例1−3、1−4]分散剤種の比較−3
比較例1−2で用いたPVA−103の代わりに、表7に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、比較例1−2と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
Figure 2019117698
<剥離強度試験>
電極の剥離強度測定用の試験片は、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットして用いた。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所社製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をステンレス板上に貼り付け、作製した電池電極合剤層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で下方から上方に引っ張りながら剥がし、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
<評価結果>
実施例1−1〜1−10、参考例1−1、比較例1−1〜1−4で調製した炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペーストは、いずれも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
実施例1−1〜1−10、参考例1−1、比較例1−1〜1−4で作製した電極の剥離強度試験結果を表8に示す。剥離強度試験の結果は、参考例1−1を100%としたとき、◎:200%以上、◎〜○:200%未満175%以上、○:175%未満150%以上、○〜△:150%未満120%以上、△:120%未満80%以上、とした。以下、正極合材において、溶剤がNMPである系の剥離強度試験の結果は、これに従うものとする。トリアジン系分散剤baのみを用いた比較例1−1と比較して、各種ポリマー分散剤を併用した比較例1−2〜1−4は剥離強度がいずれも若干向上した。これは、膜形成能がない低分子のトリアジン系分散剤baの代わりに膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことによって若干ではあるが向上したものによると考えられる。一方、トリアジン系分散剤aのみを用いた参考例1−1と、各種ポリマー分散剤を併用した実施例1−1〜1−10を比較すると、いずれも大幅な向上が見られた。比較例1−1〜1−4の結果を考慮すると、実施例1−1〜1−10で見られた効果は単に膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことだけによるものではないと予想された。
Figure 2019117698
[実施例1−11〜1−188]
剥離強度向上効果が、一般式(1)で示される他のトリアジン誘導体でも得られるか確認するために、同様に試験を行った。実施例1−1で使用したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤を表9に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
Figure 2019117698
[実施例1−189]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用
表10に示す通り、実施例1−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン誘導体Aに置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[実施例1−190〜1−193]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用−2
実施例1−189で用いたPVA−103の代わりに、表10に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン誘導体Aの代わりに表10に示したトリアジン誘導体をそれぞれ用いた以外は、実施例1−189と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[実施例1−194]ポリマー分散剤の併用
表11に示す通り、実施例1−1で用いたPVA−103のさらに半量をSM−15に置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[実施例1−195、1−196]ポリマー分散剤の併用−2
実施例1−194で用いたPVA−103の代わりに、表11に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、実施例1−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[実施例1−197〜1−199]ポリマー分散剤の併用−3
実施例1−194で用いたPVA−103の代わりに、表11に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン系分散剤aの代わりにトリアジン誘導体Aを用いた以外は、実施例1−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[比較例1−5〜1−7]
参考例1−1で用いたトリアジン系分散剤aを表12で示した分散剤に置き換えた以外は、参考例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[比較例1−8〜1−13]
実施例1−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を表13に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例1−11〜1−199、参考例1−1、比較例1−5〜1−13で作製した電極の剥離強度試験結果を表14に示す。トリアジン系分散剤baの場合と同様に、トリアジン系分散剤bb、ea、ebと各種ポリマー分散剤を併用しても若干の剥離強度向上しかしなかったが、トリアジン系分散剤b〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jの場合は、トリアジン系分散剤aと同様に、各種ポリマー分散剤1種または2種を併用することで大幅な剥離強度の向上が確認できた。
この効果は一般式(1)で示されるトリアジン誘導体に特有であることから、酸性官能基を有するアリーレン基と、フェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結している構造によって、ポリマー分散剤との間に水素結合などの強い分子間力が作用したことによると考えられる。
Figure 2019117698
続いてリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[実施例2−1]
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て>
実施例1−1で作製したトリアジン系分散剤aを含む電極を直径16mmに打ち抜き正極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を負極として、正極および負極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(厚さ20μm、空孔率50%)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を0.1ml満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<イオン抵抗評価>
実施例2−1で組み立てた正極評価用セルを−20℃の恒温槽内で12時間静置し、開回路電位にて周波数0.1Hz、振幅10mVで交流インピーダンス測定を行い、イオン抵抗|Z|ionを求めた。続いて正極評価用セルを室温(25℃)に移して3時間静置し、同様にインピーダンス測定を行い、イオン抵抗|Z|ionを求めた。測定にはインピーダンスアナライザーを用いた。
<反応抵抗評価>
イオン抵抗評価に続いて、充放電測定装置を用い、室温にて0.1Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、0.1Cの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクルとして合計5サイクル行った。5サイクル目の0.1C放電容量を記録しておいた。次に、3.0Vまで放電した状態の正極評価用セルをインピーダンスアナライザーに接続し、3.0V、振幅10mV、周波数0.1Hzから1MHzにおいて交流インピーダンス測定を行った。結果をコールコールプロット法にて複素平面上にプロットすると、半円状の曲線が得られる。この円弧の直径を活物質の反応抵抗|Z|reとした。
<室温レート特性・低温放電特性評価>
次に、室温にて0.1Cで同様に満充電にした後、0.5Cの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電し、再度0.1Cで満充電にしてから5Cの定電流で3.0Vまで放電した。反応抵抗評価の試験で記録しておいた5サイクル目の0.1C放電容量に対する5C放電容量の比率を、室温レート特性(%)とした。またここで、室温における0.5C放電容量を記録しておいた。続いて、室温、0.1Cで同様に満充電にしてから−20℃の恒温槽内に移して12時間静置した後に、0.5Cの定電流で同じく放電した。室温の0.5C放電容量に対する−20℃の0.5C放電容量の比率を、低温放電特性(%)とした。室温レート特性、低温放電特性共に100%に近いほど良好である。
<サイクル特性評価>
次に、室温で12時間放置し、1Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.3V)で満充電として、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。これを1サイクルとして500サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の比率をサイクル特性(%)とした。サイクル特性評価は100%に近いほど良好である。
[実施例2−2〜2−199]
実施例2−1において、実施例1−1で作製した電極を用いた代わりに、表15に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
Figure 2019117698
Figure 2019117698
Figure 2019117698
Figure 2019117698
[比較例2−1〜2−4][参考例2−1]
実施例2−1において、実施例1−1で作製した電極を用いた代わりに、表16に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
Figure 2019117698
[比較例2−5]
実施例1−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を溶剤に置き換えた以外は、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。その電極を、実施例1−1で作製した電極の代わりに使用し、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
<評価結果>
実施例2−1〜2−104のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表17に、実施例2−105〜2−199のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表18に、比較例2−1〜2−5のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の結果を表19に示す。
Figure 2019117698

Figure 2019117698
Figure 2019117698

Figure 2019117698
Figure 2019117698
表17、表18、表19からわかる通り、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jを用いた実施例2−1〜2−199、参考例2−1の正極は室温および−20℃のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の全てにおいて、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例2−1〜2−4や分散剤を用いない比較例2−5の正極と比べて非常に優れていた。
トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜deは、極めて電子密度の高いLiが近傍に存在することで、誘電分極を生じ、電池内では高い誘電率で存在していると考えられる。これによりイオン伝導度を向上させたり、活物質とLiが反応する際のLiの脱溶媒和エネルギーや溶媒和エネルギーを低減させ、結果としてイオン抵抗および反応抵抗が小さくなって、電池全体としても特性が向上すると思われる。
また、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜deとポリマー分散剤を用いた実施例2−1〜2−199の正極は、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例2−1〜2−4や分散剤を用いない比較例2−5やトリアジン系分散剤aのみを用いている参考例2−1の正極と比べてサイクル特性が大幅に向上した。
実施例と比較例、参考例の正極評価用セルを解体して電極の状態を確認したところ、参考例と比較例の電極は一部剥がれやひび割れが発生していたのに対し、実施例の電極は良好な状態であった。剥離強度が大幅に向上したことによって、サイクルによる電極の剥がれや劣化が抑制され、サイクル特性が向上したものと考えられる。
[実施例3−1〜3−10][比較例3−1〜3−5]炭素材料種の比較
表20に示した炭素材料分散液、表21に示した炭素材料分散ワニス、表22に示した正極合剤ペーストの材料と組成に従い、実施例1−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、実施例2−1において実施例1−1で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。高比表面積の炭素材料に対しては分散剤が多く必要であるため、それぞれの炭素材料に合わせて適宜使用量を決定した。
炭素材料分散液の組成
Figure 2019117698
炭素材料分散ワニスの組成
Figure 2019117698
正極合剤ペーストの組成
Figure 2019117698
<評価結果>
いずれの実施例、比較例に記載の炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペーストも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
実施例3−1〜3−10、比較例3−1〜3−5の正極評価用セルのイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性、剥離強度の評価結果を表23に示す。
Figure 2019117698
いずれの炭素材料であっても同様の効果が確認できた。実施例3−1〜3−10の差異は炭素材料の導電性による差異であると考えられる。また、比較例3−1〜3−5では、分散剤の添加量が多いものほどいずれの特性も悪い傾向にあった。
以上の検証から、先に述べた効果は炭素材料種によらないことが確認できた。
[実施例4−1〜4−12]活物質表面積あたりの分散剤量の比較−1
実施例1−2において、用いたトリアジン系分散剤の量、およびポリマー分散剤の量の代わりに、表24、表25、表26に示す分散剤量とした以外は実施例1−2と同様にして電極を作製した。その電極を、実施例2−2において実施例1−2で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−2と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。電極中の活物質表面積1mに対する分散剤量(mg)と活物質表面積あたりのトリアジン誘導体量(mg)を表27に示した。
炭素材料分散液の組成
Figure 2019117698
炭素材料分散ワニスの組成
Figure 2019117698
正極合剤ペーストの組成
Figure 2019117698
活物質表面積あたりのトリアジン系分散剤量およびトリアジン誘導体量
Figure 2019117698
<評価結果>
比較例2−5、実施例2−2、2−8、4−1〜4−12の反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表28に示す。
Figure 2019117698
実施例4−1から、活物質表面積に対するトリアジン系分散剤量が少なすぎると効果が小さくなることがわかった。実施例4−2、4−8のトリアジン系分散剤量以上で特に大きな効果が得られるようになり、トリアジン系分散剤量が増えるにつれて徐々に良化した。
[実施例5−1〜5−18]活物質表面積あたりの分散剤量の比較−2
表29、表30、表31に示す材料、組成にて実施例1−1と同様に分散し、正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。電極中の活物質表面積1mに対するトリアジン系分散剤量(mg)と活物質表面積あたりのトリアジン誘導体量(mg)を表32に示した。
炭素材料分散液の組成
Figure 2019117698
炭素材料分散ワニスの組成
Figure 2019117698
正極合剤ペーストの組成
Figure 2019117698
活物質表面積あたりのトリアジン系分散剤量およびトリアジン誘導体量
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例5−1〜5−18の反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表33に示す。
Figure 2019117698
表33より、実施例5−7、5−16のトリアジン系分散剤量を超えると反応抵抗低減効果が小さくなることがわかった。トリアジン系分散剤量が過剰になると、脱溶媒和エネルギーの低減以上に抵抗成分としての悪影響が大きくなることによると考えられる。
以上のことから、より大きな反応抵抗低減効果を得るためには、活物質表面積に対するトリアジン系分散剤添加量の最適な範囲が存在することがわかった。
[実施例6−1〜6−12]電解液量に対する分散剤量の比較−1
実施例4−2、4−8で作製した正極を用いて、表34に示す電解液の量に変更した以外は、実施例4−2、4−8と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。
Figure 2019117698
[実施例7−1〜7−14]電解液量に対する分散剤量の比較−2
実施例5−3、5−12で作製した正極合剤ペーストを用いて、塗布量を28mg/cmに変更した以外は実施例5−3と同様な方法で正極を作製した。さらに、正極評価用セルに添加する電解液の量を表35に示す量に変更し、それ以外は実施例5−3、5−12と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価を行った。
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例4−2、実施例6−1〜6−12、比較例2−5のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表36に示す。実施例7−1〜7−14のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の評価結果を表37に示す。
実施例4−2、4−8、6−1〜6−12の反応抵抗はいずれも同等であった。これは、活物質表面積に対するトリアジン系分散剤量が等しいことによると考えられる。
また、実施例6−1〜6−4、6−7〜6−12では室温および低温のイオン抵抗は比較例2−5に比べて大幅に低くなっており、実施例6−4、6−10を下限に実施例6−5、6−6、6−11、6−12では効果が小さくなった。大きな効果を得るには、電解液量に対するトリアジン系分散剤最適量の下限が存在することが示された。
室温レート特性および低温放電特性はイオン抵抗と反応抵抗両方の影響を受けるため、電池として優れた特性を得るためには両方の効果が得られるよう設計するのが良い。
一方、実施例7−1〜7−14の比較から、電解液量に対するトリアジン系分散剤量が多すぎてもイオン抵抗低減効果が小さくなることがわかった。これは、トリアジン系分散剤は絶縁性の化合物であるため、過剰にあると、それ自体が抵抗成分になってしまうことによると考えられる。
以上のことから、電解液量に対するトリアジン系分散剤最適量には上限も存在することがわかった。
Figure 2019117698
Figure 2019117698
[実施例8−1]電解液の影響調査
実施例2−2で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:2に混合した混合溶媒に、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−2と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[実施例8−2]
実施例2−2で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比1:1:1に混合した混合溶媒に、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−2と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[実施例8−3]電解液の影響調査−2
実施例2−8で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:2に混合した混合溶媒に、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−8と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[実施例8−4]
実施例2−8で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比1:1:1に混合した混合溶媒に、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液をそれぞれ用いた以外は、実施例2−8と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[比較例8−1]
比較例2−5で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:2に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液を用いた以外は、比較例2−5と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[比較例8−2]
比較例2−5で用いた電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)の代わりに、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートを体積比1:1:1に混合した混合溶媒に、LiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液を用いた以外は、比較例2−5と同様に正極評価用セルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
<評価結果>
実施例2−2、2−8、8−1〜8−4、比較例2−5、8−1、8−2のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表38に示す。
Figure 2019117698
実施例8−1〜8−4より、電解液の種類によらず、すべての特性が比較例よりも良化することが確認できた。本実施例に示した電解液以外でも、一般的に用いられる非水電解液であれば、種類によらず同じ効果が得られると思われる。
次に、活物質の種類を変更して同様に評価した。
[実施例9−1〜9−3]活物質種の比較
実施例1−2で用いた炭素材料分散ワニスを用いて、表39に示した活物質と組成に従って、実施例2−2と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、実施例2−2において実施例1−2で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−2と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[実施例9−4〜9−6]活物質種の比較−2
実施例1−8で用いた炭素材料分散ワニスを用いて、表39に示した活物質と組成に従って、実施例2−8と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、実施例2−8において実施例1−8で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、実施例2−8と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[比較例9−1〜9−3]
比較例1−2で用いた炭素材料分散ワニスを用いて、表39に示した活物質と組成に従って、比較例2−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極をそれぞれ作製し、剥離強度試験を行った。またその電極を、比較例2−1において比較例1−2で作製した電極を用いた代わりにそれぞれ使用し、比較例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例9−1〜9−6、比較例9−1〜9−3のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、剥離強度試験、サイクル特性の評価結果を表40に示す。
Figure 2019117698
活物質の性能によって差異はあるものの、同じ活物質で実施例と比較例を比較すると、実施例9−1〜9−6はいずれも電池特性、剥離強度、サイクル特性が向上していることが確認できた。
続いて、本発明の電池用組成物を負極に用いた場合の評価を行った。
[実施例10−1]
<炭素材料分散ワニスの調製>
表41に示す組成に従い、実施例1−1で作製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散液とバインダー、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスを得た。
<負極合剤ペーストの調製>
表41に示す組成に従い、調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む炭素材料分散ワニスと活物質、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、負極合剤ペーストを得た。
Figure 2019117698
<電極の作製>
調製したトリアジン系分散剤aとポリマー分散剤PVA−103を含む負極合剤ペーストを、厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、ローラープレス機にて圧延処理し、塗布量15mg/cm、密度1.8g/cmの電極を作製した。厚みや密度が均一な電極が得られた。
[実施例10−2〜10−10]
実施例10−1で用いたPVA−103を表42に示したポリマー分散剤に置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
Figure 2019117698
[参考例10−1]トリアジン系分散剤aのみ
表43に示す通り、実施例10−1で用いたポリマー分散剤PVA−103をトリアジン系分散剤aに置き換えて分散剤をトリアジン系分散剤aのみとした以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例10−1]分散剤種の比較−1
表43に示す通り、参考例10−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例10−2]分散剤種の比較−2
表43に示す通り、実施例10−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン系分散剤baに置き換えた以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例10−3、10−4]分散剤種の比較−3
比較例10−2で用いたPVA−103の代わりに、表43に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例10−1〜10−10、参考例10−1、比較例10−1〜10−4で調製した炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペーストは、いずれも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
実施例10−1〜10−10、参考例10−1、比較例10−1〜10−4で作製した電極の剥離強度試験を行った。その結果を表44に示す。剥離強度試験の結果は、参考例10−1を100%としたとき、◎:200%以上、◎〜○:200%未満175%以上、○:175%未満150%以上、○〜△:150%未満120%以上、△:120%未満80%以上、とした。以下、負極合材においての剥離強度試験の結果は、これに従うものとする。トリアジン系分散剤baのみを用いた比較例10−1と比較して、各種ポリマー分散剤を併用した比較例10−1〜10−4は剥離強度がいずれも若干向上した。これは、膜形成能がない低分子のトリアジン系分散剤baの代わりに膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことによって若干ではあるが向上したものによると考えられる。一方、トリアジン系分散剤aのみを用いた参考例10−1と、各種ポリマー分散剤を併用した実施例10−1〜10−10を比較すると、いずれも大幅な向上が見られた。
Figure 2019117698
[実施例10−11〜10−188]
剥離強度向上効果が、一般式(1)で示される他のトリアジン誘導体でも得られるか確認するために、同様に試験を行った。実施例10−1で使用したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤を表45に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
Figure 2019117698
[実施例10−189]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用
表46に示す通り、実施例10−1で用いたトリアジン系分散剤aをトリアジン誘導体Aに置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[実施例10−190〜10−193]トリアジン誘導体とポリマー分散剤の併用−2
実施例10−189で用いたPVA−103の代わりに、表46に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン誘導体Aの代わりに表46に示したトリアジン誘導体をそれぞれ用いた以外は、実施例10−189と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[実施例10−194]ポリマー分散剤の併用
表47に示す通り、実施例10−1で用いたPVA−103のさらに半量をSM−15に置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[実施例10−195、10−196]ポリマー分散剤の併用−2
実施例10−194で用いたPVA−103の代わりに、表47に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、実施例10−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[実施例10−197〜10−199]ポリマー分散剤の併用−3
実施例10−194で用いたPVA−103の代わりに、表47に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用し、トリアジン系分散aの代わりにトリアジン誘導体Aを用いた以外は、実施例10−194と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[比較例10−5〜10−7]
参考例10−1で用いたトリアジン系分散剤aを表48で示した分散剤に置き換えた以外は、参考例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[比較例10−8〜10−13]
実施例10−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を表49に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例10−11〜10−199、参考例10−1、比較例10−5〜10−13で作製した電極の剥離強度試験結果を表50に示す。トリアジン系分散剤baの場合と同様に、トリアジン系分散剤bb、ea、ebと各種ポリマー分散剤を併用しても若干の剥離強度向上しかしなかったが、トリアジン系分散剤b〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jの場合は、トリアジン系分散剤aと同様に、各種ポリマー分散剤1種または2種を併用することで大幅な剥離強度の向上が確認できた。
この効果は一般式(1)で示されるトリアジン誘導体に特有であることから、酸性官能基を有するアリーレン基と、フェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結している構造によって、ポリマー分散剤との間に水素結合などの強い分子間力が作用したことによると考えられる。
Figure 2019117698
続いてリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
[実施例11−1]
<リチウムイオン二次電池負極評価用セルの組み立て>
実施例10−1で作製したトリアジン系分散剤a含む電極を直径18mmに打ち抜き負極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を正極として、負極および正極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(厚さ20μm、空孔率50%)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1に混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を0.1ml満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<イオン抵抗評価>
実施例2−1と同じ条件でインピーダンス測定を行い、−20℃および室温(25℃)におけるイオン抵抗|Z|ionを求めた。
<反応抵抗評価>
イオン抵抗評価に続いて、充放電測定装置を用い、室温にて0.1Cの定電流定電圧充電(下限電圧0.0V)で満充電とし、0.1Cの定電流で放電上限電圧2.0Vまで放電を行う充放電を1サイクルとして合計5サイクル行った。5サイクル目の0.1C放電容量を記録しておいた。次に、2.0Vまで放電した状態の負極評価用セルをインピーダンスアナライザーに接続し、2.0V、振幅10mV、周波数0.1Hzから1MHzにおいて交流インピーダンス測定を行った。結果をコールコールプロット法にて複素平面上にプロットすると、半円状の曲線が得られる。この円弧の直径を活物質の反応抵抗|Z|reとした。
<室温レート特性・低温放電特性評価>
次に、室温にて0.1Cで同様に満充電にした後、0.5Cの定電流で放電上限電圧2.0Vまで放電し、再度0.1Cで満充電にしてから5Cの定電流で2.0Vまで放電した。反応抵抗評価の試験で記録しておいた5サイクル目の0.1C放電容量に対する5Cの放電容量の比率を、室温レート特性(%)とした。またここで、室温における0.5C放電容量を記録しておいた。続いて、室温、0.1Cで同様に満充電にしてから−20℃の恒温槽内に移して12時間静置し、0.5Cの定電流で同じく放電した。室温の0.5C放電容量に対する−20℃の0.5C放電容量の比率を、低温放電特性(%)とした。
<サイクル特性評価>
次に、室温で12時間放置し、1Cの定電流定電圧充電(下限電圧0.0V)で満充電とし、1Cの定電流で2.0Vまで放電した。これを1サイクルとして500サイクル繰り返し、1サイクル目の放電容量に対する500サイクル目の放電容量の比率をサイクル特性(%)とした。サイクル特性評価は100%に近いほど良好である。
[実施例11−2〜11−199]
実施例11−1において、実施例10−1で作製した電極を用いた代わりに、表51に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例11−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
Figure 2019117698

Figure 2019117698

Figure 2019117698

Figure 2019117698
[比較例11−1〜11−4][参考例11−1]
実施例11−1において、実施例10−1で作製した電極を用いた代わりに、表52に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例11−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
Figure 2019117698
[比較例11−5]
実施例10−1で使用したトリアジン系分散剤a、ポリマー分散剤PVA−103を溶剤に置き換えた以外は、実施例10−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、負極合剤ペースト、電極を作製した。その電極を、実施例10−1で作製した電極の代わりに使用し、実施例11−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池負極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
<評価結果>
実施例11−1〜11−104のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表53に、実施例11−105〜11−199のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表54に、比較例11−1〜11−5、参考例11−1のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の結果を表55に示す。
Figure 2019117698

Figure 2019117698
Figure 2019117698
Figure 2019117698
Figure 2019117698
表53、表54、表55からわかる通り、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜de、トリアジン誘導体A、E、H、Jを用いた実施例11−1〜11−199、参考例11−1の負極は室温および−20℃のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の全てにおいて、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例11−1〜11−4や分散剤を用いない比較例11−5の負極と比べて非常に優れていた。
また、トリアジン系分散剤a〜aj、ca〜deとポリマー分散剤を用いた実施例111〜11−199の負極は、トリアジン系分散剤ba、bb、ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例11−1〜11−4や分散剤を用いない比較例11−5やトリアジン系分散剤aのみを用いている参考例11−1の負極と比べてサイクル特性が大幅に向上した。
このことから本発明の電池用組成物を負極に用いた場合も、正極の場合と同じ効果が得られることが確認できた。
[実施例12−1]
<炭素材料分散液の調製>
表56に示す組成に従い、ガラス瓶に水とトリアジン系分散剤caとポリマー分散剤PVA−103を仕込み、混合した後、炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液を得た。
<炭素材料分散ワニスの調製>
表56に示す組成に従い、調製した炭素材料分散液とバインダー、水をディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスを得た。
<合剤ペーストの調製>
表56に示す組成に従い、調製した炭素材料分散ワニスと活物質、水をディスパーにて混合し、正極合剤ペーストを得た。
<電極の作成>
調製したトリアジン系分散剤caとポリマー分散剤PVA−103を含む正極合剤ペーストを、厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、ローラープレス機にて圧延処理し、塗布量17mg/cm、密度3.0g/cmの電極を作製した。厚みや密度が均一な電極が得られた。
Figure 2019117698
[実施例12−2〜12−9]
実施例12−1で用いたPVA−103を表57に示したポリマー分散剤に置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
Figure 2019117698
[参考例12−1] トリアジン系分散剤caのみ
表58に示す通り、実施例12−1で用いたポリマー分散剤PVA−103をトリアジン系分散剤caに置き換えて分散剤をトリアジン系分散剤caのみとした以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例12−1]分散剤種の比較−1
表58に示す通り、参考例12−1で用いたトリアジン系分散剤caをトリアジン系分散剤eaに置き換えた以外は、参考例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例12−2]分散剤種の比較−2
表58に示す通り、実施例12−1で用いたトリアジン系分散剤caをトリアジン系分散剤eaに置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
[比較例12−3、12−4]分散剤種の比較−3
比較例12−2で用いたPVA−103の代わりに、表58に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、比較例12−2と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例12−1〜12−9、参考例12−1、比較例12−1〜12−4で調製した炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペーストは、いずれも良好な分散状態であり、1か月経時後も沈降や増粘はなかった。
実施例12−1〜12−9、参考例12−1、比較例12−1〜12−4で作製した電極の剥離強度試験を行った。剥離強度試験の結果は、参考例12−1を100%としたとき、◎:200%以上、◎〜○:200%未満175%以上、○:175%未満150%以上、○〜△:150%未満120%以上、△:120%未満80%以上、とした。以下、正極合材において、溶剤が水である系の剥離強度試験の結果は、これに従うものとする。その結果を表59に示す。トリアジン系分散剤eaのみを用いた比較例12−1と比較して、各種ポリマー分散剤を併用した比較例12−2〜12−4は剥離強度がいずれも若干向上した。これは、膜形成能がない低分子のトリアジン系分散剤eaの代わりに膜形成に関与できるポリマー成分が入ったことによって若干ではあるが向上したものによると考えられる。一方、トリアジン系分散剤caのみを用いた参考例12−1と、各種ポリマー分散剤を併用した実施例12−1〜12−9を比較すると、いずれも大幅な向上が見られた。
Figure 2019117698
[実施例12−10〜12−88]
剥離強度向上効果が、一般式(1)で示される他のトリアジン誘導体でも得られるか確認するために、同様に試験を行った。実施例12−1で使用したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤を表60に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[実施例12−89]ポリマー分散剤の併用
表61に示す通り、実施例12−1で用いたPVA−103のさらに半量をSM−15に置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[実施例12−90、12−91]ポリマー分散剤の併用−2
実施例12−89で用いたPVA−103の代わりに、表61に示したポリマー分散剤をそれぞれ使用した以外は、実施例12−89と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
[比較例12−5]
表62に示す通り、参考例12−1で用いたトリアジン系分散剤caをトリアジン系分散剤ebに置き換えた以外は、参考例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
[比較例12−6、12−7]
実施例12−1で使用したトリアジン系分散剤ca、ポリマー分散剤PVA−103を表62に示したトリアジン系分散剤、ポリマー分散剤にそれぞれ置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製し、剥離強度試験を行った。
Figure 2019117698
<評価結果>
実施例12−10〜12−91、参考例12−1、比較例12−5〜12−7で作製した電極の剥離強度試験結果を表63に示す。トリアジン系分散剤eaの場合と同様に、トリアジン系分散剤ebと各種ポリマー分散剤を併用しても若干の剥離強度向上しかしなかったが、トリアジン系分散剤cb〜deの場合は、トリアジン系分散剤caと同様に、各種ポリマー分散剤を併用することで大幅な剥離強度の向上が確認できた。
この効果は一般式(1)で示されるトリアジン誘導体に特有であることから、酸性官能基を有するアリーレン基と、フェノール性水酸基2つがひとつのトリアジン環に直結している構造によって、ポリマー分散剤との間に水素結合などの強い分子間力が作用したことによると考えられる。
Figure 2019117698
続いてリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て>
[実施例13−1〜13−91][比較例13−1、13−2][参考例13−1]
実施例2−1において、実施例1−1で作製した電極を用いた代わりに、表64に示した電極をそれぞれ用いた以外は、実施例2−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
Figure 2019117698

Figure 2019117698
[比較例13−3]
実施例12−1で使用したトリアジン系分散剤ca、ポリマー分散剤PVA−103を水に置き換えた以外は、実施例12−1と同様にして炭素材料分散液、炭素材料分散ワニス、正極合剤ペースト、電極を作製した。その電極を、実施例13−1において、実施例12−1で作製した電極の代わりに使用し、実施例13−1と同様の方法でリチウムイオン二次電池正極評価用のセルを組み立て、イオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価を行った。
<評価結果>
実施例13−1〜13−91、比較例13−1〜13−3、参考例13−1のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性、サイクル特性の評価結果を表65に示す。
Figure 2019117698

Figure 2019117698
表65からわかる通り、トリアジン系分散剤ca〜deを用いた実施例13−1〜13−91、参考例13−1の正極は室温および−20℃のイオン抵抗、反応抵抗、室温レート特性、低温放電特性の全てにおいて、トリアジン系分散剤ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例13−1、13−2や分散剤を用いない比較例13−3の正極と比べて非常に優れていた。
また、トリアジン系分散剤ca〜deとポリマー分散剤を用いた実施例13−1〜13−91の正極は、トリアジン系分散剤ea、ebとポリマー分散剤を用いた比較例13−1、13−2や分散剤を用いない比較例13−3やトリアジン系分散剤caのみを用いている参考例13−1の正極と比べてサイクル特性が大幅に向上した。
このことから、溶剤を水とした場合でも同じ効果が得られることが確認できた。

すなわち、本発明は下記一般式(1)で表される酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、ポリマー分散剤とを含んでなる電池用組成物であり、ポリマー分散剤が水酸基を有する電池用組成物に関する。
Figure 2019117698
[一般式(1)中、R1は、−X1−Y1で表される基を表す。X1は置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Y1はスルホ基またはカルボキシル基を表す。]

Claims (14)

  1. 下記一般式(1)で表される酸性官能基を有するトリアジン誘導体と、ポリマー分散剤とを含んでなる電池用組成物。
    Figure 2019117698

    [一般式(1)中、Rは、−X−Yで表される基を表す。Xは置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Yはスルホ基またはカルボキシル基を表す。]
  2. ポリマー分散剤が水酸基を有する請求項1記載の電池用組成物。
  3. ポリマー分散剤がポリビニルアルコール系樹脂および/またはセルロース系樹脂である請求項1または2記載の電池用組成物。
  4. さらに、アミンおよび/または無機塩基を含む請求項1〜3いずれか記載の電池用組成物。
  5. トリアジン誘導体に対するアミンが0.1〜5モル当量である請求項4記載の電池用組成物。
  6. トリアジン誘導体に対するアミンが0.3〜2モル当量である請求項4記載の電池用組成物。
  7. トリアジン誘導体に対する無機塩基が0.1〜1モル当量である請求項4記載の電池用組成物。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の電池用組成物に、さらに、炭素材料と、溶剤とを含んでなる電池用分散組成物。
  9. さらに、バインダーを含んでなる請求項8記載の電池用分散組成物。
  10. さらに、活物質を含んでなる請求項8または9記載の電池用分散組成物。
  11. トリアジン誘導体の添加量が、活物質表面積1mに対して0.05〜140mgである、または、トリアジン誘導体とアミンおよび/または無機塩基との合計添加量が、活物質表面積1mに対して0.1〜200mgである請求項10記載の電池用分散組成物。
  12. 集電体上に、請求項10または11記載の電池用分散組成物より形成されてなる合剤層を有する電極。
  13. 請求項12記載の電極と、非水電解液とを具備してなる電池。
  14. 非水電解液1mlに対するトリアジン誘導体の添加量が6μg〜40mgで ある、または、非水電解液1mlに対するトリアジン誘導体とアミンおよび/または無機塩基との合計添加量が10μg〜60mgである請求項13に記載の電池。
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